電解めっき方法
【課題】導電域上に成膜されるめっき膜同士を確実に絶縁することができる電解めっき方法を提供する。
【解決手段】めっきベース58aには、導電域79と、非導電路74に基づき区画される孤立導電域77、78とが区画される。孤立導電域77、78は導電接続パターン82、83で導電域79に接続される。こうしためっきベース58aに基づき電解めっきが実施されると、導電域79や孤立導電域77、78上にはめっき膜が形成される。その一方で、めっきベース58aでは、非導電路75、76は非導電域74から非導電域74まで延びる。非導電路75、76の先端は非導電域74に接続される結果、非導電路75、76の先端ではめっき膜の成膜は確実に回避される。こうした非導電路75、76および非導電域74に基づき導電域79や孤立導電域77、78上に形成されるめっき膜同士は確実に絶縁されることができる。
【解決手段】めっきベース58aには、導電域79と、非導電路74に基づき区画される孤立導電域77、78とが区画される。孤立導電域77、78は導電接続パターン82、83で導電域79に接続される。こうしためっきベース58aに基づき電解めっきが実施されると、導電域79や孤立導電域77、78上にはめっき膜が形成される。その一方で、めっきベース58aでは、非導電路75、76は非導電域74から非導電域74まで延びる。非導電路75、76の先端は非導電域74に接続される結果、非導電路75、76の先端ではめっき膜の成膜は確実に回避される。こうした非導電路75、76および非導電域74に基づき導電域79や孤立導電域77、78上に形成されるめっき膜同士は確実に絶縁されることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ上でめっき膜を成膜する電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される光伝送用チップは広く知られる。こうした光伝送チップは例えばマッハツェンダ型の光変調器に組み込まれる。光伝送用チップは、光導波路上に形成される信号電極並びに第1および第2接地電極といった電極を備える。信号電極は第1および第2接地電極に挟み込まれる。信号電極と第1接地電極や第2接地電極との間には溝が形成される。溝に基づき信号電極は第1および第2接地電極から絶縁される。
【0003】
光伝送用チップの製造にあたってウェハが用意される。ウェハ上には導電性のめっきベースが形成される。めっきベースには2筋の非導電路が形成される。電解めっきに基づき非導電路の周囲すなわち導電域でめっき膜は成膜される。その後、ウェハから個々のチップが切り出される。チップの切り分けに先立って、ウェハ上では隣接するチップ同士の間でめっき膜が分断される。こういった分断にあたって電極および非導電路にはレジスト膜が覆い被さる。レジスト膜の周囲でめっき膜は除去される。
【特許文献1】特開平05−333297号公報
【特許文献2】特開2001−237346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝送速度の向上にあたって電極の膜厚の増大は避けられない。電極の膜厚が増大すると、非導電路を覆うレジスト膜と、電極を覆うレジスト膜との間で膜厚の差は拡大する。その結果、非導電路を覆うレジスト膜では露光が十分に行き渡らない。特に、露光マスクの外縁ではレジスト膜が残存しやすい。その結果、非導電路の先端ではめっきベースが十分に除去されない。電極同士の間で短絡は引き起こされる。こうした光伝送用チップは製品として出荷されることはできない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、導電域上に成膜されるめっき膜同士を確実に絶縁することができる電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウェハ上で導電性のめっきベースを形成する際に、所定の切断予定線に沿って第1および第2領域の間に延びる非導電域と、非導電域から非導電域まで第2領域内に延び、非導電域に隣接して第2領域内で孤立化する1以上の孤立導電域を区画する1筋以上の非導電路と、非導電域を横切って、第1領域内の導電域に孤立導電域を接続する導電接続パターンとを区画することを特徴とする電解めっき方法が提供される。
【0007】
こうした電解めっき方法では、めっきベースには、第1領域内の導電域と、第2領域内で非導電路に基づき区画される孤立導電域とが区画される。孤立導電域は、第1および第2領域の間に延びる非導電域を横切る導電接続パターンで導電域に接続される。こうしためっきベースに基づき電解めっきが実施されると、導電域や孤立導電域上にはめっき膜が形成されることができる。その一方で、めっきベースでは、非導電路は非導電域から非導電域まで延びる。非導電路の先端は非導電域に接続される結果、非導電路の先端ではめっき膜の成膜は確実に回避される。こうした非導電路および非導電域に基づき導電域や孤立導電域上に形成されるめっき膜同士は確実に絶縁されることができる。
【0008】
こういった電解めっき方法では、導電接続パターンから孤立導電域に供給される電流に基づき孤立導電域上にめっき膜が成膜されればよい。こうして、非導電域の形成にも拘わらず、非導電域および非導電路で区画される孤立導電域では確実にめっき膜が形成されることができる。こうしためっき膜の成膜に先立って、導電接続パターンおよび非導電域上にはレジスト膜が形成されればよい。こうして電解めっきの実施にあたって、レジスト膜の働きで導電接続パターン上ではめっき膜の成膜は回避される。切断予定線に沿って隣接する領域同士の間で、導電域上に成膜されるめっき膜と、孤立導電域上に形成されるめっき膜とは分断されることができる。こうしためっき膜の成膜後に、ウェハは切断予定線に沿って切り分けられればよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、導電域上に成膜されるめっき膜同士を確実に絶縁することができる電解めっき方法が提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は光送受信器すなわち光変調器11の構造を概略的に示す。この光変調器11は例えばマッハツェンダ型に構成される。光変調器11はケーシング12を備える。ケーシング12には入力側光ファイバ13aおよび出力側光ファイバ13bが接続される。光ファイバ13a、13bは1直線上で延びる。周知の通り、光ファイバ13a、13bは、コアと、コアの周囲を取り囲むクラッド層と、クラッド層を覆う被覆層とを備える。
【0012】
光ファイバ13a、13bおよびケーシング12の接続にあたって、光ファイバ13a、13bの先端には例えばフェルール14が取り付けられる。フェルール14は例えばガラス材料から形成される。フェルール14はコネクタ15に取り付けられる。コネクタ15はケーシング12に着脱自在に取り付けられる。こうして光ファイバ13a、13bはケーシング12に接続される。
【0013】
ケーシング12には光伝送用チップ16が収容される。光伝送用チップ16は、光ファイバ13a、13b同士の間に配置される。光伝送用チップ16は、本体17と、本体17の表面に沿って形成される光導波路18とを備える。本体17は例えば平板状に形成される。本体17は、表面に直交する1対の端面17a、17bで仕切られる。光導波路18は、本体17の端面17a、17b同士の間で本体17の長さ方向に延びる。光導波路18は本体17内で光を伝播させることができる。
【0014】
光導波路18の先端は光ファイバ13a、13bの先端に向き合わせられる。光導波路18の中心は光ファイバ13a、13bの軸心に一致する。こうした光導波路18は、入力路18aと、入力路18aと同一直線上に規定される出力路18bと、入力路18aおよび出力路18bを接続し、所定の分岐点19、21で二股に分岐する第1および第2分岐路18c、18dとを備える。第1および第2分岐路18c、18dは相互に平行に延びればよい。
【0015】
光ファイバ13aおよび光伝送用チップ16の端面17aの間、および、光伝送用チップ16の端面17bおよび光ファイバ13bの間にはレンズ22、22が組み込まれる。レンズ22の働きで、光ファイバ13aから入力される入力光は光導波路18の先端に結合される。同様に、光導波路18の先端から出力される出力光は光ファイバ13bの先端に結合される。
【0016】
図2に示されるように、第1分岐路18c上には信号電極24が延びる。信号電極24は、端面17a、17b同士の間に延びる側縁17cから始まってその側縁17cに行き着く。信号電極24とその側縁17cとの間すなわち信号電極24の内側には第1接地電極25が広がる。信号電極24および第1接地電極25は溝26で相互に離隔される。信号電極24の外側すなわち信号電極24と他の側縁17dとの間には第2接地電極27が広がる。信号電極24および第2接地電極27は同様に溝28で相互に離隔される。第2接地電極27は信号電極24に並列に側縁17cから側縁17dまで延びる。
【0017】
本体17の表面には、その輪郭に沿って非導電域29が確保される。非導電域29は信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27を取り囲む。非導電域29には、本体17を横切る第1基準線31に沿って1対の第1導電片32、32が形成される。第1基準線31は光導波路18に直交する。第1導電片32、32は第2接地電極27から外側に向かって側縁17c、17dに至る。同様に、非導電域29には、第1基準線31に平行な第2基準線33に沿って1対の第2導電片34、34が形成される。一方の第2導電片34は第2接地電極27から外側に向かって側縁17dに至る。他方の第2導電片34は信号電極24から外側に向かって側縁17cに至る。
【0018】
非導電域29には、第2基準線33に平行な第3基準線35に沿って1対の第3導電片36、36が形成される。第3基準線35は例えば端面17a、17bの間の中間位置に規定される。光伝送用チップ16の長手方向に第3導電片36、36の幅は第1および第2導電片32、34よりも大きく規定される。一方の第3導電片36は第2接地電極27から外側に向かって側縁17dに至る。他方の第3導電片36は第1接地電極25から外側に向かって側縁17cに至る。
【0019】
同様に、非導電域29には、第3基準線35に平行な第4基準線37に沿って1対の第4導電片38、38が形成される。さらに、非導電域29には、第4基準線37に平行な第5基準線39に沿って1対の第5導電片41、41が形成される。第4および第5導電片38、41は、第3基準線35に対して前述の第1および第2導電片32、34の鏡像に相当する。その他、第4および第5導電片38、41は前述の第1および第2導電片32、34と同様に構成される。
【0020】
信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27の一端は信号源42に接続される。その一方で、信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27の他端は終端抵抗43に接続される。信号源42は信号電極24に電気信号を入力することができる。
【0021】
図3に示されるように、光伝送用チップ16の本体17は、例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される基層44を備える。基層44は所定の平面に沿って広がる。基層44内には前述の光導波路18が形成される。後述されるように、光導波路18は例えばTiといった無機材料の熱拡散に基づき基層44の表面に沿って基層44内に形成される。
【0022】
基層44の表面にはSiO2層45が広がる。こうしてSiO2層45は基層44との間に光導波路18を挟み込む。こうしたSiO2層45はバッファ層として機能する。SiO2層45の表面にはSi層46が広がる。Si層46は基層44の側面および裏面を覆う。Si層46の表面には信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27が受け止められる。電極24、25、27は例えばAuといった導電材料から構成されればよい。電極24、25、27およびSi層46の間にはTi層47が挟み込まれる。
【0023】
前述の第1〜第5導電片32、34、36、38、41はSi層46の表面に形成される。こうした第1〜第5導電片32、34、36、38、41は、Ti膜47とAu膜とで構成されればよい。Ti膜47およびAu膜は、後述されるように、めっきベースとして形成される。こうしためっきベースに基づき電極24、25、27は形成される。第1〜第5導電片32、34、36、38、41の膜厚は電極24、25、27の膜厚よりも著しく小さく設定される。
【0024】
次に、光変調器11の動作を簡単に説明する。例えばレーザダイオードといった光源から入力光が入力側光ファイバ13aを介してケーシング12内に入力されると、入力光はレンズ22から光導波路18の先端すなわち入力路18aの先端に入射する。入射した入力光は分岐点19で第1分岐路18cおよび第2分岐路18dに分岐する。入力光は分岐点19で実質的に二等分されて第1および第2分岐路18c、18dに導かれる。
【0025】
その一方で、信号電極24には信号源27から電気信号が入力される。こうした電気信号に基づき第1分岐路18cには電界が作用する。電界に基づき第1分岐路18cでは光の屈折率が変化する。いわゆる電気光学効果の働きで、第1および第2分岐路18c、18dの間で光の位相が変化する。位相の変化は電気信号の「1」と「0」とに対応する。第1および第2分岐路18c、18dに導かれる光は分岐点21で結合される。
【0026】
分岐点21では、光の位相差に基づき、光は、出力路18bに導かれる出力光と、本体17内の基層44内に漏れる漏れ光とに分岐する。出力路18bの先端から出力される出力光はレンズ22から出力側光ファイバ13bに入射する。こうして出力側光ファイバ13bに基づき出力光すなわち光信号は伝送先に向けて伝送される。こうして伝送先では出力光の光の強度に基づき情報は読み出されることができる。
【0027】
次に、光伝送用チップ16の製造方法を詳細に説明する。まず、図4に示されるように、ウェハ51が用意される。ウェハ51は例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される。ウェハ51は前述の本体17の基層44に相当する。ウェハ51の直径は例えば3〜4インチ程度に設定される。
【0028】
図5に示されるように、ウェハ51上には無機材料層すなわちTi層52がウェハ51の全面にわたって形成される。形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Ti層52の膜厚は例えば100nm程度に設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0029】
Ti層52の表面には全面にわたってフォトレジスト材53が塗布される。フォトレジスト材53の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。フォトレジスト材53には露光および現像が実施される。その結果、図6に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜53aが形成される。フォトレジスト膜53aの周囲でTi層52の表面は露出する。
【0030】
Ti層52には所定のエッチング液に基づきウェットエッチング加工が施される。フォトレジスト膜53aの周囲でTi層52は取り払われる。図7に示されるように、ウェハ51の表面には、規定のパターンに象られたTi層52aが残存する。その後、所定の剥離液に基づきTi層52a上のフォトレジスト膜53aは取り払われる。
【0031】
続いて、ウェハ51は拡散装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。チャンバ内は加熱される。こうしてウェハ51の表面からウェハ51内にTiが拡散する。その結果、図8に示されるように、ウェハ51の表面に沿ってウェハ51内を延びる光導波路54が形成される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0032】
続いて、図9に示されるように、ウェハ51の表面にはSiO2層55が形成される。SiO2層55の形成にあたってスパッタリングが用いられる。ウェハ51はスパッタリング装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。SiO2層55の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。ウェハ51はチャンバから取り出される。その後、ウェハ51は加熱される。
【0033】
SiO2層55の表面およびウェハ51の裏面にはSi層56が形成される。Si層56の形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Si層56の膜厚は例えば100nm程度に設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0034】
Si層56の表面にはTi層57およびAu層58が順次形成される。形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Ti層57の膜厚は例えば50nm程度に設定される。Au層58の膜厚は例えば200nmに設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0035】
その後、Au層58の表面には全面にわたってフォトレジスト材59が塗布される。フォトレジスト材59の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。フォトレジスト材59には露光および現像が実施される。その結果、図10に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜59aが形成される。
【0036】
ここで、ウェハ51には、相互に平行に延びる複数の切断予定線61が設定される。切断予定線61に基づき個々の光導波路54は切り分けられる。切断予定線61はチップごとに側縁17c、17dを規定する。フォトレジスト膜59aには切断予定線61に従って複数の領域62が区画される。
【0037】
隣接する領域62、62同士の間には切断予定線61に沿って空隙63が延びる。各領域62内では空隙63から空隙63まで延びる2筋の空隙64、65が形成される。空隙63の両端には切断予定線61を横切りつつ各領域62の空隙63を接続する空隙66が形成される。ここでは、空隙66はウェハ51の外縁まで広がればよい。
【0038】
各領域62内では、空隙64の内側で空隙63に隣接して孤立化する第1孤立領域67が区画される。第1孤立領域67は前述の第1接地電極25の輪郭に象られる。空隙64、65の間には空隙63に隣接して孤立化する第2孤立領域68が区画される。第2孤立領域68は前述の信号電極24の輪郭に象られる。同様に、空隙65の外側には空隙63に隣接して孤立化する第3孤立領域69が区画される。第3孤立領域69は前述の第2接地電極27の輪郭に象られる。
【0039】
隣接する領域62、62同士の間では、第1孤立領域67に第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第1孤立領域67は、隣接する領域62の第3孤立領域69に第1接続領域71で接続される。同様に、隣接する領域62、62同士の間では、第2孤立領域68には第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第2孤立領域68は、隣接する領域62の第3孤立領域69に2箇所の第2接続領域72、72で接続される。さらに、隣接する領域62、62同士の間では、第3孤立領域69に第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第3孤立領域69は、隣接する領域62の第3孤立領域69に2箇所の第3接続領域73、73で接続される。
【0040】
空隙63〜66内にはAu層58の表面が露出する。空隙63〜66内でAu層58およびTi層57にはウェットエッチング加工が施される。その結果、図11に示されるように、空隙63〜66内でAu層58およびTi層57は取り払われる。空隙63〜66内ではSi層56の表面は露出する。その後、所定の剥離液に基づきフォトレジスト膜59aは取り払われる。こうしてTi層57およびAu層58に基づき導電性のめっきベース58aが形成される。
【0041】
めっきベース58aでは、図12に示されるように、切断予定線61に沿って隣接する領域62、62同士の間に延びる非導電域74が区画される。めっきベース58aでは、各領域62内で非導電域74から非導電域74まで延びる2筋の非導電路75、76が区画される。図12から明らかなように、非導電域74の両端からウェハ51の外縁に向かう領域では、空隙66に基づき前述のウェットエッチング加工でAu層58およびTi層57は取り払われる。
【0042】
各領域62内では、非導電路75の内側で非導電域74に隣接して孤立化する第1孤立導電域77が区画される。第1孤立導電域77は前述の第1接地電極25の輪郭に象られる。同様に、各領域62内では、非導電路75、76の間に非導電域74に隣接して孤立化する第2孤立導電域78が区画される。第2孤立導電域78は前述の信号電極24の輪郭に象られる。非導電路76の外側には非導電域74に隣接して孤立化する導電域79が区画される。導電域79は前述の第2接地電極27の輪郭に象られる。
【0043】
隣接する領域62、62同士の間で、導電域79、79同士は2箇所の第1導電接続パターン81、81で接続される。第1導電接続パターン81は非導電域74を横切る。導電域79は、隣接する領域62の第1孤立導電域77に第2導電接続パターン82で接続される。第2導電接続パターン82は非導電域74を横切る。同様に、導電域79は、隣接する領域62の第2孤立導電域78に2箇所の第3導電接続パターン83、83で接続される。第3接続パターン83は非導電域74を横切る。
【0044】
続いて、ウェハ51の表面には全面にわたってフォトレジスト材が塗布される。フォトレジスト材の膜厚は例えば13μm程度に設定される。フォトレジスト材には露光および現像が実施される。こうして、図13に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜84が形成される。フォトレジスト膜84は非導電路75、76上に形成される。このとき、図14に示されるように、フォトレジスト膜84は、切断予定線61に沿って第1〜第3導電接続パターン81、82、83および非導電域74上に形成される。フォトレジスト膜84の周囲でめっきベース58aは露出する。
【0045】
フォトレジスト膜84の形成後、めっきベース58aに基づき電解めっきが実施される。ウェハ51は所定のめっき液に浸される。めっき液中でめっきベース58aには電流が供給される。第1〜第3導電接続パターン81、82、83に基づき、導電域79から隣接する領域62の導電域79、第1および第2孤立導電域77、78に電流は供給される。こうして、図15に示されるように、導電域79並びに第1および第2孤立導電域77、78上にはめっき膜すなわち第1Au膜85が成膜される。第1Au膜85の膜厚は例えば4μm程度に設定される。その後、フォトレジスト膜84は取り払われる。
【0046】
続いて、前述と同様に、ウェハ51の表面には全面にわたってフォトレジスト材が塗布される。フォトレジスト材には露光および現像が実施される。こうして、図16に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜86が形成される。フォトレジスト膜86は前述のフォトレジスト膜84と同一のパターンに区画される。前述と同様に、非導電路75、76上、第1〜第3導電接続パターン81、82、83および非導電域74上にフォトレジスト膜86が形成される。
【0047】
フォトレジスト膜86の形成後、めっきベース58aに基づき再度電解めっきが実施される。こうして導電域79並びに第1および第2孤立導電域77、78上では第1Au膜85の表面に第2Au膜87が成膜される。第2Au膜87の膜厚は例えば13μm程度に設定される。その後、フォトレジスト膜86は取り払われる。こうして第1孤立導電域77上には第1接地電極25が形成される。第2孤立導電域78上には信号電極24が形成される。導電域79上には第2接地電極27が形成される。
【0048】
その後、図17に示されるように、ウェハ51上では、切断予定線61に交差する切断予定線88上にいわゆるヤトイ89が取り付けられる。取り付けにあたって接着剤が用いられればよい。続いて、切断予定線61、61…に沿ってウェハ51は個々のチップに切り分けられる。切り分けにあたってメタルブレード(図示されず)が用いられればよい。こうして光伝送用チップ16では前述の本体17の側面は切り出される。
【0049】
ここで、ウェハ51の切り分けにあたって、第1〜第3導電接続パターン81、82、83は切断予定線61で切断される。こうして、隣接する領域62、62の間で第1導電接続パターン81は前述の第1および第5導電片32、41として残存する。同様に、第2導電接続パターン82は第3導電片36として残存する。さらに、第3導電接続パターン83は第2および第4導電接続パターン34、38として残存する。
【0050】
続いて、切断予定線88、88に沿ってウェハ51はさらに切り分けられる。切り分けにあたってレジンダイヤモンドブレード(図示されず)が用いられればよい。レジンダイヤモンドブレードはヤトイ89上を辿る。こうして光伝送用チップ16では本体17の端面17a、17bは切り出される。端面17a、17bでは光導波路54の先端面が露出する。
【0051】
その後、光伝送用チップ16では本体17の側面にはSi層(図示されず)が形成される。Si層の膜厚は例えば100nm程度に設定されればよい。続いて、光伝送用チップ16の端面17a、17bにはARコートが施されればよい。こうして光伝送用チップ16は製造される。
【0052】
以上のような光伝送用チップ16の製造方法によれば、めっきベース58aでは、非導電路75、76は非導電域74から非導電域74まで延びる。したがって、非導電路75、76の先端は非導電域74に接続される。非導電路75、76の先端ではめっきベース58aの残存は確実に回避される。非導電路75、76ではめっき膜すなわち第1および第2Au膜85、87の形成は確実に回避される。伝送速度の向上にあたって第1および第2Au膜85、87すなわち電極24、25、27の膜厚が増大しても、電極24、25、27同士は確実に絶縁されることができる。
【0053】
その他、以上のような光伝送用チップ16では、Ti層57およびAu層58といっためっきベースに代えて、Cr層およびAu層、Ni層およびCr層、Ti層および2層のAu層、Cr層およびNi層およびAu層といったその他のめっきベースが用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】光変調器の構造を概略的に示す平面図である。
【図2】光伝送用チップの構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】光伝送用チップの製造にあたって用いられるウェハの構造を概略的に示す平面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図であり、ウェハ上でTi層およびフォトレジスト材を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図6】ウェハの表面に規定のパターンでフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示す平面図である。
【図7】ウェハの表面でフォトレジスト膜に基づき規定のパターンに象られたTi層を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図8】ウェハの表面からウェハ内にTiを拡散させる工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図9】ウェハの表面にSiO2層、Si層、Ti層およびAu層を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図10】Au層の表面にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図11】フォトレジスト膜に基づきAu層およびTi層にウェットエッチングを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図12】Ti層およびAu層に基づき電解めっきが施される工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図13】導電域や第1および第2孤立導電域の周囲にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図14】導電域や第1および第2孤立導電域の周囲にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図15】フォトレジスト膜の周囲で電解めっきを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図16】フォトレジスト膜の周囲で電解めっきを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図17】切断予定線に沿ってウェハを切り分ける工程を示すウェハの平面図である。
【符号の説明】
【0055】
51 ウェハ、58a めっきベース、61 切断予定線、62 第1領域、62 第2領域、74 非導電域、75 非導電路、76 非導電路、77 孤立導電域(第1孤立導電域)、78 孤立導電域(第2孤立導電域)、81 導電接続パターン(第1導電接続パターン)、82 導電接続パターン(第2導電接続パターン)、83 導電接続パターン(第3導電接続パターン)、84 レジスト膜(フォトレジスト膜)、85 めっき膜(第1Au膜)、87 めっき膜(第2Au膜)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ上でめっき膜を成膜する電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される光伝送用チップは広く知られる。こうした光伝送チップは例えばマッハツェンダ型の光変調器に組み込まれる。光伝送用チップは、光導波路上に形成される信号電極並びに第1および第2接地電極といった電極を備える。信号電極は第1および第2接地電極に挟み込まれる。信号電極と第1接地電極や第2接地電極との間には溝が形成される。溝に基づき信号電極は第1および第2接地電極から絶縁される。
【0003】
光伝送用チップの製造にあたってウェハが用意される。ウェハ上には導電性のめっきベースが形成される。めっきベースには2筋の非導電路が形成される。電解めっきに基づき非導電路の周囲すなわち導電域でめっき膜は成膜される。その後、ウェハから個々のチップが切り出される。チップの切り分けに先立って、ウェハ上では隣接するチップ同士の間でめっき膜が分断される。こういった分断にあたって電極および非導電路にはレジスト膜が覆い被さる。レジスト膜の周囲でめっき膜は除去される。
【特許文献1】特開平05−333297号公報
【特許文献2】特開2001−237346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝送速度の向上にあたって電極の膜厚の増大は避けられない。電極の膜厚が増大すると、非導電路を覆うレジスト膜と、電極を覆うレジスト膜との間で膜厚の差は拡大する。その結果、非導電路を覆うレジスト膜では露光が十分に行き渡らない。特に、露光マスクの外縁ではレジスト膜が残存しやすい。その結果、非導電路の先端ではめっきベースが十分に除去されない。電極同士の間で短絡は引き起こされる。こうした光伝送用チップは製品として出荷されることはできない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、導電域上に成膜されるめっき膜同士を確実に絶縁することができる電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウェハ上で導電性のめっきベースを形成する際に、所定の切断予定線に沿って第1および第2領域の間に延びる非導電域と、非導電域から非導電域まで第2領域内に延び、非導電域に隣接して第2領域内で孤立化する1以上の孤立導電域を区画する1筋以上の非導電路と、非導電域を横切って、第1領域内の導電域に孤立導電域を接続する導電接続パターンとを区画することを特徴とする電解めっき方法が提供される。
【0007】
こうした電解めっき方法では、めっきベースには、第1領域内の導電域と、第2領域内で非導電路に基づき区画される孤立導電域とが区画される。孤立導電域は、第1および第2領域の間に延びる非導電域を横切る導電接続パターンで導電域に接続される。こうしためっきベースに基づき電解めっきが実施されると、導電域や孤立導電域上にはめっき膜が形成されることができる。その一方で、めっきベースでは、非導電路は非導電域から非導電域まで延びる。非導電路の先端は非導電域に接続される結果、非導電路の先端ではめっき膜の成膜は確実に回避される。こうした非導電路および非導電域に基づき導電域や孤立導電域上に形成されるめっき膜同士は確実に絶縁されることができる。
【0008】
こういった電解めっき方法では、導電接続パターンから孤立導電域に供給される電流に基づき孤立導電域上にめっき膜が成膜されればよい。こうして、非導電域の形成にも拘わらず、非導電域および非導電路で区画される孤立導電域では確実にめっき膜が形成されることができる。こうしためっき膜の成膜に先立って、導電接続パターンおよび非導電域上にはレジスト膜が形成されればよい。こうして電解めっきの実施にあたって、レジスト膜の働きで導電接続パターン上ではめっき膜の成膜は回避される。切断予定線に沿って隣接する領域同士の間で、導電域上に成膜されるめっき膜と、孤立導電域上に形成されるめっき膜とは分断されることができる。こうしためっき膜の成膜後に、ウェハは切断予定線に沿って切り分けられればよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、導電域上に成膜されるめっき膜同士を確実に絶縁することができる電解めっき方法が提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は光送受信器すなわち光変調器11の構造を概略的に示す。この光変調器11は例えばマッハツェンダ型に構成される。光変調器11はケーシング12を備える。ケーシング12には入力側光ファイバ13aおよび出力側光ファイバ13bが接続される。光ファイバ13a、13bは1直線上で延びる。周知の通り、光ファイバ13a、13bは、コアと、コアの周囲を取り囲むクラッド層と、クラッド層を覆う被覆層とを備える。
【0012】
光ファイバ13a、13bおよびケーシング12の接続にあたって、光ファイバ13a、13bの先端には例えばフェルール14が取り付けられる。フェルール14は例えばガラス材料から形成される。フェルール14はコネクタ15に取り付けられる。コネクタ15はケーシング12に着脱自在に取り付けられる。こうして光ファイバ13a、13bはケーシング12に接続される。
【0013】
ケーシング12には光伝送用チップ16が収容される。光伝送用チップ16は、光ファイバ13a、13b同士の間に配置される。光伝送用チップ16は、本体17と、本体17の表面に沿って形成される光導波路18とを備える。本体17は例えば平板状に形成される。本体17は、表面に直交する1対の端面17a、17bで仕切られる。光導波路18は、本体17の端面17a、17b同士の間で本体17の長さ方向に延びる。光導波路18は本体17内で光を伝播させることができる。
【0014】
光導波路18の先端は光ファイバ13a、13bの先端に向き合わせられる。光導波路18の中心は光ファイバ13a、13bの軸心に一致する。こうした光導波路18は、入力路18aと、入力路18aと同一直線上に規定される出力路18bと、入力路18aおよび出力路18bを接続し、所定の分岐点19、21で二股に分岐する第1および第2分岐路18c、18dとを備える。第1および第2分岐路18c、18dは相互に平行に延びればよい。
【0015】
光ファイバ13aおよび光伝送用チップ16の端面17aの間、および、光伝送用チップ16の端面17bおよび光ファイバ13bの間にはレンズ22、22が組み込まれる。レンズ22の働きで、光ファイバ13aから入力される入力光は光導波路18の先端に結合される。同様に、光導波路18の先端から出力される出力光は光ファイバ13bの先端に結合される。
【0016】
図2に示されるように、第1分岐路18c上には信号電極24が延びる。信号電極24は、端面17a、17b同士の間に延びる側縁17cから始まってその側縁17cに行き着く。信号電極24とその側縁17cとの間すなわち信号電極24の内側には第1接地電極25が広がる。信号電極24および第1接地電極25は溝26で相互に離隔される。信号電極24の外側すなわち信号電極24と他の側縁17dとの間には第2接地電極27が広がる。信号電極24および第2接地電極27は同様に溝28で相互に離隔される。第2接地電極27は信号電極24に並列に側縁17cから側縁17dまで延びる。
【0017】
本体17の表面には、その輪郭に沿って非導電域29が確保される。非導電域29は信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27を取り囲む。非導電域29には、本体17を横切る第1基準線31に沿って1対の第1導電片32、32が形成される。第1基準線31は光導波路18に直交する。第1導電片32、32は第2接地電極27から外側に向かって側縁17c、17dに至る。同様に、非導電域29には、第1基準線31に平行な第2基準線33に沿って1対の第2導電片34、34が形成される。一方の第2導電片34は第2接地電極27から外側に向かって側縁17dに至る。他方の第2導電片34は信号電極24から外側に向かって側縁17cに至る。
【0018】
非導電域29には、第2基準線33に平行な第3基準線35に沿って1対の第3導電片36、36が形成される。第3基準線35は例えば端面17a、17bの間の中間位置に規定される。光伝送用チップ16の長手方向に第3導電片36、36の幅は第1および第2導電片32、34よりも大きく規定される。一方の第3導電片36は第2接地電極27から外側に向かって側縁17dに至る。他方の第3導電片36は第1接地電極25から外側に向かって側縁17cに至る。
【0019】
同様に、非導電域29には、第3基準線35に平行な第4基準線37に沿って1対の第4導電片38、38が形成される。さらに、非導電域29には、第4基準線37に平行な第5基準線39に沿って1対の第5導電片41、41が形成される。第4および第5導電片38、41は、第3基準線35に対して前述の第1および第2導電片32、34の鏡像に相当する。その他、第4および第5導電片38、41は前述の第1および第2導電片32、34と同様に構成される。
【0020】
信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27の一端は信号源42に接続される。その一方で、信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27の他端は終端抵抗43に接続される。信号源42は信号電極24に電気信号を入力することができる。
【0021】
図3に示されるように、光伝送用チップ16の本体17は、例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される基層44を備える。基層44は所定の平面に沿って広がる。基層44内には前述の光導波路18が形成される。後述されるように、光導波路18は例えばTiといった無機材料の熱拡散に基づき基層44の表面に沿って基層44内に形成される。
【0022】
基層44の表面にはSiO2層45が広がる。こうしてSiO2層45は基層44との間に光導波路18を挟み込む。こうしたSiO2層45はバッファ層として機能する。SiO2層45の表面にはSi層46が広がる。Si層46は基層44の側面および裏面を覆う。Si層46の表面には信号電極24並びに第1および第2接地電極25、27が受け止められる。電極24、25、27は例えばAuといった導電材料から構成されればよい。電極24、25、27およびSi層46の間にはTi層47が挟み込まれる。
【0023】
前述の第1〜第5導電片32、34、36、38、41はSi層46の表面に形成される。こうした第1〜第5導電片32、34、36、38、41は、Ti膜47とAu膜とで構成されればよい。Ti膜47およびAu膜は、後述されるように、めっきベースとして形成される。こうしためっきベースに基づき電極24、25、27は形成される。第1〜第5導電片32、34、36、38、41の膜厚は電極24、25、27の膜厚よりも著しく小さく設定される。
【0024】
次に、光変調器11の動作を簡単に説明する。例えばレーザダイオードといった光源から入力光が入力側光ファイバ13aを介してケーシング12内に入力されると、入力光はレンズ22から光導波路18の先端すなわち入力路18aの先端に入射する。入射した入力光は分岐点19で第1分岐路18cおよび第2分岐路18dに分岐する。入力光は分岐点19で実質的に二等分されて第1および第2分岐路18c、18dに導かれる。
【0025】
その一方で、信号電極24には信号源27から電気信号が入力される。こうした電気信号に基づき第1分岐路18cには電界が作用する。電界に基づき第1分岐路18cでは光の屈折率が変化する。いわゆる電気光学効果の働きで、第1および第2分岐路18c、18dの間で光の位相が変化する。位相の変化は電気信号の「1」と「0」とに対応する。第1および第2分岐路18c、18dに導かれる光は分岐点21で結合される。
【0026】
分岐点21では、光の位相差に基づき、光は、出力路18bに導かれる出力光と、本体17内の基層44内に漏れる漏れ光とに分岐する。出力路18bの先端から出力される出力光はレンズ22から出力側光ファイバ13bに入射する。こうして出力側光ファイバ13bに基づき出力光すなわち光信号は伝送先に向けて伝送される。こうして伝送先では出力光の光の強度に基づき情報は読み出されることができる。
【0027】
次に、光伝送用チップ16の製造方法を詳細に説明する。まず、図4に示されるように、ウェハ51が用意される。ウェハ51は例えばLiNbO3といった誘電体結晶から構成される。ウェハ51は前述の本体17の基層44に相当する。ウェハ51の直径は例えば3〜4インチ程度に設定される。
【0028】
図5に示されるように、ウェハ51上には無機材料層すなわちTi層52がウェハ51の全面にわたって形成される。形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Ti層52の膜厚は例えば100nm程度に設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0029】
Ti層52の表面には全面にわたってフォトレジスト材53が塗布される。フォトレジスト材53の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。フォトレジスト材53には露光および現像が実施される。その結果、図6に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜53aが形成される。フォトレジスト膜53aの周囲でTi層52の表面は露出する。
【0030】
Ti層52には所定のエッチング液に基づきウェットエッチング加工が施される。フォトレジスト膜53aの周囲でTi層52は取り払われる。図7に示されるように、ウェハ51の表面には、規定のパターンに象られたTi層52aが残存する。その後、所定の剥離液に基づきTi層52a上のフォトレジスト膜53aは取り払われる。
【0031】
続いて、ウェハ51は拡散装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。チャンバ内は加熱される。こうしてウェハ51の表面からウェハ51内にTiが拡散する。その結果、図8に示されるように、ウェハ51の表面に沿ってウェハ51内を延びる光導波路54が形成される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0032】
続いて、図9に示されるように、ウェハ51の表面にはSiO2層55が形成される。SiO2層55の形成にあたってスパッタリングが用いられる。ウェハ51はスパッタリング装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。SiO2層55の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。ウェハ51はチャンバから取り出される。その後、ウェハ51は加熱される。
【0033】
SiO2層55の表面およびウェハ51の裏面にはSi層56が形成される。Si層56の形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Si層56の膜厚は例えば100nm程度に設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0034】
Si層56の表面にはTi層57およびAu層58が順次形成される。形成にあたって蒸着が用いられる。ウェハ51は蒸着装置(図示されず)のチャンバ内に配置される。Ti層57の膜厚は例えば50nm程度に設定される。Au層58の膜厚は例えば200nmに設定される。ウェハ51はチャンバから取り出される。
【0035】
その後、Au層58の表面には全面にわたってフォトレジスト材59が塗布される。フォトレジスト材59の膜厚は例えば1μm程度に設定されればよい。フォトレジスト材59には露光および現像が実施される。その結果、図10に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜59aが形成される。
【0036】
ここで、ウェハ51には、相互に平行に延びる複数の切断予定線61が設定される。切断予定線61に基づき個々の光導波路54は切り分けられる。切断予定線61はチップごとに側縁17c、17dを規定する。フォトレジスト膜59aには切断予定線61に従って複数の領域62が区画される。
【0037】
隣接する領域62、62同士の間には切断予定線61に沿って空隙63が延びる。各領域62内では空隙63から空隙63まで延びる2筋の空隙64、65が形成される。空隙63の両端には切断予定線61を横切りつつ各領域62の空隙63を接続する空隙66が形成される。ここでは、空隙66はウェハ51の外縁まで広がればよい。
【0038】
各領域62内では、空隙64の内側で空隙63に隣接して孤立化する第1孤立領域67が区画される。第1孤立領域67は前述の第1接地電極25の輪郭に象られる。空隙64、65の間には空隙63に隣接して孤立化する第2孤立領域68が区画される。第2孤立領域68は前述の信号電極24の輪郭に象られる。同様に、空隙65の外側には空隙63に隣接して孤立化する第3孤立領域69が区画される。第3孤立領域69は前述の第2接地電極27の輪郭に象られる。
【0039】
隣接する領域62、62同士の間では、第1孤立領域67に第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第1孤立領域67は、隣接する領域62の第3孤立領域69に第1接続領域71で接続される。同様に、隣接する領域62、62同士の間では、第2孤立領域68には第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第2孤立領域68は、隣接する領域62の第3孤立領域69に2箇所の第2接続領域72、72で接続される。さらに、隣接する領域62、62同士の間では、第3孤立領域69に第3孤立領域69が空隙63で隔てられる。第3孤立領域69は、隣接する領域62の第3孤立領域69に2箇所の第3接続領域73、73で接続される。
【0040】
空隙63〜66内にはAu層58の表面が露出する。空隙63〜66内でAu層58およびTi層57にはウェットエッチング加工が施される。その結果、図11に示されるように、空隙63〜66内でAu層58およびTi層57は取り払われる。空隙63〜66内ではSi層56の表面は露出する。その後、所定の剥離液に基づきフォトレジスト膜59aは取り払われる。こうしてTi層57およびAu層58に基づき導電性のめっきベース58aが形成される。
【0041】
めっきベース58aでは、図12に示されるように、切断予定線61に沿って隣接する領域62、62同士の間に延びる非導電域74が区画される。めっきベース58aでは、各領域62内で非導電域74から非導電域74まで延びる2筋の非導電路75、76が区画される。図12から明らかなように、非導電域74の両端からウェハ51の外縁に向かう領域では、空隙66に基づき前述のウェットエッチング加工でAu層58およびTi層57は取り払われる。
【0042】
各領域62内では、非導電路75の内側で非導電域74に隣接して孤立化する第1孤立導電域77が区画される。第1孤立導電域77は前述の第1接地電極25の輪郭に象られる。同様に、各領域62内では、非導電路75、76の間に非導電域74に隣接して孤立化する第2孤立導電域78が区画される。第2孤立導電域78は前述の信号電極24の輪郭に象られる。非導電路76の外側には非導電域74に隣接して孤立化する導電域79が区画される。導電域79は前述の第2接地電極27の輪郭に象られる。
【0043】
隣接する領域62、62同士の間で、導電域79、79同士は2箇所の第1導電接続パターン81、81で接続される。第1導電接続パターン81は非導電域74を横切る。導電域79は、隣接する領域62の第1孤立導電域77に第2導電接続パターン82で接続される。第2導電接続パターン82は非導電域74を横切る。同様に、導電域79は、隣接する領域62の第2孤立導電域78に2箇所の第3導電接続パターン83、83で接続される。第3接続パターン83は非導電域74を横切る。
【0044】
続いて、ウェハ51の表面には全面にわたってフォトレジスト材が塗布される。フォトレジスト材の膜厚は例えば13μm程度に設定される。フォトレジスト材には露光および現像が実施される。こうして、図13に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜84が形成される。フォトレジスト膜84は非導電路75、76上に形成される。このとき、図14に示されるように、フォトレジスト膜84は、切断予定線61に沿って第1〜第3導電接続パターン81、82、83および非導電域74上に形成される。フォトレジスト膜84の周囲でめっきベース58aは露出する。
【0045】
フォトレジスト膜84の形成後、めっきベース58aに基づき電解めっきが実施される。ウェハ51は所定のめっき液に浸される。めっき液中でめっきベース58aには電流が供給される。第1〜第3導電接続パターン81、82、83に基づき、導電域79から隣接する領域62の導電域79、第1および第2孤立導電域77、78に電流は供給される。こうして、図15に示されるように、導電域79並びに第1および第2孤立導電域77、78上にはめっき膜すなわち第1Au膜85が成膜される。第1Au膜85の膜厚は例えば4μm程度に設定される。その後、フォトレジスト膜84は取り払われる。
【0046】
続いて、前述と同様に、ウェハ51の表面には全面にわたってフォトレジスト材が塗布される。フォトレジスト材には露光および現像が実施される。こうして、図16に示されるように、規定のパターンでフォトレジスト膜86が形成される。フォトレジスト膜86は前述のフォトレジスト膜84と同一のパターンに区画される。前述と同様に、非導電路75、76上、第1〜第3導電接続パターン81、82、83および非導電域74上にフォトレジスト膜86が形成される。
【0047】
フォトレジスト膜86の形成後、めっきベース58aに基づき再度電解めっきが実施される。こうして導電域79並びに第1および第2孤立導電域77、78上では第1Au膜85の表面に第2Au膜87が成膜される。第2Au膜87の膜厚は例えば13μm程度に設定される。その後、フォトレジスト膜86は取り払われる。こうして第1孤立導電域77上には第1接地電極25が形成される。第2孤立導電域78上には信号電極24が形成される。導電域79上には第2接地電極27が形成される。
【0048】
その後、図17に示されるように、ウェハ51上では、切断予定線61に交差する切断予定線88上にいわゆるヤトイ89が取り付けられる。取り付けにあたって接着剤が用いられればよい。続いて、切断予定線61、61…に沿ってウェハ51は個々のチップに切り分けられる。切り分けにあたってメタルブレード(図示されず)が用いられればよい。こうして光伝送用チップ16では前述の本体17の側面は切り出される。
【0049】
ここで、ウェハ51の切り分けにあたって、第1〜第3導電接続パターン81、82、83は切断予定線61で切断される。こうして、隣接する領域62、62の間で第1導電接続パターン81は前述の第1および第5導電片32、41として残存する。同様に、第2導電接続パターン82は第3導電片36として残存する。さらに、第3導電接続パターン83は第2および第4導電接続パターン34、38として残存する。
【0050】
続いて、切断予定線88、88に沿ってウェハ51はさらに切り分けられる。切り分けにあたってレジンダイヤモンドブレード(図示されず)が用いられればよい。レジンダイヤモンドブレードはヤトイ89上を辿る。こうして光伝送用チップ16では本体17の端面17a、17bは切り出される。端面17a、17bでは光導波路54の先端面が露出する。
【0051】
その後、光伝送用チップ16では本体17の側面にはSi層(図示されず)が形成される。Si層の膜厚は例えば100nm程度に設定されればよい。続いて、光伝送用チップ16の端面17a、17bにはARコートが施されればよい。こうして光伝送用チップ16は製造される。
【0052】
以上のような光伝送用チップ16の製造方法によれば、めっきベース58aでは、非導電路75、76は非導電域74から非導電域74まで延びる。したがって、非導電路75、76の先端は非導電域74に接続される。非導電路75、76の先端ではめっきベース58aの残存は確実に回避される。非導電路75、76ではめっき膜すなわち第1および第2Au膜85、87の形成は確実に回避される。伝送速度の向上にあたって第1および第2Au膜85、87すなわち電極24、25、27の膜厚が増大しても、電極24、25、27同士は確実に絶縁されることができる。
【0053】
その他、以上のような光伝送用チップ16では、Ti層57およびAu層58といっためっきベースに代えて、Cr層およびAu層、Ni層およびCr層、Ti層および2層のAu層、Cr層およびNi層およびAu層といったその他のめっきベースが用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】光変調器の構造を概略的に示す平面図である。
【図2】光伝送用チップの構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】光伝送用チップの製造にあたって用いられるウェハの構造を概略的に示す平面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図であり、ウェハ上でTi層およびフォトレジスト材を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図6】ウェハの表面に規定のパターンでフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示す平面図である。
【図7】ウェハの表面でフォトレジスト膜に基づき規定のパターンに象られたTi層を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図8】ウェハの表面からウェハ内にTiを拡散させる工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図9】ウェハの表面にSiO2層、Si層、Ti層およびAu層を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図10】Au層の表面にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図11】フォトレジスト膜に基づきAu層およびTi層にウェットエッチングを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図12】Ti層およびAu層に基づき電解めっきが施される工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図13】導電域や第1および第2孤立導電域の周囲にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図14】導電域や第1および第2孤立導電域の周囲にフォトレジスト膜を形成する工程を概略的に示すウェハの拡大部分平面図である。
【図15】フォトレジスト膜の周囲で電解めっきを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図16】フォトレジスト膜の周囲で電解めっきを施す工程を概略的に示すウェハの拡大部分断面図である。
【図17】切断予定線に沿ってウェハを切り分ける工程を示すウェハの平面図である。
【符号の説明】
【0055】
51 ウェハ、58a めっきベース、61 切断予定線、62 第1領域、62 第2領域、74 非導電域、75 非導電路、76 非導電路、77 孤立導電域(第1孤立導電域)、78 孤立導電域(第2孤立導電域)、81 導電接続パターン(第1導電接続パターン)、82 導電接続パターン(第2導電接続パターン)、83 導電接続パターン(第3導電接続パターン)、84 レジスト膜(フォトレジスト膜)、85 めっき膜(第1Au膜)、87 めっき膜(第2Au膜)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ上で導電性のめっきベースを形成する際に、所定の切断予定線に沿って第1および第2領域の間に延びる非導電域と、非導電域から非導電域まで第2領域内に延び、非導電域に隣接して第2領域内で孤立化する1以上の孤立導電域を区画する1筋以上の非導電路と、非導電域を横切って、第1領域内の導電域に孤立導電域を接続する導電接続パターンとを区画することを特徴とする電解めっき方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記導電接続パターンから前記孤立導電域に電流を供給し、孤立導電域上にめっき膜を成膜することを特徴とする電解めっき方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記めっき膜の成膜に先立って、前記導電接続パターンおよび非導電域上にはレジスト膜が形成されることを特徴とする電解めっき方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記めっき膜の成膜後に、前記ウェハは前記切断予定線に沿って切り分けられることを特徴とする電解めっき方法。
【請求項1】
ウェハ上で導電性のめっきベースを形成する際に、所定の切断予定線に沿って第1および第2領域の間に延びる非導電域と、非導電域から非導電域まで第2領域内に延び、非導電域に隣接して第2領域内で孤立化する1以上の孤立導電域を区画する1筋以上の非導電路と、非導電域を横切って、第1領域内の導電域に孤立導電域を接続する導電接続パターンとを区画することを特徴とする電解めっき方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記導電接続パターンから前記孤立導電域に電流を供給し、孤立導電域上にめっき膜を成膜することを特徴とする電解めっき方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記めっき膜の成膜に先立って、前記導電接続パターンおよび非導電域上にはレジスト膜が形成されることを特徴とする電解めっき方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電解めっき方法において、前記めっき膜の成膜後に、前記ウェハは前記切断予定線に沿って切り分けられることを特徴とする電解めっき方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−348371(P2006−348371A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179323(P2005−179323)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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