説明

非水性イオン液中のコバルトベース触媒を必要とするヒドロホルミル化法

本発明は、100℃以下の温度で液体であり、少なくとも1種のカチオンQおよび少なくとも1種のアニオンAを含む非水性イオン液中で用いられるコバルトベースの触媒によるオレフィン性不飽和化合物のヒドロホルミル化方法であって、圧力下の反応の少なくとも1回の段階と、静置することによる相分離の少なくとも1回の段階とを包含し、触媒の再循環は、ルイス塩基、より特定的には、ピリジン誘導体から選ばれた配位子の使用を通じて、および同時に、反応後の段階におけるこの配位子の添加を通じて向上させられる方法に関する。この方法の後に、反応生成物を含有する有機相は回収され得、触媒を含有するイオン液相は、ヒドロホルミル化反応器に再循環させられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性イオン液中で用いられるコバルトベース触媒によってオレフィン性不飽和化合物をヒドロホルミル化する方法であって、該非水性イオン液は、少なくとも1種のカチオンQおよび少なくとも1種のアニオンAを含み、触媒の再利用が改良される、方法に関する。
【0002】
オレフィン性化合物のヒドロホルミル化は、産業重要性が高い反応であるが、大抵の方法は、反応剤、生成物および場合によっては過剰の配位子からなる有機相中に溶解した均一触媒を必要とし、そのため、触媒を分離および回収することは、特に、コバルトベースの触媒を用いる方法の場合のように比較的大量に用いられる場合に困難である。
【背景技術】
【0003】
この問題を解消するための一つの解決方法は、非特許文献1〜3に挙げられた。それは、ホスフィン−スルホナート配位子、例えば、トリスルホン化トリフェニルホスフィンまたはトリスルホン化トリス−(アルキルフェニル)−ホスフィンのナトリウム塩の存在によって水溶性に作られたコバルト錯体を含有する水溶液の存在下にヒドロホルミル化を行うことにある。アルデヒドを含有する有機相は、それ故に、触媒を含有する水相から容易に分離される。
【0004】
相当な数のこれらの種々の系にも拘わらず、いくつかの有機基質、例えば、長鎖オレフィンの溶解性の低さは、これらの方法にとっての主要な制限である。このタイプの供給材料のヒドロホルミル化は、低い反応速度をもたらすことが多く、これによりあらゆる産業上の適用が不可能になる。さらに、水は、触媒と反応することができる非常に配位結合性の高い極性溶媒である。非常に興味深いことではあるものの、反応溶媒としての水の使用が全ての触媒および基質のタイプに一般化されることができるわけではない。
【0005】
本出願人により出願された特許文献1には、反応溶媒としての水の使用に関連するいくつかの制限(特に、長鎖オレフィンの溶解性)は、ヒドロホルミル化を触媒するために知られている8、9および10族からの遷移金属のいくつかの触媒化合物を有機−無機塩液からなる非水性イオン液に室温で溶解させることによって克服され得ることが記載されている。
【0006】
しかしながら、触媒がコバルトの塩または錯体を含む場合、ヒドロホルミル化反応の条件下にジコバルトオクタカルボニルおよび/またはコバルトテトラカルボニルヒドリドの少なくとも部分的な形成を防ぐことは非常に困難である。これらの2種の化合物は少なくともオレフィン性反応剤および生じたアルデヒドからなる有機反応相に可溶であるので、非水性イオン液相によるコバルトの再利用は部分的でしかなく、これにより、触媒の損失がもたらされる。
【0007】
さらに、本出願人によって出願された特許文献2には、反応生成物と部分的または全体的に混和性のイオン液中で反応を行い、その際、反応セクション後にイオン液と弱混和性または非混和性の有機溶媒を注入することによって反応速度を増加させつつ、触媒を含有するイオン液の分離および再使用の利点を維持し、かつ、反応生成物の回収率を向上させることが可能であることが示され、これは、有利には、ヒドロホルミル化されるべきオレフィン性不飽和化合物であり得、反応流出生成物の脱混合性(demixing)を向上させる。
【0008】
これに関連して、本出願人によって出願された特許文献3において、非水性イオン液中で用いられるコバルト錯体によって触媒されるヒドロホルミル化反応では、イオン液中の金属の再利用は、ルイス塩基の中から選択された配位子を使用すること、およびこれと同時に圧力下の反応段階とデカンテーションによる相分離の段階との間の中間的な脱圧段階によって大きく向上することが見出され、かつ、記載された。この脱圧段階の終了時に、有機相は、デカンテーション段階において分離され、触媒を含有する非水性イオン液相は再使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5874638号明細書
【特許文献2】米国特許第6617474号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0225303号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】バルティック(Bartik)ら著、「オルガノメタリックス(Organometallics)」、1993年、第12号、p.164−170
【非特許文献2】バルティック(Bartik)著、「J.Organometal.Chem.」、1994年、第480号、p.15−21
【非特許文献3】ベラー(Beller)ら著、「J.Molecular Catal.A:Chemical」、1999年、第143号、p.31−39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
反応後の段階中への配位子の添加によって、一方では反応速度、他方では、イオン液相中のコバルトベースの触媒の保持および再利用を大きく向上させることが可能であることが現在見出された。本発明は、それ故に、システムの新しい実施、特に、高速の反応速度および向上した触媒の保持および再利用を結び付けることを目的とした実施を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるオレフィン性不飽和化合物の液相中のヒドロホルミル化の方法は、それ故に、
− 少なくとも1種の非水性イオン液および触媒の存在下に行われる反応段階であって、該非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qはカチオンを示し、Aはアニオンを示す)の少なくとも1種の塩を含み、該触媒は、ルイス塩基の中から選択される少なくとも1つの配位子Lを有する少なくとも1種のコバルト錯体を含む、反応段階;
− 脱圧段階;
− デカンテーションの段階;および
− 再利用の段階
を包含することにおいて規定され得、該方法は、配位子L(場合によっては、有機溶媒との混合物中)の添加が、反応後の段階において行われることおよびこの反応後の段階における配位子Lのコバルト化合物に対するモル比(L/Co)が2:1超、好ましくは100:1以下であることを特徴とする。
【0013】
ヒドロホルミル化される可能性がある不飽和オレフィン化合物は、モノオレフィン、ジオレフィン(特に、共役ジオレフィン)、1以上のヘテロ原子(特に、不飽和のもの、例えば、ケトン基またはカルボン酸)を含むオレフィン性化合物の中から選択される。
【0014】
その非制限的な例は、ペンテンのヘキサナールおよびメチルペンタナールへのヒドロホルミル化、ヘキセンのイソヘプタナールへのヒドロホルミル化、イソオクテンのイソノナナールへのヒドロホルミル化、イソデセンのイソウンデカナールへのヒドロホルミル化、オレフィン性C11〜C16留分のC12〜C17アルデヒドへのヒドロホルミル化である。これらのオレフィン性化合物は、高純度で用いられるか、飽和または不飽和の炭化水素によって希釈され得る。それらは、特には、オレフィン転化法、例えば、オレフィン(特にC2−C5オレフィン)の二量化およびオリゴマー化、およびオレフィン混合物の生成をもたらす任意の他の方法に由来し得る。本発明の方法によりヒドロホルミル化されるべき可能性がある供給材料の非制限的な例は、Dimersol(登録商標)、Difasol(登録商標)、Octol(登録商標)またはSHOP(登録商標)法に由来するオレフィンである。
【0015】
この方法は、主に内部モノオレフィンからなる、ヒドロホルミル化されるべき供給材料、すなわち、多くとも30%の末端モノオレフィンを含有するモノオレフィン混合物のために用いられ得る。
【0016】
以下の組成を有するオクテン混合物が特に挙げられ得る:
− 線状(linear)オクテン(2〜10重量%)、
− メチルヘプテン(50〜70重量%)、
− ジメチルヘキセン(25〜35重量%)、
− 他のモノオレフィン(1〜3重量%);
ここで、10%未満が末端モノオレフィンである。
【0017】
反応生成物およびイオン液の分離を向上させるために、上記の反応混合物への補足物として有機溶媒を用いることが可能である。この溶媒の添加は、好ましくは、反応後の段階において行われる。この有機溶媒は、より特定的には、脂肪族炭化水素、環式または非環式の、飽和または不飽和の、および芳香族または置換芳香族の炭化水素の中から選択される。後者の中で、有機溶媒は、好ましくは、n−パラフィンおよびイソパラフィンおよび環式脂肪族炭化水素の中から選択され得る。より好ましくは、有機溶媒は、転化されるべきオレフィン性不飽和化合物(単数種または複数種)からなり得る。それは、配位子を添加するために用いられ得る。
【0018】
触媒前駆体のコバルト化合物は、コバルト塩(例えば、アセチルアセトナート、アルコラート、カルボキシラート、特に、ホルミアートまたはアセタート)およびカルボニル錯体(例えば、ジコバルトオクタカルボニル、コバルトテトラカルボニルヒドリドおよびカルボニルクラスター)の中から選択される。触媒前駆体化合物の選択は重大ではない。
【0019】
ルイス塩基配位子は、酸素含有配位子、硫黄含有配位子、窒素含有配位子およびリン含有配位子の中から選択され、これらの配位子は、イオン性の官能基によって置換されるかまたは置換されない。イオン性の官能基は、スルホナート、カルボキシラート、ホスファート、アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウムの中から選択される。
【0020】
酸素含有配位子は、より特定的には、アルコール、フェノール、エーテル、ケトンおよびアセタールの中から選択される。その非制限的な例は、メタノール、エタノール、フェノール、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン−1,4、ジオキソラン−1,3、グライム、ジグライム、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチラール、ジメトキシ−2,2−プロパンおよびジ(エチル−2−ヘキシルオキシ)−2,2−プロパンである。
【0021】
硫黄含有配位子は、より特定的には、チオール、チオフェノール、チオエステルおよびジスルフィドの中から選択される。その非制限的な例は、メタンチオール、エタンチオール、チオフェノール、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンである。
【0022】
窒素含有配位子は、より特定的には、モノアミン、ジ−、トリ−およびポリ−アミン、イミン、ジ−イミン、ピリジン、ビピリジン、イミダゾール、ピロールおよびピラゾールの中から選択される。優先的には、ピリジンタイプの配位子は、無置換ピリジンおよび2、3、4または5位においてアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ハロゲニド、カルボキシアルキル基により置換されたピリジンの中から選択される。その非制限的な例は、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロ−オクタン、N,N’−ジメチル−エタン−1,2−ジイミン、N,N’−ジ−t−ブチル−エタン−1,2−ジイミン、N,N’−ジ−t−ブチル−ブタン−2,3−ジイミン、N,N’−ジフェニル−エタン−1,2−ジイミン、N,N’−ビス−(ジメチル−2,6−フェニル)−エタン−1,2−ジイミン、N,N’−ビス−(ジイソプロピル−2,6−フェニル)−エタン−1,2−ジイミン、N,N’−ジフェニル−ブタン−2,3−ジイミン、N,N’−ビス−(ジメチル−2,6−フェニル)−ブタン−2,3−ジイミン、N,N’−ビス−(ジイソプロピル−2,6(フェニル)−ブタン−2,3−ジイミン、ピリジン、2−ピコリン、4−ピコリン、t−ブチル−2−ピリジン、t−ブチル−4−ピリジン、ブチル−3−ピリジン、フェニル−2−ピリジン、フェニル−3−ピリジン、フェニル−4−ピリジン、ベンジル−2−ピリジン、ベンジル−4−ピリジン、メトキシ−2−ピリジン、メトキシ−3−ピリジン、メトキシ−4−ピリジン、ジ(t−ブチル)−2,6−ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、ジ(フェニル)−2,6−ピリジン、(フェニル−3−プロピル)−4−ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、ピロール、N−メチルピロールおよびジメチル−2,5−ピロールである。
【0023】
リン含有配位子は、より特定的には、ホスフィン、ポリホスフィンおよびホスフィンオキシド、ホスファイトの中から選択される。その非制限的な例は、トリブチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、ビス(ジフェニルーホスフィノ)エタン、トリオクチル−ホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシドおよびトリフェニルホスファイトである。
【0024】
好ましい配位子は、より特定的には、ピリジン誘導体の中から選択される。その非制限的な例は、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−メトキシピリジン、3−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−フルオロピリジン、3−フルオロピリジン、3−トリフルオロメチルピリジン、2−フェニルピリジン、3−フェニルピリジン、2−ベンジルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンおよび2,6−ジフェニルピリジン、キノリンおよび1,10−フェナントロリンである。
【0025】
触媒組成物は、形はどうあれ、イオン液をコバルト化合物および配位子と混合することによって得られる。遷移金属化合物および/または配位子はまた、最初に有機溶媒に溶解させられ得る。
【0026】
コバルト前駆体および配位子から形成する錯体は、反応に先行して、コバルト前駆体を配位子と、適切な溶媒、例えば有機溶媒中または触媒反応においてその後に用いられることになる非水性イオン液中で混合することによって調製され得る。錯体はまた、現場でコバルト前駆体および配位子を直接的にヒドロホルミル化反応器において混合することによって調製され得る。
【0027】
非水性イオン液中のコバルト錯体の濃度は重大ではない。それは、有利には、イオン液の容積(L)当たり0.1mmol〜10mol(コバルト原子において)、好ましくは容積(L)当たり10mmol〜5mol、より好ましくは容積(L)当たり50mmol〜1molの範囲である。
【0028】
ヒドロホルミル化のための反応媒体において用いられる水素の一酸化炭素に対する分圧の比は、10:1〜1:10であり得、好ましくは1:1であるが、任意の他の比が、本方法の実施において用いられ得る。
【0029】
ヒドロホルミル化が行われる温度は、30〜250℃の範囲であるだろう。それは、有利には、200℃以下であり、それは、好ましくは50〜180℃である。圧力は、1〜30MPaの範囲であり得、好ましくは2〜20MPaである。
【0030】
不飽和化合物のヒドロホルミル化の触媒反応は、1以上の反応段階により行われ得る。連続的な実施形態では、圧力下の反応器からの流出物は、高くとも150℃に等しい温度、好ましくは60℃以下で、1MPa以下の圧力、好ましくは大気圧に脱圧される帯域に移される。2つの液相の間の接触は、この段階において、機械的に攪拌することまたは任意の他の適切な手段によって維持され得る。脱圧帯域における接触時間および圧力および温度の条件は、非水性イオン液への触媒の移動を最良に提供するように適切に選択されなければならない。
【0031】
脱圧帯域の出口において、反応生成物を含有する有機相は、有利には、触媒の大部分を含有する非水性イオン液相の単純なデカンテーションによって分離される。触媒を含有するこのイオン液相は、少なくとも部分的に、反応器に送り返され、他の部分は、系の種々の成分を適切に分離するように蒸留によって処理され得る。
【0032】
本発明による方法において用いられる式Qの非水性イオン液において、Qはカチオンを示し、好ましくは、第4級スルホニウム、第4級グアニジニウム、第4級アンモニウムおよび第4級ホスホニウムの中から選択され、Aは、アニオンを示し、好ましくは、以下のアニオンの中から選択される:ハロゲニド、ニトラート、スルファート、アルキルスルファート、ホスファート、アルキルホスファート、アセタート、ハロゲノアセタート、テトラフルオロボラート、テトラクロロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロ−トリス−(ペンタフルオロエチル)ホスファート、ヘキサフルオロアンチモナート、フルオロスルホナート、アルキルスルホナート(例えばメチルスルホナート)、ペルフルオロアルキルスルホナート(例えばトリフルオロメチルスルホナート)、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)アミダイド(例えば、式N(CFSOのビス・トリフルオロメチルスルホニル・アミダイド)、式C(CFSOのトリストリフルオロメチルスルホニル・メチリド、式HC(CFSOのビス−トリフルオロメチルスルホニル・メチリド)、アレーンスルホナート(場合によっては、ハロゲンまたはハロゲノアルキル基によって置換される)、テトラフェニルボラートのアニオンおよび芳香環が置換されたテトラフェニルボラートアニオン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)ボラート、ビス(オキサラト)ボラート、ジシアナミド、トリシアノメチリド並びにテトラクロロ−アルミナートのアニオン。
【0033】
カチオンQは、好ましくは、第4級スルホニウム、第4級グアニジニウム、第4級ホスホニウムおよび第4級アンモニウムの中から選択される。
【0034】
以降の式において、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、水素、または1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基(例えば、アルキル基)、飽和または不飽和の、シクロアルキルまたは芳香族、アリールまたはアラルキル(これらは、場合によっては置換され、1〜30個の炭素原子を含む)を示す(NR4+についてのNHカチオンを除き、好ましくは、1つの置換基のみが水素を示す)。
【0035】
、R、R、R、RおよびRはまた、以下の官能基の中から選択される1以上の官能基を有するヒドロカルビル基を示し得る:−COR、−C(O)R、−OR、−C(O)NRR’、−C(O)N(R)NR’R”、−NRR’、−SR、−S(O)R、−S(O)R、−SOR、−CN、−N(R)P(O)R’R’、−PRR’、−P(O)RR’、−P(OR)(OR’)、−P(O)(OR)(OR’)(式中、R、R’およびR”は、同一または異なって、それぞれ、水素または1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を示す)。
【0036】
第4級スルホニウムおよび第4級グアニジニウムカチオンは、好ましくは、以下の一般式の一つを満たす:
SR3+ およびC(NR)(NR)(NR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、同一または異なって、上記に規定された通りである)。
【0037】
第4級アンモニウムおよび/またはホスホニウムカチオンQは、好ましくは、以下の一般式:NR4+およびPR4+の一つまたは一般式:RN=CR4+およびRP=CR4+の一つを満たす(式中、R、R、RおよびRは同一または異なって、上記に規定された通りである)。
【0038】
第4級アンモニウムおよび/またはホスホニウムカチオンはまた、下記一般式の1、2または3個の窒素および/またはリン原子を含む窒素含有および/またはリン含有のヘテロ環に由来し得る:
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、環は、4〜10個の原子、好ましくは5〜6個の原子からなり、RおよびRは、同一または異なって、上記に規定された通りである)。
【0041】
第4級アンモニウムまたはホスホニウムカチオンはまた、以下の一般式の一つを満たし得る:
2+N=CR−R−RC=Nおよび
2+P=CR−R−RC=P
(式中、R、RおよびRは、同一または異なって、上記の規定の通りであり、Rは、アルキレンまたはフェニレン基を示す)。
【0042】
、R、RおよびR基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、第1級ブチル、第2級ブチル、第3級ブチル、アミル、フェニルまたはベンジル基である;Rは、メチレン、エチレン、プロピレンまたはフェニレン基であり得る。
【0043】
好ましくは、第4級アンモニウムおよび/またはホスホニウムカチオンQは、N−ブチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、ピリジニウム、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム、ヘキシル−3−メチル−1−イミダゾリウム、ブチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム、エチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム、N−ブチルイミダゾリウム、N−エチルイミダゾリウム、(ヒドロキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・カチオン、(カルボキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・カチオン、ジエチルピラゾリウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルモルホリニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムおよびトリブチル−テトラデシル−ホスホニウムの中から選択される。
【0044】
本発明により用いられ得る塩の例は、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、トリエチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、トリメチルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、N−エチル−N−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、ブチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ヘキサフルオロアンチモナート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフルオロアセタート、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・メチルスルファート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ブチルスルファート、(ヒドロキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、(カルボキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイドおよびN−ブチル−N−メチルモルホリニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイドである。これらの塩は、単独でまたは混合物中で用いられ得る。
【0045】
本発明はまた、上記に規定されたようなヒドロホルミル化方法を実施するためのプラントであって、以下の(図1)
− 少なくとも1つの反応器(A1)、
− 場合による、混合機(B3)、
− 少なくとも1つの脱圧閉鎖容器(「脱圧機」)(B1)、
− 反応器(A1)に再循環させられる、少なくとも非水性イオン溶媒および少なくとも触媒を含有する極性相のデカンテーションのための少なくとも1つのデカンター(B2)、
− 分離セクションにおける、粗反応生成物およびヒドロホルミル化されるべき未反応オレフィン性不飽和化合物並びに有機相中に存在する配位子の分離のための少なくとも1つのカラム(A2)、
並びに:
− ヒドロホルミル化されるべき供給材料および一酸化炭素/水素混合物の送達のための少なくとも1つのライン(1)、
− 反応器から脱圧機(B1)への流出物の移動のための少なくとも1つのライン(2)、
− 脱圧機(B1)に含まれる有機流出物の混合物およびイオン溶媒をデカンター(B2)に送るための少なくとも1つのライン(3)、
− 反応器(A1)の入口に脱圧機(B1)からのガスを送るための少なくとも1つのライン(4)、
− 反応器(A1)に、デカンター(B2)において分離された少なくともイオン液および触媒を含有する極性相を送り返すことを可能にするための少なくとも1つのライン(5)、
− デカンター(B2)から粗反応生成物を排出することを可能にする少なくとも1つのライン(6)、
− 脱圧機(B1)に、カラム(A2)において分離されたヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物並びに配位子を再循環させるための少なくとも1つのライン(7)(この再循環は、場合によっては、ライン(7’)を介して脱圧機(B1)から上流に位置する混合機(B3)において行われ得る)、
− カラム(A2)の底部において集められた生成物を、生成物分画化トレインの残りに送ることを可能にする少なくとも1つのライン(8)、
− 必要に応じて蒸留物が排出されることを可能にする少なくとも1つのライン(9)、
− 本発明に記載される配位子の反応後添加のための少なくとも1つのライン(10)(配位子は、単独でまたは有機溶媒中の混合物で添加され得る)、および
− 場合による、脱圧機(B1)から上流に位置する混合機(B3)中への配位子の反応後添加のためのライン(10’)
を含むもの関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による一つの方法およびプラントを説明するフローシートである。
【図2】本発明による他の方法およびプラントを説明するフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明による方法およびプラントは、以下の記載から、図1を参照しつつより良好に理解されることになる。
【0048】
図1によると、反応は、反応器(A1)において、ヒドロホルミル化されるべき供給材料、コバルト化合物(単数種または複数種)、一酸化炭素および水素の存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下に行われる。ヒドロホルミル化されるべき供給材料は、ライン(1)を通じて導入され得、一酸化炭素および水素もライン(1)を通じて導入され得る。イオン液は、反応の開始時に反応器内に導入され得る。場合により、反応の間に新鮮なイオン液が反応器(A1)に注入され得、反応器(A1)から使用済みイオン液が排出され得る(イオン液の注入および排出の手段は、図1に示されていない)。
【0049】
反応熱は、当業者に知られた技術によって除かれる(図1において示されていない)。
【0050】
反応セクションの出口において、反応器の流出物は、ライン(2)を通じて、少なくとも1つの脱圧機(B1)に送られ、ここで、圧力が下げられる。場合により、反応器の流出物は、脱圧機(B1)から上流に位置する混合機(B3)を通過し得る。攪拌は、脱圧機(B1)並びに混合機(B3)において、機械的にまたは任意の他の適切な手段を用いて維持され得る。脱圧を通じて放出されるガスは、ライン(4)を通じて流れ出、それらは、再圧縮後に反応器(A1)の入口に送り返される。この脱圧段階の間に、配位子、並びに、未転化オレフィンおよび場合による溶媒は、反応混合物に直接的に脱圧機(B1)中にライン(7)を通じて添加され得る。それらは、あるいは、脱圧機(B1)から上流に位置する混合機(B3)にライン(7’)を通じて導入され得る。
【0051】
脱圧機(B1)からの流出物は、次いで、ライン(3)を通じてデカンター(B2)に送られる。このデカンター(B2)において、少なくともイオン液および触媒を含有するより低い極性相は、生成物の混合物および有機溶媒から分離され、それは、ライン(5)を通じて反応器(A1)に送り返される。
【0052】
デカンター(B2)において分離された上部の有機相は、ライン(6)を通じて蒸留カラム(A2)に送られる。カラム(A2)において、ヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性化合物、配位子および場合による溶媒は、頂部において分離される。上記のように、それらは、ライン(7)を通じて脱圧機(B1)にまたは場合によってはライン(7’)を通じてその上流の混合機(B3)に再循環させられる。カラム(A2)の底部において集められた粗反応生成物は、特定の分画化トレイン(図示せず)にライン(8)を通じて送られる。
【0053】
上記において規定されたようなヒドロホルミル化法を実施するための別のプラントはまた、図2に示されるようにしても可能である。例えば、このプラントは、沸点が以下の増加順に従う種々の成分を有するシステムのために特に適している(Bp=沸点):
Bp転化されるべきオレフィン<Bp配位子≦Bp溶媒<Bp反応生成物
このプラントは、以下を含む:
− 少なくとも1つの反応器(A1)、
− 場合による混合機(B3)、
− 少なくとも1つの脱圧閉鎖容器(「脱圧機」)(B1)、および
− 反応器(A1)に再循環させられる、少なくとも非水性イオン溶媒および少なくとも触媒を含有する極性相のデカンテーションのための少なくとも1つのデカンター(B2)、
− 分離セクションにおける、ヒドロホルミル化されるべき未反応オレフィン性不飽和化合物の分離のための少なくとも1つのカラム(A2)、
− 粗反応生成物、配位子および場合による溶媒の分離のための少なくとも1つのカラム(A3)(粗反応生成物:カラム底部、配位子および溶媒:カラム頂部)、
並びに:
− ヒドロホルミル化されるべき供給材料および一酸化炭素/水素混合物の送達のための少なくとも1つのライン(1)、
− 反応器から脱圧機(B1)への流出物の移動のための少なくとも1つのライン(2)、
− デカンター(B2)に、脱圧機(B1)に含まれる有機流出物およびイオン溶媒の混合物を送るための少なくとも1つのライン(3)、
− 反応器(A1)に脱圧機(B1)からのガスを送るための少なくとも1つのライン(4)、
− 反応器(A1)に、脱圧機(B2)において分離された少なくともイオン液および触媒を含有する極性相送り返すことを可能にする少なくとも1つのライン(5)、
− デカンター(B2)から粗反応生成物を排出することを可能にする少なくとも1つのライン(6)、
− 反応器(A1)に、ヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物を再循環させるための少なくとも1つのライン(7)、
− 必要に応じて蒸留物が排出されることを可能にする少なくとも1つのライン(9)、
− 脱圧機(B1)に、カラム(A3)において分離された配位子を再循環させるための少なくとも1つのライン(10);この再循環は、場合によっては、脱圧機(B1)から(ライン(10’)を介して)上流に位置する混合機(B3)において行われ得る、
− カラム(A3)の底部から生成物分画化トレインの残りの部分に生成物を送ることを可能にする少なくとも1つのライン(11)、および
− 本発明において記載されたような配位子の反応後添加のための少なくとも1つのライン(12)(配位子は、単独でまたは溶媒中の混合物で添加され得る)。
【0054】
本発明による方法およびプラントは、以下の記載から、図2を参照しながらより良好に理解されることになる。
【0055】
図2によると、反応は、反応器(A1)において、ヒドロホルミル化されるべき供給材料、遷移金属化合物(単数種または複数種)および一酸化炭素および水素の存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下に行われる。供給材料は、ライン(1)を通じて導入され得、一酸化炭素および水素も、ライン(1)を通じて導入され得る。イオン液は、反応の開始時に反応器内に導入され得る。場合によっては、反応の間に反応器(A1)内に新鮮なイオン液が注入され得、反応器(A1)から使用済みのイオン液が排出され得る(イオン液の注入および排出の手段は、図2に示されていない)。
【0056】
反応熱は、当業者に知られた技術によって除かれる(図2には示されていない)。
【0057】
反応セクションの出口において、反応器の流出物は、ライン(2)を通じて、少なくとも1つの脱圧機(B1)に送られ、ここで、圧力は下げられる。場合によっては、反応器の流出物は、脱圧機(B1)から上流に位置する混合機(B3)を通過し得る。攪拌は、脱圧機(B1)並びに混合機(B3)において、機械的にまたは任意の他の適切な手段を用いて維持され得る。脱圧を通じて放出されるガスは、ライン(4)を通じて流れ出、それらは、再圧縮の後に反応器(A1)の入口に送り返される。この脱圧段階の間に、ライン(10)から来る配位子並びに場合によってはカラム(A3)から来る溶媒(これは以下に説明されることになる)は、反応混合物に直接的に脱圧機(B1)にライン(10)を通じて添加され得る。あるいは、この添加は、脱圧機から上流に位置する混合機(B3)においてライン(10’)を通じて行われ得る。
【0058】
脱圧機(B1)からの流出物は、次いで、デカンター(B2)にライン(3)を通じて送られる。このデカンター(B2)において、少なくともイオン液および触媒を含有する極性相は、生成物の混合物および有機溶媒から分離され、それは、反応器(A1)にライン(5)を通じて送り返される。
【0059】
デカンター(B2)において分離された有機相は、蒸留カラム(A2)にライン(6)を通じて送られる。カラム(A2)では、ヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物は、頂部において分離される。それは、反応器(A1)にライン(7)を通じて再循環させられるか、または、場合によっては、ライン(9)を通じて排出される。その一部はまた、脱圧機にライン(7’)を通じて再循環させられ得る。カラム(A2)の底部において集められた生成物は、次いで、第2の蒸留カラム(A3)にライン(8)を通じて送られる。カラム(A3)において、配位子および場合による溶媒は、頂部において分離される。それらは、脱圧機(B1)にライン(10)を通じて、または、場合によっては、その上流の混合機(B3)にライン(10’)を通じて再循環させられる。第2の蒸留カラム(A3)の底部において集められた粗反応生成物は、特定の分画化トレイン(図示しない)にライン(11)を通じて送られる。
【0060】
以降の実施例2は、本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明する。実施例1は、比較の目的で与えられる。
【0061】
(実施例1:比較)
ヒドロホルミル化反応は、100mLのHastelloy(登録商標)オートクレーブにおいて行われる。このオートクレーブは、温度を制御することを可能にするヒーターバンドと、効率的な機械的攪拌システム(カウンターブレードを有するガス駆動Rushtonプロペラ)を備えている。0.213gのジコバルト−オクタカルボニル(すなわち、1.2mmolのコバルト)、2.0mol当量の2−メトキシピリジン(0.273g)、6mLのブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、15mLのヘプタンおよび15mLのC8 Dimate(Dimersol X(登録商標)からの供給材料:6重量%の線状(linear)オクテン、58重量%のメチルヘプテンおよび34重量%のジメチルヘキセン)が、このオートクレーブに給送され、水素−一酸化炭素(モルで1/1)合成ガスの大気圧下に置かれた。この合成ガスは、それが含んでいた空気および湿気が除去されていた。合成ガスの圧力は10MPaまで昇圧させられ、温度は130℃まで昇温させられ、攪拌が開始される(1000rpm)。反応器中の圧力は、反応にわたって一定に維持され、反応の進行は、合成ガスの消費量を測定することによって制御される。6時間の反応の後、合成ガスの流入は停止させられ、反応器は放置されて25℃に降温させられる。攪拌(250rpm)を維持しながら、圧力は、大気圧に達するまでゆっくりと低下させられる。攪拌は停止させられ、反応混合物は1時間にわたって静置される。オートクレーブから出された後、上部の有機相は、わずかに着色させられ、下部相は強オレンジ色である。
【0062】
触媒再循環効率を評価するために、上記の回収されかつ単離されたイオン液相は、反応器内において維持され、15mLのヘプタンおよび15mLのC8 Dimateと共に再給送される。コバルトオクタカルボニルおよび2−メトキシピリジンは添加されない。次いで、ヒドロホルミル化反応が再度6時間にわたって上記と同一装置において同一の操作方法にしたがって行われる。
【0063】
8連続のサイクルの結果が、下記表に要約される。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施例2:本発明に合致する)
ヒドロホルミル化反応は、各サイクル後に既定量の2−メトキシピリジンが6:1のL/Co比を提供するように添加される以外は、実施例1において記載されたのと同一の装置において同一の操作方法に従って行われる。この添加の後、系は、有機相中に存在するコバルトの全てがイオン液相に戻ることが可能になるように15分間にわたって攪拌される。次いで、反応器は脱圧され、反応混合物は、1時間にわたって静置される。オートクレーブから取り出した後、上部の有機相は、わずかに着色しており、下部相は、強いオレンジ色である。こうして得られたイオン液相は、反応器に再給送され、次いで、この反応器に、15mLのヘプタンおよび15mLのC8 Dimateが導入される。次いで、ヒドロホルミル化反応が、再度、実施例1において記載されたのと同一の装置において同一の操作方法に従い、当然、それぞれの新たなサイクルの後の2−メトキシピリジンの添加を伴って行われる。
【0066】
8連続のサイクルの結果が下記表に要約される。
【0067】
【表2】

【0068】
結論として、実施例1および2の結果の比較により、本発明による方法を用いる系についての向上した安定性が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相中でオレフィン性不飽和化合物をヒドロホルミル化する方法であって、
− 少なくとも1種の非水性イオン液および少なくとも1種のコバルト錯体を含む触媒の存在下に行われる反応段階であって、該非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qはカチオンを示し、Aはアニオンを示す)の少なくとも1種の塩を含み、該コバルト錯体は、ルイス塩基の中から選択される少なくとも1種の配位子Lを有する、反応段階と、
− 脱圧段階と、
− デカンテーション段階と、
− 再循環段階であって、デカンテーション段階において生成物の混合物および有機溶媒から分離される極性溶媒は、少なくとも1種のイオン液および触媒を含有するものであり、該極性溶媒は、反応段階に送り返される、段階と
を包含し、配位子L(場合によっては有機溶媒と混合して)の添加が反応後の段階において行われ、この反応後の段階におけるモル比L/Coは2超であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応後の段階において、モル比L/Coは100:1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応後の段階において、モル比L/Coは、好ましくは50:1以下、より好ましくは25:1以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
モノオレフィン、ジオレフィン、1以上のヘテロ原子を含むオレフィン性化合物の中から選択される、ヒドロホルミル化される可能性がある少なくとも1種のオレフィン性不飽和化合物が処理される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
多くとも30%の末端モノオレフィンを含有するモノオレフィンの混合物が処理される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
組成:
− 線状オクテン(2〜10重量%)、
− メチルヘプテン(50〜70重量%)、
− ジメチルヘキセン(25〜35重量%)、
− 他のモノオレフィン(1〜3重量%)
を有し、10%未満は末端モノオレフィンであるオクテン混合物が処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
イオン液中のコバルト錯体の濃度は、容積(L)当たり0.1mmol〜10molの範囲である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ヒドロホルミル化反応は、10:1〜1:10の一酸化炭素に対する水素の分圧の比、30〜250℃の範囲の温度、および1〜30MPaの範囲の圧力で行われる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
脱圧段階において、反応段階の流出物は、高くとも150℃に等しい温度で1MPa以下の圧力に脱圧される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
脱圧段階において放出されたガスは、再圧縮され、反応段階に送り返される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
少なくともイオン液および触媒を含有し、デカンテーション段階において分離された下部の極性相は、反応段階に送り返される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
デカンテーション段階において分離された上部の有機相は、蒸留帯域に送られ、該蒸留帯域において、配位子、未転化オレフィンおよび場合による溶媒が、頂部において分離される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
配位子、未転化オレフィンおよび場合による溶媒は、脱圧段階のレベルで反応混合物に添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応段階の流出物は、脱圧段階から上流の混合帯域を通過する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
蒸留段階において分離された配位子、未転化オレフィンおよび場合による溶媒は、前記混合帯域のレベルで反応混合物に添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
デカンテーション段階において分離された上部の有機相は、第1の蒸留帯域に送られ、該第1の蒸留帯域において、ヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物が、頂部において分離される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
分離されたヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物は、少なくとも部分的に、反応段階に再循環させられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分離されたヒドロホルミル化されるべき未反応のオレフィン性不飽和化合物は、脱圧段階に部分的に再循環させられる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
第1の蒸留帯域からの底部生成物は、第2の蒸留帯域に送られ、該第2の蒸留帯域において、配位子および場合による溶媒が頂部において分離される、請求項1〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
第2の蒸留帯域の頂部において分離された配位子および場合による溶媒は、脱圧段階に再循環させられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
反応段階の流出物は、脱圧段階から上流の混合帯域を通過する、請求項16〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
第2の蒸留帯域の頂部において分離された配位子および場合による溶媒は、前記混合帯域のレベルに再循環させられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
触媒前駆体コバルト化合物は、コバルト塩およびカルボニル錯体の中から選択される、請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
触媒前駆体コバルト化合物は、アセチルアセトナート、アルコラート、カルボキシラート、ジコバルト−オクタカルボニル、コバルト−テトラカルボニル・ヒドリドおよびカルボニルクラスターの中から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ルイス塩基配位子は、酸素含有配位子、硫黄含有配位子、窒素含有配位子およびリン含有配位子の中から選択され、これらの配位子は、イオン性官能基によって置換されるかまたは置換されない、請求項1〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記イオン性官能基は、スルホナート、カルボキシラート、ホスファート、アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウムの中から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酸素含有配位子は、アルコール、フェノール、エーテル、ケトンおよびアセタールの中から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
硫黄含有配位子は、チオール、チオフェノール、チオエーテルおよびジスルフィドの中から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
窒素含有配位子は、モノアミン、ジ−、トリ−およびポリ−アミン、イミン、ジ−イミン、ピリジン、ビピリジン、イミダゾール、ピロールおよびピラゾールの中から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
ピリジンタイプの配位子は、無置換ピリジンおよび2、3、4または5位においてアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ハロゲニド、カルボキシアルキル基により置換されたピリジンの中から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
リン含有配位子は、ホスフィン、ポリホスフィン、ホスフィンオキシドおよびホスファイトの中から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
反応後の段階において用いられる有機溶媒は、脂肪族炭化水素、環式または非環式の、飽和または不飽和の、および芳香族または置換芳香族の炭化水素の中から選択される、請求項1〜31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
有機溶媒は、n−パラフィン、イソ−パラフィンおよび環式脂肪族炭化水素の中から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
有機溶媒は、転化されるべきオレフィン性不飽和化合物(単数種または複数種)からなる、請求項1〜33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
一般式Qの塩は、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、トリエチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチル−スルホニル)アミダイド、トリメチルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、N−エチル−N−メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、ブチル−3−ジメチル−1,2−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ヘキサフルオロアンチモナート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフルオロアセタート、エチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・トリフラート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・メチルスルファート、ブチル−3−メチル−1−イミダゾリウム・ブチルスルファート、(ヒドロキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイド、(カルボキシ−2−エチル)−1−メチル−3−イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイドおよびN−ブチル−N−メチルモルホリニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミダイドの中から選択される少なくとも1種の塩であり、これらは、単独でまたは混合して用いられる、請求項1〜34のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−542780(P2009−542780A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518913(P2009−518913)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001052
【国際公開番号】WO2008/006951
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】