説明

非接触伝送デバイス

【課題】非接触通信用コイルと非接触給電用コイルとを相互に独立した別々のコイルにする場合と比較して、巻線に用いられる金属を削減することの可能な、非接触伝送デバイスを提供する。
【解決手段】非接触伝送デバイス1において、第1の巻線部20は、非接触通信用コイルとして利用される。第1の巻線部20及び第2の巻線部30は、合わせて非接触給電用コイルとして利用される。すなわち、非接触伝送デバイス1は、リーダ・ライタ(不図示)との非接触通信時は、取付け先の小型モバイル機器(不図示)との間で共通端子101及び非接触通信用端子102を介して信号の送受信が可能であるとともに、充電器からの非接触充電時は、共通端子101及び非接触給電用端子103を介して小型モバイル機器のバッテリに給電可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で信号及び電力を伝送する非接触伝送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で「信号」を伝送する非接触通信(NFC:Near Field Communication)は、例えば乗車カードや電子マネー等の非接触ICカードが実用化され、近年では携帯電話やスマートフォン等の小型モバイル機器にも広く組み込まれている。NFCでは、ICモジュールとコイルを備える非接触ICカードや携帯電話をリーダ・ライタに近接させることで、非接触で信号を伝送できる。非接触通信用コイルは、一般的に、薄型化の観点から、FPC(フレキシブルプリント基板)上の導体パターンとして形成される。
【0003】
他方、非接触で「電力」を伝送する非接触給電(Wireless Charging)は、近年では伝送効率が向上し、小型モバイル機器にも採用される流れとなっている。非接触給電では、一方のコイルを備える機器を前記一方のコイルと磁気的に結合する他方のコイルを備える充電器に近接させることで、非接触で電力を伝送できる。非接触給電は、電極が不要であるために、接触不良による充電エラーを避けることができ、また防水構造とするにも適している。非接触給電用のコイルは、一般的に、低抵抗化の観点から、比較的線径の大きい導線が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−142559号公報
【特許文献2】特開平2−226390号公報
【特許文献3】特開平5−259949号公報
【特許文献4】特開平10−126318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型モバイル機器に非接触給電を採用する場合、既に組み込まれていることの多いNFCと併設することになる。このとき、非接触通信用コイル(NFC用コイル)と非接触給電用コイルとを相互に独立した別々のコイルにすると、巻線の総数は、非接触通信用コイルの巻線数と非接触給電用コイルの巻線数との単純な合計となる。他方、省資源化や低コスト化、軽量化の要求はますます高くなっており、巻線に用いられる金属(例えば銅)を幾分でも削減することが求められている。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、非接触通信用コイルと非接触給電用コイルとを相互に独立した別々のコイルにする場合と比較して、巻線に用いられる金属を削減することの可能な、非接触伝送デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、非接触伝送デバイスである。この非接触伝送デバイスは、
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられたコイルとを備え、
前記コイルは、第1及び第2の巻線部と、第1から第3の端子部とを有し、
前記第1の巻線部の両端がそれぞれ前記第1及び第2の端子部に引き出され、
前記第2の巻線部の両端がそれぞれ前記第2及び第3の端子部に引き出され、
前記第1の巻線部を非接触通信用コイルとして利用し、前記第1及び第2の巻線部を合わせて非接触給電用コイルとして利用する。
【0008】
前記第1の端子部が共通端子であり、前記第2の端子部が非接触通信用端子であり、前記第3の端子部が非接触給電用端子であってもよい。
【0009】
前記第2の端子部と前記第2の巻線部との間にスイッチが設けられていてもよい。
【0010】
前記第1及び第2の巻線部は、1本分の線径の厚みとなるように前記磁性体の一方の面上で平面的に周回してもよい。
【0011】
前記第1の巻線部が前記第2の巻線部の外側に位置してもよい。
【0012】
前記磁性体は、前記第1の巻線部と前記第2の巻線部との間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0013】
前記磁性体は、前記第1及び第2の巻線部の内側において前記一方の面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0014】
前記第1及び第2の巻線部が実質的に角形形状であってもよい。
【0015】
前記第1及び第2の巻線部が実質的に同心配置であってもよい。
【0016】
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTであってもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の巻線部を非接触通信用コイルとして利用するとともに、前記第1の巻線部を非接触給電用コイルの巻線の一部としても利用するため、非接触通信用コイルと非接触給電用コイルとを相互に独立した別々のコイルにする場合と比較して、巻線に用いられる金属を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図2】図1のII-II断面図。
【図3】図1に示す非接触伝送デバイスの模式的配線図。
【図4】図1に示す非接触伝送デバイスの等価回路図。
【図5】本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図6】図5に示す非接触伝送デバイスの模式的配線図。
【図7】図5に示す非接触伝送デバイスの等価回路図。
【図8】本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイスの正断面図。
【図9】(A)は本発明の実施の形態4に係るバッテリユニットを小型モバイル機器本体に取り付ける場合の模式的分解図、(B)は比較例であってNFCと非接触給電の各コイルを別々にして携帯電話に搭載する場合の模式的説明図。
【図10】非接触伝送デバイスが小型モバイル機器本体に直接電気的に接続される場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図11】バッテリが非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図12】バッテリユニットが樹脂等のパッケージに覆われて一体化されている場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図13】バッテリユニットに過充電防止回路を内蔵した場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図14】信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図15】本発明の実施の形態5に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイス1の平面図である。図2は、図1のII-II断面図である。図3は、非接触伝送デバイス1の模式的配線図である。図4は、非接触伝送デバイス1の等価回路図である。なお、図3及び図4において、第1の巻線部20を点線で示している。
【0022】
非接触伝送デバイス1は、平板状の磁性体10と、第1の巻線部20と、第2の巻線部30と、第1の端子部としての共通端子101(COMMON)と、第2の端子部としての非接触通信用端子102(NFC端子)と、第3の端子部としての非接触給電用端子103(WLC端子、WLC:WireLess Charge)とを備える。
【0023】
磁性体10は、例えば一体のフェライト焼成物であって磁気シールドとして作用し、コアとして機能する凸部11を中央部に有する。すなわち、凸部11は、第1の巻線部20及び第2の巻線部30の内側において第1の巻線部20及び第2の巻線部30の配置面から立ち上がる。なお、凸部11は、磁性体10の一部であってもよいし磁性体10とは別体であってもよい。
【0024】
第1の巻線部20及び第2の巻線部30は、例えばエナメル線等の絶縁被覆線を、それぞれ1本分の線径の厚みとなるように磁性体10の一方の面上で薄く平面的に周回させたものである。それぞれの周回数は必要なインダクタンス等に応じて適宜設定される。第1の巻線部20が第2の巻線部30の外側となる位置関係であり、両者は実質的に同心配置かつ上方から見て実質的に角形形状である。なお、第1の巻線部20及び第2の巻線部30は共に自動巻線機により作成可能である。
【0025】
第1の巻線部20の両端は、第1の引出線20a,20bによってそれぞれ共通端子101及び非接触通信用端子102に引き出されて電気的に接続される。第2の巻線部30の両端は、第2の引出線30a,30bによってそれぞれ非接触通信用端子102及び非接触給電用端子103に引き出されて電気的に接続される。なお、第1の引出線20b及び第2の引出線30a,30bのうち巻線部を内側から外側に跨ぐ部分には、例えばジャンパー線を用いる。非接触伝送デバイス1において、第1の巻線部20は、非接触通信用コイル(非接触で「信号」を伝送するためのコイル)として利用される。第1の巻線部20及び第2の巻線部30は、合わせて非接触給電用コイル(非接触で「電力」を伝送するためのコイル)として利用される。すなわち、非接触伝送デバイス1は、リーダ・ライタ(不図示)との非接触通信時は、取付け先の小型モバイル機器(不図示)との間で共通端子101及び非接触通信用端子102を介して信号の送受信が可能であるとともに、充電器からの非接触充電時は、共通端子101及び非接触給電用端子103を介して小型モバイル機器のバッテリに給電可能である。
【0026】
本実施の形態の非接触伝送デバイス1によれば、下記の効果を奏することができる。
【0027】
(1) 第1の巻線部20を、非接触通信用コイルとして利用するとともに、非接触給電用コイルの巻線の一部としても利用する(換言すれば、巻線数が多く必要な非接触給電用コイルの巻線の一部を比較的巻線数が少ない非接触通信用コイルとして兼用する)ため、非接触通信用コイルと非接触給電用コイルとを相互に独立した別々のコイルにする場合と比較して、巻線に用いられる金属を削減することが可能となる。したがって、省資源化及び低コスト化、軽量化に有利である。
【0028】
(2) 非接触通信用コイル(第1の巻線部20)にFPC(フレキシブルプリント基板)を使用しないため、FPCを使用した非接触通信用コイルを用いる場合と比較してコスト安である。もっとも、FPCを使用したものと比較して非接触通信用コイル自体の厚みは増すが、非接触給電用コイルにはFPCは現実的には使用できない(電流容量不足のため)ことを考えると、第1の巻線部20及び第2の巻線部30を合わせて見ればFPCを使用しなくても厚みが増すことはない。したがって、FPCを使用しなくても非接触伝送デバイス1全体としての厚みが増すという問題は無い。
【0029】
本実施の形態では、同一の磁性体10上に第1の巻線部20及び第2の巻線部30(すなわち非接触通信用コイル及び非接触給電用コイル)を設けている。非接触通信用コイルの使用周波数は例えば13.56MHzであるのに対し、非接触給電用コイルの使用周波数は例えば50〜400kHzの帯域であることが多い。また、非接触通信用コイルのインダクタンスは例えば1〜4μH(13.56MHz時)とする一方、非接触給電用コイルのインダクタンスは例えば8〜24μH(100〜300KHz時)とする必要がある(いずれも磁性体10上に配置時のインダクタンス値)。このように、両コイルは使用周波数や特性が異なるため、磁性体10は下記の性質を満たすように作製する。すなわち、磁性体10の、比透磁率の実部をμ'、比透磁率の虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'、磁性体10の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温(例えば25度)かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、
tanδ≦1.0、かつ
Bm>330mT(磁界の強さが1.6kA/mのとき)
とする。但し、Bmの条件のみ直流時の値を示している。
【0030】
上記条件のうち、20≦μ'は、充電器側あるいはリーダ・ライタ側と電磁誘導により電力あるいは信号をやりとりするために必要な透磁率の条件である。μ'≦500は、μ'が500を超えてくると磁気損失項であるμ''が大きくなるため、主にNFCのために設定した条件である。μ''≦200は、μ''が200を超えてくるとNFCの通信距離が短くなるため、必要な通信距離を確保するために設定した条件である。μ''が小さいほど、リーダ・ライタから離しても通信が可能となる。tanδ≦1.0は、電磁誘導による通信効率と磁気損失とのバランスを考慮して主にNFCのために設定した条件である。Bm>330mTは、非接触給電用コイルに流れる比較的大きな電流によっても磁気飽和しないようにするために、主に非接触給電のために設定した条件である。
【0031】
これらの条件を満たすことにより、磁性体10は、電力系と信号系の双方に対応できる磁気シールドとなる。すなわち、磁性体10が上記の条件を満たすものであるため、同一の磁性体10で非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルに対して効果的に磁気シールドを行うことができる。そして、そのような磁性体10上に非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルを一体的に設けて一体化コイルユニットとしたことで、省スペース化を図ることができ、例えば小型モバイル機器への搭載に有利である。すなわち、既に組み込まれていることの多いNFCに加え、小型モバイル機器に非接触給電機能を搭載することが小型化により容易となる。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイス2の平面図である。図6は、非接触伝送デバイス2の模式的配線図((A)はスイッチ105オフ状態、(B)はスイッチ105オン状態)である。図7は、非接触伝送デバイス2の等価回路図である。なお、図6及び図7において、第1の巻線部20を点線で示している。本実施の形態は、実施の形態1と比較して、第2の引出線30aの途中すなわち非接触通信用端子102と第2の巻線部30の一端との間にスイッチ105が設けられている点で相違し、その他の点は同様である。スイッチ105は、例えばFET等のトランジスタからなる電子スイッチである。非接触通信時はスイッチ105をオフ、非接触給電時はスイッチ105をオンとする。スイッチ105を設けたことにより、非接触通信時に第1の巻線部20から第2の巻線部30に電流が流出することをより確実に防止することができる。
【0033】
図8は、本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイス3の正断面図である。本実施の形態は、実施の形態1と比較して、磁性体10が第1の巻線部20と第2の巻線部30との間のリング状の領域に突起部12を有する点で相違し、その他の点は同様である。突起部12は、凸部10と略同一高さである。なお、突起部12は、前記リング状の領域を1周する連続したリング状突起であってもよいし、複数の突起がリング状に配列されたものであってもよい。突起部12を設けた理由は次のとおりである。すなわち、非接触伝送デバイス3で非接触通信を行う場合、第2の巻線部30は非接触通信と無関係な導体部であり、第2の巻線部30による電磁波の干渉により非接触通信の通信距離が短くなるという問題がある。そこで、突起部12を設けると、非接触通信時の第2の巻線部30による干渉を低減でき、突起部12を設けない場合と比較して非接触通信の通信距離を長くすることができる。
【0034】
以下、非接触伝送デバイス及びバッテリを一体化したバッテリユニットの実施の形態について説明する。
【0035】
図9(A)は、本発明の実施の形態4に係るバッテリユニット5を小型モバイル機器本体8に取り付ける場合の模式的分解図である。図9(B)は、比較例であって、NFCと非接触給電の各コイルを別々にして携帯電話に搭載する場合の模式的分解図である。なお、小型モバイル機器は、図示の例では携帯電話であるが、スマートフォンやデジタルカメラ、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤ等の小型モバイル機器であってもよい。
【0036】
図9(A)に示すように、バッテリユニット5は、小型モバイル機器のバッテリ7の表面(小型モバイル機器本体8とは反対側の面)に、非接触伝送デバイス6を接着ないし粘着により一体化したものである。非接触伝送デバイス6とバッテリ7は当初から一体に形成されてもよい。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1から3のいずれかで説明したものを用いる。非接触伝送デバイス6の磁性体10(図1等)は、コイル搭載面と反対側の面がバッテリ7側になる配置である。2次電池であるバッテリ7は、アルミ等の金属ケーシングで表面が覆われている。バッテリユニット5は、小型モバイル機器本体8に取り付けられた状態でリッド9(バッテリケース)によって覆われる。リッド9は、小型モバイル機器本体8に対して着脱自在に取り付けられる。
【0037】
非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接続の方法の例を以下に説明する。なお、非接触伝送デバイス6は、実施の形態1等で説明したように3端子構造(図1等に示す共通端子101、非接触通信用端子102及び非接触給電用端子103の3端子構造)であるが、図10以降においては便宜上、端子201〜204を備える4端子構造(図1等に示す共通端子101をNFC用と非接触給電用に2分割し、非接触通信用端子102及び非接触給電用端子103と合わせて4つの端子201〜204とした構造)として示す。端子201〜204の接続先についても同様である。
【0038】
図10は、非接触伝送デバイス6が小型モバイル機器本体8に直接電気的に接続される場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接合は、給電及び通信のどちらも小型モバイル機器本体8側に専用端子801〜804を既存の電源端子8aとは別に設けて非接触伝送デバイス6の端子201〜204と直接接合する。給電系は小型モバイル機器本体8内の過充電防止回路81等を経由してバッテリ7に給電し、信号系は小型モバイル機器本体8内へ信号を伝送してRFID信号処理回路82にて信号処理を行う。なお、バッテリ7と小型モバイル機器本体8との接続は、既存の電源端子7a,8aの相互接続によって成される。
【0039】
図11は、バッテリ7が非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。バッテリ7は、非接触伝送デバイス6との接点となる端子701〜704を有するとともに、小型モバイル機器本体8との接点となる端子711〜714を既存の電源端子7aとは別に有する。非接触伝送デバイス6とバッテリ7とを一体化する際に、端子201〜204と端子701〜704とを電気的に接続させる。この場合、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子711〜714が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図11におけるその他の点は図10と同様である。
【0040】
図12は、バッテリユニット5が樹脂等のパッケージ5aに覆われて一体化されている場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6の配線はパッケージ5aの内部にあり、当該配線と導通する接点である端子501〜504がパッケージ5aの表面に露出して設けられる。この場合も、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子501〜504が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図12におけるその他の点は図10と同様である。
【0041】
図13は、バッテリユニット5に過充電防止回路52を内蔵した場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。これによれば、小型モバイル機器本体8を経由せずに非接触伝送デバイス6からバッテリ7に給電可能である。このため、図12に示す給電用の端子503,504,803,804は不要である。図13におけるその他の点は図12と同様である。
【0042】
図14は、信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。信号混合分離回路53,83は、バッテリユニット5及び小型モバイル機器本体8にそれぞれ設けられる。信号混合分離回路53,83を用いることにより電源系の接続と信号系の接続を共用すれば、既存の電源端子に加えての端子の増設は必要ない。すなわち、図13における通信用の端子501,502,801,802は不要である。図14におけるその他の点は図13と同様である。
【0043】
以下、非接触伝送デバイスをバッテリケース用のリッド9の背面(内側の面)に一体化したバッテリリッドユニットの実施の形態について説明する。
【0044】
図15は、本発明の実施の形態5に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1から3のいずれかで説明したものを用いる。通常のリッドには接点が無いので、専用の端子901〜904を新たに設け、小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続する。図15におけるその他の点は、図10と同様である。
【0045】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0046】
非接触伝送デバイスにおいて、磁性体10は、フェライト焼成物に替えて、金属圧粉磁心であってもよい。磁性体10の凸部11(コイルコアとして作用)は無くてもよい。第1の巻線部20及び第2の巻線部30は同心配置に限定されない。第1の巻線部20及び第2の巻線部30は角形形状であるとスペース効率がよいが、円形や長円形を始め、その他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,2 非接触伝送デバイス
5 バッテリユニット
7 バッテリ
8 小型モバイル機器本体
9 リッド
10 磁性体
11 凸部
20 第1の巻線部
30 第2の巻線部
101 共通端子
102 非接触通信用端子
103 非接触給電用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられたコイルとを備え、
前記コイルは、第1及び第2の巻線部と、第1から第3の端子部とを有し、
前記第1の巻線部の両端がそれぞれ前記第1及び第2の端子部に引き出され、
前記第2の巻線部の両端がそれぞれ前記第2及び第3の端子部に引き出され、
前記第1の巻線部を非接触通信用コイルとして利用し、前記第1及び第2の巻線部を合わせて非接触給電用コイルとして利用する、非接触伝送デバイス。
【請求項2】
前記第1の端子部が共通端子であり、前記第2の端子部が非接触通信用端子であり、前記第3の端子部が非接触給電用端子である、請求項1に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項3】
前記第2の端子部と前記第2の巻線部との間にスイッチが設けられている請求項1又は2に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2の巻線部は、1本分の線径の厚みとなるように前記磁性体の一方の面上で平面的に周回する、請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項5】
前記第1の巻線部が前記第2の巻線部の外側に位置する請求項1から4のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項6】
前記磁性体は、前記第1の巻線部と前記第2の巻線部との間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項7】
前記磁性体は、前記第1及び第2の巻線部の内側において前記一方の面から立ち上がる凸部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2の巻線部が実質的に角形形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2の巻線部が実質的に同心配置である請求項1から8のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項10】
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTである、請求項1から9のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−93429(P2013−93429A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234272(P2011−234272)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】