説明

非接触充電装置及び受電装置

【課題】電磁誘導により一次側トランスから二次側トランスに電力を供給して電池を充電するものにあって、電池充電のための電力では、非接触用空間における磁束密度が充分でない。
【解決手段】一次側トランス11のコイルの通電により、一次側トランス11と二次側トランス8との間の磁束を介して、二次側トランス8に交流電力が誘起される。該電力は、整流器9及び充電器10を介して電池7に供給されて充電する。二次側トランス8と充電器10との間に、スイッチAを介して短絡する短絡回路40を並列に配置する。スイッチAをオンすることにより、二次側トランス8に流れる電流を増大し、空間の磁束密度を増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触状態で、例えば電気自動車,プラグインハイブリッド車等の移動体における電池に、例えば駐車場等に設置されて給電設備から充電を行う非接触充電装置並びにそれに用いる受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動体、例えば電気自動車、プラグインハイブリッド車に備えられている電池に充電するには、給電設備から延びるケーブルのコネクタを移動体に備えられているコネクタに差込んで行われるため、ケーブルの取り回し、コネクタの接合等の面倒な作業を必要とする。
【0003】
従来、給電側に一次側コイルを有する一次側トランスを設け、移動体側に受電手段としての二次側コイルを有する二次側トランスを設け、前記一次側トランスからの磁束を受けて前記二次側トランスに電磁誘導により所定電力を発生して、非接触にて移動体の電池に充電する非接触充電装置が開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
該非接触充電装置は、上記一次側トランスを有する給電設備上に上記移動体である自動車をパーキングして、上記一次側トランスから二次側トランスに電磁誘導により電力が供給されるが、一次側トランスと二次側トランスが正対した位置にある場合、最も高い効率で給電が行われる。このため、特許文献1のものは、給電設備側の一次側トランス又は移動体側の二次側トランスを、アクチュエータからなる可動手段により移動自在に構成し、充電要求信号を受けていない場合、例えば一次側トランスが駐車スペースの走行面と面一となるように邪魔にならない位置(第2の配置)に保持し、充電要求信号を受けている場合、一次側トランスと二次側トランスが近接して正対する位置(第1の位置)に保持するように移動する。
【0005】
更に、例えば一次側トランスを可動手段(アクチュエータ)により、水平面(前後、左右)方向に移動して、例えば二次側トランスに誘起される交流電力が大きくなる位置(第3の位置)に移動する。これにより、電気自動車(移動体)を、その二次側トランスが給電設備の一次側トランス上に正確に移動することができない場合でも、可動手段により両トランスが正対する位置に移動して、高い効率で非接触充電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−183804号公報(特に図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の非接触充電装置は、一次側(又は二次側)トランスを移動するために、(電動又は油圧)アクチュエータ等の専用の可動手段を必要とし、かつコア(鉄心)を含めた一次側(又は二次側)トランス全体を上記可動手段で移動する必要があり、例えば駐車スペースの下部に、一次側トランス全体を移動し得る大きな出力のアクチュエータ(可動手段)を設置する必要がある。また、両トランスを平面方向で正対するには、一次側トランスを可動手段により各座標に順次移動し、これら座標における各二次側トランスに誘起される交流電力の大きさのデータを作成し、該誘起交流電力の最も大きい位置を最適位置(座標)と判断して、該座標に向けて一次側トランスを移動する制御を必要とし、上記可動手段の制御が面倒である。
【0008】
上記電磁誘導による非接触充電装置において、非接触用空間の電磁結合における磁場は、電池充電用電力供給時にあってはそれ程大きくなく、該磁場を用いて一次側トランスと二次側トランスを正対する位置に引き付け合うようにするには、必ずしも充分ではない。また、上記誘起交流電力の最も大きな位置である最適位置(座標)の検出にも、高い精度の検出手段を必要とする。
【0009】
そこで、本発明は、移動体側に配置される受電装置の二次側トランスへの電流を増大し、もって一次側トランスから二次側トランスへ伝達される磁束密度を大きくした非接触充電装置並びにそれに用いられる受電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、交流電源(12)から電力供給される一次側コイル(31)と、該一次側コイルが巻回されたボビン(30)と、磁性体からなるコア(32)と、を有する一次側トランス(11)と、
移動体(6)に配置される電池(7)に電力供給する二次側コイル(21)と、該二次側コイルが巻回されたボビン(20)と、磁性体からなるコア(22)と、を有する二次側トランス(8)と、を備え、
前記一次側コイル(31)の通電により前記一次側トランス(11)のコア(32)に発生する磁束(J)が、空間(G)を介して前記二次側トランス(8)のコア(22)に伝達され、前記二次側コイル(21)の誘起交流電力を前記電池(7)に供給して充電してなる非接触充電装置(1)において、
前記二次側コイル(21)と前記電池(7)を充電する充電器(10)との間に、スイッチ(A又はB)を介して短絡する短絡回路(40)を並列に配置した、
ことを特徴とする非接触充電装置にある。
【0011】
例えば図1〜図6を参照して、前記移動体が、電気モータを駆動源とする自動車(6)であり、かつ該自動車の床面近傍に前記二次側トランス(8)が配置され、
前記一次側トランス(11)が、給電設備(2)に設けられ、かつ前記自動車が駐車し得るスペース(3)に配置され、
前記一次側トランス(11)及び前記二次側トランス(8)の少なくとも一方(例えば11)が、移動自在に支持され、
前記スイッチ(A又はB)のオンにより前記短絡回路(40)を経由して流れる前記二次側コイル(31)の電流に基づき発生する前記空間(G)における磁束(J)により、前記一次側トランス(11)及び前記二次側トランス(8)が正対する方向に、前記一次側トランス及び前記二次側トランスの少なくとも一方(例えば11)を移動してなる。
【0012】
例えば図2〜図4を参照して、前記一次側トランス(11)及び前記二次側トランス(8)は、上下方向に対して平面方向に広い扁平箱型のケース(35,25)に収められ、
前記二次側トランス(8)は、前記ボビン(20)に前記コア(22)が一体に固定されると共に、前記ボビン(20)及び前記コア(22)が前記ケース(25)に固定され、
前記一次側トランス(11)は、前記ボビン(30)が前記ケース(35)に固定され、前記コア(32)が、前記ボビン(30)に対して所定隙間(S,S1,S2)を介在すると共に、前記ケース(35)にその平面方向に移動自在な支持部材(36)を介して支持され、
前記一次側トランス(11)のコア(32)が、前記二次側トランス(8)のコア(22)との間での前記空間(G)における磁束線(J)の長さが短くなるように平面方向に移動してなる。
【0013】
例えば図7,図8を参照して、前記電池(7)への充電が開始される前に、前記短絡回路(40)のスイッチ(A又はB)をオンして、前記二次側コイル(31)に流れる電流を増大してなる。
【0014】
例えば図7,図8を参照して、前記二次側コイル(31)から前記充電器(10)を介して前記電池(7)に電力を供給する充電状態にあっては、前記短絡回路(40)のスイッチ(A又はB)をオフしてなる。
【0015】
例えば図1,図4〜図6参照して、移動体(6)に配置される電池(7)に電力供給する二次側コイル(21)と、該二次側コイルが巻回されたボビン(20)と、磁性体からなるコア(22)と、を有する二次側トランス(8)を備え、
一次側コイル(31)の通電により一次側トランス(11)のコア(32)に発生する磁束(J)が、空間(G)を介して前記二次側トランス(8)のコア(22)に伝達され、前記二次側コイル(31)に誘起される交流電力を整流器(9)及び充電器(10)を介して前記電池(7)に供給してなる受電装置(5)において、
前記二次側コイル(21)と前記充電器(10)との間に、スイッチ(A又はB)を介して短絡する短絡回路(40)を並列に配置した、
ことを特徴とする受電装置にある。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1又は請求項6に係る本発明によると、二次側コイルと充電器との間に、スイッチを介して短絡する短絡回路を並列に配置したので、スイッチオンにより二次側コイルに流れる電流が充電時より増大し、これによりコストアップを伴うことなく、一次側トランスと二次側トランスとの間の空間での磁束密度を増大することができる。例えば、該増大した磁束密度により、一次側トランスと二次側トランスとが正対する位置になるように確実に位置補正することが可能となり、また上記正対した適正位置を容易に検出することが可能となる。
【0018】
請求項2に係る本発明によると、駐車スペースを有する給電設備に一次側トランスが設けられ、上記駐車スペースに、電気モータを駆動源とする自動車(電気自動車、プラグインハイブリッド車等)を駐車することにより、上記一次側トランスに、上記自動車に配置された二次側トランスを近接し、かつこの際、一次側トランス及び二次側トランスの少なくとも一方が移動自在であり、上記増大した磁束密度により上記両トランスが正対する方向に自動的に移動するので、アクチュエータ等の専用の可動手段を用いる必要がなく、コストアップを伴うことなく、高い効率での電磁誘導による非接触での充電を行うことができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によると、一次側トランス及び二次側トランスは、上下方向に薄くかつ平面方向に広い扁平箱形のケースに収納されるので、一次側及び二次側トランスは、雨や雪等の外気に対して保護されると共に、両トランスが直接又は他の物に接触することを防止しつつ、広い扁平面で互いに近接して配置することができ、電磁誘導による電気自動車及びプラグインハイブリッド車等の大きな電力の非接触充電が可能となる。
【0020】
更に、給電設備側である一次側トランスは、ボビンがケースに固定され、コアが、前記ボビンに対して所定隙間を介在すると共に、ケースにその平面方向に移動自在な支持部材を介して支持されるので、コアは、コイルを巻回したボビンの重量を受けることなく平面方向に滑らかに所定量移動して、電磁誘導による一次側トランス及び二次側トランスとの間の磁束により上記コアを移動して適正に位置補正することができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、電池への充電が開始される前に、前記短絡回路のスイッチをオンして、二次側コイルに流れる電流を増大するので、充電作業の前に、一次側トランスと二次側トランスとが正対する位置に移動補正され、高い効率での非接触による充電を行うことができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、電池に電力を供給する充電状態にあっては、短絡回路のスイッチがオフされて、該短絡回路を流れる電流はなく、二次側コイルの電力を充電器に供給して、高い効率で充電作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、給電設備を有する駐車スペースに電気モータを駆動源とする自動車を駐車して充電状態を示す全体側面図、(b)は、その自動車(移動体)側にある二次側トランスを示す分解斜視図。
【図2】給電設備側にある一次側トランスを示す分解斜視図。
【図3】一次側トランスを示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図、(c)は側面断面図。
【図4】一次側及び二次側トランスを示す正面断面図で、(a)は、一次側トランスと二次側トランスのコアが正対していない状態を示し、(b)は、磁束により両トランスのコアが正対した状態を示す。
【図5】非接触充電装置の回路の概略を示す図。
【図6】一部変更した非接触充電装置の回路の概略を示す図。
【図7】上記非接触充電装置の作動を示すフローチャート。
【図8】上記非接触充電装置の一部変更した作動を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に沿って、移動体として、電気自動車,プラグインハイブリッド車等の電気モータを駆動源とする自動車に適用した非接触充電装置について説明する。非接触充電装置1は、図1に示すように、駐車スペース3を有する給電設備2と、受電装置5を有する上記自動車6とを備える。自動車6は、図示しない電気モータを有しており、該電気モータは、上記自動車6に搭載されているリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の放充電可能な電池(バッテリ)7からの電力によりインバータ等を介して回転駆動される。
【0025】
上記受電装置5は、自動車6の床面近くに配設されている二次側トランス8を有しており、該二次側トランス8のコイルが整流器9及び充電器10を介して上記電池7に電通している。給電設備2は、駐車スペース3の走行面に配置される一次側トランス11を有しており、該一次側トランス11のコイルには、図5及び図6に示すように、商用の交流電源12からの交流が交流直流変換器13により直流に変換され、更にインバータ15により高周波に変換された電力が供給される。
【0026】
二次側トランス8は、図1(b)に示すように、非磁性体からなり、中空形状で両端に鍔部20aが形成されたボビン20を有しており、該ボビン20の上記両端鍔部20a,20aの間の外周面にコイル21が絶縁状に巻回されており、該コイル21は上述したようにインバータ15から電力供給される。上記ボビン20の中空部20bには磁性体からなるコア(鉄心)22が貫通し、かつ一体に嵌合・固着されている。コア22は、強磁性体からなるフェライトにより形成され、前記ボビン20の中空部20bに貫挿する長手板形状の第1の部位22aと、該第1の部位の両端に固定され、該第1の部位の長手方向と直交する方向に延びる板状ブロック片からなる第2の部位22b,22bとからなる。
【0027】
上記一体のボビン20、コイル21及びコア22は、上下方向が薄く平面方向に広い扁平箱状のケース25に収納されて一体に固定される。該ケース25は、非磁性体からなる本体25aと上蓋25bからなり、これら本体25aと上蓋25bとの間に、上記一体のボビン20、コイル21及びコア22を密接して、かつ上記コア22の長手方向が自動車6の前後方向と一致するようにして、収納される。二次側トランス8は、その広い平面が自動車6の床面と平行になるように、即ち走行面3と平行になるように自動車下部に配置される。
【0028】
一次側トランス11は、図2及び図3に示すように、前記二次側トランス8と同様に、中空部30bを有するボビン30、コイル31及びコア32からなる。ボビン30は、非磁性体からなり、両端に形成された鍔部30a,30aの間の外周部にコイル31が巻回されており、該コイル31は、電池7に接続して電力を供給し得る。コア32は、強磁性体のフェライトからなり、前記ボビン30の中空部30bに貫通する長手板状の第1の部位32aと、該第1の部位の両端に固定され、該第1の部位と直交する方向に延びる板状ブロック片からなる第2の部位32b,32bとからなる。該コア32の第1の部位32aと上記ボビン30の中空部30bとは嵌挿関係にあるが、その間には所定隙間Sが存在し、コア32は、その長手(前後)方向及び左右幅方向に移動自在であり、かつ(水平面で)所定量回動自在になっている。即ち、図3(c)に詳示するように、ボビン中空部30bと第1の部位32aとの上下方向には僅かな隙間S1が存在し、かつ左右方向には比較的大きな隙間S2が存在し、かつ第2の部位32bとボビン鍔部30aとの間に隙間S3が存在する。なお、上記コア32は、ボビン中空部30bに対して上下方向に摺接して移動自在に支持してもよい。即ち、上下方向の隙間S1はなくてもよく、その間がフッ素樹脂等の低摩擦係数のコーティンを介して移動自在にしてもよい。
【0029】
前記ボビン30、コイル31及びコア32は、非磁性体の本体35a及び上蓋35bからなる箱状のケース35に収納される。前記ボビン30の鍔部30a,30aは、下方30a1が上方より長く構成されており、該下方30a1の下端がケース本体35aの底面に密接して接着等により固着されている。上記コア32の左右第2の部位32b,32bの下端には支持部材となる複数のボール36が列状に保持されており、これらボール36は、上記ケース本体35aの底面に転動して、コア32を、ケース35の平面に沿って移動自在に支持されている。なお、支持部材は、コア第2の部位32b,32bに保持されたボール36のように、平面方向に滑らかに移動し得るものが好ましいが、これに限らず、摩擦係数の低い滑り部材でもよく、又はクロススライダー、ローラ等の他の転がり装置でもよく、またボビンに対して長手方向のみ移動自在なボールスプラインを介在したものでもよい。
【0030】
上記ケース35は、非磁性体からなり、かつ上下方向に薄くかつ平面方向に広い扁平矩形状からなり、給電設備2を有する駐車スペース3の路面(走行面)に設置される(図1(a)参照)。上記駐車スペースに自動車6を入れる自動車の進入方向(前後方向、前進方向)に、前記コア33の長手方向が一致するように、かつ自動車の車輪の間部分に上記一次側トランス11のケース35が扁平状に位置するように配置される。なお、前記二次側トランス8は、コア22の長手方向が自動車6の前後方向になるように、また前記一次側トランス11は、コア32の長手方向が自動車の進入方向になるように配置したが、これに限らず、コア22,32の幅方向を、それぞれ自動車の前後方向及び自動車の進入方向に一致するように配置してもよい。
【0031】
図5及び図6は、給電設備2及び受電装置5からなる非接触充電装置1を示す概略ブロック図であり、給電設備2は、商用交流電源12から取出し、該電源12からの交流を交流直流変換器13により直流に変更する。更に、該直流をインバータ15により高周波に変換して一次側トランス11のコイル31に給電される。受電装置5は、上記一次側トランス11から電磁誘導により二次側トランス8に受電され、該二次側トランス8のコイル21で発生した高周波電圧が整流器9により直流電力に変換され、更に充電器10により調整されて二次電池7に充電される。なお、図5及び図6のブロック図は、基本構造のみを示した概略図である。また、上記交流直流変換器13により変換された直流が、電流計14a及び電圧計14bにより計測され、一次側トランス11に供給される電力が計測される。また、整流器9と充電器10との間に、電流計24a及び電圧計24bが配置され、整流器9からの直流を計測して、充電器10に供給される電力が計測される。
【0032】
充電を必要とする電気自動車又はプラグインハイブリッド車6は、所定の給電設備2のある駐車スペース3に進入して駐車する。この際、自動車6の下面にある二次側トランス8が、給電設備2の一次側トランス11に、両ケース25,35の広い平面が対向するように近接する。そして、自動車6の運転手は、充電要求信号を給電設備2に送信する。これにより、一次側トランス11のコイル31に高周波の交流電流が流れて、コア32に交流磁界が発生する。該コア32の磁束Jは、その両側の第2の部位32b,32bから、空間(ギャップ)Gを介してそれに近接配置されている二次側トランス8におけるコア22の両端の第2の部位22b,22bに伝達されて磁束結合される。該二次側トランス8は、上記コア22の磁束によりコイル21に交流電力が発生し、該誘起交流電力が整流器9により直流に変換され、更に充電器10を介して電池7に供給されて該二次電池7を充電する。
【0033】
この際、自動車6は、上記駐車スペース3への進入に際して、二次側トランス8に正対して駐車することは困難である。詳しくは、図4(a)に示すように、一次側トランス11のコア32の第2の部位32bと二次側トランス8のコアの第2の部位22bが正確に前後方向、左右幅方向及び平面での回動方向(自動車進入方向)を正確に一致することは困難である。本発明にあっては、自動車の進入が、正規の位置に対して、前後方向位置、左右幅方向位置及び進入角度が所定量の範囲でズレていても、一次側トランス11と二次側トランス8との間の空間Gでの磁束線Jが短くなる方向に両トランスのコア32,22は力を受ける。
【0034】
ここで、二次側トランス8は、ケース25に固定、即ち自動車6に一体に固定されているが、一次側トランス11のコア32は、ケース35に一体のボビン30に対して上記隙間S(S1,S2,S3)により移動自在に、かつボール36によりケース35に平面方向に移動自在に支持されている。従って、一次側トランス11のコア32は、上記磁束線Jにより引き付けられ、図4(b)に示すように、二次側トランス8のコアの第2の部位22b,22bに一次側トランス11のコアの第2の部位32b,32bが正対するように、該コア32が自動的に移動する。即ち、ボビン中空部30bとコア32の上下方向隙間S1によりコア32は、固定されずに移動可能となり、コア32は、ボビン鍔部30aと第2の部位32bとの間の隙間S3により前後方向に移動され、かつボビン中空部30bとコア32の左右方向の隙間S2により左右幅方向に移動され、更に該大きな隙間S2,S3によりコア32は平面内にて回動して、二次側トランス8のコア22に、一次側トランス11のコア32は、前後方向及び左右幅方向に一致しかつ回動方向に平行になるように正対する。これにより、一次側トランス11と二次側トランス8との間に所定空間Gが存在しても、高い効率で電力が供給される。
【0035】
なお、一次側トランス11と二次側トランス8との間には、所定空間Gが介在し、かつ磁束Jは、コイル31,21の高周波交流電力に基づく高周波交流磁界であるので、一次側トランス11のコア32がその重力に抗して磁力により持上げられることはない。また、コア32の移動範囲、特に第1の部位32aの長手方向(前後方向)の動きは、コアの第2の部位32bの側端がケース35に当接することにより規制され、該可動範囲において、第2の部位32bがボビン30の鍔部30aに当接することはない。これにより、ボビン30のケース35での固定は、接着等の簡単な固着手段で足りる。なお、コア32の前後方向の動きに限らず、左右幅方向及び回動方向の動きに対しても、コアの第2の部位32bがケース35に当接することにより規制されるようにしてもよい。
【0036】
ついで、本発明の主要部である受電装置5における短絡回路について、図5及び図6に沿って説明する。
【0037】
図5には、二次側トランス8と整流器9との間に、スイッチA及び抵抗Rが並列に接続されている短絡回路40を介在している。図6には、整流器9と充電器10との間に、スイッチB及び抵抗Rが並列に接続されている短絡回路40を介在している。いずれも、二次側トランス8と充電器10との間に上記短絡回路(スイッチA又はB並びに抵抗R)40を並列に接続することにより、二次側回路の抵抗が充電時よりも小さくなるため、二次側トランスの電流が充電時よりも増大し、それに合せて一次側トランス11の電流を増大する。従って、電流が増大することにより、一次側及び二次側の両コア22,23磁束密度も増大し、空間Gでの両コアの引き合う力が、充電時より増加する。
【0038】
これにより、一次側トランス11のコア32を二次側トランス8のコア22に正対すべく、素早く移動することが可能となり、位置補正を短時間で行うことができる。また、一次側トランスのコア32を大きな力で動かすことができるので、両トランスの位置ずれが大きい場合や、一次側トランスの動きが渋い場合でも、一次側コアの位置補正が可能となる。
【0039】
上記短絡回路40を有する本充電装置の作用を図7に沿って説明する。運転者が給電設備2のある駐車スペース3に自動車6を駐車し、充電要求信号を発する(二次側充電開始準備;S1)。該充電要求信号により、まず、短絡回路40のスイッチA又はBがオンに切換えられ(S2)、電源13から一次側トランス11に電力が供給され、前述したように、近接した空間Gを介しての電磁結合により、一次側トランス11と二次側トランス8との両コア32,33の間に磁束回路が形成される。(一次側給電開始;S3)
【0040】
この際、上記スイッチA又はBのオンにより短絡回路40を介しての接続により、二次側トランス8のコイル21に充電時よりも大きな電流が流れる。これにより、電磁結合により一次側トランス11においても、コイル31に大きな電流が流れて、空間Gを通る磁束密度も増大して、該空間を介して両コア22,23が引き合う力も増大する。
【0041】
上記引き合う力により、一次側トランス11のコア32が平面方向に移動して近接した位置となり、給電効率が向上する。給電設備2の電力供給量と、受電装置5の電力受電量とを比較して、給電効率が設定値ε%以上かを判断し(S4)、設定値ε%以下の場合、予め定められている設定時間Tsec上記一次側給電開始状態を保持する(S5)。上記給電効率の判断時点で設定値ε%以上の場合、並びに設定時間Tsec内で設定値ε%以上となった場合、充電準備は整ったと判断して、一次側給電を一旦オフにする(S6)。予め定めた時間Tsec以上、給電効率が所定値ε%以上にならない場合(S5;yes)、エラーとして、充電作業を停止すると共にその旨を運転者に警告する(S10)。
【0042】
一次側トランス11のコア32が適正に位置補正されて充電準備が整うと、短絡回路40のスイッチA又はスイッチBがオフされる(S7)。そして、再び一次側給電が開始(S8)、二次側充電が開始(S9)されて、近接した空間を介した一次側トランス11から二次側トランス8へ電磁誘導により電力が供給され、リチウムイオン電池等の二次電池7が充電される。
【0043】
図8は、図7の一部を変更した実施の形態を示すものであって、ステップ4,5,10が相違しているのみで他は同じなので、該相違部分のみを説明する。スイッチA又はBがオンして、短絡回路40が接続して、設定時間Tsec、強い磁力線により一次側トランス11のコア32が二次側トランス8のコア22に正対するように補正移動が行われる。所定の設定時間Tsecが経過すると(S11)、充電準備が整ったと判断して、一次側給電をオフする(S6)。即ち、上述した強い磁力線により、一次側トランス11のコア32が位置補正するのに要する時間Tsecが経過すると、両トランス11,8のコア32,22は充分に近接した位置に補正され、充電準備が整ったと判断する。
【0044】
なお、上述した実施の形態は、ケース35とコア32との間に支持部材であるボール36を介在して、コア32を平面方向に移動可能としたが、ボビン30とコア32の第1の部位32aとの隙間Sにボール又は低摩擦材等を介在して、コアを移動自在に支持してもよい。また、コア32を磁力により平面方向にのみ移動したが、コアをボビンに対して所定量上下方向に移動可能に、又はケース35を所定量上下方向移動可能にして、一次側コアを所定量上下方向にも移動して、二次側コアに更に近接するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態は、一次側トランス11のコア32を移動自在としたが、これを反対にして、一次側コア32をケース35に一体に固定し、二次側コア22を移動自在として、一次側コア32に対して二次側コア22が位置補正するようにしてもよい。
【0046】
上述した実施の形態は、ボビンをケースに固定し、コアのみを移動自在として、コイル及びボビンの重量がコアの移動の妨げとならないように構成したが、コア、ボビン及びコイルを一体に移動しても、またこれらを収納したケースごと移動してよい。更に、増大した磁束密度により両トランスを正対する位置に移動補正する実施の形態について説明したが、これに限らず、増大した磁束密度による適正位置(座標)の検出、その他の用途に適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 非接触充電装置
2 給電設備
3 駐車スペース
5 受電装置
7 電池
8 二次側トランス
9 整流器
10 充電器
11 一次側トランス
12 交流電源
13 交流直流変換器
20 ボビン
20b 中空部
21 コイル
22 コア
25 ケース
30 ボビン
30b 中空部
31 コイル
32 コア
40 短絡回路
A,B スイッチ
G 空間
J 磁束(線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から電力供給される一次側コイルと、該一次側コイルが巻回されたボビンと、磁性体からなるコアと、を有する一次側トランスと、
移動体に配置される電池に電力供給する二次側コイルと、該二次側コイルが巻回されたボビンと、磁性体からなるコアと、を有する二次側トランスと、を備え、
前記一次側コイルの通電により前記一次側トランスのコアに発生する磁束が、空間を介して前記二次側トランスのコアに伝達され、前記二次側コイルの誘起交流電力を前記電池に供給して充電してなる非接触充電装置において、
前記二次側コイルと前記電池を充電する充電器との間に、スイッチを介して短絡する短絡回路を並列に配置した、
ことを特徴とする非接触充電装置。
【請求項2】
前記移動体が、電気モータを駆動源とする自動車であり、かつ該自動車の床面近傍に前記二次側トランスが配置され、
前記一次側トランスが、給電設備に設けられ、かつ前記自動車が駐車し得るスペースに配置され、
前記一次側トランス及び前記二次側トランスの少なくとも一方が、移動自在に支持され、
前記スイッチのオンにより前記短絡回路を経由して流れる前記二次側コイルの電流に基づき発生する前記空間における磁束により、前記一次側トランス及び前記二次側トランスが正対する方向に、前記一次側トランス及び前記二次側トランスの少なくとも一方を移動してなる、
請求項1記載の非接触充電装置。
【請求項3】
前記一次側トランス及び前記二次側トランスは、上下方向に対して平面方向に広い扁平箱型のケースに収められ、
前記二次側トランスは、前記ボビンに前記コアが一体に固定されると共に、前記ボビン及び前記コアが前記ケースに固定され、
前記一次側トランスは、前記ボビンが前記ケースに固定され、前記コアが、前記ボビンに対して所定隙間を介在すると共に、前記ケースにその平面方向に移動自在な支持部材を介して支持され、
前記一次側トランスのコアが、前記二次側トランスのコアとの間での前記空間における磁束線の長さが短くなるように平面方向に移動してなる、
請求項2記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記電池への充電が開始される前に、前記短絡回路のスイッチをオンして、前記二次側コイルに流れる電流を増大してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載の非接触充電装置。
【請求項5】
前記二次側コイルから前記充電器を介して前記電池に電力を供給する充電状態にあっては、前記短絡回路のスイッチをオフしてなる、
請求項1ないし4のいずれか記載の非接触充電装置。
【請求項6】
移動体に配置される電池に電力供給する二次側コイルと、該二次側コイルが巻回されたボビンと、磁性体からなるコアと、を有する二次側トランスを備え、
一次側コイルの通電により一次側トランスのコアに発生する磁束が、空間を介して前記二次側トランスのコアに伝達され、前記二次側コイルに誘起される交流電力を整流器及び充電器を介して前記電池に供給してなる受電装置において、
前記二次側コイルと前記充電器との間に、スイッチを介して短絡する短絡回路を並列に配置した、
ことを特徴とする受電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−90393(P2013−90393A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227108(P2011−227108)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】