説明

電解液濃度測定装置

【課題】 電解槽内の電解液の濃度を簡単かつ的確に測定する。
【解決手段】 交流信号供給回路55及び通電回路16は、電極15a,15b間に電圧を印加して電解槽10内の電解液中に電流を流す。磁気センサ20は、電解槽10の中央位置に移動されて、中央位置にて電解液中に流れる電流によって発生される磁界を検出する。コントローラ60は、センサ信号取出回路56及びロックインアンプ57と協働して、磁気センサ20による検出信号を取込んで、前記中央位置をX方向に流れる電流の大きさを検出する。そして、予め記憶されていて、前記中央位置にて電解液中を流れる電流の大きさと、電解液の濃度との関係を表すテーブルを参照して、前記検出された電流の大きさに基づいて電解液の濃度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を備えるとともに電解液を収容した電解槽を有する電解装置に適用され、電解液の濃度を測定する電解液濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解液を収容した電解槽の電極間に通電して電気分解を起こさせ、苛性ソーダ、次亜塩素酸などの物質を製造したり、電極を構成する物質をメッキしたりするといった電解装置はよく知られている。このような電解装置において、電気分解が進行すると電解液の濃度は下がるため、電解液の濃度を検出し、電解液の濃度が設定された範囲内になるように電解液を補充することが行われている。
【0003】
この電解液の濃度に関しては、例えば下記特許文献1には、電極間に一定の電流を流して電極間に発生する電圧を検出し、検出電圧は電極間の抵抗に比例すること、及び電極間の抵抗は電解液の濃度と一定の相関関係(すなわち、濃度が低下すると電極間の抵抗が増大するという相関)を有することに鑑みて、前記検出電圧から電解液の濃度を検出することが示されている。また、下記特許文献1には、電極間に一定の電圧を印加して電極間に流れる電流を検出し、検出電流は電極間の抵抗に反比例すること、及び電極間の抵抗は電解液の濃度と前記相関関係を有することに鑑みて、前記検出電流から電解液の濃度を検出することも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−218271号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、電解槽に収容された電解液の量が変化すると、電解液の濃度は的確に検出されない。すなわち、電解槽に収容された電解液の量が変化すると、電極間の抵抗は変化する。具体的には、電解液が減少すれば、電極間の抵抗は増加する。したがって、上記従来の方法のように、電解液の濃度と電極間の抵抗との相関関係に基づいて電極間の電圧又は電流を用いて電解液の濃度を検出した場合には、電解液の量の変化が電極間の抵抗の変化をもたらすので、電解液の濃度が的確に検出されない。これを解決するためには、電解液の量に応じて変化する電圧又は電流と電解液の濃度との関係を求めておき、電解液の量も考慮して検出した電圧又は電流を用いて電解液の濃度を検出するか、又は電解液の量を常に一定に保っておいて、検出した電圧又は電流を用いて電解液の濃度を検出するようにすることも考えられる。しかし、これらの場合には、電解液の量に応じて変化する電圧又は電流と電解液の濃度との関係を用意したり、電解液の量が常に一定になるように制御する必要があり、手間とコストがかかる。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、電極を備えるとともに電解液を収容した電解槽において、簡単かつ的確に電解液の濃度を測定する電解液濃度測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、一対の電極(15a,15b)を備えるとともに電解液を収容した電解槽(10)を有する電解装置に適用され、電解槽内の電解液の濃度を測定する電解液濃度測定装置において、一対の電極間に電圧を印加して電解液中に電流を流す電圧印加手段(16,55)と、電圧印加手段による電圧の印加により、電解液中の所定位置に流れる電流によって発生する磁界の強さを検出する第1磁界検出手段(20,56,57,60,S204〜S218,S302〜S308)と、予め記憶されていて、電解液中の所定位置に流れる電流の大きさ又は前記電流の大きさに対応した磁界の強さと、電解液の濃度との関係を用いて、第1磁界検出手段によって検出された磁界の強さ又は前記検出された磁界の強さに対応した電流の大きさに基づいて電解液の濃度を検出する電解液濃度検出手段(60,S310〜S314)とを備えたことにある。
【0008】
この場合、第1磁界検出手段を、磁界の強さに応じた電気信号を出力する磁気センサと、磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得する磁界強さ取得手段とで構成するとよい。そして、1つの磁気センサを電解槽に対向する所定位置に固定配置しておいて、磁界強さ取得手段がこの1つの磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得したり、複数の磁気センサを電解槽に対向する複数の位置にそれぞれ固定配置しておいて、磁界強さ取得手段が所定位置に配置された前記複数の磁気センサの中の1つの磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得したりするとよい。また、1つ又は複数の磁気センサを移動手段で移動できるようにしておき、1つの磁気センサ又は複数の磁気センサのうちの1つの磁気センサを移動手段で、前記所定位置に移動させて、磁界強さ取得手段が所定位置に移動された1つの磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得したりしてもよい。これらの場合、前記所定位置は、例えば、1対の電極間の中央であり、かつ1対の電極の長さ方向の中央である位置であって、電解槽に対向する位置である。
【0009】
電解液の抵抗は電解液の濃度にほぼ反比例するので、電極間に一定の電圧を印加しておけば、電解液中を流れる電流の大きさは電解液の濃度にほぼ比例する。ここで、電解液中の所定位置に流れる電流の大きさは所定面積中を流れる電流密度に対応するので、電解液の量が変化しても、電解液中の所定位置に流れる電流の大きさと電解液の濃度との前記比例関係は変化しない。また、電解液中の所定位置に流れる電流の大きさは、前記所定位置に対向する位置の磁界の強さに比例する。この理論に基づいて、上記のように構成した本発明において、電解液濃度検出手段が、予め記憶されていて、電解液中の所定位置に流れる電流の大きさ又は前記電流の大きさに対応した磁界の強さと、電解液の濃度との関係を用いて、第1磁界検出手段によって検出された磁界の強さ又は前記検出された磁界の強さに対応した電流の大きさに基づいて電解液の濃度を検出する。その結果、前記本発明の特徴によれば、電解液の量に応じて電圧又は電流と電解液の濃度との関係を用意したり、電解液の量を常に一定に保ったりする必要もなく、簡単かつ的確に電解液の濃度を測定することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流によって発生する磁界の強さを検出する第2磁界検出手段(20,56,57,60,S210,S212,S240〜S292,S402〜S410,S416〜S424)を備えたことにある。
【0011】
この場合も、第2磁界検出手段を、磁界の強さに応じた電気信号を出力する磁気センサと、磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得する磁界強さ取得手段とで構成するとよい。そして、複数の磁気センサを電解槽に対向する複数の位置であって、一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の位置にそれぞれ固定配置しておいて、磁界強さ取得手段が前記複数の磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さをそれぞれ取得するとよい。また、1つ又は複数の磁気センサを移動手段で移動できるようにしておき、1つの磁気センサ又は複数の磁気センサを移動手段で、電解槽に対向する複数の位置であって、一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の位置に移動させて、磁界強さ取得手段が移動させた複数の位置において磁気センサからの電気信号に基づいて磁界の強さを取得してもよい。
【0012】
この本発明の他の特徴においては、一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流によって発生する磁界の強さが検出される。そして、この磁界の強さは、前記複数の箇所に対向する電解液中を流れる電流の大きさに比例する。通常の場合のように、1対の電極が正常であれば、電解液中を流れる電流の分布は1対の電極間の中心位置に対して対称となる。しかし、1対の電極の表面に異常が発生すると(例えば、変質又は異物質の付着によって電流が流れない箇所が発生したり、絶縁部分が剥がれたりすると)、電解液中を流れる電流の分布が一対の電極間の中心位置に対して対称ではなくなる。したがって、前記本発明の他の特徴によれば、一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流によって発生する磁界の強さが検出されるので、電極の異常を検出できるようになる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、第2磁界検出手段によって検出された複数の箇所における磁界の強さから、一対の電極間の中心位置に対する磁界の分布の対称性を表す評価値を計算する対称性評価値計算手段(60,S410〜S414,S430〜S452)と、対称性評価値計算手段によって計算された評価値に応じて一対の電極の異常を判定する電極異常判定手段(60,S456)とを備えたことにある。これによれば、電極における異常の発生が自動的に検出されるようになり、作業者にとって便利である。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、第2磁界検出手段によって検出された複数の箇所における磁界の強さに関する情報を表示する表示手段(60,62,S454)を備えたことにある。これによれば、作業者は、磁界の強さに関する情報の表示を見て、一対の電極間の中心位置に対する磁界の分布の対称性を視覚的に判断することにより、電極における異常の発生を簡単に発見できるようになり、作業者にとって便利である。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、電圧印加手段は所定の周期で大きさが変化する電圧を印加し、第1磁界検出手段は前記所定の周期と等しい周期で強度が変化する磁界の強さを検出することにある。この本発明の他の特徴においては、所定周期で変化する磁界の強さのみが検出され、比較的簡単な構成で、外部磁界の影響を受けないようにして対象とする磁界の強さを検出でき、装置のコストを抑えたうえで、外部磁界が一様になるようにする必要もなく、電解液の濃度を高精度で検出できる。
【0016】
さらに、本発明の他の特徴は、電圧印加手段は所定の周期で大きさが変化する電圧を印加し、第2磁界検出手段は前記所定の周期と等しい周期で強度が変化する磁界の強さを検出することにある。この本発明の他の特徴においても、所定周期で変化する磁界の強さのみが検出され、比較的簡単な構成で、外部磁界の影響を受けないようにして対象とする磁界の強さを検出でき、装置のコストを抑えたうえで、外部磁界が一様になるようにする必要もなく、一対の電極間の中心位置に対する磁界の分布の対称性を高精度で検出することができるようになる。その結果、電極における異常の発生も高精度で発見できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電解装置に適用された本発明の一実施形態に係る電解液濃度測定装置の全体構成図である。
【図2】図1の磁気センサの移動機構の具体例を示す概略斜視図である。
【図3】図1の磁気センサ及びセンサ信号取出回路の詳細回路ブロック図である。
【図4】図1のロックインアンプの詳細回路ブロック図である。
【図5A】図1のコントローラによって実行されるテーブル作成プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図5B】前記テーブル作成プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図6A】図1のコントローラによって実行される電解装置作動制御プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図6B】前記電解装置作動制御プログラムの中間部分を示すフローチャートである。
【図6C】前記電解装置作動制御プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図7】図6Aの電解液濃度計算ルーチンを示すフローチャートである。
【図8A】図6Cの対称性評価ルーチンの前半部分を示すフローチャートである。
【図8B】前記対称性評価ルーチンの後半部分を示すフローチャートである。
【図9】磁気センサによる電解槽の走査態様を説明するための説明図である。
【図10】電流の大きさと電解液の濃度との関係を示すグラフである。
【図11】電解液中を流れる電流の大きさの分布状態の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る電解装置に適用された電解液濃度測定装置について図面を用いて説明する。図1は、電解装置と電解液濃度測定装置を概略的に示している。まず、電解装置について説明すると、電解装置は電解槽10を備えている。電解槽10は、方形状に形成されていて、供給装置11から供給される所定の濃度の電解液を蓄えるようになっている。供給装置11は、電解液タンク12に蓄えられている濃い電解液(例えば、飽和電解液)と、給水タンク13に蓄えられている水とを電解槽10に供給する。この濃い電解液及び水の電解槽10への供給は、制御装置14によって制御される。
【0019】
電解槽10には一対の電極15a,15bが設けられている。電極15a,15bには通電回路16が接続されている。通電回路16は、制御装置14によって制御され、電極15a、15bのうちの一方の電極に正電圧を印加し、他方の電極を接地する。また、通電回路16は、後述する交流信号供給回路55から交流信号が入力された場合には、前記正電圧に前記交流信号を重畳した信号を前記一方の電極に出力する。制御装置14は、コンピュータ装置、入力スイッチ、表示器などで構成され、供給装置11及び通電回路16を制御する。また、この制御装置14は、後述するコントローラ60の制御下にもある。
【0020】
次に、電解液濃度測定装置について説明する。電解液濃度測定装置は、図1及び図2に示すように、磁気センサ20を支持固定するセンサ支持台21を有し、センサ支持台21は、Y方向スライド機構30によってY方向(図示上下方向)に移動するとともに、X方向スライド機構40によってX方向(図示左右方向)に移動する。センサ支持台21は、方形状の平板で構成されて、上面にて磁気センサ20を支持固定する。このセンサ支持台21は、X方向スライド機構30の一部を構成する方形状の移動部材31により支持されている。この移動部材31には、センサ支持台21を図2の左右方向に変位させて磁気センサ20の図1の紙面垂直方向位置を調整する調整機構(図示しない)が設けられており、調整つまみ32(図1にて省略)の操作によりセンサ支持台21が前記紙面垂直方向に位置調整されるようになっている。
【0021】
移動部材31の裏面には、X方向に所定の幅を有する凸部31aが設けられている。この凸部31aは、Y方向に延設された支持部材33の上面に設けた溝33aに侵入して、溝33a内をY方向にスライドするようになっている。支持部材33の溝33a内には、Y方向に延設されて移動部材31の凸部31aを貫通する雄ねじ34が収容されている。移動部材31の凸部31a内には、雄ねじ34に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ34の回転により、移動部材31がY方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ34と移動部材31に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ34の一端は、支持部材33の一端に組み付けたY方向モータ35の回転軸に連結され、雄ねじ34の他端は支持部材33の他端に回転可能に支持されている。これにより、Y方向モータ35の回転により雄ねじ34が軸線周りに回転して、移動部材31、センサ支持台21及び磁気センサ20がY方向に移動する。
【0022】
支持部材33のY方向の両端近傍部の裏面には、Y方向に所定の幅を有する凸部33b,33cがそれぞれ設けられている。これらの凸部33b、33cは、X方向にそれぞれ延設された支持部材41,42の表面に設けた溝41a,42aに侵入して、溝41a,42a内をX方向にスライドするようになっている。なお、溝41a,42a内には、凸部33b、33cをスライドし易くするために、ローラが設けられている。これらの支持部材41,42は、X方向両端にて、Y方向に延設された連結部材43,44によって一体的に連結されている。
【0023】
連結部材43,44のY方向中央位置には、X方向に延設されて両端を連結部材43,44に一体的に連結された支持部材45が設けられている。支持部材45の表面には、X方向に延設された溝45aが設けられている。支持部材33のY方向中央位置の裏面には、Y方向に所定の幅を有する凸部33dが設けられている。この凸部33dは、支持部材45の溝45a内に侵入して、溝45a内をY方向にスライドするようになっている。支持部材45の溝45a内には、X方向に延設されて支持部材33の凸部33dを貫通する雄ねじ46が収容されている。支持部材33の凸部33d内には、雄ねじ46に螺合した図示しないナットが組み込まれており、雄ねじ46の回転により、支持部材33がX方向に移動するようになっている。すなわち、雄ねじ46と支持部材33に組み込まれたナットにより、ボールねじ機構が構成されている。雄ねじ46の一端は、支持部材45の一端に組み付けたX方向モータ47の回転軸に連結され、雄ねじ46の他端は支持部材45の他端に回転可能に支持されている。これにより、X方向モータ47の回転により雄ねじ46が軸線周りに回転して、支持部材33が移動部材31、センサ支持台21及び磁気センサ20と共にX方向に移動する。
【0024】
X方向モータ47内には、X方向モータ47の回転を検出して、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ47aが組み込まれている。この回転信号は、X方向モータ47が所定の微少角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に切替えるパルス列信号であって、回転方向を識別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号とB相信号とで構成される。回転信号は、X方向位置検出回路51及びX方向フィードモータ制御回路52に出力される。X方向位置検出回路51は、前記回転信号のパルス数をX方向モータ47の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からX方向モータ47による電解槽10に対するセンサ支持台21のX方向位置(すなわち磁気センサ20のX方向位置)を検出し、検出したX方向位置をX方向フィードモータ制御回路52及び後述するコントローラ60に出力する。X方向フィードモータ制御回路52は、コントローラ60の指示により、X方向モータ47の駆動及び停止を制御する。このX方向モータ47の駆動時においては、X方向フィードモータ制御回路52は、エンコーダ47aからの回転信号を用いてX方向モータ47を所定の回転速度で回転させる。
【0025】
X方向位置検出回路51におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ60の指示によって行われる。すなわち、コントローラ60は、電源投入時に、X方向フィードモータ制御回路52にセンサ支持台21の初期位置に対応したX方向限界位置への移動、及びX方向位置検出回路51に初期設定を指示する。この指示により、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向モータ47を駆動してセンサ支持台21を初期位置に対応したX方向限界位置まで移動させる。X方向位置検出回路51は、センサ支持台21のX方向への移動中、X方向モータ47内のエンコーダ47aからの回転信号を入力し続けている。そして、センサ支持台21が初期位置に対応したX方向限界位置まで達してX方向モータ47の回転が停止すると、X方向位置検出回路51はエンコーダ47aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、X方向位置検出回路51は、X方向フィードモータ制御回路52に出力停止のための信号を出力し、これにより、X方向フィードモータ制御回路52はX方向モータ47への駆動信号の出力を停止する。その後に、X方向モータ47が駆動された際には、X方向位置検出回路51は、回転信号のパルス数をX方向モータ47の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいてセンサ支持台21のX方向位置を計算し、計算したX方向位置をX方向フィードモータ制御回路52及びコントローラ60に出力し続ける。
【0026】
Y方向モータ35内には、Y方向モータ35の回転を検出して、前記X方向モータ47と同様に、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ35aが組み込まれている。この回転信号は、Y方向位置検出回路53及びY方向フィードモータ制御回路54に出力される。Y方向位置検出回路53は、前記回転信号のパルス数をY方向モータ35の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からY方向モータ35によるセンサ支持台21のY方向位置(すなわち磁気センサ20のY方向位置)を検出し、検出したY方向位置をY方向フィードモータ制御回路54及びコントローラ60に出力する。Y方向フィードモータ制御回路54は、コントローラ60の指示により、前記X方向フィードモータ制御回路52の場合と同様に、Y方向モータ35の駆動及び停止を制御する。このY方向モータ35の駆動時においては、Y方向フィードモータ制御回路54は、エンコーダ35aからの回転信号を用いてY方向モータ35を所定の速度で回転させる。
【0027】
Y方向位置検出回路53におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ60の指示によって行われる。すなわち、コントローラ60は、電源投入時に、Y方向フィードモータ制御回路54にセンサ支持台21の初期位置に対応したY方向限界位置への移動、及びY方向位置検出回路53に初期設定を指示する。この指示により、Y方向フィードモータ制御回路54は、Y方向モータ35を駆動してセンサ支持台21を初期位置に対応したY方向限界位置まで移動させる。Y方向位置検出回路53は、センサ支持台21のY方向への移動中、Y方向モータ35内のエンコーダ35aからの回転信号を入力し続けている。そして、センサ支持台21が初期位置に対応したY方向限界位置まで達してY方向モータ35の回転が停止すると、Y方向位置検出回路53はエンコーダ35aからの回転信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、Y方向位置検出回路53は、Y方向フィードモータ制御回路54に出力停止のための信号を出力し、これにより、Y方向フィードモータ制御回路54はY方向モータ35への駆動信号の出力を停止する。その後に、Y方向モータ35が駆動された際には、Y方向位置検出回路53は、回転信号のパルス数をY方向モータ35の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値に基づいてセンサ支持台21のY方向位置を計算し、計算したY方向位置をY方向フィードモータ制御回路54及びコントローラ60に出力し続ける。
【0028】
この電解液濃度測定装置は、さらに、交流信号供給回路55、センサ信号取出回路56、ロックインアンプ57及びコントローラ60を備えている。交流信号供給回路55は、正弦波発振器及び矩形波変換回路を含み、コントローラ60によって作動制御されて、正弦波発振器によって発振される正弦波状の交流信号を通電回路16に供給する。なお、交流信号は、「0」を基準に正負に変化する信号であり、その周波数は、例えば数10ヘルツから数100ヘルツ程度である。また、交流信号供給回路55は、前記正弦波状の交流信号を矩形波変換回路による変換により、前記交流信号と同期して「0」を中心として正負に変化する矩形波信号を生成して、参照信号としてロックインアンプ57に出力する。
【0029】
次に、磁気センサ20について説明しておく。磁気センサ20は、図3に示すように、X方向の磁界を検出するX方向磁気センサ20Aと、Y方向の磁界の変化を検出するY方向磁気センサ20Bとを備えている。X方向磁気センサ20Aは、抵抗r11,r12,r13及び磁気抵抗素子MR1からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r11,r13の接続点と、抵抗r12及び磁気抵抗素子MR1の接続点との間に、センサ信号取出回路56の後述する定電圧供給回路56aから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、X方向磁気センサ20Aにおいては、抵抗r13及び磁気抵抗素子MR1の接続点と、抵抗r11,r12間の接続点との間の電圧をX方向磁気検出信号として出力する。抵抗r11,r12,r13の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR1の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたX方向の磁界の正負の変化により、X方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にX方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0030】
Y方向磁気センサ20Bは、抵抗r21,r22,r23及び磁気抵抗素子MR2からなるブリッジ回路で構成されており、抵抗r21,r22の接続点と、抵抗r23及び磁気抵抗素子MR2の接続点との間に、センサ信号取出回路56の後述する定電圧供給回路56bから電圧+V,−Vが印加されるようになっている。また、Y方向磁気センサ20Bにおいては、抵抗r22及び磁気抵抗素子MR2の接続点と、抵抗r21,r23間の接続点との間の電圧をY方向磁気検出信号として出力する。抵抗r21,r22,r23の値は同じであり、磁界の強さが「0」であるときの磁気抵抗素子MR2の抵抗値に等しい。これにより、ほぼ「0」を基準としたY方向の磁界の正負の変化により、Y方向磁気検出信号はほぼ「0」を基準にY方向の磁界の大きさに比例して正負に変化する電圧信号となる。
【0031】
センサ信号取出回路56は、定電圧供給回路56a,56b及び増幅器56c,56dを備えている。定電圧供給回路56a,56bは、コントローラ60からの指示により、X方向磁気センサ20A及びY方向磁気センサ20Bに対して、定電圧+V,−Vを供給する。増幅器56c、56dは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号をそれぞれ増幅してロックインアンプ57に出力する。
【0032】
ロックインアンプ57は、図4に詳細に示すように、X方向磁気センサ20Aから増幅器56cを介して供給されるX方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ57aと、Y方向磁気センサ20Bから増幅器56dを介して供給されるY方向磁気検出信号を入力するハイパスフィルタ57bとを備えている。ハイパスフィルタ57a,57bは、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号に含まれる、磁界の強さに比例した信号成分以外の不要な成分を取り除くとともに、信号をグランドレベルを中心に変化するようにする。
【0033】
ハイパスフィルタ57aの出力は、増幅器57cを介して位相検波回路57d,57eに供給される。位相検波回路57d,57eは、それぞれ乗算器によって構成されている。位相検波回路57dは、ハイパスフィルタ57a及び増幅器57cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、交流信号供給回路55からの参照信号を乗算してローパスフィルタ57fに出力する。位相検波回路57eは、ハイパスフィルタ57a及び増幅器57cを介して供給されるX方向磁気検出信号に、交流信号供給回路55からの参照信号を位相シフト回路57gで90度位相を遅らせた遅延参照信号を乗算してローパスフィルタ57hに出力する。これにより、ローパスフィルタ57fにはX方向磁気検出信号の交流信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ57fは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の交流信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ57hにはX方向磁気検出信号の交流信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ57hは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してX方向磁気検出信号の交流信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。
【0034】
ハイパスフィルタ57bの出力は、増幅器57iを介して位相検波回路57j,57kに供給される。位相検波回路57j,57kには、ローパスフィルタ57m,57nが接続されている。位相検波回路57j,57k及びローパスフィルタ57m,57nは、前述した位相検波回路57d,57e及びローパスフィルタ57f,57hと同様に構成されている。これにより、ローパスフィルタ57mにはY方向磁気検出信号の交流信号(参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ57mは供給された成分信号をローパスフィルタ処理してY方向磁気検出信号の交流信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ57nにはY方向磁気検出信号の交流信号よりも90度位相を遅らせた信号(遅延参照信号)と同期した成分が供給され、ローパスフィルタ57nは供給された成分信号をローパス処理してY方向磁気検出信号の交流信号よりも90度位相を遅らせた信号と同期した成分の大きさを表す信号を出力する。ローパスフィルタ57f,57h,57m,57nは、A/D変換器57o,57p,57q,57rにそれぞれ接続されている。A/D変換器57o,57p,57q,57rは、所定の時間間隔ごとに、ローパスフィルタ57f,57h,57m,57nからの信号をそれぞれA/D変換してコントローラ60に供給する。
【0035】
ふたたび図1の説明に戻り、コントローラ60は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ60は、記憶装置に記憶された図5A及び図5Bのテーブル作成プログラム、並びに図6A乃至図6Cの電解装置作動制御プログラム(図7の電解液濃度計算ルーチン、並びに図8A及び図8Bの対称性評価ルーチンを含む)を実行して、この電解装置の作動を制御する。コントローラ60には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置61と、作業者に対して作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置62とが接続されている。
【0036】
次に、上記のように構成した電解装置及び電解液濃度測定装置の動作について説明する。まず、作業者は、図1及び図2に示すように、電解槽10を磁気センサ20に対向するように配置して、調整つまみ32を操作してセンサ支持台21が電解槽10の側面に平行になるように位置調整する。この状態で、電解装置の電源が投入されると、制御装置14は通電回路16を制御して、電極15a,15bに直流電圧を印加し始める。また、電解液濃度測定装置の電源が投入されると、上述したように、コントローラ60の指示により、X方向フィードモータ制御回路52及びY方向フィードモータ制御回路54はセンサ支持台21(すなわち磁気センサ20)をX方向及びY方向の限界位置に移動させるとともに、X方向位置検出回路51及びY方向位置検出回路53は検出されるX方向位置及びY方向位置を初期値に設定する。
【0037】
まず、電解装置を実際に作動させる前に行う電流−濃度テーブルの作成動作について説明する。この電流−濃度テーブルの作成にあたっては、作業者は、電解槽10内の電解液の濃度を変更しながら、電解槽10の中心位置(電極15a、15b間の方形状の空間におけるX方向及びY方向の中心位置)にX方向に流れる電流(電流密度)を検出するとともに、変更した電解液の濃度を測定し、電流に対する濃度の相関を検出して電流−濃度テーブルとしてコントローラ60内に記憶しておく。これは、電解液の抵抗は電解液の濃度にほぼ反比例するので、電極15a,15b間に一定の電圧を印加しておくことにより、電解液の濃度が、図10に示すように、電解液中をX方向に流れる電流の大きさにほぼ比例することに基づくものである。以下、この電流−濃度テーブルの作成について説明する。
【0038】
作業者は、制御装置14の操作スイッチなどを操作することにより、制御装置14に供給装置11を制御させて、電解液タンク12内の電解液を適当な量だけ電解槽10に供給するとともに、給水タンク13内の水も適当な量だけ電解槽10に供給して、電解槽10内を適当な濃度の電解液で満たす。
【0039】
次に、作業者は、入力装置61の操作により、コントローラ60に図5A及び図5Bのテーブル作成プログラムの実行開始を指示する。この指示に応答して、コントローラ60は、図5AのステップS100にてテーブル作成プログラムの実行を開始し、ステップS102にて、磁気センサ20を電解槽10の中心位置まで移動させるように、X方向フィードモータ制御回路52及びY方向フィードモータ制御回路54に対して指示する。具体的には、X方向フィードモータ制御回路52に対して磁気センサ20をX方向における中心位置であるXce位置に移動させるように指示し、Y方向フィードモータ制御回路54に磁気センサ20をY方向における中心位置であるYce位置に移動させるように指示する(図9参照)。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向位置検出回路51からX方向検出位置(X方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、X方向検出位置がXce位置に一致するまでX方向モータ47を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路54は、Y方向位置検出回路53からY方向検出位置(Y方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、Y方向検出位置がYce位置に一致するまでY方向モータ35を駆動制御する。これにより、磁気センサ20は、電解槽10のX−Y平面の中心位置(Xce,Yce)に移動する。
【0040】
ステップS102の処理後、コントローラ60は、ステップS104にて、X方向位置検出回路51からX方向検出位置を入力するとともに、Y方向位置検出回路53からY方向検出位置を入力する。次に、ステップS106にて、前記入力したX方向検出位置及びY方向検出位置が、Xce位置及びYce位置にそれぞれ一致したか否かを判定する。前記入力したX方向検出位置及びY方向検出位置がXce位置及びYce位置に共に一致するまで、コントローラ60は、ステップS106にて「No」と判定して、ステップS104,S106からなる処理を繰り返す。そして、X方向検出位置及びY方向検出位置がXce位置及びYce位置に共に一致すると、コントローラ60は、ステップS106にて「Yes」と判定して、ステップS108以降に進む。
【0041】
ステップS108においては、コントローラ60は、ロックインアンプ57に作動開始を指示する。これにより、ロックインアンプ57は、その作動を開始させる。次に、コントローラ60は、ステップS110にてセンサ信号取出回路56の作動開始を指示する。この指示に応答して、センサ信号取出回路56内の定電圧供給回路56a,56bは、X方向磁気センサ20A及びY方向磁気センサ20Bに定電圧信号+V,−Vを供給し始める。これにより、X方向磁気センサ20A及びY方向磁気センサ20BによるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号が、増幅器56c,56dを介してロックインアンプ57にそれぞれ供給され始める。次に、コントローラ60は、ステップS112にて交流信号供給回路55の作動開始を指示する。この指示に応答して、交流信号供給回路55は、正弦波状の交流信号を通電回路16に供給するとともに、前記交流信号と同期した矩形波状の参照信号をロックインアンプ57に供給し始める。通電回路16は、前記直流電圧にこの交流信号を重畳して、電解槽10の電極15a,15bに印加する。なお、この交流信号が重畳された直流電圧においては、瞬時値は交流信号に応じて変動するものの、常に正に保たれて負になることはない。
【0042】
ここで、X方向磁気センサ20A及びY方向磁気センサ20Bによる前記X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号について説明しておく。通電回路16による通電により、電解槽10内の電解液には電極15a,15bを介して電流が流れ、電解槽10のX−Y平面近傍には、前記電流による磁界が発生する。そして、X方向磁気センサ20Aは、X方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をX方向磁気検出信号として出力し始める。また、Y方向磁気センサ20Bは、Y方向の磁界Hの大きさに比例した電圧をY方向磁気検出信号として出力し始める。これらのX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号は、前記通電回路16から供給される電流の大きさが正弦波状に変化するので、正弦波状に変化する信号である。ただし、X方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号の位相は、通電回路16から出力される正弦波状の交流信号とは若干異なる。
【0043】
ロックインアンプ57においては、入力されたX方向磁気検出信号がハイパスフィルタ57a及び増幅器57cを介して位相検波回路(乗算器)57d,57eにそれぞれ供給されるとともに、入力されたY方向磁気検出信号がハイパスフィルタ57b及び増幅器57iを介して位相検波回路(乗算器)57j,57kにそれぞれ供給される。位相検波回路57d,57jには、交流信号供給回路55からの矩形波状の参照信号が供給されている。また、位相検波回路57e,57kには、前記参照信号の位相を位相シフト回路57gで90度遅らせた遅延参照信号が供給されている。そして、位相検波回路57d,57eは、増幅器57cを介して供給されたX方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ57f,57hを介してA/D変換器57o,57pにそれぞれ供給する。位相検波回路57j,57kは、増幅器57cを介して供給されたY方向磁気検出信号に参照信号及び遅延参照信号をそれぞれ乗算して、乗算した信号をローパスフィルタ57m,57nを介してA/D変換器57q,57rにそれぞれ供給する。
【0044】
ここで、ローパスフィルタ57f,57h,57m,57nは供給された信号の成分の大きさを表す信号すなわち正弦波状の信号の振幅に比例した大きさを表す信号を出力するように機能する。したがって、A/D変換器57oには、X方向磁気検出信号の参照信号(すなわち通電信号)に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器57pには、X方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器57qには、Y方向磁気検出信号の参照信号に同期した信号成分の大きさを表す信号が供給される。A/D変換器57rには、Y方向磁気検出信号の参照信号から90度だけ位相の遅れた信号成分の大きさを表す信号が供給される。そして、A/D変換器57o,57p,57q,57rは、それぞれ供給された信号を所定時間ごとにサンプリングしてA/D変換し、A/D変換したサンプリングデータをコントローラ60に供給する。したがって、コントローラ60には前記各信号成分の所定時間ごとの大きさを表すサンプリングデータが所定時間ごとに供給されるようになる。
【0045】
前記ステップS112の処理後、コントローラ60は、ステップS114にて、ロックインアンプ57のA/D変換器57o,57p,57q,57rから供給されるサンプリングデータを取込み、ステップS18にて取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達したか否かを判定する。この所定数Kは、例えば数個から数十個の各サンプリングデータの数を表す値に設定されている。各サンプリングデータの数が所定数Kに達していなければ、コントローラ60は、ステップS116にて「No」と判定して、ステップS114にてA/D変換器57o,57p,57q,57rから次に出力されるサンプリングデータを取込む。そして、A/D変換器57o,57p,57q,57rから取込んだ各サンプリングデータの数が所定数Kに達すると、コントローラ60は、ステップS116にて「Yes」と判定して、ステップS118以降の処理を実行する。ステップS114にて取込まれたサンプリングデータは、サンプリングデータ群Sx1d,Sx2d,Sy1d,Sy2として、RAMに記憶される。
【0046】
具体的には、A/D変換器57oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1dとしてRAMに記憶される。A/D変換器57pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2dとしてRAMに記憶される。A/D変換器57pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1dとしてRAMに記憶される。A/D変換器57rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2dとしてRAMに記憶される。
【0047】
前記ステップS114,S116の処理後、コントローラ60は、ステップS118にて交流信号供給回路55に作動停止を指示し、ステップS120にてセンサ信号取出回路56の作動停止を指示し、ステップS122にてロックインアンプ57の作動停止を指示する。これにより、交流信号供給回路55、センサ信号取出回路56及びロックインアンプ57は作動停止する。次に、コントローラ60は、ステップS124〜S134の処理により、前記RAMに記憶したサンプリングデータ群Sx1d,Sx2d,Sy1d,Sy2dを用いて、電解槽10の中心位置にX方向に流れる電流の大きさIxを計算する。
【0048】
まず、コントローラ60は、ステップS124にて、所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1d,Sx2d,Sy1d,Sy2dの磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1d,Sx2d,Sy1d,Sy2dごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
【0049】
次に、コントローラ60は、ステップS126にて、前記計算した平均値Sx1,Sx2を用いた下記式1,2の演算の実行により、X方向磁気検出信号の極大値Hxと、X方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θxとを計算する。
Hx=(Sx12+Sx22)1/2 …式1
θx=tan-1(Sx2/Sx1) …式2
これにより、X方向磁気検出信号としてHx・sin(2πft+θx)が検出されたことになる。なお、fは、交流信号供給回路55から出力される交流信号及び参照信号の周波数に等しい。
【0050】
次に、コントローラ60は、ステップS128にて、前記計算した平均値Sy1,Sy2を用いた下記式3,4の演算の実行により、Y方向磁気検出信号の極大値Hyと、Y方向磁気検出信号の参照信号に対する位相シフト量θyとを計算する。
Hy=(Sy12+Sy22)1/2 …式3
θy=tan-1(Sy2/Sy1) …式4
これにより、Y方向磁気検出信号としてHy・sin(2πft+θy)が検出されたことになる。
【0051】
次に、コントローラ60は、ステップS110にて、前記計算したHx,θx,Hy,θyを用いた下記式5,6の演算の実行により、通電回路16の印加電圧が最大となるタイミング(前記X方向磁気検出信号Hx・sin(2πft+θx)及び前記Y方向磁気検出信号Hy・sin(2πft+θy)における2πftがπ/2のタイミング)における、検査位置の磁界の強さHxy及び磁界の向きθxyを計算する。この場合、通電回路16の印加電圧が最大となるタイミングを採用した理由は、位相シフト量θx,θyは小さく、印加電圧が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍の値になるためである。なお、位相シフト量θx,θyが小さくなく、印加電圧が最大となるタイミング近傍で検査位置の磁界の強さHxyが最大値近傍にならない場合には、磁界の強さHxyが最大値近傍になるようなタイミングの角度をπ/2に代えて用いればよい。
Hxy=[{Hx・sin(π/2+θx)}2+{Hy・sin(π/2+θy)}2]1/2 …式5
θxy=tan-1{Hy・sin(π/2+θy)}/{Hx・sin(π/2+θx)} …式6
【0052】
次に、コントローラ60は、ステップS132にて、電解槽10内の中心位置の電解液中に流れる電流は前記磁界の強さHxyに比例し、かつ方向が磁界の方向θxyと−π/2異なることから、前記計算したHxy,θxyを用いた下記式7,8の演算の実行により、通電電流が最大となるタイミングにおける、電解槽10内の中心位置(Xce,Yce)の電解液中に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、値Kは、比例定数である。
Ixy=K・Hxy …式7
θixy=θxy−π/2 …式8
【0053】
次に、コントローラ60は、ステップS134にて、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式9の演算の実行により、電解槽10内の中心位置(Xce,Yce)において電解液中をX方向に流れる電流の大きさIxを計算する。
Ix=Ixy・cosθixy …式9
【0054】
次に、コントローラ60は、ステップS136にて作業者に対する電解液の濃度の測定及び濃度の入力の指示を表示装置62に表示し、ステップS138にて濃度の入力があったか否かを判定する。濃度の入力がなければ、コントローラ60は、ステップS138にて「No」と判定し続けてプログラムの進行を停止する。この場合、作業者は、電解槽10内の電解液を採取して、採取した電解液の濃度を図示しない濃度測定装置により測定する。そして、作業者が電解液の濃度を入力すると、コントローラ60は、ステップS138にて「Yes」と判定し、ステップS140にて前記計算した電流の大きさIxを前記入力された電解液の濃度と共に対にしてRAMに記憶しておく。
【0055】
前記ステップS140の処理後、コントローラ60は、ステップS142にてテーブル作成の指示があったか否かを判定し、ステップS144にて新たな測定開始の指示があったか否かを判定する。作業者がテーブル作成の指示及び新たな測定開始の指示をしなければ、コントローラ60はステップS142,S144にて共に「No」と判定して、ステップS142,S144の判定処理を続ける。この間に、作業者は電解槽10内の電解液の濃度を変更する。具体的には、作業者は、電解槽10内の電解液の一部を抜き取るか、又はそのままの状態で、制御装置の操作スイッチなどを操作することにより供給装置11を制御して、電解液タンク12内の電解液又は給水タンク13内の水を電解槽10に供給する。これにより、電解槽10内の電解液の濃度が、前回の電流の大きさIxの測定時とは異なった濃度に変化する。
【0056】
この状態で、作業者は、入力装置61を操作して新たな測定開始を指示する。この指示に応答して、コントローラ60は、ステップS144にて「Yes」と判定し、図5AのステップS108に戻る。そして、コントローラ60は、前述したステップS108〜S134の処理により、電解槽10の中心位置(Xce,Yce)において電解液にX方向に流れる電流Ixの大きさを検出する。そして、前述した電解液の濃度の作業者による測定が終了して、作業者が測定した濃度を入力すると、コントローラ60は、ステップS140にて検出された電流の大きさIx及び入力された電解液の濃度を対にしてRAMに記憶する。そして、作業者が、電解槽10内の電解液の濃度を前述のようにして変更し、新たな測定開始を指示すれば、コントローラ60は再度ステップS106〜S140の処理により、再度変更された電解液の濃度を検出した電流の大きさIxと対にしてRAMに記憶する。このような、ステップS106〜S140からなる繰り返し処理により、RAM内には、電流の大きさIxと電解液の濃度が対になったデータが蓄積される。
【0057】
そして、作業者が、入力装置61を操作してテーブル作成を指示すると、コントローラ60は、ステップS142にて「Yes」と判定して、ステップS146にて電流−濃度テーブルを作成して、ステップS148にてこのテーブル作成プログラムの実行を終了する。この電流−濃度テーブルの作成においては、RAM内に記憶されている複数組の電流の大きさIx及び電解液の濃度を用いて、電流の大きさIxに対する電解液の濃度の相関を求めてテーブルを作成して、不揮発性メモリに記憶しておく。図10は、この電流−濃度テーブルの一例を示している。
【0058】
次に、電解装置の作動について説明する。この場合も、作業者は、制御装置14の操作スイッチなどを操作することにより、制御装置14に供給装置11を制御させて、電解液タンク12内の電解液を適当な量だけ電解槽10に供給するとともに、給水タンク13内の水も適当な量だけ電解槽10に供給して、電解槽10内を適当な濃度の電解液で満たす。次に、作業者は、入力装置61の操作により、コントローラ60に図6A乃至図6Cの電解装置作動制御プログラムの実行開始を指示する。この指示に応答して、コントローラ60は、図6AのステップS200にて電解装置作動制御プログラムの実行を開始し、ステップS202にて変数pを「1」に初期設定する。この変数pは、電解液の濃度測定の回数をカウントするものである。
【0059】
前記ステップS202の処理後、コントローラ60は、前述した図5AのステップS102〜S118と同様なステップS204〜S220の処理により、X方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータ群Sx1d、X方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータ群Sx2d、Y方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータ群Sy1d、及びY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータ群Sy2dを取得する。次に、コントローラ60は、ステップS222にて、電解液濃度計算ルーチンを実行する。
【0060】
この電解液濃度計算ルーチンは、図7に詳細に示されており、ステップS300にてその実行が開始される。ステップS302〜S312の処理は前述した図5BのステップS124〜S134の処理と同じであり、このステップS302〜S312の処理により、前記サンプリングデータ群Sx1d,Sx2d,Sy1d,Sy2dを用いて、電解槽10の中心位置(Xce,Yce)における電解液中をX方向に流れる電流の大きさIxが計算される。前記ステップS312の処理後、コントローラ60は、ステップS314にて、前記作成して不揮発性メモリに記憶した電流−濃度テーブルを参照して、前記計算した電流の大きさIxに対応した電解液の濃度を計算し(図10参照)、ステップS314にてこの電解液濃度計算ルーチンの実行を終了する。
【0061】
この電解液濃度計算ルーチンの実行後、コントローラ60は、図6AのステップS224にて前記計算した電解液の濃度を制御装置14に出力する。制御装置14は、この出力された電解液の濃度を入力し、入力した電解液の濃度に応じて供給装置11を制御して電解槽10内の電解液の濃度を所望の濃度に制御する。具体的には、入力した電解液の濃度が所望の濃度よりも濃ければ、両濃度の差が大きくなるに従って大きくなる量の水を給水タンク13から電解槽10に供給して、電解槽10内の電解液の濃度を薄くする。逆に、入力した電解液の濃度が所望の濃度よりも薄ければ、両濃度の差が大きくなるに従って大きくなる量の電解液を電解液タンク12から電解槽10に供給して、電解槽10内の電解液の濃度を濃くする。なお、この状態では、制御装置14は作動しており、ステップS220の処理によって交流信号は重畳されていないが、通電回路16による直流電圧は電極15a,15bに印加されており、電解装置は機能している。
【0062】
前記ステップS224の処理後、コントローラ60は、ステップS226にて、変数pが所定値Mに等しいか否かを判定する。所定値Mは、予め決められた100乃至5000程度の値である。最初、変数pは「1」に設定されているので、変数pは所定値Mよりも小さく、コントローラ60は、ステップS226にて「No」と判定して、ステップS228にて内蔵のタイマを用いて時間計測を開始する。そして、ステップS230にて、時間計測の開始からの経過時間が所定時間T(例えば、数秒〜数10秒程度)以上になったか否かを判定する。経過時間が所定時間に達していなければ、コントローラ60は、ステップS230にて「No」と判定して、ステップS232にて終了指令有り、すなわち電解装置の作動停止の指示があったか否かを判定する。終了指令が無ければ、コントローラ60は、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS230,S232の循環処理を繰り返し実行し続ける。
【0063】
このステップS230,S232の循環処理中、経過時間が所定時間Tに達すると、コントローラ60は、ステップS230にて「Yes」と判定し、ステップS234にて変数pに「1」を加算して、ステップS214に戻る。ステップS214の処理においては、交流信号供給回路55の作動が開始され、交流信号が重畳された直流電圧が電極15a,15bにふたたび印加される。そして、前述したステップS216〜S224の処理により、電解槽10内の電解液の濃度が測定されて、測定された濃度が制御装置14に出力される。制御装置14は、供給装置11を前述のように制御して、電解槽10内の電解液の濃度を所望の濃度に近づける。
【0064】
前記ステップS224の処理後、コントローラ60は、ステップS226にて変数pが所定値Mに達したか否かをふたたび判定する。変数pが所定値Mに達するまでは、コントローラ60は、ステップS226にて「No」と判定して、前述したステップS228にて時間計測を開始し、ステップS230,S232の判定処理を実行する。そして、前記計測を開始した経過時間が所定時間Tに達すれば、コントローラ60は、ステップS230にて「Yes」と判定し、ステップS234にて変数pに「1」を加算して、前述したステップS214〜S224の処理を実行する。このような循環処理は変数pが所定値Mに達するまで行われるので、電解槽10内の電解液の濃度は所望の濃度に制御される。この循環処理中、変数pが所定値Mに達すると、コントローラ60は、ステップS226にて「Yes」と判定して、図6BのステップS240に進む。
【0065】
ステップS240においては、コントローラ60は、変数nを「0」に初期設定するとともに、変数m,aをそれぞれ「1」に初期設定する。変数n,mは、電解槽10に対する磁気センサ20の走査位置を示す変数である。ここで、図9を用いて、電解槽10の検査位置について説明しておく。X方向においては、検査開始位置は初期値Xstで表され、検査終了位置は終了値Xmaxで表され、その中心位置はXce位置で表される。Y方向においては、検査開始位置は初期値Ystで表され、検査終了位置は終了値Ymaxで表され、その中心位置はYce位置で表される。そして、Xce位置を中心にX方向(図示左右方向両側)に、Xce位置に対して対称に等間隔でnmax/2個の検出位置が規定されて、合計nmax個の検出位置が微小値ΔXの距離をもって等間隔に規定されている。また、Yce位置を中心にY方向(図示上下方向両側)に、Yce位置に対して対称に等間隔でmmax/2個の検出位置が規定されて、合計mmax個の検出位置が微小値ΔYの距離をもって等間隔に規定されている。以下、この値nmaxをX方向の最大値nmaxといい、このmmaxをY方向の最大値mmaxという。なお、これらのXce値、Yce値、初期値Xst,Yst、終了値Xmax,Ymax、最大値nmax,mmax及び微小値ΔX,ΔYは、電解槽10が予め決められていれば予め用意されていてもよいが、作業者が作業前に入力するようにしてもよい。
【0066】
次に、磁気センサ20の検査位置の移動について説明しておく。磁気センサ20は、図9に示すように、まず、X方向に初期値Xstによって表される開始位置(電極15a,15b間の電極15aの直近位置)から終了値Xmaxによって表される終了位置(電極15a,15b間の電極15bの直近位置)まで所定の微小値ΔXずつ移動制御される。そして、X方向の終了位置に達すると、磁気センサ20はY方向に所定の微小値ΔYだけ移動制御され、その後に、X方向の終了位置からX方向の開始位置まで微小値ΔXずつ移動制御される。そして、ふたたび、磁気センサ20はY方向に微小値ΔYだけ移動制御されて、X方向の開始位置から終了位置まで微小値ΔXずつ移動制御される。このように、磁気センサ20は、X方向に往復運動しながらY方向に移動して、電解槽10を走査する。なお、微小値ΔX,ΔYは、電解槽10の縦横の長さに比べて極めて小さい。変数aは、「1」により磁気センサ20の中心位置がX方向正側に移動している状態を表し、「−1」により磁気センサ20の中心位置がX方向負側に移動している状態を表している。以降、この磁気センサ20の中心位置を検査位置という。
【0067】
前記ステップS240の処理後、コントローラ60は、ステップS242にて、X方向フィードモータ制御回路52に対して磁気センサ20をX方向に移動して検査位置がX方向の初期値Xstによって表される初期位置になるように指示するとともに、Y方向フィードモータ制御回路54に対して磁気センサ20をY方向に移動して検査位置がY方向の初期値Ystによって表される初期位置(図9に示すように電極15a,15bの上部位置)になるように指示する。この指示に応答して、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向位置検出回路51からX方向検出位置(X方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、X方向検出位置が初期値Xstに一致するまでX方向モータ47を駆動制御する。Y方向フィードモータ制御回路54は、Y方向位置検出回路53からY方向検出位置(Y方向の検査位置すなわち測定位置)を入力しながら、Y方向検出位置が初期値Ystに一致するまでY方向モータ35を駆動制御する。
【0068】
ステップS242の処理後、コントローラ60は、ステップS244にて、X方向位置検出回路51からX方向検出位置を入力するとともに、Y方向位置検出回路53からY方向検出位置を入力する。次に、ステップS246にて、前記入力したX方向検出位置及びY方向検出位置が、X方向の初期値Xst及びY方向の初期値Ystに一致したか否かを判定する。前記入力したX方向検出位置及びY方向検出位置が初期値Xst,Ystに共に一致するまで、コントローラ60は、ステップS246にて「No」と判定して、ステップS244,S246からなる処理を繰り返す。そして、X方向検出位置及びY方向検出位置が初期値Xst,Ystに共に一致すると、コントローラ60は、ステップS246にて「Yes」と判定して、ステップS248以降に進む。
【0069】
ステップS248においては、コントローラ60は、交流信号供給回路55の作動開始を指示する。この指示に応答して、交流信号供給回路55は、正弦波状の交流信号を通電回路16に供給するとともに、前記通電信号と同期した矩形波状の参照信号をロックインアンプ57に供給し始める。通電回路16は、前記直流電圧にこの交流信号を重畳して、電解槽10の電極15a,15bに印加する。これにより、X方向磁気センサ10A及びY方向磁気センサ10Bによりロックインアンプ57に供給されるX方向磁気検出信号及びY方向磁気検出信号は、ロックインアンプ57に供給される矩形波状の参照信号と同じ周波数の交流成分を持つようになる。
【0070】
前記ステップS248の処理後、コントローラ60は、ステップS250にて変数nに変数aを加算する。この場合、ステップS250の処理前の変数nは「0」であり、変数aは「1」であるので、変数nは「1」に変更される。前記ステップS250の処理後、コントローラ60は、上記図5AのステップS114,S116と同様なステップS252,S254の循環処理により、ロックインアンプ57から所定数Kのサンプリングデータを取込み、変数n,mによって指定されるサンプリングデータ群としてRAMに記憶する。
【0071】
具体的には、A/D変換器57oから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx1(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器57pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちX方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sx2(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器57pから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy1(n,m)としてRAMに記憶される。A/D変換器57rから取込んだ所定数Kのサンプリングデータ、すなわちY方向磁気検出信号の遅延参照信号と同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのデータは、サンプリングデータ群Sy2(n,m)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数n,mは、共に「1」である。
【0072】
前記ステップS252,S254の処理後、コントローラ60は、ステップS256にて変数aが「1」であるか否かを判定する。変数aは「1」に初期設定されているので、この場合、コントローラ60は、ステップS256にて「Yes」と判定して、ステップS258にて、変数nが最大値nmaxに等しいか否かを判定する。変数nが最大値nmaxに達していなければ、コントローラ60は、ステップS258にて「No」と判定して、ステップS260にて、X方向フィードモータ制御回路52に、磁気センサ20の中心位置をX方向正側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向モータ47を作動させて磁気センサ20の中心位置をX方向正側に移動させ始める。
【0073】
次に、コントローラ60は、ステップS262にてX方向位置検出回路51からX方向位置を入力し、ステップS264にて入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xst+n・ΔX以上になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路51から入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達するまで、コントローラ60は、ステップS264にて「No」と判定し続けて、ステップS262,S264の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路51から入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達すると、コントローラ60は、ステップS264にて「Yes」と判定し、ステップS266にてX方向フィードモータ制御回路52に、磁気センサ20のX方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向モータ47の作動を停止させて、磁気センサ20のX方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ20は、値Xst+n・ΔXで表されたX方向位置、かつY方向初期値Ystを磁気センサ20の検出位置として、電解槽10の磁界を検出し始める。
【0074】
前記ステップS266の処理後、コントローラ60は、ステップS250に戻って、ステップS250の処理によって変数nに変数a(この場合、a=1)を加算して、前述のステップS252,S254のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS252,S254の処理により、値Xst+(n−1)・ΔXで表されたX方向位置、かつY方向初期値Ystを検出位置とする磁気センサ20の磁界検出によるサンプリングデータがRAMに新たに記憶される。具体的には、X方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m)としてRAMに記憶される。また、Y方向磁気検出信号の参照信号及び遅延参照信号とそれぞれ同期した信号成分の大きさを表す所定数Kのサンプリングデータが、サンプリングデータ群Sy1(n,m),Sy2(n,m)としてRAMに記憶される。なお、この場合の変数nは「2」であり、変数mは「1」である。
【0075】
そして、コントローラ60は、変数nが最大値nmaxに等しくなるまで、ステップS250〜S266の処理により、磁気センサ20による検出位置をX方向正側に微小値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ増加させながら、サンプリングデータを取込む。そして、変数nが最大値nmaxに等しくなると、コントローラ60は、ステップS258にて「Yes」と判定して、プログラムを図6CのステップS280に進める。この状態では、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=1)がRAMに記憶されている。
【0076】
コントローラ60は、ステップS280にて、Y方向フィードモータ制御回路54に、磁気センサ20による検出位置をY方向正側に移動させるように指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路54は、Y方向モータ35を作動させて磁気センサ20による検出位置をY方向正側に移動させ始める。次に、コントローラ60は、ステップS282にてY方向位置検出回路53からY方向位置を入力し、ステップS284にて入力したY方向位置が次のY方向の検出位置Yst+m・ΔYに達したか否かを判定する。この次のY方向の検出位置Yst+m・ΔYは、X方向の次の検出位置Xst+n・ΔXと同様に、Y方向の走査間隔を表す微小値ΔYに変数mを乗算して初期値Ystを加算した値である(図9参照)。そして、Y方向位置検出回路53から入力したY方向位置が次のY方向の検出位置に達するまで、コントローラ60は、ステップS284にて「No」と判定し続けて、ステップS282,S284の処理を繰り返し実行する。Y方向位置検出回路53から入力したY方向位置が次のY方向の検出位置に達すると、コントローラ60は、ステップS284にて「Yes」と判定し、ステップS286にてY方向フィードモータ制御回路54に、磁気センサ20のY方向正側への移動を停止させることを指示する。これにより、Y方向フィードモータ制御回路54は、Y方向モータ35の作動を停止させて、磁気センサ20の検出位置のY方向正側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ20は、値Xst+(n-1)・ΔX(=Xst+(nmax-1)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Yst+m・ΔY(=Yst+ΔY)で表されたY方向位置を検出位置として、電解槽10の表面近傍の磁界を検出し始める。
【0077】
前記ステップS286の処理後、コントローラ60は、ステップS288にて、変数mが最大値mmaxに等しいか否かを判定する。変数mが最大値mmaxに達していなければ、コントローラ60は、ステップS288にて「No」と判定して、ステップS290にて変数mに「1」を加算し、ステップS292にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS290の処理によって変数mは「2」になり、ステップS292の処理によって変数aは「−1」になる。また、変数nは値nmaxに保たれている。前記ステップS292の処理後、コントローラ60は、図6BのステップS252に戻って、ステップS252,S254の処理より、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(nmax,2),Sx2(nmax,2),Sy1(nmax,2),Sy2(nmax,2)をロックインアンプ57からそれぞれ取込み記憶する。
【0078】
前記ステップS252,S254の処理後、コントローラ60は、ステップS256にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS292の処理によって変数aは「−1」に設定されているので、コントローラ60は、ステップS256にて「No」と判定して、ステップS268にて、変数nが値「1」に等しいか否かを判定する。この場合、変数nはnmaxであって「1」でないので、コントローラ60は、ステップS268にて「No」と判定して、ステップS270にて、X方向フィードモータ制御回路52に、磁気センサ20による検出位置をX方向負側に移動させるように指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向モータ47を作動させて磁気センサ20による検出位置をX方向負側に移動させ始める。
【0079】
次に、コントローラ60は、ステップS272にてX方向位置検出回路51からX方向位置を入力し、ステップS274にて入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達したか否か、すなわちX方向位置を示す値が値Xst+(n−2)・ΔX以下になったか否かを判定する。そして、X方向位置検出回路51から入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達するまで、コントローラ60は、ステップS274にて「No」と判定し続けて、ステップS272,S274の処理を繰り返し実行する。X方向位置検出回路51から入力したX方向位置が次のX方向の検出位置に達すると、コントローラ60は、ステップS274にて「Yes」と判定し、ステップS276にてX方向フィードモータ制御回路52に、検出位置のX方向負側への移動を停止させることを指示する。これにより、X方向フィードモータ制御回路52は、X方向モータ47の作動を停止させて、磁気センサ20による検出位置のX方向負側への移動を停止させる。その結果、磁気センサ20は、値Xst+(n−2)・ΔX(=Xst+(nmax−2)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Yst+(m−1)・ΔYst(=Yst+ΔY)で表されたY方向位置を検出位置として、電解槽10の表面近傍の磁界を検出し始める。
【0080】
前記ステップS276の処理後、コントローラ60は、ステップS250に戻って、ステップS250の処理によって変数nに変数a(この場合、a=−1)を加算して、前述のステップS252,S254のサンプリングデータの取込み処理を実行する。これらのステップS252,S254の処理により、前記ステップS250の処理前の値Xst+(n−2)・ΔX(=Xst+(nmax−2)・ΔX)で表されたX方向位置、かつ値Yst+(m−1)・ΔY(=Yst+ΔY)で表されたY方向位置を検出位置とするK個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)が取込み記憶される。なお、この取込み記憶されるサンプリングデータ群に関する変数nは値nmax−1であり、変数mは「2」である。
【0081】
そして、コントローラ60は、変数nが値「1」になるまで、ステップS250〜S256,S268〜S276の処理により、検出位置をX方向負側に微小値ΔXずつ移動させるとともに、変数nを「1」ずつ減少させながら、サンプリングデータを取込む。そして、変数nが値「1」なると、コントローラ60は、ステップS268にて「Yes」と判定して、図6CのステップS280に進む。この状態では、前述したサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=1)に加えて、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=2)がRAMに記憶されている。
【0082】
コントローラ60は、前述したステップS280〜S286の処理により、Y方向モータ35を作動させて磁気センサ20による検出位置を次のY方向検出位置Yst+m・ΔYに移動させる。その結果、磁気センサ20は、初期値Xstで表されたX方向の初期位置、かつ値Yst+m・ΔY(=Yst+2・ΔY)で表されたY方向位置を検出位置として、電解槽10の表面近傍の磁界を検出し始める。次に、コントローラ60は、変数mが最大値mmaxに等しくなっていないことを条件に、コントローラ60は、ステップS288にて「No」と判定して、ステップS290にて変数mに「1」を加算し、ステップS292にて変数aに「−1」を乗算する。この場合、ステップS290の処理によって変数mは「3」になり、ステップS292の処理によって変数aは「1」になる。また、変数nは「1」に保たれている。前記ステップS292の処理後、コントローラ60は、ステップS252に戻って、ステップS252,S254の処理より、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(1,3),Sx2(1,3),Sy1(1,3),Sy2(1,3)をロックインアンプ57からそれぞれ取込み記憶する。
【0083】
前記ステップS252,S254の処理後、コントローラ60は、ステップS256にて変数aは「1」であるか否かを判定する。この場合、前記ステップS292の処理によって変数aは「1」に設定されているので、コントローラ60は、ステップS256にて「Yes」と判定して、前述したステップS258〜S266,S250〜S256の処理を、変数nが最大値nmaxに等しくなるまで繰り返し実行する。これにより、磁気センサ20による検出位置がX方向正側に走査されて、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=3)がRAMに新たに記憶される。
【0084】
そして、変数mを「3」に設定した状態で、磁気センサ20の検出位置のX方向正側への走査が終了すると、ステップS258の判定処理により、ステップS280〜S292の処理が実行されて、磁気センサ20による検出位置が次のY方向位置に変更されるとともに、変数m,aが変更される。そして、前述したステップS250〜S256,S268〜S276の処理により、磁気センサ20による検出位置がX方向負側へ走査され、サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1,2,3・・・nmax,m=4)がRAMに新たに記憶される。
【0085】
このようなステップS250〜S276,S280〜S292の処理により、磁気センサ20による検出位置がX方向を往復するように走査されるとともにY方向正側に走査されて、変数mが最大値mmaxに等しくなると、コントローラ60は、ステップS288にて「Yes」と判定して、ステップS294以降の処理を実行する。この状態では、RAM内に、K個ずつの各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)が記憶されている。
【0086】
ステップS294においては、コントローラ60は、交流信号供給回路55に作動停止を指示する。これにより、交流信号供給回路55の作動は停止し、通電回路16は交流信号を重畳しない直流電圧を電解槽10の電極15a,15bに印加し始める。次に、コントローラ60は、ステップS296にて対称性評価ルーチンを実行する。対称性評価ルーチンの詳細は図8Aに示されており、その実行はステップS400にて開始される。この対称性評価ルーチンは、電極15a,15bの破損等の異常によって電解液中の各部に流れる電流が対称性を失っていることを検出して、電極15a,15bを含む電解槽10の異常を検出するものである。このような電解槽10の異常は、上述した濃度検出も精度を失うし、電解装置の作動を続行することも望ましくないために行うものである。
【0087】
前記ステップS400の実行開始後、コントローラ60は、ステップS402にて変数n,mをそれぞれ「1」に初期設定する。この場合も、変数n,mは、それぞれX,Y方向における検出位置を指定するための変数である。そして、最大値nmax,mmaxも、前述の場合と同様に、それぞれX,Y方向における検出位置の数を表している。
【0088】
前記ステップS402の処理後、コントローラ60は、ステップS404にて、変数n,mによって指定される所定数Kずつのサンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)の磁界の大きさの各平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を計算する。具体的には、各サンプリングデータ群Sx1(n,m),Sx2(n,m),Sy1(n,m),Sy2(n,m)ごとに、K個のサンプリングデータを加算して値Kで除算する。
【0089】
次に、コントローラ60は、上述した図5BのステップS126〜S132及び図7のステップS304〜S310と同様なステップS406〜S412の処理により、前記計算した平均値Sx1,Sx2,Sy1,Sy2を用いて、電解槽10の検査位置に流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算する。ただし、この場合には、前記計算された電流の大きさIxy及び方向θixyは、電解槽10の検査位置を表す変数n,mを用いて電流の大きさデータIxy(n,m)及び方向データθixy(n,m)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0090】
次に、コントローラ60は、ステップS414にて、上述した図5BのステップS134及び図7のステップS312の処理と同様にして、前記計算したIxy,θixyを用いた前記式9の演算の実行により、電解槽10の検査位置においてX方向に流れる電流の大きさIxを計算する。また、この場合には、前記計算したIxy,θixyを用いた下記式10の演算の実行により、電解槽10の検査位置においてY方向に流れる電流の大きさIyも計算する。
Iy=Ixy・sinθixy …式10
そして、このステップS414においては、前記計算された電流の大きさIx,Iyも、電解槽10の検査位置を表す変数n,mを用いて電流の大きさデータIx(n,m),Iy(n,m)としてRAM又は記憶装置に記憶される。
【0091】
そして、コントローラ60は、ステップS416にて変数nがX方向の検出位置数を表す最大値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが最大値nmaxに達していなければ、コントローラ60は、ステップS416にて「No」と判定し、ステップS418にて変数nに「1」を加算してステップS404に戻る。そして、前述したステップS404〜S414の処理を実行した後、コントローラ60は、ステップS416にてふたたび変数nが最大値nmaxに達したか否かを判定する。変数nが最大値nmaxに達しない限り、ステップS404〜418の処理が繰り返し実行される。
【0092】
このようなステップS404〜S418の繰り返し処理中、変数nが最大値nmaxに達すると、コントローラ60は、ステップS416にて「Yes」と判定して、ステップS420にて変数mがY方向の検出位置数を表す最大値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが最大値mmaxに達しなければ、コントローラ60は、ステップS420にて「No」と判定し、ステップS422にて変数mに「1」を加算し、ステップS424にて変数nを「1」に初期設定して、ステップS404に戻る。そして、変数nが最大値nmaxに達するまで前述したステップS404〜S418の処理を繰り返し実行した後、コントローラ60は、ステップS420にてふたたび変数mが最大値mmaxに達したか否かを判定する。変数mが最大値mmaxに達しない限り、ステップS404〜424の処理が繰り返し実行される。そして、変数mが最大値mmaxに達すると、コントローラ60は、ステップS420にて「Yes」と判定して、図8BのステップS430に進む。
【0093】
この時点では、電解槽10の検査位置ごとに、電流の大きさデータIxy(n,m)、電流の方向データθixy(n,m)、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向の電流の大きさデータIy(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)が、RAM又は記憶装置に記憶されている。
【0094】
ステップS430〜S452の処理により、電極15a,15b間に位置する電解液中を流れる電流の大きさの対称性を評価するための偏差Dev(k,s)が計算される。変数kは,Xce値によって表されたX方向における中心位置の両側の対称位置であって、磁気センサ20によるX方向の検出位置を示す変数である。変数sは、磁気センサ20によるY方向の検出位置を示すための変数である。まず、ステップS430においては、コントローラ60は、変数k,sをそれぞれ「1」に設定する。
【0095】
コントローラ60は、ステップS432にて、前記図8Aの対称性評価ルーチンの実行によって取得されたX方向の電流の大きさデータIx(n,m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)の中から、X−Y座標値が(nce−k+1,s)で表されるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を抽出して電流値Ix1とする。次に、コントローラ60は、ステップS434にて、前記X方向の電流の大きさデータIx(n,m)の中から、X−Y座標値が(nce+k,s)で表されるX方向の電流の大きさデータIx(n,m)を抽出して電流値Ix2とする。これらの場合、値nceは、図9に示すように、Xce値によって表されたX方向における中心位置の直近左側の検出位置を示し、変数kは「1」であり、かつ変数sは「1」である。したがって、前記ステップS432,S434の処理により、初期値Ystによって表されたY方向位置であって、X方向の中心位置(Xce位置)に対して直近のX方向の対称位置にある2つの検出位置(nce,1),(nce+1,1)における1対のX方向の電流の大きさデータIx(nce,1),Ix(nce+1,1)が電流値Ix1,Ix2として設定される。
【0096】
前記ステップS432,S434の処理後、コントローラ60は、ステップS436にて、下記式11の演算の実行により、変数k,sによって指定される前記電流値Ix1,Ix2の偏差Dev(k,s)を計算する。
Dev(k,s)=|Ix1−Ix2|/(Ix1+Ix2) …式11
【0097】
そして、コントローラ60は、ステップS438にて、偏差Dev(k,s)が所定の小さな許容値ΔDev以下であるかを判定する。偏差Dev(k,s)が許容値ΔDev以下であれば、ステップS438にて「Yes」と判定して、ステップS440にて偏差Dev(k,s)を「0」に変更する。偏差Dev(k,s)が許容値ΔDev以下でなければ、ステップS438にて「No」と判定して、偏差Dev(k,s)を変更することなく、プログラムをステップS442に進める。これらのステップS432〜S440の処理により、X方向の中心位置(Xce位置)を挟んで左右対称位置のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)がほぼ等しければ、電流分布が対称であるということで、偏差Dev(k,s)が「0」に変更される。
【0098】
前記ステップS438,S440の処理後、コントローラ60は、ステップS442にて、値(nce+k)が最大値nmaxに等しいか否かを判定する。この場合、変数kは「1」であり、値(nce+k)が最大値nmaxに等しくないので、コントローラ60は、ステップS442にて「No」と判定して、ステップS444にて変数kに「1」を加算して、前述したステップS432〜S442の処理を実行する。このステップS432〜S442の処理により、前記偏差Dev(k,s)の計算に利用した両X−Y座標位置のX方向外側の検出位置の1対のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)の偏差Dev(k,s)が計算される。
【0099】
そして、これらのステップS432〜S444からなる循環処理は、変数kを値nceに加算した値nce+kが最大値nmaxに等しくなるまで繰返し実行される。そして、前記値nce+kが最大値nmaxに等しくなり(すなわちk=nce)、すなわちX方向の最も外側の一対の検出位置(nce−k+1,s)=(1,1),(nce+k,s)=(nmax,1)のX方向の電流の大きさデータIx(n,m)の偏差Dev(k,s)が計算されると、コントローラ60は、ステップS442にて「Yes」と判定して、ステップS446に進む。ステップS446においては、変数sが最大値mmaxに等しいかを判定する。なお、この状態では、偏差Dev(1,1)〜Dev(nce,1)が計算されて記憶されている。
【0100】
また、この場合、変数sは「1」であって最大値mmaxよりも小さい。したがって、コントローラ60は、ステップS446にて「No」と判定して、ステップS448にて変数sに「1」を加算し、ステップS450にて変数kを「1」に戻して、前述したステップS432〜S444の処理を繰り返し実行する。これにより、図9のY方向の上から2列目において、X方向の中心位置(Xce位置)に対してX方向の対称位置にある最も内側の2つの検出位置(nce,2),(nce+1,2)から最も外側の2つの検出位置(1,2),(nmax,2)までの各1対のX方向の電流の大きさデータIx(nce,2),Ix(nce+1,2)〜Ix(1,2),Ix(nmax,2)が電流値Ix1,Ix2としてそれぞれ設定されるとともに、偏差Dev(1,2)〜Dev(nce,2)がそれぞれ計算される。
【0101】
このようにして、変数sを順次「1」ずつ増加させて、ステップS432〜S450の循環処理を繰返し実行することにより、Y方向の終了値Ymaxで表される検査終了位置に向かって、偏差Dev(k,s)が順次計算されていく。そして、変数sが最大値mmaxに達してY方向の検査終了位置における偏差Dev(1,mmax)〜Dev(nce,mmax)の計算が終了すると、コントローラ60は、ステップS446にて「Yes」と判定してステップS452に進む。
【0102】
ステップS452においては、コントローラ60は、前記計算した全ての偏差Dev(k,s)の平均値を計算して、電流分布対称評価値SymとしてRAM又は記憶装置に記憶する。この場合、電解槽10の電極15a,15b間のX方向における中心位置Xceを中心とするX方向の各1対の電流の大きさデータIx(n,m)の差を表す偏差Dev(k,s)が小さければ、すなわち電極15a,15bの電解液中において、X方向電流の大きさデータIx(n,m)が中心位置Xceに対して対称であれば、電流分布対称評価値Symは「0」に近い小さな値となる。逆に、X方向の電流の大きさデータIx(n,m)が中心位置Xceに対して対称でなければ、電流分布対称評価値Symは大きな値となる。なお、この電流分布対称評価値Symの計算が、本発明の電極間の中間線に対する対称性を数値として計算することに対応する。
【0103】
前記ステップS452の処理後、コントローラ60は、ステップS454にて、電解槽10の電解液中を流れる電流の大きさデータIxy(n,m)、同電流の方向データθixy(n,m)、X方向に流れる電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向に流れる電流の大きさデータIy(n、m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)から表示用画像データを生成して、表示装置62に画像データによって表された画像を表示する。具体的には、電流の方向θixyが矢印で示されているとともに、各電流の大きさIxy,Ix,Iyを矢印の長さで表示する。また、各電流の大きさIxy,Ix,Iyを色彩及び/又は濃度を異ならせて表示するとよい。図11は、前記電流の大きさIxyの分布の表示例を示している。さらに、X方向及びY方向の電流の大きさIx,Iyの分布を表示するようにしてもよい。そして、この画像表示は、電極15a,15bの異常発生の発見に利用される。
【0104】
前記ステップS454の処理後、コントローラ60は、ステップS456にて、電流分布対称評価値Symが許容値として設定されている所定の小さな値ΔSym以下であるかを判定する。そして、電流分布対称評価値Symが所定の小さな値ΔSym以下であれば、コントローラ60は、ステップS456にて「Yes」と判定して、ステップS458にて表示装置62に「異常なし」を表示する。一方、電流分布対称評価値Symが所定の小さな値ΔSym以下でなければ、コントローラ60は、ステップS456にて「No」と判定して、ステップS460にて表示装置62に「異常」を表示する。この「異常なし」及び「異常」の表示により、作業者は電極15a,15bの異常を認識できる。これらのステップS458,S460の処理後、コントローラ60は、ステップS462にてこの対称性評価ルーチンの実行を終了する。
【0105】
前記対称性評価ルーチンの実行終了後、コントローラ60は、図6Aの電解装置作動制御プログラムのステップS202以降の処理をふたたび実行し始める。そして、上述のように電解液を所望の濃度に保ちながら、電解装置の作動制御を続ける。ただし、前記対称性評価ルーチンの実行により、電解槽10の電極15a,15b等に異常が発生した可能性がある場合には、作業者の判断により電解槽10の作動制御を停止させる。前記ステップS202以降の処理において、作業者が入力装置61を操作して電解装置の作動終了を指示すれば、コントローラ60は、前記ステップS232にて「Yes」すなわち終了指令有りと判定して、図5AのステップS120,S122の処理と同様なステップS236,S238の処理によってセンサ信号取出回路56及びロックインアンプ57の作動を停止させて、ステップS240にてこの電解装置作動制御プログラムの実行を終了する。そして、制御装置14の操作スイッチなどの操作により、電極15a,15bへの直流電圧の印加が停止される。
【0106】
上記のように動作する実施形態によれば、電解装置の作動制御の前に、図5A及び図5Bのテーブル作成プログラムの実行により、電解槽10の中央位置(Xce,Yce位置)の電解液中をX方向に流れる電流の大きさIxに対する電解液の濃度の変化特性を表す電流−濃度テーブルを作成した。そして、電解装置の作動制御において、図6A乃至図6Cの電解装置作動制御プログラムのS204〜S218及び図7の電解液濃度計算ルーチンのステップS302〜S308の処理により、電極15a,15bに一定の電圧を印加しておいて、前記電解槽10の中央位置の電解液中を流れる電流により発生される磁界の強さHxy及び方向θxyを検出し、次のステップS310,S312の処理によって前記電解槽10の中央位置の電解液中を流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算するとともに、X方向の電流の大きさIxを計算し、次のステップS314の処理によって前記電流−濃度テーブルを参照して前記計算したX方向の電流の大きさIxに対応する電解液の濃度を計算した。この場合、電極15a,15b間に一定の電圧を印加しておくことにより、電解液中をX方向に流れる電流の大きさIxは電解液の濃度にほぼ比例し、しかもこの電流の大きさIxは所定面積中を流れる電流密度に対応するので、電解液の量が変化しても、前記電流の大きさIxと電解液の濃度との比例関係は変化しない。したがって、上記実施形態によれば、電解液の量に応じて電圧又は電流と電解液の濃度との関係を用意したり、電解液の量を常に一定に保ったりする必要もなく、簡単かつ的確に電解液の濃度を測定することができる。
【0107】
また、上記実施形態においては、図6A乃至図6Cの電解装置作動制御プログラムのステップS210,S212,S240〜S292の処理、及び図8Aの対称性評価ルーチンのステップS402〜S410,S416〜S424の処理によって電極15a,15b間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流によって発生する磁界の強さHxy及び方向θxyを検出し、次のステップS412,S414の処理によって前記複数の箇所にそれぞれ流れる電流の大きさIxy及び方向θixyを計算するとともに、X方向の電流の大きさIx(n,m)を計算した。そして、図8BのステップS430〜S452の処理により、前記複数の箇所にてX方向にそれぞれ流れる電流の大きさIx(n,m)を用いて、電極15a,15b間の中心位置に対する電流及び磁界の分布の対称性を表す電流分布対称評価値Symを計算し、ステップS456の処理によって電流分布対称評価値Symと所定の小さな値ΔSymとを比較して、電極15a,15bの異常の有無を判定するようにした。これにより、上記実施形態によれば、電解液中を流れる電流の分布が電極15a,15b間の中心位置に対して対称ではなくなる原因となる、電極15a,15bの表面に異常が発生したことが自動的に検出される。この異常は、例えば、変質又は異物質の付着によって電流が流れない箇所が発生したり、絶縁部分が剥がれたりすることである。
【0108】
また、上記実施形態においては、図8Bの対称性評価ルーチンのステップS454の処理により、電極15a,15b間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流の大きさデータIxy(n,m)、同電流の方向データθixy(n,m)、X方向に流れる電流の大きさデータIx(n,m)及びY方向に流れる電流の大きさデータIy(n、m)(n=1〜nmax,m=1〜mmax)が表示される。これにより、作業者は、磁界の強さに関する情報の表示を見て、電極15a,15b間の中心位置に対する磁界の分布の対称性を視覚的に判断することにより、電極15a,15bにおける異常の発生を簡単に発見できるようになり、作業者にとって便利となる。
【0109】
また、上記実施形態においては、交流信号供給回路55及び通電回路16が、所定周波数の交流成分を重畳した直流電圧を電解槽10の電極15a,15b間に通電する。これにより、電解槽10内の電解液中には前記交流成分に応じた電流が流れ、磁気センサ20には前記交流成分に応じた磁界が発生する。この発生される磁界はセンサ信号取出回路56によって取り出されてロックインアンプ57に供給され、ロックインアンプ57は前記所定周波数の交流成分に対応して発生される磁界を表す信号のみを取出して出力する。したがって、比較的簡単な構成で、外部磁界の影響を受けないようにして対象とする磁界を検出でき、装置のコストを抑えたうえで、外部磁界が一様になるようにする必要もなく、電解液中を流れる電流によって発生される磁界を精度よく検出できるので、ひいては前記電解液の濃度を精度よく検出できるようになるとともに、電極15a,15bの異常を精度よく検出できるようになる。
【0110】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0111】
上記実施形態では、図5A及び図5Bのテーブル作成プログラムにより、X方向の電流の大きさIxに対する電解液の濃度の変化特性を表すテーブルを作成し、図7の電解液濃度計算ルーチンにより、X方向の電流の大きさIxを検出して、前記テーブルを参照することにより検出したX方向の電流の大きさに応じた電解液の濃度を決定するようにした。しかし、Y方向の磁界の強さHyは前記X方向の電流の大きさIxに比例するので、前記方法に代えて、Y方向の磁界の強さHyに対する電解液の濃度の変化特性を表すテーブルを作成し、Y方向の磁界の強さHy検出して、前記磁界の強さHyに関するテーブルを参照することにより検出したY方向の磁界の強さHyに応じて電解液の濃度を決定するようにしてもよい。
【0112】
また、電解槽10の中心位置(Xce位置、Yce位置)にて電解液中をX方向に流れる電流の大きさIxは、前記中心位置にて電解液中を流れる電流の大きさIxyにほぼ等しい。したがって、前記X方向の電流の大きさIxを用いてテーブルを作成するとともにテーブルを参照して電解液の濃度を検出するのに代えて、電流の大きさIxyを用いてテーブルを作成するとともに、テーブルを参照することにより電流の大きさIxyに応じた電解液の濃度を検出するようにしてもよい。さらに、磁界の強さHxyは前記電流の大きさIxyに比例するので、磁界の強さHxyを用いてテーブルを作成するとともに、テーブルを参照することにより磁界の強さHxyに応じた電解液の濃度を検出するようにしてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、対称性評価のための図8BのステップS432〜436の処理による偏差Dev(k,s)の計算においては、X方向の電流の大きさデータIx(n)を用いた。しかし、これに代えて、電極15a,15b間方向である電流の大きさデータIxy(n,m)を用いて偏差Dev(m,s)を計算してもよい。または、電流の大きさデータIx(n),Ixy(n)をそれぞれ用いて2つの偏差Dev(m,s)を計算してもよい。なお、偏差Dev(m,s)をX方向の電流の大きさデータIx(n,m)の計算に加えて、電流の大きさデータIxy(n、m)を用いて計算している場合は、電流分布対称評価値Symは2つの値が計算されるので、これらの2つの値でそれぞれ合否を判定し、双方が合格となったとき「合格」と判定し、片方でも不合格であれば、「不合格」と判定するようにするとよい。さらに、この場合も、X方向電流の大きさはY方向の磁界の強さHyに比例し、電流の大きさIxyは磁界の強さHxyに比例するので、前記X方向の電流の大きさIx及び電流の大きさIxyに代えて、磁界の強さHy、Hxyをそれぞれ用いるようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、電解液の濃度と電流分布の両測定を行うようにした。しかし、電極15a,15bの異常検出を行う必要がない場合には、磁気センサ20をX,Y方向に移動させる機構を設けず、上記実施形態の電解液の濃度測定のときの位置に磁気センサ20を取り付けて、電解液の濃度測定を所定時間間隔で行うのみでよい。
【0115】
また、上記実施形態では、電解液の濃度測定を所定時間ごとに繰返して、測定回数が所定回数に達するごとに電流分布を測定するようにした。しかし、電解液の濃度の変化速度が小さければ、前記方法に代えて、所定時間ごとに電解液の濃度と電流分布の両測定を行うようにしてよい。この場合、設定されたX方向位置及びY方向位置でX方向の電流の大きさIxと電解液の濃度との関係テーブルを作成し、その位置でのX方向の電流の大きさIxから関係テーブルを用いて電解液の濃度を計算するようにすればよい。
【0116】
また、上記実施形態では、電流分布を測定するときには、1つの磁気センサ20をX方向及びY方向に移動させた。しかし、コスト面を重視しなければ、ライン状に設けた複数の磁気センサをこのラインの直角方向に移動させてもよいし、平面状に複数の磁気センサを設けて磁気センサを移動させないようにしてもよい。この場合には、電解液の濃度測定の際には、予め選択した1つの磁気センサが出力する信号を用いればよい。
【0117】
また、上記実施形態では、電流分布対称評価値Symを計算して表示するようにした。しかし、これに代えて、電流分布対称評価値Symを計算することなく、作業者が、目視で電流分布又は磁界分布の画像を見て異常の有無を判定するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、電解液の濃度測定及び電流分布の測定の際、電解装置に通電電圧に交流成分を含ませて直流電圧を出力させた。しかし、外部の磁界を無視してよければ、通常の電解装置のように、通電電圧は交流成分を含まない直流電圧にしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR素子)を利用したが、これに代えて、ホール素子、磁気インピーダンス素子効果センサ、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子などを利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
10…電解槽、15a,15b…電極、12…電解液タンク、13…給水タンク、14…制御装置、16…通電回路、20…磁気センサ、30…Y方向スライド機構、35…Y方向モータ、40…X方向スライド機構、47…X方向モータ、52…X方向フィードモータ制御回路、54…Y方向フィードモータ制御回路、55…交流信号供給回路、56…センサ信号取出回路、57…ロックインアンプ、60…コントローラ、61…入力装置、62…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を備えるとともに電解液を収容した電解槽を有する電解装置に適用され、前記電解槽内の電解液の濃度を測定する電解液濃度測定装置において、
前記一対の電極間に電圧を印加して電解液中に電流を流す電圧印加手段と、
前記電圧印加手段による電圧の印加により、前記電解液中の所定位置に流れる電流によって発生する磁界の強さを検出する第1磁界検出手段と、
予め記憶されていて、前記電解液中の所定位置に流れる電流の大きさ又は前記電流の大きさに対応した磁界の強さと、電解液の濃度との関係を用いて、前記第1磁界検出手段によって検出された磁界の強さ又は前記検出された磁界の強さに対応した電流の大きさに基づいて電解液の濃度を検出する電解液濃度検出手段とを備えたことを特徴する電解液濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電解液濃度測定装置において、さらに、
前記一対の電極間の中心位置に対して対称になる複数の箇所にそれぞれ流れる電流によって発生する磁界の強さを検出する第2磁界検出手段を備えたことを特徴とする電界液濃度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電解液濃度測定装置において、さらに、
前記第2磁界検出手段によって検出された前記複数の箇所における磁界の強さから、前記一対の電極間の中心位置に対する磁界の分布の対称性を表す評価値を計算する対称性評価値計算手段と、
前記対称性評価値計算手段によって計算された評価値に応じて前記一対の電極の異常を判定する電極異常判定手段とを備えたことを特徴とする電解液濃度測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載した電解液濃度測定装置において、さらに、
前記第2磁界検出手段によって検出された前記複数の箇所における磁界の強さに関する情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする電解液濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載した電解液濃度測定装置において、
前記電圧印加手段は、所定の周期で大きさが変化する電圧を印加し、
前記第1磁界検出手段は、前記所定の周期と等しい周期で強度が変化する磁界の強さを検出することを特徴とする電解液濃度測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載した電解液濃度測定装置において、
前記電圧印加手段は、所定の周期で大きさが変化する電圧を印加し、
前記第2磁界検出手段は、前記所定の周期と等しい周期で強度が変化する磁界の強さを検出することを特徴とする電解液濃度測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207947(P2012−207947A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71976(P2011−71976)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】