説明

非接触ICカード

【課題】 外部非接触リーダライタとの交信時に、非接触ICカードのICチップのメモリが有する情報に対応した表示をし、カード表面から視覚で確認できるようにした有機EL発光パネル付き非接触ICカードを提供する。
【解決手段】 本発明の非接触ICカード1は、薄板状のカード基体10内に、メモリと制御回路、送受信回路を備えたICチップ3と、該ICチップ3に電気的に接続されたアンテナコイル11と、を有し、該ICチップ3の出力ポートに接続し、かつ該ICチップにより制御される有機EL発光パネル20を有する非接触ICカードにおいて、前記カード基体内には、該有機EL発光パネル20に動作電力を供給するアンテナコイル12と有機EL制御用チップ4をさらに有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)発光パネルを内蔵した非接触ICカードに関する。詳しくは、1つのICカードにアンテナコイルと集積回路(ICチップ)とからなる2つのIC回路を搭載し、1のIC回路は通常の非接触ICカードの回路として機能し、他の1のIC回路は有機EL発光パネルに電力を供給するための回路として機能する非接触ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、記憶容量が従来の磁気カードに比較して格段に大きいことと、高い偽造防止効果を有することから広範に使用されるようになってきている。特に、リーダライタとの接触交信の必要がない非接触ICカードは、装置のメンテナンスの容易性や迅速な交信の利便性から交通機関をはじめ、各種用途に広範に採用されてきている。
【0003】
しかし、非接触ICカード自体には、ICカードがその時点で有する情報内容を利用者が視覚で確認できる表示装置が何も無いので、不便に感ずる場合がある。特に、今後、非接触ICカードが「おサイフケータイ(登録商標)」等として利用されるようになると、残高を確認したいという要求が高くなると考えられる。非接触ICカードの利用時点では、応対する非接触リーダライタ側に表示装置を設けて表示させることもできるが、他人にも見られることもあって不都合となる場合がある。また、非接触ICカードの表面にリライト記録層を設けて、情報表示させる場合もあるが(特許文献4等)、この場合も、リーダライタに挿入してリライト記録層に印字記録するので、印字記録装置のないリーダライタでは使用できない問題がある。
【0004】
一般に、表示装置は電力消費量が大きいので、表示装置付きICカードには電池を搭載するのが通常であり、電池無しで表示装置を備えるように構成されている例は、あまり見られない。例えば、通常使用される液晶表示装置等は消費電力が大きいため、リチウム電池や太陽電池を備えることが不可欠であり、非接触ICカードが、アンテナコイルから得る電力だけでは、安定した表示をできないのが通常である。
また、表示装置は一般に、全体が剛直な基板にされているものが多いが、屈曲性が求められるICカードでは可撓性の高い表示装置が必要となる。
【0005】
そこで、本発明では表示装置のなかでも消費電気量の少ない、有機EL発光パネルを使用することにより、少なくとも非接触ICカードが外部非接触端末と交信している際には、電池なしで情報表示させる機能を持たせること、および可撓性の高い有機EL発光パネルに着目し、当該表示装置を実装使用すること、を課題とするものである。
本願に関連する先行技術に、特許文献1〜特許文献3等がある。特許文献1は、有機ELを使用した発光表示パネルに関する技術である。特許文献2は、有機EL発光パネルを使用したICカードについて記載している。特許文献3は、ICカードの情報表示方法について記載している。
【0006】
【特許文献1】特開2006−147190号公報
【特許文献2】特開2006− 99289号公報
【特許文献3】特開2004−265176号公報
【特許文献4】特開2003−346111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触ICカードに有機EL発光パネルを利用して、ICカードが有する情報内容を表示させることにより、ICカード利用者が視覚で情報内容を確認できるようにすることを課題とする。また、可撓性のある表示装置を用いてICカードの破損を防止することをも課題とする。さらに従来、実用的表示機能付きICカードは、電池電源を使用することが必須であったが、電池電源を使用しないでエネルギー消費量も少なく、対環境面でも利点のある表示装置付き非接触ICカードの実現を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨は、薄板状のカード基体内に、メモリと制御回路、送受信回路を備えたICチップと、該ICチップに電気的に接続されたアンテナコイルと、を有し、該ICチップの出力ポートに接続し、かつ該ICチップにより制御される有機EL発光パネルを内蔵する非接触ICカードにおいて、前記カード基体内には、該有機EL発光パネルに動作電力を供給するアンテナコイルと有機EL制御用チップをさらに有することを特徴とする非接触ICカード、にある。
【0009】
上記非接触ICカードにおいて、有機EL発光パネルが透明樹脂フィルムに有機発光部を形成したものであって、総厚が300μm未満にされていれば、ICカードの全体を平坦に形成できる。また、有機EL発光パネルが複数の異なる発光色部を有し、当該発光色によりICチップのメモリ情報に対応した表示をする、ようにでき、また、有機EL発光パネルが複数の異なる発光色文字部を有し、当該発光色文字部によりICチップのメモリ情報に対応した表示をする、ようにすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非接触ICカードは、少なくとも外部非接触リーダライタ装置にかざした際に、当該非接触リーダライタ装置が発する電磁波から、電磁誘導により起電力をえて、有機EL発光パネルを動作させ発光表示させることができるので、ICチップのメモリが保持する情報内容に対応した表示を視覚で確認することができる。
本発明の非接触ICカードは、表示装置として可撓性の高い有機EL発光パネルを採用しているので、ICカード内に比較的広い面積の表示部を設けて、カードに外力が加えられても有機EL発光パネル部がICカード基体と同等以上の撓み性を有して変形するので、基体から突出してICカードを破損させるような問題を生じない。
【0011】
本発明の非接触ICカードは、情報表示に有機EL発光パネルを採用しているので、色彩の選択範囲が広く、豊かな情報表示をすることができる。
本発明の非接触ICカードは、ICチップのメモリ情報に応じて、色彩を変化させることができるので、各種ゲーム用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態をさらに詳しく説明する。
図1は、本発明の非接触ICカードの外観を示す図、図2は、本発明の非接触ICカードの回路構成を示す図、図3は、アンテナコイルの配置例を示す図、図4は、非接触ICカードの断面構造を示す図、図5は、有機EL発光パネルの表示例を示す図、図6は、有機EL発光パネルの他の表示例を示す図、である。
【0013】
本発明の非接触ICカードは、おサイフケータイや各種ゲーム用途、あるいは交通機関用途として好適に利用できるICカードである。そのため、カード表面には、図1のように、利用用途を示す表示6やデザイン設けることが好ましく、裏面には利用上の注意事項等を印刷して設けてもよい。アンテナコイル11やICチップ3は破線で図示しているが、カード基体100内に埋設されているので、実際には外観には現れない。有機EL発光パネル20も透明シートを介してカード基体100内にあるが、発光状態はカード表面から視認できる。
【0014】
本発明の非接触ICカードは、例として残額を表示する有機EL発光パネル20が設けられている特徴がある。図1(A)の場合は、「おサイフケータイ」(Money Card)において、残額が表示されるようになっている。例えば、1万円のカードにおいて、残額が5000円未満になると当該表示欄の有機EL素子5が発光する。
同様に3000円未満、1000円未満において、それぞれ有機EL素子5が円形に発光する。図1(A)では、3000円の部分が発光している。ICカード面に金額表示7がある場合、同一発光色であってもよいが、異なる発光色にして表示を豊かにできる特徴がある。金額表示7を設けないで異なる発光色で表示してもよい。例えば、緑色の場合は5000円未満、青色は3000円未満、赤色は1000円未満、のように定めて表示することができる。
【0015】
有機EL素子5は文字表示にしてもよい。図1(B)の場合、残額は、「5000円」未満と緑色で表示されている。同様に、「3000円」未満、「1000円」未満と異なる発光色で表示させることができる。図1(B)では、「5000円」未満が発光している。単に金額だけでなく文章表現も表示できるが、単純化のため、金額のみ表示の例を示している。「未満」の文字は印刷等により設けるのが簡便である。
本発明の非接触ICカード1では、有機EL発光パネル20の各有機EL素子5は異なる発光色が異なる位置で発光するようにされているので、同一の発光位置で同一の発光素子が異なる色の発光をさせるようにすることはできない。
有機EL発光パネル20は、異なる色に発光する複数の発光色部の有機EL素子5を有する。この発光色部は3乃至10程度の数とすることができる。
【0016】
図2は、本発明の非接触ICカードの回路構成を示す図である。本発明の非接触ICカード1は、薄板状のカード基体100内にICチップ3と、当該ICチップ3に電気的に接続されたアンテナコイル11を有し、さらに有機ELパネル20への動作電力供給も行う有機EL制御用ICチップ4と、当該ICチップ4に接続されたアンテナコイル12を有している。ICチップ3は、メモリとプロセッサ(CPU)、制御回路、送受信回路等を備えた非接触ICカード用のICチップであるが、有機EL発光パネル20を制御する制御信号の出力ポート31を有する特徴がある。出力ポート31は、ICチップ4の入力ポート41に接続している。
【0017】
上記制御信号は、ICチップ3のCPUが、メモリ内容に応じて演算し生成するものである。すなわち、例えば、「おサイフケータイ」の残高が、5000円未満になった場合で3000円以上であれば、有機EL素子5の緑色の回路を「ON」し、3000円未満になった場合は、有機EL素子の青色の回路を「ON」し、1000円未満になった場合は、有機EL素子の赤色の回路を「ON」にするという、スイッチング用の制御信号を生成する。もちろん、他の発光色は「OFF」となる。
【0018】
ICチップ4は、有機EL制御用チップである。LC回路、整流回路、定電圧回路からなる電源回路により、有機EL発光パネル20を駆動する動作電力を得る。また、ICチップ4は有機EL素子5の駆動回路を内蔵する。このように、ICチップ3を動作させる電力とは独立して電力を得ることにより、有機EL発光パネル20の発光時におけるICチップ3のプロセッサへの影響を低減させることができる。なお、図2では、アンテナコイル11とアンテナコイル12の2つのアンテナ素子が平行して配置しているが、実際はこのように配置することに限定されず、各種の配置方法を採用できる。
【0019】
図3は、アンテナコイルの配置例を示す図である。図3(A)のように、面的にアンテナコイル11,12が相互にオーバーラップするように形成してもよく、図3(B)のように、一方のアンテナコイル11の内部に、他方のアンテナコイル12が組み込まれるように形成してもよい。オーバーラップする場合は、1枚のアンテナシートの表裏に形成すれば短絡を防止する上で好ましい。アンテナはエッチング形成した場合でも、アンテナシート表面から20μm〜40μmの突起部を形成する。ICチップ4のポート42には、有機EL発光パネル20が接続している。図3では簡略化して図示しているが、有機EL素子5の数に応じた配線がそれぞれ配線部13により接続される。
【0020】
一般に非接触ICカード1が、外部非接触リーダライタと、2cm〜3cmの距離で交信している際は、非接触リーダライタの出力等にも関係するが、ICカードは、4〜5V(5〜6mA)程度の誘導起電力を得ることができる。非接触リーダライタに直接接触しているような場合は、20〜25V(30mA)程度の誘導起電力が得られる。従って、5V〜10V程度で発光する有機EL発光パネル20の電力としては十分である。
本発明の非接触ICカード1は、外部非接触リーダライタに載置して接触的に使用することを前提とするので、少ない表示面積の有機EL発光パネル20を表示させるに十分な電力を得ることができる。
【0021】
一般に、非接触ICカードは、アンテナコイル11にICチップ3を装着したアンテナシートの両面に、スペーサシートや接着シートを介して、表裏のコアシートを積層した構成からなっている。本発明の非接触ICカード1も同様の構成にできるが、ICチップ3等の他に有機EL発光パネル20を包含している特徴がある。
【0022】
図4は、非接触ICカード1の断面構造を示す図である。各層間を分離した状態で図示している。アンテナシート101は、アンテナコイル11とアンテナコイル12と有機EL発光パネル20への配線部13をあらかじめ形成したシートであるが、それらの図示は省略している。アンテナコイル11の端部にICチップ3が装着され、アンテナコイル12の端部にICチップ4が装着されている。配線部13は有機EL発光パネル20の各有機EL素子5からICチップ4への接続回路を形成する。
【0023】
一般にICチップ3,4は、かなりの厚み(150μm〜300μm)を有するので、その凹凸形状がカード表面に現れないようにするため、スペーサシート102,103を使用する。有機EL発光パネル20はICチップ3,4と同程度以下の厚み(例えば、封止層を設けないような仕様によっては、100μmから150μmの厚み)に形成できるが、やはりその形状がカード表面に現れないようにする工夫が必要である。有機EL発光パネル20の厚みもICチップの厚みとの調和から、300μm未満に形成するのが好ましい。有機EL発光パネル20の発光が透過するように、表面側には透明コアシート104を使用する。最表面のオーバーシート108も透明シートを使用するが、有機EL発光パネル20以外の部分を隠蔽するように、転写印刷による隠蔽印刷110を設ける。隠蔽印刷110には、アルミ箔を微粉化した隠蔽材料を含む印刷インキを使用する。ICカードの最下面には、通常白色コアシート105を使用する。
【0024】
スペーサシート102,103や接着シート106,107のICチップ3,4の少なくとも突起のある側の面部には貫通孔H1〜H4を設けてICチップの厚みを吸収するようにする。有機EL発光パネル20部分のスペーサシート103と接着シート106も同様にする。ICチップ3,4部分の貫通孔H1〜H4をスペーサシート102,103だけに設け、接着シート106,107には貫通孔Hを設けなくてもよい。また、スペーサシート103と接着シート106にのみ貫通孔H1,H3を設け、スペーサシート102と接着シート107には貫通孔を設けなくてもよい。これらは、ICチップの厚み等により適宜選択するものである。本発明では、有機EL発光パネル20はICチップ3,4と同程度以下の厚みに形成し、同様に貫通孔H5を形成して、表面が平滑な非接触ICカード1に仕上げることが好ましい。
【0025】
環境性の問題からカード基体100には、塩化ビニルを避けて、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートや非結晶性ポリエステル系樹脂(PET−G)シートが用いられることが多くなってきている。PET−Gシートとは、一般的には芳香族ジカルボン酸とジオールの脱水縮合体であって、共重合ポリエステルの中でも特に結晶性が低く、実質的に非結晶性の芳香族ポリエステルからなるシートをいう。PET−Gシート相互間は熱融着性を有するが、PETシートとPET−Gシート間の接着には、ホットメルト性の接着シートや常温硬化型接着剤等を使用する。透明コアシート104とスペーサシート103の間、コアシート105とスペーサシート102の間の接着は、PET−Gシート相互間の接着になるため接着シートを使用しない。オーバーシート108の透明コアシート104側には接着性インキが使用される。
アンテナシート101には、PETシートにアルミ箔をラミネートした材料を使用し、アルミ箔をエッチングしてアンテナ11,12を形成することが多い。
【0026】
図5は、有機EL発光パネルの例を示す図である。まず、前記、図1(A)の円形に発光させる例について説明する。図5(A)は、その平面図、図5(B)は、図5(A)のA−A線の断面構造を拡大して示す概略図である。有機EL発光パネル20は、発光領域と非発光領域との組合せによりパターン表示させるものであるが、図5(A)の例では、緑色発光領域RG、青色発光領域RB、赤色発光領域RRと、非発光領域NRの組合せにより単に3つの円形の表示をするようになっている。それぞれの発光領域は表面の透明電極、有機発光部、背面電極からなっている。本発明のICカード1では、各発光領域毎に発光を「ON」、「OFF」させる必要があり、各発光領域毎に表裏電極を設け、各電極がICチップ4に接続するようにされている。ただし、透明電極23は共通電極としてよい。なお、本発明では発光域の全体の基板を「有機EL発光パネル」といい、各発光領域の単位を「有機EL素子」というものとする。
【0027】
図5(B)に示すように、有機EL発光パネル20は、可撓性を有する透明基材21と、透明基材21の厚さ方向の一方の面上に形成された透明電極23と、透明電極23上に形成された電気絶縁層25と、電気絶縁層25上及び当該電気絶縁層25によって覆われずに露出している透明電極23上に形成された有機発光部27g,27b,27rと、有機発光部27g,27b,27r上に形成された背面電極29g,29b,29rと、透明基材21の厚さ方向の他方の面上に形成された印刷層22とカラーフィルター層28を有している。後述する電気絶縁層25とこの印刷層22との協同により、非発光領域NRが形成される。
【0028】
透明電極23は、有機EL素子の陽極として利用されるものであり、発光領域RG、RB、RRと非発光領域NRの両方にわたるようにして透明基材21上に形成されている。 この透明電極23の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)等の無機透明導電性酸化物や、ポリアニリン等の有機導電性材料を用いることができ、中でもITO又はIZOが好ましく用いられる。透明電極23の膜厚は、0.005〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
【0029】
透明電極23の形成に伴って生じる透明基材21での残留応力をできるだけ小さくして当該透明基材21の変形を防止するという観点から、透明電極23は真空蒸着法、イオンプレーティング法、又は印刷法によって形成することが好ましい。印刷法によって透明電極23を形成する場合には、導電性インキ又は導電性ペーストをスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の方法によって所定形状に塗工して塗膜を形成した後、この塗膜を熱処理して透明電極23とする。
【0030】
緑色発光領域RGと青色発光領域RBの間は、隔壁26aにより、青色発光領域RBと赤色発光領域RRの間は、隔壁26bにより区画されている。隔壁26a,26bは透明電極23上に、樹脂材料を用いて形成する。隔壁26a,26bは、例えば厚膜印刷、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の方法によって形成することができる。
このような隔壁を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。
【0031】
電気絶縁層25は、有機発光部27が発光領域RG、RB、RRにおいてのみ発光するように、透明電極23と背面電極29とを局所的に絶縁するものであり、透明電極23のうちの非発光領域NRに対応する領域上に形成されている。このような電気絶縁層25は、例えば、光硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型樹脂組成物を含む。)や電子線硬化型樹脂組成物等を塗工して塗膜を形成し、この塗膜をフォトリソグラフィーや電子線リソグラフィー法で所定形状にパターニングすることによって得られる。電気絶縁層25の膜厚は、透明電極23と背面電極29とを局所的に絶縁することができるように、電気絶縁層25の材料や有機EL発光パネルの駆動電圧等に応じて、0.5〜7.0μm程度の範囲で適宜に選定される。
【0032】
有機発光部27g,27b,27rは、透明電極23及び背面電極29と共に有機EL素子を構成するものであり、少なくとも、透明電極23のうちの緑色発光領域RG、青色発光領域RB、赤色発光領域RRに対応する領域上に形成されている。有機EL発光パネル20では、電気絶縁層25の表面上及び当該電気絶縁層25によって覆われずに露出している透明電極23上に、有機発光部27g,27b,27rが形成されている。
【0033】
この有機発光部27g,27b,27rは、例えば、(1)有機発光材料のみからなる単層構造、(2)正孔輸送材料からなる正孔輸送層と有機発光材料からなる有機発光材料層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、(3)有機発光材料からなる有機発光材料層と電子輸送材料からなる電子輸送層とがこの順番で透明電極23側から積層された2層構造、又は、(4)正孔輸送層と、有機発光材料層と、電子輸送層とがこの順番で透明電極23側から積層された3層構造とすることができる。
【0034】
また、(5)正孔輸送層と、電子輸送層の性質を兼ね備えた有機発光材料層とがこの順番で透明電極23側から積層された2層構造、(6)正孔輸送層の性質を兼ね備えた有機発光材料層と、電気輸送層とがこの順番で透明電極3側から積層された2層構造、又は、(7)有機発光材料層の性質と、正孔輸送層の性質及び電子輸送層の性質の少なくとも一方とを兼ね備えた有機混合物層のみからなる単層構造、とすることもできる。
【0035】
上記の有機発光材料層、正孔輸送層、電子輸送層、及び有機混合物層は、それぞれ、有機EL素子用の材料として知られる種々の有機発光材料、正孔輸送材料、又は電子輸送材料を用いて形成することができる。これらの層の形成は、例えば、真空蒸着法や湿式法等によって行うことができる。湿式法では、有機発光材料、正孔輸送材料、又は電子輸送材料を含有したコーティング組成物をインクジェット法、スピンコート法、印刷法、ディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法等の方法によって塗工して塗膜を形成し、この塗膜を真空熱処理等の方法で加熱して硬化ないし固化させることにより、有機発光材料層、正孔輸送層、電子輸送層、又は有機混合物層を形成する。
【0036】
カラーフィルター層28は、有機発光層が白色発光する場合に、所望の色彩の発光色を得るために塗工するものである。カラーフィルター層28g,28b,28rには透明性に優れた適宜な染料や微細化した顔料を使用することができる。したがって、有機発光部27自体が所望の発光色を呈するようにされている場合は、カラーフィルター層28g,28b,28rを設ける必要はない。
【0037】
有機発光層を形成する材料としては、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、または高分子系発光材料を挙げることができる。
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
【0038】
また、金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)を用いることができる。
【0039】
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
【0040】
本実施態様に用いられる発光材料としては、上記の中でも、金属錯体系発光材料または高分子系発光材料であることが好ましく、さらには高分子系発光材料であることが好ましい。また、高分子系発光材料の中でも、π共役構造をもつ導電性高分子であることが好ましい。このようなπ共役構造をもつ導電性高分子としては、上述したようなポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0041】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。また、緑色に発光する材料としては、高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。赤色に発光する材料としては、高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。
【0042】
上記発光部の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定はされなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
【0043】
また、上記発光部中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0044】
上記有機発光部27の形成方法としては、高精細なパターニングが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。また、発光部をパターニングする際には、異なる発光色となる画素のマスキング法により塗り分けや蒸着を行ってもよく、または発光部27間に隔壁を形成してもよい。
【0045】
本発明では、発光領域RG、RB、RRによって複数色の表示を行うので、発光色が互いに異なる複数種の有機発光材料を用意して有機発光部をそれぞれ所望箇所に形成することが好ましい。発光領域での有機発光部27の膜厚は、透明電極23と背面電極29との短絡を防止しつつ輝度の高い有機EL素子を形成するという観点から、0.1〜2.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
【0046】
背面電極29g,29b,29rは、有機発光部27上に形成されて有機EL素子の陰極として利用されるものである。有機EL素子の陰極として好適な背面電極を得るうえからは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属を成分として含有する合金、及びアルカリ土類金属を成分として含有する合金等のように仕事関数が小さい金属もしくは合金を用いて背面電極29を形成することが好ましい。このとき、背面電極29g,29b,29rは、単層構造とすることもできるが、アルカリ金属やその合金、及びアルカリ土類金属やその合金は化学的活性が高いので、図5(B)に示すように、アルカリ金属もしくはその合金、又はアルカリ土類金属もしくはその合金からなる第1背面電極29xを、化学的活性が低い銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)等の導電性材料からなる第2背面電極29yで保護した積層構造とすることが好ましい。
【0047】
背面電極29を単層構造及び積層構造のいずれにする場合でも、当該背面電極29g,29b,29rは、発光領域RG,RB,RRに対応する領域にのみ形成することもできるし、発光領域RG,RB,RRと非発光領域NRの両方に亘って形成することもでき、その膜厚は、0.005〜1μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
背面電極29を積層構造とする場合、第1背面電極29x及び第2背面電極29yそれぞれの膜厚は、0.005〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。背面電極29は、例えば真空蒸着法によって形成することができる。
【0048】
なお、図示してないが、透明基材21と透明電極23の間にガスバリヤー層を、背面電極29の全面に封止層を、設けることが好ましい。有機EL素子に使用する有機発光材料は酸素や水分によってその特性が劣化するので、有機発光部への酸素や水分の侵入を防ぐ封止処理が必要だからである。
【0049】
印刷層22は、発光する領域を発光領域RG,RB,RRに限定し、その他の部分を遮光するための構成である。有機EL発光パネル20では、非発光領域NRに対応して遮光性インキによる印刷層22が形成されている。印刷層22は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等、種々の方法によって透明基材21に形成することができる。印刷層22の厚みは、数μm以下となる。
【0050】
上記において、透明基材21としては透明樹脂フィルムを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート等からなるものが好ましい。透明樹脂フィルムの膜厚が50μm程度未満では、有機EL発光パネル20の製造過程で変形が生じ易くなる。透明樹脂フィルムの膜厚の上限値は、得ようとする有機EL発光パネル20の用途や、当該有機EL発光パネルに求められる可撓性等に応じて、50μmから200μm程度の範囲で適宜選定可能である。透明樹脂フィルムは、耐溶媒性、耐熱性、耐光性、及びガスバリアー性(水蒸気及び酸素に対するバリアー性を意味する。以下同じ。)に優れているものほど好ましい。
【0051】
有機EL発光パネル20は、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号等のパターンを表示することができる。図6の発光パネルの例では、5つの発光領域R1〜R5と6つの非発光領域NR1〜NR6との組合せにより、「5000円」という文字列を表示している。非発光領域NR1〜NR6に応じて、対応した電気絶縁層25と印刷層22を形成する必要があるのは明らかなことである。その他の文字、あるいは文章を同様に形成できることは当業者には容易に類推できることである。なお、図6においては、区別し易くするため、非発光領域NR1〜NR6にハッチングを施してある。
【実施例】
【0052】
以下の実施例においては、有機EL発光パネルの非接触ICカード基体への埋設のみを試験的に行った。制御信号を生成する非接触カード用ICチップ3や有機EL素子駆動用ICチップ(ICチップ4)は、現時点では市販品を入手できない。
【0053】
<有機EL発光パネルの準備>
まず、ポリエーテルサルホンフィルム(膜厚は100μm)の片面に膜厚0.1μmのITO膜が形成されている市販の導電性フィルムを用意した。この導電性フィルムにおけるポリエーテルサルホンフィルムが透明基材21に相当し、ITO膜が透明電極23に相当する。次に、上記の導電性フィルムにおいてITO膜が形成されている面とは反対側の面に、グラビア印刷機により、発光部が所定の円形パターン(直径5mm)になるようにその周囲を遮蔽する印刷層22を設けた。
【0054】
次いで、透明電極23上にフォトレジストをスピンコートして塗膜を形成し、この塗膜をプレベークした後に所定形状の露光マスクを用いて選択的に露光し、ポストベークを行ってから現像処理を施して、所定パターンの電気絶縁層25を形成した。透明電極23上での当該電気絶縁層25の膜厚は2μmである。次いで、電気絶縁層25上に、発光領域を区画するための隔壁26a,26bを形成した。これには、紫外線硬化型樹脂材料を硬化後の厚みが5μmになるように、ディスペンサにより線状に塗工し、その後紫外線照射、硬化させて隔壁26a,26bを形成した。
【0055】
次いで、隔壁26a,26b間に正孔輸送層形成用のコーティング組成物としてバイエル社製のバイトロンP(商品名)を用意し、このコーティング組成物を上記の電気絶縁膜及び透明電極23上に塗工して塗膜を形成した。そして、この塗膜を150°Cの熱処理により硬化させて、膜厚0.08μm(ただし、透明電極上での膜厚を意味する。)の正孔輸送層を形成した。
【0056】
また、有機発光部27形成用の塗布組成物として、ポリビニルカルバゾール70重量部と、オキシジアゾール30重量部と、シアノメチレンフィラン誘導体1重量部と、モノクロロベンゼン4700重量部との混合物(緑色用、青色用、赤色用の3種)を用意し、この塗布組成物をインクジェット印刷法によって上記の正孔輸送層上に塗工して塗膜を形成した。そして、この塗膜を150°Cの熱処理により硬化させて、膜厚0.07μmの有機発光部27を形成した。これにより、正孔輸送層と有機発光部27とからなる2層構造の発光部が得られた。
【0057】
この有機発光部27上に金属カルシウム(Ca)を真空蒸着法により堆積させて、膜厚0.008μmのカルシウム層を成膜し、引き続き、このカルシウム層上に銀(Ag)を真空蒸着法により堆積させて膜厚0.5μmの銀層を成膜して、カルシウム層からなる第1背面電極29xと銀層からなる第2背面電極29yとを有する2層構造の背面電極29を形成した。
【0058】
この後、透明電極23の露出面、電気絶縁層25の外側側面、有機発光部27の側面、及び背面電極の外表面を覆うようにして封止層を積層して、図5に図示すると同様の有機EL発光パネル20を得た。なお、上記の封止層は、膜厚60μmのポリエーテルサルホンフィルムからなる基材の片面全体に膜厚0.1μmの酸窒化ケイ素製ガスバリアー層が形成され、その表面の内縁部上にアクリル樹脂系の紫外線硬化型樹脂組成物からなる膜厚40μmの接合剤層が形成されたものであり、窒素ガス雰囲気中で接合剤層が内側となる向きで積層した後、接合剤層に所定波長の紫外線を照射して、当該接合剤層を硬化させると共にその下地に接着させたものである。
【0059】
以上の工程により、厚み約210μm、単位サイズが8mm×24mmの有機発光ELパネル20が得られた。この有機発光パネル20に、直流電源装置により、5Vの電圧をかけて各有機EL素子5が発光することが確認できた。
【0060】
<非接触ICカードの製造>
アンテナシート101として、厚み50μmのPETシートの両面に、厚み20μmのアルミ箔を接着剤を介して貼り合わせ、このアルミ箔をエッチングすることで、アンテナコイル11とアンテナコイル12、および配線部を形成した。なお、アンテナコイル12と配線部は、アンテナシート101の有機EL発光パネル20が搭載される側面に形成し、アンテナコイル11はその反対側面に形成した。アンテナコイル11とアンテナコイル12は、平面的には図3(A)のように、多少オーバーラップする位置関係になった。
【0061】
アンテナコイル12の内側に有機EL発光パネル20を接着シートで固定し、透明電極23、およ各背面電極間を導電性接着剤を用いて接続した。さらに、アンテナコイル11の両端に、通常の非接触ICカード用ICチップ(厚み250μm)を装着してアンテナシート101を完成した。これには、アンテナシート101に2つの小孔を穿ち、導電性接着剤を満たしてICチップ3の両端子間を接続するようにした。
【0062】
カード基体の層構成は、アンテナシート101の表裏に、厚さ50μmの接着シート106,107、その外側に厚さ100μmのPET−G製スペーサシート102,103、さらにその外側に厚さ200μmのPET−G製透明コアシート104とPET−G製白色コアシート105を重ね、最表面に隠蔽印刷110を設けたオーバーシート108とする都合8層の層構成となるようにした。
【0063】
接着シート106,107には、アンテナシート101のPETフィルムとスペーサシート102,103のPET−Gとの接着性を考慮して、ポリエステル系ホットメルト接着剤(溶融粘度2000poise:190°C)を採用した。アンテナシート101の両面の接着シート106,107、スペーサシート102,103には、アンテナシート上に実装したICチップ3、ICチップ4が納まるように、予め、ICチップ3、ICチップ4よりはやや大きい大きさ(約4mm×4mm)の貫通孔H1,H2,H3,H4を打ち抜きして形成した。有機EL発光パネル20が実装された位置の接着シート106とスペーサシート103にも、同様に有機EL発光パネル20よりはやや大きい大きさ(約10mm×26mm)の貫通孔H5を打ち抜きして形成した。
【0064】
また、ICカードの最表面側になるオーバーシート108には、隠蔽印刷110を予め転写印刷しておいた。隠蔽印刷110には、アルミ箔を微粉化した隠蔽材料を含む印刷インキを使用した。また、図示してないが、隠蔽印刷110面を含むオーバーシート108の透明コアシート104面側には、接着性のメジュウムウインキの印刷をしておいた。
上記8層からなる積層体をピンに嵌め込みして位置合わせし、プレス機の熱板上に載置して、プレスラミネートした。プレス工程の条件は、熱板温度120°C、圧力2.0MPa、成形(加熱)時間20min.に設定して行った。
【0065】
このようにして総厚、0.78mmの有機EL発光パネル20内蔵の非接触ICカードが完成した。使用した材料の総厚が820μmであるから、シート全体として、約10%の収縮があったことになる。非接触ICカード1の全体は平坦に仕上がり、有機EL発光パネル20部分を含めた撓み性も実用上、十分であることが確認できた。
【0066】
上記の実施形態は、非接触ICチップを使用する場合についてのみ説明しているが、接触型と非接触型の双方の機能を有する、デュアルインターフェース型ICチップを使用したICカードにも適用できることは当業者であれば自明のことである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の非接触ICカードの外観を示す図である。
【図2】本発明の非接触ICカードの回路構成を示す図である。
【図3】アンテナコイルの配置例を示す図である。
【図4】非接触ICカードの断面構造を示す図である。
【図5】有機EL発光パネルの表示例を示す図である。
【図6】有機EL発光パネルの他の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 非接触ICカード
3 ICチップ
4 ICチップ
5 有機EL素子
6 表示
7 金額表示
11 アンテナコイル
12 アンテナコイル
13 配線部
20 有機EL発光パネル
21 透明基材
22 印刷層
23 透明電極
25 電気絶縁層
26a,26b 隔壁
27 有機発光部
28 カラーフィルター層
29 背面電極
31 出力ポート
41 入力ポート
100 カード基体
101 アンテナシート
102,103 スペーサシート
104 透明コアシート
105 コアシート
106,107 接着シート
108 オーバーシート
110 隠蔽印刷
H,H1〜H5 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のカード基体内に、メモリと制御回路、送受信回路を備えたICチップと、該ICチップに電気的に接続されたアンテナコイルと、を有し、該ICチップの出力ポートに接続し、かつ該ICチップにより制御される有機EL発光パネルを内蔵する非接触ICカードにおいて、前記カード基体内には、該有機EL発光パネルに動作電力を供給するアンテナコイルと有機EL制御用チップをさらに有することを特徴とする非接触ICカード。
【請求項2】
有機EL発光パネルが透明樹脂フィルムに有機発光部を形成したものであって、総厚が300μm未満にされていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICカード。
【請求項3】
有機EL発光パネルが複数の異なる発光色部を有し、当該発光色によりICチップのメモリ情報に対応した表示をすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非接触ICカード。
【請求項4】
有機EL発光パネルが複数の異なる発光色文字部を有し、当該発光色文字によりICチップのメモリ情報に対応した表示をすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の非接触ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−217215(P2008−217215A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51460(P2007−51460)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】