説明

露光装置と、露光装置におけるコンタミネーション除去方法

【課題】 露光装置において、HF、ClF、NF、SiF、WF、XeFなどのフッ素化合物系のガスによりステージ上のコンタミネーションを除去するとともに、フッ素化合物系ガスが投影レンズに届かず曇らせないようにする。
【解決手段】 投影レンズと、基板を所定位置に載置して往復移動可能なステージとを有する露光装置と、そのコンタミネーション除去方法において、ステージの所定位置を投影レンズから離したあと、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付け、炭化水素等の欠陥のもとになるコンタミネーションを除去する。ステージの所定位置を投影レンズの真下位置から待機位置に移動させるステージ移動手段と、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付ける吹付手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、特にリソグラフィー装置などの液浸露光装置と、該露光装置においてウェハを載置する基板及び載置されるウェハに付着するカーボン等のゴミを除去するコンタミネーション除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、Fレーザ、エックス線などの250nm以下の深紫外線を用い、例えば、レチクルの回路パターン像をウェハ上に投影するための投影光学系を有し、この投影露光光学系とウェハとの間の光路に液浸液を配置した液浸露光装置が知られている。この種の液浸露光装置では、波長180nm以下の紫外線を照射する基板表面のレジストに照射し、露光パターンを形成する紫外線照射領域に窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス、あるいは酸素、水素、水蒸気、オゾン、過酸化水素蒸気等のガスが吹き付けられる。分解された有機物が二酸化炭素ガスや炭化水素ガスに変換され、真空チャンバから除去され、コンタミネーションの除去を行う(例えば、特許文献1の0033、0034、0035の各段落を参照)。
【0003】
また、真空チャンバに隣接して設置されたマスク装填室内に紫外線照射手段とガス供給手段が配置され、マスク装填室内で紫外線を照射して露光マスクに付着したコンタミネーションを分解し、ガス供給手段によりガスを吹きつけることで、分解したコンタミネーションを除去し、分解したコンタミネーションを露光マスクに再付着させることなく、ガスとともにマスク装填室内から排気することも記載されている(例えば、特許文献1の0048〜0050段落)。
【0004】
さらに、例えば特許文献2に示すように、大気雰囲気と接続・隔離が選択できる試料交換室と、試料交換室と接続・隔離が選択でき、試料の測長、加工、分析、観察等を行うための試料室とも接続・隔離が選択できる試料交換室を備え、それぞれの試料交換室の内部の真空引きを行える手段を備えた電子顕微鏡は公知である。試料交換室内にガス導入手段によりガスを導入し、特許文献2の段落0079に示すように、ガスの具体例として、コンタミネーションの原因となるハイドロカーボンを含み、比較的質量の大きいガス(特許文献2の段落0076参照)がCの場合は、コンタミネーション低減のためのガスはCよりも質量の小さいH、He、B等があり、そのガスがCmHn(m、nは自然数)の場合は、ガスはさらに多くの種類のガスが考えられ、例えば、H、B、C、N、O、F等があり、このようなガスは、理想的には、他の物質と反応しにくい不活性ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)が望ましい旨記載されている。
【特許文献1】特開2004−14960号公報
【特許文献2】特開2006−194690号公報
【特許文献3】特開平9−63527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、図2(A)に示すようなリソグラフィー装置などの液浸露光装置、ステッパーなどの半導体製造装置において、ステージ20は往復移動可能に設けられていて、ステージ20の所定位置にウェハ21が載置され、投影レンズ22の真下位置まで移動され、露光等の所望の処置が行なわれる。
【0006】
その際、図2(B)に示すように、ウェハ21に塗布したレジストが液浸液23(超純水等の水)に溶け出したり、ウェハ21のエッジからレジストがはがれたり、トップコートがはがれて、それらが溶け出したりする。すると、これらがステージ20上に欠陥24(ゴミ)として付着し、その結果、ウェハ21にカーボン(C)などが付着し、ウェハ等の欠陥となってしまう。
【0007】
また、これらの欠陥がステージ20上の周辺に堆積し、ウェハ21上の欠陥をつくってしまうこともある。
【0008】
検査中のウェハだけでなく、次に搬送されてきたウェハにも、ステージ20上の欠陥に付着し、欠陥をつくってしまう。
【0009】
そのため、ステージ20上の欠陥24をフッ素系ガス(Fなど)を使って除去することが考えられるが、フッ素系ガスは投影レンズ22を曇らせてしまう問題がある。
【0010】
しかも、特許文献3に示すようなH、He、B、C、N、O、F等の不活性ガス(Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)では、炭化水素系との化学反応の効率が低く、炭化水素系ガスの除去効率が低い。
【0011】
そこで、本発明は、リソグラフィー装置などの液浸露光装置を改良して、HF、ClF、NF、SiF、WF、XeFなどのフッ素化合物系のガスによりステージ上のコンタミネーションを除去するとともに、フッ素化合物系ガスが投影レンズに届かず曇らせないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0013】
(1)投影レンズと、基板を所定位置に載置して往復移動可能なステージとを有する露光装置装置におけるコンタミネーション除去方法であって、
ステージの所定位置を投影レンズの真下位置から離したあと、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付け、炭化水素等の欠陥のもとになるコンタミネーションを除去することを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【0014】
(2)露光装置における、前述のコンタミネーション除去方法において、
ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹付手段から吹き付けるとともに、吹付手段と投影レンズとの間の位置で炭化水素等の欠陥から分解して発生するガスを排気手段により強制的に排気することを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【0015】
(3)露光装置における、前述のコンタミネーション除去方法において、
フッ素化合物系ガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【0016】
(4)露光装置における、前述のコンタミネーション除去方法において、
露光装置内部をフッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【0017】
(5)投影レンズと、基板を所定位置に載置して移動可能なステージとを有する露光装置において、
ステージの所定位置を投影レンズの真下位置から待機位置に往復移動させるステージ移動手段と、ステージの所定位置を待機位置に移動した後に、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付ける吹付手段とを有することを特徴とする露光装置。
【0018】
(5)前述の露光装置において、
吹付手段と投影レンズとの間に炭化水素等の欠陥から分解して発生するガスを排気する排気手段を設けたことを特徴とする露光装置。
【0019】
(6)前述の露光装置において、
フッ素化合物系ガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とする露光装置。
(7)前述の露光装置において、
フッ素化合物系のガスを導入するガス導入装置を有し、露光装置内部をフッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とする露光装置。
【発明の効果】
【0020】
一般にフッ素化合物系ガスでの反応はゆるやかであり、しかも、生成したフッ素またはフッ素ラジカル(F)(遊離基)は確実に反応するため、炭化水素系の除去の効率が高い。
【0021】
また、不揮発性潤滑材が、真空装置の内部に残存していた場合にも、活性酸素に比べて、効率の良い除去が可能である。
【0022】
また、活性酸素に比べ、真空装置内部にある部材に対する、ダメージが比較的少ない。さらに、非常に希薄なフッ素化合物系ガスによる複数回パージを行うことから、複雑に入り組んだ細かな構造体においても効率良くまたダメージ無く除去することができる。
【0023】
よって、装置内部へのダメージも少なく、従来の炭化水素系ガスよりも、効率よくコンタミネーションを除去することができる。
【0024】
リソグラフィー装置などの液浸露光装置において、HF、ClF、NF、SiF、WF、XeFなどのフッ素化合物系のガスによりステージ上のコンタミネーションを除去することができる。
【0025】
また、フッ素化合物系ガスが投影レンズに届くことがなく曇らせないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、リソグラフィー装置などの液浸露光装置を概略的に示す。
【0027】
本発明による液浸露光装置は、フッ素化合物系ガスを吹き付けるための吹付手段10と、投影レンズ11とを有し、さらに、それらの間の位置で排気用の吸引を行なう排気手段12を有する。炭化水素等の欠陥から分解して二酸化炭素ガスや炭化水素ガスが生じるが、排気手段12は、吹付手段10と、投影レンズ11との間の位置でそのガスを吸引して、排気する。フッ素化合物系ガスを吹き付けるための吹付手段10は、液浸露光装置の鏡筒内にフッ素化合物系のガスを導入するガス導入装置でもある。
【0028】
排気手段12は、吹付手段10と投影レンズ11との間の位置において、始端開口12aで排気を吸引して、そこから終端まで排気をファン18によって送り、ファン18の排気口18aから排気するようになっている。例えば、ファン18によって、分解して発生した二酸化炭素ガスや炭化水素ガスが装置外部に排気される。
【0029】
吹付手段10は、ガス源15と、ガス源15からガスを先端開口16aまで送るためのパイプ16と、そのパイプ16の途中に設けたバルブ17とを有し、ガスを吹きつける。
【0030】
なお、ステージ19を投影レンズ11の真下位置と待機位置との間で往復移動させるステージ移動手段は図示を省略している。
【0031】
フッ素化合物系のガスとしては、例えば、HF、ClF、NF、SiF、WF、XeFなどがあげられる。
【0032】
また、フッ素化合物系ガスを導入する際に、複数回パージする。例えば、2〜3回フッ素化合物系ガスパージを行う。
【0033】
これは、試料上にコンタミネーションがわずかに発生した場合、非常に希薄なフッ素化合物系ガスによるコンタミネーション除去を複数回繰り返すことにより、過剰なパージガスを装置へ導入することをなくし、装置へのダメージを極力無くすと共に、より効果的にコンタミネーションを軽減することができる。
【0034】
なお、それぞれのフッ素化合物系ガスの分子量、沸点、融点、その他特性に応じて取り扱い等を留意することが望ましい。
【0035】
これにより、ステージ11上のコンタミネーション13を除去するとともに、フッ素化合物系ガスが投影レンズ11に届くことがなく曇らせないようにすることができる。
【0036】
なお、本明細書では、リソグラフィー装置などの液浸露光装置に本発明を適用した実施例を述べたが、本発明は、これに限定されない。例えば、ステッパーなどの半導体製造装置、半導体検査装置、電子顕微鏡装置、電子ビーム描画装置などの荷電粒子ビーム装置にも本発明を適用することができる。
【0037】
また、荷電粒子ビームは、電子ビームのみでなく、それ以外に、X線、中性子線、α線、β線、γ線等でもあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適な1つの実施例による液浸露光装置の概略を示す説明図。
【図2】(A)(B)は、従来の液浸露光装置の概略を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
10 吹付手段
11 投影レンズ
12 排気手段
13 コンタミネーション
15 ガス源
16 パイプ
16a 先端開口
17 バルブ
18 ファン
18a 排気口
19 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、基板を所定位置に載置して往復移動可能なステージとを有する露光装置におけるコンタミネーション除去方法であって、
ステージの所定位置を投影レンズの真下位置から離したあと、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付け、炭化水素等の欠陥のもとになるコンタミネーションを除去することを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の、露光装置におけるコンタミネーション除去方法において、
ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹付手段から吹き付けるとともに、吹付手段と投影レンズとの間の位置で、炭化水素等の欠陥から分解して発生するガスを排気手段により強制的に排気することを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の、露光装置におけるコンタミネーション除去方法において、
フッ素化合物系ガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とする、露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の、露光装置におけるコンタミネーション除去方法において、
露光装置内部をフッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とする露光装置におけるコンタミネーション除去方法。
【請求項5】
投影レンズと、基板を所定位置に載置して移動可能なステージとを有する露光装置において、
ステージの所定位置を投影レンズの真下位置と待機位置との間で往復移動させるステージ移動手段と、
ステージの所定位置を待機位置に移動した後に、ステージの所定位置に付着した炭化水素等の欠陥にフッ素化合物系ガスを吹き付ける吹付手段と
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置において、
吹付手段と投影レンズとの間に炭化水素等の欠陥から分解して発生するガスを排気する排気手段を設けたことを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の露光装置において、
フッ素化合物系ガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の露光装置において、
フッ素化合物系のガスを導入するガス導入装置を有し、露光装置内部をフッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−91767(P2008−91767A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272920(P2006−272920)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【出願人】(301014904)株式会社ナノジオメトリ研究所 (15)
【Fターム(参考)】