説明

静電紡糸繊維層を備える補綴具及びその製造方法

本開示の或る特定の実施の形態によれば、補綴具を製造する方法が提供される。本方法は、少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子粒子、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することを含む。管状フレームは、管状高分子構造体上に設置される。分散液から管状フレーム上にナノファイバを電界紡糸して、補綴具を形成する。補綴具を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、出願日が2009年8月7日の米国仮特許出願第61/232,252号(参照により本明細書中に援用される)に対する優先権に基づくものであり、またこれを主張するものである。
【背景技術】
【0002】
とりわけ合成人工血管又は管状グラフト(graft)の用途のために設計される、合成埋め込み型人工血管又は管状グラフトとしての、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の押出管の成功利用はよく知られており、また文書化されている。かなりの臨床研究を通じて有効性が確認されているePTFEは、優れた生体適合性を示し、かつ内皮化(endothelialization)を促すことが知られる明確に定義された多孔質微細構造を形成するように機械的に操作することができるため、人工血管又は管状グラフトとして特に好適である。PTFEは、血管への適用において低血栓形成反応を示すことが証明されている。心臓保護剤を植え付ける(seeded)又は注入すると、ノード(node)及びフィブリル(fibril)からなるマイクロポーラス構造は、血管系内に埋め込まれた場合に、自然な組織内方成長及び細胞内皮化を可能にする。これは、長期間の治癒及び管状グラフトの開存性に貢献する。
【0003】
従来技術である特許文献1(Goldfarb)では、ePTFEからなる合成人工血管又は管状グラフトの微細構造は、細長いフィブリル又はマイクロファイバにより相互接続される不規則な間隔で配置されたノードにより更に定義される繊維状態によって分類される。この構造を作り出す方法及び技法は、30年以上にわたり知られており、実際、当業者にとって実に単純なものである。フィブリルが架かるノード表面間の距離は、ノード間距離(IND)として定義される。特定範囲のINDを有する管状グラフトは、管状グラフトが本質的に多孔質であるため、組織内方成長及び細胞内皮化を増強する。IND範囲はまた、貫壁性血流及び血栓形成を防止するのに十分小さいが、赤血球の平均最大寸法以上であり、6μm〜80μmである。
【0004】
従来技術は、マイクロポーラスePTFE管状人工血管又は管状グラフトの例で占められている。ePTFE人工血管又は管状グラフトの多孔性は、IND又は管のマイクロポーラス構造の機械的な形成によって制御される。引用される既定の構造を有するINDは、人工血管又は管状グラフトの内表面及び外表面に沿って、組織内方成長及び細胞内皮化の成果をもたらす。
【0005】
同様に、ステントは、血管等の身体内の管を回復及び維持するのに一般に使用されている。多くの場合、グラフトを含む生体適合材料は、ステントと身体との接触に関連する反応を低減させるように、ステントの内表面又は外表面上に設けることができる。
【0006】
しかしながら、このような従来のデバイスに関して、機械的特性、細胞増殖、細胞透過性、流体透過性、構造フレームへの接着、及び/又はかかるデバイスにおける治療有効成分の組込みを操作することは難しい。さらに、このような従来デバイスは、他の方法ではePTFE又は他の材料のみでは被覆することができない複雑な幾何学的形状のコーティングを可能にしない。
【0007】
このため、上記欠陥に対処するプロセスの必要性が存在している。また、このようなプロセスから生成される補綴具は特に有益であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,436,135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の或る特定の実施の形態によれば、補綴具を製造する方法が提供される。本方法は、少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することを含む。ステント等の管状フレームは、管状高分子構造体上に設置される。分散液から管状フレーム上にナノファイバを電界紡糸して、補綴具を形成する。補綴具を加熱する。
【0010】
本開示の他の実施の形態では、補綴具を製造する方法が、少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することを含む。分散液から管状高分子構造体上にナノファイバを電界紡糸する。高分子材料の層をナノファイバ上かつ管状高分子構造体の周りに巻き付けて、補綴具を形成する。複合構造体を加熱する。
【0011】
本開示の更に他の実施の形態では、補綴具を製造する方法が開示される。本方法は、少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することを含む。管状フレームを管状高分子構造体上に設置する。分散液から管状フレーム上にナノファイバを電界紡糸する。高分子材料の層をナノファイバ上かつ管状フレーム及び管状高分子構造体の周りに巻き付けて、補綴具を形成する。補綴具を加熱する。
【0012】
本開示の他の特徴及び態様は以下でより詳細に述べる。
【0013】
当業者を対象とする、それらの最良の形態を含む、権限を有する全ての開示は、添付の図面について言及する本明細書の後半で、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示による一補綴具の断面図である。
【図2】本開示による一補綴具の断面図である。
【図3】本開示による一補綴具の断面図である。
【図4】本開示による一補綴具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、以下に記載する、開示内容の様々な実施形態、1つ又は複数の実施例について詳細に言及する。各実施例は、開示内容の限定ではなく開示内容の説明として提示するものである。実際、本開示の範囲又は精神を逸脱しない限り、様々な変更及び変形がなされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として説明又は記載される特徴を、別の実施形態において使用して、更なる実施形態をもたらしてもよい。このため、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内となるような変更形態及び変形形態を網羅することが意図される。
【0016】
本発明は、このような補綴具の中央管腔の周りに電界紡糸(本明細書中、「エスピン(espin)」及び/又は「エスピンされた(espun)」及び/又は「エスピニング(espinning)」とも称する)繊維を含む管状補綴具(本明細書中、「管状人工血管」及び/又は「管状グラフト」及び/又は「管状フレーム」とも称する)に関する。或る特定の実施形態では、中央管腔が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(本明細書中、「ePTFE」とも称する)を含み得る。或る特定の実施形態では、エスピン繊維はポリテトラフルオロエチレンを含み得る(本明細書中、「エスピンPTFE」とも称する)が、多くの他の好適な材料を、エスピンしても、またこのようなエスピンPTFEに加えて又はこれと組み合わせて使用してもよい。例えば、本開示に従ってエスピンされ得る他の好適な材料としては、ナイロン、ポリウレタン(PU)、ポリエステル、フッ化エチレンプロピレン(FEP)等が挙げられる。溶液中に入れられ得るポリマーは、エスピンされる可能性がある。分散体化され得るポリマー粒子(例えば、PTFE、FEP等)もエスピンされる可能性がある。分散体(エスピンされたPTFE)は、所望の特性を発現するように焼結しなければならないが、溶液からエスピンされる多くのポリマーは、紡糸及び乾燥中にそれらの特性を発現する。エスピン層(複数可)の結合は焼結中に起こり得る。
【0017】
本開示の或る特定の実施形態では、中央管腔の周りにランダムに配向している静電紡糸されたミクロン及びサブミクロンサイズのPTFE繊維から主になる、埋め込み型のマイクロポーラス管状人工血管又は管状グラフトが記載されている。管状人工血管又は管状グラフトは、管状構造体、例えば、管状人工血管、管状グラフト、管状フレーム又はそれらの組合せの周りに、静電紡糸されたPTFE繊維の複合構造体を形成する1つ又は複数の層を含み得る。
【0018】
本開示は、1)非常に様々な孔の構造及び孔径を有する層を組み込む能力(なお、これらの様々な構造の層は、機械的特性、細胞増殖、細胞透過性、流体透過性、構造フレームへの接着、及び/又は治療有効成分の組込みを操作するのに使用することができる);2)更に広範囲に及ぶ治療上の使用及び構造を可能にする、非常に様々な成分を有する複合構造物を作製する能力;3)構造フレーム及び他の構成層へのPTFE層の結合の改善;4)細胞応答のより強い制御をもたらす細胞外マトリックスのもの(that:機能)を詳細に再現するエスピン層を組み込む能力;及び5)他の方法ではePTFE又は他の材料のみでは被覆することができない複雑な幾何学的形状のコーティングを可能にすることを含む、従来の方法及びデバイスを上回る数多くの利点を提供する。
【0019】
管状構造体は、上記のように、セルフシール性の熱可塑性成分又は弾性成分、及び生物活性剤の選択肢を含み得る。本開示のデバイスに関連して利用され得るかかる生物活性剤の例としては、抗生物質、抗真菌薬及び抗ウイルス薬、例えば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、セファロスポリン、キノロン、ペニシリン、スルホンアミド、ケトコナゾール、ミコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、アジドチミジン、ビタミン、インターフェロン;抗痙攣薬、例えば、フェニトイン及びバルプロ酸;抗うつ剤、例えば、アミトリプチリン及びトラゾドン;抗パーキンソン薬;心血管作用薬、例えば、カルシウムチャネル拮抗薬、抗腫瘍薬、β遮断薬;抗悪性腫瘍薬、例えば、シスプラチン及びメトトレキサート;コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン及びトリアムシノロン;NSAID、例えば、イブプロフェン、サリシレート、インドメタシン、ピロキシカム;ホルモン、例えば、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン;成長因子;炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、アセタゾラミド;プロスタグランジン;抗血管新生薬;神経保護薬;ニューロトロフィン;成長因子;サイトカイン;ケモカイン;細胞、例えば、幹細胞、初代細胞及び遺伝子組み換え細胞;組織;並びに、当業者に既知の他の作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
図1には、本開示による構造体の断面図が示されている。構造体は、ePTFE層1と、エスピン層2とを備える。このような構成は、所望の幾何学的形状(geometrical shape)及び特性に応じて、グラフトアセンブリ又はステント−グラフトアセンブリの構造に使用される構成要素として加工され得る。また、それは、限定するものではないが、例として、閉塞器、欠損閉鎖器、細胞カプセル化デバイス、再生医療スキャフォールド、審美的インプラント、心血管修復パッチ(cardiovascular patches)及び腹腔パッチ(abdominal patches)を含む、他の医療デバイス用の被覆材として使用することができる。しかしながら、このリストは、包括的なものではなく、多くの他の用途が本開示に従って熟考される。
【0021】
本開示の内層(血液が接触する層)及び外層(組織が接触する層)は、細胞内方成長又は細胞付着をそれぞれ増強又は阻害するような異なる多孔性を有していてもよい。埋め込み型静電紡糸人工血管に関する用途としては、人工バイパスグラフト、冠状動脈バイパスグラフト、バイパスシャント、血液透析、動静脈グラフト、ホモグラフト(homograft:同種移植)、肺アログラフト(pulmonary allograft:肺同種異系移植)、又は肺シャントが挙げられるが、これらに限定されない。この管状構造体は、改善された半径方向の引張強度、縫合孔の耐引裂き抵抗及び改善された軸方向の耐引裂き抵抗(tear resistance)という特徴を含み得る。
【0022】
図2には、本開示によるデバイスの断面図が示されている。補綴具は、ePTFE層1と、フレーム3(ステントフレーム等)と、エスピン層2とを備える。このような構成は、ePTFEを、ステント、閉塞器又は他のフレーム等の形成された構造体と結合させることが望ましい用途に使用され得る。エスピン層は、用途に応じて、管腔表面又は反管腔(abluminal:管腔外)表面上に実質的に異なる孔径及び孔の構造をもたらすと共に、接着性をもたらす。このような構成では、エスピン層が、フレームの表面上に直接施されるか、又は、焼結プロセス又は硬化プロセスの一部としてePTFE及びフレームと組み合わされるあらかじめ形成されたシートに添加され得る。概して、このような構成は、支持フレームを被包することが望ましいあらゆる用途に利用することができるであろう。例えば、このような構成は、従来のステントと関連して使用することができるであろう。
【0023】
本開示では、多様なステントの種類及びステントの構成を採用することが可能である。多様なステントの中でも、有用なものとしては、自己拡張型ステント及びバルーン拡張型ステントが挙げられるが、これらに限定されない。ステントは、放射状に縮小することも可能であり得る。自己拡張型ステントは、ステントを放射状に拡張させるスプリングのような動作を有するもの、又はステント材料の或る特定の温度における特別な形状に関する記憶特性に起因して拡張するステントを含む。ニチノールは、スプリングのような形式及び温度に基づく記憶機構形式の両方において、うまく機能する能力を有する1つの材料である。本開示によって検討される他の材料としては、ステンレス鋼、白金、金、チタン及び他の生体適合性金属、並びに高分子ステントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
また、ステントの形状は、当該技術分野において既知と考えられる任意の好適な幾何学的形状から選んでもよい。例えば、ワイヤにおける波状又はジグザグの有無にかかわらず、ワイヤステントを連続的ならせんパターンに固定して、放射状に変形可能なステントを形成することができる。個々のリング又は円形部材を、ストラット、縫合、又はリングの締付け(locking)又は交錯(interlacing)又は溶接等によって結合させて、管状ステントを形成することができる。本発明で有用な管状ステントはまた、管から一定パターンをエッチング又はカッティングすることによって形成されるものを含む。かかるステントは多くの場合、スロット付きステントと称される。さらに、ステントは、材料又は鋳型に一定パターンをエッチングすること、及びステント材料を一定パターンに堆積させることによって、例えば化学気相成長法等によって形成してもよい。
【0025】
図3では、別の構成の断面図が示されている。この構成は、エスピン層2がePTFE層1の間に挟持されるように、ePTFE層1と、エスピン層2と、別のePTFE層1とを備える。このような構成は、ユーザーが複合体の機械的特性を要望通りに操作すること、例えば圧縮後の材料の復元を改善させることを可能にする。エスピン材料の選択は、層の間の結合特性を改善するように調節することができ、また、構造物の中央部の細胞増殖を阻害するためにエスピン層を使用することもできる。この場合、両側(グラフトの場合、管腔側及び反管腔側)から細胞を移動及び増殖させることは有益であり得るが、両側間の連通は望ましくない場合がある。中央のエスピン層は、この細胞の連通を阻害すると考えられる多孔度で設計され得る。
【0026】
図4では、本開示による更に別の構成の断面が示されている。補綴具は、ePTFE層1と、エスピン層2と、フレーム3と、別のePTFE層1とを備える。このように、フレームは、構造物全体の半径方向の強度を増大させ、また、構造物の展開時の復元を助けるものである。例えば、本開示の或る実施形態では、フレームがステントである。ステントフレームは、構造体内に構造骨格をもたらし、縫合壁の開裂を防止する。
【0027】
電界紡糸層は好ましくは、当業者に理解される電界紡糸法によりフレームに直接施されるが、積層によって施すこともできる。この技法は、エスピンされた層を第2の材料層上にプレスすること、及び相補的な温度に加熱することを伴う。いずれの構成でも、設計は、構造フレームを含んでいても含んでいなくてもよい。これらのフレームは、ステント、閉塞コイル若しくは閉塞フレーム、再生医療スキャフォールド、構造補強材、ペーシングリード若しくはモニタリングリード、組織のアンカー(anchors)若しくは組織のトラック(tacks)、生物学的な刺激装置、生体模倣インプラント、シグナル受信器若しくはシグナル送信器、整形外科用固定器具、又は任意の他の金属機器、高分子機器、セラミック機器若しくは他の治療用機器の形態をとり得る。
【0028】
複合材料の特性及び特徴は、フレーム、エスピンされた層及びePTFE膜層をまとめたものである。複合体は、最終複合体における、繊維、ノード及びフィブリルのサイズの制御を伴って調製され、機械的に、例えば結合強度、伸長特性及び引張強度等を改善するように操作することができる。
【0029】
多層の典型的な構成は、約0.032インチ〜約80インチの幅で、全厚約0.0001インチ〜約0.25インチの範囲の厚みを生じ得る。個々の層は、約0.0001インチから約0.25インチで変動する厚みを有し得る。最終材料のサイズは、複合体がシートとして又は連続するロール長さの管として作製することができるため、大いに変動する。複合体のノード間距離(IND)は、約20%〜90%の範囲の多孔度で、約0.1μm〜約200μmであり得る。ASTM F316(参照により本明細書中に援用される)によって定義される孔の構造は、約0.05μm〜約50μmの範囲をとり得る。複合体の構成に起因して、IND、孔径及び多孔度は、構成に応じて複合体の断面内において層毎に様々な値をとり得る。一例としては、孔のサイズが、媒体にわたる表面から表面までの層評価に基づき、大きいものから小さいものへと変化する非対称性の構造物である。
【0030】
本明細書中に記載のフレーム構造体及びグラフト構造体の構成において使用される材料は、事前に製作された構成要素を用いて、本明細書中に記載の材料からアセンブリとして作製してもよい。材料は、別個の層又は二層で組み立ててもよい。本明細書中に記載の別の構成に用いられる構成要素として図2に示されるような構造物を作製することが、有利であり得る。図4に示される実施形態では、事前に製作された構成要素を、最終フレーム及びePTFEの付加的な層と所望するように連結して、最終的なアセンブリを作製することができる。
【0031】
例えば、本明細書中にこれまで記載したように、電界紡糸層が管状構造体の一部である実施形態では、エスピン層における繊維の直径が約10nm〜2000nmのサイズ範囲をとり、壁厚が約75μm〜1.5mmの範囲をとり、平均内径が約0.2mm〜50mmの範囲をとり得る。
【0032】
本開示の補綴具は、繊維、ノード及びフィブリルのサイズの制御、並びに結合強度、伸長特性及び引張強度等の機械的な値の操作を伴って調製することができる。
【0033】
延伸PTFEは、微細で高配向のフィブリルによって相互接続される中実ノード(solid nodes)で構成される微細構造からなる。延伸PTFEのノード及びフィブリルは、独自の生体適合性の多孔質構造をもたらす。材料の微細構造は、細胞付着及び細胞内方成長のためにマトリックスをもたらすように調節することができる。延伸PTFE及び電界紡糸PTFEの微細構造は、治癒の初期段階中に内皮の移動を増強、阻害又は遅延するように設計される。
【0034】
一例として、約10μm〜20μmのフィブリル距離に対して1つのノードを有するePTFE微細構造は、ごくわずかな貫壁細胞内方成長を許容する。細胞内方成長に関する最適な多孔度は20μm〜80μmの範囲である。研究から、120μmを超える多孔度は内方成長の低下に関連付けられ、また表面が小さくなることに基づく低度の新生内膜の接着が、細胞接着及び細胞の移行に有効であることが示された。
【0035】
本開示の或る実施形態において、本方法は、集められた繊維状マットを、十分な生強度を有する形態へと加工することを助けるために、約10重量%〜85重量%のPTFE固体の分散液又は懸濁液を必要とし得る。しかしながら、上記のように、他の好適なポリマーをエスピン分散液に利用することができる。分散液中の固形分が少なすぎると、得られる材料に対する機械的完全性が全く又はほとんど存在しないであろう。次に、紡糸される溶液、懸濁液又は分散液の粘度を増大させるのに用いられるポリマーの選択は、慎重に行わなければならない。
【0036】
加えて、エスピン層を焼結又は結合する場合、材料を適切に焼結するように温度を選択して、得られる製品が良好な機械的完全性を有することを確実なものとする必要がある。
【0037】
不織エスピンPTFE材料を生成するために、狭い粒径分布のPTFE粉末を、水性分散液中に入れる。粒径は好ましくは約0.05μm〜0.8μmであると考えられる。約1wt%〜10wt%の繊維化ポリマーを、一定容量のPTFE水性分散液に添加する。繊維化ポリマーは、水への溶解度が高くなければならず、約0.5wt%より大きい溶解度が好ましい。繊維化ポリマーを約400℃で焼結する場合、繊維化ポリマーは約5wt%未満の灰分を有することが好ましく、更に小さいものがより好ましい。それに限定されることはないが、特に好ましい繊維化ポリマーとしては、デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、グアーガム化合物、デンプン、ポリビニルピリジン化合物、セルロース性化合物、セルロースエーテル、ポリアクリルアミド水和物、ポリアクリレート、ポリカルボキシレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ2−ジメチルアミノエチルメタクリレート−アクリルアミド共重合体、ポリn−イソプロピルアクリルアミド、ポリ2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ポリ(メトキシエチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)12%アセチル、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、ポリ(3−モルホリニルエチレン)、ポリ(N−1,2,4−トリアゾリルエチレン)、ポリ(ビニルスルホキシド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N−ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体)、ポリ(g−グルタミン酸)、ポリ(N−プロパノイルイミノエチレン)、ポリ(4−アミノ−スルホ−アニリン)、ポリ[N−(p−スルホフェニル)アミノ−3−ヒドロキシメチル−1,4−フェニレンイミノ−1,4−フェニレン)]、イソプロピルセルロース、ヒドロキシエチル、ヒドロキシルプロピルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アルギン酸アンモニウム塩、i−カラギーナン、N−[(3’−ヒドロキシ−2’,3’−ジカルボキシ)エチル]キトサン、コンニャクグルコマンナン、プルラン、キサンタンガム、ポリ(アリルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアンモニウムホスフェート)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチル)アンモニウムブロミド)、ポリ(4−N−ブチルピリジニウムエチレンヨード)、ポリ(2−N−メチルピリジニウムメチレンヨード)、ポリ(N−メチルピリジニウム−2,5−ジイルエテニレン)、ポリエチレングリコールポリマー及びコポリマー、セルロースエチルエーテル、セルロースエチルヒドロキシエチルエーテル、セルロースメチルヒドロキシエチルエーテル、ポリ(1−グリセロールメタクリレート)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸)90:10、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(2−ビニル−1−メチルピリジニウムブロミド)、ポリ(2−ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−2−メタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(4−ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(アクリルアミド/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)80:20、ポリ(アクリルアミド/アクリル酸)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ブタジエン/マレイン酸)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリル酸エチル/アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2−アミノエチル)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)−ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加体、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(エチレン/アクリル酸)92:8、ポリ(l−リシン臭化水素酸塩)、ポリ(l−リシン臭化水素酸塩)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(n−ブチルアクリレート/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(N−イソ−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン/2−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ジメチルサルフェート第四級塩(dimethyl sulfatequaternary)、ポリ(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル)、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウリン酸塩(Tween 20(登録商標))、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルアルコール)、N−メチル−4(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウム、メトサルフェートアセタール、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルアミン)塩酸塩、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)ナトリウム塩、ポリアニリン、及びそれらの組合せを挙げることができる。しかしながら、また、かかる繊維化ポリマーは、他のポリマーエスピン分散液との併用についても熟考される。
【0038】
特に好ましい繊維化ポリマーは、約50000amu〜4000000amuポリエチレンオキシドの分子量を有するポリエチレンオキシドである。混合後、PTFE及び繊維化ポリマー分散液は好ましくは均質化される。特に好ましい方法では、撹拌しなくともポリマー溶液が徐々に生成され、その後、ジャーローラに移し、さらに数日間一定速度でジャーローラを回転させる。本開示は、より均一で一貫した繊維の形成及びより速い構築を提供するために、50000cPsを超える分散液の使用を考慮する。得られる高粘性の混合物中に空気がほとんど捕捉されない均一な溶液を作り出すことが好ましい。分散液が均一な粘度を有すれば、任意の集塊又はゲルを除去するために分散液を濾過することが好ましい。所望の粘度を有する濾過された分散液はその後、電荷源として作用する導体素子が固定された制御ポンプ装置に充填される。
【0039】
特に好ましい導体素子は、1つ又は複数の開口を有するものである。開口サイズは好ましくは、直径約0.01mm〜3.0mmであるが、それらに限定されない。ポンプ装置からの放出体積は、作られる形態及び所望の繊維直径に応じて決まる既定の速度に設定される。電荷源は好ましくは、精密DC電源の正極側に接続される。電源の負極側は好ましくは、収集表面(collection surface)又は収集ターゲット(collection target)に接続される。極性は逆転させてもよいが、これは好ましくない。
【0040】
表面は、ドラム、素子又はシートであり得る。表面は、金属、セラミック又は高分子材料であってもよく、特に好ましい材料は、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニッケルチタン(ニチノール)及びマグネシウム合金から選択される。電源の電圧は、ポリマー/PTFE溶液を均一に引き出すような所望の電圧まで上昇させる。
【0041】
印加電圧は通常、約2000ボルト〜80000ボルトである。電源の接続によって誘起される電荷は、帯電ポリマーを電荷源から離し、収集表面にそれらを引き寄せる。
【0042】
収集ターゲットは、好ましくはポンプ及び開口システムに垂直に配置し、少なくとも一方向に動かす結果、ターゲット方向に引っ張られる繊維により、全面が均一に覆われる。収集表面が十分に覆われたら、材料を、収集表面全体を炉内に配置することによって、又は収集表面からシート、管若しくは他の形態を除去して、炉内でそれを焼結することによって、適所で、硬化、焼結及び乾燥する(これらは、同時に又は一連の工程で起こり得る)ことが好ましい。
【0043】
エスピン布地を焼結させると収縮を受けることは、当業者によく知られている。任意の理論に限定されるものではないが、収縮は、二段階で起こると考えられる。初めに、紡糸された状態の繊維及び布地が、前述のように水及び繊維化ポリマーを共に含有する。紡糸が完了すると、サンプルが乾燥し、低度の繊維の再編(rearrangement)を受ける。その後、繊維及び布地を約35℃〜約485℃の温度に或る一定時間曝すことによってサンプルを加熱する。
【0044】
収縮に適応させるために、繊維及び布地を、延伸構造上に紡糸させてもよい。該構造はその後、取り除くか又は縮小させることができる。エスピン層の焼結中、亀裂が生じることなく、布地がより小さいサイズに収縮する。別の方法は、構造上に繊維及び布地を紡糸することを伴い、該構造は、その後、焼結前又は焼結中に延伸及び/又は縮小し得る。縮小又は延伸及び縮小の範囲は約3%〜100%程度であり、電着布地の厚み及びサイズに応じて決まる。代替的には、エスピン層を、焼結中に縮小する表面上に配置することができる。
【0045】
1枚の布地について、堆積方向が、布地の平面に対して垂直になるように与えられる場合、縮小又は延伸/縮小は、布地平面における少なくとも1方向又は複数方向に起こるはずである。円柱状表面上に堆積される布地では、布地が放射状に及び/又は長軸方向に縮小又は縮小/延伸されるはずである。球状表面では、布地が放射状に縮小又は縮小/延伸されるはずである。縮小及び/又は延伸/縮小のこれらの基本概念は、それが紡糸された表面の形状とは無関係に、任意の電界紡糸された布地に適応され得る。このため、エスピン布地をベースとした極めて複雑な布地形状が可能となる。
【0046】
エスピン層は好ましくは繊維状のものである。特に好ましいエスピン繊維は、少なくとも0.1μmの直径を有する。特に好ましい実施形態では、焼結後に、製品が、接触点間に0.1μm〜50μmの範囲の距離が存在するような密度で堆積される繊維を有する。
【0047】
本開示は、以下の実施例を参照してより理解することができる。
【実施例】
【0048】
以下の一般指針は、様々なePTFE及びエスピン複合構造物の本明細書中に記載されるプロセス例に使用するものである。
1.エスピンPTFEの実施形態において、分散液の粘度は、PEOとPTFEとの比率を変えることなく、水の添加又は分散液からの水の除去によって変更し得る。
2.放射状に延伸されたePTFE管又は二軸配向シートを、丸みのあるベースプレート又は平らなベースプレート上に設置して、所望の幾何学的形状を形成する。
3.エスピンポリマー層を、所望の厚み、通常約0.5μm〜1000μmで、ePTFE上又は後にePTFE膜に接合させる表面上に施して、複合構造体をもたらす。
4.ePTFEに湿潤させるエスピンコーティングを施すと、次のプロセスへと移る前にそれが乾燥する。しかしながら、それを単一のエスピンシートとしてプロセス処理して、乾燥させると、それは配向された多孔質ePTFE層に接合するであろう。こうした材料間の接合プロセスは、所望の多層複合構造体が作り出されるまで複数回繰り返すことができる。
5.ePTFE/エスピン複合体をその後、焦げ付き防止用剥離フォイル(non-sticking release foil)で覆う。
6.複合体をベースツールに対して配置した後に、フォイルの表面に圧力をかけることによって、結合プロセスを促す。
7.複合構造物を、約35℃〜約485℃の温度の炉内に入れ、全材料をひとつに結合させる。結合温度の選択は材料の選択に基づく。
8.炉から一部を除去し、毎分約15度〜25度の速度で冷却させたら、覆いを外して、特定の特性について試験する。
【0049】
実施例1:
I型構造物:ePTFE/エスピンされたPTFE:
20μmのノード間距離(IND)、4mmの内径(ID)、0.1mmの壁厚(WT)、及び77.27%の多孔度を有する、二軸(Biax)延伸されたおよそ10cm長のePTFE管を、35cm長の4mm外径(OD)ステンレス鋼(SS)管上に設置して、中心を合わせた。旋回する管アセンブリの全長に沿ってエスピンするような位置に管アセンブリを据えるように、管アセンブリを回転チャックに設置した。
【0050】
4.2%の(PEO/PTFE)、300000amuポリエチレンオキシド及びDaikin D210 60%PTFE分散液の混合物をベースとしたおよそ85900cPsのエスピニング分散液は、均質化させた後に、回転及び濾過させて、むらのない粘度を実現しており、これを、22ゲージ針を備える10ml容のプラスチックシリンジに入れた。このシリンジは、Harvard Model 702100シリンジポンプに入れ、2.0ml/時間のポンプ流量に設定した。針先は、回転する管アセンブリからおよそ9.5cmの位置に合わせた。管アセンブリの回転はおよそ60rpmとした。管の長さに沿って3.2mm/秒の移動速度でエスピニング針を動かすような横送り(traverse)を用いた。横送りにかかるリターンポイントはBiax管の端部に設定した。9.2kVの電圧を使用した。PTFEをこれらの条件下で管上に30分間エスピンさせると、およそ25μm(焼結後に堆積された状態)厚のPTFE繊維被覆が得られた。
【0051】
Biax管/エスピンされたPTFEアセンブリを乾燥させた後、過剰なエスピンされたPTFEを除去し、複合グラフトをSS管上で、385℃において10分間焼結させた。冷却後、イソプロパノールを用いて、管からの複合グラフトの除去を促した。
【0052】
実施例2:
I型構造物:ePTFE/エスピンされたPTFE:
乾燥及び過剰なPTFEの除去後、次に、管アセンブリを、80μmのステンレス鋼(SS)フォイルで巻き付け、さらに焼結されていない25μm厚のePTFE膜でアセンブリ全体の周りに施すように巻き付けた以外は、実施例1と同様とした。その後、管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。炉から取り出して冷却したら、SSフォイル及び25μm厚の膜を除去して、複合グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのグラフトの除去を促した。
【0053】
実施例3:
II型構造物:ePTFE/ステント/エスピンされたPTFE:
20μmのノード間距離(IND)、4mmの内径(ID)、0.1mmの壁厚(WT)、及び77.27%の多孔度を有する、二軸(Biax)延伸されたおよそ6cm長のePTFE管を、35cm長の4mm外径(OD)ステンレス鋼管上の端部に設置した。次に、5.2cm長、4.25mm ID及び0.125mmのWTの一般的な(generic)ステントを、わずかに延伸させ、ePTFE管上に設置して、中心を合わせた。その後、ePTFE管アセンブリをSS管の中間位置に合わせ、旋回する管アセンブリの全長に沿ってエスピンするような位置に管アセンブリを据えるように、管アセンブリを回転チャックに設置した。
【0054】
4.2%の(PEO/PTFE)、300000amuポリエチレンオキシド及びDaikin D210 60%PTFE分散液の混合物をベースとしたおよそ85900cPsのエスピニング分散液は、均質化させた後に、回転及び濾過させて、むらのない粘度を実現しており、これを、22ゲージ針を備える10ml容のプラスチックシリンジに入れた。このシリンジは、Harvard Model 702100シリンジポンプに入れ、2.0ml/時間のポンプ流量に設定した。針先は、回転するステント/管アセンブリからおよそ9.5cmの位置に合わせた。ステント/管アセンブリの回転はおよそ60rpmとした。SS管の長さに沿って3.2mm/秒の移動速度でエスピニング針を動かすような横送りを用いた。横送りにかかるリターンポイントはBiax管の端部に設定した。9.2kVの電圧を使用した。PTFEをこれらの条件下で管上に60分間エスピンさせると、およそ50μm(焼結後に堆積された状態)厚のPTFE繊維被覆が得られた。
【0055】
管アセンブリを乾燥させた後、複合ステント−グラフトをSS管上で、385℃において15分間焼結させた。冷却後、イソプロパノールを用いて、管からのステント−グラフトの除去を促した。
【0056】
実施例4:
II型構造物:ePTFE/ステント/エスピンされたPTFE:
ステント−管アセンブリを乾燥させた後、次に、ステント−管アセンブリを、80μmのステンレス鋼(SS)フォイルで巻き付け、さらに焼結されていない25μm厚のePTFE膜でアセンブリ全体の周りに施すように巻き付けた以外は、実施例3と同様とした。その後、ステント−管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。冷却したら、SSフォイル及び25μm厚の膜を除去して、ステント−グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのグラフトの除去を促した。
【0057】
実施例5:
III型構造物:ePTFE/エスピンされたPTFE/ePTFE:
20μmのノード間距離(IND)、4mmの内径(ID)、0.1mmの壁厚(WT)、及び77.27%の多孔度を有する、二軸(Biax)延伸されたおよそ10cm長のePTFE管を、35cm長の4mm外径(OD)ステンレス鋼管上に設置して、中心を合わせた。旋回する管アセンブリの全長に沿ってエスピンするような位置に管アセンブリを据えるように、管アセンブリを回転チャックに設置した。
【0058】
4.2%の(PEO/PTFE)、300000amuポリエチレンオキシド及びDaikin D210 60%PTFE分散液の混合物をベースとしたおよそ85900cPsのエスピニング分散液は、均質化させた後に、回転及び濾過させて、むらのない粘度を実現しており、これを、22ゲージ針を備える10ml容のプラスチックシリンジに入れた。このシリンジは、Harvard Model 702100シリンジポンプに入れ、2.0ml/時間のポンプ流量に設定した。針先は、回転する管アセンブリからおよそ9.5cmの位置に合わせた。管アセンブリの回転はおよそ60rpmとした。管の長さに沿って3.2mm/秒の移動速度でエスピニング針を動かすような横送りを用いた。横送りにかかるリターンポイントはBiax管の端部に設定した。9.2kVの電圧を使用した。PTFEをこれらの条件下で管上に60分間エスピンさせると、およそ50μm(焼結後に堆積された状態)厚のPTFE繊維被覆が得られた。
【0059】
管アセンブリを50℃で1時間乾燥させた後、基本重量9.955gsm及び厚み28μmのePTFE膜を、管アセンブリの周りに4回巻き付けた。さらに、管アセンブリは、アセンブリ全体の周囲に密接に施されるように、焼結されていない25μm厚のePTFE膜で巻き付けられた。その後、管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。冷却後、25μm厚の膜を除去して、グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのグラフトの除去を促した。
【0060】
実施例6:
III型構造物:ePTFE/エスピンされたPTFE/ePTFE:
管アセンブリを乾燥させた後、基本重量9.955gsm及び厚み28μmのePTFE膜を、管アセンブリの周りに4回巻き付けた以外は、実施例5と同様とした。次に、管アセンブリを、80μmのステンレス鋼(SS)フォイルで巻き付け、さらに焼結されていない25μm厚のePTFE膜でアセンブリ全体の周りに施すように巻き付けた。その後、管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。冷却したら、SSフォイル及び25μm厚の膜を除去して、グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのグラフトの除去を促した。
【0061】
実施例7:
IV型構造物:ePTFE/ステント/エスピンされたPTFE/ePTFE:
20μmのノード間距離(IND)、4mmの内径(ID)、0.1mmの壁厚(WT)、及び77.27%の多孔度を有する、二軸(Biax)延伸されたおよそ6cm長のePTFE管を、35cm長の4mm外径(OD)ステンレス鋼管上の端部に設置した。次に、5.2cm長、4.25mm ID及び0.125mmのWTの一般的なステントを、わずかに延伸させ、ePTFE管上に設置して、中心を合わせた。その後、ePTFE管アセンブリをSS管の中間位置に合わせ、旋回する管アセンブリの全長に沿ってエスピンするような位置に管アセンブリを据えるように、管アセンブリを回転チャックに設置した。
【0062】
4.2%の(PEO/PTFE)、300000amuポリエチレンオキシド及びDaikin D210 60%PTFE分散液の混合物をベースとしたおよそ85900cPsのエスピニング分散液は、均質化させた後に、回転及び濾過させて、むらのない粘度を実現しており、これを、22ゲージ針を備える10ml容のプラスチックシリンジに入れた。このシリンジは、Harvard Model 702100シリンジポンプに入れ、2.0ml/時間のポンプ流量に設定した。針先は、回転するステント/管アセンブリからおよそ9.5cmの位置に合わせた。ステント/管アセンブリの回転はおよそ60rpmとした。ロッドの長さに沿って3.2mm/秒の移動速度でエスピニング針を動かすような横送りを用いた。横送りにかかるリターンポイントはステントの端部に設定した。9.2kVの電圧を使用した。PTFEをこれらの条件下で管上に60分間エスピンさせると、およそ50μm(焼結後に堆積された状態)厚のPTFE繊維被覆が得られた。
【0063】
管アセンブリを乾燥させた後、基本重量9.955gsm及び厚み28μmのePTFE膜を、ステント/管アセンブリの周りに4回巻き付けた。次に、ステント/管アセンブリは、アセンブリ全体の周囲に密接に施されるように、焼結されていない25μm厚のePTFE膜で巻き付けられた。その後、管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。冷却後、25μm厚の膜を除去して、ステント−グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのステント−グラフトの除去を促した。
【0064】
実施例8:
IV型構造物:ePTFE/ステント/エスピンされたPTFE/ePTFE:
管アセンブリを乾燥させた後、基本重量9.955gsm及び厚み28μmのePTFE膜を、ステント−管アセンブリの周りに4回巻き付けた以外は、実施例7と同様とした。次に、ステント−管アセンブリを、80μmのステンレス鋼(SS)フォイルで巻き付け、さらに焼結されていない25μm厚のePTFE膜でアセンブリ全体の周りに施すように5回巻き付けた。その後、管アセンブリを、385℃に事前に加熱させた炉内に15.0分間入れた。冷却したら、SSフォイル及び25μm厚の膜を除去して、ステント−グラフトが見えるようにした。イソプロパノールを用いて、管からのグラフトの除去を促した。
【0065】
簡略かつ簡潔にするために、本明細書中に記載される値の任意の範囲は、該当する特定の範囲内の整数値であるエンドポイントを有する任意の部分範囲を挙げる特許請求の範囲について記載された説明を裏付けるものとして解釈される。仮説に基づく例示的な実施例のために、1〜5の範囲の本明細書中の開示は、特許請求の範囲を以下の部分範囲:1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4及び4〜5のいずれかへと裏付けると解釈される。
【0066】
本開示に対するこれらの及び他の変更形態及び変形形態は、本開示、より詳細には添付の特許請求の範囲に記載されるものの精神及び範囲を逸脱しない限り、当業者によって実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様を全部又は一部において相互に交換してもよいことを理解されたい。さらに、当業者は、上述の説明がほんの一例に過ぎず、本開示を限定するように意図されるものではないことを認識しているであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補綴具を製造する方法であって、
少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することと、
管状フレームを管状高分子構造体上に設置することと、
前記分散液から前記管状フレーム上にナノファイバを電界紡糸することであって、補綴具を形成する、電界紡糸することと、
前記補綴具を加熱することと、
を含む、補綴具を製造する方法。
【請求項2】
前記ナノファイバがPTFEを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散液が約50重量パーセント〜80重量パーセントのPTFEを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
焼結させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維化ポリマーがポリエチレンオキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記管状高分子構造体がePTFEを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
補綴具を製造する方法であって、
少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することと、
前記分散液から管状高分子構造体上にナノファイバを電界紡糸することと、
高分子材料の層を前記ナノファイバ上かつ前記管状高分子構造体の周りに巻き付けることであって、補綴具を形成する、巻き付けることと、
前記複合構造体を加熱することと、
を含む、補綴具を製造する方法。
【請求項9】
前記ナノファイバがPTFEを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散液が約50重量パーセント〜80重量パーセントのPTFEを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
焼結させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が水を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維化ポリマーがポリエチレンオキシドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記管状高分子構造体がePTFEを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記高分子材料の層がePTFEを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
補綴具を製造する方法であって、
少なくとも約50000cPsの粘度を有する、高分子ナノファイバ、繊維化ポリマー及び溶媒の分散液を形成することと、
管状フレームを管状高分子構造体上に設置することと、
前記分散液から前記管状フレーム上にナノファイバを電界紡糸することと、
高分子材料の層を前記ナノファイバ上かつ前記管状フレーム及び前記管状高分子構造体の周りに巻き付けることであって、補綴具を形成する、巻き付けることと、
前記補綴具を加熱することと、
を含む、補綴具を製造する方法。
【請求項17】
前記ナノファイバがPTFEを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記管状高分子構造体がePTFEを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記高分子材料の層がePTFEを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維化ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、グアーガム化合物、デンプン、セルロース性化合物、ポリアクリレート、ポリカルボキシレート、ポリ乳酸、ポリメタクリル酸、又はそれらの組合せを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501539(P2013−501539A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523995(P2012−523995)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/044879
【国際公開番号】WO2011/017698
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(507152349)ゼウス インダストリアル プロダクツ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】