説明

非接触IC媒体通信装置とその方法、およびそのプログラム

【課題】所望の領域にある非接触IC媒体を簡潔な構成で検知することができる非接触IC媒体通信装置とその方法、およびそのプログラムを提供する。
【解決手段】複数の異なる読取り領域毎に,該読取り領域内に存在する非接触IC媒体の識別情報と該非接触IC媒体から受信する受信信号の信号レベルとを対応付けて取得し、前記識別情報毎に前記読取り領域の異なる複数の受信信号の信号レベルを差分演算または除算して合成信号レベルを取得し、予め設定された閾値範囲内に前記合成信号レベルが入っている前記識別情報を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば所望の領域に存在する非接触IC媒体を検知するような非接触IC媒体通信装置とその方法、およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を記憶しておき非接触で情報の通信を行うことができる非接触IC媒体が利用されている。このような非接触IC媒体には、通信可能な距離が長いUHF帯を用いたものも利用されている。このUHF帯を用いた非接触IC媒体と通信するためのアンテナは、1素子パッチアンテナが用いられている場合が多い。1素子パッチアンテナは、半値幅(ビーム幅)が70程度と広く、広い領域で非接触IC媒体から情報を読取れるという利点がある。
【0003】
しかし、特定の領域内の非接触IC媒体のみ読み取りたい場合がある。具体的には、例えば物品を搬送して複数の作業工程を通過させる場合、スポット的に1つの作業工程にある物品の非接触IC媒体だけを読み取りたい場合がある。
【0004】
このような場合、半値幅の狭いアンテナを用いることが考えられる。しかし、このようなアンテナは、多素子アレイアンテナやパラボナアンテナといったように、非常に大型化するという問題がある。
【0005】
一方、非接触IC媒体からの電波の到来方向を推定し、非接触IC媒体の位置を算出するタグ通信装置が提案されている(特許文献1参照)。このタグ通信装置は、複数のアンテナ素子の出力に対してそれぞれ異なる重み付けを与え、これに基づいて特定の方向の電波強度を検出するものである。
【0006】
しかし、このタグ通信装置は、1つの非接触IC媒体の存在する方向を求めるために複雑な計算を要するものであった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−10345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述した問題に鑑み、所望の領域にある非接触IC媒体を簡潔な構成で検知することができる非接触IC媒体通信装置とその方法、およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の異なる読取り領域毎に,該読取り領域内に存在する非接触IC媒体の識別情報と該非接触IC媒体から受信する受信信号の信号レベルとを対応付けて取得する受信手段と、前記識別情報毎に前記読取り領域の異なる複数の受信信号の信号レベルを差分演算または除算して合成信号レベルを取得する演算手段と、予め設定された閾値範囲内に前記合成信号レベルが入っている前記識別情報を抽出する抽出手段と、を備えた非接触IC媒体通信装置、その方法、およびそのプログラムであることを特徴とする。
【0010】
前記異なる読取り領域は、読取り可能な領域を異ならせることを挿し、指向性を有するアンテナの読取り方向が異なることも含まれる。
前記非接触IC媒体は、RF−IDタグなど、情報を記憶でき非接触で通信できる媒体をいう。この非接触IC媒体は、電源を備えず外部からの誘導起電力を得て応答信号を発信するパッシブタイプと、電源を備えて外部からの問合せを受けて応答信号を発信するセミパッシブタイプと、電源を備えて定期的に信号を発信するアクティブタイプとが含まれる。
【0011】
前記識別情報は、RF−IDタグのIDなど、非接触IC媒体を識別可能な情報とすることができる。
前記非接触IC媒体から受信する信号は、該非接触IC媒体が前記識別情報を応答送信した信号、あるいは非接触IC媒体が送信したその他の信号とすることができる。
【0012】
前記受信手段は、指向パターンを変更できる1または複数のアレーアンテナで構成する、あるいは指向パターンの変更できない複数のアンテナで構成することができる。
前記演算手段および抽出手段は、CPUやMPU等の演算処理を実行する手段で構成することができる。
【0013】
非接触IC媒体通信装置は、非接触IC媒体と情報を送受信するリーダライタ装置、または非接触IC媒体から情報を読取るリーダ装置とすることができる。また、非接触IC媒体通信装置は、非接触IC媒体を検知する検知装置として利用されるものも含まれる。
【発明の効果】
【0014】
この発明により、所望の領域にある非接触IC媒体を簡潔な構成で検知することができる非接触IC媒体通信装置とその方法、およびそのプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、工場内の各作業工程とRFID検知装置1を説明する説明図である。
工場内には、各作業工程A,B,…に渡ってベルトコンベア21が設置されている。ベルトコンベア21は、図示省略する駆動手段によって駆動され、各作業工程へ物品27(27a〜27c)を搬送する。
作業工程Aでは、作業員Maが物品27aに対して作業を行い、作業工程Bでは、作業員Mbが物品27bに対して作業を行う。
【0017】
各物品27には、RFIDタグ25(25a〜25c)が貼り付けられている。このRFIDタグ25は、アンテナとICを備えている、RFIDタグ25のIC内の記憶部には、識別情報であるIDや、物品の情報である物品名や仕様など、適宜の情報が記憶されている。
【0018】
作業工程Bには、検知エリアRに存在するRFIDタグ25を読取りできるRFID検知装置1が設置されている。RFID検知装置1は、アンテナ10と、制御部13と、記憶部15とで構成されている。
アンテナ10は、指向方向を35°〜−35°まで調節可能な3素子アレーアンテナにより構成されている。
【0019】
制御部13は、CPUとROMとRAMで構成され、RFIDタグ通信プログラムなどのプログラムに従った制御動作や演算動作を実行する。
記憶部15は、不揮発性メモリあるいはハードディスク等の記憶装置で構成されており、プログラムや情報(データ)を記憶する。
【0020】
次に、RFID検知装置1を用いて所望の領域のRFIDタグ25のみ読取る方法の理論について説明する。この実施例では、RFID検知装置1を擬似的にペンシルビームアンテナとして使用し、アンテナ10の正面から±15°という狭い領域のみ読取る例について説明する。
【0021】
図2は、アンテナ10の指向パターンを示すグラフ図である。このグラフにおいて、縦軸はアンテナ10の指向性利得(Gain)を示し、単位はデシベル(dBi)である。横軸は、角度を示し、単位は度(deg)である。
【0022】
図中の左方向指向時の指向性利得D_L(θ)は、アンテナ10の指向方向(角度θ)を−35°としたときに、アンテナ10の正面を0°とする各方向での指向性利得をグラフ表記したものである。
【0023】
図中の中央方向指向時の指向性利得D_C(θ)は、アンテナ10の指向方向(角度θ)を0°としたときに、アンテナ10の正面を0°とする各方向での指向性利得をグラフ表記したものである。
【0024】
図中の右方向指向時の指向性利得D_R(θ)は、アンテナ10の指向方向(角度θ)を35°としたときに、アンテナ10の正面を0°とする各方向での指向性利得をグラフ表記したものである。
【0025】
ここで、受信レベルRx_Lは、下記の式(数3)で表すことができる。なお、対数表記と真数表記の関係式は、次式(数1,数2)の通りである。
(数1)
Rx = 10 × log10(Rx’)
(数2)
Rx’ = 10(Rx/10)
※Rx(dBm):対数表記, Rx’(mW):真数表記
【0026】
(数3)
[A]対数表記
Rx_L = Pt + Dt(θ) − Loss + D_L(θ)
※Pt:タグの送信電力, Loss:自由空間損出
Dt(θ):タグの指向性利得, D_L(θ):左方向指向時の指向性利得
[B]真数表記
Rx_L’ = Pt’ × Dt’(θ) ×(λ/4πD)2 × D_L’(θ)
※Pt’:タグの送信電力, D:交信距離,
Dt’(θ):タグの指向性利得, D_L’(θ):左方向指向時の指向性利得
【0027】
また、受信レベルRx_Rは、次式で表すことができる。
【0028】
(数4)
[A]対数表記
Rx_R = Pt + Dt(θ) − Loss + D_R(θ)
※Pt:タグの送信電力, Loss:自由空間損出
Dt(θ):タグの指向性利得, D_R(θ):右方向指向時の指向性利得
[B]真数表記
Rx_R’ = Pt’ × Dt’(θ) ×(λ/4πD)2 × D_R’(θ)
※Pt’:タグの送信電力, D:交信距離,
Dt’(θ):タグの指向性利得, D_R’(θ):右方向指向時の指向性利得
【0029】
上記2つの数式について受信レベル比演算(対数表記の場合は減算(差分)、真数表記の場合は除算)を行い受信レベル比Rx_DIFを算出すると、次の式が求められる。
【0030】
(数5)
[A]対数表記
Rx_DIF = Rx_R − Rx_L
={Pt + Dt(θ) − Loss + D_R(θ)}
−{Pt + Dt(θ) − Loss + D_L(θ)}
= D_R(θ) − D_L(θ)
[B]真数表記
Rx_DIF’ = Rx_R’ / Rx_L’
=(Pt’ × Dt’(θ) ×(λ/4πD)2 × D_R’(θ))
/(Pt’ × Dt’(θ) ×(λ/4πD)2 × D_L’(θ))
= D_R’(θ) / D_L’(θ)
【0031】
上記数式5に示すように、異なる指向方向の受信レベルの式を減算または除算すると、距離、タグの性能(反射電力、タグの指向性利得)に無関係なθのみの関数となる。
【0032】
この関数をグラフ表示すると、図3に示すグラフ図になる。このグラフにおいて、縦軸は受信レベル比Rx_DIF(Gain)を示し、単位はデシベル(dB)である。横軸は、角度を示し、単位は度(deg)である。
【0033】
このグラフに示すように、受信レベル比Rx_DIFは、アンテナ10の正面付近となる0°付近で一次関数とみなせるグラフになる。なお、±10°付近より外側の角度は、サイドローブの影響によって一次関数にならない。
【0034】
従って、閾値A1,A2を用いて、受信レベル比Rx_DIFが次式に示す条件に合致するRFIDタグ25のみを抽出すれば、正面方向にあるRFIDタグ25のみを選別することができる。すなわち、その他のRFIDタグ25については、読み取っても対象から排除できる。
【0035】
(数6)
−A1 < Rx_DIF < A2
※A1:下限閾値, A2:上限閾値
【0036】
次に、図4に示すフローチャートと共に、上記理論を用いて目的の領域内のRFIDタグ25のみを選別して通信する際のRFID検知装置1の制御部13がRFIDタグ通信プログラムに従って実行する動作について説明する。
【0037】
制御部13は、アンテナ10に対して、指向方向を35°に設定して信号送信するように要求する(ステップS1)。このとき送信する信号は、RFIDタグ25に対して識別情報であるIDを応答送信させる信号とする。
【0038】
制御部13は、RFIDタグ25からの応答信号をアンテナ10により受信し、受信したIDと受信レベルRx_Rを記憶部15に記憶する(ステップS2)。このとき、図5の記憶部15に記憶する受信情報の説明図に示すように、IDと右指向時受信レベルが記憶される。
【0039】
制御部13は、アンテナ10に対して、指向方向を−35°に設定して信号送信するように要求する(ステップS3)。このとき送信する信号は、ステップS1と同様に、RFIDタグ25に対して識別情報であるIDを応答送信させる信号とする。
【0040】
制御部13は、RFIDタグ25からの応答信号をアンテナ10により受信し、受信したIDと受信レベルRx_Lを記憶部15に記憶する(ステップS4)。このとき、図5に示すように、対応するIDの情報として、左指向時受信レベルが追加記憶される。
【0041】
制御部13は、ID毎に受信レベルRx_Lと受信レベルRx_Rの差分演算(対数表記の場合は差分,真数表記の場合は除算)を実行し、受信レベル比Rx_DIFを求め、図5に示すように、対応するIDの情報として受信レベル比Rx_DIFを記憶する(ステップS5)。
【0042】
制御部13は、予め定められた閾値A1,A2の範囲内(−A1からA2の範囲内)に受信レベル比Rx_DIFが入っているIDを抽出し、抽出したIDのみを有効なIDと判定し(ステップS6)、処理を終了する。
【0043】
以上の構成および動作により、RFID検知装置1は、アンテナ10の本来の読取り可能領域よりも狭い目的領域内のRFIDタグ25を選別して読取ることができる。
【0044】
詳述すると、図6(A)〜(C)に示すように、アンテナ10の読取り可能領域は、本来ぼやけた領域となっている。
すなわち、図6(A)に示す指向方向0°の場合、強く受信できる強領域R1と、ある程度受信できる通常領域R2の境界、および通常領域R2の周囲は、明確な境界がなく、なだらかに連続している。このため、周囲環境によって読取れたり読取れなかったりする場合が発生する。また、サイドローブ領域R3の存在もあるため、1つの受信結果によって明確な読取可能領域を定めることが困難である。
【0045】
同様に、指向方向を右へ35°傾けた図6(B)の場合、指向方向を左へ−35°傾けた図6(C)の場合も、境界がなくぼやけている点は同一である。
【0046】
これに対し、指向方向を右へ35°傾けた図6(B)と指向方向を左へ−35°傾けた図6(C)とを上述した方法によって合成し、閾値範囲内を抽出した図6(D)は、読取り可能領域(読取り対象領域)が所望の領域(図示の例では±15°の角度範囲)内に定められ、しかも読取り可能な領域と不可能な領域の境界が非常に明確である。したがって、RFID検知装置1は、アンテナ10を高精度のペンシルビームアンテナの如く用いることができ、所望の領域のRFIDタグ25のみ読取ることが可能となる。
【0047】
また、RFID検知装置1は、閾値A1,A2を変えるだけで、所望の領域を簡単に調節することができる。
また、対数表記の場合は差分演算、真数表記の場合は除算を用いることにより、距離やタグの性能(反射電力、タグの指向性利得)による誤差をキャンセルでき、高精度な検知が可能となる。
【0048】
また、目的方向を中央とし、右方向と左方向といった左右両側の指向方向で読取りを行っているため、その間の目的方向に存在するRFIDタグ25を確実に読取ることができる。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2のRFID検知装置1について説明する。この場合、RFID検知装置1のハードウェアは実施例1と同一であり、プログラムによるソフトウェア処理のみが実施例1と異なる。従って、異なる処理のみを説明し、その他の詳細な説明は実施例1と同一であるので省略する。
【0050】
実施例1で説明した受信レベルRx_Cは、次式で表すことができる。
【0051】
(数7)
[A]対数表記
Rx_C = Pt + Dt(θ) − Loss + D_C(θ)
※Pt:タグの送信電力, Loss:自由空間損出,
Dt(θ):タグの指向性利得, D_C(θ):中央方向指向時の指向性利得
[B]真数表記
Rx_C’ = Pt’ × Dt’(θ) ×(λ/4πD)2 × D_C’(θ)
※Pt’:タグの送信電力, D:交信距離,
Dt’(θ):タグの指向性利得, D_C’(θ):中央方向指向時の指向性利得
【0052】
そして、実施例1で説明した受信レベルRx_Lと受信レベルRx_Cの差分(対数表記の場合は差分,真数表記の場合は除算)による左方向受信レベル比Rx_DIF_Lを求めると、次式のようになる。
【0053】
(数8)
[A]対数表記
Rx_DIF_L = Rx_C − Rx_L
= D_C(θ) − D_L(θ)
[B]真数表記
Rx_DIF_L’ = Rx_C’ / Rx_L’
= D_C’(θ) / D_L’(θ)
【0054】
また、実施例1で説明した受信レベルRx_Rと受信レベルRx_Cの差分(対数表記の場合は差分,真数表記の場合は除算)による右方向受信レベル比Rx_DIF_Rを求めると、次式のようになる。
【0055】
(数9)
[A]対数表記
Rx_DIF_R = Rx_C − Rx_R
= D_C(θ) − D_R(θ)
[B]真数表記
Rx_DIF_R’ = Rx_C’ / Rx_R’
= D_C’(θ) / D_R’(θ)
【0056】
この左方向受信レベル比Rx_DIF_Lと右方向受信レベル比Rx_DIF_Rをグラフに示すと、図7に示すグラフになる。従って、次式の条件を満たすRFIDタグ25を選別すれば、角度の範囲(領域)が制限され、所望の領域のRFIDタグ25を抽出することができる。なお、図示の例では、閾値A1とA2を同一の値に設定している。
【0057】
(数10)
Rx_DIF_L > A1 AND Rx_DIF_R > A2
※A1,A2:閾値
【0058】
なお、この実施例で説明する計算式により最終的に必要となるのは指向性利得の差(または除)であり比率で得られる。このため、この実施例では単位にmWとdBmを用いて説明しているが、これに限らず単位にdBWを用いても同一結果を得ることができる。また同様に、この実施例で説明するように単位にdBiを用いてアイソトロピックアンテナからの倍率比を求めても、この実施例と異なる単位であるdBdを用いてダイポールアンテナに対する倍率比を求めても、同一結果を得ることができる。
【0059】
次に、図8に示すフローチャートと共に、上記理論を用いて目的の領域内のRFIDタグ25のみを選別して通信する際のRFID検知装置1の制御部13がRFIDタグ通信プログラムに従って実行する動作について説明する。
【0060】
制御部13は、アンテナ10に対して、指向方向を35°に設定して信号送信するように要求する(ステップS11)。このとき送信する信号は、RFIDタグ25に対して識別情報であるIDを応答送信させる信号とする。
【0061】
制御部13は、RFIDタグ25からの応答信号をアンテナ10により受信し、受信したIDと受信レベルRx_Rを記憶部15に記憶する(ステップS12)。
【0062】
制御部13は、アンテナ10に対して、指向方向を0°に設定して信号送信するように要求する(ステップS13)。このとき送信する信号は、ステップS1と同様に、RFIDタグ25に対して識別情報であるIDを応答送信させる信号とする。
【0063】
制御部13は、RFIDタグ25からの応答信号をアンテナ10により受信し、受信したIDと受信レベルRx_Cを記憶部15に記憶する(ステップS14)。
【0064】
制御部13は、アンテナ10に対して、指向方向を−35°に設定して信号送信するように要求する(ステップS15)。このとき送信する信号は、ステップS1と同様に、RFIDタグ25に対して識別情報であるIDを応答送信させる信号とする。
【0065】
制御部13は、RFIDタグ25からの応答信号をアンテナ10により受信し、受信したIDと受信レベルRx_Lを記憶部15に記憶する(ステップS16)。
【0066】
制御部13は、ID毎に受信レベルRx_Rと受信レベルRx_Cの差分演算または除算を実行し、右方向受信レベル比Rx_DIF_Rを求める(ステップS17)。
【0067】
制御部13は、ID毎に受信レベルRx_Lと受信レベルRx_Cの差分演算または除算を実行し、左方向受信レベル比Rx_DIF_Lを求める(ステップS18)。
【0068】
制御部13は、ID毎に右方向受信レベル比Rx_DIF_Rと左方向受信レベル比Rx_DIF_Lの差分演算または除算を実行し、受信レベル比Rx_DIFを求める(ステップS19)。
【0069】
制御部13は、予め定められた閾値A1,A2の範囲内(Rx_DIF_RがA1より大きく、かつ、Rx_DIF_LがA2より大きい範囲内)に受信レベル比Rx_DIFが入っているIDを抽出し、抽出したIDのみを有効なIDと判定し(ステップS20)、処理を終了する。
【0070】
以上の構成および動作により、実施例1と同様の効果を得ることができ、目的とする領域内(目的とする角度の範囲内)のRFIDタグ25を検知することができる。
【0071】
特に、この実施例2では、中心方向の受信レベルRx_Cを用いたため、目的領域である中心方向の受信可能距離を実施例1より十分長くすることができる。つまり、実施例1では、中心方向の受信レベルRx_Cを用いなかったため、受信レベルRx_Lと受信レベルRx_Rの指向方向の角度を離間させるほど、目的領域である中心方向の読取り可能距離が短くなる。
【0072】
これに対して、実施例2は、中心方向の受信レベルRx_Cを用いるため、目的領域である中心方向の読取り可能距離が短くならず、狭い幅で長い距離を読取り可能領域に設定することが可能となる。
このため、ベルトコンベア21からアンテナ10を十分離間させることができ、工程設計を実施例1よりさらに容易にすることができる。
【0073】
なお、以上の各実施例において、指向方向を変えた後の読取りであるステップS4,n14,n16で、最初の指向方向で読取ったIDと対応するIDがない場合、当該IDの情報を記憶せず破棄してもよい。また、ステップS2とステップS4(実施例2の場合はステップS12,n14,n16)ではそれぞれ別に情報を記憶しておき、両方(実施例2の場合は全て)に同一のIDがある情報のみ抽出して演算する構成にしてもよい。これらの場合、一方の指向方向でしか受信できなかったRFIDタグ25を検知対象から容易に排除できる。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の非接触IC媒体通信装置は、実施形態のRFID検知装置1に対応し、
以下同様に、
受信手段は、アンテナ10に対応し、
演算手段は、ステップS5を実行する制御部13に対応し、
抽出手段は、ステップS6を実行する制御部13に対応し、
非接触IC媒体は、RFIDタグ25に対応し、
閾値範囲は、閾値−A1から閾値A2の間に対応し、
異なる読取り領域は、通常領域R2に対応し、
信号レベルは、受信レベルRx_L,Rx_Rに対応し、
合成信号レベルは、受信レベル比Rx_DIFに対応し、
一方合成レベルは、左方向受信レベル比Rx_DIF_Lに対応し、
他方合成レベルは、右方向受信レベル比Rx_DIF_Rに対応し、
受信処理は、ステップS2,S4,S12,S14,S16に対応し、
演算処理は、ステップS5,S19に対応し、
抽出処理は、ステップS6,S20に対応し、
非接触IC媒体通信プログラムは、RFIDタグ通信プログラムに対応し、
識別情報は、IDに対応し、
非接触IC媒体から受信する信号は、RFIDタグ25からの応答信号に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】工場内の各作業工程とRFID検知装置を説明する説明図。
【図2】受信レベルを指向方向別に示すグラフ図。
【図3】受信レベル比のグラフ図。
【図4】制御部が実行する動作のフローチャート。
【図5】記憶部に記憶する受信情報の説明図。
【図6】アンテナの読取可能領域を説明する説明図。
【図7】実施例2の左方向受信レベル比と右方向受信レベル比のグラフ図。
【図8】実施例2の制御部が実行する動作のフローチャート。
【符号の説明】
【0076】
1…RFID検知装置、10…アンテナ、13…制御部、25…RFIDタグ、A1,A2…閾値、R2…通常領域、Rx_L,Rx_R…受信レベル、Rx_DIF…受信レベル比、Rx_DIF_L…左方向受信レベル比、Rx_DIF_R…右方向受信レベル比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる読取り領域毎に,該読取り領域内に存在する非接触IC媒体の識別情報と該非接触IC媒体から受信する受信信号の信号レベルとを対応付けて取得する受信手段と、
前記識別情報毎に前記読取り領域の異なる複数の受信信号の信号レベルを差分演算または除算して合成信号レベルを取得する演算手段と、
予め設定された閾値範囲内に前記合成信号レベルが入っている前記識別情報を抽出する抽出手段と、を備えた
非接触IC媒体通信装置。
【請求項2】
前記読取り領域は,少なくとも読取り目的である目的領域を挟んで両側に設定した
請求項1または2記載の非接触IC媒体通信装置。
【請求項3】
前記読取り領域は,さらに前記目的領域を中心とする中心領域にも設定し、
前記演算手段は,
前記両側の領域の一方における受信信号の信号レベルと前記中心領域における受信信号の信号レベルとを差分演算または除算して一方合成信号レベルを取得し、
前記両側の領域の他方における受信信号の信号レベルと前記中心領域における受信信号の信号レベルとを差分演算または除算して他方合成信号レベルを取得し、
これらの一方合成信号レベルと他方合成信号レベルを差分演算または除算して合成信号レベルを取得する、構成とした
請求項2記載の非接触IC媒体通信装置。
【請求項4】
複数の異なる読取り領域毎に,該読取り領域内に存在する非接触IC媒体の識別情報と該非接触IC媒体から受信する受信信号の信号レベルとを対応付けて取得し、
前記識別情報毎に前記読取り領域の異なる複数の受信信号の信号レベルを差分演算または除算して合成信号レベルを取得し、
予め設定された閾値範囲内に前記合成信号レベルが入っている前記識別情報を抽出する
非接触IC媒体通信方法。
【請求項5】
複数の異なる読取り領域毎に,該読取り領域内に存在する非接触IC媒体の識別情報と該非接触IC媒体から受信する受信信号の信号レベルとを対応付けて受信手段により取得する受信処理と、
前記識別情報毎に前記読取り領域の異なる複数の受信信号の信号レベルを演算手段により差分演算または除算して合成信号レベルを取得する演算処理と、
予め設定された閾値範囲内に前記合成信号レベルが入っている前記識別情報を抽出手段により抽出する抽出処理と、を実行する
非接触IC媒体通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−157892(P2009−157892A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339851(P2007−339851)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【特許番号】特許第4285576号(P4285576)
【特許公報発行日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】