説明

非侵襲的光学センサ

【課題】非侵襲的光学センサの携帯性を向上させる。
【解決手段】非侵襲的光学センサ1では、グルコース濃度(血糖値)の検出機能およびデータ出力機能を達成するのに必要な構成(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)のみが例えば数センチメートル角のベース部11に作り込まれている。また、ベース部11に設けた光導波路12d、12f、12gによって、単色光源12a1〜12a5からの光を指21に導光するとともに、指21で反射される光を受光部12bに導光しているため、光学センサ1をさらに小型化することができ、携帯性をさらに向上させることができる。また、ベース部11の他方主面11bに各種構成部品を設けているため、光学センサ1のXY面サイズを低減させることができ、携帯性をより一層向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体に含まれる被検出成分の濃度を非侵襲的に検出する非侵襲的光学センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体に含まれる被検出成分の濃度を、皮膚又は身体開口部を通じて機器や器具を生体内に挿入することなく、つまり非侵襲的に検出するために、種々の技術が提案されている。例えば特許文献1では、血液中のグルコース(ブドウ糖)を被検出成分として検出する装置が記載されている。この特許文献1に記載の装置は、ハロゲンランプなどの光源部から発光された近赤外光を被検体の皮膚組織に投射して透過光や散乱光を受光するとともに、その受光信号を増幅及びA/D変換した後、マイクロコンピュータからなる演算手段に与える。そして、その演算手段による重回帰分析あるいは主成分回帰分析によって得られる検量式によりグルコース濃度を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−245265号公報(例えば、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、拡散板、ピンホール、レンズおよび光ファイバーを設け、これらの部品を介して光源部から発光された近赤外光を被検体の皮膚組織に照射している。このため、皮膚組織への光照射を行うための光学部品(光源部、拡散板、ピンホール、レンズなど)を収納するために例えば数十cm角の筐体が必要となっている。また、皮膚組織からの光を受光する受光側についても、光照射側と同様に、シャッター、レンズおよび回折格子などの光学部品を筐体に収納している。したがって、皮膚組織への光の照射および皮膚組織からの光を受光して血液中のグルコース濃度(血糖値)に関連するデータを検出するセンサは比較的大掛かりなものとなっている。その結果、従来装置は通常病院や自宅に固定的に設置されており、血糖値計測を行うためには装置の設置場所に出向く必要があり、計測頻度は限られ広く普及するに至っていない。特に、血糖値は一日のうちでも激しく変動するものであり、本来、血糖値疾患の検査や治療には計測頻度を大幅に増やして血糖値を常時モニターすることが望まれる。また、糖尿が心配される方が食事療法などを通じて自分自身で病状改善を図ることも重要視されている。これらの点を考慮すると、非侵襲的光学センサの携帯性を向上させることは、生体に含まれるグルコースなどの被検出成分の濃度を検出する頻度を高めて病気治療や病気予防などに大きく貢献するものであり、重要な意義を有している。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、携帯性に優れた非侵襲的光学センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、生体に含まれる被検出成分の濃度を非侵襲的に検出する非侵襲的光学センサであって、上記目的を達成するため、生体の被検部位に対向する表面領域を有するベース部と、ベース部に設けられて表面領域を介して被検部位から射出される光を受光して互いに異なる複数の波長での光強度を検出する分光検出部と、ベース部に設けられて分光検出部により検出された被検出成分の濃度に関連するデータを外部に送出可能なデータ出力部と、ベース部に設けられてデータ出力部に給電する電源とを備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、生体の被検部位に対向する表面領域を有するベース部に対し、分光検出部、データ出力部および電源が設けられており、次のようにして生体に含まれる被検出成分の濃度が非侵襲的に検出される。すなわち、分光検出部によって、ベース部の表面領域を介して被検部位から射出される光の光強度が互いに異なる複数の波長について検出される。そして、分光検出部により検出された被検出成分の濃度に関連するデータがデータ出力部により外部に送出される。このように本発明にかかる非侵襲的光学センサは、被検出成分の濃度を検出するとともに当該濃度に関連するデータを外部に出力する機能に特化し、その機能を達成するための構成要素をベース部に設けている。したがって、非侵襲的光学センサの小型化が可能となり、優れた携帯性を有する非侵襲的光学センサが得られる。しかも、本発明にかかる非侵襲的光学センサは単に被検出成分の濃度を非侵襲的に検出するのみならず、検出結果(濃度に関連するデータ)を外部に出力する機能を有しているため、光学センサの携帯性と相まって、被検出成分の検査を行う場所や時間などの制限を大幅に緩和することができ、検査頻度を高めて病気治療や病気予防などに大きく貢献することが可能となっている。
【0008】
ここで、分光検出部としては、次のように構成されたものを用いることができる。例えば分光検出部の第1態様として、ベース部の表面に固定されて互いに異なる波長の単色光を発光する複数の単色光源と、ベース部の表面または内部に設けられて複数の単色光源から射出される単色光を表面領域に導いて表面領域を介して被検部位に照射させる第1光導波路と、ベース部の表面または内部に設けられて被検部位で反射した光をベース部の光検出位置に導く第2光導波路と、光検出位置に配置されて第2光導波路により導光されてくる光を検出する光検出部とを有し、複数の単色光源の点灯タイミングを相互に異ならせて光検出部で各波長での光強度を検出するように構成してもよい。このようにベース部に設けた光導波路により光を導光することで光損失を抑制しながら分光検出部のコンパクト化を図ることができる。また、平板形状のベース部を用いる場合、ベース部の一方主面を表面領域とするとともに、他方主面に複数の単色光源、光検出部、データ出力部および電源を配置してもよく、このような構成を採用することでベース部の小型化、さらに言えばセンサのさらなる小型化によってセンサの携帯性をさらに高めることができる。
【0009】
また分光検出部の第2態様として、ベース部の表面に固定されて検出対象となる波長を含む広帯域光を発光する広帯域光源と、ベース部の表面または内部に設けられて光源から射出される広帯域光光を表面領域に導いて表面領域を介して被検部位に照射させる第1光導波路と、ベース部の表面または内部に設けられて被検部位で反射した光をベース部の分光位置に導く第2光導波路と、分光位置に配置されて反射光を分光する分光部と、ベース部の表面に固定されて分光部により分光された光を受光して各波長での光強度を検出する光検出部とを有するものを用いてもよい。このようにベース部に設けた光導波路により光を導光するとともに分光部で分光するように構成することで光損失を抑制しながら分光検出部のコンパクト化を図ることができる。また、平板形状のベース部を用いる場合、第1態様と同様に、ベース部の一方主面を表面領域とするとともに、他方主面に広帯域光源、分光部、光検出部、データ出力部および電源を配置することでベース部の小型化、さらに言えばセンサのさらなる小型化によってセンサの携帯性をさらに高めることができる。
【0010】
また、上記第1態様および上記第2態様にかかる分光検出部は広帯域光源を有しているが、被検部位を透過した広帯域光をそのまま分光するように構成してもよい。すなわち、分光検出部の第3態様として、ベース部の表面または内部に設けられて検出対象となる波長を含み、かつ被検部位を透過した光をベース部の分光位置に導く光導波路と、分光位置に配置されて透過光を分光する分光部と、ベース部の表面に固定されて分光部により分光された光を受光して各波長での光強度を検出する光検出部とを有するものを用いてもよい。このように光源を省略することができる分だけ分光検出部のコンパクト化を図ることができる。また、平板形状のベース部を用いる場合、第1態様や第2態様と同様に、ベース部の一方主面を表面領域とするとともに、他方主面に分光部、光検出部、データ出力部および電源を配置するすることでベース部の小型化、さらに言えばセンサのさらなる小型化によってセンサの携帯性をさらに高めることができる。
【0011】
また、データ出力部については、例えばデータを外部に送信する通信部で構成してもよく、これによって通信可能範囲内における任意の場所でセンサによる検査を行うことができ、センサ利用者の利便性を向上させて検査をより簡便なものとすることができる。
【0012】
また、データ出力部が、データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されるデータを読み出すための外部接続端子とを有するように構成してもよく、これによって任意の場所および時間でセンサによる検査を行いながら検出結果を記憶部に記憶させることができるとともに、任意のタイミングで検出結果を読み出すことができる。したがって、センサ利用者の利便性を向上させて検査をより簡便なものとすることができる。
【0013】
さらに、電源として、太陽電池、行動発電機などのように発電機能を有する発電機、あるいは一次電池や二次電池などの電池を用いてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、生体の被検部位に対向する表面領域を有するベース部に、表面領域を介して被検部位から射出される光を受光して互いに異なる複数の波長での光強度を検出する分光検出部と、分光検出部により検出された被検出成分の濃度に関連するデータを外部に送出可能なデータ出力部と、データ出力部に給電する電源とを設けている。そして、被検出成分の濃度を非侵襲的に検出するとともに、検出結果(濃度に関連するデータ)を外部に出力することができ、光学センサの携帯性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる非侵襲的光学センサの第1実施形態の使用例を模式的に示す図である。
【図2】図1の非侵襲的光学センサの構成を示す図である。
【図3】本発明にかかる非侵襲的光学センサの第2実施形態の構成を示す図である。
【図4】本発明にかかる非侵襲的光学センサの第3実施形態の構成を示す図である。
【図5】本発明にかかる非侵襲的光学センサの第4実施形態の構成を示す図である。
【図6】本発明にかかる非侵襲的光学センサの第5実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる非侵襲的光学センサの第1実施形態の使用例を模式的に示す図である。また、図2は図1の非侵襲的光学センサの構成を示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は断面図である。非侵襲的光学センサ1は、生体2に流れる血液3中のグルコース濃度(血糖値)を検出する装置である。また、この非侵襲的光学センサ1は、検出結果に関連するデータを無線通信で外部に出力する装置であり、携帯電話、スマートフォンやPDA(=Personal Digital Assistant)などの携帯端末4に対して検出結果を伝送可能となっている。そして、予め血糖値測定用プログラムを携帯端末4にインストールしておくことで携帯端末4は非侵襲的光学センサ1から伝送される通信データに受信し、その受信データに基づき血糖値を演算して画面41に表示する。このように本実施形態では、非侵襲的光学センサ1は、グルコース濃度の検出機能と検出結果を携帯端末4に出力するデータ出力機能とを兼ね備える一方、その他の演算機能や表示機能などを省略したものであり、図2に示すように、検出機能およびデータ出力機能を達成する構成のみをベース部11に装備している。以下、図2を参照しつつ非侵襲的光学センサ1について詳述する。なお本明細書では、非侵襲的光学センサ1の各部構成および光の伝播方向を明確にするため、次に説明するベース部の表面をXY平面とし、さらに厚み方向(XY平面に対して垂直な方向)をZ方向とする三次元座標系X−Y−Zが定義されている。
【0017】
非侵襲的光学センサ1のベース部11は平板形状の光透過性基板で構成されている。このベース部11は例えば数センチメートル角で、厚み数ミリメートルのチップ形状を有しており、ベース部11の一方主面11aを人間の指や耳朶などの被検部位に対向させることが可能となっている(図2では、指21の上にベース部11の一方主面11aが接している)。また、ベース部11の他方主面11bには、分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15が配置されている。
【0018】
分光検出部12では、発光ダイオードなどの互いに異なる波長の単色光を発光する複数(本実施形態では5個)の単色光源12a1〜12a5と、フォトダイオードなどの単一の受光素子からなる受光部12bとがベース部11の他方主面11b上に配置されている。また、単色光源12a1〜12a5と受光部12bとの間に位置するように光路変換部材12cが設けられている。この光路変換部材12cは、ベース部11の両主面11a、11bに対して45゜傾斜した2つの反射ミラー面12c1、12c2を有している。そして、一方の反射ミラー面12c1が単色光源12a1〜12a5を向くとともに他方の反射ミラー面12c2が受光部12bを向いた状態で、かつ反射ミラー面12c1、12c2がベース部11の他方主面11bからベース部11の内部に入り込んだ状態で、光路変換部材12cはベース部11の他方主面11bに配置されている。
【0019】
また、他方主面11bの表面近傍部では、各単色光源12a1〜12a5と反射ミラー面12c1とを結ぶように光導波路12dがベース部11に設けられている。これらの光導波路12dの光源側端部(図2(b)における左端部)は5本に枝分かれして各単色光源12a1〜12a5の直下位置まで延設されている。また、各光源側端部には、反射ミラー面12eが設けられており、各単色光源12a1〜12a5から発光された単色光の伝播方向を変換し、これによって各単色光が光導波路12dを介して光路変換部材12cの反射ミラー面12c1に伝播される。すなわち、単色光源12a3の発光面はベース部11の他方主面11bと対向しており、制御部13からの発光指令に応じてベース部11の他方主面11bに対して方向Zに単色光を射出する。この垂直方向Zにおいて、単色光源12a3の発光面の下方位置に光導波路12dの光源側端部が延設されるとともに方向Zに対して45゜の傾斜角を有する反射ミラー面12eがベース部11の内部に設けられている。このため、単色光源12a3からの単色光は図2(b)中の1点鎖線で示すように反射ミラー面12eで反射されてベース部11の他方主面11bと平行に光導波路12d内で伝播されて光路変換部材12cの反射ミラー面12c1に達する。なお、単色光源12a3以外の単色光源12a1、12a2、12a4、12a5についても、上記と同様に構成されており、各単色光源から12a1、12a2、12a4、12a5の単色光はそれぞれ反射ミラー面12eで反射されてベース部11の他方主面11bと平行に光導波路12d内で伝播されて光路変換部材12cの反射ミラー面12c1に達する。
【0020】
光路変換部材12cの反射ミラー面12c1、12c2から垂直方向Zに光導波路12fがベース部11に設けられ、その光導波路12fの下方端がベース部11の一方主面11aに達している。このため、上記のように反射ミラー面12c1で反射された単色光は光導波路12f内を方向(−Z)に伝播されて一方主面11aに対向する指21の表面に照射される。また、指21で反射された反射光は光導波路12f内を方向(+Z)に伝播されて反射ミラー面12c2に達する。
【0021】
この光導波路12fの上方端は光路変換部材12cの反射ミラー面12c2と接続されるのみならず、反射ミラー面12c2と受光部12bとを結ぶようにベース部11に設けられた光導波路12gとも接続されている。このため、光導波路12f内を方向(+Z)に伝播する反射光は反射ミラー面12c2で反射されてベース部11の他方主面11bと平行に光導波路12g内で伝播される。この光導波路12gの受光側端部(図2(b)における右端部)には、方向Zに対して45゜の傾斜角を有し反射ミラー面12c2と平行に配置される反射ミラー面12hが設けられており、光導波路12g内を伝播してきた光はベース部11の他方主面11b側に反射され、受光部12bの受光面(図示省略)に入射される。したがって、制御部13からの発光指令に応じて単色光源12a1〜12a5のうちの一、例えば単色光源12a3を点灯させると、その単色光源12a3に対応する波長の単色光が、反射ミラー面12e−光導波路12d−反射ミラー面12c1−光導波路12fを介して指21に照射される。また、指21で反射された光が光導波路12f−反射ミラー面12c2−光導波路12g−反射ミラー面12hを介して受光部12bに入射される。こうして、当該波長での反射光の光強度が検出され、それに対応する信号が制御部13に与えられる。また、発光させる単色光源を順番に切り替えることで、互いに異なる波長での反射光の光強度が検出される。このように、第1実施形態では、分光検出部12によってベース部11の一方主面(本発明の「表面領域」に相当)を介して指21から射出される反射光を受光し、これによって互いに異なる5つの波長での光強度を検出している。また、受光部12bが本発明の「光検出部」として機能している。
【0022】
こうして検出された光強度分布は指21の血管中を流れる血液3に含まれるグルコース濃度(血糖値)の密接に関連しているため、波長ごとの光強度を示すデータを解析することが可能となっている。そこで、本実施形態では、制御部13は受光部12bから出力される信号を各光源の発光タイミングと関連付けたデータを作成し、通信部からなるデータ出力部14に与えて無線通信で携帯端末4に出力する。
【0023】
なお、図2中の電源モジュール15はセンサ1の各部に印刷回路等の電線でもって各部と接続され電力を供給するものであり、本発明の「電源」に相当する。この第1実施形態では、太陽電池パネルなどの発電部と発電部で発電された電力を充電する二次電池とで構成されている。また、図1および図2中の符号16はベース部11の他方主面11bならびに該主面11bに装備された分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15を保護する保護部であり、太陽電池パネルを発電部として用いる場合には、例えば透明シリコン樹脂や透明エポキシ樹脂などの透明樹脂による透過性膜で保護部16を構成してもよい。また、太陽電池パネルの受光面に対応する部分のみを透過性樹脂で構成する一方、その他を遮光性樹脂で構成してもよい。
【0024】
以上のように、本実施形態にかかる非侵襲的光学センサ1では、グルコース濃度(血糖値)の検出機能およびデータ出力機能を達成するのに必要な構成(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)のみを例えば数センチメートル角のベース部11に作り込んで小型化しているため、優れた携帯性が得られる。例えば、指や耳朶などの生体2の被検部位にベース部11の一方主面11aを対向させることで血液3に含まれるグルコース濃度(血糖値)に関連するデータを検出し、その検出データを無線通信で携帯端末4に出力することができる。したがって、特許文献1に記載の装置を用いて血糖値計測を行う場合には計測を行う度に装置の設置場所に移動する必要があったのに対し、本実施形態によれば、携帯端末4との通信可能範囲内であれば、携帯端末4の位置にかかわらず上記光学センサ1を用いて血糖値の検査を行うことができる。このように検査を行う場所や時間などの制限を大幅に緩和することができ、検査頻度を高めて病気治療や病気予防などに大きく貢献することが可能である。
【0025】
また、ベース部11に設けた光導波路12d、12fによって単色光源12a1〜12a5からの光を生体2の被検部位(上記実施形態では指21)に導光し、また光導波路12f、12gによって被検部位で反射される光を受光部12bに導光しているため、光学センサ1をさらに小型化することができ、携帯性をさらに向上させている。このように本実施形態では光導波路12d、12fが本発明の「第1光導波路」として機能し、光導波路12f、12gが本発明の「第2光導波路」として機能している。また、ベース部11の一方主面11aを本発明の「表面領域」として機能させ、他方主面11bに各種構成部品(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)を設けているため、光学センサ1のXY面サイズを低減させることができ、携帯性をより一層向上させることができる。
【0026】
さらに、他方主面11bに各種構成部品(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)を集中的に配置しているため、従来から多用されている半導体や液晶パネルなどの電子部品の製造技術をそのまま利用して非侵襲的光学センサ1を製造することができる。その結果、小型化で携帯性に優れた非侵襲的光学センサ1を高品質で安定して製造することができるとともに、大量生産による製造コストの低減を効果的に行うことができる。
【0027】
<第2実施形態>
図3は本発明にかかる非侵襲的光学センサの第2実施形態の構成を示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は断面図である。この第2実施形態にかかる非侵襲的光学センサ1が第1実施形態のそれと大きく相違する点は、第1実施形態では複数の単色光源を用いてグルコース濃度(血糖値)の検出を行うのに対し、第2実施形態では波長領域の広い光(以下「広帯域光」という)を用いてグルコース濃度(血糖値)の検出を行う、つまり分光検出部12の構成が両者の間で大きく相違している。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、以下においては相違点を中心に説明する。
【0028】
第2実施形態では、光透過性のベース部11を、例えばリチウムナイオベート(LiNbO)等の電界により屈折率が変化する電気光学結晶で構成するとともに、分光検出部12が次のように構成されている。この分光検出部12では、複数の波長成分の光を含む広帯域光を発光する広帯域光源12aがベース部11の他方主面11b上に配置されている。また、同他方主面11b上の光検出位置に、フォトダイオードなどの受光素子を複数個水平方向(本実施形態ではX方向)にアレイ状に配列した受光部12bが配置されている。また、第1実施形態と同様に、広帯域光源12aと受光部12bとの間に位置するように光路変換部材12cが設けられている。すなわち、光路変換部材12cの反射ミラー面12c1が広帯域光源12aを向くとともに反射ミラー面12c2が受光部12bを向いた状態で、かつ反射ミラー面12c1、12c2がベース部11の他方主面11bからベース部11の内部に入り込んだ状態で、光路変換部材12cはベース部11の他方主面11bに配置されている。なお、反射ミラー面12c1、12c2はいずれも第1実施形態と同様にベース部11の両主面11a、11bに対して45゜傾斜している。
【0029】
また、ベース部11の他方主面11bの表面近傍部では、広帯域光源12aと反射ミラー面12c1とを結ぶように光導波路12dがベース部11に設けられている。この光導波路12dの光源側端部(図3(b)における左端部)は広帯域光源12aの直下位置まで延設されている。そして、同端部には、第1実施形態と同一構成の反射ミラー面12eが設けられており、広帯域光源12aから発光された広帯域光の伝播方向を変換し、これによって広帯域光が光導波路12dを介して光路変換部材12cの反射ミラー面12c1に伝播される。
【0030】
光路変換部材12cの反射ミラー面12c1、12c2から垂直方向Zに光導波路12fがベース部11に設けられ、その光導波路12fの下方端がベース部11の一方主面11aに達している。また、光導波路12fの下方端近傍には、集光レンズ12iが設けられている。このため、上記のように反射ミラー面12c1で反射された広帯域光は光導波路12f内を方向(−Z)に伝播され、集光レンズ12iにより光束の広がりを防止されながら一方主面11aに対向する指21の表面に照射される。また、指21で反射された反射光は集光レンズ12iを介して光導波路12fに入射され、さらに光導波路12f内を方向(+Z)に伝播されて反射ミラー面12c2に達する。
【0031】
また、光導波路12fの上方端は第1実施形態と同様に光路変換部材12cの反射ミラー面12c2と接続されるのみならず、反射ミラー面12c2と受光部12bとを結ぶようにベース部11に設けられた光導波路12gとも接続されている。ただし、第2実施形態では、次に説明するように光導波路12gを伝播している光を分光する分光部12jを、光路変換部材12cと受光部12bとの中間の分光位置に設けたことに対応して光導波路12gの受光側端部(図3(b)における右端部)を分光位置から末広がり形状に仕上げて分光部12jで回折された光を受光部12bに導光可能となっている。
【0032】
この分光部12jは、交差指型トランスデューサ(IDT:Inter Digital Transducer)12j1と吸収部材12j2とを有している。そして、同図に示すように、交差指型トランスデューサ12j1および吸収部材12j2はX方向において光導波路12gを挟み込むようにベース部11の他方主面11bに配置されている。この交差指型トランスデューサ12j1に対して制御部13から信号が与えられると、SAW(表面弾性波:Surface Acoustic Wave)が発生し、光導波路12g内を伝播している反射光がブラッグ回折される。これによって反射光が分光され、光導波路12gの受光側端部を介して受光部12bを構成する受光素子でそれぞれ受光される。こうして指21で反射された反射光の波長ごとの光強度が高精度に検出され、それに関連する信号が受光部12bから制御部13に出力される。そして、制御部13は受光部12bから出力される信号に対応するデータを作成し、データ出力部14に与えて無線通信で携帯端末4に出力する。
【0033】
以上のように、第2実施形態にかかる非侵襲的光学センサ1は、第1実施形態と同様に、グルコース濃度(血糖値)の検出機能およびデータ出力機能を達成するのに必要な構成(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)のみを例えば数センチメートル角のベース部11に作り込んで小型化しているため、優れた携帯性が得られる。したがって、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0034】
また、上記第1実施形態では単色光源12a1〜12a5の発光タイミングを切り替えて波長毎の光強度を検出しているのに対し、第2実施形態では広帯域光を発光させて波長毎の光強度を一度に検出しており、検出に要する時間を第1実施形態に比べて短縮することができる。
【0035】
なお、上記第2実施形態では複数の受光素子からなる受光部12bを用いているが、交差指型トランスデューサ12j1に対してチャープした高周波信号を与えることで受光部12bの構成を簡素化することができる。つまり、上記構成を採用した場合、一定の回折角の位置に設置した単一の受光素子により回折光を受光して指21で反射された反射光の波長ごとの光強度を検出することができる。
【0036】
<第3実施形態>
ところで、上記第2実施形態では、電気光学結晶で構成されたベース部11においてSAWを発生させて反射光をブラッグ回折させて分光しているが、例えば図4に示すように分光部12jとして回折格子12j3を用いてもよい。このように構成された非侵襲的光学センサ1の第3実施形態では、比較的簡単な構造で反射光を分光することができる。また、第2実施形態ではベース部11を電気光学結晶で構成する必要があるが、第3実施形態ではこのような制約はなく、安価な汎用製品を利用することができる。
【0037】
<その他>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記した第2実施形態および第3実施形態では広帯域光源12aから発光される広帯域光を生体2に照射しているが、被検部位が指21や耳朶などの比較的薄い部位であれば、被検部位を透過する太陽光線を分光して検出することができる。つまり、太陽光線は紫外から赤外まで波長範囲が広く、上記した分光検出に適した広帯域光である。そこで、例えば図5や図6に示すように指21を透過した広帯域光が集光レンズ12iを介して光導波路12fに取り込まれるとともに、当該透過光が分光部12jで分光されて波長毎の光強度が検出されるように構成してもよい。つまり、図5に示す第4実施形態にかかる非侵襲的光学センサ1は、光源12a、光導波路12dおよび反射ミラー面12eが設けられていない点を除き第2実施形態(図3)と同一構成であり、装置構成が簡素化されている。また、図6に示す第5実施形態にかかる非侵襲的光学センサ1は、光源12a、光導波路12dおよび反射ミラー面12eが設けられていない点を除き第3実施形態(図4)と同一構成であり、装置構成が簡素化されている。
【0038】
また、上記実施形態では、データ出力部14は通信機能を有する通信部で構成されており、受光部12bから出力される信号に対応するデータをリアルタイムで無線通信で携帯端末4に出力するように構成しているが、通信部と併存して不揮発性メモリなどの記憶部をベース部11に設けてもよい。これによって、通信不能状態で検出を行った場合でも検出したデータを一時的に記憶部に記憶しておき、通信可能状態となったときにデータを携帯端末4に出力することができる。
【0039】
また、通信部に代えて不揮発性メモリなどの記憶部をベース部11に設けるとともに、記憶部に記憶されるデータを読み出すための外部接続端子を非侵襲的光学センサ1に設けてもよい。この場合、任意の場所および時間でセンサ1による上記濃度検出を行いながら検出結果を記憶部に記憶させることができる。また、任意のタイミングで検出結果を読み出すことができる。したがって、センサ利用者の利便性を向上させて検出をより簡便なものとすることができる。
【0040】
また、上記実施形態では、ベース部11の一方主面11a全体を本発明の「表面領域」として用いているとともに、ベース部11の他方主面11bに各種構成部品(分光検出部12、制御部13、データ出力部14および電源モジュール15)を集中的に配置しているが、ベース部11の一方主面11aの一部を「表面領域」として用いてもよい。また、この場合、ベース部11の一方主面11aのうち「表面領域」以外の表面に構成部品の一部を配置してもよい。また、ベース部11の形状や構造などについては、上記実施形態で採用した形状などに限定されるものではなく、任意である。
【0041】
さらに、上記実施形態では、電源モジュール15を太陽電池で構成しているが、発電方式はこれに限定されるものではなく、他の発電方式、例えば振動により発電する機器やセンサ使用者の体温により発電する機器などを用いてもよい。また、電源モジュール15を一次電池や二次電池などの電池より構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、生体に含まれる被検出成分の濃度を非侵襲的に検出する非侵襲的光学センサ全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…非侵襲的光学センサ
2…生体
3…血液(被検出成分)
4…携帯端末
11…ベース部
11a…ベース部の一方主面(表面領域)
12…分光検出部
12a…広帯域光源
12a1〜12a5…単色光源
12b…受光部(光検出部)
12d、12f、12g…光導波路
12j…分光部
12j1…交差指型トランスデューサ(分光部)
12j3…回折格子(分光部)
14…データ出力部
15…電池モジュール(電源)
21…指(被検部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に含まれる被検出成分の濃度を非侵襲的に検出する非侵襲的光学センサであって、
前記生体の被検部位に対向する表面領域を有するベース部と、
前記ベース部に設けられて前記表面領域を介して前記被検部位から射出される光を受光して互いに異なる複数の波長での光強度を検出する分光検出部と、
前記ベース部に設けられて前記分光検出部により検出された前記被検出成分の濃度に関連するデータを外部に送出可能なデータ出力部と、
前記ベース部に設けられて前記データ出力部に給電する電源と
を備えたことを特徴とする非侵襲的光学センサ。
【請求項2】
前記分光検出部は、
前記ベース部の表面に固定されて互いに異なる波長の単色光を発光する複数の単色光源と、
前記ベース部の表面または内部に設けられて前記複数の単色光源から射出される単色光を前記表面領域に導いて前記表面領域を介して前記被検部位に照射させる第1光導波路と、
前記ベース部の表面または内部に設けられて前記被検部位で反射した光を前記ベース部の光検出位置に導く第2光導波路と、
前記光検出位置に配置されて前記第2光導波路により導光されてくる光を検出する光検出部とを有し、
前記複数の単色光源の点灯タイミングを相互に異ならせて前記光検出部で各波長での光強度を検出する請求項1に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項3】
前記ベース部は平板形状を有しており、
前記ベース部の一方主面が前記表面領域であり、他方主面に前記複数の単色光源、前記光検出部、前記データ出力部および前記電源が配置される請求項2に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項4】
前記分光検出部は、
前記ベース部の表面に固定されて検出対象となる波長を含む広帯域光を発光する広帯域光源と、
前記ベース部の表面または内部に設けられて前記広帯域光源から射出される広帯域光を前記表面領域に導いて前記表面領域を介して前記被検部位に照射させる第1光導波路と、
前記ベース部の表面または内部に設けられて前記被検部位で反射した光を前記ベース部の分光位置に導く第2光導波路と、
前記分光位置に配置されて前記反射光を分光する分光部と、
前記ベース部の表面に固定されて前記分光部により分光された光を受光して各波長での光強度を検出する光検出部と
を有する請求項1に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項5】
前記ベース部は平板形状を有しており、
前記ベース部の一方主面が前記表面領域であり、他方主面に前記広帯域光源、前記分光部、前記光検出部、前記データ出力部および前記電源が配置される請求項4に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項6】
前記分光検出部は、
前記ベース部の表面または内部に設けられ、検出対象となる波長を含み、かつ前記被検部位を透過した広帯域光を前記ベース部の分光位置に導く光導波路と、
前記分光位置に配置されて前記広帯域光を分光する分光部と、
前記ベース部の表面に固定されて前記分光部により分光された光を受光して各波長での光強度を検出する光検出部と
を有する請求項1に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項7】
前記ベース部は平板形状を有しており、
前記ベース部の一方主面が前記表面領域であり、他方主面に前記分光部、前記光検出部前記データ出力部および前記電源が配置される請求項6に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項8】
前記データ出力部は前記データを外部に送信する通信部である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項9】
前記データ出力部は、前記データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記データを読み出すための外部接続端子とを有する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項10】
前記電源は発電機である請求項1ないし9のいずれか一項に記載の非侵襲的光学センサ。
【請求項11】
前記電源は電池である請求項1ないし9のいずれか一項に記載の非侵襲的光学センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245069(P2011−245069A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122218(P2010−122218)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】