説明

静電潜像現像用トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】画像の溶融ムラの発生し難い静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂と離型剤とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法で昇温過程での離型剤の吸熱ピークTmと降温過程での離型剤の発熱ピークTcとを測定したときの、TmとTcとの差が10℃以上30℃未満であり、離型剤のTmが50℃以上65℃以下である静電潜像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法などにより、静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電および露光工程により潜像保持体(感光体)表面に画像情報を静電潜像として形成し、トナーを含む現像剤を用いて、感光体表面にトナー像を現像し、このトナー像を、記録媒体(被転写体)に転写する転写工程、さらに、トナー像を記録媒体表面に定着させる定着工程を経て画像として可視化される。
【0003】
トナーにポリエステル樹脂を結着樹脂として用い、酸由来構成成分としての芳香族成分を全酸由来構成成分に対して90モル%以上含み、アルコール由来構成成分としての直鎖脂肪族ジオールを全アルコール由来構成成分に対して85〜98モル%の範囲で含むポリエステル樹脂を、結着樹脂として、全結着樹脂成分の70質量%以上含み、前記ポリエステル樹脂により厚さ20μmのフィルムを得たとき、当該フィルムの視感反射率Yが1.5%以下であり、かつ、前記ポリエステル樹脂が、ビスフェノールSまたはビスフェノールSアルキレンオキサイド付加物を、全アルコール由来構成成分に対して2〜15モル%の範囲で含むことを特徴とする電子写真用透明トナーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−99122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れる場合に比較して、画像の溶融ムラの発生が抑制された静電潜像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、結着樹脂と離型剤とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法で昇温過程での離型剤の吸熱ピークTmと降温過程での離型剤の発熱ピークTcとを測定したときの、TmとTcとの差が10℃以上30℃未満であり、離型剤のTmが50℃以上65℃以下である静電潜像現像用トナーである。
請求項2に係る発明は、トナーの離型剤ドメイン中に、Alが含まれる請求項1に記載の静電潜像現像用トナーである。
【0007】
請求項3に係る発明は、蛍光X線分析による前記離型剤ドメイン中のAlの含有量が、0.005atom%以上0.1atom%以下である請求項1に記載の静電潜像現像用トナーである。
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナーを少なくとも含む静電潜像現像剤である。
【0008】
請求項5に係る発明は、画像形成装置に着脱されるように装着され、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容し、前記トナーが請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナーであるトナーカートリッジである。
請求項6に係る発明は、現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の静電潜像現像剤を収容するプロセスカートリッジである。
【0009】
請求項7に係る発明は、潜像保持体と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を請求項4に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着手段とを有する画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、前記定着手段における定着ロールの直径が100mm以上500mm以下である請求項7に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明によれば、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れる場合に比較して、画像の溶融ムラの発生を抑制する。
本発明の請求項2に係る発明によれば、トナーの離型剤ドメイン中にAlが含まれない場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明によれば、蛍光X線分析による前記離型剤ドメイン中のAlの含有量が、0.005atom%以上0.1atom%以下である場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
本発明の請求項4に係る発明によれば、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れるトナーを含む現像剤を用いた場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明によれば、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れるトナーを用いた場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
本発明の請求項6に係る発明によれば、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れるトナーを含む現像剤を用いた場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
【0013】
本発明の請求項7に係る発明によれば、離型剤の吸熱ピークTmと発熱ピークTcの温度差、及び吸熱ピークTmのいずれかが特定の範囲から外れるトナーを含む現像剤を用いた場合に比較して、画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
本発明の請求項8に係る発明によれば、上記効果に加え、定着手段における定着ロールの直径が100mm以上500mm以下である定着ロールを用いない場合に比較して、定着ロールの熱履歴が残らず画像の溶融ムラの発生をさらに抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の静電潜像現像用トナー、静電潜像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<静電潜像現像用トナー>
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)は、結着樹脂と離型剤とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法で昇温過程での離型剤の吸熱ピークTm(融解温度)と降温過程での離型剤の発熱ピークTcとを測定したときの、TmとTcとの差が10℃以上30℃未満であり、離型剤のTmが50℃以上65℃以下である。
【0017】
ここで、低温定着性(例えば、120℃以下での定着)を実現するためには、離型剤の融解温度は50℃以上65℃以下であることがよい。
一方、離型剤の融解温度を上記範囲とすると、離型剤の結晶成長が生じ、トナーにおける離型剤の内包性が悪化し易く、離型剤の画像上での染み出しが生じると考えられることから、溶融ムラが生じ易くなる。特に、表面が粗い(例えば、表面粗さRa=2.5μm)の薄紙(例えば、厚み60μm以上500μm以下)を用いた場合には、溶融ムラが顕著に生じ易くなる。
また、表面が粗い薄紙に対する溶融ムラは、定着温度(通紙温度)を下げればある程度抑制されるものの、コート紙のような厚紙(例えば、0.1mm以上0.7mm以下)を連続して定着した後に薄紙(例えば、厚み60μm以上500μm以下)を定着した場合、薄紙の定着温度よりも高温に設定しなければならない厚紙の定着直後に薄紙の定着を行なうと、定着部材の熱履歴により溶融ムラが顕著に生じ易くなる。
このように、上記範囲の融解温度をもつ離型剤を適用すると、溶融ムラが生じ易くなる傾向にある。
そこで、本実施形態に係るトナーでは、離型剤の融解温度を上記範囲とすると共に、上記TmとTcとの差を上記範囲とする。これにより、上記範囲の融解温度をもつ離型剤であっても、結晶成長が抑えられ、トナーにおける離型剤の内包性が悪化され、離型剤の画像上での染み出しが生じ難くなると考えられる。このため、溶融ムラが抑制されると考えられる、
特に、本実施形態に係るトナーでは、上記厚紙の定着直後に薄紙の定着を行なったときでも、溶融ムラが抑制されることから、低温定着性と用紙汎用性との両立も図れる。
【0018】
前記離型剤の融解温度は50℃以上65℃以下とする必要があるが、低温定着性および結晶成長抑制の点で、53℃以上℃62以下が好ましく、56℃以上59℃以下がより好ましい。
56℃以上59℃以下とすることにより、更に低温定着性が優れ、離型剤の結晶成長を抑制できる。
離型剤の融解温度が50℃未満の場合、定着された画像上から離型剤が露出してしまい、画像が離型剤で曇ってしまう。離型剤の融解温度が65℃より高い場合は、離型剤の結晶成長により生じる溶融ムラは抑えられるが、低温定着域を獲得できない。また、通紙後の定着画像上での離型剤の再結晶化が徐々に進行するために定着画像のヒビが発生する原因ともなる。離型剤の融解温度を50℃以上65℃以下とした場合、低温定着は可能となるが、表面粗い薄紙を定着した場合、画像上の溶融ムラが目立ってしまい、定着用紙汎用性を損なう。
【0019】
前記離型剤のTmとTcとの差は、10℃以上30℃未満とする必要があるが、離型剤の結晶成長の抑制及び溶融ムラの抑制の点で、15℃以上25℃未満が好ましく、18℃以上22℃未満がより好ましい。18℃以上22℃未満とすることにより、離型剤の結晶成長及び画像上の溶融ムラが更に抑制される点で好ましい。
前記TmとTcとの差(Tm−Tc)が10℃未満であると、画像の定着の際に離型剤の結晶成長が進行してしまい、画像上の溶融ムラが生じてしまう。また、TmとTcとの差が30℃以上であると、離型剤のTcは20℃以上25℃以下となり、画像上に離型剤が飛び出してしまいブラーが生じてしまう。
【0020】
離型剤の融解温度と、TmとTcとの差(Tm−Tc)との好適な組み合せは、融解温度が56℃以上59℃以下であって、離型剤のTmとTcとの差(Tm−Tc)が10℃以上30℃未満であることが好ましい。更に、離型剤の融解温度が56℃以上59℃以下であって、離型剤のTmとTcとの差(Tm−Tc)が18℃以上22℃未満であることがより好ましい。
【0021】
本発明は、離型剤の融解温度を規定しつつ離型剤の内包性を良くすることにより、低融解温度の離型剤、つまり、トナー表面に染み出し易い離型剤を含有させても厚紙から薄紙までの定着工程で生じる離型剤の染み出しによる画像溶融ムラが起こらなくすることができ、低温定着性及び定着用紙汎用性の両立がされる。
【0022】
なお、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法(D3418−8)に基づくTm及びTcは、以下の方法によって求めたものである。1)試料10mgをアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを試料用セルという)。比較用にアルミナ10mgを同様に同型のアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを比較用セルという)。2)試料用セルと比較用セルとをそれぞれ測定装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温させ、200℃で10分間放置する。3)放置後、液体窒素を用いて−10℃/分の降温速度で−30℃まで温度を下げ、10分間−30℃で放置する。4)放置後、20℃/分の昇温速度で−30℃から200℃まで昇温する。4)の操作の際に、吸熱・発熱曲線を求める。得られた吸熱・発熱曲線からTm及びTcを決定する。測定装置としては、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7を用いた。
【0023】
なお、得られた吸熱・発熱曲線において、Tm及びTcがトナーに含まれる離型剤由来のものであるか否かは以下のように判断する。
Tmについては離型剤の融解温度付近に生じる吸熱曲線の示すピークトップ温度を離型剤のTmと判断した。
Tcについても離型剤の融解温度付近に生じる発熱曲線の示すピークトップ温度を離型剤のTcと判断した。
【0024】
本実施形態においてTmとTcとの差を30℃以上60℃以下とする方法に特に限定はないが、例えば、離型剤ドメイン中にAlの金属元素を含ませる方法、離型剤、分散剤及びイオン交換水を混合し高圧/高温分散する際にAlを含有する凝集剤を同時に分散させるなどの方法がある。
【0025】
本実施形態の一例においては、トナーの離型剤ドメイン中にAlの金属元素を含有させてもよい。Alの金属元素は、離型剤に対して結晶阻害剤としての機能を有する。さらに、Alの金属元素がトナーの結着樹脂に対してイオン結合し、離型剤の結晶成長を阻害する効果を有する。その結果として、TmとTcとの差が30℃以上60℃以下とされる。これにより、定着後の光沢むらの発生がさらに効果的に防止される。
離型剤ドメイン中に含まれる金属元素としては、価数が高くイオン結合による離型剤の結晶化抑制に有効であるとの理由からAlであることが好ましい。
離型剤ドメイン中にAlの金属元素を含ませる方法については後述する。
【0026】
なお、離型剤ドメイン中にAlの金属元素が含まれているか否かは、下記方法により確認される。
まず、トナー粒子をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム(日立テクノロジーズ社製)を用いて−100℃の下、切削サンプルを切削し、観察用サンプルを作製する。更に、この観察用サンプルを四酸化ルテニウム雰囲気下となっているデシケーター内に放置し、染色を行う。染色の判断は、同時に放置したテープの染色具合により判断される。この様にして染色された観察サンプルをTEMにより倍率5000倍前後で観察される。
なお、トナーサンプルは四酸化ルテニウムで染色されているため、結着樹脂や離型剤を、染色の濃淡の違いや形状から判別される。トナー内部の棒状、塊状に存在し、より白いコントラストの部分を離型剤ドメインと判断した。
次に、離型剤ドメイン中のAlの金属元素については、観察用サンプルを電子顕微鏡S4100に取り付けたエネルギー分散型X線分析装置EMAX model6923H(HORIBA社製)を用いて加速電圧20kVでマッピングし、離型剤ドメイン中に金属元素が含まれているか否かを判別した。
【0027】
蛍光X線分析によるトナーの前記離型剤ドメイン中のAlの含有量は、0.005atom%以上0.10atom%以下が好ましく、0.005atom%以上0.05atom%以下がさらに好ましく、0.01atom%以上0.05atom%以下が特に好ましい。
Alの含有量が0.005atom%未満では離型剤の結晶成長を抑制することができないことがあり、また、光沢むらを抑制できないことがある。一方で、0.10atom%よりも多いと、離型剤の結晶成長を抑制するが、離型剤の溶融を抑制するため被転写体と定着部材との剥離性に劣ることがある。特に低温定着の際や、プロセススピードが500mm/sの条件下では剥離性が特に悪化する場合がありし、トナーとして好ましくないときがある。離型剤ドメイン中のAlの含有量が上記範囲であると、離型剤の結晶成長を効果的に抑制し、定着後の溶融ムラの発生がさらに効果的に防止される。
なお、本実施形態において低温定着とは、トナーを120℃程度以下で加熱して定着させることをいう。
【0028】
以下に、本実施形態に係るトナーを構成する各成分について説明する。
本実施形態に係るトナーは、結着樹脂と離型剤と必要に応じてその他の添加剤とを含んで構成される。
【0029】
(結着樹脂)
本実施形態に係るトナーは結着樹脂を含む。
本実施形態においては、結着樹脂の種類は特に限定されるものではなく、各種の天然又は合成高分子物質よりなる熱可塑性樹脂を用いてもよい。例えば、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等が単独又は混合して用いられる。これら結着樹脂の中でも、低エネルギーでの定着の点でポリエステル樹脂を含有していることが好ましい。
【0030】
なお、ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。
【0031】
−結晶性ポリエステル樹脂−
本実施形態においては、加熱による粘度の急激な変化がより現れる点、さらに機械的強度と低温定着性との両立の観点から、結晶性ポリエステル樹脂を用いることが望ましい。
【0032】
ここで、前記結晶性ポリエステル樹脂における『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10(℃)以内であることを意味する。一方、半値幅が10℃を超える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂(無定形高分子)を意味する。
【0033】
また、結晶性ポリエステル樹脂を構成する重合性単量体成分としては、結晶構造を容易に形成するため、芳香族成分を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族成分を有する重合性単量体が望ましい。さらに結晶性を損なわないために、構成される重合性単量体由来構造単位は、重合体中で単一種で各々30モル%以上であることが望ましい。
【0034】
本実施形態で用いる結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度は、前記の示差走査熱量測定(DSC)により得られた吸熱ピークのピーク温度として求めた。
【0035】
本実施形態において「結晶性ポリエステル樹脂」は、その構成成分が100%ポリエステル構造であるポリマー以外にも、ポリエステルを構成する成分と他の成分とを共に重合してなるポリマー(共重合体)も意味する。但し、後者の場合には、ポリマー(共重合体)を構成するポリエステル以外の他の構成成分が50質量%以下である。
【0036】
本実施形態のトナーに用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、例えば多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、本実施形態においては、前記結晶性ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0037】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸、ドデセニルコハク酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
【0038】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の特定の芳香族カルボン酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、酸成分としては、前記脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
さらに、前記脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。
【0040】
本実施形態のトナーに用いられる結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが望ましい。
【0041】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオールの含有量が80モル%以上であることが好ましく、より望ましくは90モル%以上である。脂肪族ジオールの含有量が80モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下する為、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0043】
なお、必要に応じて酸価や水酸基価の調製等の目的で、多価カルボン酸や多価アルコールを合成の最終段階で添加してもよい。多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の一分子中に少なくとも3つのカルボキシル基を有する芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類等が挙げられる。
【0045】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度を180℃以上230℃以下として行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
重合性単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0046】
前記ポリエステル樹脂の製造の際に使用される触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0047】
本実施形態に用いる結晶性ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するのに必要なKOHのmg数)は、3.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下の範囲であることが望ましく、6.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下の範囲にあることがより望ましく、8.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下の範囲にあることがさらに望ましい。なお、本実施形態において、酸価の測定は、JIS K−0070−1992に準ずる。
【0048】
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、3質量%以上40質量%以下の範囲であることが望ましく、より望ましく4質量%以上35質量%以下の範囲であり、さらに望ましくは5質量%以上30質量%以下の範囲である。
【0050】
(非晶性ポリエステル樹脂)
本実施形態においては、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を用いることで、前記結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が向上するため、結晶性ポリエステル樹脂の融解温度における低粘度化に伴い、非晶性ポリエステル樹脂も低粘度化し、トナーとしてのシャープメルト性(鋭敏な溶融特性)が得られるために、低温定着性に有利である。また結晶性ポリエステル樹脂との濡れ性が良好なことから、結晶性ポリエステル樹脂のトナー内部への分散性が向上し、結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面への露出を抑制するため、帯電性への悪影響が抑制される。またこの理由により、トナーの強度や定着画像の強度向上の観点でも望ましい。
【0051】
本実施形態において望ましく用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;が挙げられ、これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いてもよい。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが望ましい。また、良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが望ましい。
【0052】
前記非晶性ポリエステル樹脂における多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールを1種又は2種以上用いてもよい。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより望ましい。また、より良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0053】
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上80℃以下の範囲であることが望ましい。
非晶性ポリエステル樹脂のTgは50℃以上65℃以下であることがより望ましい。
なお、上記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、前記の示差走査熱量測定(DSC)により得られた吸熱ピークのピーク温度として求めた。
【0054】
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、40質量%以上95質量%以下の範囲であることが望ましく、より望ましく50質量%以上90質量%以下の範囲であり、さらに望ましくは60質量%以上85質量%以下の範囲である。
【0055】
なお、上記非晶性ポリエステル樹脂の製造は、前記結晶性ポリエステル樹脂の場合に準じて行ってもよい。
以上、本実施形態における結晶性樹脂、非晶性樹脂について、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂により説明したが、前記のポリエステル樹脂の製造以外の内容は、本実施形態における他の結晶性樹脂、非晶性樹脂についても適用される。
【0056】
(離型剤)
本実施形態に係るトナーは離型剤を含む。
離型剤は、前記Tm−Tcとの差が10℃以上30℃未満で、Tm(融解温度)が50℃以上65℃以下を満たしていれば、とくに規定はなく、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;エステルワックス、モンタンワックス、オレフィンワックス等が挙げられる。
これらの中でも、白色度の観点から、オレフィンワックス、エステルワックス、パラフィンワックスの中から選択される1種以上が好ましい。
離型剤のトナー中の含有量は0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%以上であるとトナー定着時の画像剥離抑制の傾向となり、15質量%以下であるとワックス染み出しによる画像ブラー抑制の傾向となり好ましい。
【0057】
(その他の添加剤)
本実施形態に係るトナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0058】
無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が好ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0059】
(トナーの特性)
本実施形態に係るトナーの体積平均粒子径は4μm以上9μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは4.5μm以上8.5μm以下の範囲であり、さらに望ましくは5μm以上8μm以下の範囲である。
【0060】
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行う。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
【0061】
さらに、本実施形態に係るトナーは、形状係数SF1が110以上140以下の範囲の球状であることが好ましい。形状がこの範囲の球状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像が形成される。
上記形状係数SF1は110以上130以下の範囲であることがより好ましい。
【0062】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
【0063】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0064】
本実施形態に係るトナーは、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーからなる群より選択される少なくとも一種の有色トナーと共にトナーセットを構成してもよい。
有色トナーに用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が望ましい。
望ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用される。
【0065】
有色トナーにおける前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲が望ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等を得られる。
【0066】
なお、本実施形態における有色トナーは、着色剤を含む以外、本実施形態に係るトナー(透明トナー)の成分を含有してもよい。また、粒子径等のトナーの特性に係る好ましい範囲も本実施形態に係るトナーと同様である。
【0067】
<トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練・粉砕製法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によって作製される。これらの方法の中でも、コアシェル構造のトナーを作成容易な乳化凝集法が好ましい。以下、乳化凝集法による本実施形態のトナーの製造方法について詳しく説明する。
【0068】
本実施形態に係る乳化凝集法はトナーを構成する原料を乳化して樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子の凝集体を形成する凝集工程と、凝集体を融合させる融合工程とを有する。
【0069】
(乳化工程)
例えば樹脂粒子分散液の作製は、水系媒体と樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行われる。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子は形成される。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用してもよい。さらに、樹脂が油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、該樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製してもよい。
【0070】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水であることが望ましい。
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0071】
前記乳化液の作製に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒子径)は1.0μm以下が好ましく、60nm以上300nm以下の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは150nm以上250nm以下の範囲である。60nm未満では、樹脂粒子が分散液中で安定な粒子となるため、該樹脂粒子の凝集が困難となる場合がある。また1.0μmを超えると、樹脂粒子の凝集性が向上しトナー粒子を作製することが容易となるが、トナーの粒子径分布が広がってしまう場合がある。
【0072】
離型剤分散液の調製に際しては、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散した後、離型剤の融解温度以上の温度に加熱すると共に、強いせん断力を付与するホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて分散処理する。この処理を経ることにより、離型剤分散液を得られる。分散処理の際、ポリ塩化アルミニウム等の無機化合物を分散液に添加することにより、離型剤にAlの金属元素を含有させてもよい。好ましい無機化合物としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、高塩基性ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が好ましい。上記離型剤分散液は乳化凝集法に用いられるが、トナーを懸濁重合法により製造する際にも上記離型剤分散液を用いてもよい。
【0073】
分散処理により、体積平均粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液を得られる。なお、より好ましい離型剤粒子の体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下である。
体積平均粒子径が100nm未満では、使用される結着樹脂の特性にも左右されるが、一般的に離型剤成分がトナー中に取り込まれにくくなる。また、500nmを超える場合には、トナー中の離型剤の分散状態が不充分となる場合がある。
【0074】
(凝集工程)
前記凝集工程においては、樹脂粒子の分散液、離型剤分散液等を混合して混合液とし、樹脂粒子のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる場合が多い。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、この際、凝集剤を使用することも有効である。
なお、凝集工程において、離型剤分散液は、樹脂粒子分散液等の各種分散液とともに一度に添加・混合してもよいし、複数回に分割して添加しても良い。
【0075】
凝集剤としては、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いてもよい。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0076】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。より狭い粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
本実施形態においては、アルミニウムを含む4価の無機金属塩の重合体を用いることが、狭い粒度分布を得るため好ましい。
【0077】
また、前記凝集粒子が所望の粒子径になったところで樹脂粒子分散液を追添加することで(被覆工程)、コア凝集粒子の表面を樹脂で被覆した構成のトナーを作製してもよい。この場合、離型剤や着色剤がトナー表面に露出しにくくなるため、帯電性や現像性の観点で望ましい構成である。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0078】
(融合工程)
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、前記樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。また、前記樹脂で被覆した場合には、該樹脂も融合しコア凝集粒子を被覆する。前記加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0079】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、樹脂のガラス転移温度(ガラス転移温度±10℃の範囲)で冷却速度を落とす、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子としてもよい。
【0080】
−外添剤および内添剤−
得られたトナー粒子は、帯電調整、流動性付与、電荷交換性付与等を目的として、シリカ、チタニア、酸化アルミに代表される無機酸化物を添加付着してもよい。これらは、例えばV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等によって行うことができ、段階を分けて付着させる。
【0081】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子及び/又はチタニア粒子が好ましく、特に疎水化処理されたシリカ粒子、チタニア粒子が好ましい。
【0082】
前記疎水化処理の手段としては従来公知の方法を用いられる。具体的にはシラン、チタネート、アルミネート等の各カップリング処理が挙げられる。カップリング処理に用いるカップリング剤としては特に制限はないが、例えばメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、等のシランカップリング剤;チタネートカップリング剤;アルミネートカップリング剤;等が好適な例として挙げられる。
【0083】
更に、必要に応じて種々の添加剤を添加してもよく、これらの添加剤としては、他の流動化剤やポリスチレン粒子、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子等のクリーニング助剤やジンクステアリルアミド、チタン酸ストロンチウム等の感光体付着物除去を目的とした研磨剤等があげられる。
【0084】
前記外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲が好ましく、0.3質量部以上2質量部以下の範囲がより好ましい。
更に必要に応じ、超音波篩分機、振動篩分機、風力篩分機などを使って、トナーの粗大粒子を外添後取り除いてもよい。
【0085】
また、上述した外添剤以外にも、帯電制御剤、有機粒体、滑剤、研磨剤などのその他の成分(粒子)を添加されてもよい。
【0086】
帯電制御剤としては、特に制限はないが、無色または淡色のものが好ましく使用される。例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロムなどの錯体、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
【0087】
有機粒体としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される粒子が挙げられる。なお、これらの無機粒体や有機粒体は、流動性助剤、クリーニング助剤等として使用される。
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、前述のシリカ、アルミナ、酸化セリウムなどが挙げられる。
【0088】
<静電潜像現像剤>
本実施形態に係る静電潜像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係るトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
【0089】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いてもよい。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0090】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等を例示されるが、これらに限定されるものではない。導電材料としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色導電剤が好ましい。白色導電剤を用いることにより、キャリア片が被転写体に転写された際に、トナー像中においてキャリア片が目につきにくくなる。
【0092】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが望ましい。キャリアの芯材の体積平均粒子径としては、一般的には10μm以上500μm以下の範囲にあり、望ましくは30μm以上100μm以下の範囲にある。
【0093】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0094】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0095】
前記二成分現像剤における、本実施形態に係るトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が望ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより望ましい。
【0096】
<トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を本実施形態に係る静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着手段とを有し、必要に応じて前記潜像保持体の転写残留成分をクリーニングするクリーニング手段等のその他の手段を有してもよい。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、感光体ドラム等の潜像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等であってもよい。
【0097】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る静電潜像現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0098】
以下に、図面を参照しながら本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体としての感光体が複数、即ち画像形成ユニット(画像形成手段)が複数設けられたタンデム型の構成に係るものである。
【0099】
本実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すように、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成ユニット50Y、50M、50C、50Kと、透明画像を形成する画像形成ユニット50Tが、間隔をおいて並列的に(タンデム状に)配置されている。
ここで、各画像形成ユニット50Y、50M、50C、50K、50Tは、収容されている現像剤中のトナーの色を除き同様の構成を有しているため、ここではイエロー画像を形成する画像形成ユニット50Yについて代表して説明する。尚、画像形成ユニット50Yと同様の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、透明(T)を付した参照符号を付すことにより、各画像形成ユニット50M、50C、50K、50Tの説明を省略する。本実施形態においては、画像形成ユニット50Tに収容されている現像剤中のトナー(透明トナー)として本実施形態に係るトナーが用いられる。
【0100】
イエローの画像形成ユニット50Yは、潜像保持体としての感光体11Yを備えており、この感光体11Yは、図示の矢印A方向に沿って図示しない駆動手段によって予め定められたプロセススピードで回転駆動されるようになっている。感光体11Yとしては、例えば、赤外領域に感度を持つ有機感光体が用いられる。
【0101】
感光体11Yの上部には、帯電ロール(帯電手段)18Yが設けられており、帯電ロール18Yには、不図示の電源により予め定められたの電圧が印加され、感光体11Yの表面が予め定められたの電位に帯電される。
【0102】
感光体11Yの周囲には、帯電ロール18Yよりも感光体11Yの回転方向下流側に、感光体11Yの表面を露光して静電潜像を形成する露光装置(静電潜像形成手段)19Yが配置されている。なお、ここでは露光装置19Yとして、スペースの関係上、小型化のLEDアレイを用いているが、これに限定されるものではなく、他のレーザービーム等による静電潜像形成手段を用いても勿論問題無い。
【0103】
また、感光体11Yの周囲には、露光装置19Yよりも感光体11Yの回転方向下流側に、イエロー色の現像剤を保持する現像剤保持体を備える現像装置(現像手段)20Yが配置されており、感光体11Y表面に形成された静電潜像を、イエロー色のトナーによって顕像化し、感光体11Y表面にトナー画像を形成する構成になっている。
【0104】
感光体11Yの下方には、感光体11Y表面に形成されたトナー画像を一次転写する中間転写ベルト(一次転写手段)33が、5つの感光体11T,11Y,11M,11C,11Kの下方に渡るように配置されている。この中間転写ベルト33は、一次転写ロール17Yによって感光体11Yの表面に押し付けられている。また、中間転写ベルト33は、駆動ロール12、支持ロール13およびバイアスロール14の3つのロールによって張架され、感光体11Yのプロセススピードと等しい移動速度で、矢印B方向に周動されるようになっている。中間転写ベルト33表面には、上記のようにして一次転写されたイエローのトナー画像に先立ち透明トナー画像が一次転写され、次にイエローのトナー画像が一次転写され、更にマゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー画像が順次一次転写され、積層される。
【0105】
また、感光体11Yの周囲には、一次転写ロール17Yよりも感光体11Yの回転方向(矢印A方向)下流側に、感光体11Yの表面に残留したトナーやリトランスファーしたトナーを清掃するためのクリーニング装置15Yが配置されている。クリーニング装置15Yにおけるクリーニングブレードは、感光体11Yの表面にカウンター方向に圧接するように取り付けられている。
【0106】
中間転写ベルト33を張架するバイアスロール14には、中間転写ベルト33を介して二次転写ロール(二次転写手段)34が圧接されている。中間転写ベルト33表面に一次転写され積層されたトナー画像は、バイアスロール14と二次転写ロール34との圧接部において、図示しない用紙カセットから給紙される記録紙(被転写体)P表面に、静電的に転写される。この際、中間転写ベルト33上に転写、積層されたトナー画像は透明トナー画像が一番下(中間転写ベルト33に接する位置)になっているため、記録紙P表面に転写されたトナー画像では、透明トナー画像が一番上になる。
【0107】
また、二次転写ロール34の下流には、記録紙P上に多重転写されたトナー画像を、熱及び圧力によって記録紙P表面に定着して、永久像とするための定着器(定着手段)35が配置されている。
【0108】
尚、本実施形態に用いられる定着器としては、例えば、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、ベルト形状を有する定着ベルト、及び、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、定着ロールが挙げられる。
前記定着ベルトは、所定幅で所定周長のフレキシブルなエンドレスベルトであり、構成は、使用目的や使用条件等の装置設計条件に応じて、材質・厚さ・硬度等を選択する。
【0109】
定着手段における定着ロールは、その直径(外径)が100mm以上500mm以下であると熱履歴が残りやすく、溶融ムラが生じやすい。
即ち、コート紙のような厚紙(例えば、0.1mm以上0.7mm以下)を連続枚数定着した後に薄紙(例えば、60μm以上500μm以下)を定着した場合、厚紙定着直後の定着ロールの熱履歴が残り易く、薄紙を低温(120℃以下)で定着すると、熱履歴のために溶融ムラを生じやすい。
本実施形態のトナーを用いることにより、定着ロール幅の直径が100mm以上500mm以下であっても、厚紙定着直後に前記薄紙を定着した場合の熱履歴のための溶融ムラを抑えられる。溶融ムラが抑えられることにより、低温定着性(例えば、120℃以下での定着性)に優れ、かつ、用紙の厚さに依存することがない用紙汎用性に優れた画像形成装置となる。
これらの上記低温定着性及び用紙汎用性の効果の両立は、融解温度Tmが50℃以上65℃以下であり、TmとTcとの差が10℃以上30℃未満である離型剤をトナーに内包させること、及び離型剤の結晶成長を制御することにより実現されるものと推測される。
【0110】
定着ロールの直径(外径mm)は100mm以上500mm以下であれば、低温定着性及び用紙汎用性の効果を奏するが、中でも、200mm以上400mm以下であることが好ましく、250mm以上350mm以下がより好ましく、275mm以上325mm以下が更に好ましい。
275mm以上325mm以下であると、低温定着性及び用紙汎用性の効果がより顕著となる点で好ましい。
【0111】
定着ロールは、たとえば、アルミニウム等によって形成された外径100mm以上500mm以下,厚さ10mmで所定長さの円筒状のハードロールを挙げられる。ただし、定着ロールは、この構成に限るものではなく、加圧ロールとの間でニップ部を形成する際に、加圧ロールからの押圧力に対して殆ど変形を生じない充分にハードなロールとして機能する構成であればよい。また、その表面に金属磨耗を防止する保護層として、厚さ200μmのフッ素樹脂等を被覆しても良い。
定着ロールの内部には、加熱手段としてハロゲンヒータが配設されている。このハロゲンヒータは、定着ロールの表面に接触するように配置されいる。
例えば、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、ベルト形状を有する定着ベルト、及び、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、円筒状の定着ロールが挙げられる。
【0112】
次に、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作について説明する。各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作は、それぞれ同様であるため、イエローの画像形成ユニット50Yの動作を、その代表として説明する。
【0113】
イエローの現像ユニット50Yにおいて、感光体11Yは、矢印A方向に予め定められたプロセススピードで回転する。帯電ロール18Yにより、感光体11Yの表面は予め定められた電位にマイナス帯電される。その後、感光体11Yの表面は、露光装置19Yによって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。続いて、現像装置20Yによりマイナス帯電されたトナーが反転現像され、感光体11Yの表面に形成された静電潜像は感光体11Y表面に可視像化され、トナー画像が形成される。その後、感光体11Y表面のトナー画像は、一次転写ロール17Yにより中間転写ベルト33表面に一次転写される。一次転写後、感光体11Yは、その表面に残留したトナー等の転写残留成分がクリーニング装置15Yのクリーニングブレードにより掻き取られ、清掃され、次の画像形成工程に備える。
【0114】
以上の動作が各画像形成ユニット50T,50Y,50M,50C,50Kで行われ、各感光体11T,11Y,11M,11C,11K表面に可視像化されたトナー画像が、次々と中間転写ベルト33表面に多重転写されていく。カラーモード時は、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの順に各色のトナー画像が多重転写されるが、二色、三色モード時のときもこの順番で、必要な色のトナー画像が単独または多重転写されることになる。その後、中間転写ベルト33表面に単独または多重転写されたトナー画像は、二次転写ロール34により、図示しない用紙カセットから搬送されてきた記録紙P表面に二次転写され、続いて、定着器35において加熱・加圧されることにより定着される。二次転写後に中間転写ベルト33表面に残留したトナーは、中間転写ベルト33用のクリーニングブレードで構成さえたベルトクリーナ16により清掃される。
【0115】
図1において、イエローの画像形成ユニット50Yは、イエロー色の静電潜像現像剤を保持する現像剤保持体を含む現像装置20Yと感光体11Yと帯電ロール18Yとクリーニング装置15Yとが一体となって画像形成装置本体から着脱するプロセスカートリッジとして構成されている。また、画像形成ユニット50T、50K、50C及び50Mも画像形成ユニット50Yと同様にプロセスカートリッジとして構成されている。
【0116】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱されるように装着され、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納する。なお、本実施形態に係るトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されていればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収容されてもよい。
【0117】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係るトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態に係るトナーを容易に現像装置に供給される。
【0118】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ40Y、40M、40C、40K及び40Tの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置20Y、20M、20C、20K及び20Tは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換してもよい。
【0119】
<画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成方法は、潜像保持体に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤保持体に保持された本実施形態に係る静電潜像現像剤を用いて前記潜像保持体に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する画像形成工程と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有し、定着された前記トナー画像の断面における離型剤ドメインの形状係数SF1が100以上140以下としたものである。
【0120】
本実施形態に係るトナーで形成された透明のトナー画像の断面における離型剤ドメインの形状係数SF1が100以上140以下であると、離型剤ドメインが球状であるため定着画像を通過した光の乱反射が抑制され、定着後の光沢むらの発生が防止される。
離型剤ドメインの形状係数SF1は、100以上135以下が好ましく、100以上130以下がさらに好ましい。
【0121】
トナー画像の断面における離型剤ドメインの形状係数SF1は以下のようにして測定した値をいう。
トナー画像を5mm四方に切断し、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋し、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム(日立テクノロジーズ社製)を用いてー100℃の下、厚さ100nmに切片化し観察用サンプルを作製した。このときトナー画像の観察を行うため、トナー画像に対し垂直方向に切削用サンプルを切断する。これによりトナー画像の断面の観察が容易になる。つぎにトナー断面を走査型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察する。得られた顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み100個の離型剤ドメインの最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより形状係数SF1が得られる。
【0122】
本実施形態に係るトナーでは定着工程での離型剤の結晶成長が抑制されるため、離型剤の結晶形状が扁平形になりにくく、球状に保たれやすい。その結果として、形状係数SF1の値が100以上140以下となる。
【実施例】
【0123】
以下、本実施形態を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記実施例に限定されるものではない。なお「部」は特に断わりのない限り「質量部」を表す。
【0124】
−非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド1モル付加物:90モル%
・テレフタル酸:10モル%
・フマル酸:40モル%
・ドデセニルコハク酸(DSA):25モル%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えたフラスコに上記の成分を仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、ジステアリン酸スズ0.9質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで昇温し、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移温度が60℃、酸価13.6mgKOH/g、重量平均分子量が16,000、数平均分子量6,000の非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0125】
−非晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50モル%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド1モル付加物:50モル%
・テレフタル酸:16モル%
・ドデセニルコハク酸:20モル%
上記の成分を用いた以外は非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成と同様にして、ガラス転移温度が59℃、酸価13.2mgKOH/g、重量平均分子量が19,000、数平均分子量6,300の非晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0126】
−結晶性ポリエステル樹脂の合成−
・デカンジカルボン酸:100モル%
・ノナンジオール:100モル%
・ジブチル錫オキサイド(触媒):0.25質量%
以上の成分を加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で5時間撹拌・還流を行った。
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間撹拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は24,000で、数平均分子量(Mn)は7,600の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の溶融温度(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は72.3℃であった。
【0127】
−離型剤分散液1の調製−
・パラフィンワックス、(融解温度:58℃、商品名パラフィンワックス−135、日本精鑞社製):50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製):1.0部
・イオン交換水:200部
・ポリ塩化アルミニウム(浅田化学:粉体):5部
以上を混合して95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックスT50)にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)で110℃に加温して分散処理を5時間行い、体積平均粒径200nm、固形分量が20質量%の離型剤分散液1を得た。
【0128】
−離型剤分散液2の調製−
離型剤をパラフィンワックス、(融解温度:65℃、商品名パラフィンワックス−155、日本精鑞社製)に変更した以外は離型剤分散液1と同様に作製した。
【0129】
−離型剤分散液3の調製−
離型剤をパラフィンワックス(融解温度:50℃、商品名パラフィンワックス−120、日本精鑞社製)に変更した以外は離型剤分散液1と同様に作製した。
【0130】
−離型剤分散液4の調製−
ポリ塩化アルミニウム添加量を5部から50部に変更した以外は、離型剤分散液1と同様に作製した。
【0131】
−離型剤分散液5の調製−
ポリ塩化アルミニウム添加量を5部から2.5部に変更した以外は、離型剤分散液1と同様に作製した。
【0132】
−離型剤分散液6の調製−
離型剤をパラフィンワックス(融解温度:74℃、商品Hi−mic−1045、日本精鑞社製)に変更した以外は離型剤分散液1と同様に作製した。
【0133】
−離型剤分散液7の調製−
離型剤をパラフィンワックス(融解温度:47℃、商品名パラフィンワックス−115、日本精鑞社製)に変更した以外は離型剤分散液1と同様に作製した。
【0134】
−離型剤分散液8の調製−
ポリ塩化アルミニウム添加量を5部から0部に変更した(添加しない)以外は、離型剤分散液1と同様に作製した。
【0135】
−離型剤分散液9の調製−
ポリ塩化アルミニウム添加量を5部から100部に変更した以外は、離型剤分散液1と同様に作製した。
【0136】
(離型剤中に含まれる金属元素の含有量の測定方法)
トナー断面の離型剤部分をエネルギー分散形X線分析装置(日本電子社製:2300F)にて加速電圧、30kV、エミッション電流、20μA、10000倍の倍率の条件で観察し、測定される全元素中の金属元素の組成比(%)を測定し、離型剤中のAl含有量を求めた。
【0137】
(トナー1の作製)
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1):100部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(1):300部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(2):300部
・離型剤分散液(1):50部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中に加え、イオン性界面活性剤ネオゲンRKを2.0部加えた後に撹拌して混合・分散した。次いで、1Nの硝酸水溶液を滴下してpH3.5にした後、これにポリ塩化アルミニウム(PAC、浅田化学(株)製)を表1に記載の量を加え、ウルトラタラックスT50で分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で40分保持した後、ここに非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)100部と非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)100部の混合液を緩やかに追加した。
その後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して系内のpHを7.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら徐々に90℃まで加熱し、90℃で3時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これをさらに40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpmで撹拌・洗浄した。
これをさらに5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー1を得た。
【0138】
(トナー2〜9の作製)
トナー2及び
トナー1の作製において、離型剤分散液1を離型剤分散液2〜9にそれぞれ変更した以外は、トナー1と同様にしてトナー2〜9を得た。
【0139】
表1に、各離型剤分散液の離型剤の種類、使用量(部)、Tm及びTc、並びにアルミニウム剤の使用量(部)とAl含有量(atom%)をまとめて示す。
【0140】
【表1】



【0141】
<キャリアの作製>
・フェライト(商品名EFC−35B、パウダーテック社製、重量平均粒子径;35μm):100部
・トルエン:13.5部
・メチルメタクリレート/パーフルオロオクチルメタクリレート共重合体(質量比:90/10、重量平均分子量49,000):2.3部
・カーボンブラック(商品名:VXC72、キャボット社製):0.3部
・エポスターS(メラミン樹脂粒子、日本触媒社製):0.3部
フェライトを除く上記成分をサンドミルにて1時間分散して樹脂被覆層形成用溶液を作製した。次にこの樹脂被覆層形成用溶液とフェライトとを真空脱気型ニーダーに入れて、温度60℃で減圧しながら20分撹拌してフェライト上に樹脂被覆層を形成し、キャリアを得た。
【0142】
<静電潜像現像剤の作製>
得られたキャリアとトナー1〜9とを、それぞれ100部:8部の割合でVブレンダーで混合し、静電潜像現像剤1〜9を作製した。
【0143】
[実施例1〜7、比較例1〜6]
上記で得られたトナー1〜9を用い、表2に記載される定着ロール幅直径(mm)の条件で下記の評価を行なった。
【0144】
<評価>
(溶融ムラ評価)
トナーついては、富士ゼロックス社製Docu Centre Color500CP改造機を用いてMC256用紙を用いて100枚連続で定着し(定着温度160℃)、直後にST紙を定着した。
ST紙の定着画像の画質(ソリッド溶融ムラ)を、3cm×4cmのソリッド画像にて目視観察することによって評価した。評価基準は以下の通りである。
【0145】
<評価基準>
◎:斑点状の濃度ムラが見当たらない
○:1〜5mm程度の斑点状の濃度ムラが1〜3個
△:1〜5mm程度の斑点状の濃度ムラが4〜10個
×:1〜5mm程度の斑点状の濃度ムラが11個以上、または5mm以上の大きな斑点が目視され明らかに部分光沢していたり画像あれが見える。
【0146】
(定着温度域)
トナー1をプロセススピードが可変のDocucolor1250用 ベンチ定着機(FBNF、定着ロール径(厚み直径350mm)富士ゼロックス社製)改造機に充填し、プロセススピード150mm/secに固定した条件で、定着温度を80℃以上180℃以下の範囲で変えて定着テストを実施した。
トナー載り量は4.5g/mに調整した。用紙は白紙のA4サイズ(富士ゼロックス社製、C2紙)を用いた。なお、トナーの良好な定着温度幅は、未定着のトナーソリッド画像(25mm×25mm)を定着した後、1.0kgの荷重を加えて定着画像部分を折り曲げ、定着画像が破壊されて生じた白抜けの線幅を測定し、0.5mm以下となる最低温度を最低定着温度(非定着発生温度)とした。また、定着部材にトナー成分が移行する(ホットオフセット)最低温度を最高定着温度(ホットオフセット発生温度)とした。
評価は、非定着発生温度は130℃以下で、かつ、ホットオフセット発生温度が180以上を許容範囲とする。
【0147】
(画像光沢性)
画像光沢性は、画像形成テスト前に、定着機の温度制御を外部電源コントロールにて行い定着温度を160℃に設定して一定の反射濃度(用紙MC256紙 X−Rite404濃度計で濃度1.5〜1.8)となるように画像を形成し、ミラートリグロス光沢度計(Gardner社製)による60度グロスを評価し、以下の基準で判定した。
<評価基準>
◎;極めて良好(用紙との光沢比:85%以上)。
○;良好(用紙との光沢比:70%以上85%未満)。
×;低い(用紙との光沢比:70%未満)。
【0148】
(画像ヒビ)
トナー1をプロセススピードが可変のDocucolor1250用 ベンチ定着機(FBNF、定着ロール径(厚み直径350mm)富士ゼロックス社製)改造機に充填し、プロセススピード150mm/secに固定した条件で、定着温度を80℃以上180℃以下の範囲で変えて定着テストを実施した。
トナー載り量は4.5g/mに調整した。用紙は白紙のA4サイズ(富士ゼロックス社製、C2紙)を用いた。
未定着のトナーソリッド画像(25mm×25mm)を定着した後、1.0kgの荷重を加えて定着画像部分を折り曲げ、定着画像が破壊されて生じた白抜けの線幅(クリース幅)を測定した。
画像ヒビを下記基準に基づいて評価した。得られた結果を表3に示す。
<評価基準>
◎:クリース幅が0.4mm未満であった。
○:クリース幅が0.4mm以上〜0.6mm未満であった。
△:クリース幅が0.6mm以上〜0.8mm未満であった。
×:クリース幅が0.8mm以上であった。
【0149】
【表2】



【0150】
表2から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、画像の溶融ムラの発生が抑制され、定着温度域が広範囲であり、画像光沢が良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0151】
11 感光体 12 駆動ロール 13 支持ロール
14 バイアスロール 15 クリーニング装置 16 ベルトクリーナ
17 一次転写ロール 18 帯電ロール 19 露光装置
20 現像装置 34 二次転写ロール 35 定着器
40 トナーカートリッジ 50 画像形成ユニット P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と離型剤とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりASTM法で昇温過程での離型剤の吸熱ピークTmと降温過程での離型剤の発熱ピークTcとを測定したときの、TmとTcとの差が10℃以上30℃未満であり、離型剤のTmが50℃以上65℃以下である静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
トナーの離型剤ドメイン中に、Alが含まれる請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
蛍光X線分析による前記離型剤ドメイン中のAlの含有量が、0.005atom%以上0.1atom%以下である請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナーを少なくとも含む静電潜像現像剤。
【請求項5】
画像形成装置に脱着されるように装着され、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容し、前記トナーが請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナーであるトナーカートリッジ。
【請求項6】
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の静電潜像現像剤を収容するプロセスカートリッジ。
【請求項7】
潜像保持体と、前記潜像保持体に形成された静電潜像を請求項4に記載の静電潜像現像剤によりトナー画像として現像する現像手段と、前記潜像保持体に形成されたトナー画像を被転写体に転写する転写手段と、前記被転写体に転写されたトナー画像を定着する定着手段とを有する画像形成装置。
【請求項8】
前記定着手段における定着ロールの直径が100mm以上500mm以下である請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−69998(P2011−69998A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220956(P2009−220956)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】