説明

露光装置、それを用いたデバイスの製造方法、並びに気体供給装置

【課題】加湿器の加湿能力過多による結露を抑制し、かつ、加湿能力不足による制御不良を抑制する露光装置を提供する。
【解決手段】加湿エア供給装置30は、気体32を加湿する気化式加湿器34と、気化式加湿器34を通過する第1の気体の流量を制御する第1の流体制御機器33aと、通過しない第2の気体の流量を制御する第2の流体制御機器33bと、気化式加湿器34の加湿能力を可変する加湿能力可変機器38、39と、湿度検出部45と、制御演算部46とを有し、制御演算部46は、湿度検出部45が検出した加湿エア41の湿度と、予め設定した目標湿度とに基づいて、第1及び第2の流体制御機器33a、33bを制御して第1及び第2の気体の流量比を調整し、第1の流体制御機器33aの操作量と、予め設定した目標湿度操作量に基づいて、加湿能力可変機器38、39を制御して気化式加湿器34に導入される第1の気体の流量を一定とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、それを用いたデバイスの製造方法、並びに気体供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、半導体デバイスや液晶表示装置等の製造工程であるリソグラフィ工程において、原版(レチクル、又はマスク)のパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハやガラスプレート等)に転写する装置である。この露光装置は、一般に、装置全体を囲むチャンバを有し、露光装置本体の環境温度を一定に保ち、かつ、空気を清浄に保つよう空調される。チャンバは、主に、空気の温度調節を行う空調機室と、微小異物を濾過して清浄な空気の均一な流れを形成する集塵フィルタと、装置環境を外部と遮断するブースとを備える。この場合、温度調節された空気は、空調機室内部の送風機により、集塵フィルタ等を介してブース内に供給される。この供給された空気は、ブースに設置されたリターン口から再度空調機室に取り込まれ、チャンバ内を循環する。なお、チャンバは、ブースにある微小な隙間を通して、微小異物や有害ガスが内部に侵入するのを防止するために、循環空気量の約1割に相当する外部空気を空調機室に設けられた外気導入口より導入し、ブース内を常時陽圧に保つよう制御される。しかしながら、露光装置を長期間にわたり運転させると、ブース内の循環空気が、照明光学系を構成する最終光学部材や、投影光学系を構成する最上面及び最下面の投影レンズに触れ、これらの光学素子の表面が曇る。その結果、露光光の照度劣化によって、露光装置の生産性が低下するという問題がある。そこで、従来の露光装置は、照明光学系の最終光学部材や投影光学系の投影レンズを窒素ガス等の清浄な不活性ガスによりパージし、光学素子の曇りの発生を低く抑えている。
【0003】
また、露光装置が設置されるクリーンルーム内の空気には、一般に、微量の塩基性ガス(アンモニア、アミン等)や、酸性ガス(硫酸、硝酸、塩化水素等)、更には、有機ガス(シロキサン等)の化学汚染物質が含まれる。また、これらのガスは、露光装置の各構成部材からも微量に排出される。そこで、従来のチャンバは、ブース内の空気中に含まれる化学物質の濃度をppb以下に低減させるために、ケミカルフィルタを備える。このケミカルフィルタは、塩基性ガスや酸性ガスをイオン交換反応により除去し、また、有機ガスを活性炭により除去するフィルタであり、例えば、辺600mm、厚さ60mmの形状のものを、設置環境、及び必要な低減濃度に合わせて、数段重ねて使用する。しかしながら、露光装置の大型化に伴い、ブース内の循環空気の量が増大すると、吸着効率を上げるために、ケミカルフィルタの面風速を下げるよう開口部の大きなものを選定する必要がある。また、ブースの外部から取り込む空気量が多くなると、クリーンルーム内から取り込まれる塩基性ガス、酸性ガス、及び有機ガスの量も増加するため、ケミカルフィルタの寿命が短くなる。即ち、交換周期を延ばし、露光装置のダウンタイムを軽減するためには、更に多くのケミカルフィルタを装備する必要があり、結果的に、露光装置が大型化する。
【0004】
これに対して、露光装置の大型化を避けつつ、光学素子の曇りを抑えるために、ブース内の空気に触れる各光学素子部分を加湿エアにて局所的にパージする方法がある。加湿エアは、循環空気の流量と比較し、数千から数万分の1程度の小流量のエアである。この方法は、循環空気の全てから汚染物質を除去し、必要とされる低減濃度まで下げる方法に比べ、省エネルギーである。この加湿エアを使用する方法として、例えば、特許文献1は、工場設備より供給されるクリーンドライエア(以下、「CDA」と表記する)を加湿制御して、ケミカルフィルタを通して装置内へ供給する半導体露光装置を開示している。この半導体露光装置における加湿方法には、湿度センサを用いて、加湿器の温度を調整する方法と、加湿器へ送り込む流量を制御する方法とがある。そして、半導体露光装置は、加湿エアを各光学素子の表面に吹き付け、表面近傍の雰囲気に含まれる化学汚染物質の濃度を低下させて曇りを防ぐ。なお、上記加湿エアは、CDAが約−60℃の露点温度の非常に乾燥したエアであるのに対し、不純物の多くがCDAと同等に取り除かれ、かつ、露点温度が0℃以上の気体の総称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−275054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、物体、若しくは液体の温度を変化させることで加湿量を調整するが、この場合、物体、若しくは液体の熱時定数が比較的大きいため、高精度な湿度制御が行えない。一方、加湿器へ送り込む流量を制御する方法では、加熱による方法と異なり、物体、若しくは液体の熱時定数の影響を軽減し、高精度な湿度制御が行えるが、加湿媒体の能力が一定範囲内となることが必須であり、加湿媒体の能力変化が無視できない。ここで、加湿媒体の能力とは、例えば、温度により変化する飽和水蒸気圧を含む。また、気化式の加湿方法では、液体が気化する際に気化熱を周囲から奪い液体の温度が低下し、飽和水蒸気圧も低下するので、加湿器を通過した気体の絶対湿度も低下する。更に、レーザ干渉計の揺らぎの観点から、湿度は、空間内部の湿度に追従して制御することが望ましいが、加湿器へ供給される液体は、設置先から直接供給される場合もあり、常に温度コントロールできるとは限らない。なお、加湿器が置かれる環境下の温度変動も設置先に依存することからも同様である。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、加湿エアにて光学素子の表面を局所的にパージする方法を採用する場合、加湿器の加湿能力過多による結露を抑制し、かつ、加湿能力不足による制御不良を抑制する露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、光学素子に接する空間を囲むチャンバと、前記光学素子の空気に触れる表面を加湿エアにて局所的にパージする加湿エア供給装置とを有する露光装置であって、加湿エア供給装置は、気体を供給する気体供給源と、気体供給源から供給された気体を加湿する気化式加湿器と、気体供給源から供給された気体のうち、気化式加湿器を通過する第1の気体の流量を制御する第1の流体制御機器と、気化式加湿器を通過しない第2の気体の流量を制御する第2の流体制御機器と、気化式加湿器の加湿能力を可変する加湿能力可変機器と、加湿エアの湿度を計測する湿度検出部と、第1の流体制御機器、第2の流体制御機器及び加湿能力可変機器を制御する制御演算部とを有し、制御演算部は、湿度検出部が検出した加湿エアの湿度と、予め設定した目標湿度とに基づいて、第1及び第2の流体制御機器を制御して第1及び第2の気体の流量比を調整し、更に、第1の流体制御機器の操作量と、予め設定した目標湿度操作量に基づいて、加湿能力可変機器を制御して気化式加湿器に導入される第1の気体の流量を一定とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加湿エアにて光学素子の表面を局所的にパージする方法を採用する場合、加湿器の加湿能力過多による結露を抑制し、かつ、加湿能力不足による制御不良を抑制する露光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る露光装置に構成を示す概略図である。
【図2】気化式加湿器の内部構造を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る湿度制御を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る加湿エア供給装置の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る加湿エア供給装置の構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る加湿エア供給装置の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る湿度制御を示すブロック図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る加湿エア供給装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の露光装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。本実施形態における露光装置は、半導体デバイス製造工程に使用される、被処理基板であるウエハに対して露光処理を施す装置であり、ステップ・アンド・リピート方式、又はステップ・アンド・スキャン方式を採用した走査型投影露光装置である。露光装置1は、まず、照明光学系2と、レチクル3を保持するレチクルステージ4と、投影光学系5と、ウエハ6を保持するウエハステージ7と、露光装置1の各構成要素を制御する不図示の制御部とを備える。
【0013】
照明光学系2は、不図示の光源部を備え、転写用の回路パターンが形成されたレチクル3を照明する装置である。光源部において、光源としては、例えば、レーザを使用する。使用可能なレーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザ、波長約157nmのF2エキシマレーザ等である。なお、レーザの種類は、エキシマレーザに限定されず、例えば、YAGレーザを使用しても良いし、レーザの個数も限定されない。また、光源部にレーザが使用される場合、レーザ光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザをインコヒーレント化するインコヒーレント光学系を使用することが好ましい。更に、光源部に使用可能な光源は、レーザに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプ等のランプも使用可能である。
【0014】
また、照明光学系2は、不図示のレンズ、ミラー、ライトインテグレーター、及び絞り等を含む。一般に、内部の光学系は、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順で整列する。この場合、ライトインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含む。なお、ライトインテグレーターは、光学ロッドや回折要素に置換される場合もある。また、開口絞りは、円形絞り、変形照明用の輪帯照明絞り、及び4重極照明絞り等として構成される。
【0015】
レチクル3は、例えば、石英ガラス製の原版であり、転写されるべきパターンが形成されている。また、レチクルステージ4は、水平方向に移動可能な原版ステージであって、レチクル3を保持、及び位置決めするための装置である。走査露光を行う場合、レチクルステージ4は、水平方向にスキャン駆動する。更に、レチクルステージ4は、側面に不図示の移動鏡を備え、レチクルステージ4の周外部には、移動鏡にレーザビームを投射し、その反射光を受光することによってレチクルステージ4の位置を検出するレーザ干渉計8が設置される。
【0016】
投影光学系5は、照明光学系2からの露光光で照明されたレチクル3上のパターンを所定倍率(例えば、1/4、若しくは1/5)でウエハ6上に投影露光する。投影光学系5としては、複数の光学素子のみから構成される光学系や、複数の光学素子と少なくとも一枚の凹面鏡とから構成される光学系(カタディオプトリック光学系)が採用可能である。若しくは、投影光学系5として、複数の光学素子と少なくとも一枚のキノフォーム等の回折光学要素とから構成される光学系や、全ミラー型の光学系等も採用可能である。
【0017】
ウエハ6は、表面上にレジスト(感光剤)が塗布された、単結晶シリコン製の基板である。また、ウエハステージ7は、3次元方向に移動可能な基板ステージであって、ウエハ6を保持、及び位置決めするための装置である。走査露光を行う場合、ウエハステージ7は、レチクルステージ4と同様、水平方向にスキャン駆動する。なお、通常の走査露光の場合、レチクルステージ4及びウエハステージ7は、互いに逆方向にスキャン駆動する。一方、静止露光の場合、レチクルステージ4及びウエハステージ7は、露光中は共に駆動しない。更に、ウエハステージ7は、側面に不図示の移動鏡を備え、ウエハステージ7の周外部には、移動鏡にレーザビームを投射し、その反射光を受光することによってウエハステージ7の位置、及び振動を検出するレーザ干渉計9が設置される。
【0018】
制御部は、露光処理や、該露光処理に際してレチクル3やウエハ6の駆動等を実施するために、光学系やステージ系等の各構成要素を制御する制御手段である。制御部は、各処理をシーケンス、若しくはプログラムの形態で実施するものであり、磁気記憶装置やメモリ等で構成される記憶装置を備えたコンピュータ、及びシーケンサ等で構成される。
【0019】
また、露光装置1は、装置全体を囲むように、露光装置1本体の環境温度を一定に保ちつつ、空気を清浄に保つために空調するチャンバ10を有する。このチャンバ10は、空気の温度調節を行う空調機室11と、微小異物を濾過し清浄な空気の均一な流れを形成する集塵フィルタ12と、装置環境を外部と遮断するブース13とを備える。空調機室11は、更に、冷却器14と、再熱用ヒーター15と、ケミカルフィルタ16と、送風機17とを備える。空調機室11は、まず、該空調機室11の内部に設置された集塵フィルタ12部に位置する外気導入口18より外部空気を内部に導入する。次に、空調機室11は、導入された空気を、冷却器14及び再熱用ヒーター15により温度調節し、かつ、複数個所の集塵フィルタ12、及びケミカルフィルタ16を介して清浄化し、送風機17によりブース13内に供給する。なお、空調機室11は、ブース13内に一旦供給された空気をリターン口19から再度内部に取り込み、チャンバ10内を繰り返し循環させる。更に、空調機室11は、集塵フィルタ12を通過しブース13内に導入された空気の温度を計測する温度計測器20と、再熱用ヒーター15を操作し、温度計測器20で計測される温度を一定となるように制御する温度制御部21とを備える。
【0020】
更に、露光装置1は、局所パージ装置として、加湿エアをチャンバ10内の各所に供給する加湿エア供給装置(気体供給装置)30を有する。加湿エア供給装置30は、まず、CDA供給源31と、流体制御機器(第1の流体制御機器)33a、及び流体制御機器(第2の流体制御機器)33bと、気化式加湿器34とを備える。また、加湿エア供給装置30は、気化式加湿器34の加湿能力を可変する加湿能力可変機器(加湿制御手段)である加熱器38及び物体用温度検出部39と、気体混合器40と、熱交換器42と、エアノズル43と、湿度検出部45とを備える。更に、加湿エア供給装置30は、流体制御機器33a、流体制御機器33b及び加湿能力可変機器を制御する制御演算部46を備える。即ち、本実施形態では、加湿エア供給装置30は、加湿エアの湿度を計測する湿度計測手段としての湿度検出部45に対して、上記の各要素により、加湿エアの湿度を調整可能な湿度調整手段を構成する。
【0021】
CDA供給源31は、露光装置1が設置される工場設備から乾燥した清浄空気を導入する気体供給源である。なお、局所パージに利用する気体は、ブース13内を循環する気体と組成が概ね等しいものが望ましい。例えば、ブース13内が大気である場合には、本実施形態のようにCDA32が好ましく、一方、ブース13内が窒素等の不活性ガスで満たされている場合には、その雰囲気ガスの種類に合わせることが好ましい。
【0022】
流体制御機器33a及び流体制御機器33bは、CDA32の流量を制御可能であり、高速で応答が可能なマスフローコントローラを採用した流体制御手段である。このうち、流体制御機器33aは、後述する気化式加湿器34の上流側に位置し、一方、流体制御機器33bは、気化式加湿器34の下流側に接続される。流体制御機器33a及び流体制御機器33bには、CDA供給源31から供給されたCDA32がそれぞれ分岐(第1の気体(CDA)、及び第2の気体(CDA))して導入される。そして、流体制御機器33a及び流体制御機器33bは、CDA32の合計流量が常に一定となるように、流量をプッシュプルで制御する。なお、各流体制御機器としては、マスフローコントローラ単体ではなく、流体計測機能を持つマスフローメータと、流体制御機能を持つ流体制御弁等との複数の機器で構成しても良い。
【0023】
気化式加湿器34(以下、「加湿器34」と略記する)は、フィルタ状の物体に液体を染み込ませることで、物体の周辺を通過する気体を、液体の自然気化を利用して加湿可能な加湿手段である。本実施形態では、気化式加湿器34は、流体制御機器33aを通して導入されたCDA32に対して加湿を行うものとする。なお、一般的な気化式加湿器の加湿能力は、媒体となる気体の温度や流量、気化する液体の温度や流量、更には加湿器自身の温度等により変化する。そこで、本実施形態では、気体透過性フィルタを用いた加湿器を採用する。ここで、気体透過性とは、気体のみを通過させ、液体を通過させない性質を意味し、気体透過性フィルタは、例えば、フッ素樹脂を細く束ねた部材やポリオレフィン重合体の中空糸等から成るものである。加湿器34は、内部を貫通する配管35を有し、液体供給源36より供給された液体37を後述の下部配管34d内に導入し、不図示の排水ラインへ排水する。また、加湿器34は、該加湿器34の外郭の温度制御を実施するための、加熱器(物体用ヒーター)38と、物体用温度検出部39とを備える。
【0024】
図2は、加湿器34の内部構造を示す概略図である。加湿器34は、まず、気体透過性フィルタである中空糸膜34aを内包する。加湿器34は、中空糸膜34aに液体37を注入し、その周辺にCDA32を通過させることで、加湿気体を生成する。また、加湿器34は、加湿能力を変化させる方法として、加湿器34自体の温度を変化させる加熱器38を備える。本実施形態の加熱器38は、加湿器34の外郭に直接取り付けることが可能なベルトヒーターやカプトンヒーター等であり、加湿器34の外郭を均一に加熱することができる。なお、加湿器34の外郭がフッ素樹脂のような熱伝導性の優れない材質である場合は、加湿器34の外郭と加熱器38との間に、熱伝導性に優れた物体(例えば、金属膜等)を巻き付け、加熱器38を設置することが望ましい。また、物体用温度検出部39は、加熱器38の近傍に配置し、加湿器34の気化量を代表できることが望ましい。
【0025】
また、加湿器34は、該加湿器34の内部へCDA32や液体37を流すための配管を4箇所有する。即ち、CDA32を供給する配管は、横下部配管34bであり、排出する配管は、横上部配管34cである。この横下部配管34bと横上部配管34cとが、CDA32の流路である第2流路を形成する。一方、液体37を供給する配管は、下部配管34dであり、排出する配管は、上部配管34eである。この下部配管34dと上部配管34eとが、液体37の流路である第1流路を形成する。なお、この場合、重力加速度の加速方向は、図2における矢印方向である。このように、液体37の供給方向が、図中下方向から上方向へとCDA32の供給方向と合うことは、加湿器34の気化能力の観点から好適である。なお、液体37は、本実施形態のように加湿器34から排水しても良いし、加湿器34へ供給するだけでも良い。
【0026】
ここで、液体37は、加湿器34の清浄度の観点から、不純物の少ない純水、若しくは超純水であることが好ましい。若しくは、液体37が、CDA32を汚染させない液体、例えば、一般的な水であれば、フィルタやイオン交換樹脂等の液体汚染防止機器を配置することで、浄化後に供給する構成としても良い。これに関連して、液体37の供給配管、及びCDA32の供給配管は、例えば、フッ素樹脂製であることが、媒体の汚染度の観点から好ましく、材質に透明性があることで、配管内部の状態を把握する上でも配管内部が可視できるという利点がある。
【0027】
気体混合器40は、気化式加湿器34で生成された加湿気体と、流体制御機器33bを通過したCDAとを混合し、加湿エア41を生成する混合装置である。ここで、加湿エア41の総流量は、常に所定の流量に調整される。なお、気体混合器40は、各気体を混合可能なだけの容積があれば良く、若しくは、フィルタ等の「ろ過機能」を持つ程度の容積であれば、気体内の粒子除去も可能となるため、なお好適である。
【0028】
熱交換器42は、チャンバ10内の循環空気通路の内部に設置された、循環空気と加湿エア41との間で熱交換を実施し、互いの気体の温度を近づけるための装置である。熱交換器42は、例えばポリテトラフロオロエチレンチューブ等のフッ素樹脂製配管を波型や渦巻き状にしたものが好適である。ここで、チューブ内を流れる加湿エア41の流量は、循環空気に比べて数千から数万分の1程度の小流量であるため、循環空気の温度外乱としては極めて僅かな影響しか与えない。なお、熱交換器42は、加湿エア41を、循環空気と熱交換させることに限らず、循環空気の温度と略等しい温度に制御された液体、例えば純水と熱交換させてもよい。
【0029】
熱交換器42を通過した加湿エア41は、複数のエアノズル43よりチャンバ10内の各構成要素の光学素子の主要部、即ち、照明光学系2を構成する最終光学部材2aや、投影光学系5を構成する最上面及び最下面の投影レンズ5a、5bに局所的に照射される。一方、熱交換器42を通過した加湿エア41の一部は、各エアノズル43への供給配管とは分離された別系統の配管に設置された湿度測定BOX44へ導入される。ここで、別系統の配管は、空調機室11に開放され、配管内とブース13内との気圧を略等しくするものである。また、湿度測定BOX44の内部には、加湿エア41の湿度を測定するための湿度検出部(湿度計測手段)45が設置される。湿度検出部45で採用可能な湿度検出方法としては、水分吸着による物体(毛髪やナイロン)の延伸性を利用したもの、熱力学的原理に基づく鏡面冷却式、水分吸着による電気特性の変化に基づく高分子抵抗式、高分子容量式、又は酸化アルミ容量式等がある。なお、本実施形態では、湿度検出部45は、小型で安価な高分子容量式の検出方法を採用し、主に相対湿度を検出して、湿度制御を実施するものとする。
【0030】
ここで、相対湿度とは、ある温度で大気中に含まれる水蒸気の圧力(水蒸気分圧)を、その温度の飽和水蒸気圧で割ったものである。このため、相対湿度は、同じ水蒸気量を含んだ気体でも温度が変化すると変化し、更に、上記の定義は、1気圧(101.3kPa)の条件下のものであるため、気圧が変化すると以下の式に基づいて変化する。
相対湿度=(水蒸気分圧/飽和水蒸気圧)×(気圧/101.3kPa)
したがって、相対湿度を測定する場合には、湿度検出部45の設置場所が重要である。本実施形態では、湿度検出部45は、別系統の配管に設置された湿度測定BOX44内に設けられるので、温度、圧力共にブース13内の雰囲気と略等しくなり、湿度検出部45が測定する誤差量を極力抑えることができる。
【0031】
また、湿度検出部45に採用した湿度センサの構成物質が、各種光学部材の表面を曇らせる原因となる化学物質を微量に放出する場合がある。この場合も、湿度検出部45を別系統の配管に設置された湿度測定BOX44内に設けることで、光学素子の主要部に供給される加湿エア41に化学物質が含有することを極力抑えることができる。なお、湿度検出部45が、汚染の少ない物質で構成しているものであれば、本実施形態のように加湿エア41を分離しなくても良い。また、湿度検出部45が、仮に汚染の懸念がある物質を含んでいる場合でも、湿度検出部45の下流に、汚染除去のためのイオン吸着膜を配置することで、加湿エア41を分離しなくても良い。但し、湿度検出部45の設置場所が、加湿エア41の分離を実施しないことでブース13内の雰囲気と異なる空間となる場合は、誤差量を考慮する。
【0032】
制御演算部46aは、湿度検出部45で得られた出力(湿度データ)に基づいて、各流体制御機器33a、33bを制御して、加湿エア41の湿度を制御する制御演算装置である。具体的には、制御演算部46aは、ブース13内の湿度を測定する湿度センサ47が計測する値に対し、PID演算等によりエラー量から操作量を導き出し、該操作量に基づいて、加湿エア41の湿度を制御する。なお、ブース13内の湿度を測定する湿度センサ47が計測する値を、以後、目標湿度50とする。
【0033】
次に、加湿エア供給装置30の作用について説明する。図3は、本実施形態の加湿エア供給装置30における、加湿エア41の湿度制御を示すブロック図である。制御演算部46aは、まず、加湿エア41の湿度を目標湿度50に制御するために湿度検出部45にて検出した加湿エア41の湿度情報と、目標湿度50とを比較する。この比較して得られた第1のエラー量に基づいて、制御演算部46aは、この第1のエラー量がゼロに近づくように、流体制御機器33aと流体制御機器33bとを通過する各CDA32の流量比を調整するための操作量を算出する。このとき、不図示の加算器は、最大操作量51と流体制御機器33aの操作量とに基づいて、流体制御機器33bに対して指令する操作量を演算する。なお、最大操作量51は、CDA32の総流量に基づいて適宜変更する。
【0034】
次に、制御演算部46bは、流体制御機器33aの操作量と目標湿度操作量52とを比較した第2のエラー量を温度に変換する。次に、制御演算部46cは、該温度と、物体用温度検出部39にて検出した加湿器34の温度と、加湿器目標温度53とを比較した第3のエラー量に基づいて加熱器38の操作量を算出する。そして、算出された操作量に基づいて加熱器38を操作することにより、加湿器34の表面温度が好適に調整され、加湿器34内部を通過する液体37やCDA32の温度が変化することで、飽和水蒸気圧が変化する。ここで、加湿器34の加湿能力が不足し、加湿器34内部を通過するCDA32の流量が増加した場合は、制御演算部46bは、加湿器34の表面温度を上昇させるように調整する。加湿器34の表面温度が上昇すると、飽和水蒸気圧が上昇し、加湿器34の加湿能力が増すので、加湿器34を通過するCDA32の流量を減少させることができる。
【0035】
以上のように、本発明の露光装置によれば、加湿エア供給装置30が有する加湿器34の加湿能力を適宜可変させることで、加湿能力不足を抑えることができる。また、加湿器34が加湿能力過多に陥った場合、加湿器34を通過後の配管内で発生する結露を防止することができ、安定した湿度制御が可能となる。更に、加湿エア供給装置30が、露光装置1を構成する各光学素子周辺の空気の湿度に概等しい加湿エア41を供給することで、各ステージ4、7の位置決めに利用する各レーザ干渉計8、9の揺らぎの原因を抑え、安定した計測が可能となる。これにより、強いては、露光装置1のアライメント精度の向上にも繋がる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る露光装置の加湿エア供給装置について説明する。
図4は、第2実施形態に係る露光装置における加湿エア供給装置60の構成を示す概略図である。なお、図4において、図1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態の特徴は、補助的加湿制御対象を加湿器34の表面温度ではなく、液体37に変更した点にある。即ち、第1実施形態では、加湿器34の表面温度を、物体用温度検出部39にて検出し、加熱器38を用いて調整したが、本実施形態では、加湿器34へ供給する液体37の温度を制御して、加湿器34の加湿能力を調整する。この場合、加湿エア供給装置60は、第1実施形態おける加熱器38及び物体用温度検出部39に代えて、媒体接続口下部配管34dに、加熱器(液体用ヒーター)61と、液体用温度検出部62とを備える。なお、液体37の供給圧力(若しくは、流量)は、加湿器34の能力を安定させるために、一定であることが望ましい。液体37の供給が安定しない場合は、媒体接続口下部配管34dに、例えば、レギュレータ等の圧力制御機器、若しくは、流量制御機器等を設置し、供給能力を安定させる。加湿エア供給装置60の制御は、第1実施形態にて説明した図3のブロック図において、加熱器38及び物体用温度検出部39をそれぞれ加熱器61及び液体用温度検出部62と変更し、加湿器目標温度53を液体37の目標温度と変更したものとなる。これにより、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る露光装置の加湿エア供給装置について説明する。
図5は、第3実施形態に係る露光装置における加湿エア供給装置70の構成を示す概略図である。なお、図5において、図1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態の特徴は、補助的加湿制御対象をCDA32とし、加湿器34へ供給するCDA32の温度を制御して加湿器34の加湿能力を調整する点にある。この場合、加湿エア供給装置70は、第1実施形態おける加熱器38及び物体用温度検出部39に代えて、CDA供給源31からの供給配管に、加熱器(気体用ヒーター)71と、気体用温度検出部72とを備える。なお、図5では、加熱器71及び気体用温度検出部72を、流体制御機器33aの上流側に配置しているが、流体制御機器33aの下流側に配置しても良い。図5のような配置とする場合、CDA供給源31の圧力は、気体用温度検出部72が正確に温度を検出できるように、安定させることが望ましい。CDA供給源31の圧力が安定しない場合は、気体用温度検出部72の上流側に圧力制御機器を設置し、圧力を安定させる。加湿エア供給装置70の制御は、第1実施形態にて説明した図3のブロック図において、加熱器38及び物体用温度検出部39をそれぞれ加熱器71及び気体用温度検出部72と変更し、加湿器目標温度53をCDA32の目標温度と変更したものとなる。これにより、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0038】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る露光装置の加湿エア供給装置について説明する。
図6は、第4実施形態に係る露光装置における加湿エア供給装置80の構成を示す概略図である。なお、図6において、図1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態の特徴は、補助的加湿制御対象を液体37の流量とし、加湿器34へ供給する液体37の流量を制御して加湿器34の加湿能力を調整する点にある。この場合、加湿エア供給装置80は、第1実施形態おける加熱器38及び物体用温度検出部39に代えて、媒体接続口下部配管34dに設置される液体用流量可変器81と、媒体接続口上部配管34eに設置される液体用流量検出部82とを備える。なお、図6では、液体用流量検出部82を加湿器34の下流側に配置しているが、これは、加湿器34を通過する液体37が、不図示の排水ラインに接続されている場合に有効となる。一方、排水ラインを構成しない場合は、液体用流量検出部82を加湿器34の上流側に配置してもよいが、この場合は、液体用流量可変器81の下流側へ配置することが望ましい。加湿エア供給装置80の制御は、第1実施形態にて説明した図3のブロック図において、加熱器38及び物体用温度検出部39をそれぞれ液体用流量可変器81及び液体用流量検出部82と変更し、加湿器目標温度53を液体37の目標流量と変更したものとなる。これにより、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0039】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る露光装置の加湿エア供給装置について説明する。図7は、本実施形態の加湿エア供給装置における、加湿エア41の湿度制御を実行するブロック図である。なお、図7において、図3と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態の特徴は、上記各実施形態では、加湿エア41の湿度制御をフィードバック制御で実行するのに対し、更に、フィードフォワード制御を追加した点にある。即ち、本実施形態では、新たに制御演算部46dが、加湿エア41の目標湿度50を温度量に変換した後、制御演算部46bへ加算する。このような、フィードフォワード制御は、上記第1〜第4の実施形態において、同時に適用可能である。これにより、各実施形態の効果をより正確なものとすることができる。
【0040】
なお、上記第1〜4実施形態は、それぞれ単独で構成することが望ましい。第1〜4実施形態の加湿エア供給装置は、全て、加湿器34へ供給されるCDA32の操作量をフィードバックして制御しているため、それぞれの実施形態を混合して実施すると、制御干渉による制御不良を引き起こす原因となる。この対策としては、例えば、加湿エア供給装置は、制御開始直後では、湿度性能に大きな影響を及ぼす液体37の温度制御、即ち、粗制御を行う。この粗制御を実行したのち、加湿エア供給装置は、加湿器34の外郭温度の制御、即ち、精密温調を行い、目標湿度50まで制御するように切り替えても良い。
【0041】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る露光装置の加湿エア供給装置について説明する。図8は、第6実施形態に係る露光装置における加湿エア供給装置90の構成を示す概略図である。なお、図8において、図1と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態の特徴は、加湿エア供給装置に、装置が停止した場合の機器破損の防止のための機器を設置した点にある。加湿器34は、CDA32と液体37とを内部で混合させて加湿を行うため、誤動作や誤操作が発生した場合、液体37がCDA32の配管へ逆流する可能性がある。この場合、多くの気体用配管機器は、液体37が混入すると破損する。そこで、本実施形態では、各流体制御機器33a、33bの下流側配管に各1箇所の逆止弁91を設置し、CDA32の供給側配管への液体37の進入を防止する。なお、液体37の逆流を防止することが可能であれば、逆止弁91に限定するものではなく、開閉バルブと圧力計(流量計)の組み合わせ等、複数の構成としても良い。
【0042】
また、加湿器34にCDA32及び液体37の供給を停止した装置停止状態において、加湿器34の内部に液体37が残留している場合、液体37は、加湿器34の内部から継続的に気化し続ける。この場合、加湿器34付近では、液体37の配管内が飽和して結露することで、配管内に液体37が溜まり、装置稼動時に、ユース側へ液体37を吐き出す可能性がある。そこで、本実施形態では、装置停止状態に開くようなパージ弁92を、CDA32の配管における各流体制御機器33a、33bとは異なる経路(分岐路)上に設置し、各流体制御機器33a、33bの開閉状態を問わず、加湿器34内の液体37を排出する。なお、パージ弁92は、各流体制御機器33a、33bと同じ経路に配置しても良く、この場合、各流体制御機器33a、33bは、パージ弁92を使用する際には開状態とする。また、加湿器34内の液体37を排出するものであれば、CDA供給源31とパージ弁92とを常に接続していなくても良く、例えば、純度の良い窒素ガス供給源(不図示)とパージ弁92とを接続する構成としても良い。
【0043】
更に、上記のような装置停止時の気化抑制に際し、加湿器34と液体供給源36との間に、CDA32を供給する経路を設け、その経路上に排水弁93を設置することで、加湿器34内の液体37を排出する構成としても良い。なお、排水弁93は、加湿器34の液体排出口がある場合は、排出口に配置しても良い。また、気体の供給経路も、CDA供給源31と接続していなくても良く、上記のように窒素ガス供給源でも良い。
【0044】
(デバイスの製造方法)
次に、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0045】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0046】
上記各実施形態において、制御演算部46は、湿度検出部45と目標湿度50との演算を実行するに際し、加湿エア41の露点温度に基づいて換算しても良い。この場合、露点温度は、チャンバ10内の空気の温度よりも低く設定することが望ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 露光装置
6 ウエハ
10 チャンバ
30 加湿エア供給装置
31 CDA供給源
32 CDA
33a 流体制御機器
33b 流体制御機器
34 気化式加湿器
37 液体
38 加熱器
39 物体用温度検出部
41 加湿エア
45 湿度検出部
46 制御演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子に接する空間を囲むチャンバと、前記光学素子の空気に触れる表面を加湿エアにて局所的にパージする加湿エア供給装置とを有する露光装置であって、
前記加湿エア供給装置は、
気体を供給する気体供給源と、
前記気体供給源から供給された気体を加湿する気化式加湿器と、
前記気体供給源から供給された気体のうち、前記気化式加湿器を通過する第1の気体の流量を制御する第1の流体制御機器と、前記気化式加湿器を通過しない第2の気体の流量を制御する第2の流体制御機器と、
前記気化式加湿器の加湿能力を可変する加湿能力可変機器と、
前記加湿エアの湿度を計測する湿度検出部と、
前記第1の流体制御機器、前記第2の流体制御機器、及び前記加湿能力可変機器を制御する制御演算部と、を有し、
前記制御演算部は、前記湿度検出部が検出した前記加湿エアの湿度と、予め設定した目標湿度とに基づいて、前記第1及び第2の流体制御機器を制御して前記第1及び第2の気体の流量比を調整し、更に、前記第1の流体制御機器の操作量と、予め設定した目標湿度操作量に基づいて、前記加湿能力可変機器を制御して前記気化式加湿器に導入される前記第1の気体の流量を一定とすることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御演算部は、前記加湿エアの湿度制御をフィードバック制御で実行することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御演算部は、前記加湿エアの湿度制御を前記フィードバック制御に加えて、フィードフォワード制御で実行することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記加湿能力可変機器は、前記気化式加湿器の外郭に設置された加熱器と、前記気化式加湿器の外郭の表面温度を検出する物体用温度検出部とで構成され、前記気化式加湿器の表面温度を変更することにより加湿能力を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記加湿能力可変機器は、前記気化式加湿器の媒体となる液体の供給配管に設置された加熱器と、前記液体の温度を検出する液体用温度検出部とで構成され、前記液体の温度を変更することにより加湿能力を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記加湿能力可変機器は、前記気体供給源からの供給配管に設置された加熱器と、前記気体の温度を検出する気体用温度検出部7とで構成され、前記気体の温度を変更することにより加湿能力を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記加湿能力可変機器は、前記気化式加湿器の媒体となる液体の配管に設置された液体用流量可変器と、前記液体の流量を検出する液体用流量検出部とで構成され、前記液体の流量を変更することにより加湿能力を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記加湿エア供給装置は、前記第1及び第2の流体制御機器の下流側配管に、装置が停止した場合に前記気体の供給配管への前記液体の進入を防止する逆止弁を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記加湿エア供給装置は、前記気体の供給配管における前記第1及び第2の流体制御機器とは異なる分岐路に、装置が停止した場合に、前記第1及び第2の流体制御機器の開閉状態を問わず、前記気化式加湿器の内部に残留する前記液体を排出するパージ弁を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記加湿エア供給装置は、前記気化式加湿器の前記液体の配管に対して、前記気体を供給する経路を備え、かつ、前記経路上に排水弁を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項11】
前記加湿エアの露点温度は、前記チャンバの内部の空気の温度よりも低く設定することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項12】
前記加湿エアの湿度は、前記光学素子の周辺の湿度に調整されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記基板を現像する工程と、
を有することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項14】
光学素子に接する空間に気体を供給する気体供給装置において、
前記空間に供給される気体の湿度を計測する湿度計測手段と、
前記空間に供給される気体の湿度を調整可能な湿度調整手段と、を備え、
前記湿度調整手段は、
第1流路と、
前記第1流路を通過する気体を加湿可能な加湿器と、
前記加湿器の上流及び下流にて、前記第1流路に接続される第2流路と、
前記湿度計測手段の出力に基づいて、前記第1及び第2流路を通過する気体の流量を制御可能な流量制御手段と、
前記第1流路を通過する気体の流量に応じて、前記加湿器の能力を変化させる加湿制御手段と、
を備えることを特徴とする気体供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−233573(P2011−233573A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99996(P2010−99996)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】