説明

露光装置及び露光方法

【課題】ワークがひずんでいる場合でもワークの被露光領域に応じてマスクのパターンを精度良く露光転写することができる露光装置及び露光方法。
【解決手段】アライメント検出系で検出された両アライメントマークのずれ量に基づいて、マスクとワークの位置ずれ量とワークのひずみ量とを算出し、算出された位置ずれ量に基づいて、アライメントを調整し、算出されたひずみ量に基づいて、平面ミラー66の曲率を補正する。曲率補正は、複数のレーザーポインタ91から平面ミラー66の裏面に複数のレーザー光Lを照射し、平面ミラー66の裏面にて反射した複数のレーザー光Lが集光ミラー群96で反射して反射板92に投影され、該反射板92に映りこんだ複数のレーザー光Lをカメラ93によって撮像する。平面ミラー66の曲率を補正した際に撮像されるレーザー光の変位量を検出し、該変位量が算出されたひずみ量と対応するように曲率補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法に関し、より詳細には、感光剤が塗布されたワークにマスクパターンが形成されたマスクを介して露光光を照射して露光することにより、ワーク上にマスクパターンを転写する露光装置及び露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の露光方式として、ワークとマスクとを密着させた状態で露光光を照射する密着露光方式が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の密着露光装
置では、フープ状等のワークを巻出し装置と巻取り装置を用いて露光位置へ送り、ワークの表裏面に所定の転写パターンを有する表マスク及び裏マスクとのアライメント調整を行った後、ワークと表裏マスクとを密着させる。そして、マスクへ向けて露光光を照射することで、マスクの転写パターンをワークの表裏面に露光転写する。
【0003】
また、露光装置の照明光学系としては、鏡自体のひずみ曲収差の補正や、マスクの伸縮やワークのうねりに対応するため、コリメーションミラー(凹面鏡)や平面鏡のような反射鏡の曲率を手動(送りねじ等)又は自動(圧電素子等)で局部的に変化させる機構が種々考案されている(例えば、特許文献2〜6参照。)。例えば、特許文献2に記載のコリ
メーションミラーでは、ミラー裏面の中央部分を固定支持すると共に、各辺部分をブラケットにより移動自在に支持する。そして、アライメント用カメラを用いてアライメントマークを観測し、該ブラケットをモータによって雄ねじを介して変位させることで、コリメーションミラーを変位させ、デクリネーション角を露光のたびに変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−92027号公報
【特許文献2】特開2005−129785号公報
【特許文献3】特開平07−201711号公報
【特許文献4】特開平09−304940号公報
【特許文献5】特開2001−042281号公報
【特許文献6】特開2003−077823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のような密着露光装置では、フープ状のワークは露光位置において表裏マスクに密着するように平板状とされるが、その際にワークがひずんで被露光領域が矩形とならず、平行四辺形となる場合がある。この場合、ワークとマスクのアライメント調整を行っても、マスクのパターンとワークの被露光領域との間にずれが生じ、露光精度が低下するという課題があった。
【0006】
また、特許文献2〜6に記載の従来のコリメーションミラーや平面鏡の曲率を変化させる機構は、ワークのひずみによる被露光領域の形状に対応するよう考慮されていない。また、これら機構は、いずれも100μmオーダーの量での変位のため、上記ワークの形状に十分に対応できるものでなかった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークがひずんでいる場合でもワークの被露光領域の形状に応じてマスクのパターンを精度良く露光転写することができる露光装置及び露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光源からの露光光の光束をマスクを介してワークに照射し、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光方法であって、
前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとをアライメント検出系で検出する工程と、
前記アライメント検出系で検出された前記両アライメントマークのずれ量に基づいて、前記マスクと前記ワークの位置ずれ量と前記ワークのひずみ量とを算出する工程と、
前記算出された位置ずれ量に基づいて、前記ワークと前記マスクとのアライメントを調整する工程と、
前記アライメント調整工程と同時又は別々のタイミングにおいて、前記算出されたひずみ量に基づいて、前記光源からの露光光の光束を反射する反射鏡の曲率を補正する工程と、
を備え、
前記反射鏡の曲率補正工程は、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置された複数の検出用光源から前記反射鏡の裏面に向けて複数の指向性を有する光を照射する工程と、
前記反射鏡の裏面にて反射した前記複数の指向性を有する光が、前記複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられた複数のミラーを備えた集光ミラー群にて反射して反射板に投影され、該反射板に映りこんだ前記複数の指向性を有する光を撮像手段によって撮像する工程と、
前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記指向性を有する光の変位量を検出する工程と、
を備え、該変位量が算出されたひずみ量と対応するように前記曲率補正することを特徴とする露光方法。
(2) 前記反射鏡の裏面には、略鏡面状の部材が取り付けられていることを特徴とする(1)に記載の露光方法。
(3) 前記反射鏡の曲率補正工程は、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置された他の複数の検出用光源から前記反射鏡の表面に向けて他の複数の指向性を有する光を照射する工程と、
前記反射鏡の表面にて反射した前記他の複数の指向性を有する光が、前記他の複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられた複数のミラーを備えた他の集光ミラー群にて反射して反射板に投影され、該反射板に映りこんだ前記他の複数の指向性を有する光を他の撮像手段によって撮像する工程と、
前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記他の指向性を有する光の他の変位量を検出する工程と、
を備え、前記変位量及び他の変位量が算出されたひずみ量と対応するように前記曲率補正することを特徴とする請求項1または2に記載の露光方法。
(4) 前記撮像手段は、前記光源からの露光光の光束の光路上から離れた位置に配置されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の露光方法。
(5) 少なくとも前記アライメント調整工程後に、前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとをアライメント検出系で再検出する工程と、
前記算出工程で、前記再検出された両アライメントのずれ量に基づいて算出された前記マスクと前記ワークの位置ずれ量が許容値以下であるかどうかを判別する工程と、
を備え、
前記判別工程において、前記マスクと前記ワークの位置ずれ量が前記許容値を越える場合に前記アライメント調整工程を実行することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の露光方法。
(6) 前記マスクのパターンとワークとの間に所定のギャップが設けられていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の露光方法。
(7) 前記マスクの下面には、前記露光光を透過可能で、且つ、露光時に前記ワークと密着可能な透過媒体が取り付けられていることを特徴とする(6)に記載の露光方法。
(8) ワークを支持するワーク支持部と、マスクを支持するマスク支持部と、前記ワークと前記マスクとを相対的に移動させる送り機構と、光源及び該光源からの露光光の光束を反射する反射鏡を備えた照明光学系と、前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとを検出するアライメント検出系と、を備え、前記光源からの露光光の光束を前記マスクを介して前記ワークに照射し、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置され、前記反射鏡の裏面に向けて複数の指向性を有する光を照射する複数の検出用光源と、前記複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられ、前記反射鏡の裏面にて反射した前記複数の指向性を有する光をそれぞれ反射する複数のミラーを備えた集光ミラー群と、前記複数のミラーで反射された前記複数の指向性を有する光が投影される反射板と、前記反射板に映りこんだ前記複数の指向性を有する光を撮像する撮像手段と、前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記複数の指向性を有する光の変位量を検出する制御部と、を有する曲率補正量検出系をさらに備え、
前記照明光学系は、前記反射鏡の周縁部と裏面のいずれかを支持する支持機構と、該支持機構を移動可能な駆動手段と、を備え、
前記送り機構は、前記アライメント検出系で検出された前記両アライメントマークのずれ量から算出された前記マスクと前記ワークの位置ずれ量に基づいて、前記ワークと前記マスクとを相対的に移動することで、前記ワークと前記マスクとのアライメントを調整するとともに、
前記反射鏡は、前記反射鏡の曲率を補正した際に前記曲率補正量検出系で検出された前記複数の指向性を有する光の変位量が、前記算出されたワークのひずみ量と対応するように、前記駆動手段によって前記支持機構を移動させることで、その曲率を補正することを特徴とする露光装置。
(9) 前記反射鏡の裏面には、略鏡面状の部材が取り付けられていることを特徴とする(8)に記載の露光装置。
(10) 前記曲率補正量検出系は、前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置され、前記反射鏡の表面に向けて他の複数の指向性を有する光を照射する他の複数の検出用光源と、前記他の複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられ、前記反射鏡の表面にて反射した前記他の複数の指向性を有する光をそれぞれ反射する複数のミラーを備えた他の集光ミラー群と、前記他の複数のミラーで反射された前記他の複数の指向性を有する光が投影される他の反射板と、前記他の反射板に映りこんだ前記他の複数の指向性を有する光を撮像する他の撮像手段と、を備え、
前記制御部は、前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記他の複数の指向性を有する光の他の変位量をさらに検出することを特徴とする(8)または(9)に記載の露光装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の露光方法及び露光装置によれば、アライメント検出系で検出されたワークとマスクのアライメントマークのずれ量に基づいて、マスクとワークの位置ずれ量とワークのひずみ量とを算出し、算出された位置ずれ量に基づいて、ワークとマスクとのアライメントを調整すると共に、アライメント調整と同時又は別々のタイミングにおいて、算出されたひずみ量に基づいて、光源からの露光光の光束を反射する反射鏡の曲率を補正するようにしたので、ワークがひずんでいる場合でもワークの被露光領域の形状に応じてマスクのパターンを精度良く露光転写することができる。
【0010】
また、反射鏡の曲率補正は、露光光の光束の光路上から離れた位置に配置された複数の検出用光源から反射鏡の裏面に向けて複数の指向性を有する光を照射する工程と、反射鏡の裏面にて反射した複数の指向性を有する光が、複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられた複数のミラーを備えた集光ミラー群にて反射して反射板に投影され、該反射板に映りこんだ複数の指向性を有する光を撮像手段によって撮像する工程と、反射鏡の曲率を補正した際に撮像される指向性を有する光の変位量を検出する工程と、を備え、該変位量が算出されたひずみ量と対応するように曲率補正するので、指向性を有する光の変位量を撮像しながらワークのひずみ量に対応する反射鏡の曲率補正を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る両面露光装置を説明するための概略図である。
【図2】図1のマスク支持機構を示す断面図である。
【図3】アライメント機構を示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)は(a)のIII−III断面図であり、(c)は、(a)のIII´−III´断面図であり、(d)は(b)のIII´´−III´´断面図である。
【図4】図1の照明光学系を示す図である。
【図5】(a)は、照明光学系の反射鏡支持構造を示す正面図であり、(b)は(a)のV−V線に沿った断面図であり、(c)は、(a)のV´−V´線に沿った断面図である。
【図6】図5の反射鏡支持構造の支持機構を作動した状態を示す図である。
【図7】照明光学系の反射鏡支持構造の変形例を示す図である。
【図8】本実施形態の曲率補正量検出系を示す図である。
【図9】本実施形態の露光方法のフローチャートを示す図である。
【図10】アライメント調整後のマスクとワークの位置関係を示す図である。
【図11】(a)は、反射鏡の曲率を補正する前の状態を示す図であり、(b)は、(a)の左のカメラの撮像図であり、(c)は、(a)の右のカメラの撮像図である。
【図12】(a)は、反射鏡の曲率を補正した後の状態を示す図であり、(b)は、(a)の左のカメラの撮像図であり、(c)は、(a)の右のカメラの撮像図である。
【図13】反射板に投影されるレーザー光の変位量を示す図である。
【図14】本発明の曲率補正量検出系の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る露光装置及び露光方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、第1実施形態の両面露光装置を説明すると、図において符号11はフープ材等のワーク12を水平方向にタクト送りで巻き出すための巻出し装置、13は露光位置Pの下流側に配置されて露光後のワーク12を巻き取るための巻取り装置である。
【0014】
巻出し装置11と巻取り装置13との間にはワーク12の搬送方向に沿って架台14が設置されており、該架台14の長手方向の両端部には巻出し装置11側及び巻取り装置13側でそれぞれワーク12を略水平方向に支持するワーク支持部としての支持ロール15a,15bが取り付けられている。
【0015】
また、架台14上にはインデクサーテーブル16がワーク12の搬送方向に沿ってスライド可能に設けられており、該インデクサーテーブル16の露光位置Pの上流側の端部には第1のインデクサー17がワーク12の搬送方向に移動可能に取り付けられ、同下流側の端部には第2のインデクサー18が取り付けられている。
【0016】
第2のインデクサー18は露光位置Pの下流側近傍に配置され、第1のインデクサー17は露光位置Pの上流側にインデクサーテーブル16のストローク+αだけ離間した位置に配置されており、露光位置Pの上流側近傍にはワーク12の撓みを極力小さくするための支持ロール19が第1のインデクサー17に干渉しないように設けられている。なお、前記ストロークの大きさは被露光部位の送り方向の幅以上とされるが、材料の歩留り向上のためにはできるだけこの幅に近い大きさが好ましい。
【0017】
各インデクサー17,18は、インデクサーテーブル16が図1で最も左寄りに位置するときにおける第2のインデクサー18が表マスク21及び裏マスク22を支持する図2のマスク支持機構53と干渉せず、且つインデクサーテーブル16が図1で最も右寄りに位置するときにおける第1のインデクサー17(二点鎖線で示す)が支持ロール19と干渉しないという条件を満たしつつ、できるだけ小さな間隔で互いに離間配置されており、露光後にワーク12をクランプ(例えばエアシリンダ等を用いる)し、インデクサーテーブル16を所定の送り量で下流側に送ることにより該ワーク12を同方向に搬送して新たな被露光部位を露光位置Pに配置する。
【0018】
そして、該搬送後は、アライメント、マスク密着等が完了した後に各インデクサー17,18によるワーク12のクランプが解除されてインデクサーテーブル16が元の位置に復帰する。
各インデクサー17,18によるワーク12の送り量に応じて巻出し装置11によるワーク12の巻出しと巻取り装置13によるワーク12の巻取りが行われる。なお、符号12aは巻出し装置11側と巻取り装置13側に設けられたワーク送りのバッファ部分である。
また、インデクサーテーブル16の第1のインデクサー17側には、該第1のインデクサー17を上流側に押すことで、露光位置Pに送られた各インデクサー17,18間のワーク12に対してバックテンションを付与するためのシリンダー装置20が設置されている。
【0019】
即ち、シリンダー装置20の本体(ハウジング)はインデクサーテーブル16上に固定されており、シリンダー装置20の伸縮可能なロッドが図1で本体の左端から突出し、その先端がインデクサー17に固定されている。
ここで、ワークのクランプ及びバックテンション付与の動作について説明する。
まず、図1の実線で示すように、インデクサーテーブル16が元の位置に復帰した状態で、各インデクサー17,18のそれぞれのクランプ部により、ワーク12をクランプする。このとき、支持ロール19がインデクサー17及び18の中央付近でワーク12を下から支持していることにより、各インデクサー17,18間のワーク12の撓みは小さく抑えられる。
【0020】
次に、シリンダー装置20を作動させ、インデクサー17を図1で左方へ所定の力で押圧する。これにより、各インデクサー17,18間でのワーク12の撓み量を更に小さく抑えることができる。
シリンダー装置20による押圧力は上記のようなワーク12の自重による撓みを抑制するのに必要最低限の大きさに設定されており、ワーク12に過大な力が加わらないようにしている。以上で、クランプ及びバックテンション付与が完了となる。
【0021】
図2に示すように、露光位置Pでのワーク12の被露光部位の表裏面にはそれぞれ所定の転写パターンを有した表マスク21及び裏マスク22を支持するマスク支持部及び送り機構としてのマスク支持機構53が設けられている。マスク支持機構53は、マスク調整ベース34a,34b、すべり軸受35a,35b、マスクベース36a,36b、及び、マスクベース36a,36bに設けられるアライメント機構49(図3参照。)を備える。マスク調整ベース34a,34bには、表マスク21及び裏マスク22が真空引きによって吸着されて、着脱自在に取付けられている。そして、このマスク調整ベース34a,34bは、マスク21,22間のアライメントを行うべく、すべり軸受35a,35bを介してマスクベース36a,36bにX軸方向、Y軸方向、θ方向(X、Y平面内での回転方向)に微少移動可能に支持されている。
【0022】
具体的に、図3に示すように、マスクベース36aには、マスク調整ベース34aと複数のターカイト支持部材82とが、複数のボルト83によってマスクベース36aを挟むようにして取り付けられている。マスクベース36aには、ボルト83が隙間を持って挿入される挿入孔36a1が形成されており、挿入孔36a1には、ボルト83の周囲にターカイト支持部材82とマスク調整ベース34aとの高さを決めるカラー84が配置されている。ターカイト支持部材82のマスクベース36aとの対向面、及びマスクベース36aのマスク調整ベース34aとの対向面には、すべり軸受としてのターカイト35aが取り付けられている。これにより、マスク調整ベース34aは、マスクベース36aに対してX軸方向、Y軸方向、θ方向(X、Y平面内での回転方向)に微少移動可能に支持されている。また、マスクベース36aの開口を介してX軸方向で対向する2つのターカイト支持部材82a,82bのうち、一方のターカイト支持部材82aには、アライメント機構49として、Y軸方向に駆動する駆動ユニット85a、X軸方向に駆動する駆動ユニット85b、及びターカイト支持部材82aに所定の予圧を付与する予圧ユニット86aとが設けられ、他方のターカイト支持部材82bには、Y軸方向に駆動する駆動ユニット85c、及びターカイト支持部材82bに所定の予圧を付与する予圧ユニット86b、86cとが設けられる。さらに、ターカイト支持部材82a,82bの一方のボルト83の周囲で、ターカイト支持部材82a,82bとカラー84との間、及び、マスク調整ベース34aとカラー84との間には、他のカラー87が挟まれている。従って、駆動ユニット85bを駆動することでマスク調整ベース34aをX軸方向に微少移動可能で、駆動ユニット85a,85cを同期して駆動することでマスク調整ベース34aをY軸方向に微少移動可能で、駆動ユニット85a,85cをY軸方向に相対的に駆動することでマスク調整ベース34aをθ方向に微少移動可能である。また、駆動ユニット85a,85b,85cによって押圧されるターカイト支持部材82a,82bには、他のカラー87が設けられているので、ターカイト支持部材82a,82b及びマスク調整ベース34aと、カラー84との間のガタつきを防止し、繰り返し応答性を向上している。なお、裏マスク22を支持するマスク支持機構53も同様である。
【0023】
表マスク21及び裏マスク22の表面には、クロムによって転写パターンPが形成されており、さらに、所定の厚さを有するフォトマスクフィルム(透明フィルム)80が貼り付けられている(図11参照。)。なお、表マスク21及び裏マスク22の表面には、マ
スク21,22とワーク12との間に所定のギャップを与えて、露光光を透過可能な透過媒体が取り付けられればよく、透明フィルム80に限定されず、ガラスであってもよい。更には、非露光領域となる外周部にシム材を貼付け、エアギャップを形成してもよい。
【0024】
マスクベース36a,36bは、Z軸フレーム37a,37bに固着されている。なお、マスク調整ベース34a,34b、マスクベース36a,36b、Z軸フレーム37a,37bには孔が開口されており、照明光学系60a,60bからの照射光を表裏のマスク21,22に照射可能になっている。なお、照明光学系60a,60bもZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0025】
Z軸フレーム37a,37bの底部は、Z軸直動軸受39a,39bを介して、両面露光部ベース40上に固定されたZ軸ステージ41a,41bにより支持され、Z軸駆動部42a,42bにより駆動されてZ軸ステージ41a,41b上をZ軸方向へ移動可能に構成されている。すなわち、Z軸駆動部42a,42bは、Z軸駆動モータ43a,43b、このZ軸駆動モータ43a,43bの回転軸に連接されたボールネジ44a,44b、このボールネジ44a,44bを支持する支柱45a,45b、Z軸フレーム37a,37bに取付けられた駆動継手46a,46b、および駆動継手46a,46bに埋設されてボールネジ44a,44bと螺合されたナット47a,47bにより構成されている。
【0026】
このような構成の下で、それぞれZ軸駆動モータ43a,43bの回転に連動してボールネジ44a,44bが回転すると、ボールネジ44a,44bとナット47a,47bとの作用により、Z軸フレーム37a,37bは駆動継手46a,46bと共にZ軸方向に移動され、ワーク12の両面にマスク21,22が密着されることとなる。
【0027】
表裏のZ軸フレーム37a,37bには、それぞれ4個ずつ支持部材としての位置決め調整用ネジ50、または変形量吸収用間座51が設けられ、これらを介した状態でマスクベース36a,36bが固定されるようになっている。なお、図2では、便宜上、表側には位置決め調整用ネジ50、裏側には変形量吸収用間座51が示されている。これら位置決め調整用ネジ50、変形量吸収用間座51は、加工時や組立時に発生した表裏のZ軸フレーム37a,37bのねじれに伴う表裏のマスク21,22のねじれを解消するために利用されるものである。変形量吸収用間座51は、Z軸フレーム37a,37bの加工誤差、変形を考慮して予めそれぞれ所望の厚さに加工されるものであり、位置決め調整用ねじ50は、ねじの出入り調整によりZ軸フレーム37a,37bとマスクベース36a,36bの間隔を調整可能なものである。
【0028】
さらに、図2に示すように、マスク21,22に対して反ワーク12側には、マスク側のアライメントマークが視認できる位置にそれぞれ進退可能な、複数のアライメント検出系52(本実施形態では、矩形状のマスクの四隅近傍に、計4つ)が設けられている。各アライメント検出系52は、CCDカメラ55、対物レンズ56、ミラー57、照射手段(図示せず)を備えて構成されており、CCDカメラ55にて、マスク側のアライメントマーク21a,22a(図10に、21aのみ示す。)とワーク側のアライメントマーク12bとを撮像する。なお、マスク側のアライメントマークが視認できる位置に進出した各アライメント検出系52は、マスク側のアライメントマーク21a,21bを上方から撮像するように、マスク調整ベース34a,34bと同期して移動する。
【0029】
これにより、アライメント検出系52によって、表裏のマスク21,22に形成された対応するアライメントマーク21a,22aと、ワーク12のアライメントマーク12bを撮像して検出しながら、アライメント機構49によって表裏のマスク21,22のアライメント調整が行われる。なお、マスク21,22のアライメントマーク21a,22a同士がそれぞれ重なり合うようにアライメント機構49を駆動制御することにより、表裏のマスク21,22のアライメントが行われてもよい。
【0030】
照明光学系60a,60bは、図4に示すように、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ61a、及びこの高圧水銀ランプ61aから照射された光を集光するリフレクタ61bをそれぞれ備えたマルチランプユニット61と、光路ELの向きを変えるための平面ミラー62と、照射光路を開閉制御する露光制御用シャッターユニット64と、露光制御用シャッターユニット64の下流側に配置され、リフレクタ61bで集光された光を照射領域においてできるだけ均一な照度分布となるようにして出射するオプティカルインテグレータ65と、インテグレータ65から出射された光路ELの向きを変えるための平面ミラー63と、高圧水銀ランプ61aからの光を平行光として照射するコリメーションミラー67と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー66と、を備える。なお、オプティカルインテグレータ65と露光面との間には、DUVカットフィルタ、偏光フィルタ、バンドパスフィルタが配置されてもよい。また、光源は、高圧水銀ランプは、単一のランプであってもよく、或いは、LEDによって構成されてもよい。
【0031】
そして、露光時にその露光制御用シャッターユニット64が開制御されると、マルチランプユニット61から照射された光が、平面ミラー62、オプティカルインテグレータ65、平面ミラー63、コリメーションミラー67、平面ミラー66を介して、マスク支持機構に保持されるマスク21,22、ひいては基板Wの表面にパターン露光用の光として照射され、マスクMの露光パターンが基板W上に露光転写される。
【0032】
ここで、図5に示すように、平面ミラー66は、正面視矩形状に形成されたガラス素材からなる。平面ミラー66の裏面の中央付近3箇所、及び周縁部16箇所には、反射鏡支持構造として、支持機構保持枠70に固定された複数の支持機構71が設けられている。中央付近に設けられた支持機構71では、その支持部72が平面ミラー66の裏面に接着剤で固定され、周縁部に設けられた支持機構71では、その支持部72,72aが平面ミラー66の表裏面を挟むようにして接着剤で固定されている。また、各支持機構71の支持部72,72a寄りの位置には、±0・5deg以上の屈曲を許容する屈曲機構としてのボールジョイント74が設けられており、支持機構保持枠70に対して反支持部側の端部には、駆動手段であるモータ75が取り付けられている。
なお、平面ミラー66の中央の支持機構71は、支持機構保持枠70に固定される構造であってもよい。
【0033】
また、矩形状の支持機構保持枠70には、互いに直交する2辺の位置に案内部材76,77が取り付けられており、これら案内部材76,77に対向する支持部72aの側面には、転動部材78が取り付けられている。また、転動部材78を案内する案内部材76,77の案内面76a,77aには、テフロン(登録商標)等の低摩擦機構79が塗布されている。
【0034】
さらに、マスク側のアライメントマーク21a,22aの位置に露光光を反射する平面ミラー66の各位置の裏面には、複数の接触式センサ81が取り付けられている。
【0035】
これにより、平面ミラー66は、接触式センサ81によって平面ミラー66の変位量をセンシングしながら、支持機構保持枠70に設けられた各支持機構71のモータ75を駆動することにより、各支持機構71がその長さを変えて支持部72を直線的に移動させる。そして、各支持機構71の長さの違いによって、平面ミラー66は支持部72に設けられた転動部材78を介して2つの案内部材76,77によって案内されながら、その曲率を局部的に補正し、平面ミラー66のデクリネーション角を補正することができる。その際、図6に示すように、各支持機構71は、ボールジョイント74が設けられているので、支持部側の部分を三次元的に回動可能とすることができ、各支持部72を平面ミラー66の表面に沿って傾斜させることができる。このため、移動量の異なる各支持部72間の平面ミラー66の各支持部72近傍位置での応力が大きくなることが抑えられる。従って、平均破壊応力値が小さいガラス素材からなる場合であっても、平面ミラー66の曲率を局部的に補正する際、ガラスに発生させる応力を従来よりも小さくすることができ、平面ミラー66を破損することなく、10mmオーダーで平面ミラー66を曲げることができ、曲率を大きく変更することができる。
【0036】
なお、図7に示すように、各支持機構71は複数(図7では、2つ)のボールジョイント74を有するものであってもよく、この場合、平面ミラー66の曲げ量は、各ホールジョイント74による回動量の合計とすることができ、平面ミラー66をより大きく曲げることができる。
【0037】
また、本実施形態では、平面ミラー66の曲率を補正した際に、ワーク12のひずみ量に対応する平面ミラー66の曲率補正が行われたかどうかを判断するための曲率補正量検出系90が設けられている。曲率補正量検出系90は、図8に示すように、平面ミラー66の裏面に向けてレーザー光(指向性を有する光)Lを照射するON/OFF可能な複数の検出用光源であるレーザーポインタ(レーザー光源)91と、複数のレーザーポインタ91に対応してそれぞれ設けられ、平面ミラー66の裏面にて反射した複数のレーザー光Lをそれぞれ反射する複数のミラー94を備えた集光ミラー群96と、複数のミラー94で反射された複数のレーザー光Lが投影される反射板92と、反射板92に映りこんだレーザー光Lを撮像する撮像手段としてのカメラ93と、平面ミラー66の曲率を補正した際に撮像されるレーザー光Lの変位量S1,S2を検出し、該変位量S1,S2が、算出されたひずみ量と対応するように支持機構71のモータ75を制御する制御部95(図4参照。)と、を有する。
【0038】
平面ミラー66の裏面には、各支持機構71と干渉しない位置に、略鏡面状の部材99が設けられればよく、アルミシールや小型ミラーなどが取り付けられても良いし、或いは、部分的に鏡面処理が施された部材が貼り付けられてもよい。
【0039】
複数のレーザーポインタ91は、平面ミラー66と略平行となるように固定配置されたレーザー設置用フレーム97にそれぞれ設置され、レーザー光Lを露光光の光束の光路EL外において平面ミラー66より反露光面側から平面ミラー66の裏面に向けて角度を持って照射する。また、集光ミラー群96においても、各ミラー94は、平面ミラー66と略平行となるようにレーザー設置用フレーム97と同一平面上に固定配置されたミラー取付用フレーム98にそれぞれ設置されている。そして、各ミラー94は、該集光ミラー群96よりも小さい反射板92にレーザー光Lを集光するよう各ミラー94の向きを調整できるように、平面で直交する2軸においてそれぞれ回転駆動する、即ち、回転方向で2自由度の調整機構(図示せず)を有する。また、カメラ93は、ミラー取付用フレーム98の中央付近の各ミラー94と干渉しないスペースに取り付けられている。
【0040】
従って、レーザーポインタ91、集光ミラー群96、反射板92、カメラ93は、露光光の光束に影響を与えない、光源からの該光束の光路EL上から離れた位置に配置されている。
【0041】
また、制御部95は、カメラ93によって撮像されたレーザー光Lの位置を、曲率補正前と曲率補正後の変位量S1,S2として検出し、該変位量S1,S2がワーク12のひずみ量α、βに対応しているかどうかを確認して、平面ミラー66の支持機構71のモータ75に制御信号を与える。
【0042】
なお、レーザー設置用フレーム97は各レーザーポインタ91を同じ角度を持って平面ミラー66に照射可能であれば平面ミラー66と略平行な配置に限定されるものでない。また、ミラー取付用フレーム98、反射板92、カメラ93もこれらの機能を実施可能な任意な位置に配置可能である。
【0043】
次に、本実施形態の露光方法について、図9〜図13を参照して説明する。なお、図11及び図12では、ワーク12の上面を露光する場合を模式的に示しており、同様に行われるワーク12の下面を露光する場合については図示省略している。ここで、フープ状のワーク12が露光位置Pにて平板状とされる際、ワーク12がひずんで被露光領域Aが矩形とならず、平行四辺形となる場合がある(図10参照。)。以下では、このようなワーク12に露光する場合について説明するが、図11及び図12では、ワークの対角位置にあるCCDカメラ55を示すものとする。
【0044】
まず、表裏のマスク21,22が位置する露光位置Pにワーク12が搬送され(ステップS1)、ワーク12のアライメントマーク12bと各マスク21,22のアライメント
マーク21aを4箇所のCCDカメラ55で検出する(ステップS2)。そして、制御部95にて、各CCDカメラ55が検出した両アライメントマーク12b、21aのずれ量に基づいて、マスク21,22の中心とワーク12の中心の位置ずれ量と、ワーク12のひずみ量が別々に計算される。そして、マスク21,22の中心とワーク12の中心の位置ずれ量と、ワーク12のひずみ量が、それぞれ許容値以下であるかどうか判断する(ステップS3)。
【0045】
マスク21,22の中心とワーク12の中心の位置ずれ量が許容値を越えている場合には、アライメント機構49による補正量を指令値として算出し、ワーク12のひずみ量が許容値を越えている場合には、平面ミラー66の補正量、具体的には、各支持機構71の移動量を指令値として算出する。
【0046】
そして、ステップS4にて、表裏のマスク21,22をアライメントするアライメント機構49を駆動制御することにより、ワーク12及び各マスク21,22同士のアライメント(ずれ補正)が行われる。これにより、例えば、図10に示すように、各アライメントカメラ52の中心、即ち、マスク21,22の各アライメントマーク21aと、ワーク12の各アライメントマーク12bの位置ずれ量の合計が最小となり、マスク21,22のアライメントマーク21aとワーク12のアライメントマーク12bのずれは主に、ワーク12のひずみに起因するものとなる。
【0047】
次に、そして、ステップS5にて、ワーク12の被露光領域Aの形状に対応するため、平面ミラー66の曲率を補正して、露光光のデクリネーション角を補正する。具体的には、図11に示すようなワーク12のひずみ量α、βに基づいて、各支持機構71の移動量に関する指令値を各モータ75へ送り、接触式センサ81によって平面ミラー66の変位量を確認しながら、各モータ75が駆動制御される。
【0048】
また、この曲率補正の際、レーザーポインタ91が平面ミラー66の裏面に向けてレーザー光Lを照射する。これによって、カメラ93は、図13に示すような、複数のミラー94を介して反射板92に映りこんだ曲率補正前のレーザー光L(図中、黒丸)と、曲率補正後のレーザー光L´(図中、白丸)とを撮像する。
【0049】
そして、アライメント機構49による補正、及び平面ミラー66による補正が行われた後、再度ステップS2にて、ワーク12のアライメントマーク12bと各マスク21,22のアライメントマーク21aを4箇所のCCDカメラ55で検出する。ここで、図12(b)及び(c)から明らかなように、CCDカメラ55は、マスク21,22の光路側に位置するので、平面ミラー66を介した光を受けることができない。このため、CCDカメラ55は、平面ミラー66の曲げ補正によって矯正される両アライメントマークの位置については検出することができず、図11(b)及び(c)と同様、アライメント機構49による補正後のワーク12のアライメントマーク12bと各マスク21,22のアライメントマーク21aを検出する。従って、補正後のステップS3にて、マスク21,22の中心とワーク12の中心の位置ずれ量に基づくアライメント機構49による補正量が許容値以下であるかどうかを判断する。
【0050】
また、ステップS3では、制御部95が、カメラ93によって撮像されたレーザー光L、L´の位置を、曲率補正前と曲率補正後の変位量S1,S2として検出し、該変位量S1,S2がワーク12のひずみ量α、βに対応しているかどうか、具体的には、レーザー光L、L´の変位量S1,S2がワーク12のひずみ量α、βに対応する値に対して許容範囲内であるかを確認する。そして、該変位量S1,S2がワーク12のひずみ量α、βに対応する値の許容範囲内となるまで、平面ミラー66の支持機構71のモータ75に制御信号を与えて、平面ミラー66による曲率補正が行われる。
【0051】
その後、ステップS3にて計算された位置ずれ量及びひずみ量が許容値以下である場合には、ステップS6へ移行し、各マスク21,22の透明フィルム80をワーク12の表裏面に密着させる。そして、マスク21,22とワーク12との間に所定のギャップを与える透明フィルム80を介して、各マスク21,22の外側にそれぞれ配置された照明光学系60a,60bから各マスク21,22に向けて露光光を照射し、該露光光が透明フィルム80を介して、ワーク12の被露光領域A(例えば、下地パターン)に照射される。これにより、各マスク21,22のパターンがワーク12の被露光領域Aの形状と一致した状態で、ワーク12の表裏面に露光転写される。なお、露光時は、露光位置Pにあるワーク12はマスク21,22に保持されるため、各インデクサー17,18によるワーク12のクランプ及びシリンダー装置20によるワーク12へのテンション付与は解除される。
【0052】
上記露光転写が行われた後においては、上述した各インデクサー17,18によってワーク12をクランプした状態でインデクサーテーブル16を所定の送り量で下流側に送って該ワーク12を同方向に搬送して新たな被露光部位を露光位置Pに配置し(ステップS7)、該搬送後に、各インデクサー17,18によるワーク12のクランプを解除してインデクサーテーブル16を元の位置に復帰させ、その後、露光位置Pに送られたワーク12を各インデクサー17,18でクランプしてワーク12のずれ量を小さくすると共に、シリンダー装置20によってワーク12にバックテンションを付与し、上記同様の工程を経て新たな露光転写が行われる。
【0053】
従って、本実施形態の露光方法によれば、ワーク12のアライメントマーク12bとマスク21,22のアライメントマーク21a,22aとをアライメント検出系52で検出する工程と、アライメント検出系52で検出された両アライメントマーク12b,21a,22aのずれ量に基づいて、ワーク12とマスク21,22との位置ずれ量とワーク12のひずみ量α、βとを算出する工程と、算出された位置ずれ量に基づいて、ワーク12とマスク21,22とのアライメントを調整する工程と、アライメント調整工程と同時又は別々のタイミングにおいて、算出されたひずみ量α、βに基づいて、光源からの露光光の光束を反射する平面ミラー66の曲率を補正する工程と、を備える。これにより、ワーク12がひずんでいる場合でもワーク12の被露光領域Aの形状に応じてマスク21,22のパターンを精度良く露光転写することができる。
【0054】
また、平面ミラー66の曲率補正工程は、露光光の光束の光路EL上から離れた位置に配置された複数のレーザーポインタ91から平面ミラー66の裏面に向けて複数のレーザー光Lを照射する工程と、平面ミラー66の裏面にて反射した複数のレーザー光Lが、複数のレーザーポインタ91に対応してそれぞれ設けられた複数のミラー94を備えた集光ミラー群96にて反射して反射板92に投影され、該反射板92に映りこんだ複数のレーザー光Lをカメラ93によって撮像する工程と、平面ミラー66の曲率を補正した際に撮像されるレーザー光L、L´の変位量S1,S2を検出する工程と、を備え、該変位量S1,S2が算出されたひずみ量α、βと対応するように曲率補正するので、レーザー光L、L´の変位量S1、S2を撮像しながらワーク12のひずみ量α、βに対応する平面ミラー66の曲率補正を確実に行うことができる。また、この曲率補正検出系90において、レーザーポインタ91や集光ミラー群96、反射板92はそれぞれ固定して配置されているので、再現性の良い検出が可能となる。また、この曲率補正検出系90は、アライメント検出系52と独立に配置されていることから、アライメント検出系52の位置に係わらず曲率補正工程を実施することができる。
特に、平面ミラー66の裏面に複数のレーザー光Lを照射して、平面ミラー66の曲率を補正した際のレーザー光の変位量を検出するので、レーザー光Lが光路EL上を通過することがなく、自由度の高いレイアウトが可能となる。
【0055】
さらに、カメラ93も、マルチランプユニット61からの露光光の光束の光路上から離れた位置に配置されているので、実際の露光動作中、露光光の光束に影響を与えることがない。
【0056】
また、少なくともアライメント調整工程後に、ワーク12のアライメントマーク12bとマスク21,22のアライメントマーク21a,22aとをアライメント検出系で再検出する工程と、算出工程で、再検出された両アライメント12b,21a,22aのずれ量に基づいて算出されたマスク21,22とワーク12の位置ずれ量が許容値以下であるかどうかを判別する工程と、を備え、判別工程において、マスク21,22とワーク12の位置ずれ量が許容値を越える場合にアライメント調整工程を実行するので、より精度良く露光転写することができる。
【0057】
また、マスク21,22に描画された転写パターンとワーク12との間に所定のギャップが設けられているので、マスク21,22に入射される光が平面ミラー66の曲げによるデクリネーション角によって所定のギャップ分曲げられるので、マスクのパターンがワークのひずみに対応して投影される。これにより、ワーク12がひずんでいる場合でもワーク12の被露光領域Aの形状に応じてマスク21,22のパターンを精度良く露光転写することができる。
【0058】
マスク21,22の下面には、露光時にワーク12と密着可能な透明フィルム80が取り付けられているので、密着露光方式による解像度の高い露光転写を実現できると共に、ワーク12とマスク21,22との間に間隔を持たせる事で、平面ミラー66の曲率を変えてデクリネーション角を補正し、マスク21,22のパターンを、ワーク12のひずみに対応するように精度良く露光転写することができる。
【0059】
また、アライメント検出系52で検出された両アライメントマーク12b,21a,22aのずれ量に基づいて、マスク21,22の中心とワーク12の中心のずれ量と、ワーク12のひずみ量が算出され、平面ミラー66は、算出されたワーク12のひずみ量に基づいて、平面ミラー66の周縁部と裏面のいずれかを支持する複数の支持機構71をモータ75によって駆動することで、その曲率を局部的に補正するので、各支持機構71のモータ75を駆動制御することによって、平面ミラー66の曲率補正を容易に行うことができる。
【0060】
さらに、本実施形態の露光装置によれば、露光光の光束の光路EL上から離れた位置に配置され、平面ミラー66の裏面に向けて複数のレーザー光Lを照射する複数のレーザーポインタ91と、複数のレーザーポインタ91に対応してそれぞれ設けられ、平面ミラー66の裏面にて反射した複数のレーザー光Lをそれぞれ反射する複数のミラー94を備えた集光ミラー群96と、複数のミラー94で反射された複数のレーザー光Lが投影される反射板92と、反射板92に映りこんだ複数のレーザー光Lを撮像するカメラ93と、平面ミラーの曲率を補正した際に撮像される複数のレーザー光L,L´の変位量S1,S2を検出する制御部95と、を有する曲率補正量検出系90をさらに備え、照明光学系60a,60bは、平面ミラー66の周縁部と裏面のいずれかを支持する支持機構71と、支持機構71を移動可能なモータ75と、を備え、マスク支持機構53は、アライメント検出系52で検出された両アライメントマークのずれ量から算出されたマスク21,22とワーク12の位置ずれ量に基づいて、ワーク12とマスク21,22とを相対的に移動することで、ワーク12とマスク21,22とのアライメントを調整するとともに、平面ミラー66は、その曲率を補正した際に曲率補正量検出系90で検出された複数のレーザー光L、L´の変位量S1,S2が、算出されたワーク12のひずみ量α、βと対応するように、モータ75によって支持機構71を移動させることで、その曲率を局部的に補正する。これにより、ワーク12がひずんでいる場合でもワーク12の被露光領域の形状に応じてマスク21,22のパターンを精度良く露光転写することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、ワーク12とマスク21,22とのアライメントを調整した後に、平面ミラー66の曲率補正が行われているが、アライメント調整と平面ミラー66の曲率補正を同時に行って、タクトタイムの短縮を図ってもよい。また、アライメント調整を複数回行って、位置ずれ量が許容値以下となった後に、平面ミラー66の曲率補正を、透明フィルム80とワーク12とを密着させてから行ってもよい。
【0062】
また、本発明は、図14に示すような他の曲率補正量検出系190を設けて、平面ミラーの両面でのレーザー光の変位量を検出しながら、平面ミラー66の曲率補正を行なっても良い。この他の曲率補正量検出系190は、レーザー光Laをそれぞれ照射するON/OFF可能な複数の他の検出用光源であるレーザーポインタ191(レーザー光源)と、平面ミラー66の表面で反射されたレーザー光Laが投影される固定配置された他の反射板192と、複数のレーザーポインタ191に対応してそれぞれ設けられ、平面ミラー66の表面にて反射したレーザー光Laを反射板192に向けてそれぞれ反射する複数のミラー194を備えた他の集光ミラー群196と、平面ミラー66及び集光ミラー群196を介して、反射板192に映りこんだレーザー光Laを撮像するカメラ193(他の撮像手段)と、を備える。
【0063】
複数のレーザーポインタ191も、平面ミラー66と略平行となるように固定配置されたレーザー設置用フレーム197にそれぞれ設置され、レーザー光Laを露光光の光束の光路EL外において平面ミラー66より露光面側から平面ミラー66に向けて角度を持って照射する。また、集光ミラー群196においても、各ミラー194は、平面ミラー66と略平行となるようにレーザー設置用フレーム197と同一平面上に固定配置されたミラー取付用フレーム198にそれぞれ設置されている。そして、各ミラー194は、該集光ミラー群196よりも小さい反射板192にレーザー光Laを集光するよう各ミラー194の向きを調整できるように、平面で直交する2軸においてそれぞれ回転駆動する、即ち、回転方向で2自由度の調整機構(図示せず)を有する。また、カメラ193は、ミラー取付用フレーム198の中央付近の各ミラー194と干渉しないスペースに取り付けられている。
【0064】
従って、この他の曲率補正量検出系190においても、カメラ193によって平面ミラー66の曲率補正前と曲率補正後の変位量を検出することができる。また、この他の曲率補正量検出系190においても、レーザーポインタ191や集光ミラー群196、反射板192はそれぞれ固定して配置されているので、再現性の良い検出が可能となる。また、この曲率補正量検出系190は、アライメント検出系52と独立に配置されていることから、アライメント検出系52の位置に係わらず曲率補正工程を実施することができる。
【0065】
なお、レーザー設置用フレーム197は各レーザーポインタ191を同じ角度を持って平面ミラー66に照射可能であれば平面ミラー66と略平行な配置に限定されるものでない。また、ミラー取付用フレーム198、反射板192、カメラ193もこれらの機能を実施可能な任意な位置に配置可能である。
【0066】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0067】
本発明の曲率を補正する反射鏡としては、上記実施形態の平面ミラー66に限定されるものでなく、他の平面ミラー63やコリメーションミラー67に設けられても良く、任意の反射鏡に適用することができ、また、これらミラー63,66,67の複数のミラーの曲率を補正するようにしてもよい。さらに、複数のミラーを曲率補正する場合には、縮尺補正をコリメーションミラー67によって行い、ひずみ補正を平面ミラー66によって行うように、補正の役割をミラー毎に分担することができる。
【0068】
また、反射板92は、シャッターユニット64と別体に設けられているが、シャッターユニット64が露光光の光路上におけるインテグレータ65の下流側にある場合には、シャッターユニット64によって構成されてもよい。
【0069】
また、曲率補正量検出系として、反射板に照射する光は、レーザー光に限らず、指向性を有する露光光の光束より小さい光束の光を射出するものであればよい。
さらに、本発明の反射鏡曲率調整機構と曲率補正量検出系は、近接露光装置、密着露光装置に限らず、レンズ系でひずみ補正を行う投影露光装置以外の露光装置に適用可能である。
加えて、本発明の指向性を有する光を照射する検出用光源は、マスク近傍に配置されることが好ましいが、反射鏡に対して露光面側に配置されればよく、マスクよりワークチャック側に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
12 ワーク
12b ワーク側アライメントマーク
15a,15b 支持ロール(ワーク支持部)
21,22 マスク
21a マスク側アライメントマーク
49 アライメント機構
52 アライメント検出系
53 マスク支持機構(マスク支持部、送り機構)
60a,60b 照明光学系
61 マルチランプユニット(光源)
63,66 平面ミラー(反射鏡)
67 コリメーションミラー(反射鏡)
71 支持機構
75 モータ(駆動手段)
80 透明フィルム(透過媒体、フォトマスクフィルム)
90 曲率補正量検出系
91 レーザーポインタ(レーザー光源、検出用光源)
92 反射板
93 カメラ(撮像手段)
95 制御部
99 略鏡面状の部材
190 他の曲率補正量検出系
191 レーザーポインタ(他の検出用光源)
192 他の反射板
193 カメラ(他の撮像手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの露光光の光束をマスクを介してワークに照射し、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光方法であって、
前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとをアライメント検出系で検出する工程と、
前記アライメント検出系で検出された前記両アライメントマークのずれ量に基づいて、前記マスクと前記ワークの位置ずれ量と前記ワークのひずみ量とを算出する工程と、
前記算出された位置ずれ量に基づいて、前記ワークと前記マスクとのアライメントを調整する工程と、
前記アライメント調整工程と同時又は別々のタイミングにおいて、前記算出されたひずみ量に基づいて、前記光源からの露光光の光束を反射する反射鏡の曲率を補正する工程と、
を備え、
前記反射鏡の曲率補正工程は、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置された複数の検出用光源から前記反射鏡の裏面に向けて複数の指向性を有する光を照射する工程と、
前記反射鏡の裏面にて反射した前記複数の指向性を有する光が、前記複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられた複数のミラーを備えた集光ミラー群にて反射して反射板に投影され、該反射板に映りこんだ前記複数の指向性を有する光を撮像手段によって撮像する工程と、
前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記指向性を有する光の変位量を検出する工程と、
を備え、該変位量が算出されたひずみ量と対応するように前記曲率補正することを特徴とする露光方法。
【請求項2】
前記反射鏡の裏面には、略鏡面状の部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記反射鏡の曲率補正工程は、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置された他の複数の検出用光源から前記反射鏡の表面に向けて他の複数の指向性を有する光を照射する工程と、
前記反射鏡の表面にて反射した前記他の複数の指向性を有する光が、前記他の複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられた複数のミラーを備えた他の集光ミラー群にて反射して反射板に投影され、該反射板に映りこんだ前記他の複数の指向性を有する光を他の撮像手段によって撮像する工程と、
前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記他の指向性を有する光の他の変位量を検出する工程と、
を備え、前記変位量及び他の変位量が算出されたひずみ量と対応するように前記曲率補正することを特徴とする請求項1または2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記光源からの露光光の光束の光路上から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光方法。
【請求項5】
少なくとも前記アライメント調整工程後に、前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとをアライメント検出系で再検出する工程と、
前記算出工程で、前記再検出された両アライメントのずれ量に基づいて算出された前記マスクと前記ワークの位置ずれ量が許容値以下であるかどうかを判別する工程と、
を備え、
前記判別工程において、前記マスクと前記ワークの位置ずれ量が前記許容値を越える場合に前記アライメント調整工程を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の露光方法。
【請求項6】
前記マスクのパターンとワークとの間に所定のギャップが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の露光方法。
【請求項7】
前記マスクの下面には、前記露光光を透過可能で、且つ、露光時に前記ワークと密着可能な透過媒体が取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の露光方法。
【請求項8】
ワークを支持するワーク支持部と、マスクを支持するマスク支持部と、前記ワークと前記マスクとを相対的に移動させる送り機構と、光源及び該光源からの露光光の光束を反射する反射鏡を備えた照明光学系と、前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとを検出するアライメント検出系と、を備え、前記光源からの露光光の光束を前記マスクを介して前記ワークに照射し、前記マスクのパターンを前記ワークに転写する露光装置であって、
前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置され、前記反射鏡の裏面に向けて複数の指向性を有する光を照射する複数の検出用光源と、前記複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられ、前記反射鏡の裏面にて反射した前記複数の指向性を有する光をそれぞれ反射する複数のミラーを備えた集光ミラー群と、前記複数のミラーで反射された前記複数の指向性を有する光が投影される反射板と、前記反射板に映りこんだ前記複数の指向性を有する光を撮像する撮像手段と、前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記複数の指向性を有する光の変位量を検出する制御部と、を有する曲率補正量検出系をさらに備え、
前記照明光学系は、前記反射鏡の周縁部と裏面のいずれかを支持する支持機構と、該支持機構を移動可能な駆動手段と、を備え、
前記送り機構は、前記アライメント検出系で検出された前記両アライメントマークのずれ量から算出された前記マスクと前記ワークの位置ずれ量に基づいて、前記ワークと前記マスクとを相対的に移動することで、前記ワークと前記マスクとのアライメントを調整するとともに、
前記反射鏡は、前記反射鏡の曲率を補正した際に前記曲率補正量検出系で検出された前記複数の指向性を有する光の変位量が、前記算出されたワークのひずみ量と対応するように、前記駆動手段によって前記支持機構を移動させることで、その曲率を補正することを特徴とする露光装置。
【請求項9】
前記反射鏡の裏面には、略鏡面状の部材が取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の露光装置。
【請求項10】
前記曲率補正量検出系は、前記露光光の光束の光路上から離れた位置に配置され、前記反射鏡の表面に向けて他の複数の指向性を有する光を照射する他の複数の検出用光源と、前記他の複数の検出用光源に対応してそれぞれ設けられ、前記反射鏡の表面にて反射した前記他の複数の指向性を有する光をそれぞれ反射する複数のミラーを備えた他の集光ミラー群と、前記他の複数のミラーで反射された前記他の複数の指向性を有する光が投影される他の反射板と、前記他の反射板に映りこんだ前記他の複数の指向性を有する光を撮像する他の撮像手段と、を備え、
前記制御部は、前記反射鏡の曲率を補正した際に撮像される前記他の複数の指向性を有する光の他の変位量をさらに検出することを特徴とする請求項8または9に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−155086(P2012−155086A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13245(P2011−13245)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(311011449)NSKテクノロジー株式会社 (51)
【Fターム(参考)】