説明

静電荷潜像現像用トナーおよびその製造方法

【課題】高温での処理を要することなくコアへのシェルの付着を確実なものとし、かつ低温定着性を向上させたトナーの提供
【解決手段】少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、無機塩基を含む芯粒子と、該芯粒子表面に形成されるビニル系樹脂微粒子よりなる凸部とからなるトナーであって、
該トナーは芯粒子を海、凸部を島とする海島構造を有し、
前記芯粒子の結着樹脂は、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
凸部を形成するビニル系樹脂微粒子は、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物モノマー50質量%以上80質量%以下と、エステル基を含むビニル重合性モノマー20質量%以上40質量%以下とを含み、酸基を有するモノマーを含まず、重量平均分子量Mwが5万以上20万以下、ガラス転移温度Tgが45℃以上65℃以下であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法において形成される静電潜像を現像するための静電荷潜像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真に関する研究開発が様々な創意工夫と技術的アプローチにより行われてきている。電子写真法では、感光体表面を帯電、露光して形成した静電潜像に着色トナーで現像してトナー像を形成し、該トナー像を転写紙等の被転写体に転写し、これを熱ロール等で定着して画像を形成している。
【0003】
トナーの定着方式としては、熱ロール定着方式等の接触加熱定着方式が広く採用されている。熱ロール定着方式に使用される定着装置は、加熱ロールと加圧ロールとを備えており、トナー像を担持した記録シートを、加熱ロールと加圧ロールとの圧接部(ニップ部)を通過させることにより、トナー像を溶融させて記録シートに定着させる。
【0004】
トナーの製造方法としては従来から存在する所謂混練粉砕法の他に、有機溶媒と水系溶媒を使用する懸濁法や乳化法、重合性モノマー滴を制御して重合し直接トナー粒子を得る懸濁重合法、乳化微粒子を作製してそれらを凝集しトナー粒子を得る凝集法、などの所謂湿式造粒またはケミカルトナー法と呼ばれる製造法が知られている。
【0005】
また、トナーの内部に熱定着に有利な樹脂を用い、その外側をブロッキング等に有利な樹脂で覆った、所謂コア/シェル型トナーが知られており、樹脂材料としては靱性や耐熱性、定着性に有利なポリエステル樹脂を用いたコア/シェル型トナーが知られている。
例えば、ポリエステル樹脂微粒子分散液を凝集塩を用いて凝集/塩析でコア粒子を生成し、その後さらにポリエステル樹脂微粒子分散液を追加して同様に凝集塩を用いて凝集/塩析でシェル層を形成してその後融着させる方法が知られている(特許文献1参照)。
また、同様にコア/シェル層の形成方法が共に、ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した後、転相乳化で樹脂微粒子を作製して電解質を加えて凝集させる方法も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
更に、近年、環境意識の高まりから、消費電力を抑えた電子写真装置の開発がされており、トナーとしては、耐久性が高く、更に定着時の温度が低くても紙に定着できるようなものが研究開発されており、その方法の一つとして、結晶性ポリエステルを用いたコアシェルトナーが既に知られている。
例えば、特許文献3には、様々な機械的ストレス下でもトナーが安定して性能を維持するために表面への結晶性樹脂や離型剤の露出を抑制し、定着性を損なわずに表面硬度を高くするとともにトナー自体の機械的強度を向上させることが目的としたコアシェルトナーが記載されている。これは結晶性ポリエステル樹脂A及び非晶性ポリエステル樹脂Bを含有する結着樹脂と、着色剤と、を含むコア粒子の表面にシェルを設けたコアシェル構造の静電荷像現像用トナーであって、そこへハイブリッド樹脂(スチレンとポリエステルを化学的に結合させた樹脂)を加えることで、コア層とシェル層との接着を向上させその結果として現像規制部での機械的ストレスに対して高い耐久性を有するトナー構造とするものである。
【0007】
このトナーはシェルを形成するビニル系樹脂をコアとなる粒子に確実に付着させるため、90℃以上の高温で加熱を行っているが、実際に工業的な生産を検討した場合において、このような高温で加熱することは多大なエネルギーを必要とするため、経済的にも環境負荷を考える上でも好ましい方法とはいえない。また、その実施例ではシェル材として、酸モノマーを含むものが使用されているが、酸モノマーを含んだシェル材では、水相への安定性が高いため、常温ではコア粒子に付着しにくいといった問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、高温での処理を要することなくコアへのシェルの付着を確実なものとし、かつ低温定着性を向上させたトナーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を進めた結果、結晶性のポリエステルを含有したコア材とし、スチレンモノマーとエステル基を含んだモノマーとをある一定の比率以上添加することにより合成した樹脂をシェル材として使用し、コアが溶媒を含有した状態でシェルを被覆させることでシェルとコアとの相溶性をより一層向上させることができること、シェルの分子量を大きくすることで、トナー自体の強靭性を付与する事が可能になること、及び、酸モノマーを加えないことで、水相から油相への移行性を向上させ(酸モノマーを加えないことで水相中でのシェルの安定を低下させる)、コア表面上へ確実にシェル層を設け、トナーとしての耐久性とコアに含まれる結晶性ポリエステルの特性を生かし、低温定着に有利なエステル基を含んだモノマー効果により低温定着性を向上させることができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのものである。
【0010】
(1)少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、無機塩基を含む芯粒子と、該芯粒子表面に形成されるビニル系樹脂微粒子よりなる凸部とからなるトナーであって、
該トナーは芯粒子を海、凸部を島とする海島構造を有し、
前記芯粒子の結着樹脂は、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
凸部を形成するビニル系樹脂微粒子は、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物モノマー50質量%以上80質量%以下と、エステル基を含むビニル重合性モノマー20質量%以上40質量%以下とを含み、酸基を有するモノマーを含まず、重量平均分子量Mwが5万以上20万以下、ガラス転移温度Tgが45℃以上65℃以下であることを特徴とするトナー。
(2)前記ビニル系樹脂微粒子が、ビニル重合性官能基を有する前記芳香族化合物モノマーを65質量%以上75質量%以下、エステル基含むビニル重合性モノマーを25質量%以上35質量%以下含有することを特徴とする(1)に記載のトナー
(3)前記ビニル系樹脂微粒子の体積平均粒子径が60nm以上120nm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のトナー
(4)前記エステル基を含むビニル重合性モノマーがスチレンであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のトナー。
(5)前記エステル基を含むビニル重合性モノマーがアクリル酸ブチルであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のトナー。
(6)前記芯粒子が、更にウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のトナー。
(7)前記離型剤がパラフィン類、合成エステル類、ポリオレフィン類、カルナウバワックス、またはライスワックスから選択される単独または2種以上含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(8)有機溶媒中に少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂、着色剤、離型剤を溶解あるいは分散させた油相を作成する工程、
水系媒体中に少なくとも無機塩基を有する水相を作成する工程、
前記水相中に前記油相を分散させて、芯粒子の分散液を作製する工程、
前記芯粒子の分散液中に、少なくともビニル系樹脂微粒子分散液を添加し、前記芯粒子上に前記ビニル系樹脂微粒子を付着させる工程、
前記有機溶媒を除去して芯粒子の表面にビニル系樹脂微粒子が付着してなるトナー粒子を得る工程、
前記トナー粒子を洗浄する工程、
前記トナー粒子を乾燥する工程
を備えたことを特徴とするトナーの製造方法。
(9)前記芯粒子が有機溶媒を含有している時に前記ビニル系樹脂微粒子分散液を加えて溶解/析出により芯粒子と凸部との連続層を形成することを特徴とする(8)に記載のトナーの製造方法。
(10)前記水系媒体中に界面活性剤が含まれていることを特徴とする(8)または(9)に記載のトナーの製造方法。
(11)前記ビニル樹脂微粒子分散液は、有機溶媒を含有せず、微粒子が固体の状態で分散されていることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
(12)凸部形成後に有機溶剤を完全に除去することを特徴とする(8)〜(11)のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
(13)前記ビニル樹脂微粒子分散液を加えて、芯粒子にビニル系樹脂微粒子から成る凸部を形成する工程において、分散された芯粒子に有機溶媒が10質量%〜70質量%含まれていることを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
(14)(1)〜(7)のいずれかに記載のトナーを充填したことを特徴とするトナー容器。
(15)(1)〜(7)のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
(16)潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器と、を備える現像装置において、現像剤収納器に(15)に記載の現像剤が収納されていることを特徴とする現像装置。
(17)潜像担持体と、少なくとも潜像担持体上の潜像を現像剤で現像する現像装置とを一体化して画像形成装置に対して着脱可能に構成したプロセスカートリッジにおいて、現像装置が(16)に記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(18)潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体上の可視像を定着させる定着手段と、を備える画像形成装置であって、現像手段が、(16)に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
コアが溶媒を含んだ状態でシェル層を形成させことに加え、シェル層に使用する樹脂にエステル基を有するモノマーをある一定以上加えることで結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを含んだコアとシェルとの接着性を向上させる。また、酸モノマーを使用しないことでもコア表面上へシェル層を作製することができる。また、シェル材においてエステル基を含んだモノマーを20質量%以上40質量%以下含有することで母体であるポリエステル樹脂との相溶性を向上させ、芯材へのシェルの付着性を向上させると共に、更にシェルの重量平均分子量(Mw)を50000〜200000とすることでシェル自体の強靭性も向上させてトナー自体の耐久性能の向上が可能になった。また、スチレンモノマーに比べて比較的Tgの低いモノマーを規定量添加することで低温定着性に優れ、結晶性ポリエステルを含んだコアの特性を生かしながら、同時に耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のトナー粒子の外観を示すSEM写真である。
【図2】本発明の静電荷像現像用トナーが用いられる画像形成装置の一実施形態の要部を示す説明図である。
【図3】本発明の静電荷像現像用トナーが用いられる画像形成装置に用いられる定着装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の静電荷像現像用トナーが用いられる画像形成装置の他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の静電荷像現像用トナーが用いられる画像形成装置の他の例を示す説明図である。
【図6】本発明の静電荷像現像用トナーが用いられるプロセスカートリッジを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るトナーは、芯粒子と、該芯粒子の表面に形成される凸部とからなるコアシェル型のトナーであり、芯粒子を海、凸部を島とする海島構造を有している。なお、本願明細書では便宜上、芯粒子をコア、凸部をシェルということがある。
芯粒子は少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、無機塩基を含んでおり、該結着樹脂は少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含んでいる。また、凸部はビニル系樹脂微粒子によって構成されており、このビニル系樹脂微粒子は、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物を50質量%以上80質量%以下、及びエステル基を含むビニル重合性モノマーを20質量%以上40質量%以下をそれぞれ含み、ビニル重合性官能基と酸基とを有する化合物を含んでおらず、重量平均分子量Mwが5万以上20万以下、ガラス転移温度Tgが65℃以上45℃以下である。
【0014】
上記のように凸部を構成する樹脂微粒子は主成分粒子表面に分散しており、当該主成分粒子の表面積のうち30〜60%を被覆していることが好ましい。これにより耐久時における帯電性能が維持され、地汚れ、ブレード固着の抑制が可能となる。樹脂微粒子が被覆する面積が主成分粒子の表面積の30%未満であると、表面層の状態が不均一になり、定着分離性の低下、被覆不良による帯電性の低下が生じ、地汚れが悪化するため好ましくない。逆に、樹脂微粒子が被覆する面積が主成分粒子の表面積の60%を超えると、樹脂微粒子が単独で凝集化してしまいやすく、表面被覆率の低下をまねくため好ましくない。
また、本発明に係るトナーは、前記主部分を構成する結晶性樹脂の添加比率が主部分全体比率に対して2.0質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましい。これにより実機耐久性の確保が可能となる。
【0015】
主成分粒子における結晶性ポリエステルの添加量を2〜5質量%の範囲にすることで結晶性ポリエステルの表面露出成分を抑制し、更にその上に粒状のシェル(ビニル系樹脂微粒子)を均一に付着させることで、結晶性ポリエステルによる低温定着性を維持しながらも、耐久時においても感光体フィルミングを発生させないトナーができる。結晶性ポリエステルの添加比を少なくすることにより、感光体フィルミングに対する耐力を向上させることができる。
【0016】
また、従来のトナーは、結晶性ポリエステルとワックスは完全相溶に近い形態をとっており、ワックスの表面効果が小さいため、結晶性ポリエステル成分の効果がワックスの本来の効果よりも大きくなり、結晶性ポリエステル成分の弊害が出やすい状態になっていた。
これに対し、上記のように結晶性ポリエステル成分を少なくすると、結晶性ポリエステルとワックスとの関係をやや非相溶に近い状態にすることで、ワックス本来の効果を引き出すと共に、結晶性ポリエステル成分の効果も同時に引き出すことが可能になる。更に、結晶性ポリエステル成分の上に帯電能力の高い粒状のシェル(樹脂微粒子)を付着させていることにより、結晶性ポリエステル成分による帯電低下の悪影響を防ぐことができ、高い帯電性を持つことが出来る。
【0017】
<ポリエステル樹脂>
本発明で使用されるポリエステル樹脂としては以下のポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物が挙げられ、いかなるものでも使用することができ、また数種のポリエステル樹脂を混合して使用しても良い。
【0018】
(ポリオール)
ポリオール(1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、等の4,4′−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類など);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0019】
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0020】
更に、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
尚、上記ポリオールは1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものではない。
【0021】
(ポリカルボン酸)
ポリカルボン酸(2)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、5−トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物など)などが挙げられる。
【0022】
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。さらに3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)、また上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
尚、上記ポリカルボン酸は1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものではない。
【0023】
(ポリオールとポリカルボン酸の比)
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0024】
(ポリエステル樹脂の分子量)
ピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると低温定着性が悪化する。
【0025】
<変性ポリエステル樹脂>
本発明に使用される結着樹脂は、粘弾性調整のために、ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を含有していても良い。これにより高温側の定着性能を維持することができる。該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂の含有割合は、前記結着樹脂中、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。含有割合が20%より多くなると低温定着性が悪化する。該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂は、直接結着樹脂に混合しても良いが、製造性の観点から、末端にイソシアネート基を有する比較的低分子量の変性ポリエステル樹脂(以下プレポリマーと表記することがある)と、これと反応するアミン類を結着樹脂に混合し、造粒中/又は造粒後に鎖伸長又は/及び架橋反応して該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂となる方が好ましい。こうすることにより、粘弾性調整のための比較的高分子量の変性ポリエステル樹脂を含有させることが容易となる。
【0026】
(プレポリマー)
前記イソシアネート基を有するプレポリマーとしては、前記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0027】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0028】
(イソシアネート基と水酸基の比)
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐オフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、耐オフセット性が悪化する。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0029】
(プレポリマー中のイソシアネート基の数)
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、鎖伸長及び/又は架橋後の変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐オフセット性が悪化する。
【0030】
(鎖伸長)
本発明において、鎖伸長は、水伸長により促進される。従来技術で提案されているようなアミン類は用いない。アミン類を用いない理由としては、コアシェル型の溶解懸濁法においては、アミン類を用いたコア層は、シェル層を均一に分散させることが難しいからである。原因は定かではないが、アミン類を用いることでシェル粒子がコア層表面に凝集して均一粒子を形成せず、コア層内部に取り込まれてしまうのが原因とも推測される。
鎖伸長剤の代わりに用いるものとしては、無機塩基が挙げられる。
【0031】
(無機塩基)
無機塩基としては、公知の無機塩基を用いることができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸水素塩;およびこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0032】
(無機塩基の作用)
上記無機塩基物は油相または水相のいずれに用いてもよい。無機塩基物を油相に添加することでも、トナー成分である樹脂相にあらかじめ浸透させることにより、粒子の均一性を向上させ、乳化時の造粒性はもとより、収斂工程での芯粒子の作製並びに樹脂微粒子のよりつきをより良くすることができる。無機塩基物を水相に用いることで水相内のphをアルカリ性に制御する事が可能になり、乳化時の粒径制御の微調整が可能になる。この事は、油相時に無機塩基物を添加する事においても、水相と油相を混ぜる際に上記とほぼ同等の効果が得られる。
【0033】
水溶性のアミン化合物によってもpHの調整は可能であるが、これを用いて製造されたトナーは芯粒子表面における樹脂微粒子の付着性が悪く、更には帯電性能が著しく低く、電子写真プロセスに使用することが非常に困難になるため好ましくない。
【0034】
(停止剤)
さらに、必要により鎖伸長及び/又は架橋反応は微量の停止剤を用いて反応終了後の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
(アミノ基とイソシアネート基の比率)
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2より大きかったり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0035】
<結晶性ポリエステル樹脂>
本発明のトナーには、低温定着性を向上させるために結晶性ポリエステルを含有する。。結晶性ポリエステルも前述のポリオールとポリカルボン酸の重縮合物として得られるが、ポリオールとしては脂肪族ジオールが好ましく具体的にはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等が挙げられ、その中でも1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールや1,8−オクタンジオールが好ましく、さらに好ましくは1,6−ヘキサンジオールである。ポリカルボン酸としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸が好ましいが、結晶化度を高くするためには脂肪族カルボン酸がより好ましい。
なお、結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)と非結晶性樹脂とは熱特性で判別される。結晶性樹脂は、例えばDSC測定においてワックスのように明確な吸熱ピークを有する樹脂を指す。一方、非結晶性樹脂はガラス転移に基づく緩やかなカーブが観測される。
【0036】
(ビニル系樹脂微粒子)
トナーの凸部を形成するビニル系樹脂からなる樹脂微粒子は、主としてビニル重合性官能基を有する芳香族化合物をモノマーとして含むモノマー混合物を重合させることによって得られる。
【0037】
モノマー混合物中におけるビニル重合性官能基を有する芳香族化合物モノマーの含有量は50質量%以上80質量%以下である。また、その他のモノマーとして、エステル基を含むビニル重合性モノマーを20質量%以上40質量%以下含むが、ビニル重合性官能基と酸基とを有するモノマーは含まない。
【0038】
シェル層に使用する樹脂にエステル基を有するモノマーを20質量%以上40質量%以下含有させることでコアに含まれる、エステル基を含んだ樹脂(非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂)との相溶性を大きく向上させることができ、シェルのコアからの離脱を防ぎトナーとしての耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、シェルがビニル重合性官能基と酸基とを有する酸モノマー(アクリル酸等)を含まないことで、水相への安定性が低く溶媒を含んだ状態のコアへの移行性が向上しコアとシェルとの接着性が向上する。酸モノマーを使用すると、得られるビニル系樹脂微粒子はそれ自身の分散安定性が高いため、油滴が水相中に分散された分散液中にこのようなビニル系樹脂微粒子を添加しても、常温ではコアに付着しにくいか、付着をしても脱離しやすい状態にあり、溶媒除去、洗浄、乾燥、外添処理を行う過程で容易に剥がれてしまう。また、酸モノマーを使用しないことによって、得られるトナーが使用される環境によって帯電性の変化が少なくすることができる。
【0040】
ビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は5万以上20万以下とし、ガラス転移温度(Tg)を45〜65℃とする。
Tgが45〜65℃であることで結晶性ポリエステルを含有するコアの低温での定着性の特徴を生かすことができ、シェル層の分子量が5万以上20万以下であることでシェルの強靭性を上げることができ、耐久性の向上が可能となる。更にはシェルにエステル基を有するモノマーを20質量%以上40質量%以下含有させることでコアとの接着性を大きく向上させることが可能である。
【0041】
(ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物モノマー)
ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物における重合可能な官能基としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
具体的なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アリルベンゼン、フェノキシアルキレングリコールアクリレート、フェノキシアルキレングリコールメタクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールアクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
この中では、入手が容易で反応性に優れ帯電性の高いスチレンを主に用いるのが好ましい。また、樹脂微粒子を作製する際の製造安定性向上のために、スチレンとブチルアクリレート(アクリル酸ブチル)とを混合して用いることが好ましい。
【0042】
(エステル基を含むビニル重合性モノマー)
ビニル重合性官能基とエステル基を有する化合物としては、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。ビニル(チオ)エーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ヒニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒトロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2´−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン、フェノキシスチレン。ビニルケトン、例えはビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン;ビニルスルホン、例えばジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン、ジビニルスルフォキサイド等が挙げられる。
【0043】
ビニル系樹脂微粒子を得る方法としては特に限定されないが、以下の(a)〜(f)が挙げられる。
(a)モノマー混合物を懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により反応させ、ビニル系樹脂微粒子の分散液を製造する。
(b)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を製造する。
(c)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を製造する。
(d)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂微粒子を製造する。
(e)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する。
(f)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
この中で、製造が容易であり、樹脂微粒子を分散液として得られることから次工程への適用がスムーズに行うことができる(a)の方法が好ましい。
【0044】
(a)の方法において、重合反応を行う際には、水系媒体中に分散安定剤を添加する、もしくは重合反応を行うモノマー中に、重合してできた樹脂微粒子の分散安定性を付与できるようなモノマー(いわゆる反応性乳化剤)を添加する、またはこれら2つの手段を併用し、できあがったビニル系樹脂微粒子の分散安定性を付与するのがよい。分散安定剤や反応性乳化剤を使用しないと、粒子の分散状態を維持できないためにビニル系樹脂を微粒子として得ることができなかったり、得られた樹脂微粒子の分散安定性が低いために保存安定性に乏しく保管中に凝集してしまったり、あるいは後述の樹脂微粒子付着工程での粒子の分散安定性が低下するために、芯粒子同士が凝集・合一しやすくなり最終的に得られるトナーの粒径や形状・表面などの均一性が悪くなるため、好ましくない。
【0045】
分散安定剤としては、界面活性剤、無機分散剤などが挙げられ、界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。
【0046】
本発明における樹脂微粒子を製造する場合に、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の連鎖移動剤を使用することが好ましい。このような炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性の連鎖移動剤としては、特に制限されないが、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。この際、疎水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
この際、連鎖移動剤の添加量は、得られる共重合体を所望の分子量になるように調節できる量であれば特に制限されないが、好ましくは、単量体成分の合計モルに対して、0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜25質量部である。この際、連鎖移動剤の添加量が0.01質量部未満であると、得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎるため、定着性が低下したり、重合反応中にゲル化したりしてしまう可能性がある。逆に、連鎖移動剤の添加量が30質量部を超えた場合、未反応の状態で連鎖移動剤が残存し、また得られる共重合体の分子量が小さく、部材汚染を引き起こす。
【0048】
前記樹脂微粒子の体積平均粒子径は60nm以上120nm以下であり、前記島部分の面積がトナー全表面積の35〜55%であることが好ましい。これによりトナー表面における樹脂微粒子の均一付着性が良好なものとなる。樹脂微粒子の体積平均粒子径が60nm未満であると、コア表面と部材との接触が起こりやすくなり、帯電性が悪化することがあるため好ましくない。また、120nmを超える場合には、ニップでのストレスにより微粒子が剥がれることがあるため好ましくない。
また、樹脂微粒子により構成される凸部の平均高さは0.03〜0.1μmであることが好ましい。これによりトナーの異形化が抑制され、また、樹脂微粒子の単独の二次、三次凝集を抑制することができる。
【0049】
<着色剤>
本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。
【0050】
<離型剤>
本発明に使用する離型剤としては、公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。上記の内、極性が小さく溶融粘度が低いという理由から好ましいものはポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素であり、特に好ましいものはパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスである。これらのワックスを使用することにより、定着特性を全般に向上させることができ、また最低限のワックス添加量でも効果を発揮させることができる。
【0051】
<外添剤>
(無機微粒子)
本発明で得られた着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、特に5nm〜500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0質量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0052】
(高分子系微粒子)
この他高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0053】
(外添剤の表面処理)
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0054】
(クリーニング助剤)
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0055】
<トナーの製造方法>
本発明に係るトナーの製造方法は、有機溶媒中に少なくとも非結晶性樹脂、結晶性樹脂、離型剤、着色剤を溶解あるいは分散させた油相を作成する工程、水系媒体中に少なくとも無機塩基を有する水相を作成する工程、前記水相中に前記油相を分散させ、着色粒子分散液を作成し、主成分粒子を作製する工程、前記主成分粒子が形成されている着色粒子分散液中に、少なくとも樹脂微粒子が分散した樹脂微粒子分散液を添加し、前記主成分粒子上に前記樹脂微粒子を付着させる工程、主成分粒子上に樹脂微粒子が付着した粒子を洗浄する工程、乾燥する工程、を含むことを特徴とする。これにより表面に樹脂微粒子が均一に付着したトナーを作製することができる。
【0056】
本発明のトナーの製造方法を以下に具体的に例示するが、これに制限されるものではない。
<芯粒子造粒工程>
(有機溶媒)
造粒に用いる有機溶媒としては、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステル系樹脂および着色剤は同時に溶解又は分散させても良いが、通常それぞれ単独で溶解又は分散され、その際使用する有機溶媒はそれぞれ異なっていても同じでも良いが、後の溶媒処理を考慮すると同じ方が好ましい。また、ポリエステル系樹脂を好適に溶解させる溶媒(単独または混合)を選択すると、本発明で好ましく用いられる離型剤はその溶解度の違いからほとんど溶解しない。
【0057】
(ポリエステル系樹脂の溶解又は分散)
ポリエステル系樹脂の溶解又は分散液は、樹脂濃度が40%〜80%程度であることが好ましい。濃度が高すぎると溶解又は分散が困難になり、また粘度が高くなって扱いづらい。また、濃度が低すぎると微粒子の製造量が少なくなり、除去すべき溶媒量が多くなる。ポリエステル系樹脂に前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂を混合する場合は、同じ溶解又は分散液に混合しても良いし、別々に溶解又は分散液を作製しても良いが、それぞれの溶解度と粘度を考慮すると、別々の溶解又は分散液を作製する方が好ましい。
【0058】
(水系媒体)
用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。樹脂微粒子100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。
【0059】
(無機分散剤および有機樹脂微粒子)
上記水系媒体中に、前記のポリエステル系樹脂および離型剤の溶解物または分散物を分散させる際、無機分散剤または有機樹脂微粒子をあらかじめ水系媒体中に分散させておくことにより、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。有機樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、例えはビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である。
【0060】
(界面活性剤)
また、上記樹脂微粒子を製造する際に、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0061】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及び、その金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0062】
(保護コロイド)
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0063】
(分散の方法)
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは20〜80℃である。
【0064】
(油相作製工程)
有機溶媒中に樹脂、着色剤、離型剤などを溶解あるいは分散させた油相を作製する方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。ただし、着色剤として顔料を用いる場合や、離型剤や帯電制御剤などのなかで有機溶媒に溶解しにくいようなものを添加する場合、有機溶媒への添加に先立って粒子を小さくしておくことが好ましい。
前述のように着色剤のマスターバッチ化も手段の一つであり、同様の方法を離型剤や帯電制御剤に展開することもできる。
【0065】
また別の手段として、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、着色剤、離型剤、帯電制御剤を湿式で分散を行い、ウエットマスターを得ることも可能である。
さらに別の手段として、有機溶媒の沸点未満で溶融するようなものを分散するのであれば、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、分散質とともに攪拌しながら加熱を行い一旦溶解させた後、攪拌もしくはせん断しながら冷却を行うことによって晶析を行い、分散質の微結晶を生成させる方法を行っても良い。
【0066】
以上の手段を用いて分散された着色剤、離型剤、帯電制御剤は、有機溶媒中に樹脂とともに溶解あるいは分散された後、さらに分散を行っても良い。分散に際しては公知のビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
【0067】
(芯粒子作製工程)
水系媒体中に前述の工程で得られた油相を分散させ、油相からなる芯粒子が分散した分散液を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。5分を超えて分散を行うと、望ましくない小径の粒子が残存してしまったり、分散が過分散状態になって系が不安定になり凝集体や粗大粒子が発生したりすることがあるので好ましくない。分散時の温度としては、通常、0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。40℃を超えると分子運動が活発になることから分散安定性が低下し凝集体や粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、0℃未満になると分散体の粘度が高くなり、分散に必要なせん断エネルギーが増大するため製造効率が低下する。
【0068】
界面活性剤は、前述の樹脂微粒子の製造法に関する説明で記載したものと同じものが使用できるが、溶媒を含む油滴を効率よく分散するためには、HLBが高めのジスルホン酸塩のものが好ましい。界面活性剤は、水系媒体中での濃度が1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%の範囲にあるのが良い。10質量%を超えると、油滴が小さくなりすぎたり、逆ミセル構造を形成して逆に分散安定性が低下して油滴の粗大化が発生したりするため好ましくない。また1質量%未満では油滴の分散を安定に行うことができずに油滴が粗大化してしまうため好ましくはない。
【0069】
(樹脂微粒子付着工程)
得られた芯粒子分散液は、攪拌を行っている間は安定に芯粒子の液滴を存在させておくことができる。その状態に前述のビニル系樹脂微粒子分散液を投入して芯粒子上に付着させる。ビニル系樹脂微粒子分散液の投入は、30秒以上かけて行うのが良い。30秒未満で投入を行うと、分散系が急激に変化するために凝集粒子が発生したり、ビニル系樹脂微粒子の付着が不均一になったりするため好ましくない。一方闇雲に長い時間、例えば60分を超えて添加するのは生産効率の面から好ましくはない。
【0070】
樹脂微粒子分散液は、芯粒子分散液に投入する前に、適宜濃度調整のために希釈あるいは濃縮しても良い。ビニル系樹脂微粒子分散液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましい。5%未満では、分散液の投入に伴う有機溶媒濃度の変化が大きく、樹脂微粒子の付着が不十分になるため好ましくない。また30質量%を超えるような場合、樹脂微粒子が芯粒子分散液中に偏在しやすくなり、その結果樹脂微粒子の付着が不均一になるため避けたほうが良い。
【0071】
本発明の方法によって芯粒子に対して樹脂微粒子が十分な強度で付着するのは、樹脂微粒子が芯粒子の液滴に付着したときに、芯粒子が自由に変形できるために樹脂微粒子界面と接触面を十分に形成すること、および、有機溶媒によって樹脂微粒子が膨潤もしくは溶解し、樹脂微粒子と芯粒子内の樹脂とが接着しやすい状況になることだと思われる。したがって、この状態において有機溶媒は系内に十分に存在することが必要である。具体的には、芯粒子分散液の状態において、固形分(樹脂、着色剤、および必要に応じて離型剤、帯電制御剤など)に対して10質量%〜70質量%、好ましくは30質量%〜60質量%、さらに好ましくは40質量%〜55質量%の範囲にあるのがよい。70質量%を超えると、一度の製造工程で得られる着色樹脂粒子が少なくなり生産効率が低いこと、また有機溶媒が多いと分散安定性が低下して再凝集が発生するなど、安定した製造が難しくなることなどから好ましくない。また、10質量%未満であると前述のように芯粒子に対して樹脂微粒子が十分な強度で付着できなくなり好ましくない。しかしながら、芯粒子を製造する時に好ましい有機溶媒濃度よりも樹脂粒子を付着させる時の好ましい濃度の方が低い場合は、芯粒子を製造した後に有機溶媒を一部除去することで有機溶媒濃度を調整して樹脂粒子を付着させ、その後有機溶媒を完全に除去しても良い。ここで、有機溶媒を完全に除去するとは、後述の脱溶工程で通常使用される公知の方法において除去できる範囲のレベルである。
【0072】
芯粒子にビニル系樹脂微粒子を付着するときの温度としては、10〜60℃、好ましくは20〜45℃である。60℃を超えると、製造に必要なエネルギーが増大するために製造環境負荷が大きくなることに加え、低酸価のビニル系樹脂微粒子が液滴表面に存在することもあり分散が不安定になり粗大粒子が発生する可能性もあるため好ましくない。一方10℃未満では分散体の粘度が高くなり、樹脂微粒子の付着が不十分になるため好ましくない。
【0073】
(脱溶)
得られた着色樹脂分散体から有機溶剤を除去するために、公知の方法を使用することができる。例えば、常圧または減圧下で系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
【0074】
(伸長又は/及び架橋反応)
ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を導入する目的で、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂およびこれと反応可能なアミン類を添加する場合は、水系媒体中にトナー組成物を分散する前に油相中でアミン類を混合しても良いし、水系媒体中にアミン類を加えても良い。上記反応に要する時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常1分〜40時間、好ましくは1〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは20〜98℃である。
【0075】
<洗浄、乾燥工程>
水系媒体に分散されたトナー粒子を洗浄、乾燥する工程は、公知の技術が用いられる。
即ち、遠心分離機、フィルタープレスなどで固液分離した後、得られたトナーケーキを常温〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、必要に応じて酸やアルカリでpH調整した後、再度固液分離するという工程を数回繰り返すことにより不純物や界面活性剤などを除去した後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥することによってトナー粉末を得る。この際、遠心分離などでトナーの微粒子成分を取り除いても良いし、また、乾燥後に必要に応じて公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。
【0076】
<外添処理>
得られた乾燥後のトナー粉体と前記帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0077】
[画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ]
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
本発明の画像形成装置は、本発明のトナーを用いて画像を形成する。なお、本発明のトナーは、一成分現像剤及び二成分現像剤のいずれにも用いることができるが、一成分現像剤として用いることが好ましい。また、本発明の画像形成装置は、無端型の中間転写手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、感光体と、感光体及び/又は中間転写手段に残存したトナーをクリーニングするクリーニング手段を有することが好ましい。このとき、クリーニング手段は、クリーニングブレードを有してもよいし、有さなくてもよい。また、本発明の画像形成装置は、加熱装置を有するローラ又は加熱装置を有するベルトを用いて画像を定着する定着手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、定着部材にオイル塗布を必要としない定着手段を有することが好ましい。さらに、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなることが好ましい。
【0078】
本発明の画像形成装置は、感光体と、現像手段、クリーニング手段等の構成要素をプロセスカートリッジとして構成し、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、分離手段及びクリーニング手段の少なくとも1つを感光体と共に支持してプロセスカートリッジを形成し、画像形成装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、画像形成装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
【0079】
図2に、本発明の画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置は、図示を省略している本体筐体内に、図2中、時計方向に回転駆動される潜像担持体(1)が収納されており、潜像担持体(1)の周囲に、帯電装置(2)、露光装置(3)、本発明のトナー(T)を有する現像装置(4)、クリーニング部(5)、中間転写体(6)、支持ローラ(7)、転写ローラ(8)、除電手段(不図示)等を備えている。
この画像形成装置は、記録媒体例としての複数枚の記録紙(P)を収納する給紙カセット(不図示)を備えており、給紙カセット内の記録紙(P)は、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対でタイミング調整された後、転写手段としての転写ローラ(8)と、中間転写体(6)の間に送り出される。
【0080】
この画像形成装置は、潜像担持体(1)を図2中、時計方向に回転駆動して、潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電した後、露光装置(3)により画像データで変調されたレーザーを照射して潜像担持体(1)に静電潜像を形成し、静電潜像の形成された潜像担持体(1)に現像装置(4)でトナーを付着させて現像する。次に、現像装置(4)でトナー像を形成した潜像担持体(1)から中間転写体(6)に転写バイアスを付加してトナー像を中間転写体(6)上に転写し、さらに該中間転写体(6)と転写ローラ(8)の間に記録紙(P)を搬送することにより、記録紙(P)にトナー像を転写する。さらに、トナー像が転写された記録紙(P)を定着手段(不図示)に搬送する。
【0081】
定着手段は、内蔵ヒータにより所定の定着温度に加熱される定着ローラと、定着ローラに所定圧力で押圧される加圧ローラとを備え、転写ローラ(8)から搬送されてきた記録紙を加熱、加圧して、記録紙上のトナー像を記録紙に定着させた後、排紙トレー(不図示)上に排出する。
【0082】
一方、画像形成装置は、転写ローラ(8)でトナー像を記録紙に転写した潜像担持体(1)をさらに回転して、クリーニング部(5)で潜像担持体(1)の表面に残留するトナーを掻き落として除去した後、不図示の除電装置で除電する。画像形成装置は、除電装置で除電した潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電させた後、上記と同様に、次の画像形成を行う。
【0083】
以下、本発明の画像形成装置に好適に用いられる各部材について詳細に説明する。
潜像担持体(1)としては、その材質、形状、構造、大きさ等について、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としては、ドラム状、ベルト状が好適に挙げられ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンや有機感光体が好ましい。
潜像担持体(1)に静電潜像を形成する際には、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させる帯電装置(2)と、潜像担持体(1)の表面を像様に露光する露光装置(3)を少なくとも備える。
帯電は、例えば、帯電装置(2)を用いて潜像担持体(1)の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0084】
帯電装置(2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた、それ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
帯電装置(2)の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等の形態を採ってもよく、電子写真装置の仕様や形態に合わせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで構成される。
帯電装置(2)は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
【0085】
露光は、例えば、露光装置(3)を用いて感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光装置(3)としては、帯電装置(2)により帯電された潜像担持体(1)の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。
【0086】
現像は、例えば、本発明のトナーを用いて静電潜像を現像することにより行うことができ、現像装置(4)により行うことができる。現像装置(4)は、例えば、本発明のトナーを用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明のトナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
現像装置(4)としては、周面にトナーを担持し、潜像担持体(1)に接して回転すると共に、潜像担持体(1)上に形成された静電潜像にトナーを供給して現像を行う現像ローラ(40)と、現像ローラ(40)の周面に接し、現像ローラ(40)上のトナーを薄層化する薄層形成部材(41)を有する態様が好ましい。
【0087】
現像ローラ(40)としては、金属ローラ及び弾性ローラのいずれかが好適に用いられる。金属ローラとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウムローラ等が挙げられる。金属ローラは、ブラスト処理を施すことで、比較的容易に任意の表面摩擦係数を有する現像ローラ(40)を作製することができる。具体的には、アルミニウムローラにガラスビーズブラストで処理することにより、ローラ表面を粗面化でき、現像ローラ上に適正なトナー付着量が得られる。
【0088】
弾性ローラとしては、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに、表面にはトナーと逆の極性に帯電しやすい材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、薄層形成部材(41)との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止するために、JIS−Aで60度以下の硬度に設定される。表面粗さ(Ra)は、0.3〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。また、現像ローラ(40)には、潜像担持体(1)との間に電界を形成させるための現像バイアスが印加されるので、弾性ゴム層は、10〜1010Ωの抵抗値に設定される。現像ローラ(40)は、時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを薄層形成部材(41)及び潜像担持体(1)との対向位置へと搬送する。
【0089】
薄層形成部材(41)は、供給ローラ(42)と現像ローラ(40)の当接位置よりも低い位置に設けられる。薄層形成部材(41)は、ステンレス(SUS)、リン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ(40)の表面に10〜40N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧下を通過したトナーを薄層化するとともに摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに、薄層形成部材(41)には摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。
【0090】
現像ローラ(40)の表面を構成するゴム弾性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム又はこれらの2種以上のブレンド物等が挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴムのブレンドゴムが特に好ましい。
現像ローラ(40)は、例えば、導電性シャフトの外周にゴム弾性体を被覆することにより製造される。導電性シャフトは、例えば、ステンレス(SUS)等の金属で構成される。
【0091】
転写は、例えば、潜像担持体(1)を帯電することにより行うことができ、転写ローラにより行うことができる。転写ローラとしては、トナー像を中間転写体(6)上に転写して転写像を形成する第一次転写手段と、転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段(転写ローラ(8))を有する態様が好ましい。このとき、トナーとして、二色以上、好ましくは、フルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体(6)上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段を有する態様がさらに好ましい。
なお、中間転写体(6)は、特に制限はなく、目的に応じて、公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0092】
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、潜像担持体(1)上に形成されたトナー像を記録紙(P)側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写手段としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。
なお、記録紙(P)としては、代表的には、普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0093】
定着は、例えば、記録紙(P)に転写されたトナー像に対して、定着手段を用いて行うことができ、各色のトナー像に対して、記録紙(P)に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナー像を積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトの組み合わせ等が挙げられる。なお、加熱加圧手段による加熱温度は、80〜200℃が好ましい。
【0094】
図3に示すようなフッ素系表層剤構成のソフトローラタイプの定着装置であってよい。これは、加熱ローラ(9)は、アルミ芯金(10)上にシリコーンゴムからなる弾性体層(11)及びPFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)表層(12)を有しており、アルミ芯金内部にヒータ(13)を備えている。加圧ローラ(14)は、アルミ芯金(15)上にシリコーンゴムからなる弾性体層(16)及びPFA表層(17)を有している。なお、未定着画像(18)が印字された記録紙(P)は図示のように通紙される。
なお、本発明においては、目的に応じて、定着手段と共に、又は、これに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0095】
除電は、例えば、潜像担持体に対して、除電バイアスを印加することにより、行うことができ、除電手段により好適に行うことができる。除電手段は、特に制限はなく、潜像担持体に対して、除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0096】
クリーニングは、例えば、感光体上に残留するトナーを、クリーニング手段により除去することにより、好適に行うことができる。クリーニング手段は、特に制限はなく、感光体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0097】
リサイクルは、例えば、クリーニング手段により除去したトナーを、リサイクル手段により現像手段に搬送することにより、好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
制御は、例えば、制御手段により各手段を制御することにより、好適に行うことができる。制御手段は、各手段を制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0098】
本発明の画像形成装置、画像形成方法およびプロセスカートリッジによれば、定着性に優れ、現像プロセスにおけるストレスに対して割れなどの劣化のない静電潜像現像用トナーを用いることで、良好な画像を提供することができる。
【0099】
<多色画像形成装置>
図4は、本発明を適用した多色画像形成装置の一例を示す概略図である。この図4はタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
この図4において、画像形成装置は、図示しない本体筐体内に、図4中時計方向に回転駆動される潜像担持体(1)が収納されており、潜像担持体(1)の周囲に、帯電装置(2)、露光装置(3)、現像装置(4)、中間転写体(6)、支持ローラ(7)、転写ローラ(8)等が配置されている。画像形成装置は、図示しないが複数枚の記録紙を収納する給紙カセットを備えており、給紙カセット内の記録紙(P)は、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対でタイミング調整された後、中間転写体(6)と転写ローラ(8)の間に送り出され、定着手段(19)によって定着される。
【0100】
画像形成装置は、潜像担持体(1)を図4中時計方向に回転駆動して、潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電した後、露光装置(3)により画像データで変調されたレーザーを照射して潜像担持体(1)に静電潜像を形成し、静電潜像の形成された潜像担持体(1)に現像装置(4)でトナーを付着させて現像する。画像形成装置は、現像装置(4)で潜像担持体にトナーを付着して形成されたトナー画像を、潜像担持体(1)から中間転写体に転写させる。これをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色それぞれについて行い、フルカラーのトナー画像を形成する。
【0101】
次に、図5は、リボルバタイプのフルカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、現像装置の動作を切り替えることによって1つの潜像担持体(1)上に順次複数色のトナーを現像していくものである。そして、転写ローラ(8)で中間転写体(6)上のカラートナー画像を記録紙(P)に転写し、トナー画像の転写された記録紙(P)を定着部に搬送し、定着画像を得る。
【0102】
一方、画像形成装置は、中間転写体(6)でトナー画像を記録紙(P)に転写した潜像担持体(1)を更に回転して、クリーニング部(5)で潜像担持体(1)表面に残留するトナーをブレードにより掻き落として除去した後、除電部で除電する。画像形成装置は、除電部で除電した潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電させた後、上記同様に、次の画像形成を行う。なお、クリーニング部(5)は、ブレードで潜像担持体(1)上の残留トナーを掻き落とすものに限るものではなく、例えばファーブラシで潜像担持体(1)上の残留トナーを掻き落とすものであってもよい。
本発明の画像形成方法及び画像形成装置では、前記現像剤として本発明の前記トナーを用いているので良好な画像が得られる。
【0103】
<プロセスカートリッジ>
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、本発明のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段などのその他の手段を有してなり、画像形成装置本体に着脱自在なものである。
【0104】
前記現像手段としては、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。本発明のプロセスカートリッジは、各種電子写真装置、ファクシミリ、プリンターに着脱自在に備えさせることができ、後述する本発明の画像形成装置に着脱自在に備えさせるのが好ましい。
【0105】
前記プロセスカートリッジは、例えば、図6に示すように、潜像担持体(1)を内蔵し、帯電装置(2)、現像装置(4)、転写ローラ(8)、クリーニング部(5)を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図6中、(L)は露光装置からの露光、(P)は記録紙をそれぞれ示す。前記潜像担持体(1)としては、前記画像形成装置と同様なものを用いることができる。前記帯電装置(2)には、任意の帯電部材が用いられる。
【0106】
次に、図に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、潜像担持体(1)は、矢印方向に回転しながら、帯電装置(2)による帯電、露光手段(図示せず)による露光(L)により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置(4)でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ(8)により、記録紙(P)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の潜像担持体表面は、クリーニング部(5)によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例及び比較例を示すことにより更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下では、「部」及び「%」は特にことわらない限り質量部及び質量%を示す。
まず、実施例及び比較例において得たトナーについての分析及び評価の方法について述べる。
以下では本件発明のトナーを一成分現像剤として用いた場合についての評価を行ったが、本発明のトナーは、好適な外添処理と好適なキャリアを使用することにより、二成分現像剤としても使用することができる。
【0108】
(平均粒径)
トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。測定方法は以下の通りである。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を固形分にして2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
チャンネルとしては、例えば2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とすることができる。
【0109】
(樹脂微粒子の体積平均粒径)
樹脂微粒子の体積平均粒径の測定方法としては、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装製、動的光散乱法/レーザードップラー法)で測定することができる。具体的な測定方法としては、樹脂微粒子が分散された分散液を測定濃度範囲に調整して測定する。その際、あらかじめ分散液の分散溶媒のみでバッククラウンド測定をしておく。この測定法により、本発明で用いられる樹脂微粒子の体積平均粒径範囲である、数十nm〜数μmまでを測定することが可能である。
【0110】
(分子量)
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などの分子量は、通常のGPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定した。
・装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM−M x 3
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:0.35ml/分
・試料:濃度0.05〜0.6%の試料を0.01ml注入
以上の条件で測定したトナー樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して重量平均分子量Mwを算出した。単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×100,1.085×10000,5.95×10000,3.2×100000,2.56×1000000,2.93×1000,2.85×10000,1.48×100000,8.417×100000,7.5×1000000の物を10点使用した。
【0111】
(ガラス転移点および吸熱量)
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などのガラス転移点の測定としては、例えば示差走査熱量計(例えばDSC−6220R:セイコーインスツル社)を用いて、まず、室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置、室温まで試料を冷却して10min放置、再度150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して、ガラス転移点以下のベースラインと、ガラス転移点以上のベースラインの高さが1/2に相当する曲線部分から求めることができる。
また、離型剤や結晶性樹脂などの吸熱量や融点の測定も同様に行える。吸熱量は測定された吸熱ピークのピーク面積を計算することにより求められる。一般的に、トナー内部に用いる離型剤はトナーの定着温度より低い温度で融解し、その際の融解熱が吸熱ピークとなって現われる。また、離型剤によっては融解熱の他に固相での相転移による転移熱を伴うものがあるが、本発明ではその合計を融解熱の吸熱量とする。
【0112】
<樹脂軟化点(Tm)測定法>
フローテスター(CFT−500:島津製作所社製)を用い、測定する試料1.0gを秤量し、h1.0mm×φ0.5mmのダイを使用し、昇温速度3.0℃/min、予熱時間200秒、荷重30kg、測定温度範囲40〜180℃の条件で測定を行い、上記の試料が1/2流出したときの温度を樹脂軟化点(Tm)とした。
【0113】
<非結晶性ポリエステル樹脂の合成>
(ポリエステル樹脂A)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物1180部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物3000部、テレフタル酸890部、アジピン酸180部およびジブチルチンオキサイド10部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸250部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[ポリエステル樹脂A]を得た。[ポリエステル樹脂A]は、数平均分子量3000、重量平均分子量6700、Tg51℃、Tm98℃、酸価20であった。
【0114】
(ポリエステル樹脂B1)
冷却管撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物400部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部、及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜18mmHgの減圧下で、7時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸20部を添加し、常圧下、180℃で軟化点が110℃になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂B1]を合成した。得られた[ポリエステル樹脂B1]は、重量平均分子量が30000、ガラス転移温度が63℃、酸価が19mgKOH/gであった。
【0115】
(ポリエステル樹脂B2)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物265部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物524部、テレフタル酸125部、アジピン酸175部およびジブチルチンオキサイド1部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で8時聞反応した。その後、反応容器に無水トリメリット酸20部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[ポリエステル樹脂B2]を得た。[ポリエステル樹脂B2]は、重量平均分子量42000、ガラス転移温度が61℃、酸価が16mgKOH/gであった。
【0116】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成>
[結晶性ポリエステル樹脂1]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,10−デカンジオール2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂1を得た。[結晶性ポリエステル樹脂1]は、数平均分子量3000、重量平均分子量10000、DSC測定にて約70℃で吸熱ピークを示した。
【0117】
[結晶性ポリエステル樹脂2]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,10−デカン二酸2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂2を得た。[結晶性ポリエステル樹脂2]は、数平均分子量3500、重量平均分子量12000、DSC測定にて約80℃で吸熱ピークを示した。
【0118】
<プレポリマーの合成>
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、1,2−プロピレングリコール366部、テレフタル酸566部、無水トリメリット酸44部およびチタンテトラブトキシド6部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応し[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量3200、重量平均分子量12000、Tg55℃であった。
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]420部、イソホロンジイソシアネート80部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー]を得た。[プレポリマー]の遊離イソシアネート質量%は、1.34%であった。
【0119】
<非線状ポリエステル樹脂Hの作製>
プレポリマーの代わりに溶解懸濁法で用いる非線状ポリエステル樹脂Hを以下の手順で合成した。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物350部、ビスフェノールA・PO3モル付加物326部、テレフタル酸278部、無水フタル酸40部及び重縮合触媒としてシュウ酸チタニルカリウム1.5部を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸62部を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕して[非線状ポリエステル樹脂H]を得た。
[非線状ポリエステル樹脂H]はTHF不溶分を含有しておらず、その酸価は35、Tmは130℃、Tgは69℃、数平均分子量は3800、重量平均子量は56000であった。
【0120】
<ビニル系共重合樹脂微粒子分散液の作製>
(樹脂微粒子分散液D1)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー140部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート60部、1-オクタンチオール0.30部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径90nmの白色の[樹脂微粒子分散液D1]を得た。重量平均分子量は12万、ガラス転移点は55℃であった。
【0121】
(樹脂微粒子分散液D2)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー140部、アクリル酸ブチル60部、1-オクタンチオール0.30部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径100nmの白色の[樹脂微粒子分散液D2]を得た。重量平均分子量は12万、ガラス転移点は47℃であった。
【0122】
(樹脂微粒子分散液D3)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー140部、アクリル酸エチル60部、1-オクタンチオール0.30部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径95nmの白色の[樹脂微粒子分散液D3]を得た。重量平均分子量は12万、ガラス転移点は56℃であった。
【0123】
(樹脂微粒子分散液D4)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー150部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート50部、1-オクタンチオール1.0部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径90nmの白色の[樹脂微粒子分散液D4]を得た。重量平均分子量は6万、ガラス転移点は62℃であった。
【0124】
(樹脂微粒子分散液D5)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー130部、メトキシジエチレングリコールメタクリレート70部、1-オクタンチオール0.18部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径90nmの白色の[樹脂微粒子分散液D5]を得た。重量平均分子量は18万、ガラス転移点は50℃であった。
【0125】
(樹脂微粒子分散液D6)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー200部、1-オクタンチオール1.4部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径90nmの白色の[樹脂微粒子分散液D6]を得た。重量平均分子量は4万、ガラス転移点は95℃であった。
【0126】
(樹脂微粒子分散液D7)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー172部、アクリル酸ブチル28部、1-オクタンチオール1.4部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径120nmの白色の[樹脂微粒子分散液D7]を得た。重量平均分子量は4万、ガラス転移点は66℃であった。
【0127】
(樹脂微粒子分散液D8)
冷却管、撹拌機および窒素導入管のついた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム0.7部、イオン交換水498部をいれ、攪拌しながら80℃に加熱して溶解させた後、過硫酸カリウム2.6部をイオン交換水104部に溶解させたものを加え、その15分後に、スチレンモノマー124部、アクリル酸ブチル54部、アクリル酸2部、1-オクタンチオール2.0部の単量体混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分間80℃に保ち重合反応をさせた。その後、冷却して体積平均粒子径115nmの白色の[樹脂微粒子分散液D8]を得た。重量平均分子量は2.5万、ガラス転移点は64℃であった。
[樹脂微粒子分散液D1]〜[樹脂微粒子分散液D8]中の樹脂微粒子について、そのモノマー組成、合成の際に用いた連鎖移動剤、体積平均粒子径、重量平均分子量及びガラス転移点を表1に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
<マスターバッチの合成>
PB15−3(銅フタロシアニン):40部、ポリエステル樹脂A:60部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0130】
<WAX分散液作製工程>
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[ポリエステル樹脂A]20部、[パラフィンワックス(融点72℃)]12部、酢酸エチル100部、ワックス分散剤として、スチレン・ポリエチレンポリマー(Tg=72℃、数平均分子量7100)6部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、WAXの分散を行い、[WAX分散液1]を得た。
【0131】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製>
金属製2L容器に[結晶性ポリエステル樹脂1]を100g、酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]を得た。
また同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂1]を[結晶性ポリエステル樹脂2]に変更して、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C2]を得た。
【0132】
[実施例1]
<油相作製工程>
[ポリエステル樹脂B1]100部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]20部、[マスターバッチ1]12部、[WAX分散液1]33部、酢酸エチル80部をTKホモミキサー(特殊機化製)で8,000rpmにて30分間混合した後、[プレポリマー]15部を加えTKホモミキサーで8,000rpmにて2分間混合して[油相1]を得た。得られた[油相1]の固形分を測定したところ58重量%であった
【0133】
<水相の調製>
イオン交換水472部、造粘剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液65部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液80部、酢酸エチル55部を混合撹拌したところpH6.0となった。これに、水相を攪拌しながら10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH11.5〜12.5の間に調整し、[水相1]を得た。
【0134】
<芯粒子作成工程>
得られた[水相1]にあらかじめ攪拌しておいた[プレポリマー含有油相1]を加え、ミキサーのせん断熱による温度上昇を抑えるために水浴で冷却をすることにより液中温度を20〜23℃の範囲になるように調整しながら、TKホモミキサーを用い回転数4,000〜12,000rpmで調整して3分間混合したのち、アンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数200〜600rpmの間に調整しながら10分間攪拌し、芯粒子となる油相の液滴が水相に分散された[芯粒子スラリー1]を得た。
【0135】
<シェル工程(コア粒子への樹脂微粒子付着工程)>
[芯粒子スラリー1]をアンカー翼を取り付けたスリーワンモーターで回転数200〜600rpmの間に調整して攪拌しながら、液温が22℃の状態で、[樹脂微粒子分散液D1]を芯粒子重量比で7.5%になるようにイオン交換水と混合したもの(固形分濃度15%)を3分間かけて滴下した。滴下後、回転数を200〜600rpmの間を維持して30分間攪拌を続け、[複合粒子スラリー1]を得た。この[複合粒子スラリー1]を1ml取って10mlに希釈し、遠心分離を行ったところ、上澄み液は『透明』であった。
【0136】
<脱溶剤>
撹拌機および温度計をセットした容器に、[複合粒子スラリー1]を投入し、攪拌を行いながら30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。[分散スラリー1]を少量スライドグラス上に置き、カバーガラスを挟んで光学顕微鏡にて200倍の倍率で様子を観察したところ、均一な着色粒子が観察された。また[分散スラリー1]を1ml取って10mlに希釈し、遠心分離を行ったところ、上澄み液は『透明』であった。
【0137】
<洗浄・乾燥工程>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となる様に10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子1](体積平均粒径(Dv)は6.5μm、Dv/Dnは1.15)を得た。
【0138】
このトナー母体粒子50部に1次粒径約30nmの疎水性シリカ1部と、1次粒径約10nmの疎水性シリカ0.5部をヘンシェルミキサーにて混合して、本発明の[実施例1]のトナーを得た。
図1に得られたトナー母体粒子1のSEM写真を示す。トナー表面は海島構造を持ち、島部分は海部分より突起しており凸部として存在する。
【0139】
[実施例2]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例1と同様に行い、[実施例2]のトナーを得た。
【0140】
[実施例3]
水相作製時に水相を攪拌しながら10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下する代わりに10%水酸化カリウム水溶液を滴下する事以外は実施例1と同様に行い、[実施例3]のトナーを得た。
【0141】
[実施例4]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例3と同様に行い、[実施例4]のトナーを得た。
【0142】
[実施例5]
[樹脂微粒子分散液D1]を芯粒子重量比で7.5%から5%に変更する事以外は実施例1と同様に行い、[実施例5]のトナーを得た。
【0143】
[実施例6]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例5と同様に行い、[実施例6]のトナーを得た。
【0144】
[実施例7]
[樹脂微粒子分散液D1]を芯粒子重量比で7.5%から10%に変更する事以外は実施例1と同様に行い、[実施例7]のトナーを得た。
【0145】
[実施例8]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例7と同様に行い、[実施例8]のトナーを得た。
【0146】
[実施例9]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D2]に変更して[実施例9]のトナーを得た。
【0147】
[実施例10]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例9と同様に行い、[実施例10]のトナーを得た。
【0148】
[実施例11]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D3]に変更して[実施例11]のトナーを得た。
【0149】
[実施例12]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例11と同様に行い、[実施例12]のトナーを得た。
【0150】
[実施例13]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D4]に変更して[実施例13]のトナーを得た。
【0151】
[実施例14]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例13と同様に行い、[実施例14]のトナーを得た。
【0152】
[実施例15]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D5]に変更して[実施例15]のトナーを得た。
【0153】
[実施例16]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例15と同様に行い、[実施例16]のトナーを得た。
【0154】
[実施例17]
油相作製時に添加する[ポリエステル樹脂B1]を[ポリエステル樹脂B2]に変更して油相を作製する事以外は実施例1と同様に行い、[実施例17]のトナーを得た。
【0155】
[実施例18]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B2]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例17と同様に行い、[実施例18]のトナーを得た。
【0156】
[実施例19]
油相作製時に添加する[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]を[結晶性ポリエステル樹脂分散液C2]に変更して油相を作製する事以外は実施例1と同様に行い、[実施例19]のトナーを得た。
【0157】
[実施例20]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C2]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例19と同様に行い、[実施例20]のトナーを得た。
【0158】
[実施例21]
[油相1]976部をTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合する前に、水相へ添加していた10%水酸化ナトリウム水溶液を水相へ滴下する代わりに[油相1]に加えて攪拌後、プレポリマーを再度攪拌する以外は実施例1と同様に行い、[実施例21]のトナーを得た。
【0159】
[実施例22]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は実施例21と同様に行い、[実施例22]のトナーを得た。
【0160】
[比較例1]
実施例1で水相へ添加した10%水酸化ナトリウム水溶液を添加しない代わりに[油相1]へイソホロンジアミンを10%水酸化ナトリウム水溶液添加と等モルのアミノ基を有する量をプレポリマーを添加する前に添加する以外は実施例1と同様に行い、[比較例1]のトナーを得た。
【0161】
[比較例2]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は比較例1と同様に行い、[比較例2]のトナーを得た。
【0162】
[比較例3]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D6]に変更して[比較例3]のトナーを得た。
【0163】
[比較例4]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は比較例3と同様に行い、[比較例4]のトナーを得た。
【0164】
[比較例5]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D7]に変更して[比較例5]のトナーを得た。
【0165】
[比較例6]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は比較例5と同様に行い、[比較例6]のトナーを得た。
【0166】
[比較例7]
実施例1のシェル工程の[樹脂微粒子分散液D1]を[樹脂微粒子分散液D8]に変更して[比較例7]のトナーを得た。
【0167】
[比較例8]
[プレポリマー]を含有しない代わりに、油相作製時において[ポリエステル樹脂B1]更には[結晶性ポリエステル樹脂分散液C1]以外に重量比でプレポリマー含有量と同等の[非線状ポリエステル樹脂H]を添加して油相を作製する以外は比較例7と同様に行い、[比較例8]のトナーを得た。
上記で得られた実施例及び比較例のトナーについての評価結果を表2に示す。
【0168】
トナー評価並びに物性評価は以下のように行った。
<上澄み液評価>
芯材に樹脂微粒子が付着しているかの判断については、評価手法として遠心分離機による樹脂微粒子の上澄み液の透明度で判断した。以下に記す。
芯粒子スラリーに樹脂微粒子を滴下した複合粒子スラリーを1ml取って10mlに希釈し、遠心分離を行い、以下の5段階の目視液を作製し、目視ランク付けを行った。
◎;上澄み液は『透明』であった。
○;上澄み液は『ほぼ透明』であった。
△;上澄み液は『やや白濁』であった。
×;澄み液は『かなりの白濁』であった。
××;澄み液は『完全な白濁液』であった。
【0169】
<感光体地汚れ>
リコー製ipsio SP C220を用いて、印字率6%の所定のプリントパターンを、N/N環境下(23℃、45%)の初期(耐久前)と4000枚連続複写後(耐久後)に、地汚れトナーのL*をテープ転写法で求めた。テープ転写法とは、メンディングテープ(住友3M社製)を感光体上に存在するトナー上に貼り付けてカブリトナーをテープ上に転写し、このメンディングテープ及び貼り付け前のメンディングテープをそれぞれ白紙上に貼り、これらの反射濃度をX−Rite939で測定し、その差L*を地汚れの反射濃度として求める方法である。
○:初期と耐久後のL*の変化率が2%以内
△:初期と耐久後のL*の変化率が2%〜5%以内
×:初期と耐久後のL*の変化率が5%以上
「○」および「△」を合格とした。
【0170】
<規制ブレード固着>
リコー製ipsio SP C220を用いて、印字率6%の所定のプリントパターンを、N/N環境下(23℃、45%)の4000枚連続複写後(耐久後)に現像器の現像ローラの状態および複写画像を目視により観察し、評価した。判定基準は以下の通りである。
○:現像ローラ上にスジ、ムラの発生はなかった。
△:現像ローラ上にスジあるいはムラが若干発生しているものの、複写画像上に縦スジがなく、実用上問題なかった。
×:現像ローラ上にスジあるいはムラが多数発生しており、複写画像上に縦スジ状の抜けが発生し、実用上問題があった。
「○」および「△」を合格とした。
【0171】
<定着強度>
上記分離性の評価方法において得た定着画像にメンデイングテープ(3M社製)を貼り、一定の圧力を掛けた後、ゆっくり引き剥がした。テープを貼る前と引き剥がし後の画像濃度をマクベス濃度計で測定し、次の式により定着率を算出した。定着ローラーの温度を段階的に下げて、定着率が80%以下となるときの温度を定着温度とした。
評価結果を次の3段階でランク付けした。
○:定着温度130℃未満、
△:130℃以上140℃未満、
×:140℃以上
【0172】
<定着分離>
外添処理を行ったトナー(現像剤)をリコー製ipsio SP C220を用いて、A4縦通紙で先端3mmに幅36mmのべた帯画像(付着量11g/m)を印字した未定着画像を作製した。この未定着画像を以下の定着装置を用いて、115℃〜175℃の範囲で10℃刻みの定着温度で定着させ、分離可能/非オフセット温度域を求めた。当該温度域は、加熱ローラからの紙の分離が良好に行われ、オフセット現象が発生しない定着温度範囲をいう。使用ペーパー及び通紙方向は、分離性に不利な45g/m紙のY目の縦通紙で行った。定着装置周速は200mm/secに設定した。
定着装置は、図3に示すようなフッ素系表層剤構成のソフトローラタイプのものである。詳しくは、加熱ローラ9は、外径40mmで、アルミ芯金10上にシリコーンゴムからなる厚さ1.5mmの弾性体層11及びPFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)表層12を有しており、アルミ芯金内部にヒーター13を備えている。加圧ローラ14は、外径40mmで、アルミ芯金15上にシリコーンゴムからなる厚さ1.5mmの弾性体層16及びPFA表層17を有している。なお、未定着画像18が印字されたペーパーPは図のように通紙される。
○:分離可能/非オフセット温度域が50℃以上であった。
△:分離可能/非オフセット温度域が30℃以上50℃未満であった。
×:分離可能/非オフセット温度域が30℃未満であった。
【0173】
<耐熱保管性>
スライドガラス(MATSUNAMI社製S−1111)2枚の間にトナーサンプル1mgを配置し、その上から1kgの荷重を負荷し、40℃90%で3日間放置する。その後、取り出したトナーのSEM画像からトナーの変形ランクを判定する。
◎・・・トナー変形が見られない
○・・・ガラスとの接触面がわずかに変形している
△・・・トナーが変形し、トナー面が平滑になっているが、空隙も見られる
×・・・トナーが変形、融着し、空隙が見られない
【0174】
【表2】



【符号の説明】
【0175】
1 潜像担持体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 クリーニング部
6 中間転写体
7 支持ローラ
8 転写ローラ
9 加熱ローラ
10 アルミ芯金
11 弾性体層
12 PFA表層
13 ヒータ
14 加圧ローラ
15 アルミ芯金
16 弾性体層
17 PFA表層
18 未定着画像
19 定着手段
40 現像ローラ
41 薄層形成部材
42 供給ローラ
L 露光
P 記録紙
T 静電荷像現像用トナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0176】
【特許文献1】特許第4033096号公報
【特許文献2】特開2008−089670号公報
【特許文献3】特開2007−93809号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、無機塩基を含む芯粒子と、該芯粒子表面に形成されるビニル系樹脂微粒子よりなる凸部とからなるトナーであって、
該トナーは芯粒子を海、凸部を島とする海島構造を有し、
前記芯粒子の結着樹脂は、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
凸部を形成するビニル系樹脂微粒子は、ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物モノマー50質量%以上80質量%以下と、エステル基を含むビニル重合性モノマー20質量%以上40質量%以下とを含み、酸基を有するモノマーを含まず、重量平均分子量Mwが5万以上20万以下、ガラス転移温度Tgが45℃以上65℃以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記ビニル系樹脂微粒子が、ビニル重合性官能基を有する前記芳香族化合物モノマーを65質量%以上75質量%以下、エステル基含むビニル重合性モノマーを25質量%以上35質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のトナー
【請求項3】
前記ビニル系樹脂微粒子の体積平均粒子径が60nm以上120nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー
【請求項4】
前記エステル基を含むビニル重合性モノマーがスチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記エステル基を含むビニル重合性モノマーがアクリル酸ブチルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記芯粒子が、更にウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
前記離型剤がパラフィン類、合成エステル類、ポリオレフィン類、カルナウバワックス、またはライスワックスから選択される単独または2種以上含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
有機溶媒中に少なくとも結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂、着色剤、離型剤を溶解あるいは分散させた油相を作成する工程、
水系媒体中に少なくとも無機塩基を有する水相を作成する工程、
前記水相中に前記油相を分散させて、芯粒子の分散液を作製する工程、
前記芯粒子の分散液中に、少なくともビニル系樹脂微粒子分散液を添加し、前記芯粒子上に前記ビニル系樹脂微粒子を付着させる工程、
前記有機溶媒を除去して芯粒子の表面にビニル系樹脂微粒子が付着してなるトナー粒子を得る工程、
前記トナー粒子を洗浄する工程、
前記トナー粒子を乾燥する工程
を備えたことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
前記芯粒子が有機溶媒を含有している時に前記ビニル系樹脂微粒子分散液を加えて溶解/析出により芯粒子と凸部との連続層を形成することを特徴とする請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記水系媒体中に界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項8または9に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記ビニル樹脂微粒子分散液は、有機溶媒を含有せず、微粒子が固体の状態で分散されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
凸部形成後に有機溶剤を完全に除去することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
前記ビニル樹脂微粒子分散液を加えて、芯粒子にビニル系樹脂微粒子から成る凸部を形成する工程において、分散された芯粒子に有機溶媒が10質量%〜70質量%含まれていることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載のトナーを充填したことを特徴とするトナー容器。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項16】
潜像担持体に供給する現像剤を表面に担持する現像剤担持体と、現像剤を現像剤担持体表面に供給する現像剤供給部材と、現像剤を収納する現像剤収納器と、を備える現像装置において、現像剤収納器に請求項15に記載の現像剤が収納されていることを特徴とする現像装置。
【請求項17】
潜像担持体と、少なくとも潜像担持体上の潜像を現像剤で現像する現像装置とを一体化して画像形成装置に対して着脱可能に構成したプロセスカートリッジにおいて、現像装置が請求項16に記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項18】
潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体表面に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した該潜像担持体の表面に画像データに基づいて露光し、静電潜像を書き込む露光手段と、潜像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給し可視像化する現像手段と、潜像担持体表面の可視像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体上の可視像を定着させる定着手段と、を備える画像形成装置であって、現像手段が、請求項16に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−194327(P2012−194327A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57702(P2011−57702)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】