説明

電解水生成装置

【課題】所望のpH値としつつ、より飲用に適したアルカリイオン水を生成することのできる電解水生成装置を得る。
【解決手段】電解水生成装置1は、処理水と濃縮水とを分離する逆浸透膜11aを有する逆浸透濾過部11と、少なくとも一対の陰極12bおよび陽極12dを有し、処理水および濃縮水のうち処理水のみを導入して電解水を生成する電解槽12と、を備えている。また、電解水生成装置1は、処理水を電解槽12内に導入する導入路P3と、電解槽12内で生成されたアルカリイオン水を吐出する吐出路P9と、を備えている。そして、導入路P3に連結する還流路P11を設けるとともに、還流手段18によって電解槽12で得られた電解水の少なくとも一部を還流路P11を介して導入路P3に還流させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解水生成装置として、逆浸透膜と電解槽とを備えるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、逆浸透膜で分離した濃縮水を電解槽に導入して電気分解することで電解水を生成し、当該電解水を逆浸透膜の透過水に混合させることで、所望のpH値の電解水を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の技術では、本来排出するはずの濃縮水を用いて電気分解を行っているため、供給される電解水に不純物が含まれ、飲用に適さないものとなってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、所望のpH値としつつ、より飲用に適した電解水を生成することのできる電解水生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電解水生成装置にあっては、処理水と濃縮水とを分離する逆浸透膜を用いた逆浸透濾過部と、少なくとも一対の陰極および陽極を有し、前記処理水および濃縮水のうち処理水のみを導入して電解水を生成する電解槽と、前記処理水を前記電解槽内に導入する導入路と、前記電解槽内で生成された電解水が導入される吐出路と、前記電解槽から吐出される電解水の少なくとも一部が導入され、前記導入路に連結する還流路と、前記電解槽から吐出される電解水の少なくとも一部を前記還流路を介して前記導入路に還流させる還流手段と、を備えることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、逆浸透膜で分離した処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽に導入し、当該処理水を電気分解することで電解水を生成している。このため、高度に浄化されて不純物の少ない水から電解水を生成することができる。そして、電解槽で生成された電解水の少なくとも一部を、還流手段によって還流路から導入路へと還流させている。すなわち、電解槽内に導入される処理水に比較的導電率の高い電解水を混合した水を電解槽内で電気分解させるようにしている。そのため、導電率が低い処理水を用いて電気分解を行ったとしても、電気分解を行うにつれて生成される電解水のpHを強くすることができる。その結果、導電率が低い処理水を用いて所望のpH値の電解水を生成することができるようになる。
【0009】
このように、本発明によれば、所望のpH値としつつ、より飲用に適した電解水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図4】図4は、本発明の第4実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図5】図5は、本発明の第5実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図6】図6は、本発明の第6実施形態にかかる電解水生成装置を示す図であって、(a)は電解水生成装置を模式的に示す全体構成図、(b)は図6(a)のA部拡大図である。
【図7】図7は、本発明の第7実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す全体構成図である。
【図8】図8(a)は、図7のB部を拡大して表示した図、図8(b)は図8(a)の第1変形例を示す図、図8(c)は図8(a)の第2変形例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第7実施形態にかかる電解槽を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第7実施形態にかかる電解槽の比較例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第8実施形態にかかる電解水生成装置を示す図であって、(a)は電解水生成装置を模式的に示す全体構成図、(b)は図11(a)のC部拡大図である。
【図12】図12(a)は、図11(b)のA−A断面図、図12(b)は図12(a)のB−B断面図である。
【図13】図13は、本発明の第8実施形態にかかるスペーサの第1変形例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図14】図14は、本発明の第8実施形態にかかるスペーサの第2変形例を示す側面図である。
【図15】図15(a)は、本発明の第8実施形態にかかるスペーサの第3変形例を示す斜視図、図15(b)は、本発明の第8実施形態にかかるスペーサの第4変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態ならびにその変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1は、図1に示すように、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0013】
吐水部3は、電解水生成装置1の駆動/停止や電解水の吐水/停止を操作したり、飲用可能状態となったことを報知したりする操作・報知部31と、電解水を外部に吐出させる吐出カランと、を備えている。本実施形態では、吐水部3は、アルカリイオン水(電解水)を吐出口32aから外部に吐出するアルカリイオン水吐出カラン32と、酸性水(電解水)を吐出口33aから外部に吐出する酸性水吐出カラン33と、を備えている。
【0014】
また、本実施形態では、水道管などの原水配水管P0から水道水などの原水が導入される給水路P1を有している。
【0015】
この給水路P1には、上流側から順に開閉弁4、第1プレフィルタ5、第2プレフィルタ6、第3プレフィルタ7が設置されている。そして、第3プレフィルタ7の下流側には、浄水路P2が設けられている。なお、原水は水道水に限られるものではなく、井戸水や溜め水等であってもよい。
【0016】
開閉弁4は、原水の電解水生成装置1内への導入の開始および停止を制御するものである。なお、給水路P1に圧力検知手段を配置し、浄水路P2に水栓等の弁を設け、水栓を開いて配管圧力が低下した場合に電解水生成装置1を動作させるようにすれば、開閉弁4を廃止することが可能である。
【0017】
そして、原水配水管P0から給水路P1内に導入された原水は、第1プレフィルタ5、第2プレフィルタ6、第3プレフィルタ7を通過して濾過される。
【0018】
第1プレフィルタ5は、例えば、孔径5μmの不織布フィルタで構成されており、給水路P1内に導入される水道水に混入した大きな粒子やゴミなど、比較的大きめの異物を捕捉して除去するものである。
【0019】
そして、開閉弁4および第1プレフィルタ5を通過した水は、第2プレフィルタ6および第3プレフィルタ7に導入されて遊離残留塩素等が除去される。
【0020】
第2プレフィルタ6には、活性炭フィルタ(図示せず)が収納されており、水に溶解した成分、特に異味や異臭、あるいは、トリハロメタンをはじめとしたハロゲン化炭素を除去するものである。
【0021】
なお、活性炭フィルタの内部に重金属を除去するための重金属除去剤を混入し、当該重金属除去剤に鉛などの有害重金属を吸着させて除去できるようにしてもよい。また、活性炭フィルタで水中の残留塩素を分解除去することで、下流側に細菌が繁殖し易くなるが、これを防止するため、第2プレフィルタ6に、銀などの抗菌性を有する金属を含む抗菌剤を混合するようにしてもよい。
【0022】
また、第3プレフィルタ7は、例えば、孔径1μmの不織布フィルタで構成されており、第1プレフィルタ5では捕捉されないより微細な懸濁物質を捕捉、除去するものである。
【0023】
このように、本実施形態では、第1プレフィルタ5、第2プレフィルタ6および第3プレフィルタ7にて前処理を行った浄水が、後述するナノフィルタ(逆浸透濾過部)11に導入されるようになっている。
【0024】
なお、プレフィルタの構成は、この構成に限定されるものではない。例えば、第1および第3プレフィルタ5、7として、コットンなどの繊維を集水管に巻き付けたワインドタイプのものや焼結タイプのものを用いてもよく、細い繊維を積層した繊維タイプのものを用いてもよい。また、第2プレフィルタ6として、粒状活性炭をケースに収納したタイプのものや焼結タイプのものを用いてもよいし、繊維状炭タイプのものを用いてもよい。また、ブロック活性炭フィルタや繊維状活性炭フィルタを用い、当該フィルタの孔径を利用して不織布フィルタの機能を兼ね備えるようにしてもよい。さらに、プレフィルタとして、粗濾過用のセディメントフィルタや活性炭フィルタ、MF膜,UF膜等を用いることも可能であり、その数や組合せを、原水の水質を考慮しつつ必要に応じて変えるようにするのが好適である。
【0025】
そして、第3プレフィルタ7の下流側には、流量センサ8、浄水給水弁9および昇圧ポンプ10がこれらの順に設置されている。
【0026】
第1プレフィルタ5、第2プレフィルタ6および第3プレフィルタ7にて前処理を行った浄水は、浄水給水弁9を通過して昇圧ポンプ10に至る。なお、浄水給水弁9は、給水路P1の途中のいずれかの位置に設置されていればよいが、第3プレフィルタ7の下流側に設置されているのが好ましい。こうすれば、浄水給水弁9内部への異物の侵入を抑制することができるためである。
【0027】
また、浄水路P2の端末は、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11に接続されている。
【0028】
そして、前処理が行われた浄水は、ナノフィルタ11に導入され、NF膜(逆浸透膜)11aを透過しない濃縮水とNF膜(逆浸透膜)11aを透過した透過水とに分離される。
【0029】
このナノフィルタ11は、昇圧ポンプ10によって逆浸透圧をかけ、ナノフィルタ11に送られた浄水の一部をNF膜(逆浸透膜)11aを透過させることで処理水(透過水)を生成するようにしたものである。なお、NF膜11aを用いると、有機物(たとえば、トリハロメタンやカビ臭および農薬など)や重金属イオン(たとえば、鉛、クロム、カドミウム、水銀、砒素など)、さらにナトリウムやカルシウムなどの低分子量のイオン成分などを除去することができる。
【0030】
そして、NF膜11aを透過した水は、これらの物質が除去された処理水(透過水)として、導入路P3に供給される。この導入路P3は、後述する電解槽12に接続されており、処理水を電解槽12内に導入するための通路である。
【0031】
また、残りの水分、塩類や不純物(この不純物には有機物やイオンなどが含まれる)は、濃縮水として濃縮水排水路P4から排出されるようになっている。
【0032】
濃縮水排水路P4は、途中に圧力開放弁13が設けられた第1排水路P5と、リストリクタ14が設けられた第2排水路P6と、に分岐している。そして、第1排水路P5および第2排水路P6は、圧力開放弁13およびリストリクタ14よりも下流側に位置する合流部D1で再び合流しており、濃縮水は、合流した濃縮水排水路P4から外部に排出されるようになっている。圧力開放弁13は通水停止時にNF膜11aにかかる水圧を開放するためのものである。なお、圧力開放弁13の開閉動作と開閉弁4の開閉動作を時間差を設けて行うことで、NF膜11a表面の洗浄を兼ねるようにしてもよい。
【0033】
ところで、NF膜11aはRO膜よりも透過孔が大きくなっている。そのため、NF膜11aを用いたナノフィルタ11は、粒子や有機物および重金属を90パーセント以上の高い除去率で除去することができるが、低分子量のイオン成分は処理水(透過水)に約10〜30パーセント程度残存するという特性を有する。この場合、例えば導電率が300μS/cmの水を透過させた場合、低分子イオンが残存した処理水として、約60μS/cm程度の導電率の処理水が得られる。ただし、逆浸透膜として使用する膜は、このNF膜に限らず、RO膜等の逆浸透膜を用いることも可能である。
【0034】
そして、NF膜11aを透過した処理水は、導入路P3を通って電解槽12内に導入される。本実施形態では、処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0035】
電解槽12は、内部が隔膜12aによって仕切られており、一方が陰極(電極)12bを有する陰極室12cとなっており、他方が陽極(電極)12dを有する陽極室12eとなっている。そして、導入路P3の端末を分岐させ、一方の分岐路を陰極室12cの入口に連通する陰極側導入路P7とし、他方の分岐路を陽極室12eの入口に連通する陽極側導入路P8としている。
【0036】
この電解槽12の陰極室12cおよび陽極室12eにそれぞれ導入された処理水は、陰極12bと陽極12dとの間に電圧を印加することで電気分解され、陰極室12cではアルカリイオン水が生成されるとともに、陽極室12eでは酸性水が生成される。
【0037】
また、陰極室12cの出口には陰極側吐出路(吐出路)P9が連通されており、陽極室12eの出口には陽極側吐出路(吐出路)P10が連通されている。これら陰極側吐出路P9および陽極側吐出路P10は、アルカリイオン水吐出カラン32および酸性水吐出カラン33にそれぞれ連通されている。そして、陰極室12cで生成されたアルカリイオン水は、陰極側吐出路P9およびアルカリイオン水吐出カラン32を通り、吐出口32aから外部に吐出するようになっている。一方、陽極室12eで生成された酸性水は、陽極側吐出路P10および酸性水吐出カラン33を通り排出口33aから外部に吐出するようになっている。
【0038】
また、本実施形態では、電解水生成装置1には制御部15が設けられており、開閉弁4、浄水給水弁9、昇圧ポンプ10および圧力開放弁13が、制御部15から供給される指令信号(電力)により制御されている。また、流量センサ8および操作・報知部31の操作信号が制御部15に送られるようになっている。さらに、電解槽12も制御部15の指令信号によって駆動するようになっており、電解槽12の陰極12bおよび陽極12dには、制御された電圧が印加されるようになっている。
【0039】
なお、本実施形態では、制御部15への電源の供給は、図示せぬ外部電源に接続される電源プラグ17から供給される商用交流電圧をトランス16にて直流電圧に変換した状態で行われる。
【0040】
ここで、本実施形態では、電解水生成装置1に、吐出路(陰極側吐出路P9および陽極側吐出路P10のうち少なくともいずれか一方)から分岐して導入路(導入路P3、陰極側導入路P7および陽極側導入路P8のいずれか)に連結される還流路P11を設けている。
【0041】
具体的には、陰極側吐出路P9のアルカリイオン水吐出カラン32へ向かう途中に分岐部D2を設けて分岐させ、導入路P3の途中に設けた合流部D32にて連結することで、還流路P11を設けている。
【0042】
さらに、還流路P11に、陰極側吐出路(吐出路)P9に導入されるアルカリイオン水(電解水)の少なくとも一部を還流路P11を介して導入路P3に還流させる循環ポンプ(還流手段)18を設けている。
【0043】
このように、還流路P11および循環ポンプ18を設けることで、陰極室12cで生成されたアルカリイオン水の少なくとも一部を再び導入路P3へ供給できるようにしている。
【0044】
また、本実施形態では、還流路P11に逆止弁19を設け、電気分解前の処理水(透過水)が還流路P11から逆流してアルカリイオン水吐出カラン32の吐出口32aから外部に吐出してしまわないようにしている。
【0045】
かかる構成を備える電解水生成装置1は、以下のように動作する。
【0046】
まず、吐水部3に設けられた操作・報知部31を操作し、浄水生成モードを選択すると、制御装置15により、給水路P1の開閉弁4が開かれる。そして、原水が原水配水管P0から給水路P1内に導入され、給水路P1内の第1から第3プレフィルタ5,6,7を通過しながら濾過されて浄水が生成される。このように、前処理を行うことで生成された浄水は、浄水給水弁9を通過して昇圧ポンプ10に至り、昇圧ポンプ10によって昇圧される。
【0047】
そして、昇圧された浄水がナノフィルタ11に導入される。なお、処理が行われた浄水の水量が所定値以下であると流量センサ8が検知した場合には、制御装置15が、給水路に異常が生じていると判断し、制御装置15によって開閉弁9が閉じられて昇圧ポンプ10が停止する。このとき、電解水生成装置1の異常が操作・報知部31に報知されるようになっている。
【0048】
そして、ナノフィルタ11に導入され、NF膜11aを透過して当該NF膜11aによって水中に溶存する有機物やイオンが取り除かれた処理水(透過水)が、導入路P3を通り、電解槽12へと供給される。なお、導入路P3内の浄水は、一部が陰極側導入路P7から陰極室12cに導入され、他が陽極側導入路P8から陽極室12eに導入される。
【0049】
一方、ナノフィルタ11に導入されるが、NF膜11aを透過しない水は、濃縮水として濃縮水排水路P4を通過し、外部に排出される。
【0050】
そして、電解槽12内に供給された処理水は、陰極12bおよび陽極12dに直流電圧を印加することで電気分解され、陰極室12cではアルカリイオン水が、陽極室12eでは酸性水が生成される。
【0051】
そして、陰極室12cで生成されたアルカリイオン水は、陰極側吐出路P9およびアルカリイオン水吐出カラン32を通り、吐出口32aから外部に吐出する。一方、陽極室12eで生成された酸性水は、陽極側吐出路P10および酸性水吐出カラン33を通り排出口33aから外部に吐出する。
【0052】
ところで、NF膜(逆浸透膜)11aで処理した処理水(透過水)は、原水と比較すると含有しているイオン成分が著しく少なくなっている。
【0053】
また、電解槽12内に供給された水は、陰極12bおよび陽極12dに印加された電圧により通電され電気分解されるが、このとき流れる電流値は電圧が一定であれば水の導電率に依存する。つまり、水の電気の流れやすさが、電気分解時に流れる電流値に影響する。そして、この導電率はイオン濃度に依存している。そのため、NF膜(逆浸透膜)11aを透過した処理水(透過水)は導電率が極めて低く、電気が流れにくい状態となっている。
【0054】
したがって、このまま電気分解しても陰極室12cで生成されるアルカリイオン水は、MF膜やUF膜等の膜で浄化した浄水に比べて低いpHにしかならず、弱アルカリ水しか得ることができない。
【0055】
そのため、導電率が極めて低い処理水(透過水)を電気分解する場合、電流値を上昇させてより高いpHの水を得るために、より高い電圧を印加するか、電極面積を拡大するか流量を少なくすることが考えられる。しかしながら、より高い電圧を印加したり、電極面積を拡大させたり流量を少なくしたりすると、電解水生成装置を大型化せざるを得ず使い勝手が非常に悪くなってしまう。
【0056】
そこで、本実施形態では、還流路P11および循環ポンプ18を設け、NF膜(逆浸透膜)11aで処理した処理水(透過水)を電気分解することで得られた低pHのアルカリイオン水の一部を、還流路P11を介して導入路P3へ還流させ、再度電解槽12にて電気分解させるようにした。
【0057】
このように、低pHのアルカリイオン水を含む処理水(透過水)を電気分解して得られるアルカリイオン水のpHは、処理水(透過水)のみを電気分解して得られるアルカリイオン水のpHよりも高くなる。
【0058】
そして、アルカリイオン水の一部を、還流路P11を介して導入路P3へ還流させ、繰り返し電気分解すれば、徐々にpHが高いアルカリイオン水の一部を電解槽12内に還流させることができ、高pHのアルカリイオン水をアルカリイオン水吐出カラン32の吐出口32aから外部に吐出できるようになる。
【0059】
なお、操作・報知部31の操作により通水を停止した場合には、制御装置11により開閉弁4および開閉弁9が閉じられ、昇圧ポンプ10が停止する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、NF膜(逆浸透膜)11aで分離した処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入し、当該処理水を電気分解することで電解水を生成している。このため、高度に浄化されて不純物の少ない水から電解水を生成することができる。そして、電解槽12で生成されたアルカリイオン水の一部(電解水の少なくとも一部)を、循環ポンプ(還流手段)18によって還流路P11から導入路P3へと還流させている。すなわち、電解槽12内に導入される処理水に比較的導電率の高いアルカリイオン水(電解水)を混合した水を電解槽12内で電気分解させるようにしている。そのため、導電率が低い処理水を用いて電気分解を行ったとしても、電気分解を行うにつれて生成されるアルカリイオン水(電解水)のpHを高く(強く)することができる。その結果、導電率が低い処理水を用いて所望のpH値のアルカリイオン水(電解水)を生成することができるようになる。
【0061】
また、本実施形態によれば、装置を大型化することなく、豊富な水量の不純物の少ないアルカリイオン水(電解水)を容易に得ることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Aは、基本的に上記第1実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Aは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0063】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0064】
そして、電解水生成装置1Aに、吐出路(陰極側吐出路P9および陽極側吐出路P10のうち少なくともいずれか一方)から分岐して導入路(導入路P3、陰極側導入路P7および陽極側導入路P8のいずれか)に連結される還流路P11を設けている。
【0065】
本実施形態にあっても、陰極側吐出路P9のアルカリイオン水吐出カラン32へ向かう途中に分岐部D2を設けて分岐させ、導入路P3の途中に設けた合流部D32にて連結することで、還流路P11を設けている。
【0066】
さらに、還流路P11に、陰極側吐出路(吐出路)P9に導入されるアルカリイオン水(電解水)の少なくとも一部を還流路P11を介して導入路P3に還流させる循環ポンプ(還流手段)18を設けている。
【0067】
そして、還流路P11に逆止弁19を設け、電気分解前の処理水(透過水)が還流路P11から逆流してアルカリイオン水吐出カラン32の吐出口32aから外部に吐出してしまわないようにしている。
【0068】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Aが、上記第1実施形態と主に異なる点は、ナノフィルタ(逆浸透濾過部)11と電解槽12の間に、NF膜(逆浸透膜)11aを透過した処理水(透過水)を一時的に貯留する貯留部20を設けた点にある。
【0069】
具体的には、図2に示すように、ナノフィルタ11の下流側に貯留部20が設けられており、導入路P3の貯留部20よりも下流側に配置した昇圧ポンプ21を作動させ、この貯留部20から処理水(透過水)を電解槽12に導入するようにしている。また、貯留部20の所定位置には、水位センサ20aが設けられており、貯留部20の所定位置まで貯水された際に、満水状態であることを検知できるようにしている。
【0070】
さらに、陰極側吐出路P9には、UV管22aを有する殺菌部22が設けられている。そして、貯留部20内の水を電解槽12にて電気分解することで得られるアルカリイオン水をアルカリイオン水吐出カラン32から吐出する前に、殺菌部22を通過させることで殺菌するようにしている。なお、殺菌部はUV管を用いるものに限らず、オゾン等他の殺菌手段を用いてもよい。このように、殺菌部22を設けることでより衛生的なアルカリイオン水を供給することができる。
【0071】
また、陰極側吐出路P9の殺菌部22よりも下流側には、陰極側吐水弁23が設けられており、陽極側吐出路P10には、陽極側吐水弁24が設けられている。
【0072】
なお、符号25は、貯留部20等からの漏水を検知する漏水センサである。
【0073】
また、操作・報知部31は、筐体2に設けられている。
【0074】
かかる構成を備える電解水生成装置1Aは、以下のように動作する。
【0075】
まず、水道管などの原水配水管P0に接続された給水路P1に設けられた開閉弁4を制御部15により開放させ、昇圧ポンプ10も稼動させる。こうして、第1〜第3プレフィルタ5,6,7およびナノフィルタ(逆浸透濾過部)11を介して生成された処理水(透過水)を貯留部20に貯留させる。
【0076】
このとき、予め所定位置に設けられた水位センサ20aにより、所定位置まで貯水されて満水状態になった場合には、制御手段15が開閉弁4を閉じ、昇圧ポンプ10を停止し、圧力開放弁13を所定時間開放した後閉じるようにしている。なお、開閉弁4を閉じる動作を、圧力開放弁13を所定時間開放した後に行い、NF膜(逆浸透膜)11aの1次側の濃縮水を一気に排出させてNF膜(逆浸透膜)11aへのスケール付着を防止するようにしてもよい。
【0077】
そして、アルカリイオン水を吐出させるために操作・報知部31を操作すると、昇圧ポンプ21と循環ポンプ(還流手段)18を動作させ、陽極側吐水弁24と陰極側吐水弁23を開放する。
【0078】
こうして、貯留部20内の処理水(透過水)が、導入路P3を通り、電解槽12へと供給される。
【0079】
そして、電解槽12内に供給された処理水(透過水)は、陰極12bおよび陽極12dに直流電圧を印加することで電気分解され、陰極室12cではアルカリイオン水が、陽極室12eでは酸性水が生成される。
【0080】
そして、陰極室12cで生成されたアルカリイオン水は、陰極側吐出路P9およびアルカリイオン水吐出カラン32を通り、吐出口32aから外部に吐出する。一方、陽極室12eで生成された酸性水は、陽極側吐出路P10および酸性水吐出カラン33を通り排出口33aから外部に吐出する。
【0081】
また、本実施形態にあっても、得られたアルカリイオン水の一部を、還流路P11を介して導入路P3へ還流させ、再度電解槽12に導入し、繰り返し電気分解を行うようにしている。
【0082】
こうして、所望のpH値のアルカリイオン水(電解水)をアルカリイオン水吐出カラン32の吐出口32aから外部に吐出できるようにしている。
【0083】
なお、操作・報知部31の停止操作を行うと、昇圧ポンプ21と循環ポンプ(還流手段)18が停止し、陽極側吐水弁24と陰極側吐水弁23が閉塞する。この時、陰極側吐水弁23を閉じた状態で所定期間昇圧ポンプ21を動作させ、陽極側吐水弁24を開放するようにして、逆電解を行い、電極を洗浄するようにしてもよい。
【0084】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0085】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Bは、基本的に上記第1実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Bは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0086】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0087】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Bが、上記第1実施形態と主に異なる点は、電解水生成装置1Bに、陰極側吐出路P9から分岐し、陰極側導入路P7に連結する陰極側還流路P12を設けた点にある。
【0088】
具体的には、陰極側吐出路P9のアルカリイオン水吐出カラン32へ向かう途中に分岐部D2を設けて分岐させ、陰極側導入路P7の途中に設けた合流部D4にて連結することで、陰極側還流路P12を設けている。
【0089】
すなわち、本実施形態では、陰極側吐出路P9に導入されるアルカリイオン水の少なくとも一部を、陰極室12cおよび陽極室12eに還流するのではなく、陰極室12cにのみ還流させるようにしている。
【0090】
さらに、陰極側還流路P12に、陰極側吐出路(吐出路)P9に導入されるアルカリイオン水(電解水)の少なくとも一部を陰極側還流路P12を介して陰極側導入路P7に還流させる循環ポンプ(還流手段)18を設けている。
【0091】
そして、陰極側還流路P12に逆止弁19を設け、電気分解前の処理水(透過水)が陰極側還流路P12から逆流してアルカリイオン水吐出カラン32の吐出口32aから外部に吐出してしまわないようにしている。
【0092】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、陰極側吐出路P9に導入されるアルカリイオン水の少なくとも一部を、陰極室12cにのみ還流させるようにしている。そのため、陰極室12cでのみ循環電解することとなり、陰極12bに接触する被電解水(処理水およびアルカリイオン水の混合水)をより高いpHとすることが可能となる。このように、pHが高い被電解水が陰極12bと接触して電気分解されるため、より効率よくアルカリイオン水のpHを上昇させることができる。
【0094】
なお、上記第2実施形態の構成に本実施形態を適用することも可能である。
【0095】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Cは、基本的に上記第3実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Cは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0096】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0097】
そして、電解水生成装置1Cに、陰極側吐出路P9から分岐し、陰極側導入路P7に連結する陰極側還流路P12を設けている。
【0098】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Cが、上記第3実施形態と主に異なる点は、図4に示すように、陽極側導入路P8に絞り部26を設けた点にある。
【0099】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、陽極側導入路P8に絞り部26を設けることで、陽極室12e内に流入する水の流量を少なくすることができる。その結果、酸性水の排水量を減少させることができる。このように、陽極側導入路P8に絞り部26を設けることで、酸性水の排水を電解槽12の入口で制限することができる。
【0101】
また、電解槽12内部における隔膜12aを介した差圧を陰極12b側で高くすることができるようになる。
【0102】
これにより、隔膜12aを介して酸性水とアルカリイオン水とが混ざってしまうのをより確実に抑制することができ、アルカリイオン水のpHが低下してしまうのをより確実に抑制することができる。また、アルカリイオン水と酸性水を合わせた全体流量を低く設定することができるため、節水効果を高めることも可能となる。
【0103】
なお、上記第2実施形態の構成に本実施形態を適用することも可能である。
【0104】
(第5実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Dは、基本的に上記第3実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Dは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0105】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0106】
そして、電解水生成装置1Cに、陰極側吐出路P9から分岐し、陰極側導入路P7に連結する陰極側還流路P12を設けている。
【0107】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Dが、上記第3実施形態と主に異なる点は、電解水生成装置1Dに、陽極側吐出路P10から分岐し、陽極側導入路P8に連結する陽極側還流路P13を設けた点にある。
【0108】
具体的には、陽極側吐出路P10の酸性水吐出カラン33へ向かう途中に分岐部D5を設けて分岐させ、陽極側導入路P8の途中に設けた合流部D6にて連結することで、陽極側還流路P13を設けている。
【0109】
すなわち、本実施形態では、陰極側吐出路P9に導入されるアルカリイオン水の少なくとも一部を、陰極室12cにのみ還流させるようにしている。
【0110】
さらに、陽極側吐出路P10に導入される酸性水の少なくとも一部を、陽極室12eにのみ還流させるようにしている。
【0111】
さらに、陽極側還流路P13に、陽極側吐出路(吐出路)P10に導入される酸性水(電解水)の少なくとも一部を陽極側還流路P13を介して陽極側導入路P8に還流させる循環ポンプ(還流手段)27を設けている。
【0112】
そして、陽極側還流路P13に逆止弁28を設け、電気分解前の処理水(透過水)が陽極側還流路P13から逆流して酸性水吐出カラン33の吐出口33aから外部に吐出してしまわないようにしている。
【0113】
以上の本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、得られたアルカリイオン水の一部を、陰極側還流路P12を介して陰極側導入路P7へ還流させ、再度電解槽12に導入し、繰り返し電気分解を行うようにしている。
【0115】
一方、得られた酸性水の一部を、陽極側還流路P13を介して陽極側導入路P8へ還流させ、再度電解槽12に導入し、繰り返し電気分解を行うようにしている。
【0116】
このように、本実施形態では、導電率を上昇させた電解水の一部を、各々が混合して中和によりpHが低下してしまうことなく、再度電解槽12にて電気分解させるようにしている。そのため、電極間に流れる電流値をより多くすることができ、結果的にアルカリ水のpHを高めることができるようになる。
【0117】
また、電解槽12で得られたアルカリイオン水および酸性水をそれぞれ別個に還流させるようにすることで、電解効率をさらに向上することができる。
【0118】
また、本実施形態によれば、酸性水の一部を再利用することができ、酸性水の排水量を減少させることができる。
【0119】
なお、上記第2実施形態の構成に本実施形態を適用することも可能である。
【0120】
(第6実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Eは、基本的に上記第5実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Eは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0121】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0122】
そして、得られたアルカリイオン水の一部を、陰極側還流路P12を介して陰極側導入路P7へ還流させ、再度電解槽12に導入し、繰り返し電気分解を行うようにしている。
【0123】
一方、得られた酸性水の一部を、陽極側還流路P13を介して陽極側導入路P8へ還流させ、再度電解槽12に導入し、繰り返し電気分解を行うようにしている。
【0124】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Eは、還流手段として、循環ポンプ18,27ではなく、ベンチュリ管41,42を用いた点が、上記第5実施形態と主に異なっている。
【0125】
ベンチュリ管41,42は、陰極側導入路P7の途中に設けた合流部D3および陽極側導入路P8の途中に設けた合流部D6にそれぞれ設けられている。ベンチュリ管41,42は、図6(b)に示すように、導入路P3からの処理水が導入される流入口41a、42aと、ベンチュリ管41,42内の水を陰極側導入路P7および陽極側導入路P8の下流側にそれぞれ導入する流出口41b、42bと、を備えている。
【0126】
そして、ベンチュリ管41,42の内部には、下流側に向けて徐々に縮径する絞り部41c、42cと、絞り部に連結される細径部41d、42dと、が形成されている。
【0127】
このように、絞り部41c、42cおよび細径部41d、42dを設けることで、処理水が細径部41d、42dを通過する際に、処理水の流速がv1からv2へと変化し、細径部41d、42dの下流側に形成した混合部41e、42eが負圧状態となる。
【0128】
そして、陰極側還流路P12および陽極側還流路P13を、混合部41e、42eに連通する吸入口41f、42fに接続することで、処理水が細径部41d、42dを通過する際に、陰極側還流路P12および陽極側還流路P13内の電解水が混合部41e、42eに引き寄せられるようにしている。
【0129】
以上の本実施形態によっても、上記第5実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0130】
なお、上記第2実施形態の構成に本実施形態を適用することも可能である。
【0131】
(第7実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Fは、基本的に上記第1実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Fは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0132】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0133】
そして、電解水生成装置1Fに、吐出路(陰極側吐出路P9および陽極側吐出路P10のうち少なくともいずれか一方)から分岐して導入路(導入路P3、陰極側導入路P7および陽極側導入路P8のいずれか)に連結される還流路P11を設けている。
【0134】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Fが、上記第1実施形態と主に異なる点は、電解槽12内部の陰極12bと隔膜12aおよび陽極12dと隔膜12aの間にスペーサ43を設けた点にある。
【0135】
また、本実施形態では、還流路P11と陰極側吐出路P9との分岐部D2に、図8(a)に示すような気液分離手段44を設けている。
【0136】
気液分離手段44は、内径の大きい気液分離部44aを備えている。そして、気液分離部44a内には、下方から上方に向けて突出するように陰極側吐出路P9が設けられている。この陰極側吐出路P9の上端には、アルカリイオン水吐出口44bが形成されている。また、気液分離部44a内には、上方から下方に向けて突出するように還流路P11が設けられている。この還流路P11の下端には、アルカリイオン水を還流路P11に導入する導入口44cが形成されている。そして、気液分離部44aの上部側方には、陰極側吐出路P9が連通しており、この陰極側吐出路P9の下流側がアルカリイオン水吐出カラン32に連通している。
【0137】
かかる構成とすることで、電解槽12で生成されたアルカリイオン水が、陰極側吐出路P9のアルカリイオン水吐出口44bから気液分離部44aに到達すると、アルカリイオン水と気泡の上昇速度差により、気泡が上方に流れることとなる。一方、アルカリイオン水は、アルカリイオン水吐出口44bから下方に流れるように吐出することとなる。そのため、気泡の少ないアルカリイオン水が導入口44cから還流路P11に導入されることとなる。
【0138】
なお、気液分離手段44の構成は、図8(a)のものに限らず、図8(b)や図8(c)のような構成とすることも可能である。
【0139】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0140】
また、本実施形態のように、スペーサ43を設けることで、陰極12bと隔膜12aとの間のアルカリイオン水や陽極12dと隔膜12aとの間の酸性水が流れる部分の断面積を減少させることができる。このように、スペーサ43を設けることで、陰極12bと陽極12dとの間で生じる気泡を上方に確実に流すスペースを確保しつつ、アルカリイオン水や酸性水の流速を上昇させることができるようになる。
【0141】
ところで、電解槽12内の陰極12bと陽極12d間に所定電圧を印加させた場合、各々の電極表面には水の電気分解による気泡が発生する。具体的には陰極12bでは主として水素ガス、陽極12dでは主として酸素ガスが発生する(図10参照)。
【0142】
この気泡は電極表面に留まることが多く、気泡どうしが集まってある程度大きくなって電極表面から剥がれて上昇する。
【0143】
しかしながら、この気泡は、電気分解時には通電抵抗となり、電解性能を低下させることが多く、できるだけ速やかに排出させるのが望ましい。
【0144】
特に、図10に示すように、スペーサがない場合には、電極表面に付着した気泡は、剥離した後、他の気泡と集合し大きくなりながら流れるが、このときの電極間の電気抵抗値は、気泡により増加することとなる。したがって、気泡が長時間滞留したり、電極間に数多く滞留するとその抵抗値はさらに大きくなるため、電解効率が著しく低下してしまう。
【0145】
そこで、電極表面の流速を上げて、水流による気泡の剥離を促進するため、陰極12bと隔膜12aの距離、陽極12dと隔膜12aの距離を短くすることで、同一流量の場合に流速を上げるようにすることが考えられる。しかしながら、隔膜12aは柔軟な多孔質膜であるため、波を打った状態になるおそれがあり、所定以上に距離を短くすると隔膜12aが陰極12bもしくは陽極12dに接触してしまうおそれがある。その結果、陰極12bもしくは陽極12dの一部に水と接触しない部分が生じてしまったり、流れが不均一となってしまったりして、電解効率が低下してしまうおそれがある。
【0146】
そこで、図9に示すように、陰極12bと隔膜12aおよび陽極12dと隔膜12aの間にスペーサ43を設け、電極と隔膜間の水流方向に対して垂直な面の断面積を小さくすることで、同一流量でも流速を上げて、水流による気泡の剥離効果をより上げることができるようにした。
【0147】
このように、電極表面に付着する気泡の剥離効果が大きくなることで、電解面に生じた気泡を短時間で剥離させ、電解槽12外へ排出させることができるようになるため、気泡によって電極間の電気抵抗値が増大してしまうのを抑制することができるようになる。
【0148】
また、本実施形態では、還流路P11と陰極側吐出路P9との分岐部D2に、気液分離手段44を設け、還流路P11に導入されるアルカリイオン水中に混入する気泡が少なくなるようにしている。その結果、還流路P11から電解槽12内部に導入されるアルカリイオン水に気泡が混入してしまうのを抑制することができ、電極間の電気抵抗値が増大してしまうのをより一層抑制することができるようになる。
【0149】
なお、上記第2〜第6実施形態の構成に本実施形態を適用することも可能である。
【0150】
(第8実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Gは、基本的に上記第7実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、電解水生成装置1Gは、筐体2と、筐体2に取り付けられた吐水部3と、を備えている。
【0151】
また、NF膜(逆浸透膜)11aを用いたナノフィルタ(逆浸透濾過部)11にて分離された処理水および濃縮水のうち処理水のみを電解槽12に導入させるようにしている。
【0152】
そして、電解水生成装置1Gに、還流路P11を設け、陰極室12cで生成されたアルカリイオン水の少なくとも一部を再び導入路P3へ供給できるようにしている。
【0153】
さらに、電解槽12内部の陰極12bと隔膜12aおよび陽極12dと隔膜12aの間にスペーサ43を設けている。
【0154】
ここで、本実施形態にかかる電解水生成装置1Gが、上記第7実施形態と主に異なる点は、電解槽12内において、気泡が浮上する方向と交差する方向に水を流すようにした点にある。
【0155】
具体的には、図11および図12に示すように、電解槽12内部の水流方向が横方向となるように電解槽12を配置している。こうすれば、気泡が自身の浮力により上方へと浮上するため、気泡が浮上する方向と交差する方向に水が流れることとなる。
【0156】
このとき、電極表面が水平方向に対して略垂直方向を向くように並べるようにするのが好適である。こうすれば、陰極12bと隔膜12aおよび陽極12dと隔膜12aの間の空間で、電極(陰極12bおよび陽極12d)や隔膜12aに邪魔されることなく気泡が上方に浮上できるようになる。なお、図12(b)の矢印Fwは、水が流れる方向を示しており、矢印Faは、気泡が浮上する方向を示している。
【0157】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0158】
また、本実施形態では、電解槽12内において、気泡が浮上する方向と交差する方向に水を流すようにし、電解槽12内部の流れにより気泡を水流から分離できるようにしている。
【0159】
ところで、電解槽12内の陰極12bと陽極12d間に所定電圧を印加させた場合、各々の電極表面には水の電気分解による気泡が発生する。具体的には陰極12bでは主として水素ガス、陽極12dでは主として酸素ガスが発生する(図10参照)。
【0160】
このガスは、電極間に存在すると電極間の電気抵抗を高めるため電解反応を阻害するが、電解槽12内部の水流により押し流されるため、アルカリイオン水や酸性水とともに電解槽12外へ排出される。
【0161】
しかし、電解槽12外へ排出された気泡が還流路P11に導入されると、循環手段の機能を阻害してしまう。
【0162】
例えば、循環手段として循環ポンプを使用した場合、ポンプの吐出圧が低下してポンプ効率が低下してしまう。
【0163】
また、ベンチュリ管を使用した場合には、気体が吸入口から混入することで吸引力が低下してしまう。
【0164】
このように、いずれの場合であっても、気泡が還流路P11に導入されると循環流量が低下してしまう。
【0165】
さらに、還流路P11に混入した気泡は、再度電解槽12内部に流入し、電極間を通過する際に、電極間の電気抵抗を増加させることとなる。
【0166】
しかしながら、本実施形態では、電解槽12内において、気泡が浮上する方向と交差する方向に水を流すようにし、電解槽12内部の流れにより気泡を水流から分離できるようになっている。
【0167】
そのため、水流が略水平方向に流れるのに対し、気泡は自身の浮力により上方へ浮上しながら水流とともに水平方向へと流れるようになる。
【0168】
また、電解槽12の陰極側導入路P7と略反対面の上方にアルカリイオン水吐出カラン32に連通する陰極側吐出路P9を設け、陰極側吐出路P9と略同一面の下方に還流路P11を設けている。
【0169】
その結果、気泡を多く含むアルカリイオン水を陰極側吐出路P9からアルカリイオン水吐出カラン32へと流出させ、気泡が少ないアルカリイオン水を還流路P11から還流させるようにすることができるようになる。したがって、還流路P11を介して電解槽12内に還流されるアルカリイオン水に混入する気泡が少なくなり、気泡による循環手段の効率低下を抑制することができる上、電極間の電気抵抗増等により電解効率が低下してしまうのを抑制することができる。
【0170】
このように、本実施形態によれば、容易に被電解水と気泡とを分離することができる上、気泡の混入の割合が多いアルカリイオン水を吐出させ、気泡の少ないアルカリイオン水を循環させることができる。その結果、高効率での電気分解が可能な電解水生成装置1Gを得ることができる。
【0171】
ここで、本実施形態の変形例を説明する。
【0172】
(第1変形例)
本変形例では、電解槽12内に整流手段を設け、気泡が浮上する方向と交差する方向に水が流れるようにしている。具体的には、電解槽12内部の電極と隔膜間に設けるスペーサ43に気泡浮上の流れと被電解水の流れが交差するようにガイドを付設している。そして、かかる構成とすることで、気泡の電極面からの剥離及び浮上をより促進させるとともに、被電解水流は気泡と交差するように流すことにより、気泡の混入の少ないアルカリイオン水をアルカリ循環路に循環させることができるようにしている。
【0173】
本変形例では、図13に示すように、スペーサ43を縦に並んだ縦リブ43aと横に並んだ横リブ43bとを交差するように接合させた形状としている。
【0174】
そして、図12(a)に示すような電解槽12断面において、電極(陰極12bおよび陽極12d)側に縦リブ面が当接し、横リブが隔膜12a表面に当接するように、スペーサ43を配置している。
【0175】
かかる構成とすることで、電極表面では気泡の上方向への浮上が促され、隔膜12a表面では被電解水の横方向への流れが促される。
【0176】
このように、本変形例によれば、電極(陰極12bおよび陽極12d)と隔膜12a間に配置したスペーサ43に、気泡および水流の案内機能を設けている。そのため、気泡の電極(陰極12bおよび陽極12d)からの剥離と浮上が促され、気泡の浮上方向と交差する方向に水流を案内することができ、電解槽12内部から気泡を速やかに排出することができる上、還流路P11を介して電解槽12内に還流されるアルカリイオン水に混入する気泡をより一層少なくすることができる。
【0177】
このように、本変形例では、スペーサ43が整流手段を兼ねている。
【0178】
(第2変形例)
本変形例にあっても、電解槽12内に整流手段を設け、気泡が浮上する方向と交差する方向に水が流れるようにしている。
【0179】
具体的には、本変形例にかかるスペーサ43は、図14に示すように、電極(陰極12bおよび陽極12d)側のリブ43aが下流側に向かうにつれて上方に位置するように配置(図14の右側が上となるように配置)され、隔膜12a側のリブ43bが下流側に向かうにつれて下方に位置するように配置(図14の右側が下となるように配置)された状態で接合させた形状をしている。
【0180】
かかる構成とすることで、電極(陰極12bおよび陽極12d)側では、リブ43aによって、被電解水流を妨げることなく、水流による電極からの気泡の剥離、浮上をより促進させ、電解槽12の流出側上方に設けた陰極側吐出路P9へ導くことができる。また、隔膜12a側では被電解水を斜め下方に流すことで、気泡の上昇とは交差する方向に水流を案内し、より気泡混入の少ない被電解水を電解槽12の流出側の下方に設けた還流路P11へと容易に導くことができる。
【0181】
このように、本変形例においても、スペーサ43が整流手段を兼ねている。
【0182】
(第3変形例)
本変形例では、電解槽12内に乱流手段を設け、電極からの気泡の剥離、浮上をより促進させるようにしている。
【0183】
具体的には、略平らな本体部(多孔質フィルムまたはプレート)43c表面に所定高さの突起43dを所定間隔ごとに設けることで、スペーサ43を構成している。
【0184】
そして、突起43dを設けたスペーサ43を、突起43dが形成されている側が電極面に当接するように配置している。こうして、被電解水が突起43dによって流れを妨げられながら流れるため、突起近傍において乱流が生じ、この乱流によって電極表面からの気泡の剥離が促進され、気泡をより速やかに剥離して浮上させることができる。
【0185】
このように、本変形例では、スペーサ43が乱流手段を兼ねている。
【0186】
(第4変形例)
本変形例にあっても、電解槽12内に乱流手段を設け、電極からの気泡の剥離、浮上をより促進させるようにしている。
【0187】
具体的には、略平らな本体部(多孔質フィルムまたはプレート)43c表面に所定高さの突起43eを連続して斜めに設けることで、スペーサ43を構成している。
【0188】
このような突起43eを設けることによっても、上記第3変形例と同様に、突起近傍において乱流が生じ、この乱流によって電極表面からの気泡の剥離が促進され、気泡をより速やかに剥離して浮上させることができる。
【0189】
このように、本変形例においても、スペーサ43が乱流手段を兼ねている。
【0190】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0191】
例えば、上記各実施形態のように逆浸透膜を用いた場合、その素材から成分の溶出等が生じる場合があるため、必要に応じポストフィルタを設けてもよい。
【0192】
また、電解槽やその他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0193】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 電解水生成装置
11 ナノフィルタ(逆浸透濾過部)
11a NF膜(逆浸透膜)
12 電解槽
12b 陰極
12d 陽極
18 循環ポンプ(還流手段)
41,42 ベンチュリ管(還流手段)
43 スペーサ
P3 導入路
P7 陰極側導入路
P8 陽極側導入路
P9 陰極側吐出路(吐出路)
P10 陽極側吐出路(吐出路)
P11 還流路
P12 陰極側還流路
P13 陽極側還流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水と濃縮水とを分離する逆浸透膜を用いた逆浸透濾過部と、
少なくとも一対の陰極および陽極を有し、前記処理水および濃縮水のうち処理水のみを導入して電解水を生成する電解槽と、
前記処理水を前記電解槽内に導入する導入路と、
前記電解槽内で生成された電解水が導入される吐出路と、
前記電解槽から吐出される電解水の少なくとも一部が導入され、前記導入路に連結する還流路と、
前記電解槽から吐出される電解水の少なくとも一部を前記還流路を介して前記導入路に還流させる還流手段と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記電解槽は、前記陰極が配置される陰極室を備えており、
前記導入路は、前記透過水を前記陰極室に導入する陰極側導入路を備え、前記吐出路は、前記陰極室で生成されるアルカリイオン水を吐出する陰極側吐出路を備えており、
前記還流路は、前記陰極側吐出路から分岐し、前記陰極側導入路に連結する陰極側還流路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記電解槽は、前記陽極が配置される陽極室を備えており、
前記導入路は、前記透過水を前記陽極室に導入する陽極側導入路を備え、前記吐出路は、前記陽極室で生成される酸性水を吐出する陽極側吐出路を備えており、
前記還流路は、前記陽極側吐出路から分岐し、前記陽極側導入路に連結する陽極側還流路を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記電解槽は、陰極室と陽極室とが隔膜によって仕切られており、少なくとも陰極室内の陰極と前記隔膜との間にスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電解槽内において、気泡が浮上する方向と交差する方向に水を流すようにしたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記電解槽内に整流手段を設け、気泡が浮上する方向と交差する方向に水が流れるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記電解槽内に、乱流を発生させる乱流発生手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−709(P2013−709A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136951(P2011−136951)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】