説明

露光装置の製造方法

【課題】露光装置の製造を迅速に行う。
【解決手段】
露光装置100の製造工場において、ボディ工具とステージモジュール20とをドッキングさせ、ボディ工具が有する光干渉計を用いてステージモジュール20の移動鏡の調整(傾き調整、直交度調整など)を行なった後、そのステージモジュール20を所定の出荷先に出荷する。出荷先に設置されたボディBDは、予め製造工場にて光干渉計に関してボディ工具と同じ状態となるように調整(取付位置調整、光軸調整など)されている。従って、出荷先で改めてステージモジュール20の移動鏡の調整を行う必要がなく、露光装置100の製造を迅速に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の製造方法に係り、更に詳しくは、所定の二次元平面に沿って移動可能な移動体の位置情報を光干渉計を用いて求める露光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、レチクル又はマスク(以下、「レチクル」と総称する)と、ウエハ又はガラスプレート(以下、「ウエハ」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、投影光学系を介して露光光をウエハに照射することにより、そのウエハ上にレチクルに形成されたパターンを転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、露光光に対して高精度でウエハの位置を制御するために、ウエハが載置される基板ステージ装置の位置情報を光干渉計システムにより求めるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
光干渉計システムを用いて基板ステージ装置の位置情報を求める場合、その基板ステージ装置には、光干渉計から照射される光線を反射するための反射面(例えば、鏡)が設けられている。このような干渉計システムを用いる場合、例えば干渉計から照射される光線の光軸が基板ステージ装置の反射面に垂直となるように、干渉計の光軸調整、あるいは反射面の傾き調整作業などを行う必要があり、露光装置を組み立てる際、干渉計システムの調整作業に多大な時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0027640号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、少なくとも所定の二次元平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置と、前記移動体に設けられた反射面を用いて前記移動体の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を求める光干渉計を有する装置本体と、を含み、感応物体を露光する露光装置の製造方法であって、複数の前記装置本体を用意することと;前記複数の装置本体のうちの一の装置本体と前記移動体装置とを組み合わせ、前記一の装置本体が有する前記光干渉計を用いて前記移動体の前記反射面を調整することと;前記反射面の調整がされた前記移動体を有する前記移動体装置と前記一の装置本体とを分離することと;前記複数の装置本体が有する前記光干渉計を互いに実質的に同じ状態となるように調整することと;前記反射面の調整がされた前記移動体装置を、前記複数の装置本体のうちの他の装置本体と組み合わせることと;を含む露光装置の製造方法である。
【0007】
これによれば、移動体装置が有する移動体は、一の装置本体を用いて反射面の調整(例えば、傾き調整など)が行われる。また、最終的に移動体装置と組み合わされる他の装置本体は、光干渉計に関して一の装置本体と互いに同じ状態となるように調整(例えば、取付位置調整、光軸調整など)が行われる。従って、移動体装置が有する移動体の反射面の調整を一の装置本体を用いて行うことは、実質的に移動体装置と他の装置本体とを組み合わせた状態で移動体の反射面の調整を行ったことと同じである。これにより、移動体装置と他の装置本体とを組み合わせた後の反射面の調整を省略でき、露光装置の製造作業を迅速に行うことができる。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、少なくとも所定の二次元平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置と、前記移動体に設けられた反射面を用いて前記移動体の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を求める光干渉計を有する装置本体と、を含み、感応物体を露光する露光装置の製造方法であって、複数の前記移動体装置を用意することと;前記複数の移動体装置のうちの一の移動体装置と前記装置本体とを組み合わせ、前記一の移動体装置が有する前記移動体の前記反射面を用いて前記装置本体の前記光干渉計を調整することと;前記光干渉計の調整がされた前記装置本体と前記一の移動体装置とを分離することと;前記複数の移動体装置の前記移動体に設けられた前記反射面を互いに実質的に同じ状態となるように調整することと;前記光干渉計の調整がされた前記装置本体を、前記複数の装置本体のうちの他の移動体装置と組み合わせることと;を含む露光装置の製造方法である。
【0009】
これによれば、装置本体は、一の移動体装置が有する移動体を用いて光干渉計の調整(例えば、取付位置調整、光軸調整など)が行われる。また、最終的に装置本体と組み合わされる他の移動体装置は、移動体の反射面に関して一の移動体装置の移動体と互いに同じ状態となるように調整(例えば、傾き調整など)が行われる。従って、装置本体の光干渉計の調整を一の移動体装置を用いて行うことは、実質的に装置本体と他の移動体装置ルとを組み合わせて光干渉計の調整を行ったことと同じである。これにより、装置本体と他の移動体装置とを組み合わせた後の光干渉計の調整を省略でき、露光装置の製造作業を迅速に行うことができる。
【0010】
ここで、露光装置の製造とは、露光装置を感応物体を露光できる状態にすることを意味する。従って、本発明に係る露光装置の製造方法では、露光装置を構成する部材(移動体装置、及び装置本体)自体の製造は伴わなくても(すなわち、移動体装置、装置本体などの部材は予め製造されたものであっても)良い。このため、例えば、ある場所に設置された露光装置(移動体装置、及び装置本体を含む)を別の場所に設置(移設)するような場合も、本発明に係る露光装置の製造方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る露光装置の概略構成を示である。
【図2】図1の露光装置が有するステージモジュールの平面図である。
【図3】図3(A)はY干渉計の構成、図3(B)はX干渉計の構成、図3(C)はZ干渉計の構成を説明するための図である。
【図4】図4(A)は、ステージモジュールの組立・調整手順を説明するための図であり、図4(B)は、ボディの組立・調整手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図4(B)に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸と平行な方向をZ軸方向、Z軸に直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0014】
露光装置100は、照明光(露光光)ILによりレチクルRを照明する照明系10、レチクルRを保持するレチクルステージRSTを含むレチクルステージモジュール12、投影光学系PLを含む投影ユニットPU、レチクルステージモジュール12及び投影ユニットPUなどが搭載されたボディBD、ウエハWが載置されるウエハステージWST及び計測ステージMSTを含むステージモジュール20、ステージモジュール20の+X側、−X側にそれぞれ配置されたカウンタマスモジュール38A,38B、及びこれらの制御系等を含んでいる。
【0015】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、リレーレンズ、可変NDフィルタ、レチクルブラインド等(いずれも不図示)を含んでいる。照明系10では、レチクルブラインドにより規定されるレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0016】
レチクルステージモジュール12は、後述するボディBDの一部である第2フレーム36上に搭載されている。レチクルステージモジュール12は、レチクルステージRST、及びレチクルステージRSTを駆動するリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系(不図示)等を有している。レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着(又は静電吸着)により保持されている。レチクルステージRSTは、レチクルステージ駆動系により、第2フレーム36上を走査方向(Y軸方向)に所定のストロークで駆動され、かつX軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動される。レチクルステージRSTの位置情報は、不図示のレチクルレーザ干渉計システムによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時求められている。不図示の制御装置は、レチクルレーザ干渉計システムの出力に基づいて、レチクルステージ駆動系を介してレチクルステージRSTの位置を制御する。
【0017】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLとを含む。投影光学系PLとしては、例えば光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。投影ユニットPUは、鏡筒40の外周部に固定されたフランジFLGを介して、ボディBDの一部であるメトロロジフレームMFと称される部材に一体的に固定されている。
【0018】
これにより、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0019】
ボディBDは、クリーンルームの床面上に設置されたベースフレーム30上に搭載された第1フレーム32と、第1フレーム32上に複数の脚部35を介して搭載された第2フレーム36とを含む。ベースフレーム30は、ステージモジュール20の+Y側、及び−Y側それぞれにひとつずつ、計2つ設けられており(図1では、紙面奥側のベースフレーム30は不図示。図2参照)、第1フレーム32のY軸方向に関する両端部を下方から支持している。第1フレーム32は、XY平面に平行な矩形枠状の部材から成る。第1フレーム32は、その中央部に矩形の開口部32aを有しており、その開口部32a内にメトロロジフレームMFが挿入されている。メトロロジフレームMFは、Y軸方向を長手方向とする平面視矩形の高さの低い箱形(あるいは板状)の部材から成り、フランジFLGを介して固定された投影ユニットPUが有する投影光学系PLの光軸AXが水平面に対して垂直となるように精度良く調整された状態で第1フレーム32に固定されている。
【0020】
メトロロジフレームMFの下面には、例えば米国特許出願公開第2009/0233234号明細書などに開示されるようなアライメント装置90(図3(A)参照)、例えば米国特許第5,448,332号明細書などに開示されるような多点焦点位置検出系の一部を構成するフォーカスセンサ(図示省略)などが、吊り下げ状態で取り付けられている。
【0021】
次にステージモジュール20について説明する。ステージモジュール20は、ベース70、ベース70上に搭載された定盤71、定盤71上面に沿って移動するウエハステージWST、及びウエハステージWSTとは独立して定盤71上面に沿って移動する計測ステージMSTを有している。
【0022】
ベース70は、例えばその下面の四隅部に対応する位置にそれぞれ取り付けられた浮上・昇降装置72(4つの浮上・昇降装置72のうち、2つは図1に示される他の2つに対して紙面奥側に隠れている)を介して床面上に水平に支持されている。
【0023】
4つの浮上・昇降装置72は、それぞれ不図示の空気ばねと、エア浮上装置とを有している。空気ばねは、図示しない気体供給装置から供給される圧縮空気の圧力変化に応じてZ軸方向に所定のストローク(例えば、50mm程度)で伸縮する。このため、ステージモジュール20は、4つの浮上・昇降装置72それぞれが有する空気ばねを適宜用いてベース70を上下動させることにより、定盤71上面のZ軸方向、θx方向、及びθy方向それぞれの位置を任意に調整することができるようになっている。エア浮上装置は、浮上・昇降装置72の底面に設けられ、床面に対して不図示の気体供給装置から供給(ただし、上記空気ばねとは別系統)される空気を噴出することにより、ステージモジュール20全体を、床面上に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を介して浮上させる。エア浮上装置は、ステージモジュール20をボディBDから分離して移動させる際に主に用いられる。従って、ウエハWに対して露光処理などを行う際には、エア浮上装置には空気が供給されず、浮上・昇降装置72の底面は、床面に接触している。
【0024】
定盤71は、図2に示されるように、Y軸方向を長手方向とする平面視矩形の板状の部材から成り、その上面は、平面度が非常に高く仕上げられている。
【0025】
ウエハステージWSTは、図1に示されるように、ウエハステージ本体91、及びウエハテーブルWTBを含む。ウエハステージ本体91は、平面視矩形の箱形(直方体状)の部材から成る。なお、図1では不図示であるが、ウエハステージ本体91は、その下面に気体静圧軸受(例えば、エアベアリング)を有しており、その気体静圧軸受から定盤71の上面に対して噴出される加圧気体の静圧により、定盤71の上面に対し数μm程度のクリアランスを介して浮上している。
【0026】
ウエハステージ本体91には、X軸方向に貫通した開口部(図示省略)が形成されており、その開口部内には、X軸方向に延びる固定子80が挿入されている。固定子80は、X軸、及びZ軸方向に所定間隔で配列された複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。これに対し、ウエハステージ本体91は、複数の永久磁石から成る磁石ユニットを含むX可動子、及びZ可動子(図示省略)を有している。ウエハステージ本体91は、固定子80とX可動子とから成るローレンツ電磁力駆動方式のXリニアモータにより、固定子80に沿ってX軸方向に所定のストロークで駆動される。Xリニアモータは、Y軸方向に離間して複数、例えば2つ設けられ、ウエハステージ本体91は、例えば2つのXリニアモータにより、適宜θz方向に微少駆動される。また、Z可動子は、複数(少なくとも同一直線上にない3箇所に)設けられ、その複数のZ可動子と固定子80により複数のローレンツ電磁力駆動方式のZリニアモータが構成されている。ウエハステージ本体91は、複数のZリニアモータにより、適宜θx方向、及び/又はθy方向に微少駆動される。また、図1では不図示であるが、ウエハステージ本体91の−Y側の側面には、X軸方向を長手方向とするZ移動鏡41(図2参照)が、不図示のキネマティック支持機構を介して取り付けられている。また、図1及び図2では不図示であるが、ウエハステージ本体91は、計測ステージMSTに照明光ILを導くための送光系を有している。
【0027】
固定子80は、図1に示されるように、長手方向の一端、及び他端それぞれの近傍の下面に気体静圧軸受83(例えば、エアベアリング)を有している。固定子80は、気体静圧軸受83から定盤71の上面に対して噴出される加圧気体の静圧により、定盤71の上面に対し数μm程度のクリアランスを介して浮上している。また、固定子80の長手方向の一端、及び他端には、それぞれ複数の永久磁石から成る磁石ユニット(図示省略)を含む可動子82が接続されている。
【0028】
ウエハテーブルWTBは、図2に示されるように、平面視略正方形の板状部材から成り、ウエハステージ本体91上に搭載されている。ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハWを真空吸着(あるいは静電吸着)によって吸着保持するウエハホルダWH(図1参照)が取り付けられている。また、ウエハテーブルWTBの−Y側の端面,及び−X側の端面には、それぞれY移動鏡17y,X移動鏡17xが固定されている。ウエハテーブルWTBのXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報も含む)は、Y移動鏡17y,X移動鏡17xを用いた光干渉計システムにより計測される。光干渉計システムの構成については後に説明する。
【0029】
計測ステージMSTは、ウエハステージWSTの+Y側に配置されており、計測ステージ本体92、及び計測テーブルMTBを有している。計測ステージ本体92は、平面視矩形の箱形(直方体状)の部材から成る。なお、図1では不図示であるが、計測ステージ本体92は、その底部に気体静圧軸受(例えば、エアベアリング)を有している。計測ステージMSTは、気体静圧軸受から定盤71の上面に対して噴出される加圧気体の静圧により、定盤71上に数μm程度のクリアランスを介して浮上している。
【0030】
計測ステージ本体92には、X軸方向に貫通した開口部(図示省略)が形成されており、その開口部内には、X軸方向に延びる固定子81が挿入されている。固定子81は、X軸方向に所定間隔で配列された複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。これに対し、計測ステージ本体92は、複数の永久磁石から成る磁石ユニットを含むX可動子(図示省略)を有している。計測ステージ本体92は、固定子81とX可動子とから成るローレンツ電磁力駆動方式のXリニアモータにより、固定子81に沿ってX軸方向に所定のストロークで駆動される。また、固定子81の長手方向の一端、及び他端には、それぞれ複数の永久磁石から成る磁石ユニット(図示省略)を含む可動子85が接続されている。さらに、図1では気体静圧軸受83に対して紙面奥側に隠れているため不図示であるが、固定子81の長手方向の一端、及び他端の近傍の下面には、固定子81を定盤71上で浮上させるための気体静圧軸受が取り付けられている。
【0031】
計測テーブルMTBは、図2に示されるように、平面視矩形の板状部材から成り、計測ステージ本体92上に搭載されている。計測テーブルMTBの+Y側の端面,及び−X側の端面には、それぞれY移動鏡19y,X移動鏡19xが固定されている。計測テーブルMTBのXY平面内の位置情報は、Y移動鏡19y,X移動鏡19xを用いた光干渉計システムにより計測される。光干渉計システムの構成については後に説明する。
【0032】
計測テーブルMTBは、そ上面に照度むらセンサ94、空間像計測器96、波面収差計測器98などの複数の計測用部材を有している。複数の計測用部材は、計測テーブルMTBが投影ユニットPU(図1参照)の下方に位置した状態で、投影光学系PLを通過した照明光IL(図1参照)を受光する。また、計測ステージMSTは、計測テーブルMTBの−Y側にコンフィデンシャルバー46と称されるY軸方向に延びる部材を有している。コンフィデンシャルバー46には、不図示であるが、アライメント計測に用いられる複数のマークなどが形成されている。また、計測ステージMSTは、ウエハテーブルWTBが有する送光系(図示省略)を介して案内される照明光ILを受光するための受光系を有している。上記計測用部材、コンフィデンシャルバー46、受光系を含み、計測ステージMSTの構成、及び動作については、例えば米国特許出願公開第2008/0106722号明細書などに開示されている。
【0033】
図1に戻り、カウンタマスモジュール38Aは、固定子86、固定子86の底面に固定されたカウンタマス76、カウンタマス76をY軸方向にスライド自在に支持するベース74、及びベース74を床面上で下方から支持する浮上・昇降装置58を含む。固定子86は、XZ断面横U字状に形成された、Y軸方向に延びる部材から成り、一対の対向面間に可動子82、可動子85(図2参照)がそれぞれ挿入されている。固定子86は、Y軸方向に所定間隔で配列された複数のコイルを含むコイルユニット(図示省略)を有している。コイルユニットは、可動子82、可動子85それぞれが有する磁石ユニット(図示省略)とともに、固定子80(すなわちウエハステージWST)、固定子81(すなわち計測ステージMST)を、それぞれ独立にY軸方向に所定のストロークで駆動するローレンツ電磁力駆動方式のYリニアモータを構成している。
【0034】
カウンタマス76は、略直方体状の重量物であり、その下面には、XZ断面V字状で、Y軸方向に延びる凸部が形成されている。凸部を規定する一対の傾斜面それぞれには、不図示の気体静圧軸受(例えば、エアベアリング)が設けられている。ベース74は、略直方体状の部材から成り、その上面には、XZ断面V字状で、Y軸方向に延びるV溝が形成されている。V溝を規定する一対の傾斜面間には、カウンタマス76の凸部が挿入されている。カウンタマス76は、気体静圧軸受から噴出される気体の静圧により、所定のクリアランスを介してベース74上に浮上している。カウンタマス76は、ウエハステージWST、又は計測ステージMSTがYリニアモータによりY軸方向へ駆動される際に、固定子86に生じる反力の作用により、固定子86と一体的にベース74上でY軸方向に移動することにより固定子86に作用する反力をキャンセルする。
【0035】
浮上・昇降装置58は、大きさが異なる点を除き、ステージモジュール20が有する浮上・昇降装置72と同様の構成、及び機能を有する。浮上・昇降装置58は、ベース74の下面にY軸方向に所定間隔で2つ取り付けられている(図1では、一方の浮上・昇降装置58は、他方の紙面奥側に隠れている)。従って、カウンタマスモジュール32Aは、浮上・昇降装置58が有する不図示の空気ばねを用いてY固定子86のZ位置を調整すること、及び不図示のエア浮上装置を用いて床面上に浮上することができる。カウンタマスモジュール38Bは、図1に示されるように、露光装置100を−Y側から見て左右対称である点を除きカウンタマスモジュール38Aと同様に構成されているため、説明を省略する。
【0036】
ここで、ステージモジュール20に対して、カウンタマスモジュール32A、32Bは、それぞれ機械的に接続されていないことから、ステージモジュール20から分離することができる。従って、カウンタマスモジュール38A、38Bそれぞれを露光装置100から取り外してメンテナンスを行うことができる。そして、特に不図示のエア浮上装置を用いて床面上に浮上した状態では、容易にステージモジュール20から分離することができるので、カウンタマスモジュール38A、38Bのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0037】
次に、ウエハテーブルWTBの6自由度方向の位置情報(X軸、Y軸、Z軸方向に関する位置情報、及びθx、θy、θz方向の回転量情報)を計測するための光干渉計システムの構成について、図3(A)〜図3(C)を用いて説明する。なお、図3(A)〜図3(C)では、図面の錯綜を避ける観点から、ウエハステージWST、計測ステージMSTを駆動するリニアモータを構成する部材の図示が省略されている。また、本実施形態の露光装置100における光干渉計システムの構成、及びその光干渉計システムを用いた計測方法は、例えば米国特許出願公開第2009/0027640号明細書などに開示されたものと実質的に同じである。
【0038】
図3(A)に示されるように、ウエハテーブルWTBのY位置情報を計測するためのY干渉計16yは、メトロロジフレームMFの−Y側の下面に吊り下げ状態で固定されている。Y干渉計16yは、図示しない参照鏡(Y参照鏡)を内蔵している。Y干渉計16yは、メトロロジフレームMFに固定されたレーザユニット15から光ファイバケーブルを介して供給されるレーザビームをY参照鏡、及びウエハテーブルWTBのY移動鏡17yにそれぞれ照射し、Y参照鏡からの反射光とY移動鏡17yからの反射光との干渉に基づいてY移動鏡17yの反射面上におけるレーザビーム(測長ビーム)の照射点のY位置を求める。ここで、Y干渉計16yからは、X軸方向に離間した2本の平行な測長ビームがそれぞれY移動鏡17yに照射される。光干渉計システムでは、2本の測長ビームのY移動鏡17yの反射面上における照射点のY位置の平均に基づいてウエハテーブルWTBのY位置が求められるとともに、2本の測長ビームのY移動鏡17yの反射面上における照射点のY位置の差に基づいてウエハテーブルWTBのθz回転量情報が求められる。
【0039】
計測ステージMSTのY位置情報を計測するためのY干渉計18は、メトロロジフレームMFの+Y側の下面に吊り下げ状態で固定されている。Y干渉計18は、Y干渉計16yと同様に、図示しない参照鏡(Y参照鏡)を内蔵しており、その参照鏡に参照ビームを、Y移動鏡19yに測長ビームをそれぞれ照射する。計測ステージMSTのY位置情報は、測長ビームの反射光と参照ビームの反射光との干渉に基づいて求められる。
【0040】
図3(B)に示されるように、ウエハテーブルWTBのX位置情報を計測するためのX干渉計16xは、メトロロジフレームMFの−X側の下面に吊り下げ状態で固定されている。X干渉計16xもY干渉計16yと同様に図示しない参照鏡(X参照鏡)を内蔵しており、その参照鏡に参照ビームを、X移動鏡17xに測長ビームをそれぞれ照射する。ウエハテーブルWTBのX位置情報は、測長ビームの反射光と参照ビームの反射光との干渉に基づいて求められる。また、図3(B)では、紙面奥行き方向に重なっているため不図示となっているが、X干渉計16xは、Y軸方向に所定間隔で複数設けられており、光干渉計システムでは、ウエハテーブルWTBのY位置に応じて複数のX干渉計16xのうちの1つ、又は2つを適宜用いてウエハテーブルWTBのX位置情報を求めるようになっている。また、複数のX干渉計16xのうちの1つは、移動鏡19x(図2参照)を用いて計測テーブルMTBのX位置情報を求める。
【0041】
図3(C)に示されるように、ウエハテーブルWTBのZ位置情報を計測するためのZ干渉計16zは、メトロロジフレームMFの−Y側の下面に吊り下げ状態で固定されている。なお、図3(C)では、紙面奥行き方向に重なっているため不図示となっているが、Z干渉計16zは、X軸方向に離間して2つ設けられており、前述のY干渉計16yは、2つのZ干渉計16zの間に配置されている。2つのZ干渉計16zは、それぞれメトロロジフレームMFの下面に吊り下げ状態で固定されたZ参照鏡17z、及びウエハステージ本体91に固定されたZ移動鏡41を用いてウエハテーブルWTB(実際にはウエハステージ本体91)のZ位置情報を求める。Z干渉計16zは、Z移動鏡41が有するXY平面に対して傾斜する一対の反射面それぞれに対応するZ軸方向に離間した一対の測長ビームを照射し、その測長ビームそれぞれのZ参照鏡17zからの反射ビームを、Z移動鏡41を介して受光する。また、前述したY干渉計16y(図3(A)参照)は、Z移動鏡41が有するXZ平面に平行な反射面に対して測長ビームを照射し、その反射ビームを受光する。本実施形態の光干渉計システムでは2つのZ干渉計16zの出力に基づいて、ウエハステージWSTのZ位置、及びθy回転量情報が求められ、Y干渉計16yからY移動鏡17yに照射される測長ビーム(図3(A)参照)及びY干渉計16yからZ移動鏡41に照射される測長ビームに基づいてウエハステージWSTのθx回転量情報が求められる。以上説明したX干渉計16x、Y干渉計16y、及びZ干渉計16zを併せて、適宜干渉計16と称して説明する。
【0042】
次に、露光装置100の製造方法を図4(A)及び図4(B)を用いて説明する。露光装置100は、照明モジュール、レチクルステージモジュール12、投影レンズモジュール、ウエハステージモジュール20、カウンタマスモジュール38A,38B、ボディBDそれぞれが、露光装置100の製造工場(以下、単に製造工場と称する)において個別に組立・調整された後、所定の出荷先(半導体の製造工場など。以下、単に出荷先と称する)にモジュールごとに出荷され、その複数のモジュール同士が出荷先でドッキングされることによって製造される。ここで、照明モジュールとは、光源及び照明光学系などを含む図1の照明系10のモジュールであり、投影レンズモジュールとは、鏡筒40及び投影光学系PLを含む図1の投影ユニットPUのモジュールである。
【0043】
《製造工場における組立・調整》
ステージモジュール20の組み立ては、製造工場において、図4(A)に示されるように、まずステップ202でステージモジュール20(図1及び図2参照)を構成する各パーツの組み立てが行われる。具体的には、4つの浮上・昇降装置72上にベース70が搭載され、そのベース70上に定盤71が載置される。また、定盤上71上には、ウエハステージWST,及び計測ステージMSTが載置され、そのウエハステージWST、計測ステージMSTに固定子80,81がそれぞれ接続される。この後、ステップ204で、ステージモジュール20は、例えば、製造工場に設置された不図示のボディ工具と称される装置に対してドッキングされる。ボディ工具とは図1に示されるボディBDと実質的に同じものである。
【0044】
ボディ工具は、図1に示されるメトロロジフレームMFと実質的に同じ部材であるメトロロジフレーム工具(図示省略)を有している。そして、図3(A)〜図3(C)に示される干渉計16(X干渉計16x、Y干渉計16y、Z干渉計16z)、Y干渉計18、Z参照鏡17zなど、メトロロジフレームMFに取り付けられる部材に関して、メトロロジフレーム工具と実機のメトロロジフレームMFとは、互いに状態(取付位置、光軸の位置など)が同じとなるように精度良く調整されている(実際には、実機のボディBDがボディ工具と同じとなるように調整して出荷される。その調整方法については後述)。ただし、ボディ工具を用いてウエハWに露光処理を行うことがないことから、ボディ工具には、例えば投影ユニットPU、アライメント装置90などの替わりに同じ重量を有するダミー工具が取り付けられても良い。
【0045】
ボディ工具とステージモジュール20のとのドッキング時における、ステージモジュール20のボディ工具に対する位置合わせは、メトロロジフレーム工具に設けられた絶対基準面を基準として、その絶対基準面と、ステージモジュール20の定盤71に設けられたステージ位置基準面とが予め設定された所定の位置関係となるように行われる。
【0046】
ボディ工具に対するドッキングが終了した後、ステージモジュール20は、ステップ206で浮上・昇降装置72により、ベース70,及び定盤71が+Z側に持ち上げられ、その定盤71上で、Y移動鏡17y、及びX移動鏡17xがそれぞれY干渉計16y、X干渉計16xから照射される測長ビームが当たる位置まで、ウエハステージ本体91の下面に設けられた気体静圧軸受によりウエハステージWSTが+Z側に持ち上げられる。この後、ウエハステージ本体91を適宜X軸、及びY軸方向に移動させつつ、Y干渉計16yから照射される測長ビームがY移動鏡17yに垂直に入射するようにY移動鏡の位置が調整され、同様にX干渉計16xから照射される測長ビームがX移動鏡17xに垂直に入射するようにX移動鏡17xの位置が調整される。また、Y干渉計16yから照射される測長ビームがZ移動鏡41のXZ平面に平行な面に垂直に入射するようにZ移動鏡41の位置が調整される。また、Z干渉計16zから照射される測長ビームが、Z移動鏡41,Z参照鏡17zを介して同一光路上を通ってZ干渉計16zに戻ってくるようにZ移動鏡41の位置が調整される。
【0047】
ウエハステージWSTは、ステップ206での移動鏡の位置調整作業の終了後、ステップ208で、ウエハステージ本体91が有する気体静圧軸受に対する加圧気体の供給が停止される。これにより、ウエハステージWSTが下降して定盤71上面に接触する。ウエハステージWSTは、定盤71上面に接触した状態で定盤71(あるいはベース70)に不図示の工具を用いて固定される。また、計測ステージMSTも同様に、ステップ206で、Y移動鏡19y、X移動鏡19xの干渉計の測長軸に対する反射面の位置調整が行われた後、定盤71上面に接触した状態で不図示の工具により固定される。
【0048】
《出荷先での組立作業》
次いで、ステップ210でウエハステージWST、及び計測ステージMSTが固定されたステージモジュール20は、製造工場から出荷先に出荷される。出荷先では、ステージモジュール20と、その出荷先で既に組み上げられたボディBDとがドッキングされる。このドッキングは、ボディBDが有するメトロロジフレームMFの絶対基準面と、ステージモジュール20が有する定盤71のステージ位置基準面とが、製造工場における調整時(ステップ204参照)と同じ位置関係となるように行われる。また、ボディBDには、照明モジュール、レチクルステージモジュール12、投影レンズモジュール、カウンタマスモジュール38A,38Bなどがドッキングされる。
【0049】
ここで、上述したように、ボディ工具が有するメトロロジフレーム工具と、出荷先に設置されたボディBDが有するメトロロジフレームMFとは、互いのX干渉計16x、Y干渉計16y、Z干渉計16z、Y干渉計18、Z参照鏡17zそれぞれの状態(取付位置、光軸など)が同じとなるよう精度良く調整されている。従って、メトロロジフレーム工具を用いてX移動鏡17x、19x、Y移動鏡17y、19x、Z移動鏡41それぞれの位置調整が行われたステージモジュール20をボディBDにドッキングさせると、自動的にメトロロジフレームMFに固定されたX干渉計16x、Y干渉計16yそれぞれから照射される測長ビームが、X移動鏡17x、19x、Y移動鏡17y、19y、Z移動鏡41に垂直に入射するようになるとともに、Z干渉計16zから照射される測長ビームが、Z移動鏡41,Z参照鏡17zを介して同一光路上を通ってZ干渉計16zに戻ってくるようになる。これにより、ステージモジュール20をボディBDにドッキングさせた後の干渉計に対する移動鏡の位置調整作業を省略することができ、出荷先における露光装置100の組み立て作業時間を短縮することができる。また、例えばステージモジュール20を交換する場合、新たなステージモジュール20の移動鏡の位置調整(ステップ202〜208参照)を、ボディ工具を用いて予め製造工場で行っておくことにより、出荷先でのドッキング後の移動鏡の位置調整作業を省略できる。なお、製造工場における作業では、ボディ工具を用いず、実際に出荷先で用いられる予定のボディBD(メトロロジフレームMF)を用いて製造工場にてステージモジュール20の移動鏡の位置調整を行っても良い。
【0050】
次に、出荷先において予め組み立てられたボディBDのメトロロジフレームMFが有する干渉計16、Y干渉計18、Z参照鏡17zなどの取付・調整手順について説明する。
【0051】
《製造工場における組立・調整》
メトロロジフレームMFに対する干渉計16、Y干渉計18、Z参照鏡17zなどの取り付けは、露光装置の製造工場において、ステージモジュール工具と称される部材を用いて行われる。ステージモジュール工具は、図1に示されるステージモジュール20と実質的に同じものであり、ボディ工具を用いて移動鏡の位置がステップ202〜206(図4(A)参照)と同様の手順で精度良く調整されている。
【0052】
ボディBDの製造では、まずステップ302でベースフレーム30、第1フレーム32、メトロロジフレームMFなどが組み立てられる。この後、ステップ304で、そのボディBDが有するメトロロジフレームMFに干渉計16,Y干渉計18、Z参照鏡17zなどが取り付けられる。次いで、ステップ306でボディBDにステージモジュール工具がドッキングされる。この際、ステップ204(図4(A)参照)と同様に、メトロロジフレームMFの絶対基準面を基準としてステージモジュール工具の位置が精度良く調整される。
【0053】
ステージモジュール工具をボディBDにドッキングさせた後、ステップ308で、そのステージモジュール工具が有するX移動鏡17x、19x、Y移動鏡17y、19y、Z移動鏡41などを用いて、メトロロジフレームMFに取り付けられた干渉計の光軸調整、Z参照鏡17zの取り付け位置調整などが行われる。具体的には、測長ビームがX移動鏡17x、19x、Y移動鏡17y、19y、Z移動鏡41に垂直に入射するようにX干渉計16x、Y干渉計16yそれぞれの取付位置及び光軸が調整されるとともに、Z干渉計16zから照射される測長ビームが、Z移動鏡41,Z参照鏡17zを介して同一光路上を通ってZ干渉計16zに戻ってくるようにZ干渉計17zの取付位置及び光軸、並びにZ参照鏡17zの取り付け位置が調整される。
【0054】
《出荷先での組立作業》
この後、ステップ310でボディBDからステージモジュール工具が取り外された後、ボディBDが単体で出荷先に出荷され、その出荷先の床面上に設置される。また、出荷先においてボディBDの設置作業が行われるのと並行して、製造工場ではステージモジュール20の組立・調整作業が前述したステップ202〜208の手順で行われ、ステップ210で出荷先に出荷される。そして、出荷先に設置されたボディBDと、ステージモジュール20とがドッキングされる。すなわち、説明の順序が前後したが、本実施形態では、製造工場において組立・調整が行われたボディBDが先行して出荷先に出荷・設置され、その後に製造工場で組立・調整されたステージモジュール20が出荷先に出荷され、ボディBDにドッキングされる。
【0055】
ここで、ステージモジュール20は、予め実質的にボディBDと同じ部材であるボディ工具を用いて移動鏡の調整が行われているので、ステージモジュール20をボディBDにドッキングさせると、自動的にメトロロジフレームMFに固定されたX干渉計16x、Y干渉計16y、Z干渉計16zそれぞれから照射される測長ビームが、X移動鏡17x、19x、Y移動鏡17y、19y、Z移動鏡41に垂直に入射するようになるとともに、Z干渉計16zから照射される測長ビームが、Z移動鏡41,Z参照鏡17zを介して同一光路上を通ってZ干渉計16zに戻ってくるようになる。従って、ステージモジュール20をボディBDにドッキングさせた後の干渉計の取付位置及び光軸調整作業を省略できる。これにより、出荷先における露光装置100の組み立て作業時間を短縮することができる。なお、製造工場における作業では、ステージモジュール工具を用いず、実際に出荷先で用いられる予定のステージモジュール20を用いて干渉計などの調整を行っても良い(ただし、ボディBDの組立完了時にステージモジュール20の組立も完了している必要がある)。
【0056】
なお、製造工場に設置されたボディ工具が有するメトロロジフレーム工具に取り付けられたX干渉計、Y干渉計、Z干渉計、Z参照鏡(それぞれX干渉計16x、Y干渉計16y、18、Z干渉計16z、Z参照鏡17z(図3(A)〜図3(C)参照)と同じ部材)それぞれの取り付け、及びその位置調整は、まずメトロロジフレーム工具に反射面の直交度、鉛直度などが精度良く調整された基準ミラー工具、及び予めミラー工具が取り付けられた干渉計、Y干渉計がそれぞれ固定される。そして、X干渉計、Y干渉計のミラー工具の反射面と基準ミラー工具の反射面との平行度をオートコリメータ装置などを用いて計測することにより、X干渉計、Y干渉計の取付位置が決定される。次いで、干渉計、Y干渉計から照射される測長ビームの光軸調整がプリズムなどを含む垂直出し工具、及び上記基準ミラー工具などを用いて行われる。また、Z干渉計、Z参照鏡の取付位置調整及び光軸調整がZ移動鏡41(図3(C)参照)と同様な構成を有するミラー工具を設置して行われる。
【0057】
また、露光装置100の製造工程では、最初にボディ工具が製造され、そのボディ工具を用いてステージモジュール工具が製造・調整がされる。そして、そのボディ工具を用いて実機のステージモジュール20が量産されるととともに、そのステージモジュール工具を用いて実機のボディBDが量産される。すなわち、量産される複数のステージモジュール20は、全てボディ工具を用いて移動鏡の調整が行われ、量産される複数のボディBDは、全てステージモジュール工具を用いて干渉計などの調整が行われる。従って、量産される複数のステージモジュール20のうちのひとつと、量産される複数のボディBDのうちのひとつをドッキングさせる場合、どのような組み合わせであっても、干渉計システム(干渉計、移動鏡、参照鏡)に関して調整が不要となる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100の製造方法では、実機のボディBD及びステージモジュール20と実質的に同じ部材であるボディ工具及びステージモジュール工具が用意され、そのボディ工具及びステージモジュール工具をドッキングさせて干渉計システムに関する調整が行われた後に、干渉計ステムに関して、ボディ工具を用いて実機のステージモジュール20の調整が行われるとともに、ステージモジュール工具を用いて実機のボディBDの調整が行われる。従って、実機のボディBD、及び実機のステージモジュール20を製造工場でドッキングさせることなく、露光装置100の光干渉計システムに関する調整作業を行うことができる。これにより、露光装置100の組み立て作業時間を短縮することができる。また、出荷先におけるボディBDの設置と、製造工場におけるステージモジュール20の調整を並行して行うことができるので、露光装置100の組み立て作業時間を短縮することができる。
【0059】
なお、本明細書において、露光装置100の製造とは、出荷先(すなわち、実際の露光装置100の使用場所)において、ウエハWに露光処理を行うことができる程度の状態に露光装置100を組み立てることを意味する。従って、上記実施形態では、ステージモジュール20、及びボディBDをそれぞれ製造工場で製造・調整した後に出荷先に出荷し、その出荷先で組み立てることにより露光装置100の製造を行ったが、露光装置100の製造方法はこれに限られず、例えば露光装置100を構成する個々の部材(例えばステージモジュール20、ボディBD)の製造工程を含まなくても良い。このため、例えばある場所に設置された露光装置100を分解した後に製造工場に搬送し、その製造工場で調整を行った後に別の出荷先に出荷して、その別の出荷先で組立を行う際に、上記実施形態と同様な手順で露光装置の製造を行っても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、ウエハステージWST,及び計測ステージMSTがリニアモータにより定盤上で駆動される構成であったが、これにかぎらず、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動方式の平面モータにより駆動されても良い。
【0061】
また、例えば米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される液浸露光装置に、本発明を適用することも可能である。この場合、投影光学系PLの最もウエハW側のレンズの出射面とウエハWとの間に液体(例えば純水)を供給する供給ノズル、及びその液体を回収する回収ノズルを有するノズルユニットがメトロロジフレームMFに吊り下げ状態で固定される。また、ウエハテーブルWTBには、ウエハホルダWHの周囲を囲み、その表面のZ位置がウエハWの表面と同じとなるように設定された撥水プレートが固定される。
【0062】
また、上記実施形態の光干渉計システムと併用して、例えば米国特許出願公開第2009/0233234号明細書などに開示されるようなエンコーダシステムを用いてウエハステージWSTの位置情報を求めても良い。この場合、光干渉計システム、及びエンコーダシステムの一方が故障しても、他方によりウエハステージWSTの位置情報を求めることができるので信頼性が向上する。この場合、ウエハテーブルWTBの上面にX軸、及びY軸方向を周期方向とするスケール(あるいは二次元スケール)が固定され、メトロロジフレームMFの下面に固定されたエンコーダヘッドにより、ウエハステージWSTの位置情報が求められる。
【0063】
また、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置を光干渉計システムを用いて高精度に位置決めすることが可能になり、高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置の製造方法にも本発明を適用することができる。
【0064】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0065】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0067】
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置情報を光干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0068】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0069】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明の露光装置の製造方法は、所定の二次元平面に沿って移動する移動体の位置情報を光干渉計を用いて求める露光装置を製造するのに適している。
【符号の説明】
【0071】
16x…X干渉計、16y…Y干渉計、16z…Z干渉計、17z…Z参照鏡、18…Y干渉計、41…Z移動鏡、20…ステージモジュール、100…露光装置、BD…ボディ、MF…メトロロジフレーム、MST…計測ステージ、W…ウエハ、WST…ウエハステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定の二次元平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置と、前記移動体に設けられた反射面を用いて前記移動体の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を求める光干渉計を有する装置本体と、を含み、感応物体を露光する露光装置の製造方法であって、
複数の前記装置本体を用意することと;
前記複数の装置本体のうちの一の装置本体と前記移動体装置とを組み合わせ、前記一の装置本体が有する前記光干渉計を用いて前記移動体の前記反射面を調整することと;
前記反射面の調整がされた前記移動体を有する前記移動体装置と前記一の装置本体とを分離することと;
前記複数の装置本体が有する前記光干渉計を互いに実質的に同じ状態となるように調整することと;
前記反射面の調整がされた前記移動体装置を、前記複数の装置本体のうちの他の装置本体と組み合わせることと;を含む露光装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の装置本体の調整では、前記一方の装置本体が有する前記光干渉計を基準にして前記他方の装置本体が有する前記光干渉計を調整する請求項1に記載の露光装置の製造方法。
【請求項3】
前記複数の装置本体が有する前記光干渉計の調整を共通の工具を用いて行う請求項1又は2に記載の露光装置の製造方法。
【請求項4】
前記共通の工具は、前記反射面に関して前記移動体と同じ構成を有する請求項3に記載の露光装置の製造方法。
【請求項5】
前記反射面の調整は、前記光干渉計から照射される光線が前記反射面に垂直に入射するように行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置の製造方法。
【請求項6】
少なくとも所定の二次元平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置と、前記移動体に設けられた反射面を用いて前記移動体の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を求める光干渉計を有する装置本体と、を含み、感応物体を露光する露光装置の製造方法であって、
複数の前記移動体装置を用意することと;
前記複数の移動体装置のうちの一の移動体装置と前記装置本体とを組み合わせ、前記一の移動体装置が有する前記移動体の前記反射面を用いて前記装置本体の前記光干渉計を調整することと;
前記光干渉計の調整がされた前記装置本体と前記一の移動体装置とを分離することと;
前記複数の移動体装置の前記移動体に設けられた前記反射面を互いに実質的に同じ状態となるように調整することと;
前記光干渉計の調整がされた前記装置本体を、前記複数の装置本体のうちの他の移動体装置と組み合わせることと;を含む露光装置の製造方法。
【請求項7】
前記複数の移動体装置の前記反射面の調整では、前記一方の移動体装置が有する前記移動体の前記反射面を基準にして前記他方の移動体装置が有する前記移動体の前記反射面を調整する請求項6に記載の露光装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数の移動体装置が有する前記移動体の前記反射面の調整を共通の工具を用いて行う請求項6又は7に記載の露光装置の製造方法。
【請求項9】
前記共通の工具は、前記光干渉計に関して前記装置本体と同じ構成を有する請求項8に記載の露光装置の製造方法。
【請求項10】
前記光干渉計の調整は、前記光干渉計から照射される光線が前記反射面に垂直に入射するように行われる請求項6〜9のいずれか一項に記載の露光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165991(P2011−165991A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28403(P2010−28403)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】