説明

非常停止押しボタンの状態表示

【課題】観察者が容易に認識できる状態表示器を備えた非常押しボタンを提供する。
【解決手段】非常押しボタン10は、アクチュエータ18のヘッドに近接して配置され、それに対して移動するように付勢される表示器72を有する。表示器72は、非常押しボタン10の状態を提示し、アクチュエータ18のヘッドの表示窓108から選択的に視認することができるように構成されるしるしを有する表示面を有する。表示器72はさらに、そこから延在し、該少なくとも1つのガイド面94と係合可能な少なくとも1つのアーム80を有する。アクチュエータ18のヘッドが作動位置へ往復すると、少なくとも1つのアーム80がハウジング12の少なくとも1つのガイド面94によってある位置まで付勢されるように構成されることによって、表示器、さらにはしるしが移動して、少なくとも1つの窓108から視認できるように状態変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、問題を未然に防いだり、非常事態に可能な限り速く介入できるように、電気、電気機械または電子装置やプラントに安全に介入するために用いられるような、トリップによって安全作動を行える非常押しボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような種類の非常押しボタンは、例えば、限定的ではないが、コンベヤベルト、エレベータ、クレーン、エスカレータおよびリフト等の運搬または昇降装置において、または火災、爆発、洪水等の事故や、窃盗、乱暴、破損等の犯罪に対する監視・警戒プラントにおいて、主に使用される。
【0003】
既に多くの非常押しボタンが存在しており、それを通じて得ようとする目的の1つは安全作動である。すなわち、安全とは、いったん非常押しボタンが作動すると、動作が中断すなわち作動停止するのはもちろんだが、任意の明確な作動停止動作によってのみ作動停止することができることである。さらに、前記非常押しボタンは、部品の故障や、軽溶接などによる接点の損傷が起こった場合にも、それによって作動するスイッチを操作しなくてはならない。
【0004】
すべての非常押しボタンは、安全国際規則に従うために、手のひらで作動させることができる、マッシュルーム形状の大きなノブまたはスライダを備えており、可能な限り最も速く最も安全に介入することができる。
【0005】
1つの例示的な非常押しボタンが特許文献1(米国特許第5,055,643号公報)に記載されており、これはハウジングと、可動作動ノブに強固に接続されて、それとともに軸方向に可動するサポートとを有している。このサポートは、可動スライダの移動方向と平行な軸まわりのノブの回転によって作動する解放機構に作用する。このボタンはさらに、少なくとも1つの保持歯を備えた軸方向可動部材を有しており、可動ノブを下げると、ノブの移動方向と平行な軸まわりを回転して、保持歯をハウジングに設けられた少なくとも1つの突起部から解放し、トリップ動作で可動部材をリセットすると、保持歯を突起部の下の位置まで運ぶトリップ方式で回転して、可動部材が突出位置まで戻るのを防ぐ。保持歯の解放は、保持移動に対して逆方向のノブの回転移動によってのみ行うことができる。シリンダ錠をノブの内部に設けてもよい。
【特許文献1】米国特許第5,055,643号公報
【特許文献2】米国特許第5,605,225号公報
【特許文献3】米国特許第5,593,022号公報
【特許文献4】独国特許第19,607,562 C2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、観察者が容易に認識できる状態表示器を備えた非常押しボタンを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、非常押しボタンは、少なくとも1つのガイド面を有するハウジングと、該ハウジングによって支持されるアクチュエータとを有する。該アクチュエータは、作動位置と解放位置の間を略直線軸に沿って往復する。該アクチュエータは、その上に位置する少なくとも1つの表示窓を有する。該非常押しボタンはさらに、アクチュエータのヘッドに近接して配置され、それとともに移動するように付勢される表示器を有する。該表示器は、該非常押しボタンの状態を提示し、該アクチュエータのヘッドの該表示窓から選択的に視認できるように構成されるしるしを備えた表示面を有する。該表示器はさらに、そこから延在し、該少なくとも1つのガイド面と係合可能な少なくとも1つのアームを有する。該アクチュエータのヘッドが該作動位置へ往復すると、該少なくとも1つのアームが該ハウジングの該少なくとも1つのガイド面によってある位置まで付勢されるように構成されることによって、該表示器、さらにはしるしが移動して、該少なくとも1つの窓から視認できるように状態変化を表すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態は、非常押しボタンの状態表示器を提供する装置および方法に関する。該非常押しボタンは、ハウジングと、該ハウジングによって支持され、その上に位置する少なくとも1つの表示窓を有するアクチュエータとを有する。該非常押しボタンの状態を示すしるしを備えた表示面を有する表示器が設けられており、該アクチュエータのヘッドが作動位置へ往復すると、該アクチュエータのヘッドの該表示窓から選択された時間に視認できる該しるしは状態変化を表すように変化させることができる。
【0009】
次に図1を参照すると、本発明の一実施形態による非常押しボタンが全体的に10として示される。この実施形態では、非常押しボタン10は、ハウジング12と、プランジャ14と、ロータ16と、アクチュエータ18と、表示器20とからなる。前述の部品および本明細書に記載のその他の部品の各々は特に断わりのない限り、概して剛性が高く、絶縁性の成形用物質、例えば、ポリアミド、高分子ポリエチレンおよび/またはポリカーボネートなどの高分子物質からなる。
【0010】
ハウジング12は、略円筒外形を有し、ハウジングキャビティ24を画定するハウジング壁22からなるカップ部分(番号なし)を有する。ステム部分26はハウジング壁22から延在しており、ベース(図示せず)に組み付けるために28で示すようにねじ山をつけてもよい。ステム部分26は、以下に記載するプランジャ14の一部を収容するとともに、これもまた以下に記載するピストン32の一部を収容するように寸法決めされたステムキャビティ30を有する。
【0011】
ピストン32は、大径ストッパ部分34とプラグ部分36を含む略円筒形を有する。次に図2も参照すると、プラグ部分36は、ステムキャビティ30に嵌合するように寸法決めされるプラグキャビティ38を有する。
【0012】
プランジャ14は、ベース部分40と、矢印46で表わすように略らせん経路に沿ってガイド45の内部を可動するピン44を有するステム42とからなる。ロータ16はピン44と相互接続しており、ロータの移動中、プランジャ14の軸方向の回転移動が生じる。非常押しボタンの内部で往復軸方向移動を行う同様の装置のさらなる詳細は、本発明の実施形態を構成し、実践するのに必要な範囲で本明細書に援用される、上述の特許文献1(米国特許第5,055,643号公報)で見ることができる。
【0013】
ロータ16はプランジャ14およびハウジング12によって支持されており、その両者からそれぞれスプリング48および50によって離れるように付勢される。ロータ16は、大径外側部分52と、小径内側部分54とからなっており、それらを通してピン44が延在する。スプリング48は、プランジャ14のショルダ56と、ロータ16の端面58との間に延在する。スプリング50は、ハウジング12のリセス部分と、ロータ16のショルダ部分62との間に位置する。ピン64は、ロータ16とアクチュエータ18を接続する。
【0014】
ガスケットリング66はロータ16の溝68の内部に配置されて侵入を保護するものであり、ガスケットリング70もまた侵入を保護するものである。
【0015】
本発明の特徴によれば、表示器72はロータ16とアクチュエータ18の間に位置する。表示器72は、スプリング74によってスクリーン76の方向に付勢される。
【0016】
次に図3および図4を参照すると、表示器72は、ハブ78とアーム80とからなる。ハブ78は、文字84等のしるしを備えた表示面82を有する。文字84の代わりに、またはそれに加えて、赤と緑などの配色や、作動または解放位置を示すために移動可能な構造フラグ要素を採用してもよいことが理解できるであろう。表示器72はまた、スプリング74を収容するために設けられた開口86と、段付部分88とを有する。ショルダ部分90は、各アーム80に接続される。
【0017】
再び図1を参照すると、ハウジング12は一対の縮径部分92およびガイド面94とからなっているが、各々がハウジング12の直径の反対側に位置しているので、図1には一方のみが示されている。ガイド面94は、傾斜部分96と、略平坦部分98とからなる。傾斜部分は直線または中心軸Xに対して、約45度〜約75度の範囲の角度をなして配置される。ある特定の実施形態では、この角度は約60度である。ハウジング12は、ショルダ部分90の厚さ(t)とほぼ等しい深さ(d)に形成された一対のディボット部分102を有するハウジング壁の端面100で終端する。
【0018】
スクリーン76は、コネチカット州フェアフィールドのゼネラルエレクトリック社から商標「レキサン(LEXAN)」で市販されており、表示器72によるアクチュエータ18に対する回転移動を促進する働きをするような低摩擦材料からなる。スクリーン76は、以下に記載するしるし84を視認するための開口104を有する。
【0019】
アクチュエータ18は、ポートまたは窓108が位置する操作面106を有する。操作者は、しるし84を図5に示す窓108から見ることができる。
【0020】
作動中、図5および図6に示すように、非常押しボタン10は解放位置と作動位置の間で往復する。図5に示すように、非常押しボタンは操作面106を操作者が手のひらで押す力と、壁(図示せず)等のサポートによって供給される反力Fの効果とによって係合して、矢印110の方向に移動する。アクチュエータ18が移動すると、ロータ16が軸方向に移動し、次に、アーム80が矢印112で示すように時計回り方向に、かつ矢印110の方向に軸方向移動してガイド面94に従うように、表示器72が回転する。表示器72が回転すると、表示面82のしるし84が、図6に示すように「OK」から「警告」へ回転する。
【0021】
非常押しボタン10を図5に示す解放位置へ戻すために、アクチュエータ18は矢印114の方向に時計回りに回転する。このようにして、ガイド面94が今度はしるし84が「警告」から「OK」へ変わるように表示器72を回転させる。
【0022】
本発明は現在考えられる最も実践的かつ好適な実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれらの本明細書に開示の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は添付の請求項の精神および範囲に含まれるさまざまな修正形態および同等の構成のすべてを保護することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の詳細な説明は、添付図面を参照して行われる。
【図1】本発明の実施形態による非常押しボタンの拡大図である。
【図2】図1の非常押しボタンの断面図である。
【図3】図1の非常押しボタンの表示器の側面図である。
【図4】図3の表示器の上面図である。
【図5】解放位置にある図1の非常押しボタンの斜視図である。
【図6】作動位置にある図1の非常押しボタンの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 非常押しボタン
12 ハウジング
14 プランジャ
16 ロータ
18 アクチュエータ
20 表示器
22 ハウジング壁
24 ハウジングキャビティ
26 ステム部分
28 ねじ山
30 ステムキャビティ
32 ピストン
34 大径ストッパ部分
36 プラグ部分
38 プラグキャビティ
40 ベース部分
42 ステム
44 ピン
45 ガイド
46 略らせん経路
48 スプリング
50 スプリング
52 大径外側部分
54 小径内側部分
56 ショルダ
58 端面
62 ショルダ部分
64 ピン
66 ガスケットリング
68 溝
70 ガスケットリング
72 表示器
74 スプリング
76 スクリーン
78 ハブ
80 アーム
82 表示面
84 文字
86 開口
88 段付部分
90 ショルダ部分
92 縮径部分
94 ガイド面
96 傾斜部分
98 略平坦部分
100 端面
102 ディボット部分
104 開口
106 操作面
108 窓
110 移動方向
112 回転方向
114 回転方向
F 反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常押しボタン(10)であって、
少なくとも1つのガイド面(94)を有するハウジング(12)と、
該ハウジング(12)によって支持され、作動位置と解放位置の間を略直線軸に沿って往復するアクチュエータ(18)であって、その上に位置する少なくとも1つの表示窓(108)を有する該アクチュエータ(18)と、
該アクチュエータ(18)のヘッドに近接して配置され、それに対して移動するように付勢される表示器(20)であって、該非常押しボタンの状態を提示し、該アクチュエータ(18)のヘッドの該表示窓(108)から選択的に視認できるように構成されるしるしを備えた表示面を有しており、そこから延在し、該少なくとも1つのガイド面(94)と係合する少なくとも1つのアーム(80)を有する該表示器(20)とからなり、該アクチュエータ(18)のヘッドが該作動位置へ往復すると、該少なくとも1つのアーム(80)が該ハウジング(12)の該少なくとも1つのガイド面(94)によってある位置まで付勢されるように構成されることによって、該表示器(20)、さらには該しるしが移動して、該少なくとも1つの窓(108)から視認できるように状態変化を表すことができる、非常押しボタン(10)。
【請求項2】
該表示器(20)が回転可能に配置され、該しるしが該表示窓(108)から視認できる位置まで回転するものであり、該しるしは、色、文字および構造フラグからなるグループの少なくとも1つである、請求項1に記載の非常押しボタン。
【請求項3】
該アクチュエータ(18)が操作面を有しており、該少なくとも1つの表示窓(108)が該操作面上に位置する、請求項1に記載の非常押しボタン。
【請求項4】
該ハウジング(12)がハウジングキャビティ(24)を有しており、さらに、
該ハウジングキャビティ(24)の内部に付勢され、該アクチュエータ(18)の該直線軸にほぼ平行な回転軸のまわりを回転可能なロータと、
ピン(44)と、
これもまた該ハウジングキャビティ(24)の内部に位置しており、該ピン(44)を介して該ロータと相互接続し、該ピン(44)のらせん経路を形成するように寸法決めして構成されたキャビティを有するプランジャ(14)と、
該プランジャ(14)と係合可能で、該プランジャ(14)を支持するピストン(32)とを有する、請求項1に記載の非常押しボタン。
【請求項5】
該アクチュエータ(18)と該表示器(20)の間に位置する表示スクリーンをさらに有しており、該表示スクリーンが、少なくとも1つの開口を有する一般的な薄いディスクであり、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリカーボネートからなるグループの少なくとも1つである低摩擦材料からなっている、請求項1に記載の非常押しボタン。
【請求項6】
該ハウジング(12)が略円筒状の形状で、該ハウジングキャビティを画定するハウジング壁(22)を有し、該ハウジング壁(22)がその上に該ハウジングガイド面(94)が延在するハウジング壁の外面を有しており、
該アクチュエータ(18)が略円筒状の形状で、該ハウジング壁(22)に嵌合するように寸法決めして構成されるアクチュエータ壁を有しており、該少なくとも1つのガイド面(94)が傾斜部分と略平坦部分とを有する、請求項1に記載の非常押しボタン。
【請求項7】
該少なくとも1つの表示アーム(80)が一対の表示アームからなり、
該少なくとも1つのガイド面(94)が一対のガイド面(94)からなり、
各表示アーム(80)が各ガイド面(94)を支えるように構成されている、請求項6に記載の非常押しボタン。
【請求項8】
該傾斜部分が、該直線軸に対して45度〜75度の範囲の角度をなして配置される、請求項6に記載の非常押しボタン。
【請求項9】
該ハウジング壁(22)の外面が略円筒状であり、各ガイド面(94)が該ハウジング壁(22)の外面から半径方向にほぼ垂直に延在し、該ハウジング壁(22)の縮径部分で終端する、請求項6に記載の非常押しボタン。
【請求項10】
該ハウジング壁(22)が、一対のディボット部分(102)を有するハウジング壁(22)の端面で終端し、
該表示器(20)が、一般的に段付ディスク形状と、表示開口と、第1直径部分と、第2直径部分とを有しており、各アーム(80)が該第1直径部分に接続するショルダ部分90から延在しており、各ショルダ部分が該ハウジング(12)の壁(22)の各ディボット部分(102)と噛み合うように寸法決めして構成されており、各アーム(80)が該ハウジング(12)の壁(22)の各縮径部分に隣接して嵌合するように寸法決めして構成されている、請求項7に記載の非常押しボタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−21244(P2009−21244A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179662(P2008−179662)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】