説明

静圧流体軸受装置

【課題】静圧軸受に加わる外乱負荷に対し、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されるようにし、安定した軸受剛性を得ることができる静圧流体軸受装置を提供する。
【解決手段】静圧ポケットと、静圧ポケットに加圧流体を供給する流体供給手段と、流体供給手段から静圧ポケットに至る流体流路13と、流体流路13の途中に設けられ、ダイアフラム43と、弁座45と、ダイアフラム43と弁座45に囲われ、加圧流体が充填される絞り空間部44bを有し、ダイアフラム43の変形により、ダイアフラム43と弁座45との間の絞りの開度Dと、絞り空間部44bの体積が変動する可変絞り40と、静圧ポケットの圧力検出手段と、ダイアフラム43を変形させるダイアフラム変形手段50と、検知された圧力に応じて、ダイアフラム変形を作動させることにより、絞りの開度Dと絞り空間部44bの体積の変動を制御する制御手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変絞り手段を有する静圧流体軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静圧流体軸受装置は、案内面又は軸受面の一方に静圧ポケットを設け、ポンプから高圧に加圧された流体を静圧ポケットに供給することにより、案内面と軸受面の間に所定の厚さの流体膜を形成し、軸受面を非接触に支持して、高精度に運動させるとともに、摩擦を低減する軸受装置である。流体膜は動的に形成された後、排出流路へ排出されることを繰り返すことにより維持されている。静圧軸受に加わる外乱負荷により流体膜に外乱力が作用すると、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されず、軸受剛性が低下する。軸受剛性を安定して維持するにあたり、静圧ポケットへの供給圧力を外乱負荷に応じて制御する必要がある。実際には、ポンプから静圧ポケットに流体を供給する流路途中に絞りを設け、適切に減圧することにより、供給圧力を調整している。絞りには、開度を一定にした固定絞りと、開度が可変な可変絞りがあり、可変絞りでは、開度により流量を増減させることにより、供給圧力を制御することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された従来技術では、静圧ポケットに流体を供給する流路途中に設けられた可変絞りにより、供給流量を制限することで静圧ポケットの圧力を調整し、軸受剛性を維持する流体軸受装置が開示されている。この可変絞りは、内部に流体が流入する充填空間を有し、充填空間には静圧ポケットに連通する流体流通孔が設けられており、流体流通孔に対向してダイアフラムが配置されている。流体流通孔とダイアフラムとの隙間が絞りとなっており、充填空間に流入した流体は、この絞りを経由することにより、流量が制限されて流体流通孔へ流出する。ダイアフラムには圧電アクチュエータが接続されており、圧電アクチュエータを伸縮させて、ダイアフラムを弾性変形させることにより、流体流通孔との隙間を変更できる可変絞りとなっている。静圧ポケットには圧力センサが備えられており、圧力に応じて可変絞りを作動させている。静圧軸受に加わる外乱負荷により流体膜に外乱力が作用し、静圧ポケットの圧力の増加が検出されると、圧力に応じて、圧電アクチュエータによってダイアフラムを引き上げ、可変絞りの開度を大きくすることにより、供給流量を増加させ、軸受剛性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−49415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような流体軸受装置にも、課題は残されている。
特許文献1の流体軸受装置では、静圧ポケットの圧力の増加が検出されると、圧力に応じて、ダイアフラムを引き上げ、可変絞りの開度を大きくし、供給流量を増加させている。ダイアフラムを引き上げると、開度の増加とともに、静圧ポケットと流体流通孔で連通された充填空間の体積が増加することになる。ダイアフラムを引き上げる速度が低速な場合、体積変動の速度も低速であるため、流入した流体は、体積変動の速度に追従して、充填空間が充填され、供給流量は滑らかに増加する。しかし、ダイアフラムを引き上げる速度が高速な場合、体積変動の速度も高速であるため、流入した流体は、体積変動の速度に追従して、充填空間を充填することができない。流入した流体は、静圧ポケットに供給されるよりも、先に増加した充填空間の充填に流れていくため、静圧ポケットの供給流量は一時的に減少する。また、静圧ポケットからの排出流量は一定であるため、静圧ポケットの圧力が低下し、軸受剛性が維持できなくなる。このように、圧力に応じて、ダイアフラムを引き上げ、可変絞りの開度を大きくしたにもかかわらず、一時的に供給流量が減少することにより、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されず、軸受剛性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、可変絞り手段を有する静圧流体軸受装置において、静圧ポケットへの供給流量を増加させた瞬間に発生する、静圧ポケットの圧力低下を抑制することで、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されるようにし、安定した軸受剛性を得ることができる静圧流体軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために提供される請求項1に記載の発明は、軸受面に設けられた静圧ポケットと、前記静圧ポケットに加圧流体を供給する流体供給手段と、前記流体供給手段から前記静圧ポケットに至る流体の通路を形成する流体流路と、前記流体流路の途中に設けられ、ダイアフラムと、弁座と、前記ダイアフラムと前記弁座に囲われ、前記加圧流体が充填される空間部と、を有し、前記ダイアフラムの変形により、前記ダイアフラムと前記弁座との間の絞りの開度と、前記空間部の体積が変動する可変絞りと、前記静圧ポケットの圧力を検出する圧力検出手段と、前記ダイアフラムを変形させるダイアフラム変形手段と、検知された前記圧力に応じて、前記ダイアフラム変形を作動させることにより、前記絞りの開度と前記空間部の体積の変動を制御する制御手段を有していることを特徴とする。
【0008】
本請求項の静圧流体軸受装置は、流体供給流路の途中にダイアフラムと弁座に囲われ、流体が充填される空間部を有したダイアフラム式可変絞り装置が設けられている。絞りは、ダイアフラムと弁座との隙間により構成されているため、ダイアフラムを変形させて、隙間の大きさを変えることにより、絞りの開度を変えることができる。絞りに流入した流体は、空間部を充填し、ダイアフラムと弁座との隙間により構成された絞りにおいて、流量を制限して、静圧ポケットへ供給される。流体が充填される空間部は、ダイアフラムと弁座に囲われているため、ダイアフラムの変形は、空間部の体積を変えることとなる。つまり、ダイアフラムの変形により、絞りの開度を変えると同時に、空間部の体積も変動することになる。このダイアフラム式可変絞り装置は、ダイアフラム変形手段を有しており、制御手段によりダイアフラムを変形を制御することができる。また、静圧ポケットには圧力検出手段が備えられており、制御手段により、検知された圧力に応じて、ダイアフラムの変形を制御することにより、絞りの開度と空間部の体積の変動を制御することができる。本請求項の静圧流体軸受装置は、ダイアフラム式可変絞り装置の絞りの開度と空間部の体積の変動を制御することで、安定して供給流量を増減させることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静圧軸受に加わる外乱負荷により、流体膜に外乱力が作用しても、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されるようにし、安定した軸受剛性を得ることが可能な静圧流体軸受装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の静圧流体軸受装置の概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態のダイアフラム式可変絞り装置の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態の静圧流体軸受装置の概略図。
【図4】図3のAA方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の第1実施形態の静圧流体軸受装置の概略図であり、図2は図1に示されたダイアフラム式可変絞り装置の断面図である。矢印は流体の流れる方向を示している。
【0012】
以下、本実施形態の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態による静圧流体軸受装置1は、直動テーブルの軸受面5に静圧ポケット11を備えており、静圧ポケット11には流体供給口14が設けられている。さらに、静圧ポケット11には圧力センサ18を備えており、静圧ポケット11内の圧力が計測可能になっている。流体供給口14は流体供給流路13と接続している。流体供給流路13はポンプPと静圧ポケット間11を連通しており、流体供給流路13の途中には、ダイアフラム式可変絞り装置40が設けられている。
【0013】
ダイアフラム式可変絞り装置40には、制御装置100が接続されており、制御装置100により絞りの開度Dが制御される可変絞りとなっている。制御装置100は、静圧ポケット11に備えた圧力センサ18により計測された圧力に応じて、絞りの開度Dを変え、静圧ポケット11への供給流量を制限する。
【0014】
図2に示すように、ダイアフラム式可変絞り装置40は、ハウジング48内に、流入口41、流出口42、ダイアフラム43、予圧室44a、弁座45、電磁石50を有している。ダイアフラム43は、ハウジング48に支持され、弁座45に対向して配置されている。ハウジング48内の弁座45の周囲には、円環状に凹設された予圧室44aが形成されている。電磁石50は、非磁性体の中間部材53を介して、ハウジング48に支持され、ダイアフラム43を介して、弁座45と反対側に配置されている。ダイアフラム43と弁座45で形成された隙間が、絞りの開度Dとなる。ダイアフラム43は弾性変形部材であり、弾性変形することで、隙間の大きさを変える。絞り空間部44bは、ダイアフラム43と弁座45に囲まれた空間であり、流入口41に連通している。弁座45と流出口42は貫通孔47にて連通している。流体は、流入口41から予圧室44aに流入し、予圧室44aと絞り空間部44bを充填した後、絞りの開度Dにて流量が制限され、弁座45を経由し、流出口42から流出する。
【0015】
ダイアフラム43は、鋼材等による弾性変形可能な磁性体であり、ダイアフラム変形手段に相当する電磁石50の磁力により吸着可能である。電磁石50は、コイル51及び磁心52にて構成され、所定の電圧をコイル51に印加し、磁力によりダイアフラム43を弾性変形させて引き上げ、絞りの開度Dの大きさを変える。制御装置100は、静圧ポケット11に備えた圧力センサ18が計測した圧力に応じて、電磁石50の印加電圧を変えて、絞りの開度Dの大きさを制御する。
【0016】
ダイアフラム43を変形させ、絞りの開度Dを変えることは、絞り空間部44bの体積を増減することとなる。制御装置100は、ダイアフラム43の変形量と変形速度を制御することで、絞りの動作速度と絞り空間部44bの体積の増加速度を制御する。ダイアフラム43の変形は、電磁石50の磁力により、非接触におこなわれるため、変形時の機械的振動が発生しない。
【0017】
ダイアフラム43は、絞りの最小開度DLから最大開度DHまで、変形させることが可能であり、最小開度DLから最大開度DHの中間位置を、無負荷状態での初期位置とすることで、電磁石50の磁力により絞りの開度Dを制御することができる。流出口42と静圧ポケット11の流体供給口14は、流体供給流路13により接続されており、絞りの開度Dを開くことで、静圧ポケット11への供給流量を大きくして、静圧ポケット11の圧力を高くすることができる。または、絞りの開度Dを小さくすることで、供給流量を小さくして、静圧ポケット11の圧力を低くすることができる。
【0018】
上記のように構成される静圧流体軸受装置1の動作を、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、静圧流体軸受装置1は、ポンプPにより加圧された流体を、流体供給流路13の途中に設けられた、ダイアフラム式可変絞り装置40により減圧し、静圧ポケット11に流体を供給させる。
【0019】
静圧ポケット11に供給された流体により、案内面6と軸受面5の間に所定の厚さの流体膜が形成され、案内面6が支持される。流体膜は動的に形成された後、ドレン31へ排出されることを繰り返すことにより維持されている。静圧軸受に加わる外乱負荷により流体膜に外乱力が作用すると、静圧ポケット11の圧力が変動する。静圧ポケット11の圧力が上昇すると、制御装置100は、静圧ポケット11の圧力の上昇を、圧力センサ18により検知し、圧力に応じて、ダイアフラム式可変絞り装置40を動作させる。
【0020】
ダイアフラム式可変絞り装置40の動作は、図2に示すように、ダイアフラム式可変絞り装置40の電磁石50の印加電圧を上げ、磁力によりダイアフラム43を引き上げ、絞りの開度Dを大きくする。絞りの開度Dが大きくすることにより、静圧ポケット11への供給流量は増加することになる。絞り空間部44bは、一部がダイアフラム43に囲われているため、ダイアフラム43が引き上げられることにより、絞りの開度Dが大きくなるとともに、絞り空間部44bの体積が変動体積C分増加する。流入口41から流入した流体は、変動体積Cを含めた絞り空間部44bを充填状態とした後、ダイアフラム43と弁座45の絞りの開度Dにて流量が制限され、弁座45を経由して流出口42から流出し、静圧ポケット11に供給されることになる。
【0021】
絞りの開度Dを大きくさせる際のダイアフラム43引き上げ速度が低速な場合、体積変動の速度も低速となる。流入した流体は、体積変動の速度に追従して、変動体積Cを含めた絞り空間部44bを充填することができる。そのため、絞りの開度Dに応じて、供給流量を滑らかに増加することができる。しかし、絞りの開度Dを大きくさせる際のダイアフラム43引き上げ速度が高速な場合、体積変動の速度も高速となる。流入した流体は、体積変動の速度に追従して、絞り空間部44bを充填することができず、充填状態となるまでの時間、供給流量が一時的に減少することとなる。
【0022】
このように、静圧ポケット11の圧力に応じて、絞りの開度Dを増加させる際、単純にダイアフラム43の引き上げた場合、絞りの開度Dが増加する瞬間に静圧ポケット11への供給流量が一時的に減少することとなる。本発明の第1実施形態の静圧流体軸受装置1では、絞りの開度Dを増加させる際、ダイアフラム43を引き上げ速度を制御して、変動体積Cを含めた絞り空間部44bの充填状態を維持したまま、絞りの開度Dを増加させている。また、ダイアフラム43の引き上げは、電磁石50により、非接触におこなわれるため、引き上げ時の機械的振動もなく、供給流量も振動しない。そのため、静圧ポケット11への供給流量が一時的に減少することなく、絞りの開度Dを増加することができる。従って、静圧ポケット11の圧力は安定して維持される。
【0023】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態の静圧ポケット一体型可変絞り装置20の断面図であり、図4は図3に示された一体型可変絞り装置20のAA方向矢視図である。矢印は流体の流れる方向を示している。
【0024】
以下、本実施形態の構成について説明する。
図3、図4に示すように、本実施形態による静圧流体軸受装置2は、直動テーブルの軸受面5に静圧ポケット11を備えており、静圧ポケット11には、静圧ポケット11と一体化した可変絞りである、静圧ポケット一体可変絞り装置20が設けられている。静圧ポケット11には圧力センサ18を備えており、静圧ポケット11内の圧力が計測可能になっている。
【0025】
静圧ポケット一体可変絞り装置20には、制御装置(図示せず)が接続されており、制御装置により絞りの開度Dが制御される可変絞りとなっている。制御装置は、静圧ポケット11に備えた圧力センサ18により計測された圧力に応じて、絞りの開度Dを変え、静圧ポケット11への供給流量を制限する。
【0026】
静圧ポケット11の中央部には、略円筒形状の凹部22が設けられており、そこに、ダイアフラム43を介して、弁部材21が嵌合することにより、静圧ポケット11に一体化した可変絞りを構成している。ダイアフラム43は、凹部22と弁部材21により把持されている。凹部22の底部には、電磁石50が備えられている。
【0027】
弁部材21は、略円筒形状をなし、一方端には弁座45と予圧室44aとなる円環状の凹部が形成されており、他方端には弁座45に貫通孔47を介して連通する流出口42を有する平面が形成されている。弁部材21の他方端の流出口42を含む平面は、凹部22に弁部材21が嵌合することで、静圧ポケット11の平面の一部となるように形成されている。流出口42は、静圧ポケット11に流体を供給する流体供給口となっている。予圧室44aには、流路が形成されており、流入口41から流入した流体が充填されるように形成されている。流入口41は、流体供給流路13に接続され、ポンプ(図示せず)からの加圧流体が流入される。弁部材21の弁座45が形成された一方端は、弁座45がダイアフラム43に対向して配置されている。
【0028】
ダイアフラム43と弁座45で形成された隙間が、絞りの開度Dとなる。ダイアフラム43は弾性変形部材であり、弾性変形することで、隙間の大きさを変える。絞り空間部44bは、ダイアフラム43と弁座45に囲まれた空間であり、流入口41に連通している。弁座45と流出口42は貫通孔47にて連通している。流体は、流入口41から予圧室44aに流入し、予圧室44aと絞り空間部44bを充填した後、絞りの開度Dにて流量が制限され、弁座45を経由し、流出口42から流出する。
【0029】
ダイアフラム43は、鋼材等による弾性変形可能な磁性体であり、ダイアフラム変形手段に相当する電磁石50の磁力により吸着可能である。電磁石50は、コイル51及び磁心52にて構成され、所定の電圧をコイル51に印加し、磁力によりダイアフラム43を弾性変形させて引き上げ、絞りの開度Dの大きさを変える。制御装置は、静圧ポケット11は、備えた圧力センサ18が計測した圧力に応じて、電磁石50の印加電圧を変えて、絞りの開度Dの大きさを制御する。
【0030】
ダイアフラム43を変形させ、絞りの開度Dを変えることは、絞り空間部44bの体積を増減することとなる。制御装置は、ダイアフラム43の変形と変形速度を制御することで、絞りの動作速度と絞り空間部44bの体積の増加速度を制御する。ダイアフラム43の変形は、電磁石50の磁力により、非接触におこなわれるため、変形時の機械的振動が発生しない。
【0031】
上記のように構成される静圧流体軸受装置2の動作を、図3に基づいて説明する。
図3に示すように、静圧流体軸受装置2は、ポンプから供給された加圧流体を、流体供給流路13を経由して、静圧ポケット一体可変絞り装置20の流入口41から流入する。流入した流体は、絞り空間部44bを充填し、弁座45とダイアフラム43の隙間により構成された絞りを経由して、弁座45に連通する流出口42から、静圧ポケット11に流体を供給させる。
【0032】
静圧ポケット11に供給された流体により、案内面6と軸受面5の間に所定の厚さの流体膜が形成され、案内面6が支持される。流体膜は動的に形成された後、ドレン31へ排出されることを繰り返すことにより維持されている。静圧軸受に加わる外乱負荷により流体膜に外乱力が作用すると、静圧ポケット11の圧力が変動する。静圧ポケット11の圧力が上昇すると、制御装置は、静圧ポケット11の圧力の上昇を、圧力センサ18により検知し、圧力に応じて、静圧ポケット一体可変絞り装置20を動作させる。
【0033】
静圧ポケット一体可変絞り装置20の動作は、第1実施形態におけるダイアフラム式可変絞り装置40と同じであるため、説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、可変絞り装置が、静圧ポケット11と一体的になっているため、流出口42から絞り部に至る経路が極めて短く、静圧ポケット11の圧力変化の伝達が高速であるとともに、絞りによる供給流量の変更も、即座に静圧ポケット11に反映することができる。また、絞り部から静圧ポケット11に至る配管長による、圧力減衰も無視することができ、供給効率も高い。従って、静圧軸受に加わる衝撃的な外乱負荷により、静圧ポケット11の圧力変動の速度が高速である場合も、絞りの応答動作が高速におこなわれ、外乱負荷に対し、軸受剛性の維持に必要な厚さの流体膜が形成されるようにし、安定した軸受剛性を得ることができる。
【0035】
さらに、絞りから静圧ポケット11に至る配管が不要であるため、コーナー部に起こりがちな、漏れや詰まりといった配管トラブルが少なくなり、保守性及び信頼性が向上するとともに、部品点数を少なくして、コストを低くすることができる。また、絞り装置用の設置場所を設ける必要がないため、機械のレイアウトを容易にして、設計の自由度を上げることができる。
【0036】
本実施形態では、直動テーブルの静圧案内面に適用しているが、スピンドル等の回転軸を支持する静圧軸受に適用してもよい。回転軸の場合、対向する軸受面に配置することで、外乱負荷に対し、高い軸受剛性を持たせることができる。その他、ジャーナル軸受、スラスト軸受、静圧ネジにも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,2:静圧流体軸受装置、 5:軸受面、 6:案内面、 8:ランド
11:静圧ポケット、 13:流体供給流路、 14:流体供給口、
18:圧力センサ(圧力検出手段)、 20:静圧ポケット一体可変絞り、
21:弁部材、 22:凹部、 30:タンク、 31:ドレン、
40:ダイアフラム式可変絞り装置、 41:流入口、 42:流出口、
43:ダイアフラム、 44a:予圧室、 44b:絞り空間部、 45:弁座、
47:貫通孔、 48:ハウジング、 50:電磁石(ダイアフラム変形手段)、
51:コイル、 52、磁心、 53:中間部材、 100:制御装置
D:開度, DL:最小開度、 DH:最小開度、
P:ポンプ(流体供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受面に設けられた静圧ポケットと、
前記静圧ポケットに加圧流体を供給する流体供給手段と、
前記流体供給手段から前記静圧ポケットに至る流体の通路を形成する流体流路と、
前記流体流路の途中に設けられ、ダイアフラムと、弁座と、
前記ダイアフラムと前記弁座に囲われ、前記加圧流体が充填される絞り空間部と、
を有し、
前記ダイアフラムの変形により、前記ダイアフラムと前記弁座との間の絞りの開度と、
前記空間部の体積が変動する可変絞りと、
前記静圧ポケットの圧力を検出する圧力検出手段と、
前記ダイアフラムを変形させるダイアフラム変形手段と、
検知された前記圧力に応じて、前記ダイアフラム変形を作動させることにより、前記絞りの開度と前記空間部の体積の変動を制御する制御手段を有していることを特徴とする静圧流体軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−112519(P2012−112519A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75162(P2011−75162)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】