説明

静的ガスケット

V型内燃機関(10)のための吸気マニホルド(16)などのクランプ継手をシールする際に用いるための静的ガスケット(26)。ガスケット(26)は、盛上り部(40)を形成された金属コア(28)を含む。エラストマーシール材料からなる層(38)は、コア(28)の両面上の少なくとも盛上り部(40)に施されている。クラウンビード(46)は、盛上り部(40)の凸頂部(44)に沿って形成され、1対の側方ビード(48)は、盛上り部(40)の両側に沿ってその凹側に隣接して延在する。ガスケット(26)は、一貫性なく位置ずれしている間隙をシール面に有する継手をシールするために特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この出願は、2006年11月8日に出願された米国特許仮出願番号60/864,843号の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
この発明は、概して、V型内燃機関のための吸気マニホルドのクランプ継手などのクランプ継手をシールする際に用いるための静的ガスケットに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
いわゆる液状エラストマー成形(Liquid Elastomer Molding(LEM))ガスケットは、一般的に知られており、通常、一体成形シールビードを備えるシリコンの薄い層で両面上の選択された領域を被覆された金属コアからなる。こういったビードは、細長い特性があり、通常、クランプ荷重分布および用途の要請に応じてさまざまな高さおよび幅で形成される。典型的な先行技術のLEMガスケットの例を、図3に示す。ベースエラストマー被膜は、良好な全体ミクロシールを提供し、シリコンビードは、決定的に重要な領域における最適なシールを確実にする。LEMガスケットは、高圧流体のシールのためかまたは合わせフランジ間のT継手のためかのいずれかのために端部に沿う成形で設計され得る。
【0004】
V型内燃機関の吸気マニホルドとシリンダヘッドとの間の継目は、シールすることが困難であり得る。通常、複雑な設計で高価な構成の専用ガスケットがこの特定の用途のために指定されている。従来は、LEMガスケットはこの特定の用途に適さなかった。特に、V型エンジンにおける吸気マニホルドは、シリンダヘッドの上方を向いたシール面間に位置決めされ、このシール面にボルト締めされており、シリンダヘッドのこの部分は、吸気マニホルドを通じて受取られた空気燃料混合物のための吸気ポートを含む。吸気マニホルドガスケットは、シリンダヘッドおよびマニホルドのシール面の間に設置され、クランプされると、継目に流体密閉シールを完成させる役目を果たす。図1に一般構成を説明する。
【0005】
シリンダヘッドの面が位置ずれしていると、この領域において困難が生じ得る。位置ずれは、ボルト締めされているさまざまな部品からの積み重なった公差の結果として生じ、これは一方または両方のシリンダヘッドのシール面が所定の理想位置からずれていることをもたらし得る。たとえば、理想位置は、図1に説明するように、シリンダヘッドのシール面が共通の平面上にあることを必要としてもよい。これに代わって、別のエンジン設計においては、理想位置は、シリンダヘッドのシール面がV字型交差面上にあることを必要としてもよく、この場合2つの平面の交差は、エンジンの中央線にちょうど沿った位置にある。そして、吸気マニホルドのシール面は、ガスケットのための全面的な面対面支持を提供して流体密閉シールを実現するためには適正に配向されているべきシリンダヘッドに依存する。しかしながら、たとえば図6に概略的に示すようにシール面が位置ずれしていると、吸気マニホルドガスケットのための本来なら位置合わせされた支持面に段差が生じ、この位置ずれは、ガスケットの不規則荷重と十分なシールを実現するのが困難な可能性とを招く。
【0006】
この問題は、エンジンの製造時に起こり得るシール状況の予測不可能な変動によって悪化する。内燃機関は、当然ながら、組立作業において数百の構成部品を組立てることによ
って作られる。組立作業は、大量生産、高処理能力の工場で行なわれることが多く、こういった工場では、次々とエンジンを作業搬送ラインに沿って組立てる。積み重なった公差は、あるエンジンのシール面が適正に位置合わせされている結果をもたらすことがあり、その一方で、組立ライン上の次のエンジンは、シール面のうち1つが理想の配置から上に段差をつけられていることがあり、組立ライン上のその次のエンジンは、シール面のうち1つが理想の平面から下に段差をつけられていることがあり、以下同様である。この常に変化する予測不可能な環境は、流体密閉シールを実現するのに平行な合わせ面に依存するガスケットにとって真の課題となっている。
【0007】
米国特許第5,530,575号は、薄い金属コアとこのコアの各面に施されたエラストマーシールビードとを有するガスケットを開示している。これは、LEMガスケットの1例であり、LEMガスケットは、多くの用途によく適しており製造が比較的安価である。残念ながら、この種のガスケット構成は、2つの合わせ面の配向が互いに対して予測不可能な用途においてシールすることが困難である。言い換えれば、常に2つの合わせ面の配向が互いに対して平行平面であるまたは一貫して傾斜されていることが予測できるならば、シールビードの高さは、予期される状況に対応するよう設計することができる。しかしながら,上述のように、吸気マニホルドをV型エンジンに組み付ける状況において、合わせ面間の配向は、確信を持って予測することができない。結果として、V型エンジン用途には、効率的かつ低コストで非常に所望されるLEMガスケット構成を利用することができないでいた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、LEMガスケット構成および手法を、合わせシール面の配向にばらつきがあるまたは予測不可能な用途に合うようにすることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
この発明の1つの局面に従う静的ガスケットは、平坦な金属コアを含み、このコアは、2つのシール対象部材間でクランプされるよう構成された対向する第1および第2のシール面と、コアを貫通しており部材の関連付けられた流体通路間での流体の輸送のための少なくとも1つの開口部とを有する。コアは、流体輸送開口部を取り囲む少なくとも1つの変形された金属盛上り部を含む。盛上り部は、第1のシール面と関連付けられた凸側と、第2のシール面と関連付けられた凹側とを有する。コアの第1および第2のシール面の各々上の選択された領域に、エラストマーシール材料からなる単一のシール層が施されている。シール層は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によって形成された少なくとも1つのクラウンビードを含む。クラウンビードは、盛上り部の凸側に沿って連続して延在する。シール層は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によってそれぞれ形成された少なくとも2つの側方ビードをさらに含む。側方ビードは、第2のシール面に沿って、盛上り部の凹側に直接隣接して、互いに間隔をあけた非交差な関係で、その間に盛上り部を配置されて連続して延在する。
【0010】
この発明の別の局面に従って、内燃機関アセンブリが提供される。この内燃機関アセンブリは、1対の間隔をおいて配置されたシリンダヘッドを含む種類であり、各シリンダヘッドは、少なくとも1つの吸気ポートを有する。吸気マニホルドは、少なくとも2つの吸気通路を有する。各吸気通路は、シリンダヘッドのそれぞれ一方と関連付けられている。吸気通路と吸気ポートとは、その間での流体の輸送のために概ね互いと位置合わせされている。1対のガスケットが設けられている。各ガスケットは、シリンダヘッドのそれぞれ一方と吸気マニホルドとの間に機能的に配置されている。各ガスケットは、平坦な金属コアを含み、このコアは、対向する第1および第2のシール面と、コアを貫通しており、関
連付けられた吸気マニホルドおよびシリンダヘッドの吸気通路および吸気ポートと概して位置合わせされた少なくとも1つの開口部とを有する。コアは、開口部を取り囲む少なくとも1つの変形された金属盛上り部を含む。盛上り部は、第1のシール面と関連付けられた凸側と、第2のシール面と関連付けられた凹側とを有する。ガスケットは、コアの第1および第2のシール面の各々上の選択された領域に施された、エラストマーシール材料からなる単一のシール層をさらに含む。シール層は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によって形成された少なくとも1つのクラウンビードを含む。クラウンビードは、盛上り部の凸側に沿って連続して延在する。シール層は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によってそれぞれ形成された少なくとも2つの側方ビードをさらに含む。側方ビードは、第2のシール面に沿って、盛上り部の凹側に直接隣接して、互いに間隔をあけた非交差な関係で、その間に盛上り部を配置されて連続して延在する。
【0011】
この発明に従って製造されたガスケットは、吸気マニホルド継手に関連して上述した状況などの変化する支持状況下でシールすることができる。変形された金属盛上り部と、戦略的に配置されておりエラストマー材料からなるクラウンビードおよび側方ビードとの組合せは、ガスケットが、部品間で相対的な配向にばらつきがあるクランプ面から生じる変化する荷重に対応することを可能にする。よって、V型エンジンにおける吸気マニホルドとシリンダヘッドとの継目の例において、シリンダヘッドの位置ずれは、シール面に変化する間隙をもたらす。盛上り部は、クランプ圧が最大の領域では押しつぶされ、クランプ圧がより低い領域では起伏があり変形されたままである。結果として、継目は、所望されるLEMガスケット技術に従って作られたガスケットを用いて効果的にシールされる。
【0012】
この発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面に関連して考慮されるとより容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】典型的なV型エンジンの簡略化された正面図であり、各シリンダヘッドとの接続点から離して分解され状態で吸気マニホルドを示し、吸気マニホルドガスケットが吸気マニホルドとシリンダヘッドとの間に配置される。
【図2】先行技術に従って作られた例示的な吸気マニホルドガスケットの平面図である。
【図3】典型的な先行技術吸気マニホルドガスケットの断片的な斜視図である。
【図4】この発明に従って作られたガスケットアセンブリの平面図である。
【図5】図4の線5−5に概ね沿った断片的な断面斜視図である。
【図6】V型エンジンのシリンダヘッド間のわずかな位置ずれが吸気マニホルドの不揃いな合わせにつながることがある様子を示す概略図であり、この発明に従って作られたガスケットはずれを吸収するよう構成される。
【図7A】図6におけるように位置ずれした1対のシリンダヘッドおよびこのシリンダヘッドと吸気マニホルドとの間に配置されたこの発明に従って作られたガスケットの非常に簡略化された断片的な断面図である。
【図7B】図7Aと同様だが、ある動作状態として、シリンダヘッドに対してきつくクランプされた吸気マニホルドおよび流体密封シールモードで圧縮されたこの発明のガスケットアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施例の詳細な説明
図面を参照して、いくつかの図を通じて同様の番号は同様または対応する部品を示し、図1の10に、例示的なV型ブロック内燃機関を一般的に示す。エンジン10は、エンジンブロック12と、1対のシリンダヘッド14と、関連付けられた吸気マニホルド16とを含む。シリンダヘッド14は、エンジンブロック12に従来の方法でボルト締めされて
いる。シリンダヘッド14は、この例においては共通の平面上に配向されている上シール面18を有する。しかしながら、他のエンジン用途においては、シリンダヘッド14のそれぞれの上シール面18は、V字状のパターンに角度がつけられていてもよい。
【0015】
各シリンダヘッド14は、図7Aおよび図7Bにおそらく最もよく示す少なくとも1つだがより一般的には複数の吸気ポート20を含む。V6型エンジンの構成において、たとえば、各シリンダヘッド14は、3つの吸気ポート20を含むだろうが、シリンダの数と吸気ポート20の数の間に1:1の関係が常にあるわけではない。吸気ポート20は、典型的に、シリンダヘッド14の長手または縦方向に一列に配置されている。
【0016】
吸気マニホルド16は、シリンダヘッド14間の谷に跨って延在し、通常の方法でシリンダヘッド14にボルト締めされている。複数の関連付けられた吸気通路22としての吸気マニホルド16を、図7Aおよび図7Bにおそらく最もよく示す。吸気通路22は、吸気マニホルド16の平面である(またはV字形の)シール面24にわたってシリンダヘッド14の吸気ポート20と連通している。
【0017】
26で一般的に示す吸気マニホルドガスケットは、シリンダヘッド14のシール面18と吸気マニホルド16のシール面24の間に位置決めされており、吸気ポート20と吸気通路22との流体密封シールをそれらの共通の継目に提供する。
【0018】
理想的には、シリンダヘッド14のシール面18は、吸気マニホルド16のシール面24とシリンダヘッド14のシール面18との間に適正な合わせまたは入れ子状態を提供するためには、吸気マニホルド16のシール面24の固定位置に対応するよう互いに対して所定の位置に配置されるべきである。面18、24が互いに平行の関係に適正に位置合わせされると、ガスケット26は、均一に圧縮されることができ、継目に良好なシールが実現される。しかしながら、図6に概略的に示すようにシリンダヘッド14のシール面18が位置ずれすると、問題が生じ得る。これは、たとえば、機械加工されボルト締めされたさまざまな構成部品からの積み重なった公差の結果として起こり得る。存在が知られている状況は、図6に示すように2つのシリンダヘッドが同一平面上にある関係に配置されているときに、一方のシリンダヘッド14のシール面18が他方のシリンダヘッド14のシール面18より上または下に位置決めされている場合である。同様の位置ずれは、シール面18がV字パターンに構成されているときに起こり得る。よって、図6に説明するように、この状況は、シール面18を、その理想の関係からずれるよう移動させ、吸気マニホルド16の関連付けられたシール面24がもはや適正に合わないよう段差またはずれをシリンダヘッド14の複合シール面18に導入する影響を及ぼし、継目には導入された厚みの変化する間隙が存在する。図6に説明するように、この間隙は、シール面18の一方の側では0.5mm以下であるが先細りし、シール面18の他方の側では0かもしれない。これは従来の吸気マニホルドガスケットの使用時、適正なシールの実現にとって課題となるおそれがある。大量生産、高処理能力の工場においてエンジン間でシール面18間の精密な関係にばらつきがあるという問題に取り組もうとする際に、さらなる困難が生じる。たとえば、あるエンジン10において、右側シリンダヘッド14は左側シリンダヘッド14より高い位置にボルト締めされることがあり、その一方で組立ライン上のすぐ次のエンジン10においては、右側シリンダヘッド14は左側よりも低いことがあり、さらに次のエンジン10においては、シリンダヘッド14は、適正に位置決めされており、そのシール面18は位置合わせされていることがある。
【0019】
この発明に従う静的ガスケットアセンブリ26は、シール面18、24のそれぞれの位置のこのようなばらつきを吸収するよう設計されており、面18が位置合わせされていてもまたは位置ずれしていても、等しく良好にシールすることができる。ガスケットアセンブリ26の好ましい実施例を、図4、図5、図7A、および図7Bに説明する。最も有利
なことに、このガスケットアセンブリ26は、2003年3月11日にpoquetらに特許され、その全体が引用によりこの明細書中に援用される出願人の先の米国特許番号第6,530,575号に説明され示されたものなどの既知のLEMガスケット技術に従って製造される。図3は先行技術のLEMガスケットを説明する。
【0020】
図4および図5を参照することによっておそらく最もよく示されるように、ガスケットアセンブリ26は、亜鉛めっき軟鋼またはアルミニウム組成物から製造されてもよい金属ガスケットコア28を含む。この発明の趣旨から逸脱することなく、他の材料組成物もコア28に用いられてもよい。コア28の厚みは、約0.2−1.5mmであってもよい。コア28は、ガスケット26を通じた流体の輸送のための少なくとも1つの開口部30を備えて形成されている。V6型エンジンにおける吸気マニホルドガスケットとして用いられるのに適したガスケット26の場合、コア28は、各シリンダヘッド14にある3つの吸気ポート20に対応する3つのこのような流体開口部30を含むであろう。各シリンダヘッド14に対して1つのガスケット26があり、開口部30の具体的な数は、エンジン用途によって異なることがあることが理解されるであろう。コア28は、マニホルド16をシリンダヘッド14に取付けるために用いられる締結具(図示せず)を収容するためのその他の孔32をさらに有してもよい。締結具孔32は、開口部30から間隔をおいて配置されている。
【0021】
図5におそらく最もよく説明するように、コア28には、対向する第1のシール面34と第2のシール面36とがある。シール面34、36は、高分子シール材料からなる単一の薄い層38で完全にまたは実質的に被覆されていてもよい。シール層38の材料は、これに限定されないがシリコンおよびその誘導体を含むシール用途に適した多数の材料のうちいずれかを含んでもよい。シール層38は、シール層が存在する領域において厚みが0から0.5mmの間であるように非常に薄くてもよい。
【0022】
コア28は、金属の単一の層を含み、開口部30のうち少なくとも1つを取り囲む少なくとも1つの変形された金属盛上り部40を含んでもよい。しかしながら、好ましくは、すべての開口部30は、それぞれの盛上り部40によって取り囲まれるであろう。図5に示すように、盛上り部40は、内側に角度がついている側壁42と台地状の頂部44とによって形成された隆起状の構成を有する。
【0023】
シール層38は、盛上り部40を覆って延在し、最も好ましくは、厚みがコア28の厚みの約半分以下である。よって、好ましい実施例において、コア28の厚みは、シール層38の厚みの少なくとも2倍厚いが、この寸法関係は、この発明の趣旨から逸脱することなく、ある特定の用途において破られてもよい。シール層38は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分として形成された少なくとも1つの冠状のシールビード46を備えて形成されている。クラウンビード46は、盛上り部40の凸側に沿って連続して延在する。言い換えれば、図5に示すように、盛上り部40は、コア28の第1のシール面34に対して上方にずらされており、これにより立上がった凸構造を形成している。逆に言えば、第2のシール面36に対する盛上り部40の形状は、凸側を、第2のシール面から見たときに外観が溝または細長いくぼみ状のものとして示す。クラウンビード46は、盛上り部40の最上部に、すなわち頂部44より上に位置決めされている。クラウンビード46は、盛上り部40に沿って盛上り部の長さのすべてまたは一部のみにわたって延在するが、好ましい実施例においては、盛上り部40とクラウンビード46とは共線である。クラウンビード46は、高さおよび幅が均一であってもよく、または両方の寸法はクラウンビードの長さに沿って変化してもよい。図面に示すように、クラウンビード46の断面形状は、概して三角形であり、高さは0.05〜0.4mmにわたってもよい。もちろん他の形状も可能である。クラウンビード46の高さは、好ましくは、シール層38の厚み以上であるが、これは破ることのできない寸法関係ではない。
【0024】
さらに、シール層38は、エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によってそれぞれ形成された少なくとも2つの側方ビード48を含むように形成されている。側方ビード48は、その間に盛上り部40が配置されるように、第2のシール面36に沿って、盛上り部40の凹側に直接隣接して、互いに間隔をあけた非交差な関係で連続して延在する。側方ビード48の断面形状および寸法は、クラウンビード46のものと実質的に同等に形成されていてもよく、または別個の形状および寸法であってもよい。
【0025】
次に、図7Aおよび図7Bを参照して、1対のこのガスケット26が、シリンダヘッド14が位置ずれしているために幅が変化する間隙が存在する状態で、それぞれのシリンダヘッド14と吸気マニホルド16との間でクランプされるという動作状態にある様子が示されている。図7Bに示すように、盛上り部40は、間隙の幅が最小である領域において、圧縮を受け、適切なシールを形成するようにされている。間隙が最大である領域において、クラウンビード46およびフランクビード48は、シリンダヘッド14および吸気マニホルド16の対向するシール面18、24を係合させ、流体密封シールを完成させる役目を果たす。よって、間隙が小さい領域では、盛上り部40は潰れ、ビード46、48はシール層38の機能とともにシールを提供する。間隙が広い領域においては、盛上り部40は現状のまま、または最小限の変形のみであり、ビード46、48は、おそらく周囲のシール層38からの最小限のみの支援で、必要なシールを構築する。このようにして、ガスケット26は、必要とされる予想最大間隙よりも高さが低い盛上り部40を備えて作ることができ、差は、クラウンビード46およびフランクビード48を備えることを通じて補われる。ビード46、48は、シール間隙が均一に0であるまたは0に近い場合においてシールする役目も果たす。この状況において、盛上り部40は、すべての場所で完全に圧縮され、ビード46、48は、まるでコアが完全に平坦であるかのように(すなわち盛上り部40が立ち上がった形状とはならずに)シールする。よって、盛上り部40とエラストマービード46、48との組合せは、ともに働いて、高処理能力の組立ライン作業における位置ずれしたシリンダヘッド14について上述した状況などの、一貫性なく変化する状況下でシールする。
【0026】
前述の発明は、関連する法規に従って説明され、よって、この説明は本質的に、限定するものではなく例示的なものである。開示された実施例の変形例および変更例は、当業者には明らかとなり、この発明の範囲内であってもよい。従って、この発明によってもたらされる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的ガスケットであって、
平坦な金属コアを備え、前記コアは、2つのシール対象部材間でクランプされるよう構成された対向する第1および第2のシール面と、前記コアを貫通しており前記部材の関連付けられた流体通路間での流体の輸送のための少なくとも1つの開口部とを有し、
前記コアは、前記流体輸送開口部を取り囲む少なくとも1つの変形された金属盛上り部を含み、前記盛上り部は、前記第1のシール面と関連付けられた凸側と、前記第2のシール面と関連付けられた凹側とを有し、
前記コアの前記第1および第2のシール面の各々上の選択された領域に施されておりエラストマーシール材料からなる単一のシール層をさらに備え、
前記シール層は、前記エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によって形成された少なくとも1つのクラウンビードを含み、前記クラウンビードは、前記盛上り部の前記凸側に沿って連続して延在し、
前記シール層は、前記エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によってそれぞれ形成された少なくとも2つの側方ビードをさらに含み、前記側方ビードは、前記第2のシール面に沿って、前記盛上り部の前記凹側に直接隣接して、互いに間隔をあけた非交差な関係で、その間に前記盛上り部を配置されて連続して延在する、静的ガスケット。
【請求項2】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記クラウンビードの高さは、前記エラストマーシール材料の厚み以上である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記側方ビードの高さは、前記エラストマーシール材料の厚み以上である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項4】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記コアの厚みは、前記エラストマーシール材料の厚みの少なくとも2倍厚い、請求項1に記載のガスケット。
【請求項5】
横断面から見ると、前記盛上り部は、角度がついている側壁と台地状の頂部とを有する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項6】
横断面から見ると、前記クラウンビードの形状は、概ね三角形である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項7】
横断面から見ると、前記側方ビード各々の形状は、概ね三角形である、請求項1に記載のガスケット。
【請求項8】
前記エラストマー材料は、シリコン系組成物から製造されている、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
内燃機関アセンブリであって、
間隔をおいて配置された1対のシリンダヘッドを備え、各前記シリンダヘッドは、少なくとも1つの吸気ポートを有し、
少なくとも2つの吸気通路を有する吸気マニホルドをさらに備え、前記吸気通路の各々は、前記シリンダヘッドのそれぞれ一方と関連付けられており、前記吸気通路と前記吸気ポートとは、その間での流体の輸送のために概ね互いに位置合わせされており、
1対のガスケットをさらに備え、各前記ガスケットは、前記シリンダヘッドのそれぞれ一方と前記吸気マニホルドとの間に機能的に配置され、各前記ガスケットは、平坦な金属コアを含み、前記コアは、対向する第1および第2のシール面と、前記コアを貫通しており、前記関連付けられた吸気マニホルドおよびシリンダヘッドの前記吸気通路および前記
吸気ポートと概ね位置合わせされた少なくとも1つの開口部とを有し、前記コアは、前記開口部を取り囲む少なくとも1つの変形された金属盛上り部を含み、前記盛上り部は、前記第1のシール面と関連付けられた凸側と、前記第2のシール面と関連付けられた凹側とを有し、
前記ガスケットは、前記コアの前記第1および第2のシール面の各々上の選択された領域に施されておりエラストマーシール材料からなる単一のシール層をさらに含み、
前記シール層は、前記エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によって形成された少なくとも1つのクラウンビードを含み、前記クラウンビードは、前記盛上り部の前記凸側に沿って連続して延在し、
前記シール層は、前記エラストマー材料の一体化し立上がっている部分によってそれぞれ形成された少なくとも2つの側方ビードをさらに含み、前記側方ビードは、前記第2のシール面に沿って、前記盛上り部の前記凹側に直接隣接して、互いに間隔をあけた非交差な関係で、その間に前記盛上り部を配置されて連続して延在する、内燃機関アセンブリ。
【請求項10】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記クラウンビードの高さは、前記エラストマーシール材料の厚み以上である、請求項9に記載のガスケット。
【請求項11】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記側方ビードの高さは、前記エラストマーシール材料の厚み以上である、請求項9に記載のガスケット。
【請求項12】
前記エラストマーシール材料からなるシール層は厚みがあり、前記コアの厚みは、前記エラストマーシール材料の厚みの少なくとも2倍厚い、請求項9に記載のガスケット。
【請求項13】
横断面から見ると、前記盛上り部は、角度がついている側壁と台地状の頂部とを有する、請求項9に記載のガスケット。
【請求項14】
横断面から見ると、前記クラウンビードの形状は、概ね三角形である、請求項9に記載のガスケット。
【請求項15】
横断面から見ると、前記側方ビード各々の形状は、概ね三角形である、請求項9に記載のガスケット。
【請求項16】
前記エラストマー材料は、シリコン系組成物から製造される、請求項9に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2010−514989(P2010−514989A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536473(P2009−536473)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084027
【国際公開番号】WO2008/058227
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】