説明

電解質

電解質は、連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分と、伝導性基材を有するポリマー電解質相とを含む。連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分は、相互接続された多孔質構造を含み、例えば、モノリスであっても良い。多孔質成分が電解質相と接触する場合、多孔質成分は、電解質相で満たされ、かつ電解質相と一体化される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、連続的なメソナノポーラスあるいはナノポーラスの成分と、ポリマー電解質相とを含む電解質、ポリマー電解質の生産のための方法、及び、電気化学的応用でのその使用に関する。
【0002】
ゲルポリマー電解質は、リチウム二次電池及び電気化学スーパーキャパシタのような電力貯蔵装置に使用されている。液体の電解質に比較し、固体状態(ゲル)ポリマー電解質は、向上された耐久性と減じられた液漏れとを提供し、それに加え、それらは比較的安価で、調製が容易で、かつ広い電圧窓を有する。しかしながら、ポリマー電解質は、それらの比較的低いイオン伝導度を含む、いくつかの不利な点を有する。
【0003】
電解質の伝導度と機械的特性の双方を改良するための試みは、SiO2,Al23,TiO2のような単体のナノ粒子のポリマー電解質への添加を含んでいる。結果として生じるイオン伝導度は、改善され得る(0.001(S/cm)まで)が、改良点にも拘わらず、絶対的な機械的特性はいまだに極めて劣る(引っ張り強度は一般に2.5MPaに達しているに過ぎない)。
【0004】
単体のナノ粒子(SiO2,Al23,TiO2)のポリマー電解質システムへの添加は、電解質の伝導度と機械的性能を同時に改良するための最適な形態を生じない。単に連続的な補強材は、充填材相の機械的性能がより完全に利用されることを許容することが当業者において理解される。微粒子の使用は、補強材相がその優れた機械的性能を複合体に付与することが可能な程度に十分に高い界面応力を許容しない。イオン伝導度における改良は、電解質と粒子間の界面相と関連づけられる。イオン伝導度における十分な改良を得るために、この界面相は、浸透されたネットワークを形成するため、全電解質材料中に及ぶべきである。しかしながら、SiO2,Al23またはTiO2のような単体のナノ粒子の添加と共に、この浸透は、任意で、統計的な仕方で起こり、非効率な輸送ネットワークを導く。伝導経路は、それゆえ入り組み、余分なループと同様に、不活性な電解質が閉じ込められた穴とを含む。加えて、凸状粒子は、それらが導入する表面積に比して大きな容積比率を占める。さらにもう一つ、このタイプのシステムの実質的な問題は、有機相と無機相の低い親和性のため、有機相と無機相の相溶性が低いことである。この低い親和性は、相分離を導き、供給され得る粒子の充填比率を制限し、機械的な欠陥の一因となる欠点として作用する可能性のある大きな塊を導入する。粒子の乏しい分散性は、局部的に様々な特性をも招き、そして浸透ネットワークを部分的又は全体的に分断することが可能である。
【0005】
代替の方法は硬い粒子に依存するのではなく、少なくとも、相互侵入高分子網目(IPNs)に依存する。ここで、二つの異なるポリマーシステムは、二種類の高分子鎖が相互侵入するような方法で重合される。目的は、二つのシステムの機械的又は電気化学的利点を明らかにすることであるが、しかしながら、結果は、一般に、いずれのシステムの最善な特性を明らかにしない平均的な性能である。
【0006】
発明は、高い電気化学的及び機械的性能を組み合わせる多機能な電解質の新たな種類の用意を許容する。合成は、均一で、高い秩序の、二連の(ナノ又はメソ)構造を高い界面面積で作る手段を提供する。本発明は、連続的な無機相、例えばセラミックス相、あるいは堅い有機相を電解質システム、好ましくはポリマー電解質システムに直接添加することを含み、結果として、改良された伝導度と機械的特性を生じる。
【0007】
発明の第1の態様は、それゆえ、連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分と、連続的な電解質相とを含む電解質を提供し、そこにおいて、電解質相は、電気的絶縁相以外のイオン伝導性相のような伝導性基材を含む。それゆえ、二つの連続的な相互侵入ナノ/メソ構造相−一つは剛性で、一つは電解質−が提供される。
【0008】
一つの実施形態において、二連構造はモノリスであり、それぞれの相−例えば剛性又は構造的に連続なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分は、モノリスあるいはモノリス成分である。この実施形態の目的のため、構造的なモノリスは全ての単純なテンプレート材料(templated material)から用意される。材料は、極性表面を好ましくは有する。特に、構造的なモノリスは、シリカ、チタニア、アルミナ及び酸化亜鉛のような連続的な無機材料か、ビスフェノールA(エポキシ)のジクリシジルエーテルのような連続的に堅い有機材料から構成される。二連のモノリスは、さらに、無機相に加えて有機相を使用して作られても良く、そこにおいて、有機相はイオン伝導に適したものであろう。発明に係る電解質は、燃料電池、電池及び電気化学キャパシタなどのような電気化学的応用での使用に供されることは、正当に評価されるであろう。
【0009】
第1の態様に係る構造的に連続なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分は、電気化学的応用の他の成分に適合し、かつ電気化学的応用の作動条件で電気化学的に安定である、全ての単純なテンプレート材料から望ましくは構成される。成分が、連続的で堅い構造により囲まれ、相互接続された細孔の連続的なネットワークを含むことは、正当に評価されるであろう。成分は、それゆえ、代替的に、あらゆる連続的なメソポーラス又はナノポーラスの材料であっても良い。
【0010】
伝導性基材は塩を含んでいても良い。電解質相は、それゆえ、塩の溶液又は溶融塩を含む液体電解質相として供されても良い。本発明での使用に適した塩の例は、電池、燃料電池及び電気化学キャパシタあるいはスーパーキャパシタ応用のために現在使用されているものを含む。この発明の目的のため、塩は、リチウムあるいはアンモニウムの塩、より好ましくは、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩あるいはほうふっ化物のようなリチウム又はアンモニウムの塩を含む。
【0011】
発明の好ましい態様において、伝導性基材は、付加的にポリマーを含む。発明の特に好ましい態様において、伝導性基材は、塩とポリマーを含む。この発明の目的のため、ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリアクリロニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ガンマ−ブチルラクトンあるいは酢酸メチルから選択されるポリマー及び/又はオリゴマーである。本発明の塩は、ポリマーに溶解していることが望ましい。もし必要であれば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、琥珀酸ニトリル、ブチロラクトン(butyroactone)あるいは同等の水のような可塑剤は、ポリマー中への塩の溶解を確実にするために含まれ得る。塩は、あらゆる適切な電解質塩であっても良い。
【0012】
電解質が、メソポーラス又はナノポーラスなモノリスと、伝導性基材を含む電解質相とを含む場合、そこにおいて前記基材はポリマーと塩とを含み、モノリス、ポリマー及び塩は1:1:1重量比で望ましくは提供される。
【0013】
連続的なメソポーラス又はナノポーラスの成分と連続的なポリマー電解質相とを含む電解質の生産は、イオン伝導率のための連続相と機械的強固さのための他の連続相とを同時に提供する。加えて、超並列的に、連続的な界面面積は、通常の粒子充填システムの非能率(例えば、余分なループ、デッドスペース)を招くことなく、電解質相の構造の変更によってイオン伝導度を補助し、そして材料の相間の機械的な負荷輸送を補助する。ポーラスモノリスを生産するために使用されるテンプレート(template)の規定された性質は、電解質相との相間での厚さを最適化するために適合させられる細孔の寸法と、電解質の機械的性能を最適化するために適合させられる無機相の厚さとを許容する。実施形態のモノリスは、1〜1000nm、好ましくは1〜100nm、より好ましくは2〜10nm、最も好ましくは3〜5nmの範囲の細孔サイズを持つ多孔質構造を好ましくは提供する。二連続相と関連した負の表面曲率は、固体材料によって占められた体積についてのとても高い表面積を保証する。加えて、構造のナノスケール寸法は重要である。一方、固有の特徴サイズは、大きな欠陥として作用する(凝集が電流技術においてするように作用する)ことにより構造を過度に弱めないことに十分な小ささである。特に、連続構造の長さと厚さは、電解質の圧縮特性及びせん断特性の双方を改良する。一方、相互侵入高分子網目とは異なり、機械相の「圧縮材(struts)」は、それらに固有な機械的剛性を明らかにするのに十分な大きさである。さらに、不連続な微細構造は、曲がりくねったクラック経路と、クラックの方向及び阻止と、そしてそれゆえに、固有の強化メカニズムとを促進し、結果として生じる材料の耐久性を拡大するであろう。最後に、このシステムは、大規模な相分離の結果を本質的に示すことができず、それゆえ、装置の変動性と、シリカの凝集又は不十分な分布と関連した欠陥とが避けられる。
【0014】
発明の第2の態様は、発明の第1の態様の電解質の生産のための方法を提供し、前記方法は連続的なメソポーラスまたはナノポーラスの成分と電解質相との接触を含み、そこにおいて電解質相は伝導性基材を含む。
【0015】
連続的なメソポーラスまたはナノポーラスの成分が、相互接続された多孔質構造(例えばニ連続相)を含むことは、正当に評価されるであろう。多孔質成分が電解質相と接触する場合、多孔質成分は、電解質相で満たされ、かつ電解質相と一体化される。
【0016】
電解質相がポリマーと塩とを含む場合、電解質相は、ポリマーと塩とを均質化/せん断の分散技術を用いて混合することにより生産され得る。電解質は、たいてい、72時間の総計期間を超えて調製される。
【0017】
無機もしくは堅い有機の多孔質成分は、無機もしくは堅い有機のモノリス前駆体から軟質のテンプレート(template)を用いてゾル−ゲル法により生産され得る。軟質のテンプレートは、好ましくは、プルロニック(Pluronic)のようなトリブロック共重合体、EO及びPOのブロックからなる共重合体、ジブロック共重合体、あるいは非イオン性/カチオン性/アニオン性界面活性剤である。テンプレートは、相互接続された多孔質構造を持つモノリスを生産する電解質相の応用の前に除去される。
多孔質成分は剛性構造により囲まれた細孔のネットワークを含む。剛性構造及び細孔の、規模並びに性質は、異なる分子及び超分子のテンプレート(例えば、異なる分子量を持つトリブロック共重合体)の使用により独立的に調整され得る。
【0018】
テンプレート法は、それゆえ、モノリスの長さと厚さの双方、細孔壁の厚さ、及び、細孔サイズが、独立的に変化されるのを許容するであろう。
【0019】
代替の特徴において、電解質は、第1の態様で規定された電解質相の存在下でモノリス前駆体を形成することにより生産され得る。この目的のため、電解質相は、モノリス形成中に受動態であり得るか、あるいはモノリス形成のためのテンプレートとして作用しえるか、または適切な電解質を形成するために同時に反応し得る。
【0020】
ゾル-ゲル法での使用のための好ましいモノリス前駆体は、アルコキシド、酢酸塩、酸化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ハロゲン化物あるいはアルミニウム、セリウム、クロム、鉄、リチウム、マグネシウム、シリコン、錫、チタン、イットリウム及び/又は亜鉛のエステルを含む。一方、前駆体は、シラン、アルキル亜鉛もしくはアルキルアルミニウムなどのようなアルキル金属種であり得る。好ましい特徴において、前駆体はシリコン、チタン、亜鉛もしくはアルミニウムのアルコキシド又はハロゲン化物である。アルコキシドは、好ましくは、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシドあるいはフェノキシドである。エステルは、好ましくは、カプロン酸エチルである。ゾル−ゲル材料システムで使用され得る他の材料は、無機モノリス前駆体としての使用にも適している。モノリス前駆体の好ましい例は、テトラエチルオルトシリケートである。
発明の第3の態様は、相当数の通常の電気化学的応用における使用、特にポリマー電解質燃料電池、ポリマー(リチウム)電池及びスーパーキャパシタにおける使用に用いる発明の電解質を提供する。これらの応用の全ては、低い揮発性と高い機械的な強固さと結合された高いイオン伝導度を持つ電解質から利益を得る。本願の電解質が、そのような電気化学的応用における通常の電解質を取り替えるために使用され得る。発明の第3の態様の特別な特徴において、電解質は、多機能構造のエネルギー貯蔵装置での使用に供され、ここでは特に高い機械的特性を持つ電解質が望まれる。
【0021】
発明の第3の態様は、それゆえ、ポリマー電解質によって分離された第1及び第2の電極を有するエネルギー貯蔵装置が提供され、そこにおいて前記ポリマー電解質は、連続的なメソポーラスまたはナノポーラスの成分と、連続的な電解質相又はモノリス成分とを含む。好ましくは、ポリマー電解質によって分離された第1及び第2の電極を有するスーパーキャパシタを含むエネルギー貯蔵装置が提供され、そこにおいて前記ポリマー電解質は連続的なメソポーラス成分またはナノポーラスの連続的な成分と、電解質相とを含み、そこにおいて前記電解質相は連続的な伝導性基材を含む。
【0022】
第3の態様のスーパーキャパシタは、二重層効果又は擬似容量に基づくキャパシタを好ましくは含む。
【0023】
電極は絶縁スペーサにより好ましくは分離され、そこにおいて絶縁スペーサは、好ましくはガラス繊維マットである。
【0024】
特に、エネルギー貯蔵装置は、複数の電極対を含む。さらに、第1の電極及び/または第2の電極は擬似静電容量の電極であり得る。
【0025】
発明の第3の態様の装置の機械的強度は、織られたもしくは編まれたカーボン繊維電極と発明の第1の態様のポリマー電解質との複合体を用いることにより提供される。例えば燃料電池溶液とは違い、構造的な成分は、エネルギー貯蔵を直接に提供するよりはむしろ、単純に、大部分が液体燃料であるエネルギーシステムの小さな成分である。二重層スーパーキャパシタは、体積変化及び電池と関連する電極消費も避け、特にリチウムイオンシステムと異なり、適度な充填要求のみ有し、それらを構造的な役割の範囲にもっとより適応させる。
スーパーキャパシタの最も一般的に知られている形態は、電気化学二重層に基づいている。図1は電気化学二重層の使用に基づく一般的なスーパーキャパシタの概略図を示す。二重層キャパシタにおいて、エネルギーは電極150と電解質130の間の境界における電荷の蓄積170により貯蔵される。貯蔵されたエネルギー量は、利用可能な電極表面積(単純な幾何学的面積よりもはるかに大きい)、ポリマー電解質に溶解されたイオンのサイズと濃度、電解質分解電圧の水準と相関関係にある。スーパーキャパシタは、二つの電極150、セパレータ110及び電解質130からなる。二つの電極150は、活性された炭素、弱く粒状化された材料からなっていても良く、高い表面積を提供するものである。電極150は、電解質130により物理的に分離され、しばしば、追加のセパレータ膜110を持ち;電解質領域130/110は電気的に絶縁である以外にイオン伝導性でなければならない。有機電解質の解離電圧は一般的に3V未満であるため、スーパーキャパシタの最大電圧は通常の誘電キャパシタよりも低く;しかしながら、全体のエネルギーと電力密度は通常、より高い。スーパーキャパシタのスタックは直列もしくは並列に接続され得る。通常、これらのシステムにおける電極と電解質は、組立を促進すると共に内部的な欠陥を提供すること以外には構造的な性能を持たない。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、炭素繊維は、当業者に良く知られているであろう、あらゆる適切な方法で活性化され、エネルギー貯蔵と機械的特性の二種の機能性を持つ電極150を提供する。図1の一般的な幾何学的配置を参照すると、通常の電極は、構造的な炭素繊維電極150以外の、特別に活性化された層により置換され、負荷を生む磁心を損なうことなく、表面は表面積を拡大するために活性化される。電極150は絶縁スペーサ層(110)、好ましくはガラス/ポリマー繊維層又は多孔質絶縁フィルムにより分離される。電極のメソ多孔性は、電解質と電極間の高い接触面積と、それと共に高いエネルギー貯蔵のための電位とを引き起こす。
【0027】
高いイオンの伝導率/移動度と良好な機械的性能(特に圧縮強度)とを同時に提供する発明の第1の態様のポリマー電解質によって、電極は貼り合わされる。実施形態において、電解質樹脂は電極中の繊維の座屈に耐えるための有意な構造的能力を有し、有意な応力伝達を提供する。
【0028】
電極210は、単方向性で、織られたNCF又は3Dに編まれた連続繊維から形成され得、当業者に知られた標準的な複合積層技術;例えば、当業者によく知られているような、液体樹脂(バキュームアシステッドレジンインジェクション成形(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)、樹脂フィルムインフュージョン(Resin Film Infusion)、レジンインジェクション成形(Rein Transfer Moulding)及び可撓性成形型に基づいた樹脂インフュージョン(Resin Infusion Under Flexible Tooling))又はプリプレグ技術;を用いて作られ得る。
【0029】
スーパーキャパシタを作るため、織られた炭素繊維マット(200g/m2)の二層は織られたガラス繊維マットにより分離され、特に、10×10cmのカーボン繊維マットのサンプルは、僅かに大きく裁断されたガラス繊維マットを挟みながら裁断される。含浸の前に、マットは活性化剤としてKOHを用いて活性化される。KOHは濃いスラリーを形成するために水と混合された。炭素繊維はスラリー(KOH比が1:1 (w/w)であった)に浸漬され、室温にて2時間放置した。浸漬された繊維は、水平な管状炉に移送され、N2の流れ(0.5 l/min)中で800℃(加熱速度5℃/min)で1時間加熱された。サンプルは窒素雰囲気中で室温まで冷却された。活性された炭素繊維(Acf)は、過剰なKOHを除去するために洗液がpH7に到達するまで蒸留水で洗浄され、乾燥された。
【0030】
中間に位置するガラス繊維を有する、二つの炭素繊維堆積物は、型内に配置され、無機モノリスを調製するための反応混合物が注入された(比は1:1w/wであった)。系は、その後、エージングのために14℃で36時間保持され、その後、60℃で一晩保持された。合成後、テンプレートは除去され、メソポーラスシリカ複合体を形成し、ポリマー電解質(ポリマー電解質に対して1:1wt%のメソポーラスシリカ複合体)が浸漬法を用いて充填された後、引き続き、濾紙を用いて余分な電解質が除去された。
【0031】
発明の第4の態様は、発明の第3の態様のエネルギー貯蔵装置を含む電気装置を提供する。この発明の目的のため、電気装置は、ラップトップコンピュータ、携帯電話、ハイブリッド電気自動車電池、非常設備装置、推進システム装置あるいはダウンホールエネルギー供給になり得る。
【0032】
発明のそれぞれの態様の全ての好ましい特徴は、必要な変更を加えて全ての他の態様に適用される。
【0033】
発明は、以下の限定されない実施例を参照して次に説明されるであろう。
【0034】
実施例1
多機能電解質の合成は、以下に記載されているように行われる。プルロニック(Pluronic)(P123)は、エタノール(5g)と1mol/LのHCl水溶液(0.2g)の混合物に溶解され、均質な溶液が形成されるまで攪拌された。いまだ攪拌中に、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(2.08g,2.23ml)は溶液に添加され、混合物は10分間更に攪拌された。上述の溶液は、その後、深皿に移され、空気中で14℃にて36時間エージングされた。シリカゲルは、液体パラフィンの層(2〜3mm)で被覆された後、90℃で加熱され、全てのエタノールを完全に除去するため、この温度で12時間保持された。生産物の表面上の残留液体パラフィンは、濾紙を用いて除去された。この後、界面活性剤は、シリカ構造と、ポリアクリロニトリル(PAN)電解質ゲルで埋め戻されたナノポーラスとから洗浄された。PANゲルは、エチレンカーボネート(EC)を可塑剤として、プロピレンカーボネート(PC)を溶媒として、PAN及びテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロ燐酸塩(TBAPF)を伝導性電解質として用いて合成された。PANは、75℃の真空下で24時間乾燥された。BET分析のため、テンプレート(templating)界面活性剤(プルロニック)を除去するため、シリカモノリスはEtOHで24時間洗浄され、その後、70℃で真空炉中で一定重量になるまで乾燥された。合成後、電気化学分析のため、メソポーラスシリカモノリスにポリマー電解質が浸漬法を用いて充填された後、引き続き、濾紙を用いて余分な電解質が除去された。ポリマーゲルの形成のため、TBAPF6(3.5wt.%)がEC(57.3wt.%)及びPC(31.5wt.%)に室温で溶解された。完全な溶解後、PAN(7.7wt%)はこの溶液に混合され、透明な非常に粘性な溶液が形成されるまで(約2−3分後)、110℃に予熱されたホットプレート上に攪拌された状態で配置された。
【0035】
形成されたシリカモノリスの特性は、TEOSとプルロニック間の比と同様に反応層の厚さに依存する。1〜276m2/gの表面積と4.4〜5.4nmの平均細孔直径を持つモノリスが得られた。PANゲル電解質で充填されたシリカモノリスの導電率は0.01〜21.8mS/cmの範囲であった。
【0036】
実施例2
第2の実施例において、MPSに基づいた複合体は、PAN電解質で充填される。中間に位置するガラス繊維マットを有する、二つのカーボン繊維マットは、型内に配置され、MPS反応混合物が注入された(比が1/1w/wであった)。MPS反応混合物は、次の方法によって調製された。プルロニック(1g)は、5gのエタノールと0.2gのHCl水溶液(1mol/L)の混合物に溶解され、均質な溶液が形成されるまで攪拌された。いまだ攪拌中に、2.08g(2.23ml)のTEOSが溶液に添加され、そして混合物はさらに10分間攪拌された。この溶液は、その後、深皿に移され、空気中で14℃にて36時間エージングされた。シリカゲルは、液体パラフィンの層(2〜3mm)で被覆され、90℃で加熱され、そして全てのエタノールを完全に除去するためにこの温度で12時間保持された。生産品の表面上の残留液体パラフィンは、濾紙を用いて除去された。
【0037】
繊維を含む型と反応混合物とは、その後、14℃で36時間保持され、その後、残留EtOHを除去するために60℃で炉内に12時間配置された。界面活性剤は、EtOH中で複合体を多数回洗浄することにより除去された。複合体は、その後、70℃で真空炉内において一晩乾燥された。メソポーラスシリカ複合体に、PANゲル電解質(ポリマー電解質に対して1:1wt.-%のメソポーラスシリカ複合体)が浸漬法を用いて充填された後、濾過によって余剰の電解質が除去された。PANゲル電解質は、上述(実施例1)のようにして調製された。
【0038】
生産された複合体の比容量は、インピーダンス分光法(impedance spectroscopy)により決定され、使用されたカーボン繊維の種類に依存して2.16〜10.6mF/gであった。
【0039】
炭素繊維の詳細
Tissa Glasweberei AG (Oberkulm, スイス(Switzerland))から供給され、面密度が200gm-2で、織られたマットの厚さが0.27mmで、PANが基になっている、HTA炭素繊維織(5通糸のしゅす織)布(862.0200.01)が、この作業中、活性化された炭素繊維複合体を生産するため、前駆体繊維として使用された。比表面積が1100m2/gの、工業的に活性化された炭素繊維{Taiwan Carbon Technology Co, Ltd.(台中市(Taichung)、台湾(Taiwan))から提供されたAW 1114}が、比較のために使用された。面密度が250gm-2で、織られたマットの厚さが0.24mmの、ガラス繊維 (GF)織布6K (綾織)も、Tissa Glasweberei AG (Oberkulm, スイス(Switzerland))から提供された。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、電気化学二重層の使用に基づく一般的なスーパーキャパシタの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分と、電解質相とを含む電解質であって、前記電解質相は、連続的な伝導性成分を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の電解質において、前記連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分は、モノリスである。
【請求項3】
請求項2に記載の電解質において、前記モノリスは、シリカ、チタニア、アルミナ及び酸化亜鉛を含む群から選択されるものである。
【請求項4】
先行する全ての請求項に記載の電解質において、前記連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分は、剛性である。
【請求項5】
先行する全ての請求項に記載の電解質において、前記伝導性基材は、塩と、ポリマー及び/または溶媒とを含む。
【請求項6】
請求項5に記載の電解質において、前記ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ガンマ−ブチルラクトンあるいは酢酸メチルから選択される。
【請求項7】
請求項5または請求項6いずれか1項に記載の電解質において、前記塩は、リチウム又はアンモニウムの塩である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質の生産のための方法は、連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分を電解質相と接触させることを含み、前記電解質相は伝導性基材を含む。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質の生産のための方法は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質相の存在下で連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分を形成することを含む。
【請求項10】
エネルギー貯蔵装置における請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質の使用は、ポリマー電解質によって分離された第1及び第2の電極を有するスーパーキャパシタを含み、前記電解質は、連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分と、電解質相とを含み、前記電解質相は、伝導性基材を含む。
【請求項11】
電解質によって分離された第1及び第2の電極を有するスーパーキャパシタを含むエネルギー貯蔵装置であって、前記電解質は、連続的なメソポーラスあるいはナノポーラスの成分と、電解質相とを含み、前記電解質相は、伝導性基材を含む。
【請求項12】
ラップトップコンピュータ、携帯電話、ハイブリッド電気自動車電池、非常設備装置、推進システム装置あるいはダウンホールエネルギー供給は、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置を含む。
【請求項13】
エネルギー貯蔵装置、セル、電池、燃料電池あるいはリチウムイオン電池は、請求項1〜7いずれか1項記載の電解質を含む。
【請求項14】
二連続電解質は、メソポーラスあるいはナノポーラスの成分の点在と、イオン伝導体とを含む。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529248(P2011−529248A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519238(P2011−519238)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001841
【国際公開番号】WO2010/010363
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505167543)インペリアル・イノベ−ションズ・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】