説明

電話機のフックボタン構造

【課題】電話機に振動等が加えられたときのフックスイッチの誤動作を防止する。
【解決手段】電話機本体の筺体1に載置されるハンドセット2の自重がフックボタン4に加わると、フックボタン4が下降して軸6がスポンジ13を押し潰しながら長孔9の下端に移動した後、フックボタン4が回転することでスイッチレバー11が回転してフックスイッチ10がオンに切り替わり、ハンドセット2を筺体1から持ち上げるとスポンジ13の復元力により軸6を介してフックボタン4が押上げられ、長孔9の上端に移動した後、フックボタン4が筺体1上に突出するように回転することでスイッチレバー11が付勢手段により回転してフックスイッチ10がオンに切り替わるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス用あるいは家庭用の電話機におけるフックボタン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電話機のフックボタン構造として、一端を中心に回転するフックボタンを電話機の筐体の凹部に設けられた穴から突出するように配置すると共に、前記筐体内に設けられたフックスイッチの回転可能なスイッチレバーの一端を前記フックボタンの背面(下面)側に配置したものがある。
【0003】
このフックボタン構造は、ハンドセットを前記凹部に載置すると、このハンドセットの自重により前記フックボタンが前記筐体内に押下げられ、これにより前記スイッチレバーが押されて回転することで前記フックスイッチがオン状態になり、前記ハンドセットを持ち上げて前記凹部から取外すと、前記フックボタンが前記穴から突出すると共に前記レバーが元に戻るように回転して前記フックスイッチがオフ状態に切替わるものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−87170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、フックスイッチのスイッチレバーの一端がフックボタンと接触あるいはわずかに押込んだ位置に配置されているため、電話機に加わる振動等によりフックボタンが回転すると、それに応じてフックスイッチのスイッチレバーも回転してしまい、それによってフックスイッチが誤動作するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明による電話機のフックボタン構造は、電話機のハンドセットを載置する筐体に設けた透孔から上部が筐体上に突出できるように配置されかつ下部に設けた軸を前記筺体内に設けられた軸受に斜めに形成された長孔に装着した回転可能なフックボタンと、前記筺体内に設けられたフックスイッチと、このフックスイッチの一側に回転可能に設けられ先端を前記フックボタンの下部に形成されたレバー当接部上に当接させたスイッチレバーと、このスイッチレバーがレバー当接部を押し下げて前記フックボタンの上部が前記透孔から上部が筐体上に突出するようにスイッチレバーを付勢する付勢手段と、前記フックボタンの軸の下側に配置された弾性体を備え、前記筺体に載置されるハンドセットの自重が前記フックボタンに加わると、フックボタンが下降して前記軸が前記弾性体を変形させながら前記長孔の下端側に移動した後、前記フックボタンが回転することで前記スイッチレバーが回転して前記フックスイッチがオンに切り替わり、前記ハンドセットを前記筺体から持ち上げると前記弾性体の復元力により前記軸を介して前記フックボタンが押上げられ、前記長孔の上端側に移動した後、前記フックボタンが回転することで前記スイッチレバーが前記付勢手段により回転して前記フックスイッチがオンに切り替わるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにした本発明は、スイッチレバーの回転動作によりフックスイッチがオンの状態からオフに、また逆にオフの状態からオンに切替わる際、フックボタンが回転動作する前に下降または上昇する動作を行うようにし、このフックボタンの上下動中はスイッチレバーが回転しないようにすることができる。つまりフックボタンが上下動の分スイッチレバーの不動作領域を意図的に作りだすことができるので、電話機に振動等が加わったとき、フックボタンは上下動するだけで回転動作は殆どしないため、スイッチレバーも回転することがなくなり、振動等によるフックスイッチの誤動作を防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す側断面図
【図2】本発明が適用される電話機の側面図
【図3】実施例の作用を示す側断面図
【図4】実施例の作用を示す側断面図
【図5】スイッチレバーの不動作領域を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明による電話機のフックボタン構造の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図2において1は電話機本体の筐体、2はハンドセット(送受話器)で、通話しないときは筐体1上にハンドセット2を載置するものとなっている。
【0012】
図1に示すように筐体1にはハンドセット2の受話部を載置する部分に透孔3が設けられ、この透孔3から上部が筐体1上に突出するようにフックボタン4が配置されている。
【0013】
このフックボタン4の上部つまり筐体1上に突出する部分には所定角度に傾斜した斜面5が形成され、またフックボタン4の下部には図面の奥行き方向に延在する軸6と、この軸6と同様に図面の奥行き方向に向けてレバー当接部7がそれぞれ形成されている。
【0014】
8は筐体1の上部内面から垂下するように設けられた軸受で、この軸受8の下部にはフックボタン4の軸6の直径よりやや大きい幅でかつ該幅より長い長さを有する略小判状の長孔9が斜めに形成されており、この長孔9にフックボタン4の軸6が装着されていて、これによりフックボタン4は軸6を中心に回転するように支持されている。
【0015】
10はフックスイッチで、一側にスイッチレバー11を有し、このスイッチレバー11の先端部はフックボタン4のレバー当接部7の上面に当接している。
【0016】
また、スイッチレバー11は軸12を中心に回転するように設けられており、この軸12はフックボタン4の軸6を挟んでスイッチレバー11の先端部と反対側の位置に設けられていて、スイッチレバー11の回転によりフックスイッチ10がオン、オフするようになっている。
【0017】
更に、スイッチレバー11は、例えば軸12に装着された図示しないトーションスプリング(付勢手段)によりフックボタン4のレバー当接部7を押し下げるように付勢されていて、これによりフックボタン4は軸6を中心に時計回り方向に回転し、上部が筐体の透孔3から突出するようになっている。
【0018】
13は筐体1の底部内面とフックボタン4の軸6との間に配置された弾性体で、本実施例ではシリコン系のスポンジが用いられている。
【0019】
このスポンジ13は軸受8の長孔9の上端側に位置する軸6に接する高さに設定されており、その弾性力(反発力)は軸6を介してフックボタン4を押上げることが可能であるがスイッチレバー11を付勢する前記の図示しないトーションスプリングの付勢力よりは弱いものとなっている。
【0020】
上述した構成の作用について説明する。図3(a)〜(c)は筐体1上にハンドセット2を載置する場合、図4(a)〜(c)は筐体1上からハンドセット2を取上げる場合の工程をそれぞれ示している。
【0021】
まず、通話等のために筐体1上からハンドセット2が取上げられた状態では、図1及び図3(a)に示したように、図示しないトーションスプリングにより付勢されたフックスイッチ10のスイッチレバー11の先端部がフックボタン4のレバー当接部7を押し下げることで、フックボタン4の上部が透孔3から筐体1上に突出しており、また、フックボタン4の軸6はスポンジ13の弾性力により軸受8の長孔9の上端側に押上げられている。
【0022】
この状態から、図2に示したようにハンドセット2を筐体1上に載置すると、フックボタン4の斜面5の上端部付近にハンドセット2の自重が加えられるが、スイッチレバー11を付勢しているトーションスプリングの付勢力がスポンジ13の弾性力よりも強いので、図3(b)に示したように、フックボタン4の軸6はスポンジ13を押潰しながらつまり変形させながらスイッチレバー11の先端部とレバー当接部7の接触部を支点として弧を描くように軸受8の長孔9の下端側に移動して行き、これによりフックボタン4は殆ど回転することなくハンドセット2の自重によって斜め方向に押下げられる。このようにフックボタン4は殆ど回転することなくハンドセット2の自重によって斜め方向に押下げられるので、フックスイッチ10のスイッチレバー11の先端部はレバー当接部7から力を受けず、回転しない状態を保つことが可能となる。
【0023】
そして軸6が長孔9の下端に達すると、図3(c)に示したように、フックボタン4は斜面5がほぼ水平の状態になるまで、軸6を中心に反時計方向に回転し、このフックボタン4の回転に伴ってレバー当接部7がフックスイッチ10のスイッチレバー11の先端部を押し上げるので、スイッチレバー11はトーションスプリングの付勢力に抗して軸12を中心に反時計方向に回転してフックスイッチ10がオフの状態からオンに切替わり、電話機は通話が不可能な状態になる。
【0024】
次に、通話等のために筐体1上からハンドセット2を持ち上げて行くと、スポンジ13が自身の弾性力により復元して行き、フックボタン4の軸6を押上げる。これによりフックボタン4の軸6はスイッチレバー11の先端部とレバー当接部7の接触部を支点として弧を描くように軸受8の長孔9の上端側に移動して行き、それに伴ってフックボタン4は、図4(a)に示した状態から図4(b)に示したように斜めに押上げられて行くが、このとき軸6はスポンジ13に押付けられた状態にあるため摩擦により回転しにくい状態となっており、フックボタン4は回転より先にスポンジ13の復元力により押上げられることになる。
【0025】
この時点ではまだスイッチレバー11は回転せず、そのため更にそのままハンドセット2を持ち上げて行くと、フックボタン4の軸6は長孔9の上端に到達し、すると図示しないトーションスプリングにより付勢されたフックスイッチ10のスイッチレバー11が軸12を中心に時計方向に回転する。これによりスイッチレバー11の先端部がフックボタン4のレバー当接部7を押し下げるので、軸6を中心に時計方向に回転して図4(c)に示したように上部が透孔を通り抜けて筺体1上に突出すると共に、スイッチレバー11の回転によって、フックスイッチ10がオンの状態からオフに切替わり、電話機は通話が可能な状態になる。
【0026】
本実施例ではこのようにフックボタン4が動作することでフックスイッチ10がオフからオン、オンからオフに切替わるが、このフックスイッチ10のスイッチレバー11には、その先端部の移動領域中に、フックスイッチ10の状態が切替わらない不動作領域を設定することが望ましいものとされている。
【0027】
図5においてN1はフックスイッチ10のオフからオンに切替わる側の不動作領域、N2はオンからオフに切替わる側の不動作領域を示している。
【0028】
この不動作領域N1、N2はスイッチレバー11の先端部が実線の位置からそれぞれ破線の位置に移動するまでの領域であり、例えばフックボタン4が図1及び図3(a)の状態にあってフックスイッチ10がオフの状態(電話機が通話可能な状態)のとき、スイッチレバー11の先端部が実線の位置から不動作領域N1の範囲内で移動してもフックスイッチ10がオンに切替わらず、またフックボタン4が図4(a)の状態にあってフックスイッチ10がオンの状態(電話機が通話不可能な状態)のとき、スイッチレバー11の先端部が実線の位置から不動作領域N2の範囲内で移動してもフックスイッチ10がオンに切替わらないように設定されたもので、こうすることにより電話機に振動が加わることでフックボタン4が少々回転するぐらいではフックスイッチ10が誤動作しないようにすることができる。
【0029】
このような不動作領域N1、N2は、フックボタン4の軸6の位置に大きく係っており、フックボタン4の動作においても不動作領域N1、N2を有効にするためには、フックボタン4の上部の回転動作範囲がスイッチレバー11の先端部の回転範囲よりも大きくなるように軸6の位置を設定する必要がある。
【0030】
通常、フックボタン4の力点から軸6までの距離をRp、軸6からフックスイッチ10のレバー当接部7とスイッチレバー11の先端部の接触部までの距離をRnとしたとき、距離Rpが距離Rnより大きくなる(Rp>Rn)関係が望ましく、理想的には距離Rpが距離Rnの2倍程度になるようにすると、スイッチレバー11の不動作領域のマージンも2倍となるので、例えばスイッチレバー11の不動作領域N1、N2がそれぞれ2mmのフックスイッチ10を使用した場合、フックボタン4の上部が4mm程度回転動作してもフックスイッチ10の状態は切替わらず、誤動作しにくいものとなるが、実際には、電話機全体の小型化の要求に対してフックボタン4やフックスイッチ10の大きさ、筺体1内の実装スペースが制限されるため、距離Rpを距離Rnよりも充分大きくとることは難しいのが現状である。
【0031】
そのため、本実施例のフックボタン構造は、上述したようにフックボタン4の軸6を軸受8に設けた斜めの長孔9に通すことで、軸6が長孔9に沿って移動するようにし、これによりフックボタン4が上下動するように構成すると共に、軸6の下側にスポンジ13を配して、軸6を押上げる際に摩擦力が生じるようにしており、これによりスイッチレバー11の回転動作によりフックスイッチ10がオンの状態からオフに、また逆にオフの状態からオンに切替わる際、フックボタン4が回転動作する前に下降または上昇する動作を行うようにし、このフックボタン4の上下動中はスイッチレバー11が回転しないようにすることができる。つまりフックボタン4が上下動の分スイッチレバー11の不動作領域を意図的に作りだすことができる。
【0032】
従って、本実施例によれば、電話機に振動等が加わったとき、フックボタン4は上下動するだけで回転動作は殆どしないため、スイッチレバー11も回転することがなくなり、振動等によるフックスイッチ10の誤動作を防止できるという効果が得られる。
【0033】
また、上記のようにフックボタン4が上下動の分スイッチレバー11の不動作領域を意図的に作りだすことができる、設計の自由度が高くなり、小型でフックスイッチ10の誤動作のない安定した電話機を実現することが可能となる。
【0034】
尚、上述した本実施例は、ストロークが小さく不動作領域が非常に小さい小型のフックスイッチや、調整次第で不動作領域が殆どないドームスイッチ等にも適用可能である。
【0035】
また、上述した実施例ではスポンジ13を利用するものとしたが、フックボタン4の軸6を押上げる際に、軸6の回転を摩擦力により抑えることができるゴム製の板バネをスポンジの代わりに用いることも可能である。
【0036】
また、上述した実施例では、スイッチレバー11の付勢手段としてトーションスプリングを用いるものとしたが、コイルスプリング等をスイッチレバー11の付勢手段とすることも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 筺体
2 ハンドセット
3 透孔
4 フックボタン
5 斜面
6 軸
7 レバー当接部
8 軸受
9 長孔
10 フックスイッチ
11 スイッチレバー
12 軸
13 スポンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機のハンドセットを載置する筐体に設けた透孔から上部が筐体上に突出できるように配置されかつ下部に設けた軸を前記筺体内に設けられた軸受に斜めに形成された長孔に装着した回転可能なフックボタンと、前記筺体内に設けられたフックスイッチと、このフックスイッチの一側に回転可能に設けられ先端を前記フックボタンの下部に形成されたレバー当接部上に当接させたスイッチレバーと、このスイッチレバーがレバー当接部を押し下げて前記フックボタンの上部が前記透孔から上部が筐体上に突出するようにスイッチレバーを付勢する付勢手段と、前記フックボタンの軸の下側に配置された弾性体を備え、
前記筺体に載置されるハンドセットの自重が前記フックボタンに加わると、フックボタンが下降して前記軸が前記弾性体を変形させながら前記長孔の下端側に移動した後、前記フックボタンが回転することで前記スイッチレバーが回転して前記フックスイッチがオンに切り替わり、
前記ハンドセットを前記筺体から持ち上げると前記弾性体の復元力により前記軸を介して前記フックボタンが押上げられ、前記長孔の上端側に移動した後、前記フックボタンが回転することで前記スイッチレバーが前記付勢手段により回転して前記フックスイッチがオンに切り替わるようにしたことを特徴とする電話機のフックボタン構造。
【請求項2】
請求項1記載の電話機のフックボタン構造において、
前記弾性体として、前記軸を介して前記フックボタンが押上げる際、摩擦により前記軸の回転を抑えることができるスポンジを用いることを特徴とする電話機のフックボタン構造。
【請求項3】
請求項1記載の電話機のフックボタン構造において、
前記弾性体として、前記軸を介して前記フックボタンが押上げる際、摩擦により前記軸の回転を抑えることができるゴム製の板バネを用いることを特徴とする電話機のフックボタン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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