説明

露光装置及びデバイス製造方法

【課題】液浸法に基づいて露光処理する際、パターンの像を基板上に精度良く形成できる露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置は、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、投影光学系と液体とを介してパターンの像を基板上に投影し、基板を露光する。露光装置は、液体の気化を抑制する気化抑制装置を備え、気化抑制装置は、液体の周囲に蒸気を供給する供給装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たした状態で投影光学系と液体とを介して基板にパターンを露光する露光装置及びこの露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2003年3月25日に出願された日本国特許出願2003−83329号に対し優先権を主張し、その内容を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、いわゆるフォトリソグラフィの手法により製造される。
【0004】
このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写する。近年、デバイスパターンのより一層の高集積化に対応するために投影光学系の更なる高解像度化が望まれている。投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短くなるほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大している。そして、現在主流の露光波長は、KrFエキシマレーザの248nmであるが、更に短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化されつつある。また、露光を行う際には、解像度と同様に焦点深度(DOF)も重要となる。解像度R、及び焦点深度δはそれぞれ以下の式で表される。
R=k・λ/NA … (1)
δ=±k・λ/NA … (2)
【0005】
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k、kはプロセス係数である。(1)式、(2)式より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。
【0006】
焦点深度δが狭くなり過ぎると、投影光学系の像面に対して基板表面を合致させることが困難となり、露光動作時のマージンが不足する恐れがある。そこで、実質的に露光波長を短くして、且つ焦点深度を広くする方法として、例えば国際公開第99/49504号に開示されている液浸法が提案されている。この液浸法は、投影光学系の下面と基板表面との間を水や有機溶媒等の液体で満たし、液体中での露光光の波長が、空気中の1/n(nは液体の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上するとともに、焦点深度を約n倍に拡大するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/49504号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の露光装置(ドライ露光用露光装置)のチャンバ内は低湿度化されている上、空調により気流が生じており、液体が気化しやすい雰囲気が形成されている。したがって、従来の露光装置のチャンバ内と同様の環境下で液浸露光を行おうとすると、液浸露光用の液体が気化し、その液体やその液体が接触している投影光学系(一部の光学素子)、あるいは基板の温度の制御精度を維持できない可能性がある。また投影光学系の温度変化により投影像が劣化したり、基板の温度変化により基板の変形(伸縮)が生じ、パターンの重ね合わせ精度を悪化する可能性がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、液浸法に基づいて露光処理する際、パターンの像を基板上に精度良く形成できる露光装置及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。また、液浸露光用の液体温度や露光対象である基板温度を所望の温度に設定、維持できる露光装置及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従えば、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、投影光学系と液体とを介してパターンの像を基板上に投影し、基板を露光する露光装置であって、液体の気化を抑制する気化抑制装置を備え、気化抑制装置は、液体の周囲に蒸気を供給する供給装置を有する露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様に従えば、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、投影光学系と液体とを介してパターンの像を基板上に投影し、基板を露光する露光装置であって、液体の気化を抑制する気化抑制装置を備え、気化抑制装置は、基板を含み、液体の周囲の空間を取り囲む隔壁部材を有する露光装置が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様に従えば、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、投影光学系と液体とを介してパターンの像を基板上に投影し、基板を露光する露光装置であって、液体の気化を抑制する気化抑制装置と、基板上の一部に液浸領域を形成するために、基板上に液体を供給する液体供給機構とを備える露光装置が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様に従えば、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、投影光学系と液体とを介してパターンの像を基板上に投影し、基板を露光する露光装置であって、液体との接触部分を取り囲む閉空間を形成する部材と、その閉空間内部の蒸気圧が、その閉空間外部の蒸気圧よりも高くする蒸気圧調整装置とを備える露光装置が提供される。
【0014】
本発明の第5の態様に従えば、第1〜第4の態様の露光装置を用いるデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の露光装置の第1実施形態を示す概略図である。
【図2】投影光学系の先端部付近を示す要部の拡大図である。
【図3】供給ノズル及び回収ノズルの配置例を示す図である。
【図4】供給ノズル及び回収ノズルの配置例を示す図である。
【図5】本発明の露光装置の第2実施形態の要部の拡大図である。
【図6】半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、例えばこれら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせてもよいし、周知の他の構成を付加または置換してもよい。
【0017】
図1は本発明の露光装置EXの第1実施形態を示す概略図である。
【0018】
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸型露光装置であって、投影光学系PLと基板Pとの間の少なくとも一部を液体30で満たして液浸領域AR2を形成する液浸ユニット10を備えている。
【0019】
液浸ユニット10は、基板P上に液体30を供給する液体供給装置1と、基板P上の液体30を回収する液体回収装置2とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給装置1から供給した液体30により、投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に液浸領域AR2を形成する。
具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部の光学素子PLaと基板Pの表面との間に液体30を満たし、この投影光学系PLの光学素子PLaと基板Pとの間の液体30、及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影し、基板Pを露光する。更に露光装置EXは、後に詳述する液体30の気化を抑制する気化抑制装置の少なくとも一部を構成する気化抑制ユニット20を備えている。
【0020】
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
【0021】
照明光学系ILはマスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びFレーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
マスクステージMSTはマスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等で構成されるマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
【0022】
投影光学系PLはマスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)PLaを含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子PLaは鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられており、光学素子PLaには液浸領域AR2を形成する液体30が接触する。
【0023】
基板ステージPSTは基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ52と、Zステージ52を支持するXYステージ53とを有しており、この基板ステージPSTのXYステージ53はベース54に支持されている。基板ステージPSTはリニアモータ等で構成される基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。Zステージ52を駆動することにより、Zステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置が制御される。また、XYステージ53を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。すなわち、Zステージ52は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ53は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてもよい。基板ステージPST(Zステージ52)上には移動鏡55が設けられている。また、移動鏡55に対向する位置にはレーザ干渉計56が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計56によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計56の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
【0024】
液浸ユニット10の液体供給装置1は所定の液体30を基板P上に供給して投影光学系PLと基板Pとの間の少なくとも一部を液体30で満たすものであって、液体30を収容するタンク、液体30内の異物を除去するフィルタ、及び加圧ポンプ等を備えている。更に液体供給装置1は、基板P上に供給する液体30の温度を調整する温度調整装置を備えている。温度調整装置は供給する液体30の温度を例えば露光装置EXが収容されているチャンバ装置内部の空間の温度とほぼ同程度に設定する。液体供給装置1には供給管3の一端部が接続され、供給管3の他端部には供給ノズル4が接続されている。供給ノズル4は基板Pに近接して配置されており、液体供給装置1は供給管3及び供給ノズル4を介して投影光学系PLと基板Pとの間に液体30を供給する。また、液体供給装置1の液体供給動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは液体供給装置1による単位時間あたりの液体供給量を制御可能である。
【0025】
本実施形態において液体30には純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
【0026】
液体回収装置2は基板P上の液体30を回収するものであって、例えば真空ポンプ等の吸引装置、及び回収した液体30を収容するタンク等を備えている。液体回収装置2には回収管6の一端部が接続され、回収管6の他端部には回収ノズル5が接続されている。回収ノズル5は基板Pに近接して配置されており、液体回収装置2は回収ノズル5及び回収管6を介して液体30を回収する。また、液体回収装置2の液体回収動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは液体回収装置2による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。
【0027】
制御装置CONTは液体供給装置1を駆動し、供給管3及び供給ノズル4を介して基板P上に単位時間あたり所定量の液体30を供給するとともに、液体回収装置2を駆動し、回収ノズル5及び回収管6を介して単位時間当たり所定量の液体30を基板P上より回収する。これにより、投影光学系PLの先端部PLaと基板Pとの間に液体30が配置されて液浸領域AR2が形成される。
【0028】
気化抑制ユニット20は、液体30の周囲を所定の蒸気圧よりも高くすることで液体30の気化を抑制する。この気化抑制ユニット20は、投影光学系PLと基板Pとの間の液体30の周囲の空間を囲む隔壁部材21と、隔壁部材21により形成され、前記液体30の周囲の空間を含む閉空間24に蒸気を供給する供給装置の少なくとも一部を構成する加湿器28とを備えている。隔壁部材21は、基板ステージPST(Zステージ52)の周縁部付近に基板Pを取り囲むように取り付けられ、所定の高さの壁面を有する壁部材22と、投影光学系PLの鏡筒PKに取り付けられ、XY平面とほぼ平行で所定の大きさの下面を有する蓋部材23とを備えている。蓋部材23は投影光学系PL(鏡筒PK)を支持する不図示の支持部材に取り付けられていてもよい。隔壁部材21を構成する壁部材22及び蓋部材23により、投影光学系PLと基板Pとの間の液体30及び基板Pを囲む閉空間24が形成される。壁部材22の上端部と蓋部材23の下面との間には、基板ステージPSTのX軸、Y軸、Z軸方向への移動、及び基板ステージPSTの傾斜を妨げないように、僅かな隙間25が形成されている。また、蓋部材23の一部には供給管3及び回収管6をそれぞれ配置可能な貫通孔が設けられている。供給管3及び回収管6のそれぞれと貫通孔との間には流体の流通を規制するシール部材(図示略)が設けられている。
【0029】
基板ステージPST上に設けられた壁部材22の一部には貫通孔26が形成されており、この貫通孔26には伸縮自在に設けられた配管27の一端部が接続されている。一方、配管27の他端部には、閉空間24に蒸気を供給する加湿器28が接続されている。加湿器28は高湿度気体を配管27を介して閉空間24に供給するものであって、液体30と同じ物質の蒸気を供給する。本実施形態において液体30は水(純水)であるため、加湿器28は閉空間24に水蒸気を供給する。加湿器28の蒸気供給動作は制御装置CONTに制御される。そして、気化抑制ユニット20は加湿器28によって閉空間24に対して蒸気を供給することにより、隔壁部材21の内側の閉空間24内の蒸気圧(蒸気相の圧力)を、その外側(すなわちチャンバ装置内部)より高くする。
【0030】
図2は、露光装置EXの投影光学系PLの先端部近傍を示す正面図である。投影光学系PLの最下端の光学素子PLaは、先端部が走査方向に必要な部分だけを残してY軸方向(非走査方向)に細長い矩形状に形成されている。走査露光時には、光学素子PLaの直下の矩形の投影領域AR1にマスクMの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対してマスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ53を介して基板Pが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、1つのショット領域に対する露光終了後に、基板Pのステッピング移動により次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域に対する露光処理が順次行われる。本実施形態では、基板Pの移動方向と平行に、基板Pの移動方向と同一方向に液体30を流すように設定されている。
【0031】
図3は、投影光学系PLの投影領域AR1と、液体30をX軸方向に供給する供給ノズル4(4A〜4C)と、液体30を回収する回収ノズル5(5A、5B)との位置関係を示す図である。図3において、投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向に細長い矩形状となっており、投影領域AR1をX軸方向に挟むように、+X方向側に3つの供給ノズル4A〜4Cが配置され、−X方向側に2つの回収ノズル5A、5Bが配置されている。
供給ノズル4A〜4Cは供給管3を介して液体供給装置1に接続され、回収ノズル5A、5Bは回収管6を介して液体回収装置2に接続されている。また、供給ノズル4A〜4Cと回収ノズル5A、5Bとをほぼ180°回転した配置に、供給ノズル8A〜8Cと、回収ノズル9A、9Bとが配置されている。供給ノズル4A〜4Cと回収ノズル9A、9BとはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル8A〜8Cと回収ノズル5A、5BとはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル8A〜8Cは供給管11を介して液体供給装置1に接続され、回収ノズル9A、9Bは回収管12を介して液体回収装置2に接続されている。
【0032】
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターンを基板Pに露光する手順について説明する。
【0033】
マスクMがマスクステージMSTにロードされるとともに、基板Pが基板ステージPSTにロードされたら、制御装置CONTは液浸ユニット10の液体供給装置1及び液体回収装置2を駆動して投影光学系PLと基板Pとの間に液浸領域AR2を形成する。また、制御装置CONTは気化抑制ユニット20の加湿器28を駆動し、液浸領域AR2を形成する液体30の周囲の空間を含む閉空間24に対して蒸気を供給し、この閉空間24の蒸気相の圧力を所定の蒸気圧よりも高くする。具体的には、気化抑制ユニット20は閉空間24に高湿度気体である水蒸気を供給することでこの閉空間24を液体(純水)30の飽和蒸気圧にする。
【0034】
閉空間24の蒸気圧は、閉空間24の外側の蒸気圧よりも高くなる。通常、閉空間24の外側、すなわち露光装置EXを収容するチャンバ装置内の湿度は30〜40%であるが、閉空間24には気化抑制ユニット20の加湿器28により水蒸気の供給が続けられているため、空間24内部は常に飽和蒸気圧近く(湿度95%程度)に維持される。壁部材22の上端部と蓋部材23との間に設けられている隙間25は非常に僅かであるため、空間24内を飽和蒸気圧近くに維持することが可能となっている。
【0035】
矢印Xa(図3参照)で示す走査方向(−X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管3、供給ノズル4A〜4C、回収管6、及び回収ノズル5A、5Bを用いて、液体供給装置1及び液体回収装置2により液体30の供給及び回収が行われる。
一方、矢印Xbで示す走査方向(+X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管11、供給ノズル8A〜8C、回収管12、及び回収ノズル9A、9Bを用いて、液体供給装置1及び液体回収装置2により液体30の供給及び回収が行われる。このように、液浸ユニット10は、液体供給装置1及び液体回収装置2を用いて、基板Pの移動方向に沿って基板Pの移動方向と同一方向へ液体30を流す。この場合、例えば液体供給装置1から供給ノズル4A〜4Cを介して供給される液体30は基板Pの−X方向への移動に伴って投影光学系PLと基板Pとの間に引き込まれるようにして流れるので、液体供給装置1の供給エネルギーが小さくでも液体30を投影光学系PLと基板Pとの間に容易に供給できる。そして、走査方向に応じて液体30を流す方向を切り替えることにより+X方向あるいは−X方向のどちらの方向に基板Pを走査する場合にも、投影光学系PLと基板Pとの間を液体30で満たすことができ、高い解像度及び広い焦点深度を得ることができる。また、壁部材22の上端部と蓋部材23との間に微小隙間25が設けられているので、閉空間24内を飽和蒸気圧近くに維持しつつ、基板ステージPSTを移動することもできる。
【0036】
以上説明したように、液浸領域AR2を形成する液体30及び基板Pの周囲に隔壁部材21により閉空間24を形成し、この閉空間24内に水蒸気を供給するようにしたので、液体30、あるいは投影光学系PLの先端部や基板Pに付着した液体30の気化を抑制することができ、液体30、投影光学系PL、及び基板Pを所望の温度に維持することができる。特に、基板P上の液体を回収しながら、基板P上の一部に液浸領域を形成する場合に、基板P上に回収しきれなかった残留液体が付着していても、その残留液体の気化を防止でき、基板Pの温度変化や変形(伸縮)を抑制できる。また投影光学系PLの光学素子PLaの側面に液体が付着しても、その付着した液体の気化を防止することができるので、光学素子PLaの温度変化や変形を抑えることができる。
【0037】
本実施形態においては、基板ステージPSTに取り付けられている移動鏡55は、閉空間24の外側に設けられているため、移動鏡55を用いた干渉計56による基板ステージPSTの位置計測が、閉空間24内の環境の影響を受けることがない。また、閉空間24を加湿するために、液体(純水)30と同じ純水の水蒸気を閉空間24に供給しているので、投影光学系PLと基板Pとの間の液体(純水)30の純度を低下させたり、透過率などの特性を変化させることもない。
【0038】
本実施形態では、閉空間24に供給される蒸気は液浸領域AR2を形成する液体30と同じ物質であるが、投影光学系PLと基板Pとの間の液体30の純度の低下がある程度許容される場合には、液体供給装置1から供給される液浸領域AR2形成用の液体30と閉空間24内に供給される蒸気とは同じ物質でなくてもよい。
【0039】
本実施形態においては、閉空間24内をほぼ飽和蒸気圧(湿度95%程度)にしているが、それよりも低い例えば60%程度でもよい。すなわち、閉空間24の蒸気相の圧力を飽和蒸気圧より低い所定の蒸気圧にしてもよい。ここで、所定の蒸気圧は、液体30の気化に起因する投影光学系PLの先端部や基板P、あるいは液体30の温度変動により生じるパターン転写精度変動を、許容範囲内に納めることができる圧力である。したがって、気化抑制ユニット20は、液浸領域AR2を形成するための液体30の周囲を前記所定の蒸気圧より高くすることにより、パターン転写精度を許容範囲内に納めることができる。
【0040】
本実施形態の液体30は水(純水)であるが、水以外の液体であってもよい。例えば、露光光ELの光源がFレーザである場合、このFレーザ光は水を透過しないので、液体30としてはFレーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイル等のフッ素系の液体(例えば、フォンブリン、PFPE)であってもよい。その場合、基板Pの周囲(閉空間24)にはフッ素系の液体の蒸気が供給される。フッ素系の液体を液浸露光用に使用した場合、その液体と同じものを気化させてその蒸気を閉空間24内に供給すればよい。また、液体30としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
【0041】
いずれの場合にも、基板Pの周囲(閉空間24)には、その液体と同じ物質の蒸気、あるいはその液体を気化させることによって生じる蒸気と同じ組成をもつ蒸気を供給すればよい。
【0042】
上記各実施形態において、上述したノズルの形状は特に限定されるものでなく、例えば投影光学系PLの投影領域AR1の長辺について2対のノズルで液体30の供給又は回収を行うようにしてもよい。この場合には、+X方向または−X方向のどちらの方向からも液体30の供給及び回収を行うことができるようにするため、供給ノズルと回収ノズルと上下に並べて配置してもよい。
【0043】
また、図4に示すように、投影光学系PLの投影領域AR1を挟んでY軸方向両側のそれぞれに供給ノズル41、42及び回収ノズル43、44を設けることもできる。この供給ノズル及び回収ノズルにより、ステッピング移動する際の基板Pの非走査方向(Y軸方向)への移動時においても、投影光学系PLと基板Pとの間に液体30を安定して供給することができる。また、投影光学系PLの投影領域AR1を取り囲むように液体30の供給ノズル及び回収ノズルを設けておけば、基板PをY軸方向にステッピング移動させる際など、基板Pの移動方向に応じて、液体30の流れる方向を切り替えることも可能である。
【0044】
次に、本発明の露光装置EXの第2実施形態について図5を参照しながら説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同一又は同等の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
【0045】
図5において、気化抑制ユニット20は、ベース54上に取り付けられた隔壁部材60を有している。すなわち、上記第1実施形態に係る隔壁部材21は壁部材22及び蓋部材23により構成され、隙間25が形成されているが、本実施形態に係る隔壁部材60には隙間が無く、この隔壁部材60により形成される閉空間61は略密閉空間である。この場合、基板ステージPSTは閉空間61内をベース54上で移動することになる。閉空間61を略密閉空間とすることにより、この閉空間61内を液体30の飽和蒸気圧近くに維持することが容易となるばかりでなく、閉空間61の外側への影響を無くすことができる。
ここで、基板ステージPSTの位置計測に用いる干渉計の計測光は閉空間61内を通過する場合があるが、閉空間61内の蒸気により計測動作に影響を与えないように、計測光の光路を伸縮自在の管状部材で覆うことができる。
【0046】
上記第1、第2実施形態では、液浸領域AR2を形成するための液体30及び基板Pの周囲を閉空間にし、この閉空間内に蒸気を供給する構成であるが、閉空間を形成すること無しに、単に、液体30の周囲(投影光学系PLの先端部付近、基板Pの表面付近)に蒸気を吹き付けることにより、液浸領域AR2を形成するための液体30の気化を抑制するようにしてもよい。この場合、上述同様、その蒸気によって干渉計の計測に影響を与えないように干渉計の光路(光束)を管状部材で覆うようにしてもよい。
【0047】
また、上述の第1、第2実施形態において、閉空間24、61内に湿度センサを配置し、その湿度センサの出力に基づいて加湿器28を制御するようにしてもよい。
【0048】
また基板Pの露光終了後、閉空間24,61内の蒸気圧を、閉空間24,61の外側の空間の蒸気圧とほぼ同じにしてから、基板Pを閉空間24,61から搬出するようにしてもよい。
【0049】
上記第1、第2実施形態においては、閉空間24、61内に蒸気を供給する加湿器28を設けているがこれを省いても構わない。すなわち、閉空間24、61を形成するのみでも、基板Pや投影光学系PLの先端付近に接触(付着)する液体を、装置を収容するチャンバ内の乾燥した空気、あるいはチャンバ内の気流との接触から守ることができるため、液体の気化を抑制することができる。
【0050】
また、上記第1、第2実施形態においては、閉空間24、61を形成して、液体の気化を抑制するようにしているが、隔壁部材21、60を設けずに、投影光学系PLの先端付近や基板P表面に向けて、高蒸気圧(高湿度)の蒸気を吹き付けるようにしてもよい。
また、第1、第2実施形態のような大きな閉空間24,61に限らず、液体と接触(付着)する部分を囲むように局所的な閉空間を設けるようにしてもよい。
【0051】
上述したように、本実施形態における液体30は純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44であるため、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
【0052】
上記各実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子PLaとしてレンズが取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。光学素子PLaとしては前記光学特性を調整する光学プレートであってもよい。一方、液体30と接触する光学素子PLaを、レンズより安価な平行平面板とすることも可能である。光学素子PLaを平行平面板とすることにより、露光装置EXの運搬、組立、調整時等において投影光学系PLの透過率、基板P上での露光光ELの照度、及び照度分布の均一性を低下させる物質(例えばシリコン系有機物等)がその平行平面板に付着しても、液体を供給する直前にその平行平面板を交換するだけでよく、液体と接触する光学素子をレンズとする場合に比べてその交換コストが低くなるという利点がある。すなわち、露光光ELの照射によりレジストから発生する飛散粒子、または液体中の不純物の付着などに起因して液体に接触する光学素子の表面が汚れるため、その光学素子を定期的に交換する必要があるが、この光学素子を安価な平行平面板とすることにより、レンズに比べて交換部品のコストが低く、且つ交換に要する時間を短くすることができ、メンテナンスコスト(ランニングコスト)の上昇やスループットの低下を抑えることができる。
【0053】
液体の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子PLaと基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
【0054】
上記各実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体を満たす構成であってもよい。
【0055】
上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0056】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0057】
上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間を局所的に液体で満たす露光装置を採用しているが、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。
【0058】
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0059】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0060】
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0061】
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
【0062】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0063】
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(米国特許5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0064】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0065】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図6に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、気化した液体による投影光学系や基板、あるいは液浸露光用の液体の温度変動を抑えることができるので、温度変動に起因する投影光学系の投影像の劣化や基板変形を抑えることができ、精度良い露光処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1…液体供給装置、2…液体回収装置、10…液浸ユニット、 20…気化抑制ユニット、21…隔壁部材、22…壁部材、 23…蓋部材、24…閉空間、28…加湿器、30…液体、 60…隔壁部材、61…閉空間、AR1…投影領域、AR2…液浸領域、 EX…露光装置、P…基板、PL…投影光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、前記投影光学系と前記液体とを介してパターンの像を前記基板上に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
前記液体の気化を抑制する気化抑制装置を備え、
前記気化抑制装置は、前記液体の周囲に蒸気を供給する供給装置を有する。
【請求項2】
請求項1記載の露光装置であって、
前記供給装置は、前記液体と同じ物質の蒸気、または前記液体が気化したときに生じる蒸気と同じ組成を有する蒸気を供給する。
【請求項3】
投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、前記投影光学系と前記液体とを介してパターンの像を前記基板上に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
前記液体の気化を抑制する気化抑制装置を備え、
前記気化抑制装置は、前記基板を含み、前記液体の周囲の空間を取り囲む隔壁部材を有する。
【請求項4】
請求項3記載の露光装置であって、
前記気化抑制装置は、前記隔壁部材の内側の空間内の蒸気圧を、その外側より高くする。
【請求項5】
投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、前記投影光学系と前記液体とを介してパターンの像を前記基板上に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
前記液体の気化を抑制する気化抑制装置と、
前記基板上の一部に液浸領域を形成するために、前記基板上に液体を供給する液体供給機構とを備える。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の露光装置であって、
前記気化抑制装置は、前記液体の周囲を所定の蒸気圧よりも高くする。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の露光装置であって、
前記気化抑制装置は、前記液体の周囲を、その液体の飽和蒸気圧にする。
【請求項8】
投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たし、前記投影光学系と前記液体とを介してパターンの像を前記基板上に投影し、前記基板を露光する露光装置であって、
液体との接触部分を取り囲む閉空間を形成する部材と、
その閉空間内部の蒸気圧が、その閉空間外部の蒸気圧よりも高くする蒸気圧調整装置とを備える。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項記載の露光装置を用いるデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−44736(P2011−44736A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255407(P2010−255407)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2009−96101(P2009−96101)の分割
【原出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】