説明

露光装置及びその駆動制御方法

【課題】画像データの階調値に対して感光体ドラム上に照射される光の光量の値を一定に維持するとともに、その均一化を図ること。
【解決手段】画素基板12上に配列形成された複数の有機EL素子36による発光素子アレイを電子写真方式の露光装置の光源として用い、一つ以上の有機EL素子36に対応して複数の光センサTFT92を設けると共に、各光センサTFT92に対して一対に温度測定EL100を設け、前記有機EL素子36から出射された光の光量を前記光センサTFT92によって検出し、それを対応する前記温度測定EL100によって取得された温度に応じて補償した値に基づいて、画像データの階調値に対して感光体ドラム10上に照射される光の光量の値を所定の値に揃えるように、前記各有機EL素子36の、前記画像データの階調値に対する発光輝度の値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として発光素子を用いた露光装置及びその駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(印刷装置)において、感光体ドラムに画像データに応じた光を照射して露光を行う露光装置を有し、この露光装置において、LED等の発光素子を光源としたものが実現されている。また、近年、発光素子として、発光点を精度良く作り込める有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する。)が注目されており、この露光装置の光源としてそのような有機EL素子を利用する試みが各種なされてきている。
【0003】
そのような電子写真用の露光装置における光源ユニットでは、例えば光源としてのLED素子や有機EL素子を複数個並べてアレイ状部品として構成し、そのアレイ状部品を複数個並べた形態で実装して光源ユニットとしているが、各光源には発光輝度のバラツキがあり、また、感光体ドラムにおいても各位置で感度のバラツキが存在する。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、このような露光装置において、光源毎の光量補正データを予め求めて記憶しておくと共に、感光体ドラムの位置毎の感度補正データも予め求めて記憶しておき、それら記憶した補正データを基に、画像データに応じて定められ各光源の駆動電流を補正して各光源を駆動することで、各光源の光量のバラツキと感光体ドラムの感度のバラツキとを考慮して、濃度ムラのない良好な画像を形成する技術が提案されている。
【0005】
また、印刷装置における有機EL素子やLED素子を利用した露光装置においては、感光体ドラムの感度及び光源の発光輝度に温度特性があり、温度変化によって、形成される画像に濃度変化を発生させてしまう。
【0006】
前記特許文献1では、温度センサによって感光体ドラム表面近傍の温度を測定して温度データを取得し、前記光量補正データ及び感度補正データを基に補正した各光源の駆動電流を、該温度データに基づいて更に補正する技術も提案している。
【特許文献1】特開2007−62100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に開示の技術では、光源に用いる発光素子の発光特性の経時的な劣化については何ら考慮されていない。
【0008】
また、光源の各発光素子の温度は、環境温度だけでなく、印字頻度,印字時間,印字率等のさまざまな要因によって変化し、各発光素子の発光輝度を変化させてしまうが、それらの要因は発光素子毎に異なるため、前記特許文献1に開示の技術のような、温度センサによって感光体ドラム表面近傍の温度を測定しただけでは、光源毎の濃度バラツキを補正することはできない。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたもので、発光部の各発光素子から出射される光の光量の均一化を図ることが可能な発光装置及びその駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発光装置は、発光素子を有する画素を少なくとも一つ有し、供給される画像データに応じた光を出射する発光部と、前記発光素子に対応して設けられ、該発光素子から出射される光の光量を検出する少なくとも一つの光センサを有する光量測定部と、前記光センサに対応して設けられ、該光センサの近傍の温度を取得する少なくとも一つの温度センサを有する温度測定部と、前記光量測定部の前記光センサによって検出された光量の値を、前記光センサの温度特性と前記温度測定部の対応する前記温度センサによって取得された温度とに基づいて補正し、前記補正された光量の値に基づいて、前記画像データに対応して前記発光部に供給する駆動信号の値を制御する制御部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発光装置は、請求項1記載の発光装置において、前記制御部は、前記光量測定部により第1のタイミングで検出された前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第1の光量と、前記第1のタイミングから所定時間経過した後の第2のタイミングで、前記光量測定部により検出された前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第2の光量と比較する光量比較部と、前記光量比較部による前記第1の光量と前記第2の光量の差分に応じた光量補正データを保持する補正データ記憶部と、前記画像データに応じた階調信号を、前記補正データ記憶部に保持されている前記光量補正データに基づいて補正して、前記駆動信号として出力する駆動信号出力部と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発光装置は、請求項1又は2に記載の発光装置において、前記発光部における前記発光素子と前記温度測定部における前記温度センサとは、同一の基板上に形成された、同一構造の有機EL素子によって構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発光装置は、請求項3に記載の発光装置において、前記温度測定部は、前記温度センサを構成する前記有機EL素子に一定電流を流したときの該有機EL素子の両端間の電圧を測定する電圧測定部を有し、該電圧測定部によって測定された電圧の値と前記有機EL素子の温度特性とに基づいて前記温度を取得することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発光装置は、請求項1乃至4の何れかに記載の発光装置において、前記制御部は、前記光センサにより検出される光量の値と該光センサの温度との関係をテーブル化して保持する温度係数保持部と、前記温度測定部で取得された温度と前記温度係数保持部に保持された値とに基づき、前記光量検出部の前記光センサによって検出された光量の値を補正する光量温度補正部と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発光装置は、請求項1乃至5の何れかに記載の発光装置において、前記発光部は、前記発光素子を有する前記画素が複数配列された発光素子アレイを有し、前記光量測定部は前記光センサを一つ以上の前記発光素子毎に対応して複数有し、前記温度測定部は、前記温度センサを、前記複数の光センサの各々に対応して複数有し、前記制御部は、前記温度測定部の前記各温度センサによって取得された温度に基づいて、前記複数の画素の各々に供給される前記駆動信号の値を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発光装置の駆動制御方法は、発光素子を有する少なくとも一つの画素が配列された発光部を有し、該発光部の前記発光素子より、供給される画像データに応じた光を出射する発光装置の駆動制御方法であって、前記発光部の前記発光素子を発光させて、光センサにより前記発光素子から出射される光の光量を検出するステップと、前記光センサに対応して設けられる温度センサにより、前記光センサの近傍の温度を取得するステップと、前記光センサによって検出された光量の値を前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正し、前記補正された光量の値に基づいて、前記画像データに対応して前記発光部に供給する駆動信号の値を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発光装置の駆動制御方法は、請求項7記載の発光装置の駆動制御方法において、前記駆動信号の値を制御するステップは、第1のタイミングで前記光センサにより検出された、前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正して、第1の光量とするステップと、前記第1のタイミングから所定時間経過した後の第2のタイミングで、前記光センサにより検出された、前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正して、第2の光量とするステップと、前記第1の光量と前記第2の光量とを比較するステップと、前記画像データに応じた階調信号を、予め保持された、前記第1の光量と前記第2の光量の差分に応じた光量補正データに基づいて補正して、前記駆動信号として出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発光装置の駆動制御方法は、請求項7又は8に記載の発光装置の駆動制御方法において、前記温度センサは、前記発光素子と同一構造の有機EL素子を有して構成され、前記温度を取得するステップは、前記温度を取得するタイミングにおいて、前記温度センサを構成する前記有機EL素子に一定電流を流すステップと、前記一定電流を流したときの前記有機EL素子の両端間の電圧を測定するステップと、前記測定された電圧の値と、前記有機EL素子の温度特性と、に基づいて、前記温度を取得するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明における発光装置は、感光体ドラムと、帯電器と、露光器と、現像器と、を有して、画像データに応じた印刷を行う画像形成装置の露光器に適用することができる。この場合、露光器は、発光素子を有する複数の画素が配列されて、前記感光体ドラムに前記画像データに応じた光を照射して露光を行なう発光素子アレイを有する発光部と、一つ以上の前記発光素子に対応して設けられて、該各発光素子から出射される光の光量を検出する複数の光センサを有する光量測定部と、前記各光センサに対して一対に設けられて、該各光センサの近傍の温度を取得する複数の温度センサを有する温度測定部と、前記光量測定部の前記各光センサによって検出された光量の値を、前記温度測定部の対応する前記各温度センサによって取得された温度に基づいて補正し、前記補正された光量の値に基づいて、前記画像データに応じて前記発光部に供給する駆動信号の値を制御する制御部と、を具備してなる。
【0020】
上記制御部は、前記光量測定部により第1のタイミングで検出された前記各発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第1の光量と、前記第1のタイミングから所定時間経過した後の第2のタイミングで、前記光量測定部により検出された前記各発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第2の光量と比較する光量比較部と、前記光量比較部による前記第1の光量と前記第2の光量の差分に応じた光量補正データを保持する補正データ記憶部と、前記画像データに応じた階調信号を前記補正データ記憶部に保持されている前記光量補正データに基づいて補正して、前記駆動信号として出力する駆動信号出力部と、を有する。
【0021】
上記発光素子アレイにおける前記各発光素子と前記温度測定部における前記各温度センサとは、例えば、同一の基板上に形成された、同一構造の有機EL素子によって構成される。
【0022】
また、上記温度測定部は、前記温度センサを構成する前記有機EL素子に一定電流を流したときの該有機EL素子の両端間の電圧を測定する電圧測定部を有し、該電圧測定部によって測定された電圧の値に基づいて前記温度を取得するものである。
【0023】
また、上記制御部は、前記光センサにより検出される光量の値と該光センサの温度との関係をテーブル化して保持する温度係数保持部と、前記温度測定部で取得された温度と前記温度係数保持部に保持された値とに基づき、前記光量検出部の前記各光センサによって検出された光量の値を補正する光量温度補正部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光素子アレイの発光素子の発光輝度補償用の光センサを備えると共に、温度センサにより前記光センサ近傍の温度を検出することで、前記光センサにより検出した光量の温度補正を行って、温度補正した検出光量に基づいて各発光素子の発光量を補正することにより、各発光素子の発光輝度のバラツキ、経時劣化や温度による発光輝度の変化を正確に補正して、各発光素子より出射される光の光量を均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
ディスプレィなどの発光画素用途として近年盛んに研究されている有機EL素子からなる発光素子は、平面基板上に画素サイズでのパターンニングによって製造されるので、各発光素子へのワイヤボンディングが不要とすることができる。しかしながら、有機EL素子においても、各発光素子間の発光特性のバラツキがある。また、発光特性の経時変化や温度特性があり、それにより発光特性のバラツキが増大することがある。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置(印刷装置)の構成の一例を示す図である。同図に示すように、この画像形成装置は、感光体ドラム10と、画素基板12とレンズアレイ14とから成る有機ELヘッド(露光部)16と、帯電ローラ18と、イレーサ光源感光体20と、クリーニング部材22と、現像ローラ24を含む現像器26と、転写ローラ28と、定着ローラ30と、搬送ベルト32と、を具備している。
【0028】
なお、感光体ドラム10は、例えば負帯電型OPC感光体(有機感光体)であり、この場合、帯電ローラ18は負帯電器とされている。また、現像器26は負帯電トナーで現像を行う現像器である。また、画素基板12は、詳しくは後述するが、複数の有機EL素子が一列にアレイ状に配列された発光素子アレイ(発光部)を有して構成されている。
【0029】
ところで、図1に示す画像形成装置では、おおまかには以下のような工程により印刷が行われる。まず、帯電ローラ18によって、感光体ドラム10が一様に帯電される。続いて、画素基板12上の複数の発光素子によって、レンズアレイ14を介して感光体ドラム10に対して光照射が為され、感光体ドラム10上には静電潜像が形成される。その後、現像器26によって、静電潜像にトナーが付着される。そして、転写ローラ28によって、静電潜像に付着しているトナーが印刷用紙34に転写される。以下、このような印刷工程を詳細に説明する。
【0030】
まず、感光体ドラム10は負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体であり、帯電用電源(不図示)から供給されるマイナス高電圧を、負帯電器である帯電ローラ18によって印加される。これにより、感光体ドラム10における周表面は一様に負帯電され、電位的に初期化される(初期化帯電状態となる)。
【0031】
そして、周表面が初期化帯電状態となった感光体ドラム10には、画素基板12上の発光素子から光が照射されて、印字情報に従った光書き込み(露光)が行われる。これにより、初期化帯電によるマイナス高電位部と、露光による例えば“−50V”のマイナス低電位部とから成る静電潜像が、感光体ドラム10の周表面上に形成される。
【0032】
次いで、現像器26内に収容されている弱いマイナス電位に帯電したトナーが、現像ローラ24によって、現像ローラ24と感光体ドラム10との対向部に回転搬送される。このとき、現像ローラ24は、不図示の電源から、例えば“−250V”の現像バイアスを印加される。したがって、“−250V”の現像バイアスを印加された現像ローラ24と、感光体ドラム10における静電潜像の“−50V”のマイナス低電位部との間に、“−200V”の電位差が形成される。
【0033】
この電位差により、現像ローラ24に対して相対的にプラス極性の電位となった静電潜像におけるマイナス低電位部には、マイナス極性に帯電しているトナーが転移してトナー像が形成される。このトナー像は、感光体ドラム10の回転によって、感光体ドラム10と転写ローラ28とが対向している転写部へと搬送される。
【0034】
なお、上述したようにして形成されたトナー像におけるトナー付着量(現像された画像の濃度)は、画素基板12の発光素子による感光体ドラム10への露光量に応じて生じる感光体ドラム10の周表面上における電位差によって決定される。
【0035】
次いで、上述したようにトナー像が転写部へ搬送されると、搬送ベルト32によって、印刷用紙34が転写部へ搬送される。そして、転写部においては、トナー像が印刷用紙34上に、転写ローラ28によって転写される。このようにしてトナー像を転写された印刷用紙34は更に下流に搬送され、トナー像が定着ローラ30によって熱定着された後、印刷用紙34は当該画像形成装置の外部へ排出される。
【0036】
また、トナー像が印刷用紙34上に転写された後、感光体ドラム10は、クリーニング部材22により残留トナーが除去され、更に、イレーサ光源感光体20によって一様に0Vに除電されて、帯電ローラ18への帯電に備えられる。
【0037】
なお、前記有機ELヘッド16における前記画素基板12上には、図1に示す前記感光体ドラム10への露光走査の主走査方向(前記感光体ドラム10の幅方向、つまり前記印刷用紙34の幅方向)に、多数の発光素子を一列に配設した有機EL素子アレイ(発光素子アレイ:発光部)が設けられている。この有機EL素子アレイは、当該画像形成装置が、例えばA4サイズの印刷用紙を縦方向に用いてその幅一杯に印字密度1200dpi(ドット/インチ)で印字可能な画像形成装置の場合であれば、およそ14000個の発光素子を備えている。これらの個々の発光素子には、ホスト機器(不図示)から出力される印字情報に従った信号が印加される。即ち、個々の発光素子は、選択的に発光制御される。
【0038】
以下、発光素子である有機EL素子の基本的な構造について、図2を参照して説明する。図2は、画素基板12上の有機EL素子の基本構造を示す画素基板12の短手方向の断面図である。
【0039】
発光素子としての有機EL素子36は、図2に示すようにガラス等の画素基板12上に形成され、ガラス等の対向基板38によって挟まれている。画素基板12及び対向基板38は、周縁を図示しないシール材で封止されている。具体的には、有機EL素子36として、画素基板12上に、画素電極40、正孔輸送層(HTL)42、発光層(EML)44、電子輸送層(ETL)46、及び対向電極48がこの順にて形成され、対向基板38及び図示しないシール材によって封止されている。
【0040】
即ち、有機EL素子36の発光材料は水分の影響を受けやすく、水分を含む外気に直接触れることの無いよう、封止処理がなされている。
【0041】
ここで有機EL素子36は、発光層44の光hνを画素基板12側から出射するボトムエミッション構造とする。
【0042】
また画素電極40は、アノードとして機能し、ITO等の透明導電性酸化金属層を含む透明構造となっている。
【0043】
対向電極48は、カソードとして機能するものであり、純粋アルミニウムの熱伝導率が240w/m・kと非常に高い値であることを鑑みて、例えばアルミニウム系合金(AlNdTi)等の材料により形成される。また、下層側に低仕事関数の電子注入層と、上層側に光反射性のアルミニウム等の高仕事関数の金属層との積層反射構造であっても良い。この対向電極48は、複数の有機EL素子36で共通する単一電極であることが好ましい。
【0044】
なお、逆に、画素電極40をカソードとし、対向電極48をアノードとする場合には、画素電極40に接している担体輸送層は電子輸送性の層となり、対向電極48に接している担体輸送層は正孔輸送性の層となる。
【0045】
発光層44は、HTL42から輸送された正孔とETL46から輸送された電子を再結合して発光する有機材料を含んでいる。そして、有機EL素子36の担体輸送層は、HTL42、発光層44、ETL46の三層構造に限らず、例えば、正孔輸送層及び電子輸送性発光層の二層構造でも良く、正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでも良く、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でも良く、また、間にその他の担体輸送層が介在する等、特に制限はない。HTL42、発光層44、ETL46のような担体輸送層をまとめてEL層50と呼称する。
【0046】
そして、前記画素電極40(アノード)と前記対向電極48(カソード)との間に、所定の電圧が掛けられることで、前記画素電極40から正孔が、前記対向電極48から電子が、前記発光層44に注入され、前記発光層44にて正孔と電子とが再結合して発光する。即ち、陰極から陽極のエネルギーギャップが発光層44の蛍光、もしくは燐光に変換される。この発光によって生じた光hνは、透明な画素電極40及び画素基板12を透過して完全拡散放射する。
【0047】
また、有機EL素子36の形状は、画素基板12上に画素電極40をアレイ状(印字密度)に配置し、有機EL素子となるEL層50を構築し、上部より対向電極48にてEL層50をはさみこむ構造となっている。
【0048】
上述したように、電子写真方式の画像形成装置においては、感光体ドラム10に対して有機ELヘッド16が、印字情報に従って光書き込みを行うが、数ミリの距離を隔てた感光体ドラム10上に小径の光スポットを形成し、各ドットを解像する光ビームを作ることは困難である。そこで、本一実施形態においては、図3(A)及び(B)に示すように、従来からの露光ヘッドやスキャナで多用されるロッドレンズアレイと有機EL発光体とを組み合わせることにより光スポットを実現する。即ち、有機EL素子36からの拡散光は、該有機EL素子36を構成した画素基板12とレンズアレイ14とから成る有機ELヘッド16によって、該有機ELヘッド16からミリオーダーの距離を隔てた感光体ドラム10上に小径の光スポットを形成し、各ドットを解像する光ビームを作る。
【0049】
以下、前記有機ELヘッド16について、図3(A)及び(B)を参照して説明する。図3(A)は、前記有機ELヘッド16の外観を示す図であり、図3(B)は、前記有機ELヘッド16の側面断面図である。なお、上述したように、本実施形態において有機EL素子36はボトムエミッション構造に設定されている。
【0050】
有機ELヘッド16のケース部52内には、前記感光体ドラム10への露光走査の主走査方向(前記感光体ドラム10の幅方向つまり前記印刷用紙34の幅方向)に、複数の有機EL素子36が一列に配設された有機EL素子アレイ(図示せず)を形成している。
【0051】
なお、前記有機EL素子36は、図3(A)に示すように制御ケーブル54によって、詳細は後述するようなヘッドコントローラ(図3では不図示)と電気的に接続されている。ここで、前記制御ケーブル54と、前記有機EL素子36との接続方法に関しては、有機EL素子36を駆動させることができる接続方法であればどのような接続方法であってもよい。
【0052】
有機ELヘッド16のケース部52は、図3(B)に示すように、前面ケース56と背面ケース58とからなる。前記画素基板12は、例えば接着樹脂(不図示)によって前記前面ケース56に接着されている。そして、前記前面ケース56には、背面ケース58が嵌め込まれている。
【0053】
ここで、前記画素基板12のうち前記接着樹脂(不図示)が設けられている面の逆側の面であって、前記有機EL素子36が設けられていない箇所には、図3(B)に示すように前記有機EL素子36を駆動する為のドライバIC60が、前記画素電極40及び前記対向電極48に電気的に接続されて設けられている。
【0054】
そして、前記ドライバIC60には、前記ヘッドコントローラ(図3では不図示)から後述するようなデータ信号及びタイミング信号が入力され、前記ドライバIC60は、それらの信号に基づいて前記画素電極40及び前記対向電極48の制御を行っている。
【0055】
なお、本一実施形態においては、画像形成装置の構造上、前記有機ELヘッド16は一個のデバイス装置となる為、組み立て時や交換時には接続配線に力が加わる可能性がある。従って、前記画素基板12と前記ヘッドコントローラとの接続配線のケーブルに関しては、前記ケース部52の内部と外部とで別ケーブルとして、前記ケース部52の外部のケーブルをより強度が高く作業性の優れたケーブルとする為に、図3(B)に示すように前記背面ケース58に2個の中継コネクタ62が設けられている。中継コネクタ62は、それぞれ配線64に接続され、配線64は、一方が、アノード電圧を印加するための後述するような信号群のため、及び後述するような光センサ回路及び温度センサ回路(何れも図3には不図示)からの検出信号を前記ヘッドコントローラに供給するための配線であり、他方が、カソード電圧を印加するために対向電極48に供給される信号のための配線である。
【0056】
前記前面ケース56には凸部66が設けられ、該凸部66には、開口部が形成され、各有機EL素子36と対向するようにロッドレンズアレイ14がこの開口部に嵌め込まれ、開口部とロッドレンズアレイ14との隙間は接着剤で封止されている。このため、前面ケース56は可視光に対して不透明であっても、前記有機EL素子36が発する光が凸部66内に形成された密閉空間68を介して前記ロッドレンズアレイ14に入射することになる。
【0057】
なお、図3(B)に示す有機EL素子36は、画素基板12がロッドレンズアレイ14に対向するように面しているボトムエミッション構造である。
【0058】
また、前記凸部66は、有機EL素子36からロッドレンズアレイ14までの光路長をある程度の長さに確保するので、ロッドレンズアレイ14と感光体ドラム10との距離を設定しやすくなるという効果がある。
【0059】
図4は、本画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図であり、図5は、図4中のヘッド駆動部のより詳しい構成を示す図である。
本一実施形態に係る画像形成装置全体を制御する制御部であるCPU70は、ホスト機器(不図示)から出力される印字情報であるビデオ信号より画像処理制御回路72が検出したドット位置情報に従って、ライン先頭データを読み込み、前記印刷用紙34の搬送速度に合わせる同期制御を行って、水平制御信号/HSYNC及び垂直制御信号/VSYNC信号を生成し、ヘッド駆動部74に送出する。また、画像処理制御回路72は、それら制御信号に同期させながら画像データをヘッド駆動部74に送出する。更に、特に図示はしていないが、CPU70は、用紙サイズ等のプリンタ制御信号もヘッド駆動部74に送出する。
【0060】
ヘッド駆動部74は、ヘッドコントローラ76(制御手段)と、前記有機ELヘッド16の画素基板12上に配された前記ドライバIC60及び有機ELパネル78と、からなる。ヘッドコントローラ76は、前記画像データと水平制御信号/HSYNC及び垂直制御信号/VSYNC、プリンタ制御信号を受信して、それら制御信号に合わせて、前記ドライバIC60を駆動する。
【0061】
ドライバIC60は、有機ELパネル78の各画素のオン,オフ及び画像データに応じた階調信号に基づく電流値を有する駆動電流を生成するデータドライバ80と、各画素を選択するセレクトドライバ82と、前記光センサ回路及び温度センサ回路を駆動して光量及び温度を検出するセンサドライバ84と、からなる。
【0062】
有機ELパネル78は、前記複数の有機EL素子36が一列に配設された有機EL素子アレイと、後述するような駆動回路,光センサ回路,温度センサ回路及びそれらの間の配線等の回路部と、からなる。
【0063】
図6は、前記有機ELパネル78の回路構成を示す図である。前記有機EL素子36を駆動する駆動回路は、アクティブ方式/パッシブ方式、定電圧書込み/定電流書込み等を問わず任意の方式で実現することができる。
【0064】
ここでは一例として、アクティブマトリクス駆動方式を説明する。
図6は、2つの薄膜トランジスタ(以下、TFTと略記する。)を用いた定電圧書込みのアクティブ駆動方式を採用した画素の駆動回路の例を示している。この駆動回路は、有機EL素子36の製造プロセスで同時に製造された、駆動TFT86と選択TFT88の2つのTFTと、その間の保持キャパシタ90とからなり、駆動TFT86に有機EL素子36が直列につながれた構成となっている。
【0065】
このような構成において、セレクトドライバ82から供給される選択信号Vselがハイレベルとされて選択TFT88をONにすると、データドライバ80から供給されるデータ電圧Vdataが保持キャパシタ90に書き込まれ、同時に駆動TFT86をONにする。そのとき、データ電圧Vdataに応じて選択TFT88のゲート電圧Vgs(Vgs=Vdata−Vsource)が決まるので、駆動TFT86の導電率が定まる。そして、その導電率に応じた電流が、電源線から有機EL素子36に流れる。
【0066】
なお、図6では、部分的に抜き出した3画素分しか表記していないが、データドライバ80は、一例として、1つのデータ電圧Vdataで8個の有機EL素子36を駆動する。図5の例では、有機ELパネル78が8個の画素群を有し、各画素群は6個の画素を有して、データ電圧Vdata1〜Vdata6が各画素群の各画素に印加されて、各画素に画像データに応じた階調信号電圧を供給するようにしている。セレクトドライバ82から有機ELパネル78には選択信号Vsel1〜Vscan8が与えられ、データ電圧Vdata1〜Vdata6が印加される画素群の各々に印加されている。従って、図5の例では、有機ELパネル78は、水平方向に、6*8=48個の画素が形成されている。実際には、上述したように、画像形成装置は例えば約14000個の発光素子を有しており、従って、データ電圧、選択信号の数はより多数となることは言うまでもない。
【0067】
図7は、印刷時のタイミングチャートを示す図である。
即ち、印刷時の露光工程においては、まず、データドライバ80は、ヘッドコントローラ76による制御に従って、水平制御信号/HSYNCがアクティブ〜アクティブである期間(1DotLineTime)、ヘッドコントローラ76から供給される階調信号に応じて、各画素の階調信号電圧であるデータ電圧Vdata1〜Vdata6を生成して印加する。このとき、電源線に電源が供給されるよう制御を行う。また、前記データ電圧Vdata1〜Vdata6を供給すると同時に、ヘッドコントローラ76による制御に従ってセレクトドライバ82から、順次ハイレベル(以下、Hレベルとする)となる選択信号Vsel1〜Vscan8が印加される。これにより、各画素の選択TFT88がオン動作して、駆動TFT86のゲート端子に、各データ電圧Vdataに基づくゲート電圧が印加されて、その駆動TFT86が当該ゲート電圧に応じた導通状態でオン動作する。これにより、電源線を介して画素群の中の選択信号が供給されている画素群の駆動TFT86及び有機EL素子36に、データ電圧Vdataに基づく電流値を有する発光駆動電流が流れ、有機EL素子36が所定の発光輝度で発光動作する(Vsel選択期間)。
【0068】
このとき、階調信号電圧であるデータ電圧Vdataは、選択TFT88を介して、保持キャパシタ90に供給され、各保持キャパシタ90は、その階調信号電圧のレベルに応じた値の電荷量に充電される。
【0069】
次に、上述のVsel選択期間を経過して、セレクトドライバ82が当該選択信号Vselをローレベル(以下、Lレベル)とすると、選択TFT88がオフするが、保持キャパシタ90には階調信号電圧に応じた電荷量が保持されているので、駆動TFT86は、その保持キャパシタ90に保持されている電荷量に応じた導通状態となり、発光動作を継続する(Vsel非選択期間)。
【0070】
以下、ライン数分の水平制御信号/HSYNCがアクティブ〜アクティブ期間の時間、発光駆動を行うことになる。
【0071】
次に、光センサ回路を説明する。
有機EL素子36のような発光素子における発光輝度は、当該有機EL素子36の発光層44を挟んだ電極間電流の大きさに比例して増加する。従って、有機EL素子36を光源として利用した発光装置を具備する画像形成装置で高速印刷を行う場合、当該高速印刷に要する光量を得る為には相当量のエネルギー(輝度にして数万cd/m)を要する。そして、このため、有機EL素子36に流す電流の電流値は比較的大きい値に設定されるため、この電流によるジュール熱が発生する。従って、結果として有機EL素子36の温度は上昇する。
【0072】
本実施形態に係る画像形成装置は、発光量を光センサ回路で検出し、その検出結果に基づいて、データ電圧Vdataを補正することによって、発光輝度の均一性を高めようとするものである。即ち、光フィードバックによる定輝度駆動を行うものである。そして、このような光フィードバックを行う構成においては、光センサは発光素子の近傍に設けられるために光センサの温度も発光素子の温度上昇に伴って上昇する。本実施形態においては、この光センサ回路にも温度変化による特性の変化があることに着目し、光フィードバックによる定輝度駆動に加えて、更に、光センサ回路の温度を取得して光センサ回路の温度変化による特性の変化を補償する制御を行うものであり、これによって、発光輝度の均一性をより高めることができるものである。
【0073】
光センサ回路は、図6に示すように、複数(この例では3個)の画素に対して1回路が設けられているもので、光センサTFT92、充電TFT94及び読出TFT96の3つのTFTと、暗電流保持キャパシタ98とから構成される。
【0074】
図8は、光量測定時のタイミングチャートを示す図である。
前記センサドライバ84は、ヘッドコントローラ76からのタイミング信号によりSCG信号及びリフレッシュ信号RFSH信号を生成する。SCG信号は、充電TFT94を制御するために該充電TFT94のゲートに供給され、リフレッシュ信号RFSHは、光センサTFT92のゲートに供給される。
【0075】
即ち、センサドライバ84は、SCG信号をアサートすることで、充電TFT94がオン動作する。この充電TFT94のオン動作により読出TFT96もオンして、暗電流保持キャパシタ98を充電する。但し、このSCG信号アサート時に、センサドライバ84は前記リフレッシュ信号RFSHも同時にアサートして、暗電流保持キャパシタ98を放電する。
【0076】
その後、センサドライバ84は、リフレッシュ信号RFSHをネゲートして光センサTFT92をオフ状態にする。SCG信号は、リフレッシュ信号RFSHよりも十分に長くアサートして暗電流保持キャパシタ98を充電することで、充電電荷を毎回同じ条件にする。この状態においては、光センサTFT92はオフ状態にあり、暗電流保持キャパシタ98に充電された電荷に応じて読出TFT96がオンして、電流Isが観測される。
【0077】
この状態において光センサTFT92のゲート部分に光が照射されると、その光量に応じて光センサTFT92のドレイン・ソース間チャネルが形成されて電流が流れ出し、暗電流保持キャパシタ98が放電を開始し、これにより、読出TFT96のドレイン電流Isが減少する。
従って、この電流Isの変化ΔIsを観測すれば、画素の発光量が得られる。
【0078】
そこで、センサドライバ84は、このような電流Isを電流・電圧変換した光量Soutを、A/D変換して、ヘッドコントローラ76へ光センサ出力として供給する。
【0079】
次に、温度センサ回路について説明する。
図9は、前記有機ELヘッド16の平面構造を示す図である。
前記光センサ回路は、複数画素に対して1回路という規模で形成されている。図6では、部分的に抜き出した3画素分しか表記していないが、図9に示すように、光センサTFT92は、発光を捉えようとする画素の並んでいる主走査方向の幅程度のチャネル幅で形成し、画素に対して副走査方向直下に配置することが効率的であり、望ましい。
【0080】
このような構造とした場合、有機EL素子36にて発生する熱は、光センサTFT92に影響を与えてしまうことになる。即ち、有機EL素子36の単体は微小であるため、単独素子による発熱量では、光センサTFT92に与える影響は少ないが、本構成のように、ある領域の複数の有機EL素子36がほぼ同時刻に発光を繰り返すと、熱の影響が発生する。
【0081】
光センサTFT92は温度特性を持つため、この発生した熱は光センサTFT92の受光感度に誤差を生じさせてしまう。例えば、光センサTFT92をアモルファスSiとした場合、温度係数は−0.2〜−0.3%/℃程度となり10℃の変化で2〜3%の誤差が生じる。
【0082】
そこで、この光センサTFT92直近の温度を測定し、その測定温度をもとに、光センサTFT92より得られた発光量を温度係数により補正すれば、発光輝度の均一性を高めることができる。
【0083】
そのための温度センサ回路として、本実施形態に係る画像形成装置では、図6に示すような温度測定EL100を設けている。この温度測定EL100は、図9に示すように、前記光センサTFT92と一対にして、光センサTFT92直近に配置することが望ましい。この温度測定EL100は、発光体を構成する有機EL素子36と同様のプロセスで構築することができるため、即ち、温度測定EL100を有機EL素子36の形成と同時に形成できるため、製造工程が増大するようなことはない。
【0084】
図10は、前記共役系ポリマを用いた高分子有機EL材料を定電流駆動したときの温度特性を測定した結果を示す図である。前記テスト用基板であるガラスの温度を30℃〜65℃と変化させたとき、各輝度2,500、5,000、7,500、10,000cd/mにて定電流駆動したときの両端間の電圧(測定電圧)の基板温度に対する変化を示している。各輝度においてほぼ同一の温度特性(−0.07V/℃)を持つため、発光体温度の測定は低輝度で行うことが可能である。このため、温度センサ回路の温度測定EL100の発光が印刷に影響しないようにすることができる。
【0085】
このように、有機EL素子は一定電流を流しているときの素子両端間の電圧が温度に応じて変化する、すなわち、抵抗成分が温度に応じて変化し、温度が上昇すると抵抗成分が減少する特性を有するので、定電流駆動したときの素子両端間の電圧を測定すれば、図10に示したような温度特性に基づいて、当該有機EL素子の周辺温度を推測することができる。
【0086】
従って、前記温度測定EL100に定電流Itを流したときの温度測定EL100の両端間の電圧(測定電圧)Vtを測定することにより、温度測定EL100の周辺温度が得られる。そして、この得られた温度をもとに、光センサTFT92より得られた発光量を温度係数により補正すれば、発光輝度の均一性をより高めることができる。
【0087】
このような周辺温度の検出を行うために、温度センサ回路の温度測定EL100を定電流駆動する定電流駆動手段である前記センサドライバ84は、図8に示すように、例えば光量Soutの検出と概ね同じタイミングで、前記温度測定EL100へ定電流Itを印加するTEMP信号を供給すると共に、温度測定EL100の両端間の電圧Vtを検出し、A/D変換して、ヘッドコントローラ76へ温度センサ出力として供給する。なお、温度測定EL100へのTEMP信号の供給は、上記のように、間欠的に、電圧Vtの検出に要する、極短い時間だけ行われ、温度測定EL100このときにのみ発光するものであり、且つ、発光するときの発光輝度も比較的低く設定されているため、温度測定EL100自体の特性劣化の進行を抑えることができる。
【0088】
図11は、前記ヘッドコントローラ76のブロック構成図である。
ヘッドコントローラ76は、光量測定部102、温度測定部104、光量温度補正部106、光量比較部108、補正データ記憶部110、データドライバデータ送出部112、セレクトドライバタイミング発生部114、センサドライバタイミング発生部116、アービトレーション制御部118、及びセンサ選択部120,122からなる。
【0089】
ここで、センサ選択部120,122は、本画像形成装置全体を制御する制御部である前記CPU70から前記プリンタ制御信号として与えられるセンサ選択に従って、センサドライバ84から供給される各光センサ出力及び各温度センサ出力を選択的に次段の光量測定部102及び温度測定部104に入力する。
【0090】
光量測定部102は、前記光センサ出力を光量データ化する。また、温度測定部104は、前記温度センサ出力より温度検出を行う温度測定手段である。光量温度補正部106は、前記光量測定部102により得られた光量データを、前記温度測定部104により得られた検出温度に基づき温度補正する光量補正手段である。
【0091】
光量比較部108は、前記光量温度補正部106により温度補正された最新の光量データと不図示の一時記憶メモリに保持している前回の光量データとの比較を行う。すなわち、光量測定部102による光量データの検出は、前回と今回において、有機EL素子36の特性が変化していない場合に発光輝度が同じとなる電圧を印加して行われるものであって、光量比較部108は、こうして検出された前回と今回の光量データの比較を行うものである。ここで、前回と今回の光量データに差がないときは、前回から今回の間で有機EL素子36の特性の劣化が進行していないことを表し、前回と今回の光量データに差があるときは、前回から今回の間で有機EL素子36の特性の劣化が進行したことを表している。補正データ記憶部110は、各画素における画像データの階調値とデータ電圧Vdataの光量補正データとの対応テーブルを記憶しており、初期においては、システム初期での値が予め格納されている。なお、この補正データ記憶部110は、電源を遮断してもデータが保持され、システム内での書き換えが可能なフラッシュROM等で構成されるものとする。而して、この補正データ記憶部110に保持された補正データは、光量比較部108による光量データの比較結果に変化がある度に、すなわち、有機EL素子36の特性の劣化が進行していることが検出されたときに、光量比較部108によって更新される。なお、光量比較部108における光量データの比較結果に変化があるか否かの判定において、所定の閾値を設けて、前回と今回の光量データに閾値を越える差があるときに変化があると判定するようにしてもよい。
【0092】
データドライバデータ送出部112は、画像データに応じた階調信号を、前記補正データ記憶部110に保持されている補正データによって補正して、データ電圧Vdataとして各データドライバ80に送出する。これにより、温度変化によらず一定光量となるよう制御することができる。
【0093】
なおこの場合、前記特許文献1に開示されているように、発光体毎の光量補正データを予め求めて記憶しておくと共に、感光体ドラム10の位置毎の感度補正データも予め求めて記憶しておき、それら記憶した補正データを基に、前記補正データ記憶部110に保持されている補正データを更に補正することで、個々の発光体つまり有機EL素子36毎のデータ電圧Vdataを決定することができる。従って、前記光センサTFT92、温度測定EL100を、各有機EL素子36に対応させて設けずに、複数個に対応させて設けても問題とはならない。
【0094】
セレクトドライバタイミング発生部114は、各セレクトドライバ82で生成される各選択信号Vselのタイミング信号を生成して、各セレクトドライバ82に送出する。
【0095】
センサドライバタイミング発生部116は、各センサドライバ84で生成される各SCG信号、リフレッシュ信号RFSHとTEMP信号のタイミングを設定するタイミング信号を生成して、各センサドライバ84に送出する。
【0096】
アービトレーション制御部118は、前記CPU70からの水平制御信号/HSYNC、垂直制御信号/VSYNC、及び各プリンタ制御信号を受信して、前記センサドライバタイミング発生部116、前記セレクトドライバタイミング発生部114及び前記データドライバデータ送出部112全体を監視・制御してタイミング調停を行う。
【0097】
図12は、光量補正処理の動作フローチャートを示す図である。印刷時、実際の露光工程を実施する前に、まず、この光量補正処理を実施する。
【0098】
即ち、CPU70は、まず、現在の動作モードが補正動作モードに設定されているか否かを判別する(ステップS10)。この補正動作モードは、例えば、使用者がボタン操作やメニュー操作等により手動設定するものであっても良いし、連続印刷時間や連続印刷枚数等の閾値を設けておき、その閾値を越えたら自動的に補正動作モードに移行するような自動設定としても良い。
【0099】
補正動作モードに設定されていなければ、本光量補正処理を終了して、通常の露光工程を進めていくことになる。なお、この場合には、初期値あるいは前回の補正動作モード時に書き替えられた補正データ記憶部110の補正データによって、画像データに対応するデータ電圧Vdataが補正されて用いられることとなる。
【0100】
これに対して、補正動作モードに設定されている場合には、不図示の内部メモリ又はレジスタにセットした指定ドットのアドレスに従って、指定ドットの有機EL素子36を有する画素に輝度測定用のデータ(測定用Vdata)を印加して、発光させる(ステップS12)。この場合、指定ドットとしては、例えば、有機EL素子アレイの一端側の有機EL素子36から順に指定する。即ち、輝度測定用のデータとして、予め設定された階調値、例えば上述したような低輝度の画像データをヘッドコントローラ76のデータドライバデータ送出部112に送り、該データドライバデータ送出部112より、補正データ記憶部110に保持されている補正データによって補正したデータ電圧Vdata(測定用Vdata)をデータドライバ80に供給して、指定したドットに対応する有機EL素子36を発光させる。
【0101】
そして、センサドライバ84により、発光させた有機EL素子36に対応する光センサ回路を選択して(ステップS14)、その光センサ回路のSCG信号及びリフレッシュ信号RFSHをアサートする(ステップS16)。その後、図8に示すように、暗電流保持キャパシタ98が放電するタイミングを待って(ステップS18)、センサ選択を行うことでヘッドコントローラ76のセンサ選択部120,122を切り替えて、光量測定部102により指定ドットの有機EL素子36に対応する光センサTFT92の光量Soutを測定する(ステップS20)。
【0102】
次に、センサドライバ84により、指定ドットの有機EL素子36に対応する温度測定EL100に、指定の定電流Itを流し(ステップS22)、温度測定部104により、そのときの印加電圧TEMPの電圧Vtを測定することで、温度測定EL100周辺の温度を測定する(ステップS24)。
【0103】
そして、光量温度補正部106により、この温度測定部104で取得した温度をもとに、前記光量測定部102で取得した発光量を温度係数により補正する(ステップS26)。ここで、光量温度補正部106により測定された光量Soutは、温度に対してリニアな関係ではなく係数を持つため、温度係数を予め測定データより関連付けしたテーブル化しておき、該温度係数のテーブルを用いて補正する。
【0104】
その後、光量比較部108にて、こうして得られた測定データを前回測定データと比較する(ステップS28)。ここで、変化なければ、すなわち、有機EL素子36の特性の劣化が前回から今回で進行していないことが検出されたときには、補正データの書き換えを行うことなく、次ドットの測定に備え、アドレスをセットする(ステップS30)。
【0105】
これに対して、前回測定データと比較して変化がある場合、すなわち、有機EL素子36の特性の劣化が前回から今回で進行しることが検出されたときには、補正データ記憶部110の補正データを新データに書き換える(ステップS32)。露光工程においては、この書き替えられた補正データにより、実際に印刷する画像データは、その基準値を補正され、補正印字データがデータ電圧Vdataとしてデータドライバデータ送出部112よりデータドライバ80に送られることとなる。そして、次ドットの測定に備え、アドレスをセットする(ステップS30)。
【0106】
そして、未だ処理していないドットがあるか否かを確認し(ステップS34)、未だ処理していないドットがある場合には、上記ステップS12に戻る。
【0107】
而して、全てのドットに対して処理が終了したならば、本光量補正処理を終了して、通常の露光工程を進めていくことになる。なお、この場合には、上記ステップS32で書き替えられた補正データ記憶部110の補正データによって、画像データに対応するデータ電圧Vdataが補正されて用いられることとなる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態によれば、有機EL素子アレイの発光素子(有機EL素子36)の発光輝度補償用の光センサTFT92を備えると共に、一定電流を流しているときの素子両端間の電圧が温度に応じて変化するという有機EL素子の特性を利用して、前記発光素子に用いている有機EL素子36と同様の構造の有機EL素子である温度測定EL100を温度センサとして用いて、前記光センサTFT92直近の温度を取得することで、前記光センサTFT92の温度補償を行って、発光素子としての有機EL素子36の発光量を補正することにより、発光素子の発光輝度の固体バラツキ、経時劣化や温度による発光輝度の変化を補正して、感光体ドラム10上に照射される光量を均一化することができる。従って、品質の高い画像を形成することのできる露光装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【0109】
また、温度測定EL100は、発光素子としての有機EL素子36の形成と同時に形成できるため、製造工程を増加させることなく、温度測定が可能となる。
【0110】
更に、温度と光量との関係を予め測定してテーブル化した温度係数により、温度測定EL100で測定した温度に基づき光センサTFT92で検出した光量の値を補正することができるので、複雑な演算を行うことなく、容易に補正を行うことができる。
【0111】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0112】
例えば、光センサTFT92及び温度測定EL100を複数個の発光素子(有機EL素子36)に対して1つという規模で形成しているが、それらを発光素子と一対一に設けても良いことは勿論である。
【0113】
また、有機EL素子アレイは画素基板12上に発光素子としての有機EL素子36を一列に配列するものとして説明したが、複数列であっても良く、又その場合、直線状に整列させても良いし、千鳥配列等、配列位置をずらすようにしても良い。
【0114】
また、上記実施形態においては、本発明を画像形成装置の有機ELヘッド(露光部)に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、発光素子を有する画素が複数配列されてなる発光装置や、発光素子を有する複数の画素が2次元配列されてなる表示パネルを備える表示装置に適用してもよい。この場合、温度センサとして用いる温度測定EL素子の発光が外部から視認されないように、例えば温度測定EL素子の周囲を遮光幕で覆うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【図2】画素基板上の有機EL素子の基本構造を示す画素基板の短手方向の断面図である。
【図3】(A)は有機ELヘッドの外観を示す図であり、(B)は有機ELヘッドの側面断面図である。
【図4】画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】ヘッド駆動部のより詳しい構成を示す図である。
【図6】有機ELパネルの回路構成を示す図である。
【図7】印刷時のタイミングチャートを示す図である。
【図8】光量測定時のタイミングチャートを示す図である。
【図9】有機ELヘッドの平面構造を示す図である。
【図10】有機EL材料を定電流駆動したときの温度特性を測定した結果を示す図である。
【図11】ヘッドコントローラのブロック構成図である。
【図12】光量補正処理の動作フローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0116】
10…感光体ドラム
12…画素基板
14…レンズアレイ
16…有機ELヘッド
36…有機EL素子
38…対向基板
40…画素電極
42…正孔輸送層(HTL)
44…発光層
46…電子輸送層(ETL)
48…対向電極
50…EL層
60…ドライバIC
70…CPU
72…画像処理制御回路
74…ヘッド駆動部
76…ヘッドコントローラ
78…有機ELパネル
80…データドライバ
82…セレクトドライバ
84…センサドライバ
86…駆動TFT
88…選択TFT
90…保持キャパシタ
92…光センサTFT
94…充電TFT
96…読出TFT
98…暗電流保持キャパシタ
100…温度測定EL
102…光量測定部
104…温度測定部
106…光量温度補正部
108…光量比較部
110…補正データ記憶部
112…データドライバデータ送出部
114…セレクトドライバタイミング発生部
116…センサドライバタイミング発生部
118…アービトレーション制御部
120,122…センサ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する画素を少なくとも一つ有し、供給される画像データに応じた光を出射する発光部と、
前記発光素子に対応して設けられ、該発光素子から出射される光の光量を検出する少なくとも一つの光センサを有する光量測定部と、
前記光センサに対応して設けられ、該光センサの近傍の温度を取得する少なくとも一つの温度センサを有する温度測定部と、
前記光量測定部の前記光センサによって検出された光量の値を、該光センサの温度特性と前記温度測定部の対応する前記温度センサによって取得された温度とに基づいて補正し、前記補正された光量の値に基づいて、前記画像データに対応して前記発光部に供給する駆動信号の値を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光量測定部により第1のタイミングで検出された前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第1の光量と、前記第1のタイミングから所定時間経過した後の第2のタイミングで、前記光量測定部により検出された前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度測定部によって取得された温度に基づいて補正した第2の光量と比較する光量比較部と、
前記光量比較部による前記第1の光量と前記第2の光量の差分に応じた光量補正データを保持する補正データ記憶部と、
前記画像データに応じた階調信号を、前記補正データ記憶部に保持されている前記光量補正データに基づいて補正して、前記駆動信号として出力する駆動信号出力部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光部における前記発光素子と前記温度測定部における前記温度センサとは、同一の基板上に形成された、同一構造の有機EL素子によって構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記温度測定部は、前記温度センサを構成する前記有機EL素子に一定電流を流したときの該有機EL素子の両端間の電圧を測定する電圧測定部を有し、該電圧測定部によって測定された電圧の値と前記有機EL素子の温度特性とに基づいて前記温度を取得することを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光センサにより検出される光量の値と該光センサの温度との関係をテーブル化して保持する温度係数保持部と、前記温度測定部で取得された温度と前記温度係数保持部に保持された値とに基づき、前記光量検出部の前記光センサによって検出された光量の値を補正する光量温度補正部と、を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光部は、前記発光素子を有する前記画素が複数配列された発光素子アレイを有し、
前記光量測定部は前記光センサを一つ以上の前記発光素子毎に対応して複数有し、
前記温度測定部は、前記温度センサを、前記複数の光センサの各々に対応して複数有し、
前記制御部は、前記温度測定部の前記各温度センサによって取得された温度に基づいて、前記複数の画素の各々に供給される前記駆動信号の値を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】
発光素子を有する少なくとも一つの画素が配列された発光部を有し、該発光部の前記発光素子より、供給される画像データに応じた光を出射する発光装置の駆動制御方法であって、
前記発光部の前記発光素子を発光させて、光センサにより前記発光素子から出射される光の光量を検出するステップと、
前記光センサに対応して設けられる温度センサにより、前記光センサの近傍の温度を取得するステップと、
前記光センサによって検出された光量の値を、該光センサの温度特性と前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正し、前記補正された光量の値に基づいて、前記画像データに対応して前記発光部に供給する駆動信号の値を制御するステップと、
を含むことを特徴とする発光装置の駆動制御方法。
【請求項8】
前記駆動信号の値を制御するステップは、
第1のタイミングで前記光センサにより検出された、前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正して、第1の光量とするステップと、
前記第1のタイミングから所定時間経過した後の第2のタイミングで、前記光センサにより検出された、前記発光素子から出射された光の光量を、前記温度センサによって取得された温度に基づいて補正して、第2の光量とするステップと、
前記第1の光量と前記第2の光量とを比較するステップと、
前記画像データに応じた階調信号を、予め保持された、前記第1の光量と前記第2の光量の差分に応じた光量補正データに基づいて補正して、前記駆動信号として出力するステップと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の発光装置の駆動制御方法。
【請求項9】
前記温度センサは、前記発光素子と同一構造の有機EL素子を有して構成され、
前記温度を取得するステップは、
前記温度を取得するタイミングにおいて、前記温度センサを構成する前記有機EL素子に一定電流を流すステップと、
前記一定電流を流したときの前記有機EL素子の両端間の電圧を測定するステップと、
前記測定された電圧の値と、前記有機EL素子の温度特性と、に基づいて、前記温度を取得するステップと、
を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の発光装置の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−76223(P2010−76223A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246360(P2008−246360)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】