説明

非接触ICカードシステム

【課題】非接触ICカードにアクセス可能とするリーダライタ端末自身がLANインタフェースを持たない場合でも、リーダライタ端末とサービスサーバとを連携させて新たなサービスの提供を可能とする非接触ICカードシステムを提供する。
【解決手段】リーダライタ端末100には、電子マネー搭載の非接触ICカードと非接触で情報のやりとりをおこなう非接触IC通信機能110、決済内容等の表示をおこなう表示機能120、上位端末との間で決済にかかる情報のやりとりをシリアル通信プロトコルでおこなう対上位端末通信機能130、および、これら各機能の制御をおこなう制御機能140を有している。また上位端末200には、POSアプリケーション210の外に、ネットワーク300を介してサービスサーバ400との間でメッセージのやりとりをおこなう対サーバ通信機能220、および、対決済端末通信機能230がドライバソフトウェアとして組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタ(Reader/Writer)装置がサーバなどと通信することによって非接触IC(Integrated Circuit)カード所有者に所定のサービスを提供する非接触ICカードシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、近年、電子マネーや会員サービス、入退室管理など様々な分野で利用されている。非接触ICカードは、IC(Integrated Circuit)によるデータ保護、暗号通信などによるセキュリティの高さに加え、翳すだけで使えるという便利さが特長である。
【0003】
たとえば、下記特許文献1に提示されている情報処理システムでは、非接触ICカード(単に、ICカードともいう)をポイントの累積点数に応じて商品等の割引などの特典を提供可能にするシステムに取り入れている。そのために、特許文献1では、特定の販売店内に非接触でICカード10の読み書きがおこなえるリーダライタRWを設け、該リーダライタRWはICカード10に格納されている電子マネーデータや累積されたポイントデータなどを読み取り、また対価支払い完了に伴う獲得ポイント及びその累積点数などに関する書き込みデータをICカード10に格納し、リーダライタRWはPOS端末21を経由して当該POS端末21を含む複数のPOS端末を制御する制御装置23と通信する。そして特許文献1の制御装置23は、リーダライタRWを介して読み取ったICカード10に格納されているデータを公衆回線網を介してポイント付与の全体を管理する中央管理装置41に送信し、中央管理装置41でポイント付与の全体を一元的に管理するようにしている。また中央管理装置41はウェブサーバ5、情報通信網を介して利用者宅用設備4のパソコン45に接続可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−126998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触ICカードを有効利用した新たなサービスの提供を想定した場合、リーダライタ(Reader/Writer)端末をネットワークを介してサービスの提供をおこなうサービスサーバに接続してサービス処理を一元的に管理するシステムが考えられる。
【0006】
しかし上述した特許文献1に開示される従来技術では、リーダライタRWをサービスサーバと通信させるためには、リーダライタRWがPOS端末21経由でPOS端末を制御する制御装置23に接続されていることから制御装置23を介さずにPOS端末21にサービスサーバとの通信を仲介処理する機能の追加が必要となり、以下に示すような課題が生じる。すなわち、サービスサーバとの通信仲介処理をPOS端末の機種ごとに開発することになるので、開発の工数および期間が必要となるという課題がある。また、サービスサーバとPOS端末との通信データはサービス内容によって異なるため、新しいサービスを導入するたびにPOS端末の改造が必要となり、新サービスの導入に伴う改造の工数および期間が必要となるという課題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、電子マネー搭載の非接触ICカード(携帯端末を含む)にアクセス可能とするリーダライタ端末自身がLANインタフェースを持たない場合でも、リーダライタ端末とサービスを提供するサーバを連携させて新たなサービスの提供を可能とする非接触ICカードシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる非接触ICカードシステムは、リーダライタ端末とサービスサーバとの間に設置される上位端末は、リーダライタ端末との通信機能において、通信データに、データの送信先が上位端末宛であるか、サービスサーバ宛であるかを識別するための情報を格納する領域を設けて通信データを識別するよう構成している。
【0009】
また本発明にかかる非接触ICカードシステムは、上位端末の対リーダライタ端末用通信ドライバが、上記した領域を参照し、リーダライタ端末から受信した通信データが上位端末宛であれば上位端末におけるアプリケーションソフトウェアに渡し、サービスサーバ宛であれば、上位端末におけるアプリケーションソフトウェアには影響を与えずにサービスサーバに転送する。また上記した対サーバ用通信ドライバは、サービスサーバから受信した通信データが、リーダライタ端末宛であれば、上位端末におけるアプリケーションソフトウェアには影響を与えずにリーダライタ端末に転送するよう構成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子マネー搭載の非接触ICカード(携帯端末を含む)にアクセス可能とするリーダライタ端末がLANインタフェースを持たない場合でも、上位端末におけるアプリケーションソフトウェア(例えば、POSアプリケーションソフトウェア)に変更を加えることなく、リーダライタ端末とサービスサーバとを連携させたサービスの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触ICカードシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサービスの流れとしての通信シーケンスを示す図である。
【図3】本発明の実施形態で使用するメッセージフォーマットを示す図である。
【図4】本発明の実施形態で使用する決済要求コマンドメッセージ例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態で使用するスルーコマンドメッセージ例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態で使用するHTTPリクエスト例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態で使用するHTTPレスポンス例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態で使用するスルーレスポンスメッセージ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る非接触ICカードシステムの構成を示すブロック図であり、本実施形態では、決済端末(リーダライタ端末)100が電子マネー搭載の非接触ICカード(携帯端末を含む)による決済に連動してサービスサーバと通信して会員ポイント付与をおこなうサービスについて説明する。決済端末(リーダライタ端末)100には、電子マネー搭載の非接触ICカード(携帯端末を含む)と非接触で情報のやりとりをおこなう非接触IC通信機能110、決済内容等の表示をおこなう表示機能120、上位端末との間で決済にかかる情報のやりとりをシリアル通信プロトコルでおこなう対上位端末通信機能130、および、これら各機能の制御をおこなう制御機能140を有している。また上位端末(POSレジスタ)200には、POSアプリケーションソフトウェア(以下、POSアプリケーションと略称する)210の外に、ネットワーク300を介してサービスサーバ400との間でメッセージのやりとりをおこなう対サーバ通信機能220、および、対決済端末(リーダライタ端末)通信機能230がドライバソフトウェアとして組み込まれる。
【0013】
本発明の実施形態に係る非接触ICカードシステムの動作を説明する前に、まず図3を用いて本発明の実施形態で使用するメッセージフォーマットを説明する。メッセージフォーマットは、メッセージ種別とメッセージ長、メッセージ本体とFCS(Frame Check Sequence)からなっている。図3において先頭のメッセージ種別によってメッセージを次のように区分けして使用する。すなわち種別01はPOSレジスタから決済端末へのコマンドに使用し、種別02は決済端末からPOSレジスタへのレスポンスに使用する。また種別10および11は、決済端末がPOSレジスタ以外(サーバなど)との通信に使用する。
【0014】
次に、図2を用いて本発明の実施形態に係る通信シーケンス例を用いて本発明の実施形態に係る非接触ICカードシステムの動作を説明する。
まず、POSレジスタ200で商品の登録が完了して支払金額が確定したら、POSレジスタ200のPOSアプリケーション210は、対決済端末通信機能230に対して決済金額などを指定して決済要求を指示する。対決済端末通信機能230は、メッセージ種別01が付与された決済要求コマンドメッセージ(図4)を作成、送信する。図4に示される決済要求コマンドメッセージには、メッセージ種別01のほか、コマンド種別(決済要求)を示すフィールド、カード識別子フィールド、決済金額を示すフィールド、FCS(Frame Check Sequence)、および、メッセージ長を示すフィールドが設けられている。
【0015】
決済要求コマンドメッセージ(図4)を受信した決済端末(リーダライタ端末)100は、電子マネー搭載の非接触ICカードまたは電子マネー搭載の携帯端末50が翳されるのを待つ。非接触ICカード又は携帯端末50が翳されたら、非接触IC通信機能110はカードとの間で非接触ICの通信をおこない、その内容によって制御機能140は決済処理をおこなう。
【0016】
決済処理完了後、決済端末(リーダライタ端末)100は、決済時に翳されたカードの識別情報や決済金額などを含むサーバ要求メッセージを生成し、サーバ要求メッセージを格納したメッセージ種別11が付与されたスルーコマンドメッセージ(図5)を作成し、POSレジスタ(上位端末)200に送信する。図5に示されるスルーコマンドメッセージには、メッセージ種別11のほか、通信プロトコル種別が02:HTTPであることを示すフィールド、通信先情報量を示すフィールド、通信先情報を示すフィールド、サーバ要求メッセージ長を示すフィールド、サーバ要求メッセージ内容を示すフィールド、全体のメッセージ長を示すフィールド、および、FCS(Frame Check Sequence)が設けられている。
【0017】
POSレジスタ(上位端末)200の対決済端末通信機能230は、スルーコマンドメッセージ(図5)を受信すると、スルーコマンドメッセージに格納されているサーバ要求メッセージを取り出し、サーバ要求メッセージを対サーバ通信機能220に渡す。対サーバ通信機能220はサーバ要求メッセージをサーバへのHTTPリクエスト(図6)に格納してサービスサーバ400に送出する。これらの処理の際、対決済端末通信機能230は、POSアプリケーション210には何も通知しない。図6に示されるHTTPリクエストには、コンテンツ長、コンテントタイプの情報のほか、サービス要求メッセージの内容が含まれる。
【0018】
サービスサーバ400はHTTPリクエスト(図6)に含まれるサーバ要求メッセージを受信し、サービス処理をおこなう。この例では、サーバ要求メッセージに含まれるカード識別情報を元に会員データベース(図示せず)を検索し、該当する会員があった場合には、決済金額に応じたポイント付与の処理をおこなう。サービスサーバ400はこのポイント付与結果の情報を含むサーバ応答メッセージを生成し、サーバからのHTTPレスポンス(図7)としてPOSレジスタ(上位端末)200に返送する。図7に示されるHTTPレスポンスには、日時、コンテンツ長、コンテントタイプの情報のほか、サービスサーバ400でサービス処理されたメッセージの内容、すなわち発生ポイントの値、ポイント合計の値の各情報、が含まれる。
【0019】
POSレジスタ(上位端末)200の対サーバ通信機能220は、HTTPレスポンス(図7)を受信すると、HTTPレスポンスに含まれるサーバ応答メッセージを抽出して対決済端末通信機能230に渡す。対決済端末通信機能230は、受け取ったサーバ応答メッセージを含むメッセージ種別12が付与されたスルーレスポンスメッセージ(図8)を作成し、決済端末(リーダライタ端末)100へ送信する。図8に示されるスルーレスポンスメッセージには、メッセージ種別12のほか、通信プロトコル種別が02:HTTPであることを示すフィールド、通信元情報量を示すフィールド、通信元情報を示すフィールド、サーバ応答メッセージ長を示すフィールド、サーバ応答メッセージ内容を示すフィールド、全体のメッセージ長を示すフィールド、および、FCS(Frame Check Sequence)が設けられている。
【0020】
決済端末(リーダライタ端末)100はスルーレスポンスメッセージ(図8)を受信すると、サーバ応答メッセージを取り出し、内容を画面に出力する。電子マネー搭載の携帯端末50である場合には、携帯端末50の表示画面にサービスサーバ400からのサーバ応答メッセージの内容の外に広告書き込みを適宜おこなう。その後、決済端末(リーダライタ端末)100はPOSレジスタ(上位端末)200に対してメッセージ種別02が付与された決済完了レスポンスを送信して処理を終了する。
【符号の説明】
【0021】
100 リーダライタ端末(決済端末)
110 非接触IC通信機能
120 表示機能
130 対上位端末通信機能
140 制御機能
200 上位端末(POSレジスタ)
210 POSアプリケーションソフトウェア
220 対サーバ通信機能(通信ドライバ)
230 対決済端末通信機能(通信ドライバ)
300 ネットワーク(LAN/IP-VPNなど)
400 サービスサーバ(ウェブサーバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードに内蔵される情報を読み書きするリーダライタ端末と、前記非接触ICカードを所有するユーザに対して所定のサービスを提供するサービスサーバと、前記リーダライタ端末と前記サービスサーバとの間に設置され、前記リーダライタ端末および前記サービスサーバとの通信機能を持つ上位端末とから構成される非接触ICカードシステムであって、
前記リーダライタ端末は、前記上位端末との通信データの中に前記サービスサーバへの通信データを埋め込み、
前記上位端末は、前記リーダライタ端末との通信機能において、前記通信データから前記上位端末向けのデータと前記サービスサーバ向けのデータを識別し、通信先を振り分けることを特徴とする非接触ICカードシステム。
【請求項2】
前記リーダライタ端末は、決済端末であり、前記上位端末は、POSレジスタであることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカードシステム。
【請求項3】
前記上位端末は、POS動作を実現するためのPOSアプリケーションソフトウェアと、前記サービスサーバとの間で通信データのやりとりをおこなう対サーバ通信機能を担うドライバソフトウェアと、前記決済端末との間で通信データのやりとりをおこなう対決済端末通信機能を担うドライバソフトウェアと、を備えることを特徴とする請求項2に記載の非接触ICカードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−165196(P2010−165196A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7179(P2009−7179)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】