説明

非接触ICカード

【課題】 付加機能を駆動するのに充分な電力を、短時間で充電することが可能な非接触ICカードを提供する。
【解決手段】 カード用IC12と非接触リーダライタ30とのデータの授受を無線通信により行う非接触ICカード10において、カード用IC12と非接触型リーダライタ30との通信用のアンテナである通信用アンテナ11とは別に、表示部16にデータを表示させるための電力を充電するための充電用アンテナ17を設け、充電用アンテナ17から得られた電磁波を整流回路18が直流電圧に整流し、電気二重層キャパシタ19に充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードに関し、特に、表示機能等の付加機能のための電力を効率良く充電するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信により外部との情報の授受を行う非接触ICカードの利用が飛躍的に増えてきており、様々な分野に利用されている。特に、最近では、情報の授受を行うだけでなく、表示デバイスを搭載し、ICチップに記録されている情報を表示させる機能等の付加機能を持った非接触ICカードが登場している。
【0003】
このような付加機能を搭載する場合には、その駆動のための電力が必要になるため、従来に比べて多くの電力を必要とすることになる。このため、情報の授受等のためのアンテナとは別に、付加機能専用のアンテナを独立して設け、電力を確保する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−265176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、外部から電力供給を受けた場合にしか駆動できないため、任意のタイミングで付加機能を駆動することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、付加機能を駆動するのに充分な電力を、短時間で充電することが可能な非接触ICカードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、ICと外部とのデータの授受を無線通信により行う非接触ICカードであって、前記ICと外部との通信用のアンテナである通信用アンテナと、前記データの授受以外の機能である付加機能を実行する付加機能実行手段と、前記付加機能実行手段の電力確保用のアンテナである充電用アンテナと、前記充電用アンテナから得られた電磁波を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路により整流された直流電圧を充電する電気二重層キャパシタとを有する非接触ICカードを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非接触ICカードにおいて、IC駆動用のアンテナとは別に表示機能等の付加機能用のアンテナを設けるとともに、このアンテナから得られた電力を充電する電気二重層キャパシタを設けたため、付加機能を駆動するのに充分な電力を、短時間で充電することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(1.非接触ICカードの構成)
まず、本発明に係る非接触ICカードの構成について説明する。図1は、本発明に係る非接触ICカードの機能ブロック図である。
【0009】
図1において、10はICカード、11は通信用アンテナ、12はカード用IC、13はCPU、14はメモリ、15はドライバIC、16は表示部、17は充電用アンテナ、18は整流回路、19は電気二重層キャパシタ、30は非接触型リーダライタである。
【0010】
図1に示すように、本発明に係るICカード10は、通信用アンテナ11、カード用IC12、CPU13、メモリ14、ドライバIC15、表示部16、充電用アンテナ17、整流回路18、電気二重層キャパシタ19を有しており、通信用アンテナ11を介して、非接触型リーダライタ30との通信を行うとともに、充電用アンテナ17を介して表示用の電力を非接触型リーダライタ30から得るようになっている。
【0011】
ICカード10において、通信用アンテナ11、カード用IC12は、通常のICカードが有するものと同一であり、ICカードの必須機能となるものである。CPU13、メモリ14、ドライバIC15、表示部16は上記必須機能に対して付加機能を実現するためのものであり、本実施形態では表示機能を実現している。
【0012】
図1中、通信用アンテナ11は、カード用IC12へ入出力するためのデータの送受信およびデータ入出力のための電力の供給を受けるためのものであり、ICカード10を構成する基材内部において、コイル状に巻かれたものとなっている。カード用IC12は、データを記録するためのICチップである。CPU13は、カード用IC12に記録されたデータを処理するための演算処理装置である。本実施形態においては、表示部16に対するデータの表示処理も行う。メモリ14は、表示部16に表示させるデータの記憶領域である。ドライバIC15は、表示部16にデータを表示させるためのICである。表示部16は、データを表示するためのものであり、例えばTN、STN等のネマチック液晶表示媒体、コレステリック液晶媒体、強誘電性液晶媒体、電子ペーパー、発光ダイオード等を用いることができる。
【0013】
充電用アンテナ17は、付加機能用の電力の供給を受けるためのものであり、通信用アンテナ11と同様、ICカード10を構成する基材内部において、コイル状に巻かれたものとなっている。整流回路18は、非接触型リーダライタ30から充電用アンテナ17が受信した電磁波を整流して直流電圧に変換する機能を有している。電気二重層キャパシタ19は、整流回路18による整流により得られた直流電圧を電力として蓄積する機能を有している。
【0014】
上述のように、通信用アンテナ11と充電用アンテナ17は共に、コイル状に巻かれて基材内部に形成されている。この2つのアンテナはICカード10内の平面方向に互いに重なり合わないように配置することが望ましい。平面方向に重なり合わないように配置した場合の例を図2(a)に示す。図2(a)の例では、通信用アンテナ11を太線で、充電用アンテナ17を細線で示している。図2(a)に示すように、平面方向に重なり合わないように配置する手法としては、非接触ICカード10のカード基材上において、一方の側(図中左側)に通信用アンテナ11をコイル状に巻いて配置し、他方の側(図中右側)に充電用アンテナ17をコイル状に巻いて配置する手法がある。
【0015】
また、重なり合ってしまう場合でも、平面方向において重なる部分ができるだけ少なくするようにすることが望ましい。平面方向において重なる部分をできるだけ少なくなるように配置した場合の例を図2(b)に示す。図2(b)の例でも、図2(a)と同様、通信用アンテナ11を太線で、充電用アンテナ17を細線で示している。図2(b)に示すように、平面方向において重なる部分をできるだけ少なくなるように配置する手法としては、非接触ICカード10のカード基材上において、外周側に通信用アンテナ11をコイル状に巻いて配置し、その内周側に充電用アンテナ17をコイル状に巻いて配置する手法がある。
【0016】
上述のように、通信用アンテナ11と充電用アンテナ17を平面方向において重なる部分をできるだけ少なくしたとしても、アンテナが近隣に複数本存在する場合、それぞれが干渉して受信の効率が低下し、通信不良などの不具合が発生する場合がある。そこで、これらについては、通信阻害を発生させないように、その周波数特性を調整しておく。具体的には、通信用アンテナ11と充電用アンテナ17を重ねた状態での共振周波数が、非接触型リーダライタ30の搬送周波数と等しくなるように調整する。規格により定められた非接触型リーダライタ30の搬送周波数が13.56MHzであるので、2本のアンテナの共振周波数が13.56MHzとなるよう設定することになる。このように2本のアンテナの周波数特性を調整しておくと、通信阻害が発生せず、充電時間も短くなる。
【0017】
(2.処理動作)
続いて、図1に示したICカード10の処理動作について説明する。ICカード10を非接触型リーダライタ30に近付けると、ICカード10は通信用アンテナ11および充電用アンテナ17の両方を介して通信を開始する。通信用アンテナ11においては、双方向に情報のやりとりを行う。具体的には、カード用IC12に記録された情報を非接触型リーダライタ30に送信するとともに、非接触型リーダライタ30から受信した情報をカード用IC12に記録する処理等を行うことになる。この際、必要な駆動電力は、通信用アンテナ11が非接触型リーダライタ30から得ることになる。
【0018】
このように、カード用IC12と非接触型リーダライタ30の間において情報のやりとりが行われている際、並行して充電用アンテナ17は、非接触型リーダライタ30から電磁波を受信する。そして、整流回路18が受信した電磁波を整流して直流電圧に変換する。さらに電気二重層キャパシタ19が、変換された直流電圧を電力として蓄積していく。このようにして、通信用アンテナ11側で情報のやりとりが行われている間、充電用アンテナ17側では、付加機能用の電力を得るための充電が行われることになる。
【0019】
そして、カード用IC12に記録されたデータを表示部16に表示させる場合には、電気二重層キャパシタ19に蓄積された電力を利用してCPU13がカード用IC12からデータを抽出してメモリ14に渡し、ドライバIC15がメモリに保持されたデータを表示部16に表示させる。
【0020】
非接触型リーダライタ30とカード用IC12の間のデータのやりとりについては、上述のように通信用アンテナ11から得られる電力を利用するため、ICカード10が非接触型リーダライタ30から離れた場合には、電力供給がされず、実行することができない。一方、表示部16へのデータの表示は、電気二重層キャパシタ19に蓄積された電力を利用して行うため、ICカード10が非接触型リーダライタ30から離れていても、表示を行うことが可能である。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、付加機能として表示機能を備えた場合について説明したが、付加機能として音声を発する発音機能等を備えるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る非接触ICカードの機能ブロック図である。
【図2】通信用アンテナ11と充電用アンテナ17の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
10・・・ICカード
11・・・通信用アンテナ
12・・・カード用IC
13・・・CPU
14・・・メモリ
15・・・ドライバIC
16・・・表示部
17・・・充電用アンテナ
18・・・整流回路
19・・・電気二重層キャパシタ
30・・・非接触型リーダライタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICと外部とのデータの授受を無線通信により行う非接触ICカードであって、
前記ICと外部との通信用のアンテナである通信用アンテナと、
前記データの授受以外の機能である付加機能を実行する付加機能実行手段と、
前記付加機能実行手段の電力確保用のアンテナである充電用アンテナと、
前記充電用アンテナから得られた電磁波を直流電圧に整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された直流電圧を充電する電気二重層キャパシタと、
を有することを特徴とする非接触ICカード。
【請求項2】
前記通信用アンテナと充電用アンテナは、その共振周波数が、外部のICリーダライタから出力される搬送周波数と等しくなるように調整されたものであることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード。
【請求項3】
前記通信用アンテナと充電用アンテナは共にカード基材内部にコイル状に形成されたものであり、カードの平面方向において互いに重なり合わないように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非接触ICカード。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−27015(P2008−27015A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196350(P2006−196350)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】