説明

霧化装置の恒温水循環システム

【課題】恒温槽内の恒温水を、設定温度及び設定量に保ち、霧化装置を良好な状態に維持する。
【解決手段】恒温水が収容された恒温槽と、内部に霧化させる材料を収容して前記恒温槽に侵漬される材料収容容器と、前記恒温槽に接続されて前記恒温水を循環させる恒温循環ポンプ装置と、前記恒温槽内の恒温水の減少分を補う給水装置とを備えた霧化装置の恒温水循環システムである。前記恒温循環ポンプ装置は、循環される恒温水を加熱して前記恒温槽内の恒温水を設定温度に保つ温度調整装置を備える。前記給水装置は前記恒温循環ポンプ装置の流入側に恒温水を供給し、前記温度調整装置で当該恒温水を温度調整した後に前記恒温槽内へ供給する。霧化装置又は配線形成装置に前記恒温水循環システムを組み込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストジェット方式のオープンリペア装置等に用いられる霧化装置の恒温水循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
霧化装置は、半導体チップ上の配線の形成等を行う配線形成装置、例えばミストジェット方式のオープンリペア装置等に用いられる装置である。このような霧化装置では、配線を形成するために、その配線の原料を霧化したミストを発生させるための超音波発振器を有し、その振動の伝達媒体および原料の加熱媒体として純水等の液体を使用する。前記純水等の液体を溜めると共に超音波発振器を取り付けた貯留槽内に前記配線の原料を溜めた容器を浸し、貯留槽内の液体で前記原料を暖め、前記超音波発振器で前記液体を介して前記原料を超音波振動させて霧化させている。
【0003】
さらに、霧化装置の性能維持のために、前記貯留槽に恒温循環ポンプ装置を接続して、貯留槽内の液体を循環させてその温度管理を行っている。
【0004】
なお、このような、前記貯留槽に接続する恒温循環ポンプ装置の例としては、例えば特許文献1の成形金型の冷却装置や、特許文献2の水配管路内のPH維持システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−170849公報
【特許文献2】特開2005−288383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ミスト発生のために使用する超音波発振器の振動の伝達媒体として液体を使用すると、超音波振動によって、液体が蒸発して減少し易くなる。恒温循環ポンプ装置のプロセス部の構造上、経路の密閉化が難しいため、伝達媒体としての液体が徐々に蒸発して減少してしまう。そして、これを放置すると、霧化装置の性能劣化や破損につながってしまうという問題がある。
【0007】
これを解消するために、従来は、タンク内の純水が減少したら、作業者が純水等の液体を補充するという対応をとっていた。
【0008】
しかしながらこの場合は、純水補充という作業を頻繁に行う必要があり、その度に装置を停止する必要が生じる。さらに、純水補充により、貯留槽内の温度分布の均一性が保てなくなってしまう。このため、作業効率が悪いという問題がある。
【0009】
また、前記特許文献1,2においても、液体の減少に対して、液体の温度を変化させずに効率的に補充する機能は備わっておらず、装置を良好な状態で長期間維持することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、低コストで、メンテナンスサイクルを延ばして装置の良好な状態を長期間維持できる、霧化装置の恒温水循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る霧化装置の恒温水循環システムは、恒温水が収容された恒温槽と、内部に霧化させる材料を収容して前記恒温槽に侵漬される材料収容容器と、前記恒温槽に接続されて前記恒温水を循環させる恒温循環ポンプ装置と、前記恒温槽内の恒温水の減少分を補う給水装置とを備え、前記恒温循環ポンプ装置が、循環される恒温水を加熱して前記恒温槽内の恒温水を設定温度に保つ温度調整装置を備え、前記給水装置が、前記恒温循環ポンプ装置の流入側に恒温水を供給して前記温度調整装置で当該恒温水を温度調整した後に前記恒温槽内へ供給することを特徴とする。霧化装置及び配線形成装置は、前記恒温水循環システムを組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記給水装置が、前記恒温循環ポンプ装置の流入側に恒温水を供給して前記温度調整装置で当該恒温水を温度調整した後に前記恒温槽内へ供給するため、前記恒温槽内の恒温水を、設定温度及び設定量に保つことができ、霧化装置を良好な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半導体チップ上の配線等の形成や配線欠落箇所の修復などに用いられる配線形成装置の要部を示す概略構成図である。
【図2】浄化用大気プラズマ発生装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る霧化装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る恒温水循環システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る霧化装置の恒温水循環システムについて、添付図面を参照しながら説明する。霧化装置は、例えば半導体チップ上の配線や液晶ディスプレイ上の配線の形成等を行う配線形成装置に用いられる装置である。この配線形成装置には、ミストジェット方式のオープンリペア装置等の種々の方式の装置がある。
【0015】
まず、本発明の霧化装置が適用される配線形成装置について説明する。図1は、半導体チップ上の配線や液晶ディスプレイ上の配線の形成や、配線欠落箇所の修復などに用いられる配線形成装置の要部を示す概略構成図である。
【0016】
配線形成装置1は、絶縁基板14上の酸化物をプラズマガスとの化学反応により除去する浄化用大気プラズマ発生装置2と、絶縁基板14上にペースト材料を供給するペースト材料付着装置3と、このペースト材料付着装置3で絶縁基板14上に供給されたペースト材料に酸素ラジカル分子を照射する酸素ラジカル分子噴射装置4とを含む。
浄化用大気プラズマ発生装置2は、図2に示すように、上端がガス源6又は7からのガスの導入口8aとなり、下端がプラズマ噴射口8bとなる誘電体管8と、該誘電体管8の長手方向へ相互に間隔d1をおいて配置され、それぞれが誘電体管8を取り巻いて配置される一対の電極9、9と、これら電極間に交番電圧あるいはパルス状電圧を印加するための電源装置10とを備える。
【0017】
誘電体管8のガス導入口8aには、開閉バルブ12を経て還元ガスG1およびキャリアガスCaが案内可能である。誘電体管8は、図2に示すように、そのプラズマ噴射口8bが配線パターン13を形成すべき絶縁基板14の表面へ向けられている。
【0018】
開閉バルブ12が開放されると、キャリアガス源7からのキャリアガスCaと共に還元ガス源6からの還元ガスG1が、誘電体管8(大気プラズマ噴射ノズル)内をそのプラズマ噴射口8bに向けて案内される。還元ガスG1が案内される誘電体管8の流路には、電源装置10からの電圧が印加される一対の電極9、9によって、両電極間d1に対応する領域に誘電体バリア放電による放電空間領域が形成されている。そのため、誘電体管8のガス導入口8aからプラズマ噴射口8bへ向けて案内される還元ガスG1は、この放電空間領域を経る過程でプラズマ状態におかれる。その結果、この還元ガスG1をプラズマ源とするプラズマガスが絶縁基板14上に噴射される。この誘電体管8からのプラズマガスの噴射により、このプラズマガスの照射を受けた部分に残存する酸化物が、このプラズマガスとの化学反応により効果的に除去される。
【0019】
浄化用大気プラズマ発生装置2の誘電体管8は、既知の自動制御機構(図示せず)を用いて、所望のパターンに沿って自動的に移動させることができる。
【0020】
還元ガスG1をガス源とする大気プラズマガスの噴射により、浄化された絶縁基板14上の領域には、ペースト材料付着装置3のノズル15の噴出口からペースト材料が供給される。このペースト材料付着装置3のノズル15を、浄化用大気プラズマ発生装置2に追従させることにより、絶縁基板14上の浄化された領域上に、順次、ペースト材料を線状(直線状又は曲線状)に供給し、付着させることができる。
【0021】
絶縁基板14上へペースト材料を付着させる方法は、後述するように、インクジェット方式と同様な方式を用いたノズルにより、ペースト材料をミスト状態(霧化状態)にして吹き付ける方法(以下、ミストジェットと呼ぶ)を適用する。ミストジェット処理では、ノズル15からの噴射を、例えば螺旋状にミストが出ていくような絞り込んだ噴射とすることで線状の配線を形成させることができる。
【0022】
ペースト材料をミスト状態(霧状態)にするために、後述する霧化装置17が適用される。
【0023】
ペースト材料により絶縁基板14上に線状に形成された配線パターン13は、酸素ラジカル分子噴射装置4により酸素ラジカル分子の照射を受ける。
【0024】
浄化用大気プラズマ発生装置2及び酸素ラジカル分子噴射装置4はほぼ同様な構成を有しているので、酸素ラジカル分子噴射装置4の詳細構成の図示は省略する。
【0025】
両装置2及び4の根本的な相違点は、浄化用大気プラズマ発生装置2がプラズマガス源として還元ガス源6を用いたのに対し、酸素ラジカル分子噴射装置4として用いる大気プラズマ発生装置は、プラズマガス源として、酸素あるいは空気のような酸化ガス源を用いている点にある。
【0026】
このような酸化ガスをプラズマ源とするプラズマが、絶縁基板14上に噴射されると、このプラズマ中に含まれる酸素ラジカルが、付着された直後の配線部分のペースト材料中の有機バインダと化学反応を生じる。その結果、有機バインダは、主として酸素ラジカルとの化学反応により除去される。上述したペースト材料で形成された配線部分から有機バインダが除去されると、配線部分中のナノ金属粒子が相互に接触する。この相互接触が生じると、上述したように、ナノ金属粒子の表面エネルギーにより、ナノ金属粒子は結合を生じ、配線パターン13が形成される。
【0027】
次に、霧化装置17を説明する。霧化装置17は、配線形成装置1のペースト材料付着装置3で利用される。図3は、霧化装置17を備えたペースト材料付着装置3を示す概略構成図である。
【0028】
ペースト材料付着装置3は、霧化装置17と、ミスト流変換装置18と、ノズル15(図1参照)とを有している。
【0029】
ミスト流変換装置18は、霧化装置17によって霧化されたペースト材料のミスト流を、その流径が所定の流径になるように、また、ミスト流が螺旋状に回転するように変換するものであり、このような変換後のミスト流がノズル15から絶縁基板14(図1参照)上に噴射されるようになされている。
【0030】
霧化装置17は、大きくは、霧化部20と、溶媒補給部21とからなっている。
【0031】
霧化部20は、連通管23を介してミスト流変換装置18に繋がっており、霧化されたペースト溶剤のミスト流をミスト流変換装置18に供給するものである。
【0032】
霧化部20は、純水などの所定温度の恒温水である恒温用液体24が収容された恒温槽25を有し、恒温用液体24には、上述したペースト材料(例えば、金ナノペースト)と、ペースト材料を溶かす溶媒(希釈剤;例えばキシレン)の混合物26(ペースト溶剤)を収容した材料収容容器27が侵漬されている。材料収容容器27は、例えば傾斜して設置されており、また、恒温槽25の内部であって材料収容容器27の最も低い位置の近傍には超音波発振器28が設けられている。超音波発振器28は、その超音波振動により、恒温用液体24や材料収容容器27を介して、混合物26に霧化するためのエネルギーを供給して霧化させるものである。即ち、ミスト発生のプロセスは、ペースト溶剤である混合物26に恒温用液体24を介して超音波発振器28で超音波を照射し、この超音波のエネルギーを用いてミスト化を促すものである。ここで、恒温用液体24は、超音波振動の伝達媒体および原料の加熱媒体として機能している。
【0033】
材料収容容器27の上部開口は、蓋体29によって塞がれるようになされている。蓋体29は、流体導入口30及び流体導出口31を有する。流体導出口31は、材料収容容器27の中心軸が通るように設けられており、材料収容容器27の内部側については、内部を軸方向に途中まで延びる内部管32に繋がっており、また、材料収容容器27の外部側については、ミスト流変換装置18に繋がっている連通管23に繋がっている。流体導入口30は、導入流体が材料収容容器27の中心軸に向かうように設けられており、材料収容容器27の外部側においては溶媒補給部21に繋がっている連通管34に繋がっており、材料収容容器27の内部側においては放出開口35に繋がっている。
【0034】
従って、溶媒補給部21から供給されたキャリアガス及び溶媒の混合ガス(混合気体)は、流体導入口30から材料収容容器27内部に導入され、内部管32の周囲を下降し、内部管32の最下端の開口から内部管32の内部に導入され、内部管32、流体導出口31及び連通管23を順次介してミスト流変換装置18側に供給されるようになる。この際、超音波振動エネルギーにより霧化した混合物26の気体もこの流れに取り込まれ、内部管32の最下端の開口から内部管32の内部に導入され、内部管32、流体導出口31及び連通管23を順次介してミスト流変換装置18側に供給される。
【0035】
溶媒補給部21は、連通管41を介してキャリアガス源に繋がり、また、連通管34を介して霧化部20に繋がっている。溶媒補給部21は、キャリアガス源から供給された、不活性ガスでなるキャリアガス(例えば窒素ガス)と、溶媒を霧化(気化)したガスとの混合ガスを得て、霧化部20に供給する(溶媒を補給する)ものである。
【0036】
溶媒補給部21は、純水などの所定温度の恒温用液体42が収容された恒温槽43を有し、恒温用液体42には、液体状態の溶媒44(混合物26における溶媒と同一のものである)を収容した溶媒収容容器45が侵漬されている。溶媒収容容器45は、例えば傾斜して設置されており、また、恒温槽43の内部であって溶媒収容容器45の最も低い位置の近傍には超音波発振器46が設けられている。超音波発振器46は、その超音波振動により、恒温用液体42や溶媒収容容器45を介して、液体溶媒44に霧化するためのエネルギーを供給して霧化させるものである。
【0037】
溶媒収容容器45の上部開口は、蓋体47によって塞がれるようになされている。蓋体47は、流体導入口48及び流体導出口49を有する。流体導出口49は、溶媒収容容器45の中心軸が通るように設けられており、溶媒収容容器45の内部側においては内部を軸方向に途中まで延びる内部管50に繋がっており、また、溶媒収容容器45の外部側においては霧化部20に繋がっている連通管34に繋がっている。流体導入口48は、導入流体が溶媒収容容器45の中心軸に向かうように設けられており、溶媒収容容器45の外部側においてはキャリアガス源に繋がっている連通管23に繋がっており、溶媒収容容器45の内部側においては放出開口51に繋がっている。
【0038】
従って、キャリアガス源から供給されたキャリアガスは、流体導入口48から溶媒収容容器45内部に導入され、内部管50の周囲を下降し、内部管50の最下端の開口から内部管50の内部に導入され、内部管50、流体導出口49及び連通管34を順次介して霧化部20側に供給されるようになる。この際、超音波振動エネルギーにより霧化した溶媒44の気体もこの流れに取り込まれ、内部管50の最下端の開口から内部管50の内部に導入され、内部管50、流体導出口49及び連通管34を順次介して霧化部20側に供給される。
【0039】
霧化装置17において、キャリアガス源から供給されたキャリアガスは、溶媒補給部21を通ることにより、霧化(気化)された少量の溶媒44と混合され、この混合ガスは、霧化部20を通ることにより、霧化(気化)されたペースト材料(と溶媒との混合物)と混合され、これにより、キャリアガスと霧化されたペースト材料とを含むミスト流(気化された溶媒も含まれている)がミスト流変換装置18に供給される。
【0040】
恒温槽25,43には、その内部に収容された恒温用液体24,42を一定の温度及び水量に保つための恒温水循環システム51(図4参照)がそれぞれ接続されている。この恒温水循環システム51は、恒温循環ポンプ装置52と、給水装置53とを備えている。
【0041】
図4に示す恒温循環ポンプ装置52は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42を設定温度に保ちつつ霧化装置に供給するための装置である。ミスト発生を安定させるためには、超音波エネルギーの伝達媒体である恒温用液体24,42(純水)の温度管理が重要である。即ち、恒温槽25,43内での温度不均一を防止して、超音波発振器28,46の超音波エネルギーによる水温上昇を抑えるため、恒温用液体24,42を冷却しながら設定温度に維持する必要がある。このため、恒温循環ポンプ装置52は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42を循環させながら温度調整を行う。恒温循環ポンプ装置52は、具体的には、装置本体55と、戻り配管56と、供給配管57と、温度センサ58と、制御部59とから構成されている。
【0042】
装置本体55は、ポンプ及び温度調整装置(いずれも図示せず)を備え、前記ポンプで恒温用液体24,42を循環させながら、前記温度調整装置で恒温用液体24,42の温度調整を行う。
【0043】
戻り配管56は、その一端が恒温槽25,43内に連通され、他端が前記ポンプの流入側に連通されている。前記ポンプの流出側は、前記温度調整装置に連通され、恒温槽25,43から取り込んだ恒温用液体24,42を温度調整装置に送り込む。
【0044】
供給配管57は、その一端が温度調整装置の流出側に連通され、他端が恒温槽25,43内に連通されている。
【0045】
温度センサ58は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の温度を測定するためのセンサである。温度センサ58は、恒温槽25,43内に、恒温用液体24,42に浸した状態で取り付けられている。温度センサ58は、制御部59に接続され、測定した恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の温度情報を制御部59に送信する。
【0046】
制御部59は、恒温用液体24,42の温度を制御すると共に恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の水位を制御するための装置である。制御部59は、温度センサ58、後述する水位センサ64、装置本体55のポンプ及び温度調整装置にそれぞれ接続されている。この制御部59は、温度センサ58からの恒温用液体24,42の温度情報を取り込み、この温度情報及び給水装置53側の恒温用液体の温度情報に基づいて温度調整装置を制御する。
【0047】
給水装置53は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42を一定の水量に保つための装置である。この給水装置53は、給水タンク61と、加圧機構(図示せず)と、給水管62と、給水弁63と、水位センサ64と、制御部59とから構成されている。
【0048】
給水タンク61は、恒温用液体24,42を溜めているタンクである。この給水タンク61は、内部が密閉された状態で加圧機構に接続されている。
【0049】
加圧機構は、給水タンク61内を加圧するための装置である。加圧機構は、給水タンク61内を加圧して、恒温用液体24,42を恒温循環ポンプ装置52の戻り配管56に押し込むようになっている。
【0050】
給水管62は、その一端が給水タンク61に、他端が恒温循環ポンプ装置52の戻り配管56にそれぞれ接続され、給水タンク61内の恒温用液体24,42を、恒温循環ポンプ装置52の流入側である、戻り配管56に補充するようになっている。
【0051】
給水弁63は、水位センサ64で測定した恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の減少分に合わせて、恒温循環ポンプ装置52の流入側である戻り配管56への恒温用液体の供給量を調整する電磁弁である。給水弁63は、給水管62の途中に設けられ、制御部59で開閉制御されて、恒温用液体24,42を戻り配管56に適宜補充するようになっている。
【0052】
水位センサ64は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の水位を測定するためのセンサである。水位センサ64は、恒温槽25,43内に設けられて、恒温用液体24,42の水位を測定し、その水位情報を制御部59に送信する。
【0053】
制御部59は、全体を制御して、前記温度調整と共に、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の水位を調整する。制御部59は具体的には、水位センサ64と、給水弁63とにそれぞれ接続され、水位の減少分を補うと共に、温度の低下分を補うようになっている。即ち、制御部59は、水位センサ64からの水位情報に基づく恒温用液体24,42の減少量と、その減少量分の給水タンク61内の恒温用液体24,42を設定温度に上昇させるのに必要な熱量を計算して、給水弁63の開放時間と、温度調整装置の加熱量を制御する。
【0054】
以上のように構成された霧化装置の恒温水循環システムは、次のように作用する。
【0055】
まず、霧化装置においては、キャリアガス源から供給されたキャリアガスは、流体導入口48から溶媒収容容器45内部に導入され、内部管50の周囲を下降し、内部管50の最下端の開口から内部管50の内部に導入され、内部管50、流体導出口49及び連通管34を順次介して霧化部20側に供給される。この際、超音波振動エネルギーにより霧化した溶媒44の気体もこの流れに取り込まれ、内部管50の最下端の開口から内部管50の内部に導入され、内部管50、流体導出口49及び連通管34を順次介して霧化部20側に供給される。
【0056】
溶媒補給部21から供給されたキャリアガス及び溶媒の混合ガス(混合気体)は、流体導入口30から材料収容容器27内部に導入され、内部管32の周囲を下降し、内部管32の最下端の開口から内部管32の内部に導入され、内部管32、流体導出口31及び連通管23を順次介してミスト流変換装置18側に供給される。この際、超音波振動エネルギーにより霧化した混合物26の気体もこの流れに取り込まれ、内部管32の最下端の開口から内部管32の内部に導入され、内部管32、流体導出口31及び連通管23を順次介してミスト流変換装置18側に供給される。
【0057】
そして、誘電体管8から絶縁基板14へのプラズマガスの噴射により、このプラズマガスの照射を受けた部分に残存する酸化物が、このプラズマガスとの化学反応により除去される。その後、混合ガスがノズル15から絶縁基板14の表面へ向けて噴射される。
【0058】
一方、恒温水循環システム51においては、制御部59により、処理作業中恒温用液体24,42の温度が常時監視されている。装置本体55のポンプで恒温槽25,43内の恒温用液体24,42が循環され、恒温用液体24,42の温度が設定温度よりも上がると、装置本体55の温度調整装置で冷却されて、設定温度に調整される。また、通常はないが、恒温用液体24,42の温度が設定温度よりも下がると、温度調整装置で加熱されて、設定温度に調整される。
【0059】
一方、水位センサ64は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の水位を測定している。また、温度センサ58は、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の温度を測定している。
【0060】
制御部59は、この水位センサ64からの水位情報に基づいて恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の水位を常時監視し、水位が低下した場合は、恒温用液体24,42を補充する。この場合は、まず、水位センサ64からの水位情報に基づいて恒温用液体24,42の減少量を計算し、給水弁63の開放時間を計算する。さらに、
温度センサ58で測定した恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の温度と、給水タンク61内の恒温用液体の温度との差と、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の減少量から、補給される給水タンク61内の恒温用液体を設定温度に加熱するのに必要な熱量を計算する。
【0061】
次いで、給水弁63を、計算した開放時間だけ開放して、給水タンク61内の恒温用液体24,42を戻り配管56に供給する。これと同時に、装置本体55の温度調整装置を制御して、前記熱量分を通常制御に加算して恒温用液体24,42を加熱し、新たに補給される恒温用液体による温度定低下分を補って設定温度に加熱する。
【0062】
これにより、新たに補給されて設定温度に加熱された恒温用液体は、供給配管57を介して恒温槽25,43内へ供給される。
【0063】
以上のように、霧化装置17において、霧化部20にキャリアガス源から供給されたキャリアガスを直接導入するのではなく、キャリアガス源から供給されたキャリアガスを溶媒補給部21に導入し、キャリアガスと霧化した溶媒との混合ガスを霧化部20に導入するようにしたので、以下の効果を奏することができる。
【0064】
材料収容容器27の内部における、霧化されたペースト材料と霧化された溶媒との混合物(混合ガス)における混合比を制御し易い。溶媒だけを霧化する溶媒補給部21が存在するので、溶媒収容容器45における超音波振動子46の制御によって、混合比が所定の値に制御することが容易である。その結果、霧化装置17を利用した配線形成装置における配線材料(ペースト材料)の塗布精度を高いものとすることができる。
【0065】
また、霧化部20に溶媒がほぼ常時少しずつ補給されるので、霧化部20にキャリアガス源から供給されたキャリアガスを直接導入する場合に比較し、霧化部20から、安定した混合ガスを出力できる時間を長くすることができる。
【0066】
例えば、霧化部20にキャリアガス源から供給されたキャリアガスを直接導入する場合には、溶媒の補給が5時間毎に必要であったが、霧化装置17によれば、溶媒の補給が20時間毎で良くなった。仮に、配線形成装置の1日の稼働時間が8時間であれば、霧化部20にキャリアガス源から供給されたキャリアガスを直接導入する場合には、稼働開始前に溶媒を挿入するだけでなく、稼働を一時停止し、溶媒を挿入するメインテナンス動作が必要であったが、霧化装置17を適用すれば、稼働開始前に溶媒を挿入するだけで、1日の稼働を保証することができる。
【0067】
さらに、恒温水循環システム51が、恒温用液体24,42の減少量と、その減少量分の給水タンク61内の恒温用液体24,42を設定温度に上昇させるのに必要な熱量を計算して、給水弁63の開放時間と、温度調整装置の加熱量を制御することで、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の温度をその変化を最小限に抑えながらほぼ一定に保って、その温度恒温用液体24,42の減少分を補給するため、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42を、設定温度及び設定量に保つことができ、霧化装置17を良好な状態に維持することができる。これにより、前記霧化装置17と相まってメンテナンスサイクルを延ばして装置の良好な状態を長期間維持することができる。この結果、配線形成装置1、霧化装置17及び恒温水循環システム51が相互に協働して処理作業を行うため、作業者の手間が省けて、処理作業の効率化を図ることができると共に、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0068】
また、恒温槽25,43の周囲に、恒温水循環システム51関連の嵩張る装置が取り付けられることがなくなるため、発霧プロセス機器へのアクセスを妨げることがなくなり、恒温槽25,43の周囲をシンプルにでき、設計の自由度を高めることができる。
【0069】
[変形例]
前記実施形態では、霧化部20と溶媒補給部21とを備えた霧化装置17に恒温水循環システム51を接続した構成例を説明したが、本発明はこれに限らず、他の構成の霧化装置でも良い。少なくとも霧化部20を有する構成の霧化装置であれば本発明の恒温水循環システム51を適用することができる。これにより、前記実施形態同様の作用、効果を奏することができる。
【0070】
また、前記実施形態において、溶媒補給部21と霧化部20とを繋げている連通管34に、霧化(気化)されている輸送途中の溶媒が液化するのを防止する液化防止用ヒータ線が巻回してもよい。恒温槽43の内部に超音波発振器は設けず、恒温用液体42の温度を前記実施形態より高くして、液体状態の溶媒44の気化(揮発)を盛んに行わせるようにしてもよい。この場合も前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0071】
前記実施形態では、給水タンク61内に温度センサを備えなかったが、この給水タンク61内にも温度センサを備えて、給水タンク61内の恒温用液体の温度を測定して、恒温槽25,43内の恒温用液体24,42の設定温度との違いを正確に把握するようにしてもよい。この場合も前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0072】
前記実施形態では、水位センサ64で恒温用液体24,42の減少分を計算して給水弁63の開放時間を設定したが、水位センサ64で恒温用液体24,42の水位を測定しながら、設定水位に達するまで給水弁63の開放するようにしてもよい。
【0073】
前記実施形態では、給水タンク61に加圧機構を設けたが、通常戻り配管56は負圧になるため、加圧機構を設けない構成にしてもよい。この場合も前記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0074】
前記実施形態では、恒温水循環システム51を2つの恒温槽25,43にそれぞれ設けたがいずれか一方にのみ設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の霧化装置の恒温水循環システムは、半導体チップ上の配線や液晶ディスプレイ上の配線の形成等を行う配線形成装置、ミストジェット方式のオープンリペア装置等の種々の装置に取り付けられる霧化装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:配線形成装置、2:浄化用大気プラズマ発生装置、3:ペースト材料付着装置、4:酸素ラジカル分子噴射装置、6:還元ガス源、7:キャリアガス源、8:誘電体管、9:電極、10:電源装置、12:開閉バルブ、13:配線パターン、14:絶縁基板、15:ノズル、17:霧化装置、18:ミスト流変換装置、20:霧化部、21:溶媒補給部、24:恒温用液体、25:恒温槽、26:混合物、27:材料収容容器、28:超音波発振器、29:蓋体、30:流体導入口、31:流体導出口、32:内部管、34:連通管、35:放出開口、41:連通管、42:恒温用液体、43:恒温槽、44:溶媒45:溶媒収容容器、46:超音波発振器、47:蓋体、48:流体導入口、49:流体導出口、50:内部管、51:放出開口、52:恒温循環ポンプ装置、53:給水装置、55:装置本体、56:戻り配管、57:供給配管、58:温度センサ、59:制御部、61:給水タンク、62:給水管、63:給水弁、64:水位センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温水が収容された恒温槽と、内部に霧化させる材料を収容して前記恒温槽に侵漬される材料収容容器と、前記恒温槽に接続されて前記恒温水を循環させる恒温循環ポンプ装置と、前記恒温槽内の恒温水の減少分を補う給水装置とを備え、
前記恒温循環ポンプ装置が、循環される恒温水を加熱して前記恒温槽内の恒温水を設定温度に保つ温度調整装置を備え、
前記給水装置が、前記恒温循環ポンプ装置の流入側に恒温水を供給して前記温度調整装置で当該恒温水を温度調整した後に前記恒温槽内へ供給することを特徴とする霧化装置の恒温水循環システム。
【請求項2】
請求項1に記載の霧化装置の恒温水循環システムにおいて、
前記給水装置が、前記恒温槽内に設けられて当該恒温槽内の恒温水の水位を測定する水位センサと、当該水位センサで測定した前記恒温槽内の恒温水の減少分に合わせて、前記恒温循環ポンプ装置の流入側への恒温水の供給量を調整する給水弁とを備えたことを特徴とする霧化装置の恒温水循環システム。
【請求項3】
ペースト材料及び、当該ペースト材料を溶かす溶媒を混合したペースト溶剤を、恒温水が収容された恒温槽に浸漬して霧化させる霧化部と、
恒温水が収容された恒温槽に前記溶媒を浸漬して霧化させたガス及び、キャリアガス源から供給されたキャリアガスを混合させた混合ガスを前記霧化部に供給する溶媒補給部と、前記各恒温槽のいずれか一方又は両方に接続されて、その内部に収容された恒温水を一定の温度及び水量に保つ恒温水循環システムとを備え、
前記恒温水循環システムとして、請求項1又は2に記載の恒温水循環システムを用いたことを特徴とする霧化装置。
【請求項4】
基板上の酸化物をプラズマガスとの化学反応により除去する浄化用大気プラズマ発生装置と、霧化装置でペースト材料を霧化状態にして前記基板上に吹き付けて付着させるペースト材料付着装置と、このペースト材料付着装置で基板上に付着されたペースト材料に酸素ラジカル分子を照射する酸素ラジカル分子噴射装置とを備え、
前記霧化装置として、請求項3に記載の霧化装置を用いたことを特徴とする配線形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−240525(P2010−240525A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89419(P2009−89419)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000153018)株式会社日本マイクロニクス (349)
【Fターム(参考)】