説明

非接触式ICタグ

【課題】本発明は、使用者がICタグを読み取る際、タグをどの方向から読んでもリーダライタにて安定した読み取りを可能とする安価でコンパクトなタグを提供するものである。
【解決手段】絶縁部材からなるタグ基材2と、少なくとも一つ以上の折れ曲がり部6でそれぞれ接続された複数の線分7,8からなる直線列の形状をなすアンテナ3と、そのアンテナ3に接続されるICチップ4とを有するICタグ1である。また、上記において、アンテナ3の端から折れ曲がり部6まで、および、折れ曲がり部から折れ曲がり部までのそれぞれを、アンテナ3の線分7,8とするとき、一つのアンテナ3を構成するすべての線分7,8の長さL1,L2が、12mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触式ICタグに関し、さらに詳しくは非接触式ICタグのアンテナ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノ・ヒトを管理するシステムとして、RFID(Radio Frequency Identification)/ICタグが製造、物流、販売、リサイクルのすべての業態で注目されている。このRFID技術は、従来管理システムとして利用されているバーコードに比べ、読み取り性が高いという利点があることから、電子マネーや入退場カードなどとして広く使用されている。
【0003】
主に使用される周波数帯として、13.56MHz帯、UHF帯、2.45GHz帯がある。特にUHF帯/2.45GHz帯を用いる電波方式の非接触式ICタグ(非接触式ICタグを、以下、単に「ICタグ」という。)は、リーダライタから信号を送信することにより信号受信・信号送信を行い、数十cm〜数mの通信が可能であることから、現在、物流管理や製造履歴管理、セキュリティ管理、偽造防止等を目的にシステムの構築が進められている。
【0004】
ICタグは通常信号を送受信するアンテナと、その信号を処理するICチップ等の電子デバイスと、それらを保持する基板からなる。このICチップを送受信アンテナに実装したものをインレットと呼び、ICタグの中間形態として利用されている。
【0005】
上記のアンテナとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の絶縁基板上に銅やアルミニウムを貼り付けたり、または銀ペーストなどを印刷し形成したものがある。2.45GHz帯用として、直線状にアンテナを印刷または貼り付けて形成したダイポール型アンテナが知られている。励振スリットを有するこのダイポール型アンテナ構造は、スリットの幅及び長さを変えることで、アンテナのインピーダンスとICチップの入力インピーダンスマッチングが可能であり、良好な通信特性を得ることができる。
【0006】
ICチップの例として、無線通信用回路や固体識別用の情報を書き込むためメモリから構成される、寸法1mm×1mmまたはそれ以下の小型ICチップが開発されている。2.45GHz帯ICチップとして、例えば、株式会社日立製作所により開発された、ミューチップ(登録商標)が知られている。このミューチップ(登録商標)では、外部電極が表裏面に1個ずつ形成されたICチップを励振スリット型ダイポールアンテナに挟み込む構造が開発されている(以下、「両面実装」という。)(例えば、特許文献1参照。)。また、外部電極が表裏面に1個のチップ「以下、「片面電極チップ」という。)も知られている。
【特許文献1】特開2004−127230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製造、物流、販売等の業界において、ICタグにより効率的な管理システムの構築には、全ての製品商品にICタグを取り付ける必要があり、そのためにはICタグの低コスト化が必須である。また、その膨大な処理数から、ICタグを種々の形状の製品商品に取り付けても、容易に読み取れる技術が不可欠である。
【0008】
一方、絶縁樹脂などで成形したICタグを用い上位端末であるリーダライタと信号の送受信を行う際に、そのアンテナの形状とリーダライタの位置関係から、信号送受信の指向性があり、全方位からの読み取り性が低いという課題があった。また、全方位からの読み取り性を上げるためにはICタグ1つに対し、インレットを2つ以上用いる必要があり、高コスト、コンパクト化困難等の課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、使用者がICタグを読み取る際、読み取り指向性が小さく、タグをいろいろな方向から読んでもリーダライタにて安定した読み取りを可能とする安価でコンパクトな非接触式ICタグを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁部材からなるタグ基材と、そのタグ基材上に設けられ、少なくとも一つ以上の折れ曲がり部と、その折れ曲がり部でそれぞれ接続された複数の線分からなる直線列の形状をなすアンテナと、そのアンテナに接続されるICチップとを有する非接触式ICタグであることを要旨とする。本発明において、複数の線分の長さがすべて12mm以上であることが好ましい。また、複数の線分のうち、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜2.5であることが好ましい。また、隣り合う線分のなす折れ曲がり角度が、45°〜135°であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者がICタグを読み取る際、読み取り指向性が小さく、タグをいろいろな方向から読んでもリーダライタにて安定した読み取りを可能とする安価でコンパクトな非接触式ICタグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面で説明する。なお、以下に記載したものは最良の形態の一例であり、これらに限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る非接触式ICタグ1の一例を示す平面図である。非接触式ICタグ1は、上位端末であるリーダライタと信号の送受信を行う。非接触式ICタグ1は、絶縁部材からなるタグ基材2と、タグ基材2上に設けられ、折れ曲がり部6でそれぞれ接続された複数の線分7,8からなる直線列の形状をなすアンテナ3と、アンテナ3に接続されるICチップ4とを有する。
【0014】
タグ基材2としては、例として0.76mm厚のPET基材を用いることができる。またリライト機能を有するロイコサーマル材料も利用できる。アンテナ3としては、銅またはアルミニウムの箔からエッチングにより形成した回路を用いることができる。また導電性ペーストを印刷法によって形成したものを用いることができる。この中でも比較的低抵抗であるため銅、アルミニウムが好適である。
【0015】
アンテナ3は、一つ以上の折れ曲がり部6を有する形状である。図1に示す例では、1つの折れ曲がり部6を有し、アンテナ3をL字状に形成している。折れ曲がり部は1つ以上であることが好ましく、1〜4個の折れ曲がり部があることが好適である。この折れ曲がり部6は、長いアンテナ3を図1に示した形状のようにプレスして屈曲させて形成しても好適である。また、導電ペーストの印刷、銅やアルミニウム箔のエッチングによって図1に示した形状に形成すると、コンパクト化の観点からより非常に好適である。
【0016】
アンテナ3の長さ方向の端部から折れ曲がり部6まで、および、折れ曲がり部が複数ある場合には隣り合う折れ曲がり部の間のそれぞれの区間を、アンテナ3の線分7,8とするとき、一つのアンテナ3を構成するすべての線分7,8の長さL1,L2が、12mm以上であるのが好ましい。アンテナ3の各方向の線分7,8を12mm以上とすることにより、各線分7,8の長さL1,L2のバランスがある程度確保されるので、読み取り指向性が小さく、タグをいろいろな方向から読んでも通信NGになりにくい。このため、リーダライタにて安定した読み取りが可能となる。さらに、一つのアンテナ3を構成するすべての線分7,8の長さL1,L2が20mm以上であると、指向性の平坦化の観点から好ましい。
【0017】
一つのアンテナ3を構成する線分7,8の中で、最短の線分(例えば線分7)に対する最長の線分(例えば線分8)の長さ比が、1.0〜2.5であるのが好ましい。これによれば、アンテナ3の各方向の線分7,8の長さL1,L2のバランスが確保されるので、読み取り指向性が小さく、ICタグ1をいろいろな方向から読んでも通信NGになりにくい。このため、リーダライタにて安定した読み取りが可能となる。更に、一つのアンテナ3を構成する線分7,8の中で、最短の線分(例えば線分7)に対する最長の線分(例えば線分8)の長さ比が、1.0〜1.2であると、読み取り距離の関係からより好ましい。
【0018】
アンテナ3の折れ曲がり角度θは、直角に対し±45°以内(45°〜135°)であるのが好ましい。折れ曲がり角度θは、この範囲内において、直角に近いほど読み取り距離の観点から好適である。
【0019】
ICチップ4の実装方法としては、例えばICチップ4としてミューチップ(登録商標)を用いる場合、両面実装を利用できる。また、ミューチップ(登録商標)の片面電極チップを用いる場合、接着剤や超音波による実装方法も利用できる。
【0020】
ICタグ1に用いるICチップ4の大きさに特に制限はないが、より小さいもの、例えば、ミューチップ(登録商標)が寸法0.5mm×0.5mm以下と小型であり好適である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
まず、実施例1〜12に係るICタグ1の作製方法について説明する。50μm厚のアルミニウム箔と、10μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムとを張り合わせた基材を、エッチング加工して所定のパターンを形成し、タグ基材2上で少なくとも一つ以上の折れ曲がり部を有する、アンテナ幅2mmのダイポール型アンテナ3を作製した。ICチップ4としてミューチップ(登録商標)の片面電極チップを、基材2のアルミニウム箔をエッチングして形成したアンテナ3に接着し、その後総厚0.76mmのPET基材でラミネートし、実施例1〜12に係るICタグ1を作製した。
【0023】
図2に実施例1〜12に係るICタグ1の読取方法を示す。ICタグ1を3次元の3方向A、B、Cからリーダライタ(株式会社日立国際電気製、MRJ300、出力300mW)5にて読み取り評価する。
【0024】
比較例として、50μm厚のアルミニウム箔と、10μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムとを張り合わせた基材を、エッチング加工して所定のパターンを形成し、タグ基材上では折れ曲がりを有しない、アンテナ幅2mmのダイポール型アンテナを作製した。これ以外の作製方法は、実施例1〜12と同様である。比較例についても実施例1〜12と同様にリーダライタ5を用いて読み取り評価する。
【0025】
本発明の実施例1〜12と比較例について、アンテナ形状と読み取り距離の関係を比較する。図3に、実施例1〜12及び比較例のアンテナ形状及び線分長を示す。また、表1に、実施例1〜12及び比較例の最長/最短長さ、最長/最短長さ比、及び読み取り距離の試験結果を示す。
【表1】

【0026】
実施例1〜12は、アンテナ3の形状が、タグ基材2上で少なくとも一つ以上の折れ曲がりを有する。実施例1〜12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも読み取りが可能であった。実施例1〜12は、アンテナ3の折れ曲がり角度は、直角に対し±45°以内である。また、実施例1〜4、6〜10、12は、少なくとも1箇所のアンテナ3の折れ曲がり角度が直角である。
【0027】
実施例1〜3、5、7〜9、11、12は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、12mm以上である。実施例1〜3、5、7〜9、11、12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が20mm以上であった。
【0028】
実施例1〜3、7〜9、12は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、12mm以上であり、かつ少なくとも1箇所のアンテナ3の折れ曲がり角度が直角である。実施例1〜3、7〜9、12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が94mm以上であった。
【0029】
実施例1〜5、7〜9、11、12は、一つのアンテナ3を構成する線分の中で、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜2.5である。実施例1〜5、7〜9、11、12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が19mm以上であった。
【0030】
実施例1〜3、5、7〜9、11、12は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、12mm以上であり、かつ一つのアンテナ3を構成する線分の中で、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜2.5である。実施例1〜3、5、7〜9、11、12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が20mm以上であった。
【0031】
実施例2、7、9、12は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、12mm以上であり、少なくとも1箇所のアンテナ3の折れ曲がり角度が直角であり、一つのアンテナ3を構成する線分の中で、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜1.2である。実施例2、7、9、12は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が107mm以上であった。
【0032】
実施例2、7は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、12mm以上であり、少なくとも1箇所のアンテナ3の折れ曲がり角度が直角であり、一つのアンテナ3を構成する線分の中で、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜1.2であり、隣り合う折れ曲がりの方向が異なる。実施例2、7は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が130mm以上であった。
【0033】
実施例2は、一つのアンテナ3を構成するすべての線分の長さが、20mm以上であり、少なくとも1箇所のアンテナ3の折れ曲がり角度が直角であり、一つのアンテナ3を構成する線分の中で、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜1.2であり、隣り合う折れ曲がりの方向が異なる。実施例2は、読取方向A、B、Cの何れの方向からも、読取距離が136mm以上であった。
【0034】
比較例では、読取方向Aでは読み取れなかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形体に係る非接触式ICタグの平面図である。
【図2】本発明の実施例に係る非接触式ICタグの読取方向を説明するための概略図である。
【図3】本発明の実施例に係る非接触式ICタグのアンテナ形状/線分長を表す表である。
【符号の説明】
【0036】
1 ICタグ
2 基材(タグ基材)
3 アンテナ
4 ICチップ
5 リーダライタ
6 折れ曲がり部
7,8 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材からなるタグ基材と、
該タグ基材上に設けられ、少なくとも一つ以上の折れ曲がり部でそれぞれ接続された複数の線分からなる直線列の形状をなすアンテナと、
該アンテナに接続されるICチップ
とを備えることを特徴とする非接触式ICタグ。
【請求項2】
前記複数の線分の長さがすべて12mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の非接触式ICタグ。
【請求項3】
前記複数の線分のうち、最短の線分に対する最長の線分の長さ比が、1.0〜2.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触式ICタグ。
【請求項4】
隣り合う前記線分のなす折れ曲がり角度が、45°〜135°であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触式ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−273103(P2009−273103A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242620(P2008−242620)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】