説明

非接触光書き込み装置

【課題】複数の半導体レーザビームによるライン方向の強度分布を均一化し、感熱記録媒体を非接触で均一に発色すること。
【解決手段】各pn接合面5−1〜5−nの各方向fを一致させて各半導体レーザ4−1〜4−nを設け、これら半導体レーザ4−1〜4−nから出力された各各コリメータレンズ8−1〜8−nにより感熱記録媒体1の記録面上に結像し、各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nにより感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fにディフォーカスして略均一なライン状のレーザビームに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサーマルヘッド等の加熱装置を直接接触することなく、非接触で感熱記録、感熱消去を可能とするリライタブルな感熱記録媒体の全面を非接触で均一に発色するライン光源に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料系、ジアゾ化合物系感熱材料を利用した感熱記録方式や、特定温度で発色と消色とを繰り返すことを可能とする可逆性の感熱記録紙等が存在する。この感熱記録紙は、例えばサーマルヘッド等の加熱装置を用いて加熱されて発色、消色される。このような感熱記録紙に対する記録方式には、例えばサーマルヘッド等の記録ヘッドを直接接触させる方式がある。
【0003】
感熱記録紙を用いた情報記録の技術としては、例えば特許文献1、2がある。特許文献1は、可逆性感熱記録媒体の画像の書き換えの際に、残像(発色むら)の無い良好な記録画像を得る初期化方法及び書き換え方法並びにその装置に関し、加熱温度又は加熱後の冷却速度の違いにより発色又は消色する可逆性感熱記録媒体の全面或いは記録領域をサーマルヘッドにより発色温度に加熱して発色させて記録層を均一化する操作を施すことを開示する。
【0004】
特許文献2は、複数の発光点を有するマルチキャビティーレーザチップを複数個並べて固定したレーザダイオードアレイを開示する。すなわち、特許文献2は、複数のマルチキャビティーレーザチップをそれぞれの活性層と平行な方向に発光点が1列に並ぶように配設し、集光光学系は、発光点の並び方向の開口径を当該並び方向に垂直な方向の開口径よりも小さく形成し、各マルチキャビティーレーザチップ毎に設けられた複数のコリメータレンズ及びこれらコリメータレンズにより平行化された複数のレーザビームをそれぞれ集光してマルチモード光ファイバーの端面で収束する集光レンズにより構成される合波レーザ装置を開示する。又、特許文献2は、レーザダイオードアレイの発光点側からシリンドリカルレンズ、結像レンズを配置することを開示する。
【特許文献1】特開2001−341429号公報
【特許文献1】特開2003−158332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、可逆性感熱記録媒体の発色条件の一つである発色温度まで加熱についてサーマルヘッド等の接触式ヘッドに頼り、もう一つの条件である急冷について室温と発色温度との差により生じる自然冷却によって実現しているため、外気温が高くなると自然冷却により要する時間が延び、発色濃度に差が生じる。
【0006】
特許文献2は、シリンドリカルレンズの屈折パワーの方向がマルチキャビティーレーザチップの並び方向でなく、マルチキャビティーレーザチップの並び方向に対して垂直な方向であり、マルチキャビティーレーザチップの並び方向のパワー分布が中心ほど高いガウス分布となる上、結像レンズの配置により決まるサイズ以上にライン長を長くできない。
【0007】
可逆性の感熱記録媒体に情報を記録する際には、感熱記録媒体の全面を均一に発色、例えばベタ黒等に発色し、この後に情報の記録を行う。一方、感熱記録媒体に対する記録方式には、例えばサーマルヘッド等の記録ヘッドを直接接触させる方式がある。この方式では、記録ヘッドを直接感熱記録媒体に接触させるため、記録ヘッドの磨耗、汚れ等が生じ易く、かつ感熱記録媒体の記録面が擦れて汚れたり、付着物によるショートや過剰な電力供給等による記録ヘッドの寿命を縮めることを引き起こす。このため、感熱記録媒体を非接触で均一に発色する方法が採られる。この方法としては、エネルギー分布の略均一な線状光源(ライン光源)が必要になるが、このようなライン光源は、特許文献1、2から実現できない。
【0008】
ライン光源は、例えば複数の半導体レーザを一方向に並べることにより構成できる。しかしながら、半導体レーザから出力される半導体レーザビームのエネルギー分布は、ガウス分布を示す。このため、複数の半導体レーザからそれぞれ出力される各半導体レーザビームにより形成される線状のプロファイルのレーザビームは、複数の半導体レーザの並べ方に応じた縞模様になる。
【0009】
本発明の目的は、複数の半導体レーザビームによるライン方向の強度分布を均一化し、感熱記録媒体を非接触で均一に発色できるライン光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一方向に搬送され、少なくとも感熱記録を可能とするリライタブルな感熱記録媒体の全面を非接触で均一に発色させる或いは消色させるライン光源において、感熱記録媒体の媒体面内において感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に配列され、それぞれ半導体レーザビームを出力する複数の半導体レーザと、複数の半導体レーザから出力される各半導体レーザビームをそれぞれ感熱記録媒体の記録面上に結像する複数の結像レンズと、感熱記録媒体の記録面上において複数の結像レンズにより結像された各半導体レーザビームの一部を重ね合わせ、感熱記録媒体の記録面上における各半導体レーザビームによる強度分布を複数の半導体レーザの配列方向に均一化する強度均一化光学系とを具備する非接触光書き込み装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の半導体レーザビームによるライン方向の強度分布を均一化し、感熱記録媒体を非接触で均一に発色できるライン光源を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は非接触光書き込み装置に用いるライン光源の外観構成図を示す。感熱記録媒体1は、特定温度の加熱制御により発色と消色とを繰り返し、感熱記録、感熱消去を可能とするリライタブルな可逆性の媒体である。この感熱記録媒体1は、図2に示すように融点180℃以上をかけると印字層中に存在する染料と顕色剤とが溶け合った状態になり、この状態から急冷することにより染料と顕色剤とが混ざり合ったまま結晶化して発色する。この感熱記録媒体1は、ゆっくり冷却すると、染料と顕色剤とがそれぞれ結晶化するので、発色状態を保てず、消去状態になる。さらに、感熱記録媒体1は、染料と顕色剤との融点以下でもある一定時間の加熱により染料と顕色剤とが徐々に分離して結晶化し、消去状態となる温度域、例えば約130℃〜170℃程度もある。
【0013】
ライン光源2とローラ3とが対向配置されている。ライン光源2は、上方側に設けられ、ローラ3は下方側に設けられている。ローラ3は、感熱記録媒体1を保持して例えば矢印A方向に搬送する。なお、感熱記録媒体1は、搬送ベルトB上に載置されて搬送される。
【0014】
図3はライン光源2の構成図を示す。このライン光源2は、感熱記録媒体1に情報を記録する直前に、感熱記録媒体1の全面を非接触で均一に発色(ベタ発色)或いは既に記録した画像がある場合には均一に消色(ベタ消色)、例えばベタ黒に発色或いはベタ消色させる。このライン光源2は、複数の半導体レーザ4−1〜4−nを備える。これら半導体レーザ4−1〜4−nは、高出力のマルチモード型である。これら半導体レーザ4−1〜4−nは、それぞれ積層構造の各pn接合面5−1〜5−nに各レーザ発光領域6−1〜6−nを有する。なお、各pn接合面5−1〜5−nが形成された各レーザ発光領域6−1〜6−nは、図3中における各半導体レーザ4−1〜4−nの上方に示す。
【0015】
各半導体レーザ4−1〜4−nの各レーザ発光領域6−1〜6−nは、例えばシングルモード型の半導体レーザのレーザ発光領域よりも各pn接合面5−1〜5−nの方向が長い。例えば、マルチモード型の半導体レーザ4−1〜4−nにおける各pn接合面5−1〜5−nの方向の各レーザ発光領域6−1〜6−nの長さは例えば50〜200μmであり、シングルモード型の半導体レーザにおけるレーザ発光領域6−1〜6−nの長さ例えば3μmよりも長い。これにより、マルチモード型の半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、光軸対象型レンズにより結像させると、各pn接合面5−1〜5−nの方向と同一方向に絞り難い特性を有する。
【0016】
図4(a)(b)は各半導体レーザ4−1〜4−nのうち半導体レーザ4−1から出力される半導体レーザビーム7−1をコリメータレンズ8−1により絞ったときのプロファイルの大きさを示し、同図(a)はpn接合面5−1の方向から見たプロファイルを示し、同図(b)はpn接合面5−1に対して垂直方向から見たプロファイルを示す。コリメータレンズ8−1は、半導体レーザビーム7−1を同図(a)に示すようにpn接合面5−1の方向fに対して垂直方向gに絞り、かつ同図(b)に示すようにpn接合面5−1の方向fと同一方向に絞り難い特性を有する。
【0017】
しかるに、ライン光源2において各半導体レーザ4−1〜4−nは、図3に示すように各pn接合面5−1〜5−nの各方向fを一致させて設けられている。なお、実際には各半導体レーザ4−1〜4−nをそれぞれレーザチップで用いる。
【0018】
複数のコリメータレンズ(結像レンズ)8−1〜8−nが各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nの光路上に設けられている。これらコリメータレンズ8−1〜8−nは、それぞれ各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nを感熱記録媒体1の記録面上に結像する。これらコリメータレンズ8−1〜8−nは、アナモフィックでなく光軸対称である。
【0019】
強度均一化光学系としての複数のシリンドリカルレンズ(アナモフィックレンズ)9−1〜9−nが各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像された各半導体レーザビーム7−1〜7−nの光路上に設けられている。これらシリンドリカルレンズ9−1〜9−nは、各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nの光路上にそれぞれ設けられている。これらシリンドリカルレンズ9−1〜9−nは、各半導体レーザ4−1〜4−nの並び方向に屈折パワーを有する。しかるに、これらシリンドリカルレンズ9−1〜9−nは、感熱記録媒体1の記録面上において各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像された各半導体レーザビーム7−1〜7−nの一部、すなわち各pn接合面5−1〜5−nの方向fと同方向における各半導体レーザビーム7−1〜7−nの各端部同士を互いに重ね合わせ、各半導体レーザビーム7−1〜7−nを方向fにディフォーカスし、感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nによる強度分布を各半導体レーザ4−1〜4−nにおける各pn接合面5−1〜5−nの方向f、換言すれば各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化する。
【0020】
次に、上記の如く構成された光源によるベタ発色の動作について説明する。
各半導体レーザ4−1〜4−nは、それぞれ各半導体レーザビーム7−1〜7−nを出力する。これら半導体レーザビーム7−1〜7−nは、それぞれ各コリメータレンズ8−1〜8−nにより絞られて感熱記録媒体1の記録面上に結像する。
このとき、各半導体レーザ4−1〜4−nは、マルチモード型であり、これら半導体レーザ4−1〜4−nから出力された各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像させると、各pn接合面5−1〜5−nの方向と同一方向に絞り難い特性を有する。従って、各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、各pn接合面5−1〜5−nの方向fに対して垂直方向gに絞られ、かつpn接合面5−1〜5−nの方向fと同一方向に殆ど絞られない。
【0021】
これら各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像されたライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、それぞれ各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nにより感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fと同方向における各端部同士が互いに重ね合わされ、かつ方向fにディフォーカスされた略均一なライン状のレーザビームに形成されて感熱記録媒体1の記録面上に照射される。
【0022】
この感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nの強度分布は、図3に示すように各半導体レーザ4−1〜4−nにおける各pn接合面5−1〜5−nの方向f、すなわち各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化する。このときの感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、感熱記録媒体1の記録面上の温度を発色温度以上にする発色閾値以上のパワーを有する。この結果、感熱記録媒体1の記録面上には、例えばベタ黒のライン状の記録線Lが発色する。
【0023】
ローラ3は、感熱記録媒体1を保持して例えば矢印A方向に搬送するので、この搬送される感熱記録媒体1の記録面上にライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nが照射されることにより感熱記録媒体1の記録面の全面は、例えばベタ黒に発色される。
【0024】
このように上記第1の実施の形態によれば、各pn接合面5−1〜5−nの各方向fを一致させて各半導体レーザ4−1〜4−nを設け、これら半導体レーザ4−1〜4−nから出力された各半導体レーザビーム7−1〜7−nを各コリメータレンズ8−1〜8−nにより感熱記録媒体1の記録面上に結像し、各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nにより感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fにディフォーカスして略均一なライン状のレーザビームに形成する。これにより、各半導体レーザ4−1〜4−nにおける各pn接合面5−1〜5−nの方向f、すなわち各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向にレーザパワーを略均一化したライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nを形成できる。この結果、感熱記録媒体1の記録面の全面を例えばベタ黒に発色できる。又、各半導体レーザ4−1〜4−nを用いることにより外気温に影響されずに安定して感熱記録媒体1の記録面の全面を略均一にベタ発色できる。
【0025】
感熱記録媒体1は、消色温度が発色温度よりも低く、各半導体レーザビーム7−1〜7−n等の光による記録では、先ずベタ発色し、この後に各半導体レーザビーム7−1〜7−nを感熱記録媒体1の記録面上にスキャンさせて消色する方法を採用する方が各半導体レーザビーム7−1〜7−nのエネルギーが低くでき、或いは同じエネルギーであれば感熱記録媒体1の搬送スヒードを速くすることができる。このような事から先ず、感熱記録媒体1の記録面全面を安定してベタ発色することが必要である。本ライン光源2は、かかる要求に応じて感熱記録媒体1の記録面全面を安定してベタ発色することができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図3と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図5は非接触光書き込み装置に用いるライン光源2の外観構成図を示す。本実施の形態の上記第1の実施の形態と相違するところは、各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nに代えて例えば1枚のレンチキュラーレンズ10を用いた点である。このレンチキュラーレンズ10は、カマボコ形の微小な複数のレンズを形成している。このレンチキュラーレンズ10は、各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nの全ての進行領域をカバーするサイズに形成されている。このレンチキュラーレンズ10は、各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像された各半導体レーザビーム7−1〜7−nを感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fにディフォーカスして略均一なライン状のレーザビームに形成する。
【0027】
このようなライン光源2であれば、各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像されたライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、レンチキュラーレンズ10によって感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fにディフォーカスして略均一なライン状のレーザビームに形成され、感熱記録媒体1の記録面上に照射される。
【0028】
感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nの強度分布は、図5に示すように各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化する。このときの感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、感熱記録媒体1の記録面上の温度を発色温度以上にする発色閾値以上のパワーを有する。この半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、上記第1の実施の形態により得られるレーザパワーよりも均一化されている。この結果、感熱記録媒体1の記録面上には、例えばベタ黒のライン状の記録線Lが発色する。
【0029】
このように上記第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することは言うまでもなく、レンチキュラーレンズ10を用いることによって各半導体レーザ4−1〜4−nの個数に対応した個数の各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nを設ける必要が無く、かつ各半導体レーザ4−1〜4−nに対する各コリメータレンズ8−1〜8−nと各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nとの光軸調整をする必要もない。レンチキュラーレンズ10は、屈折パワーの方向のみを合わせればどこに配置してもよく、光軸調整等が不要である。
【0030】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図3と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図6は非接触光書き込み装置に用いるライン光源2の外観構成図を示す。本実施の形態の上記第1の実施の形態と相違するところは、各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nに代えて例えば1枚の光学素子11を用いた点である。この光学素子11は、各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像されたライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nを各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向、すなわち各半導体レーザ4−1〜4−nの各pn接合面5−1〜5−nの方向fにのみ一次元方向に拡散する。この光学素子11は、例えば回折格子又は拡散板である。
【0031】
このようなライン光源2であれば、各コリメータレンズ8−1〜8−nにより結像されたライン状の各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、光学素子11によって感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fのみの一次元方向に拡散されて略均一なライン状のレーザビームに形成され、感熱記録媒体1の記録面上に照射される。
【0032】
感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nの強度分布は、図6に示すように各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化する。このときの感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、感熱記録媒体1の記録面上の温度を発色温度以上にする発色閾値以上のパワーを有する。この半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、上記第1の実施の形態により得られるレーザパワーよりも均一化されている。この結果、感熱記録媒体1の記録面上には、例えばベタ黒のライン状の記録線Lが発色する。
【0033】
このように上記第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することは言うまでもなく、光学素子11を用いることによって上記第2の実施の形態と同様に、各半導体レーザ4−1〜4−nの個数に対応した個数の各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nを設ける必要が無く、かつ各半導体レーザ4−1〜4−nに対する各コリメータレンズ8−1〜8−nと各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nとの光軸調整をする必要もない。光学素子11は、拡散方向を合わせればどこに配置してもよく、光軸調整等が不要である。
【0034】
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図3と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図7は非接触光書き込み装置に用いるライン光源2の外観構成図を示す。アナモフィックな円柱状のレンズ(ロッドレンズ)12が各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nの進行光路上に設けられている。このロッドレンズ12は、感熱記録媒体1の記録面上において各半導体レーザ4−1〜4−nから出力された各半導体レーザビーム7−1〜7−nの一部を重ね合わせ、感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nによる強度分布を各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化する。
【0035】
図8(a)(b)は各半導体レーザ4−1〜4−nから出力される各半導体レーザビーム7−1〜7−nをロッドレンズ12により絞ったときのプロファイルの大きさを示し、同図(a)は各pn接合面5−1〜5−nの方向から見たプロファイルを示し、同図(b)は各pn接合面5−1〜5−nに対して垂直方向から見たプロファイルを示す。ロッドレンズ12は、各半導体レーザビーム7−1〜7−nを同図(a)に示すように各pn接合面5−1〜5−nの方向fに対して垂直方向gに絞る、例えば感熱記録媒体1の記録面上において100μmに絞る。ロッドレンズ12は、同図(b)に示すように各pn接合面5−1〜5−nの方向fと同一方向に絞る作用を有しない。各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、各pn接合面5−1〜5−nの方向fに例えば3mm以上のライン状のレーザビームに形成される。なお、図9(a)(b)はロッドレンズ12により絞られた各半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーを示す。これら半導体レーザビーム7−1〜7−nのレーザパワーは、発色閾値以上を有する。
【0036】
このようなライン光源2であれば、各半導体レーザ4−1〜4−nから出力された各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、ロッドレンズ12によって各pn接合面5−1〜5−nの方向fに対して垂直方向gに絞られると共に、各pn接合面5−1〜5−nの方向fと同一方向に絞ることをしない。これにより、各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、感熱記録媒体1の記録面上において各pn接合面5−1〜5−nの方向fに対して垂直方向gにのみに絞られた一次元方向に略均一なライン状のレーザビームに形成され、感熱記録媒体1の記録面上に照射される。
【0037】
感熱記録媒体1の記録面上における各半導体レーザビーム7−1〜7−nを合わせた強度分布は、図10に示すように各半導体レーザ4−1〜4−nの配列方向に均一化され、かつレーザパワーPは、各半導体レーザビーム7−1〜7−nの各個別のレーザパワーJよりも大きくなり、感熱記録媒体1の記録面上の温度を発色温度以上にする発色閾値以上のパワーを有する。この結果、感熱記録媒体1の記録面上には、例えばベタ黒のライン状の記録線Lが発色する。
【0038】
このように上記第4の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することは言うまでもなく、ロッドレンズ12を用いることによって上記第2の実施の形態と同様に、各半導体レーザ4−1〜4−nの個数に対応した個数の各コリメータレンズ8−1〜8−n及び各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nを設ける必要が無く、かつ各半導体レーザ4−1〜4−nに対する各コリメータレンズ8−1〜8−nと各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nとの光軸調整をする必要もない。
【0039】
次に、上記各実施の形態に用いる各半導体レーザ4−1〜4−nについて説明する。
マルチモード型の各半導体レーザ4−1〜4−nは、各pn接合面5−1〜5−nに平行な方向に各レーザ発光領域6−1〜6−nが細長く生じる。これらレーザ発光領域6−1〜6−nの長さは、例えば50〜200μm程度であり、各pn接合面5−1〜5−nに対して垂直方向の各レーザ発光領域6−1〜6−nの長さ数μmに対して10倍以上の長さを有する。これにより、通常の軸対称光学系を用いた場合での結像位置における各半導体レーザビーム7−1〜7−nのビーム径は、各レーザ発光領域6−1〜6−nの長さに各コリメータレンズ8−1〜8−nによる結像倍率を掛けた大きさになる。しかるに、各半導体レーザビーム7−1〜7−nは、感熱記録媒体1の搬送方向Aに対して集光され、かつ搬送方向Aに対して垂直方向に拡散された1次元状のラインのレーザビームに形成する必要がある。このような場合、各半導体レーザビーム7−1〜7−nのプロファイルがそのライン状のレーザビームのライン方向に長くなるように各半導体レーザ4−1〜4−nを配置すれば、エネルギー利用効率は高くなる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、上記第4の実施の形態においてロッドレンズ12を用いたが、これに限らず、例えば1つのシリンドリカルレンズに代えることも可能である。このシリンドリカルレンズ及び上記実施の形態に用いた各シリンドリカルレンズ9−1〜9−nは、両面が円筒形状又は一面が円筒形状に形成されたものを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るライン光源の第1の実施の形態を適用した非接触光書き込み装置の概観図。
【図2】同光源によりベタ発色させる感熱記録媒体の記録・消去特性を示す図。
【図3】同光源の構成図。
【図4】同光源における半導体レーザから出力される半導体レーザビームをコリメータレンズにより絞ったときのプロファイルの大きさを示す図。
【図5】本発明に係るライン光源の第2の実施の形態の構成図。
【図6】本発明に係るライン光源の第3の実施の形態の構成図。
【図7】本発明に係るライン光源の第4の実施の形態の構成図。
【図8】同光源におけるロッドレンズにより絞られた半導体レーザビームのプロファイルを示す図。
【図9】同光源におけるロッドレンズにより絞られた半導体レーザビームのレーザパワーを示す図。
【図10】同光源におけるロッドレンズにより絞られた各半導体レーザビームを合わせたレーザパワーを示す図。
【符号の説明】
【0042】
1:感熱記録媒体、2:ライン光源、3:ローラ、4−1〜4−n:半導体レーザ、5−1〜5−n:pn接合面、6−1〜6−n:レーザ発光領域、7−1〜7−n:半導体レーザビーム、8−1〜8−n:コリメータレンズ(結像レンズ)、9−1〜9−n:シリンドリカルレンズ、10:レンチキュラーレンズ、11:光学素子(回折格子又は拡散板)、12:ロッドレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に搬送され、少なくとも感熱記録を可能とするリライタブルな感熱記録媒体の全面を非接触で均一に発色させる或いは消色させるライン光源において、
前記感熱記録媒体の媒体面内において前記感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に配列され、それぞれ半導体レーザビームを出力する複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザから出力される前記各半導体レーザビームをそれぞれ前記感熱記録媒体の記録面上に結像する複数の結像レンズと、
前記感熱記録媒体の記録面上において前記複数の結像レンズにより結像された前記各半導体レーザビームの一部を重ね合わせ、前記感熱記録媒体の前記記録面上における前記各半導体レーザビームによる強度分布を前記複数の半導体レーザの配列方向に均一化する強度均一化光学系と、
を具備することを特徴とするライン光源。
【請求項2】
前記強度均一化光学系は、前記複数の半導体レーザにそれぞれ対応して設けられた複数のシリンドリカルレンズを有することを特徴とする請求項1記載のライン光源。
【請求項3】
前記強度均一化光学系は、レンチキュラーレンズを有することを特徴とする請求項1記載のライン光源。
【請求項4】
前記強度均一化光学系は、前記複数の半導体レーザからそれぞれ出力される前記各半導体レーザビームを前記複数の半導体レーザの配列方向に拡散する光学素子を有することを特徴とする請求項1記載のライン光源。
【請求項5】
前記光学素子は、回折格子又は拡散板を有することを特徴とする請求項4記載のライン光源。
【請求項6】
一方向に搬送され、少なくとも感熱記録を可能とするリライタブルな感熱記録媒体の全面を非接触で均一に発色させる或いは消色させるライン光源において、
前記感熱記録媒体の媒体面内において前記感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に配列され、それぞれ半導体レーザビームを出力する複数の半導体レーザと、
前記感熱記録媒体の記録面上において前記複数の半導体レーザから出力された前記各半導体レーザビームの一部を重ね合わせ、前記感熱記録媒体の前記記録面上における前記各半導体レーザビームによる強度分布を前記複数の半導体レーザの配列方向に均一化する円柱状のレンズと、
を具備することを特徴とするライン光源。
【請求項7】
前記複数の半導体レーザは、それぞれ接合面が形成された複数のチップを有し、前記各接合面をそれぞれ前記感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に配置することを特徴とする請求項1又は6記載のライン光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−137243(P2008−137243A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324958(P2006−324958)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】