説明

露光ヘッド、画像形成装置

【課題】例えば結像光学系に設計誤差が生じたり、結像光学系と発光素子とがずれて配設されたとしても、露光ムラを抑制して良好な露光を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】被露光面では、第1の結像光学系により結像される第1のスポットと、第1の結像光学系により結像される第3のスポットとが、第1の方向と直交する方向から見て重なる。また、第1の結像光学系により結像される第2のスポットと、第2の結像光学系により結像される第4のスポットとが、第1の方向と直交する方向から見て重なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光を結像光学系により被露光面に結像する露光ヘッドおよび該露光ヘッドを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載のように、レンズアレイの複数の結像レンズに対して1対1の対応関係で設けられた複数の発光素子群(同文献の発光素子グループ)を備えた露光ヘッド(同文献のラインヘッド)が提案されている。つまり、この露光ヘッドの発光素子群では、複数の発光素子が主走査方向に対応する第1の方向(同文献の長手方向)に配設されている。そして、各発光素子は、それぞれ被露光面(同文献の被走査面)の副走査方向の移動に応じたタイミングで発光し、その光が結像レンズにより被露光面の主走査方向に互いに異なる位置に導かれ、その光により被露光面にスポットが形成されて被露光面が露光される。このような露光が発光素子群ごとに行われ、その結果、発光素子群ごとにスポットが被露光面の主走査方向に複数並んで形成されることとなる。特許文献1では、このような発光素子群ごとに形成される複数のスポットをスポットグループと称しており、複数の発光素子群に対応して、複数のスポットグループが形成されることとなる。
【0003】
ところで、特許文献1で指摘されるとおり、複数のスポットグループの位置関係は種々の原因でずれる場合があり、その一例としては、レンズアレイでのレンズの形成位置が製造誤差の範囲でばらつくことが挙げられる。このようにスポットグループの位置関係が互いにずれた状態で、副走査方向へ被露光面を移動させながら、順次スポットグループを形成し、これを現像してトナー像を形成すると、トナー像のスポットグループ間に対応する位置に副走査方向の縦筋が現れて、画像品質の低下を招いてしまう。そこで、特許文献1では、主走査方向に互いに隣り合って形成されるスポットグループにおいて、部分的に多重露光させている。つまり、第1の方向に隣り合う一方の発光素子群の端部の発光素子からの光によるスポットと、他方の発光素子群の端部の発光素子からの光によるスポットとを、被露光面の主走査方向に互いに重なるようにする。こうして、異なる結像光学系で形成される2つのスポットグループを部分的に重複させている。これによって、スポットグループの位置関係が互いにずれた場合でも、トナー像に縦筋が現れるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば露光ヘッドの結像光学系に設計誤差が生じたり、結像光学系と発光素子とがずれて配設されると、発光素子からの光によるスポットが主走査方向にずれてしまうことがある。したがって、特許文献1に記載の露光ヘッドにおいて例えば結像光学系と発光素子とがずれて配設されると、多重露光している領域、つまり2個の発光素子からの光による2個のスポットを主走査方向に重なるようにしている領域では、各スポットが主走査方向に互いにずれるため、露光が多少ぼやけてしまうというずれによる影響が現われる。一方、多重露光していない領域、つまりスポットが重なっていない領域では、スポットの重なりがないため、上記のようなずれによる影響が現われない。よって、これらの領域間で、ずれによる影響の有無による差が生じるため、この差が露光ムラとなってしまう。そして、このような露光ヘッドを用いた画像形成装置では、露光ムラに起因するトナー像の濃度ムラが発生することとなる。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子からの光を結像光学系により被露光面に結像する露光ヘッドおよび該露光ヘッドを備えた画像形成装置において、例えば結像光学系に設計誤差が生じたり、結像光学系と発光素子とがずれて配設されたとしても、露光ムラを抑制して良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、被露光面に光を結像する第1の結像光学系と、第1の結像光学系により結像されて第1のスポットを被露光面に形成する光を発光する第1の発光素子と、第1の発光素子の第1の方向に配設されて、第1の結像光学系により結像されて第2のスポットを被露光面に形成する光を発光する第2の発光素子と、第1の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第1のスポットと重なる第3のスポットを被露光面に形成する光を発光する第3の発光素子と、被露光面に光を結像する第2の結像光学系と、第2の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第2のスポットと重なる第4のスポットを被露光面に形成する光を発光する第4の発光素子と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、像担持体と、像担持体を露光する露光ヘッドと、を備え、露光ヘッドは、像担持体に光を結像する第1の結像光学系と、第1の結像光学系により結像されて第1のスポットを像担持体に形成する光を発光する第1の発光素子と、第1の発光素子の第1の方向に配設されて、第1の結像光学系により結像されて第2のスポットを像担持体に形成する光を発光する第2の発光素子と、第1の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第1のスポットと重なる第3のスポットを像担持体に形成する光を発光する第3の発光素子と、像担持体に光を結像する第2の結像光学系と、第2の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第2のスポットと重なる第4のスポットを像担持体に形成する光を発光する第4の発光素子と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、第1の結像光学系により結像されて第1のスポットが被露光面に形成されるとともに、第1の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第1のスポットと重なる第3のスポットが被露光面に形成される。また、第1の結像光学系により結像されて第2のスポットが被露光面に形成されるとともに、第2の結像光学系により結像されて、第1の方向と直交する方向から見て第2のスポットと重なる第4のスポットが被露光面に形成される。つまり、第1の結像光学系により結像される第2のスポットと第2の結像光学系により結像される第4のスポット、すなわち異なる結像光学系による各スポットが、第1の方向と直交する方向から見て重なるだけではない。第1の結像光学系により結像される第1のスポットと第1の結像光学系により結像される第3のスポットも、第1の方向と直交する方向から見て重なる。すなわち、同じ結像光学系により結像される各スポットも、第1の方向と直交する方向から見て重なっており、いずれにおいても多重露光させている。したがって、例えば結像光学系と発光素子とがずれて配設された場合には、多重露光する2個のスポットが互いにずれることになるため、異なる結像光学系により結像されるスポットおよび同じ結像光学系により結像されるスポットのいずれにおいても、露光が多少ぼやけるというずれによる影響が現われる。よって、ずれによる影響の差が低減されるため、露光ムラが抑制されることとなる。こうして、本発明では、例えば結像光学系と発光素子とがずれて配設されたとしても、露光ムラを抑制して、良好な露光を実現することが可能となっている。
【0010】
また、第1の発光素子と第3の発光素子との間の距離と、第2の発光素子と第4の発光素子との間の距離とが、ほぼ同一であるとしてもよい。この構成によれば、そのスポットが重なるように形成している各発光素子間の距離が、ほぼ同一であるため、例えば結像光学系と発光素子とがずれて配設された場合に、それぞれスポットのずれ量がほぼ同一になる。したがって、それぞれ、ずれによる影響がほぼ同一になるので、ずれによる影響の差が殆ど無いため、露光ムラが殆ど発生しないこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【図3】第1実施形態のラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図4】厚さ方向からヘッド基板を平面視した部分平面図。
【図5】図4のA−A線におけるラインヘッドの部分断面図。
【図6】ラインヘッドによる露光動作を示す図。
【図7】ラインヘッドが傾いて配設されたときのスポット形成位置を示す図。
【図8】実施例1の発光素子の配置態様を示す図。
【図9】比較例1の発光素子の配置態様を示す図。
【図10】感光体ドラムに対するラインヘッドの配設状態を示す図。
【図11】実施例1と比較例1とのずれ量を表として示す図。
【図12】実施例2の発光素子の配置態様を示す図。
【図13】1行目の発光素子グループの発光素子の配置態様を示す図。
【図14】2行目の発光素子グループの発光素子の配置態様を示す図。
【図15】3行目の発光素子グループの発光素子の配置態様を示す図。
【図16】比較例2の発光素子の配置態様を示す図。
【図17】比較例2の発光素子の配置態様を示す図。
【図18】実施例2と比較例2とのずれ量を表として示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.実施形態
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図1は、カラーモード実行時に対応する図である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、このヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0013】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0014】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラム21は、軸方向が主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0015】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0016】
ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して離間して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDに平行もしくは略平行であるとともに、ラインヘッド29の幅方向は副走査方向SDに平行もしくは略平行である。このラインヘッド29は複数の発光素子を備えており、各発光素子はヘッドコントローラーHCからのビデオデータVDに応じて発光する。そして、帯電した感光体ドラム21表面に発光素子からの光が照射されることで、感光体ドラム21表面に静電潜像が形成される。
【0017】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0018】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0019】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナー27が設けられている。この感光体クリーナー27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0020】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラー85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、カラーモード実行時は、図1に示すように全ての1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラー85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0021】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラー85のうち、カラー1次転写ローラー85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラー85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラー85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラー85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0022】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。また、この下流ガイドローラー86は、モノクロ1次転写ローラー85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラー85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0023】
駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラー121のバックアップローラーを兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラー121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラー82と2次転写ローラー121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0024】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0025】
2次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0026】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナー部71が配設されている。クリーナー部71は、クリーナーブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナーブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。
【0027】
図3は、ラインヘッドの一実施形態の概略を示す斜視図である。同図では、ラインヘッド29の厚さ方向TKDの構成を理解しやすくするために、ラインヘッド29の長手方向LGDの端部(図3の左下端部)が断面で示されている。ここで、厚さ方向TKDは、長手方向LGDおよび幅方向LTDに垂直もしくは略垂直な方向であり、後述する発光素子Eが光を射出する側(つまり、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向う側)を向いた方向とする。ラインヘッド29は、ヘッド基板293、遮光部材297、第1レンズアレイLA1および第2レンズアレイLA2をこの順番で厚さ方向TKDに配置するとともに、ヘッド基板293の裏面から(厳密には、ヘッド基板293に設けられた封止部材294の裏面から)剛性部材299で、これらの部材を支持した概略構成を備えている。そして、ヘッド基板293の発光素子Eからの光が、遮光部材297の導光孔2971を通過して、第1・第2レンズアレイLA1、LA2のレンズLS1、LS2により結像される。次に、各部材の詳細な構成について、図3、図4および図5を用いつつ説明する。なお、実施形態の説明において、厚さ方向TKDの下流側(図3の上側)を「(厚さ方向TKDの)一方側」と称し、厚さ方向TKDの上流側(図3の下側)を「(厚さ方向TKDの)他方側」と称する。また、基板あるいは平板の一方側の面を表面と称し、基板あるいは平板の他方側の面を裏面と称することとする。
【0028】
図4は、厚さ方向TKDからヘッド基板293を平面視した部分平面図であり、厚さ方向TKDの一方側(図3の上側)からヘッド基板293の裏面293−tを透視した場合に相当する。図5は、この実施形態のラインヘッドの図4のA−A線における部分断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。このA−A線断面は、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、一列に並ぶ2個の発光素子グループEGの各重心(あるいは、2枚のレンズLS1等の各レンズ中心)を通る。また、図4、図5に示す方向Dlscは、A−A線に平行な方向である。さらに、図4では、ヘッド基板293に形成された発光素子グループEG、第1レンズアレイLA1に形成された第1レンズLS1および第2レンズアレイLA2に形成された第2レンズLS2の位置関係を示すために、第1レンズLS1および第2レンズLS2がそれぞれ一点鎖線で併記されている。ちなみに、第1レンズLS1および第2レンズLS2についての図中記載は、これらの位置関係を示すためのものであり、第1レンズLS1および第2レンズLS2がヘッド基板裏面293−t(図5)に形成されていることを示すものではない。また、図5において、光透過性(つまり透明)である部材には、点の集合からなるハッチングが施されている。
【0029】
ヘッド基板293は光を透過するガラス基板(光透過性基板)で構成されており、ヘッド基板裏面293−tでは、ボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である発光素子Eが複数形成されるとともに、封止部材294により封止されている(図3、図5)。これら複数の発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有しており、光ビームを感光体ドラム21表面へ向けて射出する。また、図4に示すように、ヘッド基板裏面293−tに形成された複数の発光素子Eの配置態様は、グループ構造を有している。つまり、34個の発光素子Eが長手方向LGDに2行に配置されて1個の発光素子グループEGが構成されており、さらに複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに2行千鳥で離散的に配置されている。
【0030】
より詳しくは、この配置態様は次のように説明することができる。つまり、グループ間距離Pegを空けて複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに沿って離散的に並んで、発光素子グループ行GRa、GRbが構成されている。さらに、2行の発光素子グループ行GRa、GRbが距離Dtだけ空けて幅方向LTDの異なる位置に離散的に配置されており、しかも、発光素子グループ行GRa、GRbは、長手方向LGDに距離Dgだけ相互にシフトされている。こうして、2個の発光素子グループEGが、長手方向LGDに距離Dgを空けるとともに幅方向LTDに距離Dtを空けて、方向Dlscに一列に並んでいる。
【0031】
各発光素子グループEG内では、発光素子Eが長手方向LGDに素子間距離Pelで一列に並んだ発光素子行が、幅方向LTDの異なる位置に2行設けられている。すなわち、発光素子グループ行GRaの各発光素子グループEGは発光素子行GRa1、GRa2を有し、発光素子グループ行GRbの各発光素子グループEGは発光素子行GRb1、GRb2を有している。そして、発光素子行GRa1は15個の発光素子Eを有し、発光素子行GRa2は19個の発光素子Eを有し、発光素子行GRa1の15個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子行GRa2の中央の15個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。また、発光素子行GRb1は19個の発光素子Eを有し、発光素子行GRb2は15個の発光素子Eを有し、発光素子行GRb2の15個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子行GRb1の中央の15個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。言い換えると、各発光素子グループEGでは、長手方向LGDの位置が互いに同一の2個の発光素子から1対の発光素子対EPが構成されるとともに、この発光素子対EPが長手方向LGDに15対並んでいる。
【0032】
さらに、発光素子行GRa2の19個の発光素子Eのうち、図4中、右端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、長手方向LGDに隣り合う右側の発光素子グループEGの発光素子行GRb1の左端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。例えば、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の右端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子グループEGb2の発光素子行GRb1の左端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。また、発光素子行GRa2の19個の発光素子Eのうち、図4中、左端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、長手方向LGDに隣り合う左側の発光素子グループEGの発光素子行GRb1の右端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。例えば、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の左端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の右端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。言い換えると、各発光素子グループEGは、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、長手方向LGDの両端に2個ずつ有している。
【0033】
また、各発光素子グループEG内において、各発光素子行は、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る長手方向LGDに平行な線から、それぞれ幅方向LTDに同一距離Drだけ離れた位置に設けられている。すなわち、発光素子行GRa1の15個の発光素子Eと、発光素子行GRa2の中央の15個の発光素子Eとは、上記長手方向LGDに平行な線に関して線対称になっている。また、発光素子行GRb2の15個の発光素子Eと、発光素子行GRb1の中央の15個の発光素子Eとは、上記長手方向LGDに平行な線に関して線対称になっている。さらに、各発光素子グループEG内において、各発光素子行は、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る幅方向LTDに平行な線に関して、線対称になっている。すなわち、発光素子行GRa1、GRb2の15個の発光素子Eの中央の発光素子Eが、上記幅方向LTDに平行な線上に位置しており、発光素子行GRa2、GRb1の19個の発光素子Eの中央の発光素子Eが、上記幅方向LTDに平行な線上に位置している。
【0034】
ここで、素子間距離Pelは、対象となる2個の発光素子Eの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、グループ間距離Pegは、対象となる2個の発光素子グループEGのうち、長手方向LGDの一方側の発光素子グループEGの他方側端部にある発光素子Eの幾何重心と、長手方向LGDの他方側の発光素子グループEGの一方側端部にある発光素子Eの幾何重心との長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dgは、長手方向LGDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの中心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dtは、幅方向LTDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの中心間の幅方向LTDにおける距離として求めることができる。また、距離Drは、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る長手方向LGDに平行な線と、対象となる発光素子行の各発光素子Eの幾何重心を通る線との、幅方向LTDにおける距離として求めることができる。なお、発光素子グループEGの中心は、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する位置とする。ここで、上述したように、発光素子グループEG内の各発光素子行は、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る長手方向LGDに平行な線から、それぞれ幅方向LTDに同一距離Drだけ離れた位置に設けられるとともに、それぞれ、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る幅方向LTDに平行な線に関して、線対称になっている。したがって、発光素子グループEGの中心は、一方の発光素子行の幾何重心と他方の発光素子行の幾何重心との中点に一致する。なお、発光素子行の幾何重心は、当該発光素子行に配設されている全発光素子Eの幾何重心とする。
【0035】
また、特開2004−082330号公報等に記載の技術を応用して、この実施形態は、各発光素子Eの光量制御に役立てるために、予め各発光素子Eの光量を検出する構成を備えている。具体的には、ヘッド基板裏面293−tの幅方向LTDの両側のそれぞれにおいて、複数の光センサーSCが所定間隔で長手方向LGDに一列に並べられている。こうして、光センサーSCの列が、複数の発光素子グループEGを挟んで幅方向LTDの両側に配置される。そして、各光センサーSCは発光素子Eからの光量を検出した結果をヘッドコントローラーHCに出力し、ヘッドコントローラーHCは受信した光量信号に基づいて以後の発光素子Eの光量を制御する。
【0036】
このようにヘッド基板293の裏面293−tには、発光素子グループEGおよび光センサーSCが配置されている。一方、ヘッド基板293の表面293−hには、遮光部材297が配置されている。遮光部材297には厚さ方向TKDに貫通する導光孔2971が形成されており、この導光孔2971は厚さ方向TKDからの平面視において円形状を有しており、その内壁には黒色メッキが施されている。この導光孔2971は、発光素子グループEG毎に1個づつ形成されており、すなわち、1個の発光素子グループEGに対して1個の導光孔2971が開口している。こうして、遮光部材297は、導光孔2971を発光素子グループEGに開口させた状態でヘッド基板表面293−hに当接して固定されている。
【0037】
このような遮光部材297を設ける目的は、いわゆる迷光がレンズLS1、LS2に入射するのを抑制するためである。つまり、各発光素子グループEGには、レンズ対LS1、LS2の対からなる結像光学系がそれぞれ専用に設けられている。このような構成では、光ビームは、それ自身の射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2にのみ入射して結像されることが望ましい。しかしながら、光ビームの一部には、その射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に向わずに迷光となってしまうものもある。そして、このような迷光が、それ自身の射出源でない発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に入射してしまうと、いわゆるゴーストが発生してしまうおそれがある。これに対して、この実施形態では、発光素子グループEGと結像光学系LS1、LS2との間に遮光部材297が設けられている。この遮光部材297には、内壁に黒色メッキが施された導光孔2971が発光素子グループEGに開口して設けられている。したがって、迷光の多くは、導光孔2971の内壁で吸収されることとなる。その結果、先ほどのゴーストを抑制して、良好な露光動作の実現が図られる。
【0038】
また、遮光部材297の厚さ方向TKDの一方側では、第1レンズアレイLA1が該遮光部材297と間隔を空けて支持されている。この第1レンズアレイLA1は、ヘッド基板293の表面293−hに設けられた金属製の第1スペーサーSP1により支持されている。この第1レンズアレイLA1は、長手方向LGDの両端が斜めに(方向Dlscと平行に)カットされた菱形形状のガラス基板SBの裏面に、光硬化性樹脂で形成された複数の第1レンズLS1をアレイ配置した構成を有している。また、これら複数の第1レンズLS1は、対向する発光素子グループEGの配置に対応して2行千鳥で配置されている(図4)。なお、ヘッド基板293と第1スペーサーSP1、第1スペーサーSP1と第1レンズアレイLA1は、それぞれ接着剤等による方法で固定されている。
【0039】
さらに、この第1レンズアレイLA1の厚さ方向TKDの一方側では、第2レンズアレイLA2が該第1レンズアレイLA1と間隔を空けて支持されている。この第2レンズアレイLA1は、第1レンズアレイLA1のガラス基板SBの表面に設けられた金属製の第2スペーサーSP2により支持されている。この第2レンズアレイLA2は、長手方向LGDの両端が斜めに(方向Dlscと平行に)カットされた菱形形状のガラス基板SBの裏面SB−tに、光硬化性樹脂で形成された複数の第2レンズLS2をアレイ配置した構成を有している。また、これら複数の第2レンズLS2は、対向する第1レンズLS1の配置に対応して2行千鳥で配置されている(図4)。なお、第1レンズアレイLA1と第2スペーサーSP2、第2スペーサーSP2と第2レンズアレイLA2は、それぞれ接着剤等による方法で固定されている。
【0040】
こうして、第1レンズアレイLA1のレンズLS1と第2レンズアレイLA2のレンズLS2が厚さ方向TKDに並んで、1つの結像光学系を構成する。この結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有している。そして、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて各発光素子Eの発光を制御することで、主走査方向MDに延びるライン潜像を形成することができる。
【0041】
図6は、上述のラインヘッドによる露光動作を示す図である。以下に、図2、図4、図6を用いて本実施形態におけるラインヘッドによる露光動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向MDに延びるライン状の潜像を形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体ドラム21(像担持体)の表面(被露光面)を副走査方向SDに搬送しながら、ヘッドコントローラHCにより複数の発光素子Eを所定のタイミングで発光させることで、主走査方向MDに延びるライン状の潜像を形成する。
【0042】
つまり、本実施形態のラインヘッドでは、副走査方向SDに対応する幅方向LTDに4個の発光素子行GRa1、GRa2、GRb1、GRb2が並べて配置されている(図4)。そこで、本実施形態では、同一の幅方向位置にある発光素子行は、略同一のタイミングで発光させるとともに、異なる幅方向位置にある発光素子行は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、発光素子行GRa2、GRa1、GRb2、GRb1の順番で、発光素子Eを発光させる。そして、感光体ドラム21の表面を副走査方向SDに搬送しながら、上述の順番で発光素子Eを発光させることで、該表面の主走査方向MDに延びるライン状の潜像を形成する。ここで、感光体ドラム21の表面の搬送方向が副走査方向SDであるのに対して、幅方向LTDの下流側の発光素子行から順番に(つまり、発光素子行GRa2、GRa1の順番、発光素子行GRb2、GRb1の順番に)発光させるのは、結像光学系が反転特性を有することに対応するためである。
【0043】
かかる動作を、図4、図6を用いて説明する。まず最初に、幅方向LTDに上流側の発光素子グループEGa1,EGa2,…に属する発光素子行のうち下流側の発光素子行GRa2の発光素子Eを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転縮小特性を有する結像光学系により反転されつつ縮小されて、感光体ドラム表面に導かれる。つまり、図6の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号EGa1,EGb1,EGa2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループEGにより形成されるスポットであることを示す。すなわち、1回目では、発光素子グループEGa1,EGa2の発光素子行GRa2の発光素子Eからの光により、それぞれ19個のスポットが形成される。
【0044】
次に、同発光素子グループEGa1,EGa2,…に属する発光素子行のうち上流側の発光素子行GRa1の発光素子Eを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転縮小特性を有する結像光学系により反転されつつ縮小されて、感光体ドラム表面に導かれる。これによって、図6の「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。つまり「1回目」のスポットに重なるように「2回目」のスポットが形成される。すなわち、発光素子グループEGa1の発光素子行GRa1の15個の発光素子Eからのスポットと、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa1の15個の発光素子Eからのスポットとが、それぞれ、1回目に形成されたスポットに重なるように形成される。
【0045】
次に、幅方向LTDに下流側の発光素子グループEGb1,…に属する発光素子行のうち下流側の発光素子行GRb2の発光素子Eを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転縮小特性を有する結像光学系により反転されつつ縮小されて、感光体ドラム表面に導かれる。これによって、図6の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。すなわち、発光素子グループEGb1,…の発光素子行GRb2の15個の発光素子Eからの光により、15個のスポットが形成される。
【0046】
そして最後に、幅方向LTDに下流側の発光素子グループEGb1,…に属する発光素子行のうち上流側の発光素子行GRb1の発光素子Eを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転縮小特性を有する結像光学系により反転されつつ縮小されて、感光体ドラム表面に導かれる。これによって、図6の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。つまり、「1回目」および「3回目」のスポットに重なるように、「4回目」のスポットが形成される。すなわち、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の発光素子Eのうち、長手方向LGDの両端の各2個の発光素子Eからの光により、それぞれ1回目に形成されたスポットに重なるように、スポットが形成される。また、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の発光素子Eのうち、長手方向LGDの中央の15個の発光素子Eからの光により、それぞれ3回目に形成されたスポットに重なるように、スポットが形成される。
【0047】
すなわち、図6の部分潜像EX1は、発光素子グループEGa1の発光素子行GRa1の15個の発光素子Eからの光と、同発光素子グループEGa1の発光素子行GRa2の15個の発光素子Eからの光とにより、多重露光されている。また、部分潜像EX2は、発光素子グループEGa1の発光素子行GRa2の2個の発光素子Eからの光と、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の2個の発光素子Eからの光とにより、多重露光されている。また、部分潜像EX3は、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の15個の発光素子Eからの光と、同発光素子グループEGb1の発光素子行GRb2の15個の発光素子Eからの光とにより、多重露光されている。また、部分潜像EX4は、発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の2個の発光素子Eからの光と、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の2個の発光素子Eからの光とにより、多重露光されている。また、部分潜像EX5は、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の15個の発光素子Eからの光と、同発光素子グループEGa2の発光素子行GRa1の15個の発光素子Eからの光とにより、多重露光されている。このように、1〜4回目までの発光動作を実行することで、主走査方向MDに延びるライン状の潜像が形成される。そして、このライン状の潜像は、長手方向LGDの位置が互いに同一の2個の発光素子Eからの光による各スポットが互いに重なるようにして、形成されている。つまり、異なるレンズLS1、LS2により導かれる発光素子Eからの光で多重露光して部分潜像EX2、EX4を形成するだけではなく、同じレンズLS1、LS2により導かれる発光素子Eからの光で多重露光して部分潜像EX1、EX3、EX5を形成している。
【0048】
図7は、ラインヘッドが傾いて配設されたときのスポット形成位置を示す図で、(a)は、本実施形態のラインヘッド29が感光体ドラム21の主走査方向MDに対して角度θだけ傾いて配設されたときのスポット形成位置を示す図、(b)は異なる結像光学系により導かれる各スポットのみ互いに重なる従来のラインヘッド(例えば後述する図9に示す比較例1のラインヘッド)が感光体ドラム21の主走査方向MDに対して角度θだけ傾いて配設されたときのスポット形成位置を示す図である。ここで、「発明が解決しようとする課題」の項で言及した、スポット形成位置がずれることについて、ラインヘッドが傾いて配設されたときを例にとって、図7を参照して説明する。なお、図7では、各発光素子Eが同時に点灯したときに感光体ドラム21の表面に形成される各スポットを示している。また、スポット形成位置のずれは、ラインヘッドが傾いて配設されたときに限られず、発光素子グループEGとレンズLS1、LS2とがずれたときや、レンズLS1、LS2の設計誤差が生じたときなどに発生する。
【0049】
本実施形態のラインヘッド29の長手方向LGDが、感光体ドラム21の主走査方向MDに対して傾くことなく配設されたときは、図6を用いて説明したように、各スポットは主走査方向MDに、ずれることなく重なる。ところが、図7(a)に示すように、ラインヘッド29の長手方向LGDが、感光体ドラム21の主走査方向MDに対して角度θだけ傾いて配設されると、同じレンズLS1、LS2により導かれるスポットSP_1とスポットSP_3とは、主走査方向MDに距離d1だけずれる。同様に、同じレンズLS1、LS2により導かれるスポットSP_5とスポットSP_6も、主走査方向MDに距離d1だけずれる。また、互いに異なるレンズLS1、LS2により導かれるスポットSP_2とスポットSP_4とは、主走査方向MDに距離d2だけずれる。このように、同じ結像光学系(レンズLS1、LS2)により導かれる各スポットも、異なる結像光学系(レンズLS1、LS2)により導かれる各スポットも、互いに重なる各スポットは、距離d1またはd2だけ、主走査方向MDにずれることとなる。したがって、いずれも、露光(潜像)が多少ぼやけたものとなるが、露光ムラとしては抑制されることとなる。
【0050】
これに対して、図7(b)に示すように、従来のラインヘッドが、主走査方向MDに対して角度θだけ傾いて配設されると、互いに異なるレンズLS1、LS2により導かれるスポットSP_11とスポットSP_12とは、主走査方向MDに距離d3だけずれる。一方、スポットSP_13とスポットSP_14とは、他のスポットと重ならないので、主走査方向MDのずれが現われない。したがって、スポットSP_11とスポットSP_12とが重なる部分のみ、露光(潜像)が多少ぼやけたものとなるが、他の部分、すなわちスポットSP_13とスポットSP_14の部分は、露光(潜像)がぼやけたものとはならないので、これらの部分間で、露光ムラが生じることとなる。
【0051】
以上のように、本実施形態にかかるラインヘッド29では、感光体ドラム21に形成される潜像は、2個の発光素子Eからの光による各スポットを主走査方向MDに互いに重なるようにして、形成している。すなわち、互いに異なるレンズLS1、LS2により導かれる2個の発光素子Eからの光による各スポットだけでなく、同じレンズLS1、LS2により導かれる2個の発光素子Eからの光による各スポットも、主走査方向MDに互いに重なるようにしている。したがって、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対して傾いて配設された場合には、2個の発光素子Eからの光によるスポットが、主走査方向MDに互いにずれるため、露光(潜像)が多少ぼやけたものになるという、ずれによる影響が生じる。しかしながら、全ての部分潜像EX1〜EX5において、同様に、ずれによる影響が生じるため、各部分間でのずれによる影響の差が低減される。こうして、この実施形態では、ずれによる影響の差による露光ムラを抑制することができ、良好な露光を実現することが可能となっている。ここで、露光ムラが生じた潜像を現像してトナー像を形成したときには濃度ムラが生じるが、人の目にはトナー像の濃度ムラが目立ちやすい。したがって、露光(潜像)が多少ぼやけたものになったとしても、露光ムラを抑制した本実施形態のラインヘッド29により形成したトナー像は、画像品質の低下を抑制したものとすることができる。
【0052】
さらに、本実施形態のラインヘッド29では、各発光素子グループEGa1、EGa2、…において、発光素子行GRa1の15個の発光素子Eと、発光素子行GRa2の中央の15個の発光素子Eとは、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る長手方向LGDに平行な線に関して線対称になっている。また、各発光素子グループEGb1、EGb2、…において、発光素子行GRb2の15個の発光素子Eと、発光素子行GRb1の中央の15個の発光素子Eとは、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る長手方向LGDに平行な線に関して線対称になっている。このため、各15個の発光素子Eからの光によるスポットを、それぞれ感光体ドラム21において主走査方向MDに好適に重ね合わせることができる。
【0053】
また、本実施形態のラインヘッド29では、各発光素子グループEGは、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、長手方向LGDの両端に2個ずつ有している。つまり、例えば、発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の図4中、右端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子グループEGb2の発光素子行GRb1の左端の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、それぞれ同一になっている。しかも、各発光素子グループEG内において、各発光素子行は、対応するレンズLS1、LS2の光軸に対応する点を通る幅方向LTDに平行な線に関して、線対称になっている。つまり、例えば発光素子行GRa2、GRb1の19個の発光素子Eの中央の発光素子Eが、上記幅方向LTDに平行な線上に位置している。したがって、発光素子グループEGの発光素子E(例えば発光素子グループEGa2の発光素子行GRa2の図4中、右端の2個の発光素子E)からの光によるスポットと、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子E(例えば発光素子グループEGb1の発光素子行GRb1の図4中、左端の2個の発光素子E)からの光によるスポットとを、反転光学系を構成するレンズLS1、LS2によって、感光体ドラム21の主走査方向MDに好適に重ね合わせることができる。
【0054】
B.その他
以上のように、上記実施形態では、長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当する。また、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当し、感光体ドラム21の表面が本発明の「被露光面」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当する。また、発光素子グループEGa1、EGa2、…の、発光素子行GRa1の15個の発光素子Eが本発明の「第3の発光素子」に相当し、発光素子行GRa2の中央の15個の発光素子Eが本発明の「第1の発光素子」に相当し、発光素子行GRa2の両端の各2個の発光素子Eが本発明の「第2の発光素子」に相当し、発光素子グループEGa1、EGa2、…に対応するレンズLS1、LS2が本発明の「第1の結像光学系」に相当する。また、発光素子グループEGb1、EGb2、…の発光素子行GRb1の両端の各2個の発光素子Eが本発明の「第4の発光素子」に相当し、発光素子グループEGb1、EGb2、…に対応するレンズLS1、LS2が本発明の「第2の結像光学系」に相当する。また、スポットSP_1、SP_2、SP_3およびSP_4が本発明の「第1、第2、第3および第4のスポット」に相当する。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、図4に示すように、各発光素子グループEGa1、EGa2、…は、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、発光素子行GRa2の両端に各2個、有している。しかし、これに限られず、発光素子行GRa1の両端に各2個、有するようにしてもよい。同様に、上記実施形態では、各発光素子グループEGb1、EGb2、…は、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、発光素子行GRb1の両端に各2個、有している。しかし、これに限られず、発光素子行GRb2の両端に各2個、有するようにしてもよい。ただし、上記実施形態のように、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、発光素子行GRa2の両端、および発光素子行GRb1の両端に、それぞれ有するようにした方が、次に説明するような点で、より好ましい。
【0056】
すなわち、上記実施形態のように、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、発光素子行GRa2の両端、および発光素子行GRb1の両端に、それぞれ有する場合には、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子E間の幅方向LTDの距離は、Dt−2Drになる。これに対して、上記変形形態のように、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、発光素子行GRa1の両端、および発光素子行GRb2の両端に、それぞれ有する場合には、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子E間の幅方向LTDの距離は、Dt+2Drになる。一方、発光素子行GRa1、GRa2間の幅方向LTDの距離、発光素子行GRb1、GRb2間の幅方向LTDの距離は、それぞれ2Drになっている。これらの大小関係は、図4に示すように、
2Dr<Dt−2Dr<Dt+2Dr
となっている。
【0057】
ここで、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eからの光によるスポットを感光体ドラム21の主走査方向MDに互いに重なるようにしている場合に、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対して傾いて配設された場合の、各スポットの主走査方向MDのずれ量は、当該発光素子E間の幅方向LTDの距離が短い場合に比べて、長い方が大きくなる。したがって、同一発光素子グループEG内で長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eからの光によるスポットを重ならせている場合、すなわち幅方向LTDの距離が2Drの場合に、上記ずれ量が最も小さい。次いで、上記実施形態の場合、すなわち幅方向LTDの距離がDt−2Drの場合に、上記ずれ量が小さく、上記変形形態の場合、すなわち幅方向LTDの距離がDt+2Drの場合に、上記ずれ量が最も大きくなる。よって、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対して傾いて配設された場合の、各スポットの主走査方向MDのずれ量の差を小さくするためには、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの発光素子Eと、長手方向LGDの位置が互いに同一の発光素子Eを、上記実施形態(図4)のように、発光素子行GRa2の両端、および発光素子行GRb1の両端に配設するのが、より好ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、発光素子行GRa1、GRa2、GRb1、GRb2を長手方向LGDに一行に配設した発光素子Eにより構成しているが、これに限られない。例えば、後述する実施例2のように、4行千鳥に配設した発光素子Eにより発光素子行GRa1、GRa2、GRb1、GRb2を構成してもよく、発光素子Eの配設態様は任意である。
【0059】
また、上記実施形態では、発光素子グループEGを2行千鳥で配設しているが、これに限られない。例えば、後述する実施例2のように、3行千鳥に発光素子グループを配設してもよく、発光素子グループの配設態様は任意である。同様に、上記実施形態では、各レンズアレイLA1、LA2において2行千鳥でレンズが並んでいたが、レンズの配設態様はこれに限られず、発光素子グループEGに対応していればよい。
【0060】
また、上記実施形態では、15個の発光素子Eから発光素子行GRa1、GRb2を構成しており、19個の発光素子Eから発光素子行GRa2、GRb1を構成している。しかしながら、発光素子行を構成する発光素子Eの個数はこれに限られない。
【0061】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【0062】
また、上記実施形態のレンズLS1、LS2で構成される結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有していたが、結像光学系の倍率はこれに限られず、正であっても良く、1以上の絶対値を有していても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1、LA2の裏面にレンズLS1、LS2が形成されていた。しかしながら、例えば、レンズアレイLA1、LA2の表面にレンズLS1、LS2が形成されても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1、LA2は、ガラス製の光透過性基板SBに樹脂製のレンズLS1、LS2を形成したものであった。しかしながら、レンズアレイLA1、LA2を1つの材料で一体的に構成することもできる。
【0065】
また、レンズアレイLA1、LA2の形状や大きさについても種々の変更が可能である。
【0066】
また、光センサーSCの配設態様も上記以外に種々の変更が可能であり、また、光センサーSCを備えないように構成しても良い。
【実施例】
【0067】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
以下では、上記実施形態で図4を用いて示したような、発光素子Eの配置を具体的に示す実施例と比較例との比較結果について説明する。また、上記実施形態と同一構成要素には同一符号を付している。
【0069】
図8は、実施例1の発光素子Eの配置態様を示す図、図9は、比較例1の発光素子Eの配置態様を示す図である。図8、図9に示すように、実施例1および比較例1では、レンズLS1、LS2の直径は1.00[mm](有効径は0.8[mm])、発光素子の直径は0.04[mm]である。また、発光素子グループEG内で発光素子Eが長手方向LGDに並ぶ素子間距離Pel=0.042[mm]である。
【0070】
図8に示すように、実施例1では、発光素子グループEGは、上記実施形態(図4)と同様に、2行千鳥に配置されている。また、各発光素子グループEGは、上記実施形態(図4)と同様に発光素子Eを配置している。すなわち、発光素子行GRa1、GRb2は、一列に並ぶ15個の発光素子Eを有し、発光素子行GRa2、GRb1は、一列に並ぶ19個の発光素子Eを有している。ただし、左端の発光素子グループEGの発光素子行GRa1のみ、17個の発光素子Eを有している。また、距離Dt=0.714[mm]、距離Dr=0.18[mm]である。また、発光素子行GRa2と発光素子行GRb1との幅方向LTDの距離は0.354[mm]になっている。よって、発光素子行GRa1と発光素子行GRa2との幅方向LTDの距離は、2Dr=0.36[mm]となっている。したがって、発光素子行GRa2と発光素子行GRb1との幅方向LTDの距離と、発光素子行GRa1と発光素子行GRa2との幅方向LTDの距離とは、ほぼ等しい値になっている。
【0071】
一方、図9に示すように、比較例1では、発光素子グループEG内の発光素子Eの配置のみが、実施例1と異なっている。すなわち、各発光素子グループEGは、一列に並ぶ19個の発光素子Eを有している。そして、その端部の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置が、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、同一になっている。すなわち、比較例1では、発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eからの光と、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eからの光とは、形成するスポットが互いに重なるように感光体ドラム21に導かれて、多重露光している。一方、発光素子グループEGの中央の15個の発光素子Eからの光は、感光体ドラム21に離散的に導かれる。つまり、他の発光素子Eからの光によるスポットと重なることはなく、多重露光しない。
【0072】
図10は、感光体ドラムに対するラインヘッドの配設状態を示す図である。すなわち、図10(a)は、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに一致するように、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して配設された状態を示している。一方、図10(b)は、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対して傾いて配設された状態を示している。そして、実施例1、比較例1および後述する実施例2、比較例2について、図10(b)に示すように、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対する傾き角度x[radian]で配設されたときの、多重露光する発光素子Eからの光によるスポットの感光体ドラム21における主走査方向MDのずれ量d[μm]を求めた。
【0073】
図11は、実施例1と比較例1とのずれ量dを表として示す図である。図11から分かるように、比較例1において、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、傾き角度xに関わりなく、d=0になっている。これは、比較例1では、発光素子グループの中心付近の発光素子Eは多重露光していないため、ずれが発生しないからである。一方、比較例1の発光素子グループの端部では、傾き角度x=0.005のときは、ずれ量d=3.6になっている。これに対して、実施例1では、傾き角度x=0.005のときは、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、d=1.8であり、発光素子グループの端部でも、d=1.8になっている。このように、傾き角度x=0.005のときは、比較例1ではずれ量dの差が3.6であるのに対して、実施例1ではずれ量dの差が0になっている。また、傾き角度x=0.01のときは、比較例1の発光素子グループの端部では、ずれ量d=7.0になっている。これに対して、実施例1では、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、d=3.6であり、発光素子グループの端部でも、d=3.6になっている。このように、傾き角度x=0.01のときは、比較例1ではずれ量dの差が7.0であるのに対して、実施例1ではずれ量dの差が0になっている。したがって、比較例1では、発光素子グループの中心付近と発光素子グループの端部とで、ずれ量の差が大きく、露光ムラが発生している。これに対して、実施例1では、発光素子グループの中心付近と発光素子グループの端部とで、ずれ量の差が0であり、露光ムラが発生していない。よって、実施例1では、本発明の効果が最大限に発揮できている。
【0074】
なお、実施例1において、発光素子グループの中心付近と発光素子グループの端部とで、ずれ量の差が0であるのは、発光素子行GRa2と発光素子行GRb1との幅方向LTDの距離が0.354[mm]であり、発光素子行GRa1と発光素子行GRa2との幅方向LTDの距離が0.36[mm]であって、発光素子行GRa2と発光素子行GRb1との幅方向LTDの距離と、発光素子行GRa1と発光素子行GRa2との幅方向LTDの距離とが、ほぼ等しい値になっているからであると考えられる。すなわち、上記実施形態において説明したように、例えばラインヘッド29が感光体ドラム21に対して傾いて配設された場合の、多重露光する発光素子Eからの光によるスポットの主走査方向MDのずれ量は、当該多重露光する発光素子E間の幅方向LTDの距離が長くなると、増大する。これに対して、実施例1では、当該距離がほぼ等しいため、ずれ量も、ほぼ等しくなると考えられる。
【0075】
図12は、実施例2の発光素子の配置態様を示す図、図13は1行目の発光素子グループ行GRaの発光素子グループEGの発光素子Eの配置態様を示す図、図14は2行目の発光素子グループ行GRbの発光素子グループEGの発光素子Eの配置態様を示す図、図15は3行目の発光素子グループ行GRcの発光素子グループEGの発光素子Eの配置態様を示す図である。図16、図17は、比較例2の発光素子Eの配置態様を示す図である。図12〜図17に示すように、実施例2および比較例2では、レンズLS1、LS2の直径は1.78[mm](有効径は1.6[mm])、発光素子の直径は0.02[mm]である。また、発光素子グループEG内で発光素子Eが長手方向LGDに並ぶ素子間距離Pel=0.0105[mm]である。また、隣り合う発光素子グループEG間の長手方向LGDの距離Dg=0.819[mm]、隣り合う発光素子グループEG間の幅方向LTDの距離Dt=1.77[mm]である。
【0076】
図12に示すように、実施例2では、発光素子グループEGは、3行千鳥に配置されている。そして、各発光素子グループEGは、それぞれ2行の発光素子行を有し、各発光素子行は、4行千鳥に配設された発光素子Eを有している。すなわち、発光素子行GRa1は、4行千鳥に配設された76個の発光素子Eを有し、発光素子行GRa2は、4行千鳥に配設された80個の発光素子Eを有している。そして、発光素子行GRa2の両端の各2個の発光素子Eを除く76個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子行GRa1の76個の発光素子Eと、それぞれ同一になっている。また、発光素子行GRb1は、4行千鳥に配設された78個の発光素子Eを有し、発光素子行GRb2は、4行千鳥に配設された78個の発光素子Eを有している。そして、発光素子行GRb1の左端の2個の発光素子Eを除く76個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子行GRb2の右端の2個の発光素子Eを除く76個の発光素子Eと、それぞれ同一になっている。また、発光素子行GRc1は、4行千鳥に配設された80個の発光素子Eを有し、発光素子行GRc2は、4行千鳥に配設された76個の発光素子Eを有している。そして、発光素子行GRc1の両端の各2個の発光素子Eを除く76個の発光素子Eの長手方向LGDの位置は、発光素子行GRc2の76個の発光素子Eと、それぞれ同一になっている。
【0077】
一方、図16、図17に示すように、比較例2では、各発光素子グループEGにおける発光素子Eの配置のみが、実施例2と異なっている。すなわち、各発光素子グループEGは、1行の発光素子行を有し、この発光素子行は、4行千鳥に配設された80個の発光素子Eを有している。そして、両端の各2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置が、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eの長手方向LGDの位置と、同一になっている。すなわち、比較例2では、発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eからの光と、長手方向LGDに隣り合う発光素子グループEGの端部の2個の発光素子Eからの光とは、形成する各スポットが互いに重なるように感光体ドラム21に導かれて、多重露光している。一方、発光素子グループEGの中央の76個の発光素子Eからの光は、感光体ドラム21に離散的に導かれる。つまり、他の発光素子Eからの光によるスポットと重なることはなく、多重露光しない。そして、上記実施例2および比較例2について、図10(b)に示すように、ラインヘッド29の長手方向LGDが感光体ドラム21の主走査方向MDに対する傾き角度x[radian]で配設されたときの、多重露光する発光素子Eからの光によるスポットの感光体ドラム21における主走査方向MDのずれ量d[μm]を求めた。
【0078】
図18は、実施例2と比較例2とのずれ量を表として示す図である。図18から分かるように、比較例2において、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、傾き角度xに関わりなく、d=0になっている。これは、比較例2では、発光素子グループの中心付近の発光素子Eは多重露光していないため、ずれが発生しないからである。一方、比較例2の発光素子グループの端部では、傾き角度x=0.005のときは、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRb(2行目)との間、および発光素子グループ行GRb(2行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=8.9になっており、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=18になっている。これに対して、実施例2では、傾き角度x=0.005のときは、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、d=2.5であり、発光素子グループの端部では、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRb(2行目)との間、および発光素子グループ行GRb(2行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=6.4になっており、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=15になっている。このように、傾き角度x=0.005のときは、比較例2ではずれ量dの差が18であるのに対して、実施例2ではずれ量dの差が12.5になっており、実施例2の方が比較例2に比べてずれ量dの差が小さくなっている。
【0079】
また、傾き角度x=0.01のときは、比較例2の発光素子グループの端部では、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRb(2行目)との間、および発光素子グループ行GRb(2行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=17になっており、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=35になっている。これに対して、実施例2では、発光素子グループの中心付近のずれ量dは、d=5.0であり、発光素子グループの端部では、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRb(2行目)との間、および発光素子グループ行GRb(2行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=13になっており、発光素子グループ行GRa(1行目)と発光素子グループ行GRc(3行目)との間では、ずれ量d=30になっている。このように、傾き角度x=0.01のときは、比較例2ではずれ量dの差が35であるのに対して、実施例2ではずれ量dの差が25になっており、実施例2の方が比較例2に比べてずれ量dの差が小さくなっている。したがって、比較例2では、発光素子グループの中心付近と発光素子グループの端部とで、ずれ量の差が大きく、露光ムラが発生している。これに対して、実施例2では、発光素子グループの中心付近と発光素子グループの端部とで、ずれ量の差が比較例2に比べて小さく、露光ムラが抑制されており、良好な露光が可能となっている。
【符号の説明】
【0080】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 E…発光素子、 EG…発光素子グループ、 GRa1、GRa2、GRb1、GRb2、GRc1、GRc2…発光素子行、 LS1…レンズ、 LS2…レンズ、 LGD…長手方向、 LTD…幅方向、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向、 SP_1〜SP_4…スポット、 TKD…厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被露光面に光を結像する第1の結像光学系と、
前記第1の結像光学系により結像されて第1のスポットを前記被露光面に形成する光を発光する第1の発光素子と、
前記第1の発光素子の第1の方向に配設されて、前記第1の結像光学系により結像されて第2のスポットを前記被露光面に形成する光を発光する第2の発光素子と、
前記第1の結像光学系により結像されて、前記第1の方向と直交する方向から見て前記第1のスポットと重なる第3のスポットを前記被露光面に形成する光を発光する第3の発光素子と、
前記被露光面に光を結像する第2の結像光学系と、
前記第2の結像光学系により結像されて、前記第1の方向と直交する方向から見て前記第2のスポットと重なる第4のスポットを前記被露光面に形成する光を発光する第4の発光素子と、
を備えたことを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記第1の発光素子と前記第3の発光素子との間の距離と、前記第2の発光素子と前記第4の発光素子との間の距離とが、ほぼ同一である請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
像担持体と、
前記像担持体を露光する露光ヘッドと、
を備え、
前記露光ヘッドは、前記像担持体に光を結像する第1の結像光学系と、前記第1の結像光学系により結像されて第1のスポットを前記像担持体に形成する光を発光する第1の発光素子と、前記第1の発光素子の第1の方向に配設されて、前記第1の結像光学系により結像されて第2のスポットを前記像担持体に形成する光を発光する第2の発光素子と、前記第1の結像光学系により結像されて、前記第1の方向と直交する方向から見て前記第1のスポットと重なる第3のスポットを前記像担持体に形成する光を発光する第3の発光素子と、前記像担持体に光を結像する第2の結像光学系と、前記第2の結像光学系により結像されて、前記第1の方向と直交する方向から見て前記第2のスポットと重なる第4のスポットを前記像担持体に形成する光を発光する第4の発光素子と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−31569(P2011−31569A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182317(P2009−182317)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】