説明

静電気の生じないコンベアベルトと回転ロール。

【課題】 回転ロール、コンベアベルトが回転や移動によって発生する静電気をなくするためのものであり、炭の静電気防止作用を利用して静電気を防止するものである。
【解決手段】 回転部表面または回転部側面のいずれかまたは双方が炭粉混合物層で構成された回転ロールであり、コンベアベルトに炭混合物層を設けて静電気の発生をなくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機械の回転部と移動部の静電気防止に係る。
【背景技術】
【0002】
ゴムに炭素繊維及び導電性ウイスカーを混入した組成物から成形された除電用ゴム成形構造体であって、この成形構造体としては、芯金と該芯金外周面にゴム層を有する除電用ゴムロールがあるが、炭素繊維では導電性物程度の除電効果しかなく、静電気の影響を排除できない。
【0003】
避雷針の働きをして、強い静電気が紙検出器に落ちるのを防止している板バネの緩衝板はある。
【0004】
発明者が出願した静電気防止シートや静電気防止配管はあるがシート状のものに炭層を設けたものであり、配管やホッパーに炭層を設けたものである。しかし、静止したものが対象であり、回転ロールやコンベアベルトを構成するものではなかった。
【0005】
このように導電性材料によって低減する方法や、発生した静電気を吸収するものはある。
【特許文献1】特願平05−176355
【特許文献2】特願平10−231008
【特許文献2】特願2008−113162
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は生産工程において静電気障害をなくするために考えられたものであり、回転や移動によって起こる静電気電位を100ボルト以下程度の、障害が起こらない電位にするために実施されるものである。
【0007】
従来、静電気を低減するために、材質を導電性にして電荷を移動させることが行われている。特に回転部は静電気の発生が大きなため、材質は金属などの導電性物を使用しているが、やはり生産に障害を与える静電気が生じていた。
【0008】
そのため、例えば回転ロール部には導電性カーボンやカーボン繊維などで成るカーテンを接触させて静電気を除去する方法や、例えば逆電位の静電気を発生させて相殺する方法を取っている。
【0009】
しかし、刻々変化する数千ボルト〜数万ボルトの静電気を影響がない程度に低下することは困難であった。
【0010】
このように静電気を効果的に吸収するものや、発生を無くするものは見つかっていないために、特に常時回転して静電気が発生するような場所では、従来の静電気防除材での目立った効果はなく、現状では加湿をして静電気防除するのが最も効果的である。しかし、紙などの湿気を嫌うものの生産には適正でなく、適切に防除する方法がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
静電気の挙動については様々な意見があるが、紐でつるした同じ球体の片方だけを帯電させてぶつけると、帯電した側の電位が半分に減少し、帯電していない球体はマイナスに帯電する。
【0012】
このように静電気が急速に移動すると、逆相の静電気に変化する。しかし、従来の静電気試験では静止状態での試験が主であり、電荷を持ったものが接近する速度や角度を加味したものは無く、詳しい静電気の挙動は解明されていない。
【0013】
避雷針のような突起が静電気放電に効果的であることは、航空機などで実施されていて知られている。しかし静電気発生部位に電気抵抗がゼロに近い金属製の避雷針を設けた試験では静電気を防除する作用は認められなかった。
【0014】
一方で、炭が静電気を著しく除去する作用があることを発見して、100オーム〜500メガオーム範囲の電気抵抗を有する炭粉混合物層を回転物や移動物に設けると、静電気電位の違いに関わらず、著しく大きな静電気防止作用がある結果を得た。特に100オーム〜1キロオーム範囲の抵抗を有する炭粉混合物層には、周辺の静電気吸収作用に優れた作用がある結果も得た。
【0015】
電気抵抗の大きさは発生する静電気の電荷量によって適正な値があるようであるが、詳細なデータはないため、周辺電位の低下に効果的な100オームから、赤松材の木炭粉を使用した炭粉混合物層の電気抵抗値である500メガオームとした。
【0016】
本発明は、金属のような導電性に優れた材料ではなく、100オーム以上の電気抵抗を有する炭粉混合物層を設けることによって、回転や移動によって生じる静電気を防止して、静電気の発生をなくするために成されたものである。
【0017】
炭粉混合物層を設けたものは、高速回転をしても表面に100ボルト以上の静電気の発生は無いことも確認した。
【0018】
静電気は銅製のような電気抵抗の小さな導線ではアースに落とすことは困難であり、キロオーム単位やメガオーム単位の抵抗を有するものが優れていることから考察して、炭粉の電気抵抗は100〜500メガオームの範囲が望ましい。
【0019】
静電気が主に生じる場所は、回転部分と移動部分のような空気や物とが摩擦する所であり、摩擦が大きくなるほど電荷は増加する。移動部分は回転体が動力源になっているため、回転部分の静電気発生を防止すれば静電気障害を著しく低減することができる。
【0020】
回転ロールは駆動機能を有するものと無いものがあるが、ベルトやシート状のものに動力を与えるために数多く使用されている。
【0021】
駆動機能を有する回転ロールには大きなトルクがかかるが、駆動機能が無いものはガイド的役割を果たすだけで、大きなトルクが働かず磨耗が無いため樹脂製がコストで優れているが、静電気障害が生じるため金属製が一般的であった。
【0022】
炭混合物層の強度は樹脂量や種類によって変化するため、回転ロールの用途に応じて適切に変える必要がある。また、炭は高温で炭化したものが強度は強く磨耗しにくい。
【0023】
更に木炭には破砕できる限界があり、ボールミルで実施するとバラツキはあるが15ミクロン粒径程度以下には破砕できない。更に通常の10倍の時間ボールミルを稼動させてもほぼ同様であり、この粒径が破砕限界である。
【0024】
炭は多孔質であるため破砕しやすいが、破砕限界の粒径にすると破砕が進行しなくなって、磨耗に強い性質になり、磨耗を著しく低減することができる。
【0025】
回転ロールの回転部表面や側面が炭混合物層で構成されていれば、内部が金属製、樹脂製に関わらず静電気が生じないため、内部が樹脂製の回転ロールが使用でき、軽くて非常に安いコストになる。
【0026】
また回転ロールの側面に電気抵抗が1キロオームの炭粉混合物層を設けると、静電気は炭粉混合物層に移動して除電される。
【0027】
請求項1は回転部表面または回転部側面のいずれかまたは双方が炭粉混合物層で構成されていることが特徴であり、回転部表面に100ボルト以上の静電気は現れない。
【0028】
請求項2は炭粉混合物をコンベアベルトの端面や全面に構成したことが特徴であり、コンベアベルト上に発生する静電気が炭粉混合物層のある方向に向かい、一定の速度の電荷移動が起き炭粉混合物層に吸収され除電されるため、コンベアベルト上には障害を与えるような電位が無くなる。このとき電気抵抗が低い100〜10キロオームの炭粉混合物が周辺電位の低下を促すに優れている。また、全面に炭粉混合物層を設ければ更に優れる。
【0029】
本発明における炭粉混合物層の電気抵抗値は、炭粉混合物層中1cm間の測定値である。
【0030】
炭粉には木炭、竹炭、活性炭を使用するが、高温炭化したものが硬くて磨耗が少なく望ましい。
【0031】
100オーム〜10キロオームの範囲であれば、特に炭粉混合物周辺の静電気電位の低下が大きい。
【0032】
炭粉を使用した炭粉混合物は電気抵抗がメガ単位と大きく、ばらつきも大きいため、炭粉に導電性カーボン5〜30%重量加えて電気抵抗を適切に調整した炭混合物層を得ることが好ましい。
【0033】
炭層は炭粉が連続していればよく厚みにはこだわらない。
【発明の効果】
【0034】
回転部や移動部に静電気が生じないため、静電気の発生は著しく低下して静電気による生産ラインへの障害は無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
請求項1では、例えばエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と、炭粉を混合した物、例えばエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤または酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤のいずれかと、セメントと炭粉を混合した物、例えばアクリルシリコン樹脂エマルジョン接着剤と炭粉を混合した物又はこれにセメントを混入した物、例えばアクリル樹脂エマルジョン接着剤と炭粉を混合した物又はこれにセメントを混入した物、例えばウレタン樹脂エマルジョン接着剤と炭粉を混合した物又はこれにセメントを混入した物を得、これを刷毛や吹き付けやどぶ付けで塗工して炭混合物層を設けた回転ロールである。
【0036】
剥離がなく、一定以上の強度を得るためには、例えば炭粉とエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤の配合重量比率は1:0.5〜1.2であり好ましくは1:0.8〜1.0である。他の接着剤を使用した場合の配合比率も概ね同じである。
【0037】
例えば、炭粉とエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤または酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤とセメントの配合重量比率は1:0.4〜1.2:0.2〜0.6であり好ましくは1:0.6:0.3〜0.4である。他の接着剤を使用した場合の配合比率も概ね同じである。
【0038】
熱可塑性樹脂を溶解して炭粉混合物層を得る場合の好ましい配合重量比率は、炭粉重量と樹脂重量が同程度のものであり、樹脂を加熱溶解して炭粉と混合して炭混合物を得る。熱可塑性樹脂にはポリエチレン、ポリプロピレン、ペット、アクリル、ウレタンなどを目的に応じて使用する。
【0039】
このようにして回転部に得た炭粉混合物層を加工して精度を加えると図1、図2のような回転ロールになる。側面に塗工すると図3のような回転ロールになる。
【0040】
請求項2は図4のように例えばコンベアベルト端面に電気抵抗が100オーム〜500メガオームの炭粉混合物層を有する紙や布や金属を取り付けたものであり、例えばコンベアベルトの端面や全面に炭粉混合物を塗工して炭粉混合物層を構成することで静電気を除電する。
【0041】
このときコンベアベルトに設ける炭粉混合物層は直接炭粉混合物を塗工してもよく、炭粉混合物層を有するシートをコンベアベルトに取り付けても効果に変化は無いためどちらでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
機器の各回転部やコンベアベルトに使用する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】回転部に炭粉混合物層を有する軸付き回転ロールの姿図である。
【図2】回転部に炭粉混合物層を有する空回り回転ロールの姿図である。
【図3】片側側面に炭粉混合物層を有する軸付き回転ロールの姿図である。
【図4】片面に炭粉混合物層が設けられたコンベアベルト。
【符号の説明】
【0044】
1. 炭混合物層
2. 回転ロール
3. コンベアベルト
4. 取り付け金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部表面または回転部側面のいずれかまたは双方が炭粉混合物層で構成されていることが特徴であり、炭粉混合物層中の30パーセント重量以上が炭粉であることが特徴の回転ロール。
【請求項2】
全面、端面、中央面のいずれかが炭粉混合物層で構成されていることが特徴のコンベアベルトであり、炭粉混合物層中の30パーセント重量以上が炭粉であることが特徴のコンベアベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42929(P2010−42929A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231496(P2008−231496)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】