説明

露光装置および露光方法

【課題】被露光物の移動開始位置に依らず、被露光物を所望のパターンで精度良く露光することができる露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置10は、照明光学系11と、照明光学系11からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調して出射する位相変調マスク20と、位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を制御する制御手段18と、を備えている。位相変調マスク20は、位相変調マスク20により位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって被露光物が露光されるよう構成されている。制御手段18は、干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被露光物を所定の露光パターンで露光する露光装置および露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屈折率が周期的に変化する構造を有するフォトニック結晶が様々な分野で利用されている。フォトニック結晶は、例えば、光の波長程度、すなわち数百nm程度のピッチで周期的に設けられた複数のピラーやホールなどを有しており、これによって、屈折率の周期的な変化が実現されている。
【0003】
周期的に複数のピラーやホールなどを形成する方法の1つとして、フォトリソグラフィー法が知られている。フォトリソグラフィー法においては、はじめに基板が準備され、次に基板上にレジストが塗布される。その後、基板およびレジストからなる被露光物が、形成されるべきピラーやホールのピッチに対応する所定のパターンで露光され、現像される。次に、基板上に残っているレジストをマスクとしてエッチングを行うことにより、基板にピラーやホールを形成することができる。
【0004】
レジストを所定のパターンで露光する方法として、レーザ描画装置や電子線描画装置を用いた走査露光による方法や、フォトマスクを用いた一括露光による方法が知られている。このうち一括露光による方法は、基板上のレジストを全面にわたって一括で露光できるため、量産用途の場合に好ましく用いられる。
【0005】
フォトマスクを用いた一括露光による方法としては、密着露光、近接露光または投影露光などが知られている。
【0006】
投影露光においては、数百nmの解像度で露光を実施するためには、高い開口数および低い収差を有する結像光学系を用いることが求められる。しかしながら、一般に、開口数が高くなり収差が低くなるほど、結像光学系の入手が困難になる。また焦点深度が開口数の二乗に反比例して浅くなるため、開口数を高めることによって解像度を向上させる場合、被露光物の位置を高い精度で制御する必要がある。このため、被露光物を所望の位置で保持するための保持具として、高精度の保持具が必要となる。また投影露光においては、露光対象となる被露光物に焦点深度以上の凹凸が形成されている場合、そのような被露光物を露光することが不可能となる。このため、被露光物の製造過程で焦点深度以上のうねりが被露光物に発生してしまう分野の場合、投影露光を用いることができない。
【0007】
このような課題を解決するため、近接露光に関する研究が進められている。しかしながら、通常の近接露光ではフォトマスクと被露光物との間にギャップが設けられており、このため、回折によって露光光の焦点がぼけることが知られている。従って、従来、近接露光を用いて数百nmの解像度で露光を実施することは困難であった。
【0008】
このような課題を解決し、近接露光を用いて数百nmの解像度で露光を実施することを可能とするため、タルボット(Talbot)効果を利用した近接露光方法が提案されている。タルボット効果とは、周期的な構造を有する物体、例えばフォトマスクに光を照射したとき、フォトマスクの出射側に、光の伝搬方向において光強度が周期的に変化するパターンが発生するという現象である。例えば特許文献1においては、0次を含む全ての回折次数の光を用いて被露光物を露光するためのフォトマスクと、フォトマスクから所定の距離に配置された被露光物であって、被露光物上に所望のパターンの光を照射している間、前記所定の距離が光の強度分布の少なくとも一つの周期的な変動の範囲に渡って変化される被露光物と、を備えたシステムが提案されている。特許文献1においては、このようなシステムを用いることにより、被露光物上に所望の平均的な強度分布が得られることが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−517472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1において示されている光の伝搬方向における強度分布は、フォトマスクからの距離に対して完全に周期的には変化していない。すなわち、光の強度分布の周期性に乱れがみられる。この場合、フォトマスクからの距離が光の強度分布の少なくとも一つの周期的な変動の範囲に渡って変化するよう被露光物が移動させられたとしても、被露光物上に得られる平均的な強度分布が、被露光物の移動開始位置に応じて変化すると考えられる。このため、被露光物の移動開始位置に応じて、被露光物に形成される露光パターンが変化してしまうことが考えられる。
【0011】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による露光装置は、光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、位相変調された光の回折光相互の干渉を利用して被露光物を所定の露光パターンで露光する露光装置であって、光を出射する照明光学系と、前記照明光学系の出射側に設けられ、前記照明光学系からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調して出射する位相変調マスクと、前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を制御する制御手段と、を備え、前記位相変調マスクは、位相変調マスクにより位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって前記被露光物が露光されるよう構成されており、前記制御手段は、前記位相変調マスクにより位相変調された光の回折光相互の干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を変化させることを特徴とする露光装置である。
【0013】
本発明による露光装置の位相変調マスクは、位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって被露光物が露光されるよう構成されている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。従って、干渉パターンの変動周期のs倍に対応する距離にわたって位相変調マスクと被露光物との間の距離を変化させることにより、被露光物に照射される光の積算強度分布を、被露光物の移動開始位置に依らず一定にすることができる。これによって、被露光物を所望のパターンで精度良く露光することができる。
【0014】
本発明による露光装置において、位相変調マスクは、所定の位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群を有し、第k(k=1〜nの整数)の位相変調群は、前記変調パターンに対応する所定の周期的な配置パターンで配置された複数の第kの位相変調領域を含み、各位相変調群における複数の位相変調領域の配置パターンは全て同一となっており、第kの位相変調領域の位相変調量をθとし、第kの位相変調領域の面積をSとするとき、以下の関係式
【数1】

が成立しており、各位相変調群における近接する2つの位相変調領域の間の距離と光の波長との比率は、前記位相変調マスクから0次の回折光を除く回折光が生成されるよう定められていてもよい。
【0015】
本発明による露光装置の位相変調マスクにおいて、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差は2π/nとなっており、第1、…、第nの位相変調領域の面積は全て同一となっており、第1、…、第nの位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正m角形領域(m=4または6)によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正m角形領域において第1、…、第nの位相変調領域のいずれか1つの重心が正m角形領域の中心に位置するよう、配置されていてもよい。
【0016】
本発明による露光装置の位相変調マスクにおいて、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1、第2および第3の位相変調群(前記n=3)となっており、第1、第2および第3の位相変調領域の形状は全て同一となっており、第1、第2および第3の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正6角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正6角形領域において第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つの重心が正6角形領域の中心に位置するよう、配置されていてもよい。この場合、好ましくは、隣接する2つの前記正6角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数2】

が成立している。
この場合、前記正6角形領域は、前記正6角形領域の中心に位置する第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つと、各位相変調領域を取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域と、によって占められていてもよい。若しくは、前記正6角形領域は、第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つによって占められていてもよい。
【0017】
本発明による露光装置の位相変調マスクにおいて、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1および第2の位相変調群(前記n=2)となっており、第1および第2の位相変調領域の形状は全て同一となっており、第1および第2の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正4角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正4角形領域において第1または第2の位相変調領域のいずれか1つの重心が正4角形領域の中心に位置するよう、配置されていてもよい。この場合、好ましくは、隣接する2つの前記正4角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数3】

が成立している。
この場合、前記正4角形領域は、前記正4角形領域の中心に位置する第1または第2の位相変調領域のいずれか1つと、各位相変調領域を取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域と、によって占められていてもよい。若しくは、前記正4角形領域は、第1または第2の位相変調領域のいずれか1つによって占められていてもよい。
【0018】
本発明による露光装置の位相変調マスクにおいて、隙間無く配置された複数の正m角形領域(m=4または6)によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合、各正m角形領域に、第1、…、第nの位相変調領域がそれぞれ1つずつ含まれており、各正m角形領域において、各位相変調領域は、正m角形領域に対応する回転対称性を有するよう配置されていてもよい。
この場合、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1および第2の位相変調群(前記n=2)となっており、第1の位相変調群および第2の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正4角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、第1の位相変調領域の重心および第2の位相変調領域の重心がいずれも正4角形領域の中心に位置するよう、配置されており、第1の位相変調群の第1の位相変調領域の位相変調量と第2の位相変調群の第2の位相変調領域の位相変調量との差はπとなっており、第1の位相変調領域の面積と第2の位相変調領域の面積とは同一となっていてもよい。この場合、好ましくは、隣接する2つの前記正4角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数4】

が成立している。
【0019】
本発明による露光方法は、光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、位相変調された光の回折光相互の干渉を利用して被露光物を所定の露光パターンで露光する露光方法であって、光を出射する照明光学系を準備する工程と、位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって前記被露光物が露光されるよう、位相変調マスクを用いて前記照明光学系からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調する位相変調工程と、前記位相変調マスクにより位相変調された光の回折光相互の干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を変化させる工程と、を備えたことを特徴とする露光方法である。
【0020】
本発明による露光方法の位相変調工程は、位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって被露光物が露光されるよう、位相変調マスクを用いて照明光学系からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調する工程となっている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。従って、干渉パターンの変動周期のs倍に対応する距離にわたって位相変調マスクと被露光物との間の距離を変化させることにより、被露光物に照射される光の積算強度分布を、被露光物の移動開始位置に依らず一定にすることができる。これによって、被露光物を所望のパターンで精度良く露光することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被露光物の移動開始位置に依らず、被露光物を所望のパターンで精度良く露光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における露光装置を示す図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における位相変調マスクを示す平面図。
【図3】図3は、図2の位相変調マスクをIII−III方向から見た縦断面図。
【図4】図4は、位相変調マスクの各位相変調領域の配置パターンを示す図。
【図5】図5(a)(b)(c)は、一次元の周期的構造体において、光が回折する様子を示す図。
【図6】図6(a)(b)(c)は、本発明の第1の実施の形態における位相変調マスクが生成し得る回折光と、被露光物に実際に照射される回折光の範囲を示す円と、の関係を示す図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態において、位相変調マスクの出射面から放射される光の伝搬方向における強度分布を示す図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図9】図9は、図8の位相変調マスクをX−X方向から見た縦断面図。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態における位相変調マスクを示す平面図。
【図11】図11は、図10の位相変調マスクをXI−XI方向から見た縦断面図。
【図12】図12(a)(b)(c)は、本発明の第2の実施の形態における位相変調マスクが生成し得る回折光と、被露光物に実際に照射される回折光の範囲を示す円と、の関係を示す図。
【図13】図13は、本発明の第2の実施の形態の第1の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図14】図14は、図13の位相変調マスクをXIV−XIV方向から見た縦断面図。
【図15】図15は、本発明の第2の実施の形態の第2の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図16】図16は、本発明の第3の実施の形態の第3の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図17】図17は、本発明の第3の実施の形態における位相変調マスクを示す平面図。
【図18】図18は、図17の位相変調マスクをXVIII−XVIII方向から見た縦断面図。
【図19】図19(a)(b)(c)は、本発明の第3の実施の形態における位相変調マスクが生成し得る回折光と、被露光物に実際に照射される回折光の範囲を示す円と、の関係を示す図。
【図20】図20は、本発明の第3の実施の形態の第1の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図21】図21(a)(b)は、本発明の第3の実施の形態の第2の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図22】図22は、本発明の第3の実施の形態の第3の変形例における位相変調マスクを示す平面図。
【図23】図23は、各実施例における光強度分布の算出箇所を示す図。
【図24】図24(a)(b)(c)は、実施例1において、光強度分布の算出結果を示す図。
【図25】図25は、実施例1において、被露光物に得られた露光パターンを示す図。
【図26】図26(a)(b)(c)は、比較例1において、光強度分布の算出結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図7を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1を参照して、本実施の形態における露光装置10であって、光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、位相変調された光の回折光相互の干渉を利用して被露光物14を所定の露光パターンで露光する露光装置10について説明する。
【0024】
露光装置
図1は、露光装置10を示す図である。図1に示すように、露光装置10は、光を出射する照明光学系11と、照明光学系11の出射側に設けられ、照明光学系11からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調して出射する位相変調マスク20と、位相変調マスク20の出射側に設けられ、被露光物14を保持するとともに位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させるよう移動自在となっている保持具17と、保持具17の移動を制御する制御手段18と、を備えている。
【0025】
(照明光学系)
このうち照明光学系11は、好ましくは、相互にコヒーレントな光を位相変調マスク20に向けて出射するよう構成されている。すなわち照明光学系11は、好ましくは、図1に示す矢印Tの方向に伝搬される平行光であって、含まれる光の振幅および位相に一定の関係がある平行光を出射するよう構成されている。このような照明光学系11の具体的な構成は特には限定されないが、例えば、図1に示すように、照明光学系11は、レーザ光を出射するレーザ光源12と、レーザ光源12からのレーザ光を平行光として位相変調マスク20へ導くための折り返しミラー13aおよびビームエキスパンダー13b,13cと、を有している。
【0026】
(位相変調マスク)
照明光学系11からの平行光は、位相変調マスク20において位相変調される。また位相変調マスク20を透過した光は、様々な方向へ回折し、この結果、被露光物14上に干渉パターンが形成される。ここで、本実施の形態による位相変調マスク20は、光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、この結果、被露光物14上に形成される干渉パターンが位相変調マスク20によって位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって生成されるよう、構成されている。すなわち位相変調マスク20は、0次の回折光を除く回折光によって被露光物14が露光されるよう構成されている。以下、位相変調マスク20の構成について説明する。
【0027】
はじめに、位相変調マスク20の周期性について説明する。位相変調マスク20は、所定の位相変調量を有する第1、…、第nの位相変調群を有している。ここで、nは2以上の整数である。また、第kの位相変調群は、前記変調パターンに対応する所定の周期的な配置パターンで配置された複数の第kの位相変調領域を含み、各位相変調群における複数の位相変調領域の配置パターンは全て同一となっている。ここでkは、1〜nの範囲内の任意の整数である。このように位相変調マスク20を構成することにより、光を所定の周期的な変調パターンで位相変調することが可能となっている。このような位相変調マスク20の具体的な構造について、図2乃至図4を参照して説明する。
【0028】
図2は、位相変調マスク20を示す平面図であり、図3は、図2の位相変調マスクをIII−III方向から見た縦断面図である。本実施の形態においては、上述のnが3となっている例について説明する。具体的には、図2に示すように、位相変調マスク20は、光を第1の位相変調量θで変調する第1位相変調群21と、光を第2の位相変調量θで変調する第2位相変調群22と、光を第3の位相変調量θで変調する第3位相変調群23と、を有している。このうち第1位相変調群21は、光を第1の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第1位相変調領域21aを含んでいる。同様に、第2位相変調群22は、光を第2の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第2位相変調領域22aを含んでおり、第3位相変調群23は、光を第3の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第3位相変調領域23aを含んでいる。また図2に示すように、位相変調マスク20のうち第1位相変調領域21a、第2位相変調領域22aおよび第3位相変調領域23a以外の領域は、光を遮蔽する光遮蔽領域25によって占められている。
【0029】
図2から明らかなように、第1位相変調領域21a、第2位相変調領域22aおよび第3位相変調領域23aはいずれも、同一の直径Rを有する円形の領域となっている。すなわち、第1位相変調領域21a、第2位相変調領域22aおよび第3位相変調領域23aの形状および面積は全て同一となっている。
【0030】
次に図3を参照して、光の伝搬方向における位相変調マスク20の構造について説明する。図3に示すように、第1位相変調領域21a、第2位相変調領域22aおよび第3位相変調領域23aは、その表面に凹凸が設けられ、光透過性を有する基材71によって形成されている。基材71は、例えばその屈折率がnである石英ガラスから構成されている。
【0031】
〔位相変調量〕
次に、基材71から形成される各位相変調領域の位相変調量について説明する。各位相変調群の位相変調領域の位相変調量は、第uの位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されている。ここでuは、1〜(n−1)の範囲内の任意の整数である。なお上述のように、本実施の形態においては、整数nが3となっている。すなわち、本実施の形態において、第1位相変調領域21aの第1の位相変調量θと第2位相変調領域22aの第2の位相変調量θとの差が2π/3となっており、また、第2位相変調領域22aの第2の位相変調量θと第3位相変調領域23aの第3の位相変調量θとの差が2π/3となっている。このように各位相変調領域21a,22a,23aを設定するための具体的な構成について、図3を参照して説明する。
【0032】
図3に示すように、基材71のうち第1位相変調領域21aを構成する部分の厚みと、基材71のうち第2位相変調領域22aを構成する部分の厚みとの差をΔhとする。この場合、空気の屈折率を1とすると、第1位相変調領域21aにおける第1の位相変調量θと、第2位相変調領域22aにおける第2の位相変調量θとの差はΔh×(n−1)×2π/λになる。ここで、位相変調マスク20の基材71は、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差が2π/3となるよう構成されている。ここでλは、光の波長を表している。
【0033】
同様に、図3において、基材71のうち第2位相変調領域22aを構成する部分の厚みと、基材71のうち第3位相変調領域23aを構成する部分の厚みとの差がΔhで表されている。この場合、空気の屈折率を1とすると、第2位相変調領域22aにおける第2の位相変調量θと、第3位相変調領域23aにおける第3の位相変調量θとの差はΔh×(n−1)×2π/λになる。ここで、位相変調マスク20の基材71は、第2の位相変調量θと第3の位相変調量θとの差が2π/3となるよう構成されている。
【0034】
〔光遮蔽領域〕
また図3に示すように、光遮蔽領域25は、基材71の表面に遮蔽層72を設けることにより構成されている。遮蔽層72は、光の透過率をほぼゼロとすることができる材料から構成されており、例えば、クロム、アルミニウム、シリコン酸化物または誘電体多層膜などの遮光材料から構成されている。
【0035】
〔配置パターン〕
次に、各位相変調群21,22,23における配置パターンについて説明する。図2に示すように、第1位相変調群21の各第1位相変調領域21aは、所定の周期的な配置パターンで配置されている。具体的には、各第1位相変調領域21aは、各第1位相変調領域21aが仮想的な三角格子(図示せず)の頂点を占めるよう配置されている。同様に、各第2位相変調領域22aは、各第2位相変調領域22aが仮想的な三角格子の頂点を占めるよう配置されており、各第3位相変調領域23aは、各第3位相変調領域23aが仮想的な三角格子の頂点を占めるよう配置されている。
【0036】
また、複数の第1位相変調領域21aの配置パターンと、複数の第2位相変調領域22aの配置パターンと、複数の第3位相変調領域23aの配置パターンとは全て同一となっている。ここで「配置パターンは同一」という文言の意味について、図4を参照して説明する。図4は、図2から位相変調領域21a,22a,23aのみを抽出して示す平面図である。
【0037】
本実施の形態において、複数の第1位相変調領域21aの配置パターンと複数の第2位相変調領域22aの配置パターンとが同一であるとは、各第1位相変調領域21aを所定のベクトルtに沿って平行移動させた場合、各第1位相変調領域21aの重心と各第2位相変調領域22aの重心とが一致することを意味している。また、複数の第1位相変調領域21aの配置パターンと複数の第3位相変調領域23aの配置パターンとが同一であるとは、各第1位相変調領域21aを所定のベクトルtに沿って平行移動させた場合、各第1位相変調領域21aの重心と各第3位相変調領域23aの重心とが一致することを意味している。すなわち「配置パターンは同一」とは、一の位相変調群の各位相変調領域の重心を、当該位相変調群を回転させたり拡大または縮小させたりすることなく、当該位相変調群を所定のベクトルに沿って平行移動させることのみによって、その他の全ての位相変調群の各位相変調領域の重心に一致させることができることを意味している。
【0038】
〔各位相変調領域の重心の位置〕
次に、各位相変調領域21a,22a,23aの重心の位置について説明する。図2に示すように、隙間無く配置された複数の正6角形領域41によって位相変調マスク20を仮想的に区画した場合を考える。この場合、各位相変調群21,22,23は、各正6角形領域41において各位相変調領域21a,22a,23aのいずれか1つの重心27が正6角形領域41の中心42に位置するよう、配置されている。この場合、図2に示すように、各正6角形領域41は、各正6角形領域41の中心に位置する第1位相変調領域21a,第2位相変調領域22aまたは第3位相変調領域23aと、各位相変調領域21a,22a,23aを取り囲むよう位置する光遮蔽領域25と、によって占められることになる。
【0039】
〔周期構造の周期〕
次に、位相変調マスク20における周期的な構造の周期について説明する。図2に示すように、位相変調マスク20を正6角形領域41によって仮想的に区画した場合の、隣接する2つの正6角形領域41の中心間距離をPとする。この場合、中心間距離Pは、光の波長λと中心間距離Pとの間に以下の〔数5〕の関係が成立するよう定められている。
【数5】

このように中心間距離Pと光の波長λとの比率を定めることにより、後述するように、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または1次よりも高次の回折光が現れるようにすることができる。すなわち、位相変調マスク20から1次の回折光または1次よりも高次の回折光が生成されるようにすることができる。
【0040】
なお図2から明らかなように、近接する2つの位相変調領域間の中心間距離、例えば近接する2つの第1位相変調領域21a間の中心間距離は、隣接する2つの正6角形領域41の中心間距離Pの3^0.5倍、すなわち3^0.5Pとなっている。すなわち、近接する2つの第1位相変調領域21a間の中心間距離と、隣接する2つの正6角形領域41の中心間距離Pとの間には比例関係が成立している。従って、隣接する2つの正6角形領域41の中心間距離Pと光の波長λとの比率を所定範囲内に定めることは、近接する2つの第1位相変調領域21a間の中心間距離と光の波長λとの比率を所定範囲内に定めることと同義である。
【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。はじめに、本実施の形態において採用される原理について説明する。
【0042】
タルボット効果
本実施の形態においては、タルボット効果に着目することにより、被露光物14を所望の一定のパターンで精度良く露光することが実現される。ここで「タルボット効果」とは、周期的な構造を有する位相変調マスク20に光を照射したとき、位相変調マスク20の出射側に、光の伝搬方向において光強度が周期的に変化するパターンが発生するという現象である。
【0043】
本件発明者が鋭意研究を重ねたところ、後述する実施例における評価結果で支持されているように、被露光物14上に形成される干渉パターンに0次の回折光が含まれないようにすることにより、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができた。なお「干渉パターンの周期性」とは、光の伝搬方向に沿って被露光物14を移動させるときに、被露光物14に形成される干渉パターンが位相変調マスク20からの距離に依存して周期的に変動するという性質を意味している。従って、「干渉パターンの周期性」は、光の伝搬方向における光強度分布の周期性と同義である。
【0044】
ここで、干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって位相変調マスク20と被露光物14との間の距離が変化するよう、被露光物14を保持する保持具17を移動させ、これによって被露光物14に対する露光が実現される場合を考える。この場合、被露光物14に形成される露光パターンは、被露光物14が通過した各位置における光強度分布を積算することにより得られる強度分布に対応することになる。以下において、被露光物14が通過した各位置における光強度分布を積算することにより得られる強度分布を「積算強度分布」と称する。
【0045】
本実施の形態によれば、上述のように、被露光物14上に形成される干渉パターンに0次の回折光の成分が含まれないようにすることにより、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。このため、干渉パターンの変動周期のs倍、例えば1倍に対応する距離にわたって保持具17を移動させた場合、被露光物14上に照射される光の積算強度分布は、被露光物14の移動開始位置や被露光物14の表面の凹凸状況に依らず常に一定になる。従って、被露光物14の移動開始位置や被露光物14の表面の凹凸状況に依らず、所望の一定の露光パターンで被露光物14のレジスト層15を露光することができる。
【0046】
干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐためには、以下の2つの条件が成立していることが必要となる。第1の条件は、位相変調マスクからの回折光のうち、0次光の強度がゼロとなっていることである。第2の条件は、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または1次よりも高次の回折光が現れることである。以下、2つの条件について説明する。
【0047】
(第1の条件)
はじめに、第1の条件について説明する。位相変調マスクにおける周期的な構造が、所定の単位領域を繰り返し配置することにより得られていると仮定する。この場合、第1の条件は、位相変調マスクの単位領域内において複素振幅透過率の平均がゼロとなっていることを意味している。
【0048】
ここで、位相変調マスクが、所定の位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群を有し、第k(k=1〜nの整数)の位相変調群は各々、変調パターンに対応する所定の周期的な配置パターンで配置された複数の第kの位相変調領域を含み、各位相変調群における複数の位相変調領域の配置パターンは全て同一となっている場合を考える。この場合、位相変調マスクにおける周期的な構造を構成する単位領域は、第1、…、第nの位相変調領域をそれぞれ1つずつ含むことになる。従って、第kの位相変調領域の位相変調量をθとし、第kの位相変調領域の面積をSとするとき、第1の条件が成立することは、以下の〔数6〕が満たされることを意味している。
【数6】

【0049】
(第2の条件)
次に、第2の条件について説明する。簡単のため、まず一次元周期構造を例にとって考える。この場合、d次(dは整数)の回折光の回折角度φは以下の〔数7〕で表される。
【数7】

〔数7〕において、λは光の波長を表しており、Pは一次元周期構造のピッチを表している。
【0050】
得られる回折光は、波長λとピッチPとの関係に応じて、図5(a)(b)(c)にそれぞれ示されるような3つの場合に分類される。このうち図5(a)は、P/λ<1の関係が成立する場合に得られる回折光を示しており、図5(b)は、1≦P/λ<2の関係が成立する場合に得られる回折光を示しており、図5(c)は、2≦P/λの関係が成立する場合に得られる回折光を示している。すなわち、図5(a)は、〔数7〕の解としてd=0のみが得られる場合を示しており、図5(b)は、〔数7〕の解としてd=0,±1が得られる場合を示しており、図5(c)は、〔数7〕の解としてd=0,±1に加えてd=2,3,…も得られる場合を示している。
【0051】
上述のように、第2の条件は、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または1次よりも高次の回折光が現れることである。ここで図5(a)に示す態様においては、0次の回折光のみが含まれている。一方、図5(b)に示す態様においては、0次の回折光に加えて、1次の回折光が含まれている。また図5(c)に示す態様においては、0次および1次の回折光に加えて、2次の回折光も含まれている。すなわち、図5(b)および図5(c)に示す態様においては、第2の条件が満たされている。このことから、光の波長λと周期構造のピッチPとを適切な範囲内に設定することにより、第2の条件を満たすことができるということがわかる。このことは、後述するように、二次元周期構造を有する位相変調マスク、すなわち本実施の形態による位相変調マスク20が用いられる場合にもあてはまる。
【0052】
本実施の形態による位相変調マスクの作用
次に、本実施の形態による位相変調マスク20において、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐための上述の第1および第2の条件が成立しているかどうかについて考察する。
【0053】
(第1の条件)
上述のように、各位相変調群21,22,23における位相変調領域21a,22a,23aの配置パターンは全て同一となっている。この場合、本実施の形態による位相変調マスク20における周期的な構造を構成する単位領域は、第1位相変調領域21a,第2位相変調領域22aおよび第3位相変調領域23aを1つずつ含むことになる。また上述のように、各位相変調領域21a,22a,23aの面積は全て同一となっている。この場合、第1の条件における上述の〔数6〕は、以下の〔数8〕に置き換えられる。
【数8】

【0054】
また上述のように、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差は2π/3となっており、さらに、第2の位相変調量θと第3の位相変調量θとの差は2π/3となっている。従って、本実施の形態による位相変調マスク20においては、上述の〔数8〕が満たされている。すなわち、上述の第1の条件が成立している。
【0055】
(第2の条件)
次に、第2の条件について、図6(a)(b)(c)を参照して考察する。図6(a)(b)(c)は、位相変調マスク20が生成し得る回折光を示す図であり、位相変調マスク20の出射面20bにおける光の複素振幅分布をフーリエ変換することにより得られる図である。このうち図6(a)は、隣接する2つの正6角形領域41の中心間距離Pと光の波長λの間にP/λ<2/3の関係が成立する場合に得られる回折光を示している。また図6(b)は、2/3≦P/λ<4/3の関係が成立する場合に得られる回折光を示しており、図6(c)は、4/3≦P/λの関係が成立する場合に得られる回折光を示している。図6(a)(b)(c)において、白丸は、回折光がゼロとなる位置を示しており、黒丸は、回折光がゼロとならない位置を示している。
【0056】
本実施の形態においては、図6(a)(b)(c)において黒丸で示される回折光のうち、中心に最も近い位置にある回折光を1次の回折光と定義し、1次の回折光よりも中心から遠い位置にある回折光を高次の回折光と定義する。
【0057】
図6(a)(b)(c)において、符号85で表されている円は、半径が1の円となっている。従って、図6(a)(b)(c)の各々において、実際に得られる回折光、すなわち被露光物14における干渉パターンを生成する回折光は、円85の内側に位置する回折光となっている。
【0058】
図6(a)に示す例においては、円85の内側に黒丸が存在していない。従って、P/λ<2/3の関係が成立する場合、実際に得られる回折光は無い。一方、図6(b)または図6(c)に示す例においては、円85の内側に、1次の回折光または1次よりも高次の回折光を示す黒丸が存在している。従って、2/3≦P/λ<4/3または4/3≦P/λの関係が成立する場合、すなわち2/3≦P/λの関係が成立する場合、上述の第2の条件が成立している。
【0059】
上述のように、本実施の形態による位相変調マスク20においては、上述の第1の条件および第2の条件が満たされている。このため本実施の形態によれば、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0060】
ところで、波数ベクトルのビーム方向の成分が等しい平面波同士の干渉によるビームの光強度分布はビームの伝搬方向において変化しないという原理、いわゆる非回折ビームの原理が知られている。この非回折ビームの原理によれば、0次光以外の回折光において、各々の方向余弦が等しくなっている場合、伝搬方向において光強度分布が変化しない光が得られる。なお、「非回折ビームの原理」については、先行技術文献、例えば 「シミュレーションで見る光学現象(株式会社新技術コミュニケーションズ発行)」に開示されており、ここでは詳細な説明は省略する。なお以下の記述において、伝搬方向において光強度分布が変化しない光を、「非回折ビーム」と称する。
【0061】
ここで図6(b)に示す例について考える。図6(b)に示す例においては、円85の内側に、1次の回折光を示す黒丸のみが存在しており、また、中心から各回折光までの距離が一定となっている。このため、図6(b)に示す例のように中心間距離Pと光の波長λとの比率を定める場合、非回折ビームが得られると考えられる。この場合、位相変調マスク20から出射される光の強度分布が、位相変調マスク20からの距離に依らず一定となっている。
【0062】
一方、本実施の形態による露光装置10は、干渉パターンの変動周期のs倍、例えば1倍に対応する距離にわたって保持具17を移動させることにより、被露光物14上に照射される光の積算強度分布を常に一定にすることを特徴としている。従って、本実施の形態により得られる利点は、光の強度分布が位相変調マスク20からの距離に依らず一定となっている場合よりも、光の強度分布が周期的に変動している場合により顕著になる。すなわち、本実施の形態により得られる利点は、1次の回折光だけでなく高次の回折光が存在している場合、すなわち図6(c)に示す4/3≦P/λの関係が成立している場合により高められると考えられる。
【0063】
露光方法
次に、被露光物14に対する露光を実施する方法について説明する。
【0064】
(変動周期の特定)
まず、本実施の形態による露光装置10の照明光学系11および位相変調マスク20を用いた場合に得られる干渉パターンの変動周期を特定する。干渉パターンの変動周期を特定するための具体的な方法が特に限られることはなく、様々な方法が用いられ得る。
【0065】
干渉パターンの変動周期を特定する方法の1つとして、変動周期を計算により求める方法が挙げられる。ここで、xyz空間における光の複素振幅分布をα(x,y,z)とする。また、z=0におけるxy面内の光の複素振幅分布α(x,y,z=0)のフーリエ変換、すなわち初期分布のフーリエ変換をA(σ,σ)とする。この場合、初期分布のフーリエ変換A(σ,σ)に位相係数を掛け、その後、得られた関数の逆フーリエ変換を計算することにより、光の伝搬方向における強度分布を算出することができる。算出される強度分布の一例を図7に示す。図7においては、位相変調マスク20の出射面20bから放出された光が、光の伝搬方向に沿ってTの周期で変動する様子が示されている。このようにフーリエ変換を利用した計算を実施することにより、干渉パターンの変動周期Tを特定することができる。
【0066】
干渉パターンの変動周期を特定するその他の方法として、本実施の形態による露光装置10の照明光学系11および位相変調マスク20を用いることにより得られる光を実際に測定することが挙げられる。例えば、まず光強度を測定することができるセンサ(図示せず)を準備し、次に、このセンサを光の伝搬方向に移動させながら各位置における光強度を測定することにより、図7に示すような光の伝搬方向における強度分布図を得ることができる。このように実測に基づいて干渉パターンの変動周期Tを特定することも可能である。
【0067】
(露光)
次に、本実施の形態による露光装置10を用いて被露光物14に対する露光を実施する手順について説明する。はじめに、照明光学系10および位相変調マスク20を準備する。次に、位相変調マスク20の出射面20b側に、保持具17によって保持された被露光物14を準備する。その後、照明光学系11からの光の出射を開始し、同時に、干渉パターンの変動周期Tのs倍(s≧1の整数)に対応する距離、例えば干渉パターンの変動周期Tの1倍の距離にわたって位相変調マスク20と被露光物14との間の距離が変化するよう、保持具17を移動させる。その後、照明光学系11からの光の出射を停止する。この際、照明光学系11および保持具17の制御は制御手段18によって実施される。この結果、変動周期Tの1倍の距離にわたって光強度分布を積算することにより得られる積算強度分布に対応する露光パターンが、被露光物14上に形成される。
【0068】
ここで本実施の形態によれば、上述のように、被露光物14上に形成される干渉パターンに0次の回折光の成分が含まれないようにすることにより、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。このため、保持具17の絶対位置の調整を行うことなく、保持具17の移動距離の調整を行うことのみによって、被露光物14上に照射される光の積算強度分布を常に一定にすることができる。このため、精密な位置合わせ機能が保持具17に求められることがなく、これによって、露光装置10の構成を簡易なものにすることができる。また被露光物14に焦点深度以上の凹凸が形成されている場合であっても、所望の一定の露光パターンで被露光物14のレジスト層15を露光することが可能となる。
【0069】
第1の実施の形態の変形例
なお本実施の形態において、正6角形領域41が、正6角形領域41の中心に位置する位相変調領域21a,22a,23aのいずれか1つと、各位相変調領域21a,22a,23aを取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域25と、によって占められている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図8および図9に示すように、各正6角形領域41は、位相変調領域21a,22a,23aのいずれか1つによって占められていてもよい。図8および図9に示す例においても、位相変調マスク20は、上述の第1の条件および第2の条件を満たしている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0070】
第2の実施の形態
次に図10乃至図12を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10乃至図12に示す第2の実施の形態は、各位相変調群の位相変調領域が、仮想的な四角格子の頂点を占めるよう配置されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。図10乃至図12に示す第2の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
図10は、位相変調マスク20を示す平面図であり、図11は、図10の位相変調マスクを露光装置XI−XI方向から見た縦断面図である。本実施の形態においては、上述のnが2となっている例について説明する。具体的には、図10に示すように、位相変調マスク20は、光を第1の位相変調量θで変調する第1位相変調群21と、光を第2の位相変調量θで変調する第2位相変調群22と、を有している。このうち第1位相変調群21は、光を第1の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第1位相変調領域21aを含んでいる。同様に、第2位相変調群22は、光を第2の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第2位相変調領域22aを含んでいる。また図10に示すように、位相変調マスク20のうち第1位相変調領域21aおよび第2位相変調領域22a以外の領域は、光を遮蔽する光遮蔽領域25によって占められている。
【0072】
図10から明らかなように、第1位相変調領域21aおよび第2位相変調領域22aは、同一の直径Rを有する円形の領域となっている。すなわち、第1位相変調領域21aおよび第2位相変調領域22aの形状および面積は全て同一となっている。
【0073】
〔位相変調量〕
次に、各位相変調領域の位相変調量について説明する。本実施の形態においても、各位相変調群の位相変調領域の位相変調量は、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されている。すなわち、第1位相変調領域21aの第1の位相変調量θと第2位相変調領域22aの第2の位相変調量θとの差がπとなっている。
【0074】
図11に示すように、基材71のうち第1位相変調領域21aを構成する部分の厚みと、基材71のうち第2位相変調領域22aを構成する部分の厚みとの差をΔhとする。この場合、空気の屈折率を1とすると、第1位相変調領域21aにおける第1の位相変調量θと、第2位相変調領域22aにおける第2の位相変調量θとの差はΔh×(n−1)×2π/λになる。ここで、位相変調マスク20の基材71は、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差がπとなるよう構成されている。
【0075】
〔配置パターン〕
次に、各位相変調群21,22における配置パターンについて説明する。図10に示すように、各位相変調群21,22は、各位相変調領域21a,22aが仮想的な四角格子(図示せず)の頂点を占めるよう配置されている。また、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、複数の第1位相変調領域21aの配置パターンと、複数の第2位相変調領域22aの配置パターンとは同一となっている。
【0076】
〔各位相変調領域の重心の位置〕
次に、各位相変調領域21a,22aの重心の位置について説明する。図10に示すように、隙間無く配置された複数の正4角形領域43によって位相変調マスク20を仮想的に区画した場合を考える。この場合、各位相変調群21,22は、各正4角形領域43において各位相変調領域21a,22aのいずれか1つの重心27が正4角形領域43の中心44に位置するよう、配置されている。この場合、図10に示すように、各正4角形領域43は、各正4角形領域43の中心に位置する第1位相変調領域21aまたは第2位相変調領域22aと、各位相変調領域21a,22aを取り囲むよう位置する光遮蔽領域25と、によって占められることになる。
【0077】
〔周期構造の周期〕
次に、位相変調マスク20における周期的な構造の周期について説明する。図10に示すように、位相変調マスク20を正4角形領域43によって仮想的に区画した場合の、隣接する2つの正4角形領域43の中心間距離をPとする。この場合、中心間距離Pは、光の波長λと中心間距離Pとの間に以下の〔数9〕の関係が成立するよう定められている。
【数9】

このように中心間距離Pと光の波長λとの比率を定めることにより、後述するように、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または1次よりも高次の回折光が現れるようにすることができる。すなわち、位相変調マスク20から1次の回折光または1次よりも高次の回折光が生成されるようにすることができる。
【0078】
次に、本実施の形態による位相変調マスク20において、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐための上述の第1および第2の条件が成立しているかどうかについて考察する。
【0079】
(第1の条件)
上述のように、各位相変調群21,22における位相変調領域21a,22aの配置パターンは全て同一となっている。この場合、本実施の形態による位相変調マスク20における周期的な構造を構成する単位領域は、第1位相変調領域21aおよび第2位相変調領域22aを1つずつ含むことになる。また上述のように、各位相変調領域21a,22aの面積は全て同一となっている。また上述のように、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差はπとなっている。従って、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、本実施の形態による位相変調マスク20において、上述の〔数8〕が満たされている。すなわち、上述の第1の条件が成立している。
【0080】
(第2の条件)
次に、第2の条件について、図12(a)(b)(c)を参照して考察する。図12(a)(b)(c)は、位相変調マスク20が生成し得る回折光を示す図であり、位相変調マスク20の出射面20bにおける光の複素振幅分布をフーリエ変換することにより得られる図である。このうち図12(a)は、隣接する2つの正4角形領域41の中心間距離Pと光の波長λの間にP/λ<2^0.5/2の関係が成立する場合に得られる回折光を示している。また図12(b)は、2^0.5/2≦P/λ<10^0.5/2の関係が成立する場合に得られる回折光を示しており、図12(c)は、10^0.5/2≦P/λの関係が成立する場合に得られる回折光を示している。
【0081】
図12(a)に示す例においては、円85の内側に黒丸が存在していない。従って、P/λ<2^0.5/2の関係が成立する場合、実際に得られる回折光は無い。一方、図12(b)または図12(c)に示す例においては、円85の内側に、1次の回折光または1次よりも高次の回折光を示す黒丸が存在している。従って、2^0.5/2≦P/λ<10^0.5/2または10^0.5/2≦P/λの関係が成立する場合、すなわち2^0.5/2≦P/λの関係が成立する場合、上述の第2の条件が成立している。
【0082】
上述のように、本実施の形態による位相変調マスク20においては、上述の第1の条件および第2の条件が満たされている。このため本実施の形態によれば、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0083】
第2の実施の形態の第1の変形例
なお本実施の形態において、正4角形領域43が、正4角形領域43の中心に位置する位相変調領域21a,22aのいずれか1つと、各位相変調領域21a,22aを取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域25と、によって占められている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図13および図14に示すように、各正4角形領域43は、位相変調領域21a,22aのいずれか1つによって占められていてもよい。図13および図14に示す例においても、位相変調マスク20は、上述の第1の条件および第2の条件を満たしている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0084】
第2の実施の形態の第2の変形例
また本実施の形態および第1の変形例において、位相変調マスク20が、光を第1の位相変調量θで変調する第1位相変調群21と、光を第2の位相変調量θで変調する第2位相変調群22と、を有する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図15に示すように、位相変調マスク20が、光を第1の位相変調量θで変調する第1位相変調群21と、光を第2の位相変調量θで変調する第2位相変調群22と、光を第3の位相変調量θで変調する第3位相変調群23と、光を第4の位相変調量θで変調する第4位相変調群24と、を有していてもよい。すなわち、上記のnが4となっていてもよい。
【0085】
図15に示すように、第1位相変調群21は、光を第1の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第1位相変調領域21aを含んでいる。また第2位相変調群22は、光を第2の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第2位相変調領域22aを含んでいる。また第3位相変調群23は、光を第3の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第3位相変調領域23aを含んでいる。また第4位相変調群24は、光を第4の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第4位相変調領域24aを含んでいる。また図15に示すように、位相変調マスク20のうち位相変調領域21a,22a,23a,24a以外の領域は、光を遮蔽する光遮蔽領域25によって占められている。
【0086】
図15から明らかなように、位相変調領域21a,22a,23a,24aはいずれも、同一の直径Rを有する円形の領域となっている。すなわち、各位相変調領域21a,22a,23a,24aの形状および面積は全て同一となっている。
【0087】
〔位相変調量〕
本変形例においても、各位相変調群の位相変調領域の位相変調量は、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されている。すなわち、第1位相変調領域21aの第1の位相変調量θと第2位相変調領域22aの第2の位相変調量θとの差がπ/2となり、第2位相変調領域22aの第2の位相変調量θと第3位相変調領域23aの第3の位相変調量θとの差がπ/2となり、第3位相変調領域23aの第3の位相変調量θと第4位相変調領域24aの第4の位相変調量θとの差がπ/2となっている。
【0088】
〔配置パターン〕
次に、各位相変調群21,22,23,24における配置パターンについて説明する。図15に示すように、各位相変調群21,22,23,24は、各位相変調領域21a,22a,23a,24aが仮想的な四角格子(図示せず)の頂点を占めるよう配置されている。また、上述の各実施の形態の場合と同様に、複数の第1位相変調領域21aの配置パターンと、複数の第2位相変調領域22aの配置パターンと、複数の第3位相変調領域23aの配置パターンと、複数の第4位相変調領域24aの配置パターンとは全て同一となっている。
【0089】
〔各位相変調領域の重心の位置〕
また図15に示すように、各位相変調群21,22,23,24は、各正4角形領域43において各位相変調領域21a,22a,23a,24aのいずれか1つの重心27が正4角形領域43の中心44に位置するよう、配置されている。
【0090】
本変形によれば、上述のように位相変調マスク20を構成することにより、位相変調マスク20における周期的な構造を構成する単位領域は、第1位相変調領域21a,第2位相変調領域22a,第3位相変調領域23aおよび第4位相変調領域24aを1つずつ含むことになる。また上述のように、各位相変調領域21a,22a,23a,24aの面積は全て同一となっている。また上述のように、第u(u=1〜3の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差がπ/2となっている。このため、上述の各実施の形態の場合と同様に、本変形例による位相変調マスク20において、上述の〔数8〕が満たされている。すなわち、上述の第1の条件が成立している。
【0091】
また本変形例において、隣接する2つの正4角形領域43の中心間距離Pと光の波長λとの比率は、上述の第2の条件が満たされるよう定められている。このため、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または高次の回折光が含まれている。このことにより、周期性の乱れの無い干渉パターンを得ることができる。なお、第2の条件を満たすための上記比率の具体的な範囲は、第1の実施の形態における記述から明らかなように、位相変調マスク20の出射面20bにおける光の複素振幅分布をフーリエ変換することにより算出され得る。
【0092】
第2の実施の形態の第3の変形例
なお本実施の形態の第2の変形例において、正4角形領域43が、正4角形領域43の中心に位置する位相変調領域21a,22a,23a,24aのいずれか1つと、各位相変調領域21a,22a,23a,24aを取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域25と、によって占められている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図16に示すように、各正4角形領域43は、位相変調領域21a,22a,23a,24aのいずれか1つによって占められていてもよい。図16に示す例においても、位相変調マスク20は、上述の第1の条件および第2の条件を満たしている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0093】
第3の実施の形態
次に図17乃至図19を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図17乃至図19に示す第3の実施の形態は、位相変調マスクにおける周期的な構造を構成する単位領域が、位相変調マスクを仮想的に区画する複数の正m角形領域(m=4または6)であって、第1、…、第nの位相変調領域をそれぞれ1つずつ含む正m角形領域に一致している点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6(a)(b)(c)に示す第1の実施の形態または図10乃至図12(a)(b)(c)に示す第2の実施の形態と略同一である。図17乃至図19に示す第3の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態または図10乃至図12(a)(b)(c)に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
図17は、位相変調マスク20を示す平面図であり、図18は、図17の位相変調マスクを露光装置XVIII−XVIII方向から見た縦断面図である。本実施の形態においては、上述のnが2となっている例について説明する。具体的には、図17に示すように、位相変調マスク20は、光を第1の位相変調量θで変調する第1位相変調群31と、光を第2の位相変調量θで変調する第2位相変調群32と、を有している。このうち第1位相変調群31は、光を第1の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第1位相変調領域31aを含んでいる。同様に、第2位相変調群32は、光を第2の位相変調量θで変調するよう構成された複数の第2位相変調領域32aを含んでいる。
【0095】
〔位相変調量〕
本実施の形態においても、各位相変調群の位相変調領域の位相変調量は、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されている。すなわち、第1位相変調領域31aの第1の位相変調量θと第2位相変調領域32aの第2の位相変調量θとの差がπとなっている。
【0096】
図18に示すように、基材71のうち第1位相変調領域31aを構成する部分の厚みと、基材71のうち第2位相変調領域32aを構成する部分の厚みとの差をΔhとする。この場合、空気の屈折率を1とすると、第1位相変調領域31aにおける第1の位相変調量θと、第2位相変調領域32aにおける第2の位相変調量θとの差はΔh×(n−1)×2π/λになる。ここで、位相変調マスク20の基材71は、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差がπとなるよう構成されている。
【0097】
〔配置パターン〕
次に、各位相変調群における配置パターンについて説明する。本実施の形態において、各位相変調群は、隙間無く配置された複数の正m角形領域によって位相変調マスク20を仮想的に区画した場合、各正m角形領域に、第1、…、第nの位相変調領域がそれぞれ1つずつ含まれるよう構成されている。すなわち、図17に示すように、各位相変調群31,32は、隙間無く配置された複数の正4角形領域43によって位相変調マスク20を仮想的に区画した場合、各正4角形領域43に第1位相変調領域31aおよび第2位相変調領域32aがそれぞれ1つずつ含まれるよう構成されている。
【0098】
〔回転対称性〕
また、各正m角形領域において、各位相変調領域は、正m角形領域に対応する回転対称性を有するよう配置されている。ここで「正m角形領域に対応する回転対称性」とは、各正m角形領域において、各位相変調領域の形状が互いにm回対称となっていることを意味している。具体的には、各正m角形領域において正m角形領域の中心を軸として各位相変調領域を2π/mだけ回転させる前後において、正m角形領域内における境界線が一致していることを意味している。ここで「正m角形領域内における境界線」とは、正m角形領域において、一の位相変調領域とその他の位相変調領域との間の境界を示す線である。
【0099】
例えば図17に示す例においては、正4角形領域43は、正4角形領域43の中心44に位置する円形の第2位相変調領域32aと、第2位相変調領域32aを取り囲むよう位置する第1位相変調領域31aとによって占められている。また各4角形領域43において、第1位相変調領域31aの重心37および第2位相変調領域32aの重心38は、正4角形領域43の中心44に位置している。このため図17に示す例において、正4角形領域43の中心44を軸として各位相変調領域31a,32aをπ/2だけ回転させる前後において、正4角形領域43内における境界線が一致している。すなわち各正4角形領域43において、各位相変調領域31a,32aは4回対称となっている。
【0100】
また各位相変調領域31a,32aは、各正4角形領域43における第1位相変調領域31aの面積と第2位相変調領域32aの面積とが同一となるよう構成されている。
【0101】
〔周期構造の周期〕
次に、本実施の位相変調マスク20における周期的な構造の周期について説明する。本実施の形態において、隣接する2つの正4角形領域43の中心間距離Pは、光の波長λと中心間距離Pとの間に以下の〔数10〕の関係が成立するよう定められている。
【数10】

このように中心間距離Pと光の波長λとの比率を定めることにより、後述するように、被露光物14上に形成される干渉パターンに1次の回折光または1次よりも高次の回折光が現れるようにすることができる。すなわち、位相変調マスク20から1次の回折光または1次よりも高次の回折光が生成されるようにすることができる。
【0102】
次に、本実施の形態による位相変調マスク20において、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐための上述の第1および第2の条件が成立しているかどうかについて考察する。
【0103】
(第1の条件)
上述のように、本実施の形態による位相変調マスク20における周期的な構造を構成する単位領域、すなわち正4角形領域43は、第1位相変調領域31aおよび第2位相変調領域32aを1つずつ含んでいる。また上述のように、各位相変調領域31a,32aの面積は全て同一となっている。また上述のように、第1の位相変調量θと第2の位相変調量θとの差はπとなっている。従って、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、本実施の形態による位相変調マスク20において、上述の〔数8〕が満たされている。すなわち、上述の第1の条件が成立している。
【0104】
(第2の条件)
次に、第2の条件について、図19(a)(b)(c)を参照して考察する。図19(a)(b)(c)は、位相変調マスク20が生成し得る回折光を示す図であり、位相変調マスク20の出射面20bにおける光の複素振幅分布をフーリエ変換することにより得られる図である。このうち図19(a)は、隣接する2つの正4角形領域43の中心間距離Pと光の波長λの間にP/λ<1の関係が成立する場合に得られる回折光を示している。また図19(b)は、1≦P/λ<2^0.5の関係が成立する場合に得られる回折光を示しており、図19(c)は、2^0.5≦P/λの関係が成立する場合に得られる回折光を示している。
【0105】
図19(a)に示す例においては、円85の内側に黒丸が存在していない。従って、P/λ<1の関係が成立する場合、実際に得られる回折光は無い。一方、図19(b)または図19(c)に示す例においては、円85の内側に、1次の回折光または1次よりも高次の回折光を示す黒丸が存在している。従って、1≦P/λ<2^0.5または2^0.5≦P/λの関係が成立する場合、すなわち1≦P/λの関係が成立する場合、上述の第2の条件が成立している。
【0106】
上述のように、本実施の形態による位相変調マスク20においては、上述の第1の条件および第2の条件が満たされている。このため本実施の形態によれば、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0107】
第3の実施の形態の第1の変形例
なお本実施の形態において、正4角形領域43の中心44に位置する第2位相変調領域32aが円形の形状を有する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図20に示すように、各正4角形領域43の中心44に位置する第2位相変調領域32aが正4角形の形状を有していてもよい。ここで、各位相変調領域31a,32aは、各正4角形領域43における第1位相変調領域31aの面積と第2位相変調領域32aの面積とが同一となるよう構成されている。このため、図20に示す例においても、位相変調マスク20は、上述の第1の条件および第2の条件を満たしている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。
【0108】
第3の実施の形態の第2の変形例
また本実施の形態において、各位相変調領域の重心が正m角形領域の中心に位置する例を示した。しかしながら、各正m角形領域において各位相変調領域が正m角形領域に対応する回転対称性を有する限りにおいて、各位相変調領域の具体的な構造は限定されない。例えば位相変調マスク20を正4角形領域43によって仮想的に区画する場合、図21(a)に示すように、各位相変調領域が、正4角形領域43を4等分するよう設けられた第1〜第4の位相変調領域31a,32a,33a,34aからなっていてもよい。また、位相変調マスク20を正6角形領域41によって仮想的に区画する場合、図21(b)に示すように、各位相変調領域が、正6角形領域41を6等分するよう設けられた第1〜第6の位相変調領域31a,32a,33a,34a,35a,36aからなっていてもよい。図21(a)(b)に示される例の各々において、位相変調領域の位相変調量は、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されている。ここでnは、図21(a)に示す例では4となっており、図21(b)に示す例では6となっている。また各位相変調領域の面積は全て同一になっている。このため、本変形例による位相変調マスク20において、上述の〔数8〕が満たされている。すなわち、上述の第1の条件が成立している。
【0109】
また本変形例において、隣接する2つの正m角形領域の中心間距離Pと光の波長λとの比率は、上述の第2の条件が満たされるよう定められている。このため、干渉パターンの周期性に乱れが生じることを防ぐことができる。なお、第2の条件を満たすための上記比率の具体的な範囲は、第1の実施の形態における説明から明らかなように、位相変調マスク20の出射面20bにおける光の複素振幅分布をフーリエ変換することにより算出され得る。
【0110】
第3の実施の形態の第3の変形例
なお本実施の形態において、位相変調領域の位相変調量は、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差が2π/nとなるよう設定されており、また、各位相変調領域の面積は全て同一になっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の〔数6〕が満たされる限りにおいて、各位相変調領域の具体的な構成は限定されない。例えば図22に示すように、正4角形領域43を構成する第1位相変調領域31a、第2位相変調領域32aおよび第3位相変調領域33aの面積が全て同一となっていなくてもよい。この場合、各位相変調領域31a,32a,33aの面積および位相変調量は、上述の〔数6〕が満たされるよう適宜設定される。
【0111】
なお、上記各実施の形態において、移動自在な保持具17によって被露光物14が保持されており、そして、保持具17を移動させることにより、位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させる例を示した。しかしながら、位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させることができる限りにおいて、露光装置10の具体的な構成が特に限られることはない。
例えば、図示はしないが、移動自在な保持具によって位相変調マスク20が保持されており、この保持具を移動させることにより、位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させてもよい。
若しくは、位相変調マスク20および被露光物14を静止させたままで、位相変調マスク20と被露光物14との間に所定の光学部品を介在させることにより、位相変調マスク20と被露光物14との間の距離を変化させてもよい。この光学部品は、位相変調マスク20から出射されて被露光物14に到達する光の行路長を任意に変化させることができるよう構成されている。この場合、「位相変調マスク20と被露光物14との間の距離」とは、「位相変調マスク20から出射されて被露光物14に到達する光の行路長」を意味している。
【実施例】
【0112】
上述の各実施の形態による位相変調マスク20を備えた露光装置10を用いて、被露光物14に対する露光を実施した例について説明する。
【0113】
図23は、後述する各実施例において用いられた位相変調マスク20および被露光物14を示す図である。なお後述する各実施例において、「鉛直方向における光強度分布」とは、図23に示す線D−Dに沿って光強度分布を見た場合を意味しており、「水平方向における光強度分布」とは、図23に示す線D−Dに沿って光強度分布を見た場合を意味している。
【0114】
(実施例1)
図20に示す上述の第3の実施の形態の第1の変形例による位相変調マスク20を作製した。正4角形からなる第2位相変調領域32aの一辺の長さLは353.6nmとした。また隣接する2つの正4角形領域43の中心間距離P、すなわち正4角形領域43の一辺の長さPは500nmとした。この場合、各正4角形領域43において、第1位相変調領域31aの面積と第2位相変調領域32aの面積とが同一になっており、このため、被露光物14上に形成される干渉パターンに0次の回折光は含まれない。また、照明光学系11のレーザ光源12としては、Nd:YAGレーザの第三高調波を放射することができる光源を用いた。この場合、光の波長λは355nmとなっていた。従って、P/λは1.54となっており、上述の〔数10〕が満たされていた。
【0115】
波長355nmの平行光を位相変調マスク20に照射した場合に得られる光強度分布を算出した。結果を図24(a)(b)(c)に示す。このうち図24(a)は、鉛直方向における光強度分布を示す図であり、図24(b)は、水平方向における光強度分布を示す図であり、図24(c)は、図24(a)(b)に示される光強度分布のスケールを示す図である。また図24(a)のうち、〔A〕で示される側の図は、図20に示す正4角形領域43のうちXXIVA−XXIVA方向から見た部分に対応する光強度分布であり、〔B〕で示される側の図は、図20に示す正4角形領域43のうちXXIVB−XXIVB方向から見た部分に対応する光強度分布である。また図24(b)のうち、〔C〕で示される側の図は、図24(a)の光強度分布をC−C方向から見た場合を示す光強度分布であり、〔D〕で示される側の図は、図24(a)の光強度分布をD−D方向から見た場合を示す光強度分布である。
【0116】
図24(a)に示すように、光の伝搬方向において光強度分布の周期性に乱れのない光を得ることができた。光強度の変動周期は850nmとなっていた。
【0117】
なお光強度分布は、初期分布のフーリエ変換A(σ,σ)に位相係数を掛け、その後、得られた関数の逆フーリエ変換を計算することにより得られる。なお本実施例においては、このような計算手順を実行することができる光学シミュレーションソフトが用いられている。例えば、PROLITH (KLA−Tencor社)が用いられ得る。
【0118】
被露光物14に位相変調マスク20からの光を照射した状態で、干渉パターンの変動周期850nmの10倍の距離、すなわち8.5μmにわたって位相変調マスク20と被露光物14との間の距離が変化するよう、保持具17を光の伝搬方向において移動させた。これによって得られる積算強度分布を利用して、被露光物14に対する露光を実施した。ここで、被露光物14のレジスト層15としては、ポジ型のレジスト層を用いた。次に、被露光物14のレジスト層15に現像処理を施した。これによって得られた露光パターンを図25に示す。
【0119】
図25に示すように、本実施例によれば、積算強度分布に対応するパターンで、被露光物14のレジスト層15に開口部15aを形成することができた。なお図25において点線で囲まれる範囲は、図20において1つの正4角形領域43により占められる範囲に対応している。
【0120】
(比較例1)
正4角形からなる第2位相変調領域32aの一辺の長さLを330nmとしたこと以外は、上述の実施例1の場合と同様にして、位相変調マスクを作製した。この場合、正4角形領域43における第1位相変調領域31aの面積と第2位相変調領域32aの面積とが同一になっておらず、このため、上述の〔数6〕が満たされていない。従って、本比較例においては、被露光物14上に形成される干渉パターンに0次の回折光が含まれることになる。
【0121】
波長355nmの平行光を位相変調マスクに照射した場合に得られる光強度分布を算出した。結果を図26(a)(b)(c)に示す。このうち図26(a)は、鉛直方向における光強度分布を示す図であり、図26(b)は、水平方向における光強度分布を示す図であり、図26(c)は、図26(a)(b)に示される光強度分布のスケールを示す図である。また図26(a)のうち、〔A〕で示される側の図は、実施例1の場合と同様に、正4角形領域43の端部分に対応する光強度分布であり、〔B〕で示される側の図は、正4角形領域43の中心部分に対応する光強度分布である。また図26(b)のうち、〔C〕で示される側の図は、図26(a)の光強度分布をC−C方向から見た場合を示す光強度分布であり、〔D〕で示される側の図は、図26(a)の光強度分布をD−D方向から見た場合を示す光強度分布である。
【0122】
図26(a)に示すように、光の伝搬方向において光強度分布の周期性の乱れが観察された。本比較例においては、被露光物14に形成される干渉パターンに0次の回折光が含まれていたため、周期性のこのような乱れが生じたと考えられる。
【符号の説明】
【0123】
10 露光装置
11 照明光学系
12 レーザ光源
13a 折り返しミラー
13b,13c ビームエキスパンダー
14 被露光物
15 レジスト層
15a 開口部
16 ガラス基板
17 保持具
18 制御手段
20 位相変調マスク
21 第1位相変調群
21a 第1位相変調領域
22 第2位相変調群
22a 第2位相変調領域
23 第3位相変調群
23a 第3位相変調領域
25 光遮蔽領域
27 位相変調領域の重心
31 第1位相変調群
31a 第1位相変調領域
32 第2位相変調群
32a 第2位相変調領域
33 第3位相変調群
33a 第3位相変調領域
34 第4位相変調群
34a 第4位相変調領域
35 第5位相変調群
35a 第5位相変調領域
36 第6位相変調群
36a 第6位相変調領域
37 第1位相変調領域の重心
38 第2位相変調領域の重心
41 正6角形領域
42 正6角形領域の中心
43 正4角形領域
44 正4角形領域の中心
71 基材
72 遮蔽層
81 等強度線
82 リング
85 半径1の円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、位相変調された光の回折光相互の干渉を利用して被露光物を所定の露光パターンで露光する露光装置において、
光を出射する照明光学系と、
前記照明光学系の出射側に設けられ、前記照明光学系からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調して出射する位相変調マスクと、
前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を制御する制御手段と、を備え、
前記位相変調マスクは、位相変調マスクにより位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって前記被露光物が露光されるよう構成されており、
前記制御手段は、前記位相変調マスクにより位相変調された光の回折光相互の干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を変化させることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記位相変調マスクは、所定の位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群を有し、
第k(u=1〜nの整数)の位相変調群は、前記変調パターンに対応する所定の周期的な配置パターンで配置された複数の第kの位相変調領域を含み、各位相変調群における複数の位相変調領域の配置パターンは全て同一となっており、
第kの位相変調領域の位相変調量をθとし、第kの位相変調領域の面積をSとするとき、以下の関係式
【数1】

が成立しており、
各位相変調群における近接する2つの位相変調領域の間の距離と光の波長との比率は、前記位相変調マスクから0次の回折光を除く回折光が生成されるよう定められていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記位相変調マスクにおいて、第u(u=1〜n−1の整数)の位相変調群の第uの位相変調領域の位相変調量と第u+1の位相変調群の第u+1の位相変調領域の位相変調量との差は2π/nとなっており、
第1、…、第nの位相変調領域の面積は全て同一となっており、
第1、…、第nの位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正m角形領域(m=4または6)によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正m角形領域において第1、…、第nの位相変調領域のいずれか1つの重心が正m角形領域の中心に位置するよう、配置されていることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記位相変調マスクにおいて、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1、第2および第3の位相変調群(前記n=3)となっており、
第1、第2および第3の位相変調領域の形状は全て同一となっており、
第1、第2および第3の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正6角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正6角形領域において第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つの重心が正6角形領域の中心に位置するよう、配置されていることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記位相変調マスクにおいて、隣接する2つの前記正6角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数2】

が成立していることを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記位相変調マスクにおいて、前記正6角形領域は、前記正6角形領域の中心に位置する第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つと、各位相変調領域を取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域と、によって占められていることを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記位相変調マスクにおいて、前記正6角形領域は、第1、第2または第3の位相変調領域のいずれか1つによって占められていることを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項8】
前記位相変調マスクにおいて、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1および第2の位相変調群(前記n=2)となっており、
第1および第2の位相変調領域の形状は全て同一となっており、
第1および第2の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正4角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、各正4角形領域において第1または第2の位相変調領域のいずれか1つの重心が正4角形領域の中心に位置するよう、配置されていることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項9】
前記位相変調マスクにおいて、隣接する2つの前記正4角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数3】

が成立していることを特徴とする請求項8に記載の露光装置。
【請求項10】
前記位相変調マスクにおいて、前記正4角形領域は、前記正4角形領域の中心に位置する第1または第2の位相変調領域のいずれか1つと、各位相変調領域を取り囲むよう位置するとともに光遮蔽層を有する光遮蔽領域と、によって占められていることを特徴とする請求項9に記載の露光装置。
【請求項11】
前記位相変調マスクにおいて、前記正4角形領域は、第1または第2の位相変調領域のいずれか1つによって占められていることを特徴とする請求項9に記載の露光装置。
【請求項12】
前記位相変調マスクにおいて、隙間無く配置された複数の正m角形領域(m=4または6)によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合、各正m角形領域に、第1、…、第nの位相変調領域がそれぞれ1つずつ含まれており、
各正m角形領域において、各位相変調領域は、正m角形領域に対応する回転対称性を有するよう配置されていることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項13】
前記位相変調マスクにおいて、互いに異なる位相変調量を有する第1、…、第n(n≧2の整数)の位相変調群は、互いに異なる位相変調量を有する第1および第2の位相変調群(前記n=2)となっており、
第1の位相変調群および第2の位相変調群は各々、隙間無く配置された複数の正4角形領域によって前記位相変調マスクを仮想的に区画した場合に、第1の位相変調領域の重心および第2の位相変調領域の重心がいずれも正4角形領域の中心に位置するよう、配置されており、
第1の位相変調群の第1の位相変調領域の位相変調量と第2の位相変調群の第2の位相変調領域の位相変調量との差はπとなっており、
第1の位相変調領域の面積と第2の位相変調領域の面積とは同一となっており、
隣接する2つの前記正4角形領域の中心間距離をPとし、光の波長をλとするとき、以下の関係式
【数4】

が成立していることを特徴とする請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
光を所定の周期的な変調パターンで位相変調し、位相変調された光の回折光相互の干渉を利用して被露光物を所定の露光パターンで露光する露光方法において、
光を出射する照明光学系を準備する工程と、
位相変調された光の回折光のうち0次の回折光を除く回折光によって前記被露光物が露光されるよう、位相変調マスクを用いて前記照明光学系からの光を所定の周期的な変調パターンで位相変調する位相変調工程と、
前記位相変調マスクにより位相変調された光の回折光相互の干渉パターンの変動周期のs倍(s≧1の整数)に対応する距離にわたって前記位相変調マスクと前記被露光物との間の距離を変化させる工程と、を備えたことを特徴とする露光方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかに記載の露光装置を用いて前記照明光学系からの光を位相変調することを特徴とする請求項14に記載の露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図24】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−16696(P2013−16696A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149339(P2011−149339)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】