説明

静電気防止剤と静電気防止シート

【課題】静電気による障害をよりよく除去できる静電気防止炭シートを提供する。
【解決手段】炭粉とエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と水を混合して、汚れない炭層1を設けることができる静電気防止炭剤を得、様々な材料に塗工して静電気防除に使用するものであり、例えばシート上に炭層1を成形して得た静電気防止炭シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
静電気防止に関する
【背景技術】
【0002】
特開平10−251562に電磁波シールド用導電性塗料に関する資料があるが、このように静電気を防止するためには導電性が重要な要素と考えられていて、導電性カーボンやカーボン繊維を主にした構成からなされている。
【0003】
また、特開2006−022144にタック紙に関わるものがあるが、炭粉の含有率が低く製法や成形方式が異なっていると伴に機能、用途が違う。
【特許文献1】特開平10−251620
【参考文献2】
特開2006−022144
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、静電気を除去するためには、導電性のもので電子の流れをつくって電荷を移動させることが常識であり、生産機械での静電気防止材には導電性カーボンやカーボン繊維を使うのが一般的であった。
【0005】
しかし、静電気を効果的に吸収するものは見つかっていないために、常時静電気が発生するような場所の静電気は吸収することができず、目立った効果はなく、現状では加湿をして静電気防除するのが最も効果的である。
【0006】
しかし、紙などの湿気を嫌うものの生産には適正でなく適切に防除する方法がなかった。
【0007】
コロナ放電やエックス線などを使用する特殊な静電気防止器械はあるが、大掛かりな設備になってコストが高く、生産ラインの変更も必要であり一般的ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は木炭粉の静電気に関する面白い作用を炭粉成型物開発の過程で発見した。
【0009】
片面に木炭層を施したポリエチレンシートと、帯電したポリエチレン板を近づけると接着してポリエチレン板の静電気に反応するが、木炭層を施したポリエチレンシートには静電気が現れず、塵や埃も吸着されない。
【0010】
木炭層を施したポリエチレンシートはポリエチレン板の静電気を吸収もしないが、木炭層側にもポリエチレンシート側にも静電気が表面に現れない。
【0011】
またこのポリエチレンシートを帯電したポリエチレン板に接着させるとポリエチレン板にも静電気は現れない。
【0012】
また、厚さ1.2mmのポリエチレン板二枚のうち一枚が無処理で、一枚の片面に木炭層を施し、双方を擦り合わせて粉塵の吸着実験をすると、無処理のポリエチレン板には多くの粉塵が吸着されるが、木炭層があるポリエチレン板には木炭層側ばかりか、木炭層が無い面でも粉塵が吸着しない。
【0013】
このように比較的厚い誘電体でも、片面に木炭層があれば静電気は生じないが、擦り合わせた無処理の方には静電気は生じる。これは、静電気はポリエチレン板の外周に発生して、木炭層があると木炭層に向かって流れ込んで吸収されると考えられる。
【0014】
消石灰も細孔を有するので実験したが、石灰層を形成したものは無処理のものに比べて粉塵の吸着量は皆無ではないが少なく、静電気は微量であった。
【0015】
木炭と消石灰の粉塵吸着量の違いは細孔の違いによるものであり、木炭には1ナノメートル程度の微細孔が多く在り、消石灰には数ナノレベルの微細孔が少ないためである。
【0016】
このような実験結果から静電気は層になった微細孔によって吸収される性質があり、微細孔をより多く有する多孔質物質が静電気防除作用に優れていることが解かる。
【0017】
発明者は、静電気を除去するために、多孔質物質の木炭や竹炭や活性炭などの炭粉を利用して実施した。
【0018】
木炭や竹炭や活性炭の炭粉を微細孔が塞がれないようポリエチレンフイルム片面に塗布すると、どのような摩擦を与えてもポリエチレンに帯電した電荷が微細孔に吸収されて静電気は表面、裏面共に現れない。
【0019】
電子は導電性の有無に関わらず、数ナノメートルの穴に潜り込む性質があり、木炭や竹炭や活性炭は、このような微細孔を多く有しているため、電子はポリエチレン表面を移動して炭粉層の細孔中に進入しようと移動するため、電子に流れができ、容量の大きな静電気にならないと考えられる。
【0020】
静電気が継続して発生している所で、一箇所に炭粉層がある場合は、炭粉層に向かって継続して電子が移動するため、電子の流れが電流になって静電気は生じない。しかし、炭粉がまばらにある場合は安定的な電子の流れができないために、効率よく静電気を防除できない。
【0021】
静電気が現れない場所を作るためには細孔を多く有する非誘電物で覆えばよく、特に1ナノメートル程度の連続した微細孔を多く有するコストの安いものが最適であり、特に樫の白炭や椰子殻活性炭が微細孔を多く有し優れているが、竹炭や木炭などの黒炭や石灰やゼオライトでもよい。
【0022】
生産工程や流通で問題になるのは生産工程中、静電気によって商品の一部が接着して流れが乱されることであり、物流過程で精密電子部品が静電気によって破壊することである。
【0023】
よって、静電気が原因で問題が生じる場所に1ナノメートル程度を含む連続した微細孔を多く有する炭粉で覆えば、静電気による問題は速やかに解決できる。
【0024】
例えば、静電気の発生する箇所を木炭や竹炭や活性炭で覆えば防止でき、覆う方法は発生場所周辺部に塗布する方法と塗布したシートを張る方法がある。
【0025】
請求項1では0.04〜0.5mm粒の炭粉と、エチレン酢酸ビニル接着剤と、水を10:4〜15:0〜15の比率で混合して静電気防止剤を得、シート基材に金属シート又は高分子樹脂シートを使用して0.05ミリメートルから0.5ミリメートルの厚みに塗布して静電気防止シートを得ることが特徴である。
【0026】
本発明中の静電気防止剤は微細孔を保持して柔軟性があり、金属やプラスチックに塗布でき、乾燥後は耐水性を有する。
【0027】
1ナノメートルを含む連続した微細孔を多く有するものには木炭、竹炭、活性炭などがあるが、炭粉層は摩擦係数が大きく強度が弱い。
【0028】
機械は強度を要すため鉄部分が多いが、炭は摩擦係数が大きく強度が弱いため機械表面を静電気防止剤で覆うと耐久性やすべりや炭粉剥離の問題が生じる場合がある。
【0029】
生産機械に使用するためには汚れる性質をなくして、耐久性を得る必要があるため、合成樹脂や金属シートに塗布し、塗布面が裏になるように張れば耐久性があってすべりもよい。
【0030】
請求項2では請求項1の炭粉塗布面を金属シート又は高分子樹脂シート又は紙又は不織布で覆って接着させ一体化したものであり、木炭層を挟み込んでいるため炭粉が剥がれ落ちないのが特徴であり、機械にも張りやすい。
【0031】
炭層をシート状のものに接着する場合は剥離を防ぐために多量の接着剤を使用しなければならない、このため細孔が塞がれるので吸収力が低下するが、挟み込む場合には炭粉が擦られて剥離する問題が無いので接着剤は少量でよく、接着剤によって細孔が塞がれる問題は最低限にすることができる。
【0032】
請求項3は布間に炭粉層を設けたことが特徴であり、布間に耐水性の木炭層を閉じ込め一体化することで洗濯が可能になり、布の質感が失われないため多方面に使用できる。
【0033】
見た目や肌触りも布であるため静電気防除衣料の生地として使用できる。
【0034】
接着剤はエチレン酢酸ビニル接着剤だけでなく、アクリル樹脂接着剤やシリコン樹脂接着剤のいずれかでもよく、それぞれを混合したものでもよい。
【0035】
金属シートを使用する場合にはアルミニウムが低コストで柔らかなため望ましいが、銅、鉄又はこれらの合金でもよい。
【0036】
静電気防止シートに両面テープを接着していれば、どのような場所にも簡単に貼れて便利がよい。
【0037】
紙加工機の工程中で紙が接着して困っている場所の周辺全面に、静電気防止シートを張ると、静電気は現れず接着した紙を外すための人員が不要になった、更に従来は蒸気で加湿していたが、蒸気を止めても静電気は現れない。
【0038】
このように、静電気防止剤を塗布した面や静電気防止シートを張った面には静電気は現れない。
【0039】
本発明は表面に留まる静電気に対して、木炭などの多孔質性を利用して電子に流れをつくって静電気の性質を変化させたことが特徴であり、常時静電気が発生する場所に設置すれば、静電気による障害はない。
【発明の効果】
【0040】
非常にコストが安く、従来の静電気防止材では不可能であった静電気が現れない面を得ることができる画期的な静電気防除材である。
【実施例1】
【0041】
0.2mm粒の樫白炭粉とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を10:10:8の比率で混合して静電気防止剤を得、ポリエチレンフイルに0.15mmの厚みに均一に塗布し炭側に両面テープを貼る。
【実施例2】
【0042】
0.2mm粒の樫白炭粉とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を10:10:8の比率で混合して静電気防止剤を得、ポリエチレンフイルムに0.15mm厚みに塗布し、その上に紙を覆って圧迫し炭粉層を挟むように接着させる。
【0043】
0.2mm粒の樫白炭粉とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を10:10:8の比率で混合して静電気防止剤を得、布に0.1mm厚みに塗布し、その上に布を覆って圧迫し炭粉層を挟むように接着させる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
静電気防止炭シートは紫外線を吸収するため、シート内部のものは紫外線によって劣化しない。
【0045】
また強い遠赤外線を放射するため、この作用を生かした健康関連商品でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】は請求項2の静電気防止シートの断面図である。
【0047】
【図2】は請求項3の静電気防止布の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1. 炭層
2. シート基材
3. 布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭粉と、エチレン酢酸ビニル接着剤と、水を混合して静電気防止剤を得、金属シート又は高分子樹脂シートのいずれかに塗布して静電気防止シートを得る。
【請求項2】
請求項1の炭粉塗布面を金属シート又は高分子樹脂シート又は紙又は不織布で覆って接着させたものであり、炭層を挟み込んだ静電気防止シート。
【請求項3】
炭粉と、エチレン酢酸ビニル接着剤と、水を混合して静電気防止剤を得、布に塗布した後、更に布を覆って接着して得た、炭粉を布で挟んだ静電気防止シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−238716(P2009−238716A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113162(P2008−113162)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】