非侵襲生体情報計測装置
【課題】被検体に対するインタフェースヘッドの接触圧力を安定させること。
【解決手段】生体情報計測装置において、単色光又はそれに近い光を被検体に照射し被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出するインタフェースヘッド17を被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部は、圧電アクチュエータ18を有し、圧電アクチュエータは電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、制御部3はバイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいてインタフェースヘッドの接触圧力を制御する。
【解決手段】生体情報計測装置において、単色光又はそれに近い光を被検体に照射し被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出するインタフェースヘッド17を被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部は、圧電アクチュエータ18を有し、圧電アクチュエータは電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、制御部3はバイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいてインタフェースヘッドの接触圧力を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、健康管理や疾病の治療等のために、被検体の血液や細胞液などの体液あるいは生体組織に含まれる物質成分の濃度や物性情報を分光学的に測定し分析する装置に関し、特に可視光、近赤外光、もしくは中間赤外光などを照射して、体液中や生体組織に含まれる水、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン、ビリルビン、コラーゲンなどの物質濃度、酸素や二酸化炭素などのガス濃度、及びアルコールや薬物などの濃度、あるいは皮膚癌や乳癌等の腫瘍、アトピー性皮膚炎、動脈硬化等に代表される生体組織の変性に関する生化学情報や物性情報等を非侵襲的に測定して正確な被検体の組織性状の定量分析あるいは定性分析を行うことができる生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内に存在する物質の成分や濃度を測定するための代表的な従来装置例としては、血液中もしくは体液中のグルコース濃度(血糖値)を測定する血糖計がある。現在広く用いられている血糖計は、被検体の指や腕などの部位の一部に針を刺して採取した少量の血液サンプルを利用するもので、この採取した血液中のグルコースを化学反応させてその濃度を測定する。最も一般的なグルコース濃度の計測法としては、酵素電極を用いた方法がある。グルコース検知に使われる酵素は、グルコースオキシダーゼ(GOD)と呼ばれる酵素で、これを高分子膜などに固定化しておき、被検体物質中のグルコースがGOD固定化膜に接触することによって酸素が消費され、この酸素の変化を捕らえることでグルコース濃度を定量する。このような採血式の血糖計は携帯可能な大きさであり、糖尿病患者の血糖値の管理に利用されている。
【0003】
しかしながら、上記方法では採血のために指や腕などの一部に針を刺す必要があり被検者の皮膚を損傷するとともに苦痛を伴う。そのために、糖尿病患者の血糖値を厳密に管理するためには一日に5、6回以上の測定が望ましいにもかかわらず、現状では一日に2、3回程度の測定回数に留まっている。被検者の皮膚損傷や苦痛を軽減する目的で、微小な針やレーザを用いて痛みを伴わない程度の微小な穴を皮膚表面に開け微量の細胞間質液を採取して測定する方法や、皮膚表面に電圧や超音波を印加して皮膚の浸出透過性を良くし細胞間質液等の浸出液を抽出して測定する方法等が研究されているが、実用に供するには至っていない。
一方、採血や細胞間質液の抽出を必要としない非侵襲のグルコース測定法としては、特公平3−47099号公報あるいは特公平5−58735号公報に示されているような近赤外光を利用した方法がある。ここで、波長帯域が380〜770nm程度の電磁波を可視光、770〜1,500nm程度の電磁波を近赤外光、1,500〜3,000nm程度の電磁を中赤外光、及び3,000〜25,000nm程度の電磁を遠赤外光とする。前記特公平3−47099号公報あるいは特公平5−58735号公報には、被検体の皮膚表面などに異なる複数の波長の近赤外光を照射し、それらの検出信号を基準信号と測定信号とに分け、これらの値を演算処理することによりグルコース濃度を測定する方法が開示されている。上記方法において近赤外光の光源としては、タングステン・ハロゲンランプ等の白色光源から発せられる光を干渉フィルタ等の分光手段で所定の波長に分光する方法や単色光もしくはそれに近い光を放射する半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)が用いられる。また、被検体を透過、拡散した近赤外光の検出器としては、フォトダイオード(PD)などの受光素子が用いられる。
【0004】
上記のような近赤外光、更には可視光を用いた生体物質の非侵襲分光分析は近年注目されている方法であり、中遠赤外光を用いた分光分析と比較して生体の構成要素として大部分を占める水の吸収が小さいために、水溶液系の分析が可能であることや、生体を透過する能力が高いという長所を有する。反面、分子振動に帰属する信号が中赤外光領域と比較すると100分の1程度と小さく、信号の帰属が特定しにくいという短所を有する。すなわち、近赤外領域において目的とする生体物質の信号を検知する場合、目的とする生体物質の濃度変化に対応する信号が非常に小さく、またその信号の帰属が明瞭でない場合が多いという問題を抱えている。さらに、生体物質の濃度変化に対応する信号は光照射部と信号検出部の生体への接触圧力により変化し、理想的には〜100gf程度の微弱な圧力一定の条件が望ましいが、実際には再現性良く微小圧力下で高精度に測定することは困難であった。
【0005】
もう一つの非侵襲のグルコース測定法としては、近赤外光などの光を被検体に照射し、被検体内のグルコースが前記照射光のエネルギーを吸収することによって生じる音響信号を検出する方法及び装置が米国特許第5,348,002号明細書、特開平10−189公報、特開平11−235331公報に示されている。上記公報で開示されている光音響分光技術では、一般的に音響信号の検出にマイクロフォンやジルコン−チタン酸鉛系セラミックス(PZT)等の圧電振動子が用いられる。
【0006】
しかしながら、被検体に損傷を与えないレベルの入射エネルギーによってグルコース等の物質より生じる音響信号は、非常に微弱であり、繰り返し測定による加算平均化などを行っても、なお被検体内のグルコース濃度等の測定に十分な信号検出能が得られないという問題がある。さらに、本測定法においても同様に、生体物質より生じる音響信号の強度は光照射部と検出部の生体への接触圧力により変化し、理想的には、100gf程度の微弱な圧力一定の条件が望ましいが、実際には再現性良く微小圧力下で高精度に測定することは困難であった。上記以外にも、被検体のコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン、ビリルビン、酸素量等を非侵襲的に計測する方法や装置が種々開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−47099号公報
【特許文献2】特公平5−58735号公報
【特許文献3】米国特許第5,348,002号明細書
【特許文献4】特開平10−189号公報
【特許文献5】特開平11−235331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、被検体に対するインタフェースヘッドの接触圧力を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る生体情報計測装置は、単色光又はそれに近い光を被検体に照射する照射部と前記照射される光によって前記被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出する検出部とを有するインタフェースヘッドと、前記検出された信号を処理して前記被検体の表面又は内部に存在する物質に関する生化学的情報又は物性情報を発生する信号処理部と、前記インタフェースヘッドを前記被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部と、前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を検出する接触圧力検出部と、前記検出された接触圧力に基づいて前記支持部を制御する制御部とを具備し、前記支持部は、圧電アクチュエータを有し、前記圧電アクチュエータは、電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、前記制御部は、前記バイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいて前記インタフェースヘッドの接触圧力を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る生体情報計測装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の圧電アクチュエータを構成するS字駆動バイモルフ素子の断面図。
【図3】図1の圧電アクチュエータの断面図。
【図4】図1の圧電アクチュエータの平面図。
【図5】図1の圧電アクチュエータの他の構造を示す平面図。
【図6】図2のバイモルフ素子の電圧−変位特性例を示す図。
【図7】図1のインタフェース部の一例を示す図。
【図8】図7のインタフェース部を生体側から見た図。
【図9】図7のインタフェース部の断面図。
【図10】図1のインタフェース部の他の例を示す外観図。
【図11】図10のインタフェース部の拡大図。
【図12】図10のインタフェース部を生体側から見た図。
【図13】図10のインタフェース部の断面図。
【図14】図1のインタフェース部のさらに他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生体情報計測装置の構成を示すブロック図である。光源部8は、所望の波長の一つもしくは複数の単色光あるいは単色光に近似的な比較的波長域の狭い光を発生する。光源部8で放射された光が複数の場合には、複数の光は、光合波・導波部9の直角プリズム及びダイクロイックプリズムで同一光軸に重ね合わされる。光合波・導波部9は、光ファイバ、薄膜光導波路、或いは自由空間等で構成され、典型的には光ファイバである。光源部8より放射された光は、光合波・導波部9のビームスプリッタにより2つに分割され、一方は照射部10へと導かれ、被検体14の所望の部位へ照射される。他方は、電気的な参照光信号16を発生するために、参照光として図示しない参照光用NDフィルタとフォーカスレンズを介して参照光用光検出器で検出される。
【0012】
光の照射により被検体内で生じた音響波は、音響信号検出部11で検出され、電気信号に変換される。電気的な音響信号は、信号増幅部12において所望の振幅に増幅され、データ収集部7に送られる。音響信号検出部11は少なくともチタン酸鉛を含む固溶系圧電単結晶、PZTセラミクス等の圧電素子により構成される。
【0013】
照射部10、音響信号検出部11、温度制御部13及び接触圧力検出部15は、被検体14と接するインタフェースヘッド17を構成する。インタフェースヘッド17は、支持部18により、被検体に対して接近離反自在に支持される。支持部18は、小型化を実現するために、圧電アクチュエータで構成される。インタフェースヘッド17は圧電アクチュエータ18及びケース25等とともにインタフェース部19を構成する(図3参照)。
【0014】
温度制御部13は、被検体14の所望の測定部位近傍に配置され、測定部位の温度を制御する。温度制御部13に用いる温度制御素子としては、ペルチェ素子のような印加電流や印加電圧を変化させることにより温度制御可能な熱電変換デバイスを用いることができる。例えば、ペルチェ素子により測定部位の温度を所望の温度、例えば20℃〜40℃の範囲で一定の温度に制御する。光音響計測は測定温度条件に影響を受けるので、前記のような温度制御部13を設けることにより被検体14の測定部位の測定温度条件を一定に保つことができ、測定精度を向上させることができる。
さらに、被検体14の測定部位とインタフェースヘッド17の接触圧力も光音響計測に大きな影響を与える。このため、前記被検体14の測定部位とインタフェースヘッド17の接触圧力を接触圧力検出部15により検出し、被検体14の測定部位表面とインタフェースヘッド17の接触圧力が所定値に略一致又は所定範囲内に収まるように、圧電アクチュエータ18により、インタフェース部19のケース25の底板に対するインタフェースヘッド17の突出量を調整する。接触圧力検出部15としては、例えば圧力変化に応じて容量が変化する静電容量式圧力センサや圧力に応じて電気抵抗が変化する歪ゲージ等を用いることができる。単に接触の有無を検出する場合には、被検体の接触により電気抵抗あるいは静電容量が変化する接触センサや超音波を送受信して被検体との距離を測定する測距センサを用いることができる。インタフェースヘッド17に接触する物体がない場合には、制御部3において照射部10より当該装置外部に照射光を放射しないよう制御する機構を設けることにより、照射光による生体の眼球損傷等の危険を回避する安全機構を設けることも可能となる。
データ収集部7に送られた電気信号は、データ収集部7においてデジタル信号に変換され収集される。収集されたデジタル信号は、信号処理部6において所望の信号処理が行われ、その結果はデータ記憶部4に保存されると共に、必要に応じて表示部1に所望の情報が表示される。表示部1の情報表示方法は、画面への表示などによる視覚情報伝達手段の他にも、音声などによる聴覚情報伝達手段、あるいは振動などによる触覚情報伝達手段などを用いることもできる。更には、それら複数の手段を併用することも可能である。当該装置の操作は操作部2より行う。操作の方法としては、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネル、音声など当該装置の使用者に適した所望の操作手段を用いることができる。
制御部3は、接触感知センサ15で検出した接触圧力を反映した信号に対応する電圧を圧電アクチュエータ18に印加する。接触感知センサ15で検出した接触圧力を反映した信号と、圧電アクチュエータ18に印加する電圧との関係は、接触圧力が所定値に収束するように予め与えられている。それにより被検体に対するインタフェースヘッド17の接触圧力は、所定の圧力に一致し又は所定の圧力を中心とする範囲内に収まる。
【0015】
制御部3は、当該装置の使用者が操作する操作部2の信号や接触感知センサ15の出力信号等に基づき、表示部1、データ記憶部4、電源部5、信号処理部6、データ収集部7、光源部8、信号増幅部12、温度制御部13などの当該装置の動作を制御する。また、電源部6は、表示部1、制御部3、光源部8、信号増幅部12などへ電力を供給し、更に制御部3は、必要に応じてデータ記憶部4、信号処理部6、データ収集部7、接触感知センサ15などへ電力を供給する。
本実施形態の光源部9において使用する単色光あるいはそれに近い光を発生させる光源としては、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等の小型の発光素子が望ましく、所望の波長で発光するそれらの素子を一つもしくは複数使用することができる。例えば、本発明に関わる一実施形態として被検体内のグルコース濃度を測定する場合には、波長が400〜2,500nmの範囲内にある複数の光を照射する。この際に使用するLDやLEDとしては、発光波長が550〜650nm程度ではInGaAlP、発光波長が650〜900nm程度ではGaAlAs、発光波長が900〜2,300nm程度ではInGaAsもしくはInGaAsPなどの材料を用いたLDやLEDを使用することができる。また最近では、波長が550nm以下で発光する InGaNを用いた発光素子も使用可能になりつつある。
【0016】
次に圧電アクチュエータ18の実施形態について図2及び3を用いて説明する。本実施形態においては、圧電アクチュエータは、図2に示すように、S字駆動のバイモルフ素子30により構成されている。周知のとおり、バイモルフ素子は、印加電圧が圧電板の一方を引き伸ばし、他方を圧縮するように相互に継ぎ合わせた2枚の圧電板からなる。本実施形態では、印加電圧に応じてS字形状に変形して、インタフェースヘッド17を平行移動させるように、分極方向が長手方向の略中心を境に逆相となるように形成された2枚の圧電板20a,20bを継ぎ合わされてなる。圧電板20a,20bは、チタン酸鉛を含む固溶系圧電単結晶又はPZTセラミクスで構成される。圧電板20a,20bは、金属薄板や電極をコーティングした樹脂薄板等で構成されるシム材兼電極22を挟み込んで張り合わされる。圧電板20a,20bの表面にはそれぞれ電極21a,21bが貼り付けられる。
【0017】
このようなS字駆動のバイモルフ素子30に図2に示すように電圧を印加すると、変位の回転成分が自由端(変位取り出し部)ではキャンセルされるため自由端は常に平行に運動する。このため、図3に示すように同じ変位方向を有するS字駆動の複数のバイモルフ素子30a,30b,30c,30dをその両端部分を結合することにより、変位を低下させずに共振周波数、発生力等の機械的性質を向上させることができる。例えば、圧電体に厚さ0.25mmのPZTセラミクスを用い、長さ40mm、幅20mmのS字駆動バイモルフ素子を4個積層した構造で、100V印加時に変位量約0.8mm、発生力約100mgfが得られた。
【0018】
S字駆動バイモルフ素子30は、長方形形状、図4に示す台形形状、又は図5に示す円形形状を有する。バイモルフ素子30は、四角形状又は台形形状であれば、その一端にインタフェースヘッド17が取り付けられ、他端がケース25の側壁に片持ち梁として固定される。台形形状のバイモルフ素子30は、長方形形状の場合よりも、より小型のインタフェースヘッド17で必要な力を発生するために適している。バイモルフ素子30は、図5に示すように円形形状を有する場合、分極方向が半径方向の略中心を境に逆相となるように形成されていて、半径方向に沿ってS字状に変形する。円形形状を有するバイモルフ素子30の中央部分が円形に開けられ、そこにインタフェースヘッド17が取り付けられる。バイモルフ素子30の円形辺縁部がケース25の側壁に固定される。円形形状のバイモルフ素子30は、長方形又は台形形状の場合よりも、若干サイズは大きくなるものの、大きな発生力を必要とする場合に適している。
【0019】
図6はバイモルフ素子の電圧−変位特性例を示したもので、昇圧時と降圧時では電圧=0Vにおける変位量が異なる、すなわち、ヒステリシスがある。この特性もしくは発生力−電圧特性を予め測定し、当該特性に応じて検出圧力と印加電圧との関係を予め設定しておくことで、制御部3はより高精度に接触圧力を制御し、または接触圧力をより短時間で所定圧力に収束させることができる。
【0020】
図7、図8、図9には、インタフェース部19の構造例を示している。例えばアクリル製のケース25は、手にもって扱うことができるように例えば30mm×70mm程度のサイズの長方体形状を有している。ケース25の内側面には台形状の圧電アクチュエータ18が固定され、その圧電アクチュエータ18の端にインタフェースヘッド17が固定される。インタフェースヘッド17に対応するケース25の底面の一部分に窓27が開けられていて、当該窓27を通してインタフェースヘッド17がケース25から突出することが可能である。使用に際しては、操作者がインタフェース部19を手にもって被検体の表面にケース25の底面を接触させる。それによりケース25の底面が基準面となって圧電アクチュエータ18によりインタフェースヘッド17を前後に移動させることで所定の接触圧力に調整することができる。
【0021】
インタフェース部19は、図10、図11、図12、図13に示すように、腕時計型に構成されても良い。インタフェース部19は、薄い円柱形状のケース28を有する。この円柱形状のケース28の内部に、図5に示した円形の圧電アクチュエータ18が収容される。圧電アクチュエータ18の中央にはインタフェースヘッド17が装着される。ケース28の底面には、インタフェース部19を被検体の腕部に固定するための例えばゴム製のバンド構造24が装着されている。この例では、インタフェース部19には光源としてLD8が短い導波路9とともに設けられている。LD8及び導波路9は、インタフェースヘッド17とともに前後に移動するとうに、インタフェースヘッド17に装着される。
【0022】
また、インタフェース部19は、図14に示すように、イヤリング型に構成されても良い。インタフェース部19は、小さく薄くしかも軽い円柱形状のケース36を有する。この円柱形状のケース36の内部に、図4に示した片持ち梁の圧電アクチュエータ18が収容される。ケース36には、インタフェース部19を被検体の耳朶に固定するための例えばバネ38を使ったクリップ構造37が設けられている。
【0023】
以上詳述したように本発明によれば、少なくとも1つの波長の単色光あるいはそれに近い所望の光を被検体に照射し、被検体内において所望の物質が前記照射光のエネルギーを吸収することによって生じる音響信号を検出して前記被検体表面や被検体内に存在する物質の成分や濃度、或いは組織性状に関する生化学的情報や物性情報等を非侵襲的に得る生体情報計測装置において、被検体との微小な接触圧力を、圧電アクチュエータを用いて正確に制御し、測定条件を一定もしくは所定の変化を付与することにより、再現性が高くかつ高精度に音響信号を検出することが可能となる。また、圧電アクチュエータにS字駆動バイモルフ素子を用いることにより、圧力制御機構をコンパクトに構成できるため装置を小型化できる。
【0024】
本発明は、上記以外にも種々変形して実施可能であり、例えば、近赤外光、可視光を用いた生体物質の非侵襲分光分析装置の光照射及び光検出器部の被検体への接触圧力制御にも同様に実施することができる。また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…表示部、2…操作部、3…制御部、4…データ記憶部、5…電源部、6…信号処理部、7…データ収集部、8…光源部、9…光合波・導波部、10…照射部、11…音響信号検出部、12…信号増幅部、13…温度制御部、14…被検体、15…接触圧力検出部、16…参照光信号、17…インタフェース部、18…圧電アクチュエータ、20…圧電体、21…電極、22…シム材兼電極。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、健康管理や疾病の治療等のために、被検体の血液や細胞液などの体液あるいは生体組織に含まれる物質成分の濃度や物性情報を分光学的に測定し分析する装置に関し、特に可視光、近赤外光、もしくは中間赤外光などを照射して、体液中や生体組織に含まれる水、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン、ビリルビン、コラーゲンなどの物質濃度、酸素や二酸化炭素などのガス濃度、及びアルコールや薬物などの濃度、あるいは皮膚癌や乳癌等の腫瘍、アトピー性皮膚炎、動脈硬化等に代表される生体組織の変性に関する生化学情報や物性情報等を非侵襲的に測定して正確な被検体の組織性状の定量分析あるいは定性分析を行うことができる生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内に存在する物質の成分や濃度を測定するための代表的な従来装置例としては、血液中もしくは体液中のグルコース濃度(血糖値)を測定する血糖計がある。現在広く用いられている血糖計は、被検体の指や腕などの部位の一部に針を刺して採取した少量の血液サンプルを利用するもので、この採取した血液中のグルコースを化学反応させてその濃度を測定する。最も一般的なグルコース濃度の計測法としては、酵素電極を用いた方法がある。グルコース検知に使われる酵素は、グルコースオキシダーゼ(GOD)と呼ばれる酵素で、これを高分子膜などに固定化しておき、被検体物質中のグルコースがGOD固定化膜に接触することによって酸素が消費され、この酸素の変化を捕らえることでグルコース濃度を定量する。このような採血式の血糖計は携帯可能な大きさであり、糖尿病患者の血糖値の管理に利用されている。
【0003】
しかしながら、上記方法では採血のために指や腕などの一部に針を刺す必要があり被検者の皮膚を損傷するとともに苦痛を伴う。そのために、糖尿病患者の血糖値を厳密に管理するためには一日に5、6回以上の測定が望ましいにもかかわらず、現状では一日に2、3回程度の測定回数に留まっている。被検者の皮膚損傷や苦痛を軽減する目的で、微小な針やレーザを用いて痛みを伴わない程度の微小な穴を皮膚表面に開け微量の細胞間質液を採取して測定する方法や、皮膚表面に電圧や超音波を印加して皮膚の浸出透過性を良くし細胞間質液等の浸出液を抽出して測定する方法等が研究されているが、実用に供するには至っていない。
一方、採血や細胞間質液の抽出を必要としない非侵襲のグルコース測定法としては、特公平3−47099号公報あるいは特公平5−58735号公報に示されているような近赤外光を利用した方法がある。ここで、波長帯域が380〜770nm程度の電磁波を可視光、770〜1,500nm程度の電磁波を近赤外光、1,500〜3,000nm程度の電磁を中赤外光、及び3,000〜25,000nm程度の電磁を遠赤外光とする。前記特公平3−47099号公報あるいは特公平5−58735号公報には、被検体の皮膚表面などに異なる複数の波長の近赤外光を照射し、それらの検出信号を基準信号と測定信号とに分け、これらの値を演算処理することによりグルコース濃度を測定する方法が開示されている。上記方法において近赤外光の光源としては、タングステン・ハロゲンランプ等の白色光源から発せられる光を干渉フィルタ等の分光手段で所定の波長に分光する方法や単色光もしくはそれに近い光を放射する半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)が用いられる。また、被検体を透過、拡散した近赤外光の検出器としては、フォトダイオード(PD)などの受光素子が用いられる。
【0004】
上記のような近赤外光、更には可視光を用いた生体物質の非侵襲分光分析は近年注目されている方法であり、中遠赤外光を用いた分光分析と比較して生体の構成要素として大部分を占める水の吸収が小さいために、水溶液系の分析が可能であることや、生体を透過する能力が高いという長所を有する。反面、分子振動に帰属する信号が中赤外光領域と比較すると100分の1程度と小さく、信号の帰属が特定しにくいという短所を有する。すなわち、近赤外領域において目的とする生体物質の信号を検知する場合、目的とする生体物質の濃度変化に対応する信号が非常に小さく、またその信号の帰属が明瞭でない場合が多いという問題を抱えている。さらに、生体物質の濃度変化に対応する信号は光照射部と信号検出部の生体への接触圧力により変化し、理想的には〜100gf程度の微弱な圧力一定の条件が望ましいが、実際には再現性良く微小圧力下で高精度に測定することは困難であった。
【0005】
もう一つの非侵襲のグルコース測定法としては、近赤外光などの光を被検体に照射し、被検体内のグルコースが前記照射光のエネルギーを吸収することによって生じる音響信号を検出する方法及び装置が米国特許第5,348,002号明細書、特開平10−189公報、特開平11−235331公報に示されている。上記公報で開示されている光音響分光技術では、一般的に音響信号の検出にマイクロフォンやジルコン−チタン酸鉛系セラミックス(PZT)等の圧電振動子が用いられる。
【0006】
しかしながら、被検体に損傷を与えないレベルの入射エネルギーによってグルコース等の物質より生じる音響信号は、非常に微弱であり、繰り返し測定による加算平均化などを行っても、なお被検体内のグルコース濃度等の測定に十分な信号検出能が得られないという問題がある。さらに、本測定法においても同様に、生体物質より生じる音響信号の強度は光照射部と検出部の生体への接触圧力により変化し、理想的には、100gf程度の微弱な圧力一定の条件が望ましいが、実際には再現性良く微小圧力下で高精度に測定することは困難であった。上記以外にも、被検体のコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン、ビリルビン、酸素量等を非侵襲的に計測する方法や装置が種々開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−47099号公報
【特許文献2】特公平5−58735号公報
【特許文献3】米国特許第5,348,002号明細書
【特許文献4】特開平10−189号公報
【特許文献5】特開平11−235331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、被検体に対するインタフェースヘッドの接触圧力を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る生体情報計測装置は、単色光又はそれに近い光を被検体に照射する照射部と前記照射される光によって前記被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出する検出部とを有するインタフェースヘッドと、前記検出された信号を処理して前記被検体の表面又は内部に存在する物質に関する生化学的情報又は物性情報を発生する信号処理部と、前記インタフェースヘッドを前記被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部と、前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を検出する接触圧力検出部と、前記検出された接触圧力に基づいて前記支持部を制御する制御部とを具備し、前記支持部は、圧電アクチュエータを有し、前記圧電アクチュエータは、電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、前記制御部は、前記バイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいて前記インタフェースヘッドの接触圧力を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る生体情報計測装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の圧電アクチュエータを構成するS字駆動バイモルフ素子の断面図。
【図3】図1の圧電アクチュエータの断面図。
【図4】図1の圧電アクチュエータの平面図。
【図5】図1の圧電アクチュエータの他の構造を示す平面図。
【図6】図2のバイモルフ素子の電圧−変位特性例を示す図。
【図7】図1のインタフェース部の一例を示す図。
【図8】図7のインタフェース部を生体側から見た図。
【図9】図7のインタフェース部の断面図。
【図10】図1のインタフェース部の他の例を示す外観図。
【図11】図10のインタフェース部の拡大図。
【図12】図10のインタフェース部を生体側から見た図。
【図13】図10のインタフェース部の断面図。
【図14】図1のインタフェース部のさらに他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生体情報計測装置の構成を示すブロック図である。光源部8は、所望の波長の一つもしくは複数の単色光あるいは単色光に近似的な比較的波長域の狭い光を発生する。光源部8で放射された光が複数の場合には、複数の光は、光合波・導波部9の直角プリズム及びダイクロイックプリズムで同一光軸に重ね合わされる。光合波・導波部9は、光ファイバ、薄膜光導波路、或いは自由空間等で構成され、典型的には光ファイバである。光源部8より放射された光は、光合波・導波部9のビームスプリッタにより2つに分割され、一方は照射部10へと導かれ、被検体14の所望の部位へ照射される。他方は、電気的な参照光信号16を発生するために、参照光として図示しない参照光用NDフィルタとフォーカスレンズを介して参照光用光検出器で検出される。
【0012】
光の照射により被検体内で生じた音響波は、音響信号検出部11で検出され、電気信号に変換される。電気的な音響信号は、信号増幅部12において所望の振幅に増幅され、データ収集部7に送られる。音響信号検出部11は少なくともチタン酸鉛を含む固溶系圧電単結晶、PZTセラミクス等の圧電素子により構成される。
【0013】
照射部10、音響信号検出部11、温度制御部13及び接触圧力検出部15は、被検体14と接するインタフェースヘッド17を構成する。インタフェースヘッド17は、支持部18により、被検体に対して接近離反自在に支持される。支持部18は、小型化を実現するために、圧電アクチュエータで構成される。インタフェースヘッド17は圧電アクチュエータ18及びケース25等とともにインタフェース部19を構成する(図3参照)。
【0014】
温度制御部13は、被検体14の所望の測定部位近傍に配置され、測定部位の温度を制御する。温度制御部13に用いる温度制御素子としては、ペルチェ素子のような印加電流や印加電圧を変化させることにより温度制御可能な熱電変換デバイスを用いることができる。例えば、ペルチェ素子により測定部位の温度を所望の温度、例えば20℃〜40℃の範囲で一定の温度に制御する。光音響計測は測定温度条件に影響を受けるので、前記のような温度制御部13を設けることにより被検体14の測定部位の測定温度条件を一定に保つことができ、測定精度を向上させることができる。
さらに、被検体14の測定部位とインタフェースヘッド17の接触圧力も光音響計測に大きな影響を与える。このため、前記被検体14の測定部位とインタフェースヘッド17の接触圧力を接触圧力検出部15により検出し、被検体14の測定部位表面とインタフェースヘッド17の接触圧力が所定値に略一致又は所定範囲内に収まるように、圧電アクチュエータ18により、インタフェース部19のケース25の底板に対するインタフェースヘッド17の突出量を調整する。接触圧力検出部15としては、例えば圧力変化に応じて容量が変化する静電容量式圧力センサや圧力に応じて電気抵抗が変化する歪ゲージ等を用いることができる。単に接触の有無を検出する場合には、被検体の接触により電気抵抗あるいは静電容量が変化する接触センサや超音波を送受信して被検体との距離を測定する測距センサを用いることができる。インタフェースヘッド17に接触する物体がない場合には、制御部3において照射部10より当該装置外部に照射光を放射しないよう制御する機構を設けることにより、照射光による生体の眼球損傷等の危険を回避する安全機構を設けることも可能となる。
データ収集部7に送られた電気信号は、データ収集部7においてデジタル信号に変換され収集される。収集されたデジタル信号は、信号処理部6において所望の信号処理が行われ、その結果はデータ記憶部4に保存されると共に、必要に応じて表示部1に所望の情報が表示される。表示部1の情報表示方法は、画面への表示などによる視覚情報伝達手段の他にも、音声などによる聴覚情報伝達手段、あるいは振動などによる触覚情報伝達手段などを用いることもできる。更には、それら複数の手段を併用することも可能である。当該装置の操作は操作部2より行う。操作の方法としては、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネル、音声など当該装置の使用者に適した所望の操作手段を用いることができる。
制御部3は、接触感知センサ15で検出した接触圧力を反映した信号に対応する電圧を圧電アクチュエータ18に印加する。接触感知センサ15で検出した接触圧力を反映した信号と、圧電アクチュエータ18に印加する電圧との関係は、接触圧力が所定値に収束するように予め与えられている。それにより被検体に対するインタフェースヘッド17の接触圧力は、所定の圧力に一致し又は所定の圧力を中心とする範囲内に収まる。
【0015】
制御部3は、当該装置の使用者が操作する操作部2の信号や接触感知センサ15の出力信号等に基づき、表示部1、データ記憶部4、電源部5、信号処理部6、データ収集部7、光源部8、信号増幅部12、温度制御部13などの当該装置の動作を制御する。また、電源部6は、表示部1、制御部3、光源部8、信号増幅部12などへ電力を供給し、更に制御部3は、必要に応じてデータ記憶部4、信号処理部6、データ収集部7、接触感知センサ15などへ電力を供給する。
本実施形態の光源部9において使用する単色光あるいはそれに近い光を発生させる光源としては、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)等の小型の発光素子が望ましく、所望の波長で発光するそれらの素子を一つもしくは複数使用することができる。例えば、本発明に関わる一実施形態として被検体内のグルコース濃度を測定する場合には、波長が400〜2,500nmの範囲内にある複数の光を照射する。この際に使用するLDやLEDとしては、発光波長が550〜650nm程度ではInGaAlP、発光波長が650〜900nm程度ではGaAlAs、発光波長が900〜2,300nm程度ではInGaAsもしくはInGaAsPなどの材料を用いたLDやLEDを使用することができる。また最近では、波長が550nm以下で発光する InGaNを用いた発光素子も使用可能になりつつある。
【0016】
次に圧電アクチュエータ18の実施形態について図2及び3を用いて説明する。本実施形態においては、圧電アクチュエータは、図2に示すように、S字駆動のバイモルフ素子30により構成されている。周知のとおり、バイモルフ素子は、印加電圧が圧電板の一方を引き伸ばし、他方を圧縮するように相互に継ぎ合わせた2枚の圧電板からなる。本実施形態では、印加電圧に応じてS字形状に変形して、インタフェースヘッド17を平行移動させるように、分極方向が長手方向の略中心を境に逆相となるように形成された2枚の圧電板20a,20bを継ぎ合わされてなる。圧電板20a,20bは、チタン酸鉛を含む固溶系圧電単結晶又はPZTセラミクスで構成される。圧電板20a,20bは、金属薄板や電極をコーティングした樹脂薄板等で構成されるシム材兼電極22を挟み込んで張り合わされる。圧電板20a,20bの表面にはそれぞれ電極21a,21bが貼り付けられる。
【0017】
このようなS字駆動のバイモルフ素子30に図2に示すように電圧を印加すると、変位の回転成分が自由端(変位取り出し部)ではキャンセルされるため自由端は常に平行に運動する。このため、図3に示すように同じ変位方向を有するS字駆動の複数のバイモルフ素子30a,30b,30c,30dをその両端部分を結合することにより、変位を低下させずに共振周波数、発生力等の機械的性質を向上させることができる。例えば、圧電体に厚さ0.25mmのPZTセラミクスを用い、長さ40mm、幅20mmのS字駆動バイモルフ素子を4個積層した構造で、100V印加時に変位量約0.8mm、発生力約100mgfが得られた。
【0018】
S字駆動バイモルフ素子30は、長方形形状、図4に示す台形形状、又は図5に示す円形形状を有する。バイモルフ素子30は、四角形状又は台形形状であれば、その一端にインタフェースヘッド17が取り付けられ、他端がケース25の側壁に片持ち梁として固定される。台形形状のバイモルフ素子30は、長方形形状の場合よりも、より小型のインタフェースヘッド17で必要な力を発生するために適している。バイモルフ素子30は、図5に示すように円形形状を有する場合、分極方向が半径方向の略中心を境に逆相となるように形成されていて、半径方向に沿ってS字状に変形する。円形形状を有するバイモルフ素子30の中央部分が円形に開けられ、そこにインタフェースヘッド17が取り付けられる。バイモルフ素子30の円形辺縁部がケース25の側壁に固定される。円形形状のバイモルフ素子30は、長方形又は台形形状の場合よりも、若干サイズは大きくなるものの、大きな発生力を必要とする場合に適している。
【0019】
図6はバイモルフ素子の電圧−変位特性例を示したもので、昇圧時と降圧時では電圧=0Vにおける変位量が異なる、すなわち、ヒステリシスがある。この特性もしくは発生力−電圧特性を予め測定し、当該特性に応じて検出圧力と印加電圧との関係を予め設定しておくことで、制御部3はより高精度に接触圧力を制御し、または接触圧力をより短時間で所定圧力に収束させることができる。
【0020】
図7、図8、図9には、インタフェース部19の構造例を示している。例えばアクリル製のケース25は、手にもって扱うことができるように例えば30mm×70mm程度のサイズの長方体形状を有している。ケース25の内側面には台形状の圧電アクチュエータ18が固定され、その圧電アクチュエータ18の端にインタフェースヘッド17が固定される。インタフェースヘッド17に対応するケース25の底面の一部分に窓27が開けられていて、当該窓27を通してインタフェースヘッド17がケース25から突出することが可能である。使用に際しては、操作者がインタフェース部19を手にもって被検体の表面にケース25の底面を接触させる。それによりケース25の底面が基準面となって圧電アクチュエータ18によりインタフェースヘッド17を前後に移動させることで所定の接触圧力に調整することができる。
【0021】
インタフェース部19は、図10、図11、図12、図13に示すように、腕時計型に構成されても良い。インタフェース部19は、薄い円柱形状のケース28を有する。この円柱形状のケース28の内部に、図5に示した円形の圧電アクチュエータ18が収容される。圧電アクチュエータ18の中央にはインタフェースヘッド17が装着される。ケース28の底面には、インタフェース部19を被検体の腕部に固定するための例えばゴム製のバンド構造24が装着されている。この例では、インタフェース部19には光源としてLD8が短い導波路9とともに設けられている。LD8及び導波路9は、インタフェースヘッド17とともに前後に移動するとうに、インタフェースヘッド17に装着される。
【0022】
また、インタフェース部19は、図14に示すように、イヤリング型に構成されても良い。インタフェース部19は、小さく薄くしかも軽い円柱形状のケース36を有する。この円柱形状のケース36の内部に、図4に示した片持ち梁の圧電アクチュエータ18が収容される。ケース36には、インタフェース部19を被検体の耳朶に固定するための例えばバネ38を使ったクリップ構造37が設けられている。
【0023】
以上詳述したように本発明によれば、少なくとも1つの波長の単色光あるいはそれに近い所望の光を被検体に照射し、被検体内において所望の物質が前記照射光のエネルギーを吸収することによって生じる音響信号を検出して前記被検体表面や被検体内に存在する物質の成分や濃度、或いは組織性状に関する生化学的情報や物性情報等を非侵襲的に得る生体情報計測装置において、被検体との微小な接触圧力を、圧電アクチュエータを用いて正確に制御し、測定条件を一定もしくは所定の変化を付与することにより、再現性が高くかつ高精度に音響信号を検出することが可能となる。また、圧電アクチュエータにS字駆動バイモルフ素子を用いることにより、圧力制御機構をコンパクトに構成できるため装置を小型化できる。
【0024】
本発明は、上記以外にも種々変形して実施可能であり、例えば、近赤外光、可視光を用いた生体物質の非侵襲分光分析装置の光照射及び光検出器部の被検体への接触圧力制御にも同様に実施することができる。また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…表示部、2…操作部、3…制御部、4…データ記憶部、5…電源部、6…信号処理部、7…データ収集部、8…光源部、9…光合波・導波部、10…照射部、11…音響信号検出部、12…信号増幅部、13…温度制御部、14…被検体、15…接触圧力検出部、16…参照光信号、17…インタフェース部、18…圧電アクチュエータ、20…圧電体、21…電極、22…シム材兼電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色光又はそれに近い光を被検体に照射する照射部と前記照射される光によって前記被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出する検出部とを有するインタフェースヘッドと、
前記検出された信号を処理して前記被検体の表面又は内部に存在する物質に関する生化学的情報又は物性情報を発生する信号処理部と、
前記インタフェースヘッドを前記被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部と、
前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を検出する接触圧力検出部と、
前記検出された接触圧力に基づいて前記支持部を制御する制御部とを具備し、
前記支持部は、圧電アクチュエータを有し、
前記圧電アクチュエータは、電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、
前記制御部は、前記バイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいて前記インタフェースヘッドの接触圧力を制御することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を所定圧力に略一致させるために前記支持部を制御することを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記インタフェースヘッドは、前記支持部とともにインタフェース部を構成し、前記インタフェース部には前記インタフェース部を前記被検体の腕部に固定するためのバンド構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記インタフェースヘッドは、前記支持部とともにインタフェース部を構成し、前記インタフェース部には前記インタフェース部を前記被検体の耳朶に固定するクリップ構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記特定物質はグルコースであり、前記照射光は少なくとも400〜2,500nmの領域から選択された全領域又は一部の領域からなる一種類以上の波長の光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記特定物質はヘモグロビンであり、前記照射光は、少なくとも500〜1,600nmの領域から選択された全領域又は一部の領域からなる一種類以上の波長の光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の生体情報計測装置。
【請求項1】
単色光又はそれに近い光を被検体に照射する照射部と前記照射される光によって前記被検体内から放射される光信号、音響信号又は熱的信号を検出する検出部とを有するインタフェースヘッドと、
前記検出された信号を処理して前記被検体の表面又は内部に存在する物質に関する生化学的情報又は物性情報を発生する信号処理部と、
前記インタフェースヘッドを前記被検体に対して接近/離反する向きに移動自在に支持する支持部と、
前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を検出する接触圧力検出部と、
前記検出された接触圧力に基づいて前記支持部を制御する制御部とを具備し、
前記支持部は、圧電アクチュエータを有し、
前記圧電アクチュエータは、電圧印加に伴ってS字状変位を有する圧電バイモルフ素子を複数枚積層した構造を有し、
前記制御部は、前記バイモルフ素子のヒステリシス特性、又は発生力−電圧特性に応じて予め設定された検出圧力と印加電圧との関係に基づいて前記インタフェースヘッドの接触圧力を制御することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被検体に対する前記インタフェースヘッドの接触圧力を所定圧力に略一致させるために前記支持部を制御することを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記インタフェースヘッドは、前記支持部とともにインタフェース部を構成し、前記インタフェース部には前記インタフェース部を前記被検体の腕部に固定するためのバンド構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記インタフェースヘッドは、前記支持部とともにインタフェース部を構成し、前記インタフェース部には前記インタフェース部を前記被検体の耳朶に固定するクリップ構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記特定物質はグルコースであり、前記照射光は少なくとも400〜2,500nmの領域から選択された全領域又は一部の領域からなる一種類以上の波長の光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記特定物質はヘモグロビンであり、前記照射光は、少なくとも500〜1,600nmの領域から選択された全領域又は一部の領域からなる一種類以上の波長の光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の生体情報計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−78819(P2011−78819A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279164(P2010−279164)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【分割の表示】特願2004−374532(P2004−374532)の分割
【原出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【分割の表示】特願2004−374532(P2004−374532)の分割
【原出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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