説明

電装箱

【課題】熱源体から発生する熱を遮断すると共に、半導体素子から発生する熱を効率よく放熱することで、制御基板を熱的に保護し、信頼性の高い電装箱を提供する。
【解決手段】プリント基板103に実装された半導体素子120と、プリント基板103を収納し熱源体130の反対側にアルミ板105を備え、半導体素子120を備えた連結体112をアルミ板105に密着するように収納ケース101に取り付けられた構成の電装箱100において、熱源体130とプリント基板103との間に断熱部材を設置したので、熱源体130近傍に電装箱100が配置される場合でも、熱源体130からの放射熱が断熱材によって遮断され、半導体素子120からの発熱がアルミ板105を通じて放熱されるため、半導体素子120の温度上昇による熱破壊を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機などの熱源体の近傍に配置される半導体素子等の電子部品を実装したプリント基板等を収納する電装箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫等のように、電動圧縮機の制御にインバータ制御を使った機器が多く出ているが、これらのインバータ機器の電子回路装置において、半導体素子を実装したプリント基板は、電装箱内に収納されており、外部からの熱保護機能を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内燃機関で走行される自動車の空調装置に使用されるインバータ駆動の電動圧縮機において、インバータ回路を構成する制御基板等を、電動圧縮機のハウジング部の外周に一体成形された電装箱内に収納設置し、電動圧縮機と一体化したものが提案されている。そして、インバータ回路を構成する制御基板のIGBT等の発熱素子を、電装箱内に配置し、電装箱部と電動圧縮機を収納したハウジング部と電装箱部との間に、熱の移動を抑制する断熱部(断熱空間、樹脂、発泡剤等)を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来の電装箱について説明する。
【0005】
図5は、特許文献1に記載された従来の電装箱の概略構造図、図6は、特許文献2に記載された従来のインバータ一体型電動圧縮機の要部断面図を示したものである。
【0006】
図5において、電気機器部品を収納するメカニカルシャーシ1と、上面に半導体などを組み付けたプリント基板2と、メカニカルシャーシ1とプリント基板2との間に位置する断熱シート3から構成されている。メカニカルシャーシ1は、その底壁が開口され、その開口部分を密閉する状態で断熱シート3とプリント基板2をビス4によって組み付ける。
【0007】
以上のように構成された電装箱について、以下その動作を説明する。
【0008】
プリント基板2に実装された半導体素子は、通電により発熱するが、メカニカルシャーシ1との間に断熱シート3が設置されていることにより、メカニカルシャーシ1に収納された電気機器部品には影響を与えないため、正常に作動する。
【0009】
また図6において、インバータ一体型電動圧縮機5は、ハウジング6の外周に設置されるインバータボックス7と、IGBT等の発熱素子10を実装した制御基板8を有し、インバータボックス7内に収納設置されるインバータ回路9とを備え、インバータボックス7は、断熱性樹脂材によりハウジング6とは別体で形成されている。
【0010】
以上のように構成されたインバータ一体型電動機について、以下その動作を説明する。
【0011】
電動圧縮機が圧縮運転を行うことで、ハウジング6に内蔵されたモータ部11および機械部12が発熱する。その結果、ハウジング6が高温となるため、ハウジング6の外周に取り付けられたインバータボックス7に伝熱するが、インバータボックス7が断熱性樹脂材にて構成されていることでこれらの熱を遮断することができる。従ってインバータ回路9を熱的に保護し、インバータ回路9に対する熱負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−114283号公報
【特許文献2】特開2007−315270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の構成では、それぞれ外部の熱源からの受熱を遮断し、電装箱およびインバータボックス内の電子部品に対して、外部からの熱保護機能を備えているものの、半導体素子自体の発熱により、電装箱およびインバータボックス内の温度が上昇すると共に、外部への放熱が不十分なため、半導体素子の温度が必要以上に上昇し、半導体素子が熱破壊をする可能性があった。
【0014】
また、インバータボックスを断熱性樹脂材で形成した場合、十分な厚みが必要になるため、設置スペースを大きくする必要があった。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、外部の熱源体からの熱伝達および放射熱を遮断すると共に、安定した半導体素子の放熱を確保することで、制御基板の信頼性を向上した電装箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明の電装箱は、制御基板を構成するプリント基板に実装された半導体素子を収納し、熱源体の反対側に開口部を備えた熱源体近傍に配置される収納ケースと、前記収納ケースの開口部を閉口するように取り付けられたアルミ板とを備え、前記プリント基板と前記アルミ板の間に挟まれて密着固定され、半導体素子を備え付けた連結体を取り付けることで半導体素子の発熱がアルミ板に伝導するように構成し、プリント基板に実装された半導体素子と熱源体の間に断熱部材を設置する構成としたものである。
【0017】
これによって、熱源体近傍に電装箱が配置される場合においても、熱源体からの熱伝達および放射熱が断熱材によって遮断されるとともに、半導体素子から発生する熱を、アルミ板を通じて放熱し、半導体素子を冷却するため、半導体素子の過度な温度上昇を防止することが可能となり、制御基板の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電装箱は、熱源体近傍に電装箱が配置される場合においても、熱源体からの熱伝達および放射熱が断熱材によって遮断されるとともに、半導体素子から発生する熱を、アルミ板を通じて放熱し、半導体素子を冷却するため、電子部品に温度上昇による影響を与えないので、制御基板の信頼性を向上する電装箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における電装箱の断面図
【図2】同実施の形態1における真空断熱材の概略図
【図3】同実施の形態1における異なる断熱構成を備えた電装箱の要部断面図
【図4】同実施の形態1におけるさらに異なる断熱構成を備えた電装箱の要部断面図
【図5】従来の電装箱の概略構造図
【図6】従来のインバータ一体型電動圧縮機の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
請求項1に記載の発明は、制御基板を構成するプリント基板と、前記プリント基板に実
装された半導体素子と、前記プリント基板を収納し、熱源体の反対側に開口部を備え、熱源体近傍に配置される収納ケースと、前記収納ケースの開口部を閉口するように取り付けられたアルミ板とを備え、前記プリント基板と前記アルミ板の間に挟まれて密着固定され、前記半導体素子を備え付けた連結体を取り付けることによって、前記半導体素子の発熱が前記アルミ板に伝導するように構成された電装箱において、前記熱源体と前記プリント基板に実装された前記半導体素子の間に断熱部材を設置したものである。
【0021】
これによって、熱源体近傍に電装箱が配置される場合においても、熱源体からの熱伝達および放射熱が断熱材によって遮断されるとともに、半導体素子から発生する熱を、アルミ板を通じて放熱することができる。その結果、半導体素子の温度上昇による熱破壊を防止することができ、制御基板の信頼性を向上する電装箱を提供することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記断熱部材を、真空断熱材としたものである。
【0023】
これによって、他の断熱部材より断熱性能を保ったまま薄くすることができる。その結果、電装箱を小さくすることが可能となり、省スペースで信頼性の高い電装箱を提供することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記収納ケースの少なくとも熱源体側の面を二重構造とし、前記断熱部材の収納スペースを設けたものである。
【0025】
これによって、断熱部材の取り付けを容易にすると共に、真空断熱材等の袋状の断熱部材の破袋を防止することができるため、信頼性が高く、組立作業性の良い電装箱を提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記収納ケースの二重構造を、別部品にて形成したものである。
【0027】
これによって、金型の成形で収納ケースの二重構造を構成する場合において、金型の抜きテーパ等により、設置スペースが減少することが無く、さらに断熱部材の取り付け作業のスペースも増えるので、安定した断熱性能を確保すると共に、組立作業性のよい電装箱を提供することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電装箱の断面図、図2は、同実施の形態1における真空断熱材の概略図、図3は、同実施の形態1における異なる断熱構造を備えた電装箱の要部断面図、図4は、同実施の形態1におけるさらに異なる断熱構造を備えた電装箱の要部断面図である。
【0030】
図1から図4において、電装箱100は、ポリカーボネードや変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂により射出成形された収納ケース101と、プリント基板103を収納するための開口部104を閉口するように取り付けられたアルミ板105とから構成され、熱源体130と一体となるように設置されている。
【0031】
収納ケース101は、コネクタ113に対向する位置が開口し、コード引出部117を
形成している。
【0032】
収納ケース101の開口部104を閉口するように取り付けられたアルミ板105は、熱源体130の反対側に設置されており、取り付けねじなどによって収納ケース101に固定されている。
【0033】
収納ケース101の熱源体130側の底面部108には、グラスウール繊維などを内蔵した断熱部材である真空断熱材109を収納するために、二重壁構造となるように空間部110が形成されている。
【0034】
プリント基板103は、ガラス布・ガラス不織布エポキシ樹脂からなり、コネクタ113が実装されており、収納ケース101にねじ止めなどによって取り付けられている。
【0035】
プリント基板103には、アルミ合金をプレスにより成形した略U字型の連結体112がネジやカシメ(図示せず)により固定されている。そして、連結体112の略U字型の内壁側に、パワーモジュールもしくはブリッジダイオード等の発熱の大きい半導体素子120が半田付け等により固定されている。
【0036】
略U字型の連結体112は、絶縁シート122を介してアルミ板105に接触するように設置されている。
【0037】
また、絶縁シート122には、予め熱拡散コンパウンド125が塗布されており、絶縁シート122と、アルミ板105との密着を良くし、絶縁シート122とアルミ板105の熱伝導を良くしている。
【0038】
熱源体130は、密閉型の圧縮機であり、その外郭にブラケット132が溶接等により取付けられている。電装箱100は、熱源体130である圧縮機を駆動するために用いられており、モータ端子134などを通じて熱源体130である圧縮機内部のモータ136と電気的に接続される。
【0039】
電装箱100は、収納ケース101の取付け部140が、ねじ止めなどによりブラケット132に固定されることによって、熱源体130である圧縮機に取り付けられている。
【0040】
以上のように構成された電装箱について、以下その動作、作用を説明する。
【0041】
熱源体130である圧縮機は、電装箱100を構成する収納ケース101に設置された制御基板150を構成するプリント基板103に接続された電源コード(図示せず)を介して通電され、通常の圧縮運転を行う。この際、熱源体130である圧縮機は、機械部138やモータ136の発熱によって高温となり、放射熱やブラケット132からの熱伝達により電装箱100に伝熱される。
【0042】
電装箱100に外部から熱が伝わることで、電装箱100内の温度が上昇し、制御基板150を構成するプリント基板103に実装されているパワーモジュールもしくはブリッジダイオード等の半導体素子120の温度が過剰に上昇する。ところが、本実施の形態1においては、電装箱100を構成する収納ケース101と熱源体130である圧縮機の間に断熱部材を設けた構造とすることで、熱源体130からの放射熱を遮断している。その結果、半導体素子120に対する熱負荷を軽減して、制御基板150を熱的に十分保護し、耐熱信頼性を向上させることができる。
【0043】
このとき、制御基板150への通電により半導体素子120自体も発熱し、電装箱10
0内に熱が篭り、半導体素子120の温度が上昇する。しかしながら、熱伝導率の高いアルミの材料で形成された連結体112にて、アルミ板105と半導体素子120を熱的に連結することで、半導体素子120から発生する熱を、効率的に伝導させてアルミ板105より放熱することができるため、半導体素子120の放熱性が良くなり、温度上昇を抑えることができる。
【0044】
さらには、熱伝導率の高いアルミ板105を、熱源体130の反対側に設置していることにより、効果的に放熱することができるため、さらに半導体素子120の温度上昇を抑えることができる。
【0045】
また、断熱部材として真空断熱材109を使用することにより、ウレタンなどから成る断熱材よりも高断熱で薄くすることができる。その結果、省スペースで熱源体130からの熱を効果的に遮断することができ、耐熱信頼性が高く、使い勝手のよい電装箱を提供することができる。
【0046】
さらに、真空断熱材109は、グラスウール繊維等を内蔵し、袋状に密閉している構造であるため、プリント基板103の近傍に設置すると、プリント基板103に実装された電子部品155の足部先端の突起158により破袋する可能性があるが、本実施の形態1においては、収納ケース101の熱源体130側の底面部108に、二重壁構造となるように空間部110を形成しているため、電子部品155の足部先端158の突起が、真空断熱材109の袋に触れることも無く、真空断熱材109の破袋を防止することができる。したがって、信頼性が高く、断熱性能が優れた電装箱を提供できる。
【0047】
また、プリント基板103を、収納ケース101へ設置した後においても、断熱部材を設置することができるので、作業性を良くすることができる。
【0048】
一方、収納ケース101の少なくとも熱源体130側の面を二重構造にする際には、通常、金型によって空間部110を形成する。この際、プリント基板103の幅を金型で形成しようとすると、抜きテーパ等により、空間部110の厚みが不均一となり、真空断熱材109のがたつきが考えられるが、本実施形態1の異なる構成を示す図3においては、空間部110を、仕切り板165で形成している。その構成によって空間の不均一を防止し、確実に真空断熱材109を挟み込むように設置できるので、さらに信頼性が高く、断熱性能に優れた電装箱を提供することができる。
【0049】
また、本実施の形態1のさらに別の構造を示す図4においては、電装箱100の内側に、制御基板150を構成するプリント基板103を設置した内箱170を設置する構成とすることで、収納ケース101の熱源体130側の面だけでなく、熱源体130の反対側に設けたアルミ板105以外の面にも容易に真空断熱材109を設置することができる。
【0050】
したがって、熱源体130である圧縮機から発した熱が回り込んだ場合においても、熱源体130からの放射熱を遮断でき、半導体素子120に対する熱負荷を軽減して、制御基板150を熱的に十分保護し、耐熱信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる電装箱は、熱源体から発生する熱を遮断するとともに、半導体素子から発生する熱を効率よく放熱することができるので、耐熱信頼性を向上することが可能となるので、半導体を使用した他の装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 電装箱
101 収納ケース
103 プリント基板
104 開口部
105 アルミ板
109 真空断熱材(断熱部材)
112 連結体
120 半導体素子
130 熱源体
150 制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御基板を構成するプリント基板と、前記プリント基板に実装された半導体素子と、前記プリント基板を収納し、熱源体の反対側に開口部を備え、熱源体近傍に配置される収納ケースと、前記収納ケースの開口部を閉口するように取り付けられたアルミ板とを備え、前記プリント基板と前記アルミ板の間に挟まれて密着固定され、前記半導体素子を備え付けた連結体を取り付けることによって、前記半導体素子の発熱が前記アルミ板に伝導するように構成された電装箱において、前記熱源体と前記プリント基板に実装された前記半導体素子の間に断熱部材を設置した電装箱。
【請求項2】
前記断熱部材を、真空断熱材とした請求項1に記載の電装箱。
【請求項3】
前記収納ケースの少なくとも熱源体側の面を二重構造とし、前記断熱部材の収納スペースを設けた請求項1または請求項2に記載の電装箱。
【請求項4】
前記収納ケースの二重構造を、別部品にて形成した請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電装箱。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21147(P2013−21147A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153570(P2011−153570)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】