非水性流体の状態をオンラインモニタリングする方法
輸送および工業設備における高抵抗性流体の状態を決定するための方法が提供される。該方法は、非水性流体の状態を決定することに適しており、a)流体中に浸された電極間に高周波電圧信号を加えるステップ、b)加えられた信号に対する流体の応答を計測するステップ、および流体の特性を決定するステップ、c)流体がフレッシュなときのその特性の大きさに対して相対的に決定された特性の大きさを、少なくとも1つの特性の閾値と比較するステップ、および、使用変数の関数として決定された特性の変化率を、流体の状態の決定に帰着する少なくとも1つの比率と比較するステップ、を含み、各ステップは連続的に、断続的に、反復的に、およびそれらの組み合わせにより処理され、周波数は約10kHzから10MHzの範囲にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定するものではないが、自動車、機械、装置、などを含む輸送または工業設備で使用される高抵抗性流体の状態をモニタリングするための方法である。本発明は、ディーゼルエンジンの潤滑油の状態をオンラインでモニタリングし解析することに特に有用である。より具体的には、本発明は、ディーゼルエンジンの潤滑油のすす含有量をモニタリングすること、およびいつ潤滑油が、最適なエンジン性能および寿命のためにすすの含有量をコントロールする能力を失うかを決定することに有用である。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は内燃機関の寿命および性能にとって重要である。潤滑油が、適切な、もとめられるれる力学的な被膜のための粘性、望ましくない混入物を懸濁し、および/または、中和するための洗浄剤および分散剤、エンジンコンポーネントの表面を保護するための界面活性剤を有するときは、潤滑剤は、エンジンコンポーネントの摩擦、磨耗および腐食を減少させることによって、長期的、効果的なエンジンの運転を可能にする。一般的に、潤滑油の性能特性は、ベースオイル、および/または、添加剤が消費され、劣化し、あるいは消耗されるので、使用および年とともに変化する。潤滑油の性能特性の任意の1つが所望の範囲を外れたとき、潤滑油はその有用寿命の終わりに至る。潤滑油をその有用寿命を過ぎて使用することは、エンジンの寿命および性能を減少させ、壊滅的なエンジン破壊につながり得る。
【0003】
潤滑油がその有用寿命に至るまで、使用済みの潤滑油がエンジン内に残り、フレッシュな、すなわち使用されていない潤滑油と交換されない場合には、潤滑油の価値は最大化される。しかしながら、エンジンの使用年数、運転状態、および他の要因の関数であり得る潤滑油劣化の複雑さのせいで、潤滑油の状態の正確な決定は、オフラインでの研究所テストを、伝統的に要求してきたが、それは、設備のオペレータにとっては、コスト面、および/または、時間面でしばしば効果的でない。故に、多くのオペレータは、運転時間、走行距離、燃料使用、他のような1つ以上の計測容易なエンジン運転パラメータに基づいて潤滑油の状態および潤滑油の変化を単純に見積もるか、または、一般的に、1つ以上のエンジン運転パラメータを使用するが実際の潤滑油の計測を使用しない、エンジン製造者によるアルゴリズムにたよっている。潤滑油の状態の計測またはエンジン内の潤滑油の品質に関する具体的な情報を使用しない見積もりまたはアルゴリズムでの問題は、実際の状態を、または潜在的有用寿命をすら知ることなく、潤滑油の交換の決定がなされるということである。個々の潤滑油は混入物を懸濁し、および/または、中和する能力において幅広く異なり得るので、すすなどの混入物が潤滑油の劣化に大きな役割を演じる場合には、実際の潤滑油の状態または潜在的寿命情報は、エンジンに対する潤滑油交換の決定において特に重要である。
【0004】
近年、潤滑油の電気的、光学的、または他の特性の、リアルタイム、オンボードの計測のためのセンサが紹介されており、好適な全体像が、非特許文献1で提供されている。これらのセンサの多くは単に出力を提供するが、その出力は流体の状態を実際に解析せずに計測された潤滑油の特性の関数である。一般的に、「流体の状態」の出力を提供しないセンサは、センサ信号と流体の状態との間に何らかの関係がある場合、その関係を知らないエンジン、および/または、設備の製造者には、限られた価値しかない。この限界を克服するために、一部のセンサは、計測された潤滑油の特性に基づいて流体の状態を解釈するハードウェア、および/または、ソフトウェアによる完全な解法を、提供することを試みている。米国特許仮出願第10/271,885号、出願日2002年10月16日、「Method for on−line monitoring of quality and condition of non−aqueous fluids」、Lvovich、他は、流体の電気的インピーダンス応答の大きさに基づく、比較的完全な流体の状態の解析のための方法である。比較的完全な流体状態の解析は、一部の流体アプリケーションにおいて適切ではあるが、他のアプリケーションは、特定の流体の状態だけの解釈のためのよりコスト効果のある解法を求めており、例えば、ディーゼルエンジン製造者およびエンドユーザは、エンジンの潤滑油におけるすすに関係する特性をモニタリングすることに関心がある。潤滑油のすすの含有量は、それはディーゼルエンジンの燃焼プロセスの結果であるが、エンジンの運転状態に関して情報を提供するが、しかしより重要なことは、すすを細かく分散した粒子の安定的な懸濁状態に有効に維持する上で、潤滑油が、適切な状態であるかどうかを知ることが、オイル交換のインターバルを最適化するために重要である。
【0005】
特許文献1(「Diesel engine lubricating oil contaminant sensor method」、Heremans,他)は、ディーゼルエンジン中の潤滑油のすす含有量をモニタリングするためのニーズに沿うことを試みるセンサーを記述する。記述されるセンサは潤滑油のすす含有量を計測し得るが、すすをコントロールする潤滑油が効果を失い始めているのか、または、それはいつか、すなわち、追加的なすす含有量が分散した粒子の増大したサイズにつながるポイントを、センサは決定しないということで、限界がある。すす、より一般的には混入物をコントロールする潤滑油の能力喪失は、一般的には、増大した流体の粘性によってまず識別されるが、一般的には、急速な粘性の増大が察知される以前に生じ、あらゆる場合において、エンジンの性能および使用寿命の減少につながる。
【0006】
故に、流体の混入物、とくにすすの含有量のみならず、所望の設備性能および寿命を提供するために流体が維持され得るように、混入物を懸濁し、分散し、またはそうでなければ、コントロールする能力を、いつ流体が失い始めるのかをも、リアルタイムに決定するためのオンライン流体モニタリングセンサへのニーズが残されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0036487号明細書
【非特許文献1】Sabrin Khaled Gebarin、および、Jim Fitch、「Determining Proper Oil and Filter Change Intervals:Can Onboad Automotive Sensors Help?」、Practicing Oil Analysis、2004年3〜4月号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、流体が工業または輸送アプリケーションで使用中のままで、混入物の含有量、および、いつ流体が混入物をコントロールする能力を失うか、と一致する特性に基づいて流体の状態をリアルタイムで決定する方法を有するセンサを提供する。
【0008】
本発明は、輸送および工業アプリケーションで使用される潤滑油中の混入物をモニタするための方法に関する。より具体的には、本発明は、潤滑油が内燃エンジン内とくにディーゼルエンジン内で使用中の間に、混入物の含有量、および、増大した混入物の含有量をコントロールするための潤滑油の能力と一致する流体特性をモニタリングする方法に関する。
【0009】
本発明は、モニタされる流体中に浸された電極間に高周波数信号を加えること、信号に対する流体に依存する応答を計測することを含む。本発明の方法は、初期流体の応答に対する当流体の応答の比を、少なくとも1つの応答閾値限界と比較すること、および、流体使用の関数として、流体応答の、平均の変化率に対する今回の変化率の比を、いつ流体がその有用寿命の終わりに至るかを決定するための、率の閾値に、比較することを含む。
【0010】
本発明の1つの特徴は、加えられる信号が次のうちの1つであるということであり、すなわち、実質的に規定された周波数の実質的な正弦波、または、実質的な非正弦波、例えば、「フーリエ変換」のベース周波数によって規定される周波数のパルス信号であり、そのベース周波数は、実質的な非正弦波を表し得る1組の正弦波のうちの最も低い周波数である。
【0011】
本発明の1つの特徴は、加えられる信号の周波数が、装置の電極の幾何学的形状、流体の温度または温度範囲、モニタされる流体の化学的組成、またはそれらの組み合わせの関数として、事前に決定されることである。
【0012】
本発明の別の特徴は、限界温度を好ましくは5℃よりも少なく、さらに好ましくは2℃よりも少なく、そして最も好ましくは1℃よりも少なく超えて動作する流体に対して、流体温度をコントロールすることなく、または、温度変化の影響に対して応答を変換または修正することなく、流体の応答が計測されることが可能であるということである。
【0013】
本発明の別の特徴は、流体の応答は、流体温度を実質的な固定温度にコントロールすることによって計測されることが可能であるか、または、適切な式またはルックアップテーブルを使用して、流体の応答での温度の変化の影響を最小化するために、変換または修正されることが可能であるということである。
【0014】
本発明の別の特徴は、温度の変化に対して流体の応答を変換または修正するために使用される式またはルックアップテーブルは、永続的に固定されることが可能であるか、または、フレッシュな流体の処方における変化、つまり未使用の流体が設備に追加されることを許すために、方法に入力される値や、流体が2つの温度閾値の間で設定したよりも大きな率で温度を変化させるときに、応答の変化を計測することによって自動的に決定されることにより、更新されることが可能であるということである。
【0015】
本発明の別の特徴は、今回の流体の応答の初期応答に対する比の閾値限界は、事前に設定可能であること、または設備に追加されるフレッシュな流体の処方における変化を許すために、外部入力によって更新可能であるということである。
【0016】
本発明の別の特徴は、流体使用の関数である平均応答率の増大は、固定されることが可能であり、外部入力によって更新されることも可能であり、または流体使用の初期期間に渡る流体応答の変化を平均することによって決定されることも可能であることである。
【0017】
本発明の別の特徴は、設備に対して為された実質的に完全な流体の交換は、設備に追加されるフレッシュな流体に対する流体の状態および品質の閾値をリセットするための、追加入力を必要とすることなく決定されることが可能であるということである。
【0018】
本発明の別の特徴は、流体がその有用寿命の終わりに至ったとき、流体がその有用寿命の終わりに近づいたときに、出力は、流体中の混入物のおおよその量、流体の有用余命の概略値、オフライン解析のための応答および使用のデータ、またはそれらの組み合わせを提供できるということである。
【0019】
本発明の別の特徴は、本発明は、後のダウンロードのためにメモリーへ、例えばオペレータによって観察されまたは受信される信号デバイスへ、サービス施設または機能へ、出力を別の出力に変化する信号プロセッサへ、またはそれらの組み合わせへ出力を提供することが可能であるということである。
【0020】
本発明は、添付の図面からより容易に明確となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、工業または輸送で使用される高抵抗性流体の状態をオンラインでモニタリングし、および/または検出するための方法である。高抵抗性流体は非水性流体であり、すなわち、水を基本とせず、実質的に水を含まない。しかしながら、非水性流体は水である混入物を含み得る。
【0022】
図1は、流体の状態をオンラインでモニタリングし検出するために求められる、適切なデータを収集するために使用されることが可能な装置1の概略的な説明図である。装置1は、導管7内の高抵抗性流体5に浸された実質的に平行な電極3を含む。電極3は、マウント9によって固定して保持され、電気的に絶縁される。装置1は信号ジェネレータ11をも含み、それは、電気導体13を通して電極3へ、一定の振幅および周波数の高周波電圧信号を供給する。信号ジェネレータ11によって供給される電圧信号は、図3に示される実質的な正弦波信号であり得、電圧信号は、信号の周波数である単位時間当たりの全振動の数で、ゼロボルトの周りで実質的に正弦波で振動する。信号ジェネレータ11によって供給される電圧信号は図4に示される非正弦波であり得、電圧信号は、当該分野で周知のフーリエ変換ベース周波数によって規定される周波数でゼロボルト周りで振動する。信号ジェネレータ11の周波数は、電極ペア3の形状に基づいて、および流体5のタイプ、および動作温度または温度範囲、および化学成分によってあらかじめ定まる。求められる周波数は、電極3の間隔によって割られた電極面積の関数として増大する。周波数は流体温度の関数としても増大する。流体成分の関数としての周波数の変化は極めて複雑であり、しばしば流体ごとに決定される。一実施形態においては、代表的な有機物ベースの流体に対して、約40℃から約120℃の範囲の動作温度で、面積の間隔に対する比率が300cmの平行板電極を使用して、信号ジェネレータ11の本高周波数は、1MHzのオーダーである。別の実施形態においては、代表的な電極、温度範囲および流体5に対して、信号ジェネレータ11の本高周波数は、代表的に約10kHzから約10MHzの範囲にある。再び図1を参照して、信号ジェネレータ11の1つの電気導体13は基準電圧のためにアースされ、他方の導体13は、導体13を通る電流を測る電流センサ15を含む。装置1は、コントローラ17もまた含み、それは信号ジェネレータ13に電力を与えるための電気導体19、信号ジェネレータ13の出力電圧をモニタリングするための電気導体21、および電流センサ15によって計測された電流をモニタリングするための電気導体23を有する。コントローラ17は、電力を受けるための電気導体25、およびコントローラ17へ、またはコントローラ17から情報を通信するための、電気導体27をも有する。
【0023】
装置1は、温度コントローラ29、熱電対31、そしてヒータ33を含む。熱電対31およびヒータ33は、各々、マウント35および37によって導管7内に固定して保持され、各々、電気導体39および41を経由して温度コントローラ29と電気的に通信する。それは、動作中に、コントローラ29が、熱電対31を通過し流れる流体5の温度を、決定された一定の温度に維持するために、導体41を通してヒータ33に電力を与えるためであり、それにより、電極3における流体温度を維持するためである。
【0024】
動作中には、流体5は導管7を通して矢印によって示される方向に流れ、流体の一部は電極3の間を流れ、電力は電気導体25を通してコントローラ17に加えられ、そして、温度コントローラ29は、熱電対31および電気導体39によって流体5の温度をモニタし、導管内の流体の温度を現在の温度に維持するために導体41を通してヒータ33に適切な電力を加える。この発明の方法が使用されたときには、該方法は、いつコントローラ17が信号ジェネレータ11に電力を加え、流体5に導体13および電極3を通して信号を加えるかを決定する。加えられた信号に対する流体5の電気的応答は、流れるべき、および電流センサ15によって計測されるべき電流を引き起こす。コントローラ17は、加えられた信号、および電気導体19、21の各々を通して流れる対応する電流をモニタし、流体5の電気化学的インピーダンスを計算するために、電圧および電流信号の大きさ、および位相を比較する。この発明の方法は、流体5の状態を決定するためにインピーダンスデータを使用する。コントローラ17は、電気導体27を通してこの発明の方法で使用された情報を受信することが可能であり、例えば、実質的に全ての流体の交換が生じたという情報、または、流体の状態の決定に使用された情報が受信され得る。この発明の一方法は、コントローラ17からの流体の状態の決定に関する情報を、電気導体27を通じて通信することが可能である。流体の状態の情報は、信号デバイスへ、例えば、設備オペレータに警告するための警告ライト、流体のメンテナンスが必要なときにメンテナンス要員に気づかせるために中央のメンテナンス施設へ、他の信号、例えば、ダメージを防ぐために流体を使用している設備をオフできる信号に情報を変換できる信号プロセッサへ、即座に通信されることが可能である。流体の状態の情報は、例えば、サービス技術員の診断システムからの問い合わせがあったときに、格納メモリから通信されることが可能である。
【0025】
図1は、装置1の電極3を、流れる流体5を伴う導管7の中に示すが、装置1は、電極3の間の流体5が、常に、一定の温度で維持され、モニタされる設備の中の流体5の今回の状態を代表することができるような態様で、電極ペア3の間を流体5が流れる任意の位置に取り付けられることが可能である。例えば、装置1は、ヒータ33が電極3に極めて近接して位置され、かつ流体5の動きが、設備内における適切な加熱および比較的均一な混合および流体の交換を充分に可能とする、流体のタンクまたは溜めの中に取り付けられることが可能である。
【0026】
図1は、実質的に各電極の片側面だけが電極の間の流体に信号ジェネレータからの信号を加える、フラットな長方形の電極3を示すが、別の実施形態においては、電極は、それに限るものではないが、例えば、同軸円筒、多数のフィンガー状分割部分を有する平板、を含む他の幾何学的形状を有することが可能であり、1つの装置の実施形態は、流体に信号を加えるために、他の電極の表面の分割部分に直接的に対面し得るまたはし得ない表面の分割部分の複数の面を伴う電極、一方の電極のフィンガー状の部分が他方の電極のフィンガー状の部分と互い違いに嵌め合った電極、他を有することが可能である。
【0027】
図1は、温度コントローラ29とコントローラ17の間に通信のない装置1を示す。別の実施形態においては、装置は両コントローラの間で通信を有することが可能であり、そ結果として、この発明の方法が流体の状態を決定するときに、温度情報を使用することが可能であったり、または、求められる流体温度に関する情報が温度コントローラ29に通信されることが可能となる。
【0028】
図1は、装置1を独立したコンポーネントとして示している。別の実施形態においては、装置1は、コンパクトなパッケージにコンポーネントを統合することが可能であり、それは、例えば、装置のコスト、サイズ、および/または、電力要求を減らす。別の実施形態においては、装置1は、他のコンポーネント、例えば、この発明のコンポーネントと連結して、または独立して働くことが可能な他の流体センサと共にパッケージに統合されることが可能である。
【0029】
図2は発明の別の実施形態の概略的な説明図であり、装置43は適切なデータを収集するために使用され得る。装置43は、導管7を流れる高抵抗性流体5の中に浸された電極3を含む。電極3はマウント9によって固定して保持され、かつ導管7からは電気的に絶縁される。装置43は、一定の振幅および周波数の高周波数電圧信号を電気導体13を通して電極3に加える、信号ジェネレータ11もまた含む。信号ジェネレータ11の一方の電気導体13は基準電圧のためにアースされ、他方の導体は導体を通して流れる電流を計測する電流センサ15を含む。装置43は、マウント35によって流体5の中に浸され、導管7に固定して保持される熱電対31を含む。さらに、装置43は、信号ジェネレータ13に電力を与えるための電気導体19を有するコントローラ17、信号ジェネレータ13の出力信号をモニタリングするための電気導体21、電流センサ15によって計測された電流をモニタリングするための電気導体23、および熱電対31によって計測される流体5の温度をモニタリングするための電気導体45を含む。コントローラ17は、電力を受けるための電気導体25および情報を通信するための電気導体27をもまた含む。図1の装置1とは異なり、装置43は流体5の温度を維持するための手段を含まない。
【0030】
動作中には、流体5は導管7を通して、かつ電極3の間を流れ、電力は電気導体25を通してコントローラ17に加えられる。この発明の方法が使用されるときには、該方法は、いつコントローラ17が信号ジェネレータ11に電力を加え、流体5に導体13および電極3を通して信号を加えるかを決定する。加えられた信号に対する流体5の電気的応答は、流れるべき、および電流センサ15によって計測されるべき電流を引き起こす。コントローラ17は、加えられた信号、および電気導体19、21の各々を通して流れる対応する電流をモニタし、流体5の電気化学的インピーダンスを計算するために、電圧および電流信号の大きさ、および位相を比較する。コントローラ17は、流体5の温度を決定するために電気導体45を通して熱電対31もまたモニタする。1つの実施形態においては、この発明の方法は、流体5の状態を決定するためにインピーダンスデータを使用し、電気導体27を通してコントローラ17からその決定に関する情報を通信することが可能である。コントローラ17は、電気導体27を通してこの発明の方法で使用される情報を受信することが可能であり、例えば、実質的に全ての流体の交換が生じたという情報、あるいは、様々な温度でのデータを一定温度でのデータに変換するための式またはルックアップテーブルを更新する情報が受信され得る。この発明の方法は、図1の装置1について述べたように、電気導体27を通してコントローラ17から、流体の状態の決定に関する情報を通信することが可能である。
【0031】
別の実施形態においては、図2の装置43は、電極ペアの間の流体5が、熱電対31によって計測される温度であり、かつモニタされる設備の中の流体5の今回の状態を代表することが可能な態様で、流体5が電極3の間を流れる限りにおいては、導管7より他の位置に取り付けられることが可能である。電極3は、各電極の片側面だけが他の電極に対面されるフラットな板である必要はない。別の実施形態においては、装置は、各電極の1つ以上の面が他の電極に対面される、電極の幾何学的形状を有することが可能である。装置43は、図2に示されるように独立したコンポーネントであることが可能であり、または、統合されたコンポーネントであり、または、例えば装置のコスト、サイズ、および/または、電力要求を減らす、装置43のそれらより他のコンポーネントと共に統合されることが可能である。
【0032】
図1の装置1が流体5の温度をコントロールするための手段を有し、図2の装置43が流体5の温度を決定する手段を有する一方で、平均流体温度が、比較的一定であり、好ましくは5℃より小さく変化し、さらに好ましくは2℃より小さく変化し、および最も好ましくは1℃より小さく変化する場合のアプリケーションにおいては、図2の装置43に類似ではあるが、熱電対31を有さず、かつ電極3が流体に信号を加えるときに、コントローラ17が、流体5の温度をモニタしない装置が、本発明の方法の別の実施形態で使用され得る。
【0033】
図5は、エンジンオイルの「すすパフォーマンス」をテストするために使用された、商用自動車における、高負荷ディーゼルエンジンに対する、代表的な標準等級高負荷ディーゼルエンジン潤滑油の高周波誘電率(ε)57、すす含有量59、および粘性61を、走行距離の関数として示す。走行距離は最後のオイル交換からの運転された距離であり、エンジンオイル使用の指標である。誘電率57は、流体の中に浸された電極に対し加えられた約500kHzで実質的に正弦波の電圧信号に対する、温度補正されたエンジンオイルの応答から決定された。電極は、約50cmの、面積の間隔に対する比率を有する。流体の応答は、エンジン運転の約20秒ごとに計測された。カーブ59は、図示される走行距離でのエンジンから抽出されたオイルサンプルの、研究所で決定されたすす含有量を結び、カーブ61は同じサンプルの研究所で決定された粘性を結んでいる。
【0034】
図5のカーブ59によって示されるすすの増大は、走行距離の関数として比較的リニアである。一般的に、大部分のアプリケーションにおいては、すすの生成は単にエンジンのタイプおよび状態だけでなく燃料、運転環境およびエンジンの運転サイクルにも依存するために、すす増大の比率はリニアである必要はない。テスト車に対しては、燃料および運転状態は、約12,000マイル走行で約7%の潤滑油すす負荷を達成するようにコントロールされる。カーブ61の粘性増大は、最初の1,500マイルに関する間は非常に小さく、約6,000マイルまでは比較的リニアな増大であり、その後、約7,000マイルと約10,000マイルの間でより急な増大の開始がある。概して、オイルサンプルが十分に頻繁に採取されなかったので、図5においては示されていないが、高負荷ディーゼル潤滑油は、最初の数百使用マイルの間に、エンジン内でのシヤリングによって引き起こされる、わずかな初期粘性低下を示す。初期低下の後、主にすす含有量の増大のために、高負荷潤滑油の粘性は増大する。特に、増大するすす含有量は、粘性を比較的リニアな様相で増大させるが、それは、オイルへの添加物が、すす含有量がオイルがすす全体を細分化された粒子の状態に懸濁しまたは処理することが不可能なレベルに至るまでは、すすを小さく十分に拡散した粒子に保つからである。すす含有量が、かなり大きな量の凝結したすすの粒子ができ始めるポイントを超えたとき、すす含有量の関数である粘性は、ついに、より急な増大を始める。図5の潤滑油は、各々が約4.5%および約5.5%のすすを含む、7,000マイルで採取されたオイルサンプルと約10,000マイルで採取されたサンプルとの間で粘性「ブレイク」の発生を有する。潤滑油がすすを処理する能力を失い、かつ粘性がブレイクするポイントは、潤滑油の処方および運転状態の関数であり、次の図に見られるように、特定のすすの含有量に直接的に関係しない。潤滑油がもはやすすを処理することが可能でないとき、および、特に、粘性が使用の関数としてより急な増大をはじめるときには、潤滑油は、その有用寿命の終わりに至っており、最大のエンジンのパフォーマンスと寿命を考慮して、フレッシュな潤滑油に交換される必要がある。
【0035】
ここで図5のカーブ57を参照すると、潤滑油の高周波誘電率は、おおよそ6,500マイルの、矢印63でマークされたポイントまでは、ライン65によって近似される比較的低い率で増大し、その後、誘電率は、ライン67によって近似されるより急な率で増大する。ポイント63より前では、誘電率57とすす59との間に比較的一定の比率があり、その結果、誘電率応答が、すす含有量のおおよその値を提供するために使用され得る。ポイント63は、潤滑油の状態が、追加のすすが分散した小さな粒子で維持されないような状態である点と一致し、潤滑油の粘性ブレークポイントに先行するものと見られる。
【0036】
米国特許仮出願第10/271,885号、発明の名称「Method for on−line monitoring of quality and condition of non−aqueous fluids」において、Lvovich、他は、多数の周波数に対する流体インピーダンス計測のための閾値に基づく流体の状態決定の方法を開示し、それは、高周波誘電率増大の閾値を含み、参考として本明細書において援用される。この方法の例として、図5の流体に対して、高周波誘電が閾値69を超えるときに、該方法が、潤滑油は「まもなく交換」されるべき必要があると指示するように、閾値69が設定されることが可能であり、それは、誘電率57が、おおよそ6,500でこの閾値にクロスするとき、オイル中での粘性ブレークの前に必要な潤滑油交換の十分な警告があるからである。同様に、閾値71は、高周波誘電率57が、おおよそ7,000マイルで閾値を超えるときに、このことは粘性ブレークが生じるときに一致するので、潤滑油は「今すぐ交換」されるべき必要がある、と該方法が指示するように設定されることが可能である。先のLvovich他の方法においては、閾値69、および/または、71に至る前にすすの追加量を分散させ続ける能力を流体が失うことを防ぐために、閾値は、別の周波数で設定される。それ故に、特定のアプリケーションに対して適切に設定されるときには、他の周波数信号オフセット電圧によって実施されたインピーダンス計測値と共に使用される高周波閾値69、71は、流体の状態の決定に対し十分である。高周波インピーダンスセンサが、潤滑油のすすの状態をモニタするために単独で使用されるときには、閾値69、71はエンジン保護を最大化する一方で、オイル交換のコストを最小化するためのオイル交換のインターバルを最適化することを保証しない。
【0037】
図6は、図5の潤滑油に対して使用されたのと同一のエンジン、自動車、およびテストサイクルにおける、優良等級ディーゼルエンジン潤滑油の温度補正された高周波誘電率73、すす含有量75、および粘性77を、走行距離の関数として示す。カーブ75は、図5のカーブ59とほぼ同じすす含有量の増大を示す。しかしながら、粘性カーブ77は、潤滑油のすす濃度がおおよそ7%であるところの、おおよそ10,000テストマイルを超えるまでは、優良潤滑油の粘性はブレークしないことを示す。すなわち、この優良等級潤滑油は、図5の標準等級潤滑油よりも高いすす濃度を分散し、または処理することが可能である。粘性ブレークに先行して、高周波伝導率カーブ73は、ポイント79で率の変化を示すが、そのポイントより前での誘電率の変化の率は、ライン81によって近似され、ライン83によって近似されるそのポイントより後での率よりも低い。ポイント79は、潤滑油が、追加のすすを分散した小さな粒子の状態でもはや維持できない場合に一致する。ポイント79より前の誘電率73とすす含有量75との間での比較的一定な比率は、図5の比率に一致する。
【0038】
図6の閾値69および71は、図5の標準等級潤滑油に対して使用されたのと同じであり、図5の潤滑油は、第一の閾値をおおよそ6,500マイルで超え、第二の閾値をおおよそ7,000マイルで超えるが、優良等級潤滑油は、各々、おおよそ7,500マイルおよびおおよそ8,500マイルで閾値を超える。従って、閾値方法だけを使用すると、優良等級潤滑油は、標準等級潤滑油に比べて、追加的なおおよそ1,500マイルのサービスを提供することが可能である。しかしながら、高周波インピーダンス計測だけに基づいて交換のインターバルを完全に最適化しようとすると、エンジンまたは設備の製造者の推奨によれば、潤滑油は粘性ブレークに先行するポイント79までは使用可能と考え得るので、潤滑油をフレッシュな流体に置き換える前の優良等級オイルから、さらにおおよそ500マイルのサービスが可能である。
【0039】
エンジンの製造者またはオペレータの仕様書によれば、図6の誘電率の率変化ポイント79に関する情報が、優良等級オイルに対する排出のさらなる延長の選択肢を提供し得るが、高周波誘電率の率変化の情報が、1つのセンサのみが使用されたときのエンジンのパフォーマンスおよび/または寿命を保護する上で、特別な価値を有するケースは、特定の潤滑油が、特定のアプリケーションに対して適切な品質を有しない場合である。すなわち、潤滑油の高周波誘電率が、標準の潤滑油に対して最適化された閾値を超える前に、取り換えられるべき場合である。
【0040】
図7は、特定のアプリケーションにおいてプアなパフォーマンスを有することが知られたディーゼルエンジン潤滑油の、温度補正された高周波誘電率85、すす含有量87、および粘性89を示す。潤滑油は、図5および図6のそれぞれ、標準および優良の潤滑油の場合と同一のエンジン、自動車、および運転サイクルでテストされた。すすのカーブ87は、先のオイルに対する場合と同じすす含有量の増大を近似して示す。粘性カーブ85は、図5の標準等級潤滑油に類似し、各々が4.5%および5.5%のすすを含むところの、おおよそ7,000で採られたサンプルとおおよそ10,000マイルで採られたサンプルとの間で粘性ブレークを示す。粘性ブレークに先行して、高周波誘電率カーブ85はポイント91を示すが、ライン93によって近似されるポイント91より前の走行距離の関数である誘電率変化の率は、ライン95によって近似されるポイント91より後の率よりも小さい。ポイント91は、潤滑油が、追加のすすを分散した小さな粒子でもはや維持できない場合に一致する。誘電率85とすす87との間の比較的一定な比率は、図5および図6の比率に一致する。
【0041】
図7の閾値69および71は、図5および図6の標準および優良等級の潤滑油に対して示されたものと同じであり、誘電率カーブ85は粘性ブレークが生じる前に両閾値にクロスするが、潤滑油の寿命の終了のより早い指標は、誘電率カーブ85の勾配が変化するポイント91である。よって、1つだけの高周波誘電センサを使用したときに、特定のアプリケーションでプアなパフォーマンスを有し得る潤滑油に対して保護するためには、標準または優良等級の潤滑油での潤滑油交換を最適化することにならないが、閾値69、および/または、71がより低く設定される必要があるか、または、この発明の方法を使用することによって、ポイント91における流体の高周波誘電率の勾配の変化に関する情報が交換インターバルを最適化するために使用され得る。
【0042】
図5〜図7で理解されるように、高周波誘電率カーブ57、73における変化とすすカーブ59、75、および87各々のすす含有量の変化との間での比率は、ポイント63、79、91各々の誘電率変化まではほぼ同じである。このことは、この態様でテストされた全ての流体の処方に対して正しいことが知られた。よって、高周波誘電率勾配が変化するまでは、すすがオイルの主な混入物であると仮定して、オイルのすす含有量を概算するために、誘電率応答が使用され得る。しかしながら、全てのエンジン、および/または、アプリケーションが、誘電率変化とすす変化との間で同じ比率を有するわけではない。他の混入物が流体の誘電率応答に影響を与えることが可能であり、異なるタイプのエンジンによって作られたすすの化学的および物理的特性には、しばしば違いがある。
【0043】
図8は、乗用車の通常運転中にはほとんどすすを生成しないということが知られている、ディーゼルエンジンのための代表的な優良等級乗用車デーゼルエンジン潤滑油の、高周波誘電率(ε)97、およびすす含有量99を、走行距離の関数として示す。図5〜図7に示されるテスト結果に対するのと同じく、走行距離は、最後のオイル交換以降に運転された距離であり、エンジンオイル使用の指標である。誘電率97は、前と同じ約20秒のエンジン運転で、同じ電極の幾何学的形状に加えられた、同じ信号に対する、温度補正されたエンジンオイルの応答から決定された。カーブ99は、図示される走行距離で採取されたオイルサンプルの、研究所で決定されたすす含有量を結ぶ。図8の乗用車のテストデータと図5〜図7の商用車のテストとの大きな違いは、乗用車では、エンジンオイルの「すすパフォーマンス」がテストされなかったことである。よって、乗用車の運転サイクルは変更され、オイルテストはオイルの粘性ブレークまで、または、それを超えるまでは続かなかった。図示されていないが、研究所で決定された粘性はテスト中に粘性ブレークを示さず、かつすす、または粘性に関係した要因より他の要因のために、オイルは最終的にその有用寿命に到達した。
【0044】
図8を参照すると、カーブ97によって示される高周波誘電の増大とカーブ99によって示されるすすの増大との間の比率は、比較的一定である。図5、6、7に示される比率とは異なるが、このアプリケーションにおけるエンジンに対して、誘電率応答は、すす含有量を概算するために使用され得る。図8は、カーブ97のポイント101で生じた高周波誘電率におけるスパイクをもまた示す。ピークのするどい上昇は、3日間涼しいガレージに使用せずに置いた後に、車を始動するときに見つかり、そのときには、外気の温度および湿度が非常に急上昇していた。結露がガレージ内の表面に見つかり、かつオイルに混入物凝結限界を超えさせない約0.1%の水の混入物をオイルが有することが知られた。ポイント100での増大の後に、運転中にオイルが温められるにつれて水が蒸発させられた後に、誘電率は通常の値に戻った。
【0045】
高周波誘電率は、水および/または冷却水の混入をも検出する。つまり、いくらかの水分結露が起こり得る場合のアプリケーションにおいて、本発明の1つの実施形態は、流体の有用寿命の終わりについての誤った決定を防ぐために、混入物凝結限界を超えない、過渡的および/または可逆的な誘電率の率変化を考慮することが可能である。本発明の別の実施形態は、始動時のそのような過渡的および/または可逆的な誘電率の率変化を認識し、高周波誘電が混入物が検出される前の値にほぼ戻るまで、潤滑油が混入物を含んでいるという出力を、提供することが可能である。本発明の別の実施形態は、エンジンおよび潤滑油がほぼ外気温になるほど十分に長い期間「オフ」であった後にエンジンがスタートされたときの状態である、各コールドスタートの後に、そのような過渡的および/または可逆的な誘電率の変化を認識し得、冷却水漏れの可能性があるという出力を提供することが可能である。各実施形態においては、誘電率の閾値を超える高誘電率に起因する継続した誘電率の率変化が、該方法によって認識され、混入物の含有量に起因する流体の状態について警告が発せられる。
【0046】
図5〜図8は、高周波誘電率を走行距離の関数としてプロットし、各々の図における誘電率カーブ57、73、85、97の勾配は、走行距離の変化当りの誘電率の変化として描かれている。概して、誘電率の変化の率は、距離当り、運転時間当り、エネルギー消費当り(例えば、燃料使用)、またはエネルギー出力当り(例えば仕事量)の変化のいずれで計測されようとも、潤滑油が混入物の増大をもはや処理する能力がないときには、図5〜図7各々のポイント63、79、91におけるような誘電率の勾配に大きな変化をみせる。該変化の識別は、使用の関数としての「今回の」誘電性の変化が、適切に平均化される限りにおいては、使用サイクルからは独立している。使用サイクルが比較的長く、使用状態が比較的一定である場合のアプリケーションに対しては、図5〜図7のケースにおけるように、マイルならば数マイル程度、時間ならば数分程度、燃料ならば1ガロンの数割程度であれば、「今回の」勾配は平均化され得る。使用サイクルが比較的短く、使用状態が広範囲に変動し得る場合のアプリケーションに対しては、「今回の」勾配は、より長い使用期間に渡って平均化されることが必要とされ得る。そのような平均化は当該分野において公知である。よって、誘電率の勾配は、図5〜図8においては、距離変化当りの誘電率の変化として示されているが、単純化のために、本発明の実施形態においては、ここで使用されているように、時間変化当りの誘電率の変化として記述されており、誘電率の勾配は、適切な使用インターバルに渡って平均化された任意の使用パラメータの関数としての、潤滑油の高周波誘電率応答の変化である。当該分野で公知のように、ノイズ、および、決定された誘電率値と閾値との間の意味ある比較のために計測される応答に影響する、他の変動性を最小化するために、流体誘電率応答が、十分な使用に渡って平均化され、またはフィルターされる場合に限り、図5〜図7の閾値69、71のような高周波誘電率閾値は、使用変数に依存する。
【0047】
図5〜図8に示されていないが、潤滑油の勾配が変化するポイントの前での、運転中に喪失または消費された潤滑油を補うための使用中のエンジン潤滑油への追加は、誘電率値を単純に低下させ、それは、潤滑油の高周波誘電率が、閾値69、71を超えるまで、または、混入物をコントロールするための潤滑油の有用寿命の終わりに起因する誘電率の勾配が変化するポイントに至るまで、走行距離または運転時間を延長する。そのような追加は、誘電率カーブの勾配を大きく変化させず、どんな変化であっても、潤滑油がすすの追加量を適切に処理する能力を失うときに生じる勾配の変化よりも実質的に小さい。
【0048】
図5〜図8の潤滑油の初期高周波誘電率は、ほぼ同じであるが、全ての潤滑油が同じ初期誘電率値を有する訳ではない。誘電率値の相対的な増大および勾配の変化のみが、流体の状態を決定する上で重要である。しかし、概して、フレッシュな潤滑油は、中古の潤滑油よりも低い誘電率を有し、よって、全てのオイルの交換は、誘電率値における実質的な低下によって検知されることが可能である。
【0049】
図5〜図8は、テスト車の運転中に生じる潤滑油温度の変動に対し補正された、潤滑油の応答に対する高周波誘電率を示す。概して、流体インピーダンス値は、温度依存性であり、流体温度を制御すること、または、温度の変動に対して補正することのいずれかが、流体状態の最も正確な解釈を可能にする。しかしながら、一部のアプリケーションは十分に狭い流体動作温度の範囲を有し得るか、または、温度コントロール、または計測された流体温度に基づく補正なしにデータの使用が可能な、予測可能な温度サイクルを有し得る。概して、応答データが補正されない場合には、流体応答測定の温度範囲は、好ましくは5℃よりも小さく、より好ましくは2℃よりも小さく、最も好ましくは1℃よりも小さい。
【0050】
図9は、本発明の特徴の別の実施形態103を示すが、それは、状態決定のために比較的一定の温度で流体が維持される設備の中での流体の状態を決定するために、上記の高周波誘電率を使用する。温度は、流体測定装置、例えば、図1における装置1によるか、あるいは、流体が使用されている設備またはその設備と関連する手段によって維持され得る。
【0051】
方法103は、毎回ブロック105において始まり、設備はスタートされ、つまり「オン」に替わり、時間を出力するクロックもまた「オン」に替わる。この実施形態においては、時間は、誘電率変化の勾配を決定するために使用される設備使用の尺度であるが、しかしながら、すでに記述したように、他の実施形態においては、該方法によって測定され、または入力されることが可能である、走行距離、消費燃料、エネルギー出力、またはそれらの組み合わせなど、別の使用変数が可能である。
【0052】
開始後、方法103は、ブロック107に進み、加えられた高周波信号に対する流体の応答Sを読み込む。信号Sは、図1に関連して記述されたタイプの流体測定装置によって獲得される。Sは、図5〜図7で示される誘電率値、または実質的に等価である値であり得る。例えば、流体応答を適切な次元を有する値に変換する代わりに、アナログ電圧、電流、またはディジタル入力が読み込まれ得、適切な流体応答に変換され得る。別の例としては、誘電率応答は、インピーダンスおよび位相角の信号として受信され得る。Sは、フィルタリングなしに短い期間について装置によって収集されるデータであることが可能であり、または、ノイズを最小化し、流体の高周波誘電率応答をより良く数量化するために、長期間に渡って平均化され、フィルタされることが可能である。任意のケースにおいて、設備が「オン」である間は、該方法は、ブロック107で、流体品質を決定するために、「X」分の固定されたインターバルでSを読み込む。
【0053】
入力Sが読み込まれた後、方法103はブロック109において、Sが読み込まれた最後のとき以降に、実質的な全流体の交換が生じたかどうかを決定する。この決定は、該方法への入力に基づくことが可能である。例えば、メンテナンス要員、またはオペレータは、流体交換が為されるときに信号を提供することが可能であり、それが、コントローラに通信され(例えば、図1の装置1のコントローラ17への電気導体27によって)、ブロック109で検出される。別の例としては、流体レベルの変化によってまたは他の手段によって流体の変化を検出するセンサ、またはセンサシステムは、ブロック109で検出される信号を提供できる。ブロック109の決定は、入力Sを使用するほかは、流体の変化を識別するための、何らの追加入力も使用せずに為されることもまた可能であり、その例は、本発明の後の実施形態において示される。ブロック109における決定が「イエス」の場合、次いで、ブロック111において、高周波信号決定(走行距離ゼロでの図5〜図8の初期誘電率値に対応する)に対する初期値Iは、Sに等しく設定され、誘電率勾配算出に使用される変数Pは、Sに等しく設定される。ブロック111において値が設定された後に、方法103はブロック107に戻り、前回の読み込み後X分に、Sが再び読み込まれる。
【0054】
ブロック109における決定が「ノー」である場合は、方法103はブロック113へ進み、そこで今回の勾配αが計算されるが、それは、今回の信号Sから前回の信号Pを引き、その量は、信号間の運転時間Xで割られる、そして、比率C、それは初期信号Iに対する今回の信号Sの比率であり、すなわち、流体がフレッシュであるときの誘電率に対する使用された流体の誘電率の比率である。方法103は、ブロック115において、平均勾配αavgに対する今回の勾配αの比率が、勾配の閾値または限界βより大きいかどうかの決定に、今回の勾配を使用する。この実施形態においては、αavgは、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対して期待される高周波誘電率勾配に基づいて設定された定数である。βは、高周波誘電率勾配の増大の最大の変動に基づいて設定された定数であり、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対する、追加の混入物の増大を処理する上で適切な状態である流体に対して期待されるものである。ブロック115の決定が「イエス」の場合、方法103は、ブロック117において「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。警告は、後の検索のためにメモリへ、例えば、設備オペレータに警告可能である警告ライトである信号デバイスへ、メンテナンス要員に通知するための中央メンテナンス施設へ、出力を別の出力へ変換する信号プロセッサへ、または、それらの組み合わせへ送信され得る。ブロック115の決定が「ノー」である場合、方法103は、比率Cが閾値、または限界L1より大きいかどうかを、ブロック119において決定する。L1は、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対する設備製造者または設備オペレータの仕様に基づき、流体内に許される最大の混入量に、実質的な限界を設定する定数である。ブロック119の決定が「イエス」の場合は、ブロック117において、方法103は、「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。決定が「ノー」の場合は、ブロック121において、方法103は、比率Cが閾値L2より大きいかどうかを決定する。L2は、ブロック119において決定されるときに、流体がその有用寿命の終わりに近づいているという十分な警告を与えるために、製造者またはオペレータの仕様に基づいて設定されるL1よりも小さな定数である。ブロック121の決定が「イエス」である場合には、ブロック123において、方法103は、「間もなく、流体を交換せよ」との警告を送信する。ブロック121における決定が「ノー」である場合、または、ブロック117または123のいずれかで警告信号が送信された後には、ブロック125において、方法103は、PをSに等しく設定し、ブロック107において、前回の誘電率の読み込みのX分後に新しいSを読み込み、ブロック109から125までのシーケンスを繰り返し、必要とされるときは、流体の状態を報告する。方法103は、流体を使用する設備が「オフ」に替わるまで、X分ごとにSを読み込むこと、および流体の状態を決定することを継続する。設備が「オン」に替わるたびごとに、方法103は、ブロック105において開始する。
【0055】
このようにして、方法103は、流体の状態を実質的に連続してモニタし、混入物の含有量、または混入物の含有量を処理する流体の能力に基づいて、流体が、その有用寿命の終わりに近いか、または終わりであるときに、警告を送る。
【0056】
図9の実施形態は、流体を使用する設備が「オン」に替わった後すぐに、流体の応答Sを読み込み使用する。一部のアプリケーションにおいては、始動直後に、例えば、温度の
変動または湿気の結露のために、信号における過渡的状態があり得、流体の混入物の状態に関するより意味のある情報を高周波誘電率応答が提供する、安定状態に流体が至る前には、いくらかの設備運転時間が必要とされる。よって、別の発明の実施形態においては、方法は、設備始動時に、ただちに流体の状態の決定をすることを開始する必要はない。図9の実施形態は、高周波誘電率応答の率が限界を超えるか否かの決定のために、定数のαavgを使用する。別の実施形態においては、該方法は初期誘電率の増大に対する平均勾配を計算し、その勾配を決定のために使用し得る。図9の実施形態は、混入物の含有量の限界が近づいたときに、単に警告を提供するだけであり、流体内の混入物のおおよその量、または混入限界に到達する前に残っている、おおよその設備使用に関する表示を与えない。別の実施形態においては、該方法は、おおよその混入物の含有量に関する情報、および、平均運転状態に基づいた、流体が交換されなければならない前に残っている設備使用の量に関する情報を提供することが可能である。
【0057】
図10は、平均勾配が該方法によって計算される設備における流体の状態の決定に使用するための、本発明の1つの特徴の実施形態を示し、勾配変化の決定は、始動直後には為されず、情報は、おおよその混入物の含有量、およびおおよその流体の有用余命に関して出力される。図9の実施形態と同じく、この実施形態は、流体が比較的一定の温度に維持されるアプリケーションに対するものである。図10の実施形態を記述するに資するために、図9におけるブロックと同じであるブロックには同じ付番がされている。
【0058】
図10を参照すると、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替り、時間tRがゼロに等しく設定されたときに、方法129は、ブロック131で開始する。実施形態は、誘電率変化の勾配を決定するために、設備使用の指標として時間を使用する。変数tRは、設備が「オン」に切り替わった時から「オフ」に切り替わるまでの、今回の運転サイクルの時間の指標である。始動の後に、方法129は、ブロック107に進みSを読み込むが、Sは、流体の誘電率応答、または等価なものであり、それは、ノイズを最小化するために、および流体の高周波誘電率応答および/または応答の変化の率をより良く定量化するために適切であるように、平均化および/またはフィルタされ得る。
【0059】
Sを読み込んだ後に、ブロック109において、すでに記述したように、方法129は、Sが読み込まれた最後のとき以降に、実質的な全流体の交換が為されたか否かを決定する。決定が「イエス」の場合には、ブロック133において、フレッシュ流体初期誘電率値Iおよび前回の誘電率値Pは、Sに等しく設定され、かつtはゼロに等しく設定される。変数tは、最後の流体交換からの設備運転のトータル時間の指標であり、つまり、流体交換がされるたびごとにゼロに等しく設定される。ブロック133において値が設定された後に、方法129はブロック107に戻り、そこでは前回のリード後X分であり、Sが再び読み込まれる。
【0060】
ブロック109における決定が「ノー」である場合には、方法129はブロック113へ進み、そこで今回の勾配α、および初期誘電率に対する今回の誘電率の比率が計算され、ブロック135において、方法129は、今回の運転サイクルの開始からの時間tRがt1より大きいか否かを決定する。時間t1は、誘電率の勾配が、始動後安定した状態に至ることを可能とするために選ばれた定数である。例えば、ある環境および運転状態における多くの設備においては、「オフ」の間に水の結露が流体に混入することが可能であり、それは、図8に対して示され、かつ記述されたように、増大した高周波誘電率の原因となるが、それは設備運転の間に一たび水分が蒸発すると元に戻る。よって、誘電率勾配の情報は、始動直後には意味のないことがあり得る。ブロック135における決定が「イエス」である場合には、方法129は、ブロック137、139、115をスキップし、ブロック119において、誘電率比Cが閾値L1を超えるか否かを決定し、このようにして設備を護る。ブロック135における決定が「ノー」である場合には、ブロック137において、方法129は、最後の全流体交換からのトータル運転時間tが、t2よりも大きいか否かを決定する。時間t2は定数であり、極端とも言える運転状態の下で、流体の混入物の含有量が、代表的な混入物をコントロールするための流体の能力を超えないように選ばれる。例えば、t2は、流体の代表的期待有用寿命の50%として選ばれ得る。ブロック137における決定が「イエス」という場合には、ブロック139において、平均勾配αavgは、最後の全流体の交換以降のトータル高周波誘電率変化に等しく設定され、それは、今回の誘電率から初期誘電率を引き、最後の交換以降のトータル運転時間で割られたものである。ブロック137における決定が「ノー」である場合には、方法129は、次の全流体の交換までは、ブロック139において計算された、最後の平均勾配αavgを使用する。ブロック115において、方法129は、ブロック113において計算された誘電率勾配αが平均勾配αavgで割られた値が、勾配限界βより大きいか否かを決定する。ブロック115の決定が「イエス」である場合には、ブロック117において、方法129は、「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。ブロック115の決定が「ノー」、またはブロック135の決定が「ノー」である場合には、方法129は、ブロック113において計算された誘電率比Cが閾値L1よりも大きいか否かを決定する。「イエス」の場合には、ブロック117において、方法129は「今、流体を交換せよ」の警告を送信する。「ノー」の場合には、ブロック141において、方法129は、流体中の混入物のおおよそのパーセンテージを決定し、流体が交換される必要があるまでのおおよその時間の長さを決定する。図10の実施形態において、混入物はすすであると想定され、すすのおおよその量は、初期に対する今回の誘電率の比率の関数であるF(C)によって決定される。求められる流体交換までの時間は、閾値L3から誘電率比Cを引き、その量を誘電率変化の平均勾配で割ることによって近似される。L3は、流体の寿命の終わりを近似するために使用される定数である。L3は、L1に等しく設定されることが可能であり、または、流体の有用余命のより安全側の推定を提供するために、L1より小さく設定され得る。ブロック143において、方法129は、おおよそのすす含有量、および全流体の交換が求められるまでの、おおよその残っている設備運転時間の出力を送信する。ブロック143の出力は、後の検索のためにメモリへ、例えば、設備オペレータに警告可能な情報ディスプレイである信号デバイスへ、例えば、「交換すべき時」が「交換すべき距離」に変換される、情報が別の出力に変換される信号プロセッサへ、メンテナンス要員に通知するための中央メンテナンス施設へ、またはそれらの組み合わせへ送信され得る。方法129がブロック143において情報を出力し、またはブロック117の警告を送信した後には、ブロック125において、PはSに等しく設定され、該方法は、前回の読み込み後X分のブロック107において、新しいSを読み込むために戻る。方法103は、流体を使用する設備が「オフ」に替わるまで、X分ごとにSを読み込むこと、および流体の状態の決定を継続する。設備が「オン」に替わるたびに、方法129は、ブロック131において開始する。
【0061】
このようにして、方法129は、実質的に連続して、流体の状態をモニタし、おおよその混入物の含有量、次に求められる流体交換までのおおよその時間に関する情報、または、誘電率比の閾値、または誘電率の率の閾値に至ったことにより流体が交換されなければならないという警告を送信する。
【0062】
図9および図10の実施形態は、信号Sがブロック107において読み込まれるときに、流体の温度は変化しないことを想定する。しかしながら、本発明は、流体応答が計測されるときに、流体温度が一定のままであることを要しない。
【0063】
図11は、流体応答Sが、流体温度の変化に対して補正される場合における、設備内の流体の状態の決定に使用するための、本発明の特徴の一実施形態を示す。実施形態の記述に資するために、先の実施形態におけるのと同じそれらのブロックには、同じ付番がされている。
【0064】
図11を参照すると、方法147は、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替わり、および時間tRがゼロに等しく設定されるときに、ブロック131において始まる。先の実施形態におけると同じに、時間は、誘電率変化の勾配を決定するための設備使用の指標である。開始後、方法147は、ブロック149においてSおよびTを読み込む。Sは流体の誘電率応答または等価なものであり、Tは、Sを決定するために使用される装置によって計測される電極位置、またはその付近の流体温度である。ブロック151において、方法147は、Tが、下限温度T1以上であるか否かを決定するが、T1は、信号Sが、この方法の温度補正によって許容誤差限界内で補正されることが可能な場合の最低の流体温度である。例えば、方法129は、温度T1から始め流体の最大動作温度までの規定された温度範囲にわたり、許容限界内のSの実際の温度の変化のみを近似する温度補正に対してリニアな式を使用し得る。ブロック151の決定が「ノー」である場合、方法147はブロック149に戻り、前回の読み込み後X分のSおよびTが再びリードされる。ブロック151における決定が「イエス」になるまで、すなわち、流体温度が、信号Sが定数の温度値に補正されるために十分に高くなるまでは、方法147は、ブロック153に進まない。ブロック153において、異なる流体温度で採取された信号の比較を可能とするために、方法147は、関数、ルックアップテーブル、またはそれらの組み合わせを使用して、信号Sを信号S’に温度補正する。ブロック153においてはまた、流体の高周波誘電率の変化率は流体温度の関数として変化し得るので、信号の比率の決定のために、時間インターバルXは時間X’に温度補正される。よって、Xを補正することは、異なる温度でのより正確な比率の比較を可能にする。ブロック109において、方法147は、流体の交換が生じたか否かを決定する。この実施形態においては、交換の決定はメンテナンス入力に基づいて為されるが、それは、ブロック109における肯定的な決定に加え、ブロック155において読み込まれるフレッシュな潤滑油に関する情報を提供する。それは、流体の交換が生じたという情報を受けた直後であり、方法147がブロック155において、例えば、キーパッド、光学スキャナ、あるいは他の手段によってであり、入力された情報を読み込むが、それらは、所望の計測温度におけるSの初期値、信号Sの関数、ルックアップテーブルの値またはそれらの組み合わせであり得る温度依存性のS(T)、および、誘電率を決定するために使用され、それ故に流体の混入限界である、限界L1およびL3を提供する。ブロック133において、方法147はフレッシュな流体に対して、IおよびPをブロク155において読み込まれたSに等しいと設定し、トータルのランタイムをゼロに等しいと設定する。ブロック109における決定が「ノー」の場合には、ブロック157において、方法147は、流体温度が温度T2に等しいかどうかを決定する。T2はT1より高い温度であり、流体がほぼこの温度に等しいときに、この実施形態の特徴は、ブロック159において、方法147がこの温度での補正された信号S’および今回のトータルの使用時間tを記録するということである。概して、本発明は、上述の変数以外のデータを記録する必要はないが、しかしながら、本発明は、温度補正の有無にかかわらず、データが記録され、または出力され、別の流体状態分析に使用されることを可能にする。ブロック159においてデータを記録した後、またはブロック157の決定が「ノー」である場合には、ブロック161において、方法147は、温度補正されたS’およびX’を使用して今回の勾配αを、および、温度補正されたS’を使用して比率Cを計算する。ブロック161の後は、ブロック163において平均勾配αavgを計算するとき、およびブロック165においてPを入れ替えるときに、方法147が温度補正されたS’を使用することを除けば、方法147の残りの部分は、図10の方法129と同じである。
【0065】
このようにして、方法147は、実質的に連続して、流体温度が温度T1以上のときに流体の状態をモニタし、おおよその混入物の含有量、次の流体交換までのおおよその時間、または、流体の混入物の含有量に関連する誘電率の率の限界、または流体の混入物をコントロールする能力に関連する誘電率比の限界に至ったために、流体が交換されねばならないという警告を送信する。
【0066】
図11の方法147は、始動の間に生じる全ての過渡的な誘電率勾配の変化を最小化または消去するために、ブロック135において、ランタイムtRがt1より大きいか否かの決定を使用するが、一部のアプリケーションでは、ブロック151の温度決定は、始動時の過渡的な誘電率勾配の変化を最小化、または消去するのに十分であり得る。
【0067】
図11の方法147は、ブロック155において、信号Sの温度依存性のS(T)を変更しているが、本発明は、流体が交換されたときに温度依存性のS(T)が変わることを要求しない。温度依存性のS(T)は、固定されたままであることが可能であるか、または、異なる処方の流体への交換によって、または使用中の流体に生じる変化によって、温度依存性の変化を説明するための方法によって計算されることが可能である。
【0068】
図12は、該方法によって決定される温度補正関数S(T)を使用することにより、流体温度の変化に対して流体応答Sが補正される場合における、設備中の流体の状態を決定するために使用される、本発明の特徴の実施形態を示す。
【0069】
図12を参照すると、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替わり、時間tRがゼロに等しく設定され、かつ流体温度Tが読み込まれたときに、ブロック171において、方法169は開始する。ブロック173は、ブロック171で読み込まれた温度が、図11の実施形態147において記述した、補正下限温度T1より小さいかどうかを決定する。ブロック173の決定が、「イエス」である場合には、ブロック175において、変数Aはゼロに等しく設定され、変数TPは、T1より低い温度として選択され以下で説明されるT0に設定される。ブロック173の決定が「ノー」である場合には、ブロック177において、方法169は、変数Aを1に等しく設定する。変数AおよびTPを適切に設定した後に、方法169は、ブロック149において、信号Sおよび流体温度Tを読み込み、ブロック151において、温度が、温度補正下限T1以上であるかどうかを決定する。該方法は、ブロック151の決定が「イエス」となるまで、信号Sおよび時間インターバルXが、変数S’およびX’として温度補正される、ブロック153へ進まない。ブロック179において、前回格納した温度補正された信号Pと今回の温度補正された信号S’との差が、値ΔSより大きいか否かを決定する。概して、異なる処方のフレッシュな流体は、異なる高周波インピーダンスを有し得る。しかしながら、多くのアプリケーションにおいて、初期インピーダンス値の違いは、たとえ適度な使用であっても、その後の流体に生じるインピーダンスの変化よりもはるかに小さい。よって、これらのアプリケーションにおいては、ΔSの適切な選択は、ブロック179において、全流体の交換がいつ為されたかを識別することを可能とする。ブロック179における決定が、「イエス」の場合には、ブロック181において、方法169は、初期値Iおよび前回の値Pを温度補正された信号S’に、およびトータル使用時間をゼロに設定する。ブロック179における決定が「ノー」である場合には、ブロック183において、方法169は、変数Aがゼロに等しいか否か、かつ流体温度増大の率が定数の率χより大きいか否かを決定するが、その流体温度増大の率は、本実施形態においては、今回の温度Tから前回の計測温度TPを引き、その量を2つの温度計測の間の時間インターバルによって割ったものとして示される。開始時に、ブロック175でゼロに等しく設定されたAを伴い流体温度がT1より低くなければ、ブロック183の決定は常に「ノー」である。ブロック183において計算される温度変化率が、定数の率χより大きくなるように、ブロック175のT0もまた、低く選ばれる。比率χは、信号Sに生じる実質的に変化の全てが、温度上昇のためであって、流体の交換に関する使用のためではないように、流体の温度上昇が十分に早いように選ばれる。すなわち、ブロック183の決定が「イエス」である場合には、方法169は、Sにおける変化の全てが、温度変化のためであるとの想定で信号Sを温度補正するために、ブロック153において使用された関数を更新するために、温度Tおよび信号Sにおける変化を使用する。よって、比率χは、流体およびアプリケーションに対して適切でなければならない。
【0070】
ブロック183の決定が「イエス」である場合には、ブロック185において、流体温度T、および、ブロック149で読み込まれた未補正の信号である信号Sが記録され、ブロック187において、方法169は、流体温度Tが、T1より大きい温度であるT3より大きいか否かを決定する。ブロック187の決定が「イエス」である場合には、ブロック189において、方法169は、新らたな信号温度補正関数S(T)を決定するために、記録された温度Tおよび信号Sのデータを使用する。記録されたデータは、ブロック173および151における決定の故にT1とほぼ等しい温度Tである、方法169がブロック185を経由する初回から、ブロック187において決定されるのでT3より必然的に大きくなる、今回の温度Tまでのデータを含んでいる。よって、新たな関数S(T)は、流体温度が、χより大きな率で、ほぼT1からT3よりも大きく上昇した場合に限って計算される。ブロック187の決定が「ノー」であるか、またはブロック189の計算の後の場合には、方法169は、ブロク183の温度変化率の計算で使用されるTPをTに設定する。ブロック183における決定が「ノー」である場合には、ブロック189において、方法169は、変数Aを1に等しく設定し、これにより、Aがブロック175においてゼロに設定されることを可能とするT1より小さな流体温度を伴って、設備が始動される次回までは、ブロック183における決定は、常に「ノー」である。
【0071】
ブロック189またはブロック191のいずれかの後に、ブロック161において、方法169は、使用の関数として、信号S’の変化の率α、および初期温度補正信号Iに対する今回のS’の比率Cを計算する。ブロック161の後については、方法169の残りの部分は、図11の方法147と同じである。
【0072】
このようにして、方法169は、実質的に連続的に、該方法によって更新され得る温度補正関数S(T)を使用して、流体温度が温度T1以上であるときに流体の温度をモニタし、かつ、おおよその混入物の含有量、次の流体交換までのおおよその時間に関する情報、または、流体の混入物の含有量に関連する誘電率比の限界に至るか、または流体の混入物をコントロールする能力に関連する誘電率の変化率の限界に至るかのいずれかのために、流体が交換されねばならないという警告を送信する。
【0073】
図12の方法169は、流体温度が増大する場合だけに、かつ信号Sを温度補正するための下限温度である温度T1で始動する場合だけに、温度補正関数が、各設備運転サイクルの間に1回だけ更新されることを可能にする。本発明は、温度変化に対して流体応答を補正するために使用される、温度補正関数、または温度補正ルックアップテーブルを自動的に更新する、この方法に限られない。方法169は、方法169がブロック185を経由するたびごとに、TおよびSを記録するが、リニアな温度補正関数S(T)がブロック189において計算され、ブロック153において使用される場合には、本発明の類似の実施形態は、温度がおおよそT1であるブロック185と同類のブロックを最初に経由するときのSおよびTだけを記録する必要があり、新たなS(T)の決定は、そのSおよびT、ならびに、TがT3より大きい場合の今回のSおよびTを使用する。
【0074】
図9から図12に示される実施形態は、図9においてはL1およびL2、ならびに、図10〜図12においてはL1およびL3の2つの閾値の使用を示すが、本発明は、2つの閾値の使用を要求するものではない。他の実施形態は、1つだけの閾値を使用し得、例えば、図9のそれに類似する実施形態は、1つだけの閾値L1を使用し得、流体が交換されなければならないときに警告を与えるだけであり、図10〜図12のそれらに類似の実施形態は、ブロック141に類似のブロックを有することが可能であり、L3の代わりにL1が交換までの時間を決定するために使用され得る。また、他の実施形態は、2個以上の閾値を使用し得、流体の状態についての追加の情報を提供するために、例えば、始動時の信号上昇が、水の結露のため、またはわずかな冷却水のためであるかどうかを決定するために、および潤滑油が適切な温度に至った後に混合物がいつ取り除かれるかを決定するために、1以上の閾値が使用され得、または、例えば、計算されたαavgが期待された値より上または下であるかなど、ある実行状態が満足されるべきとする、代替の閾値を許容し得る。
【0075】
図10〜図12に示される実施形態は、例えば、水の結露ために、始動の間に生じ得る過渡現象を無視するために、平均勾配に対する今回の勾配の比率(α/αavg)が閾値βと比較される前に、ランタイムtRが時間t1より大きくなるのを待つ実施形態であるが、本発明は、該方法が、ランタイムが時間の閾値より大きくなるのを待つことを要求しない。別の実施形態は、例えば、始動時に生じる過渡現象を、勾配が反転するまで、あるいは高周波信号が過渡現象の前の値にほぼ戻るまでは、混合物が存在するという出力を提供するために使用し得る。別の実施形態は、例えば、繰り返される始動過渡現象を、少量の冷却水もれが存在し得るという出力を提供するために使用し得る。
【0076】
本発明の特定の実施形態が示され記述されてきたが、その最も広い局面において本発明から逸脱することなく、流体解析を必要とする様々なアプリケーションに合致する様々な組み合わせ、変更および修正が為され得ることは明らかである。特に、上述の発明によって遂行された様々な機能に関して、たとえ、本発明の本明細書で例示された実施形態における機能を遂行する記述されたコンポーネントまたはサブシステムに構造的に、または電気的に均等でないとしても、本発明の個々のコンポーネント、またはサブシステムを記述するために使用された用語(「手段」への全ての言及を含む)は、別に指示されない限り、記述されたコンポーネントまたはサブシステムの規定された機能を遂行する全てのコンポーネントまたはサブシステム(すなわち、それは機能的に均等である)に対応するように意図されている。さらに、本発明の特定の特徴が、数個の実施形態の1つだけに対して開示されてきたが、そのような特徴は、それが所望され、かつ全ての任意または特定のアプリケーションに対して有益であるときには、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明に使用され得る装置の概略図であり、装置は流体温度をコントロールする。
【図2】図2は、装置の概略図であり、流体温度はモニターされるがコントロールはされない。
【図3】図3は、本発明の装置によって流体に加えられ得る正弦波信号の概略的なグラフ表示である。
【図4】図4は、本発明の装置によって流体に加えられ得る非正弦波信号の概略的なグラフ表示である。
【図5】図5は、エンジン使用時間の関数とする、標準等級高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図6】図6は、エンジン使用時間の関数とする、優良等級高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図7】図7は、エンジン使用時間の関数とする、使用時に低パフォーマンスであることが知られた高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図8】図8は、使用中に水の凝結がオイルを汚染した、優良乗用車エンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量の、概略のグラフィック描写である。
【図9】図9は、本発明の特徴のフローチャートであって、温度に対して補正されていない高周波誘電性応答データは、流体がその有用寿命の終わりに近づくとき、および流体が有用寿命の終わりに至ったときを決定する。
【図10】図10は、本発明の別の特徴のフローチャートであって、高周波誘電率応答データは、流体中に存在する混入物のおおよその量、流体が有用寿命の終わりに至る前に残っているおおよその使用時間、および流体が有用寿命の終わりに至ったときの警告を決定する。
【図11】図11は、本発明の特徴のフローチャートであって、流体温度の変化に対して補正された高周波誘電率応答データが、流体の状態の決定に使用される。
【図12】図12は、本発明の特徴のフローチャートであって、高周波誘電率応答データは、流体がフレッシュな流体に置き換えられたかどうか、流体の応答に対する温度補正、および流体の状態を決定するために使用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定するものではないが、自動車、機械、装置、などを含む輸送または工業設備で使用される高抵抗性流体の状態をモニタリングするための方法である。本発明は、ディーゼルエンジンの潤滑油の状態をオンラインでモニタリングし解析することに特に有用である。より具体的には、本発明は、ディーゼルエンジンの潤滑油のすす含有量をモニタリングすること、およびいつ潤滑油が、最適なエンジン性能および寿命のためにすすの含有量をコントロールする能力を失うかを決定することに有用である。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は内燃機関の寿命および性能にとって重要である。潤滑油が、適切な、もとめられるれる力学的な被膜のための粘性、望ましくない混入物を懸濁し、および/または、中和するための洗浄剤および分散剤、エンジンコンポーネントの表面を保護するための界面活性剤を有するときは、潤滑剤は、エンジンコンポーネントの摩擦、磨耗および腐食を減少させることによって、長期的、効果的なエンジンの運転を可能にする。一般的に、潤滑油の性能特性は、ベースオイル、および/または、添加剤が消費され、劣化し、あるいは消耗されるので、使用および年とともに変化する。潤滑油の性能特性の任意の1つが所望の範囲を外れたとき、潤滑油はその有用寿命の終わりに至る。潤滑油をその有用寿命を過ぎて使用することは、エンジンの寿命および性能を減少させ、壊滅的なエンジン破壊につながり得る。
【0003】
潤滑油がその有用寿命に至るまで、使用済みの潤滑油がエンジン内に残り、フレッシュな、すなわち使用されていない潤滑油と交換されない場合には、潤滑油の価値は最大化される。しかしながら、エンジンの使用年数、運転状態、および他の要因の関数であり得る潤滑油劣化の複雑さのせいで、潤滑油の状態の正確な決定は、オフラインでの研究所テストを、伝統的に要求してきたが、それは、設備のオペレータにとっては、コスト面、および/または、時間面でしばしば効果的でない。故に、多くのオペレータは、運転時間、走行距離、燃料使用、他のような1つ以上の計測容易なエンジン運転パラメータに基づいて潤滑油の状態および潤滑油の変化を単純に見積もるか、または、一般的に、1つ以上のエンジン運転パラメータを使用するが実際の潤滑油の計測を使用しない、エンジン製造者によるアルゴリズムにたよっている。潤滑油の状態の計測またはエンジン内の潤滑油の品質に関する具体的な情報を使用しない見積もりまたはアルゴリズムでの問題は、実際の状態を、または潜在的有用寿命をすら知ることなく、潤滑油の交換の決定がなされるということである。個々の潤滑油は混入物を懸濁し、および/または、中和する能力において幅広く異なり得るので、すすなどの混入物が潤滑油の劣化に大きな役割を演じる場合には、実際の潤滑油の状態または潜在的寿命情報は、エンジンに対する潤滑油交換の決定において特に重要である。
【0004】
近年、潤滑油の電気的、光学的、または他の特性の、リアルタイム、オンボードの計測のためのセンサが紹介されており、好適な全体像が、非特許文献1で提供されている。これらのセンサの多くは単に出力を提供するが、その出力は流体の状態を実際に解析せずに計測された潤滑油の特性の関数である。一般的に、「流体の状態」の出力を提供しないセンサは、センサ信号と流体の状態との間に何らかの関係がある場合、その関係を知らないエンジン、および/または、設備の製造者には、限られた価値しかない。この限界を克服するために、一部のセンサは、計測された潤滑油の特性に基づいて流体の状態を解釈するハードウェア、および/または、ソフトウェアによる完全な解法を、提供することを試みている。米国特許仮出願第10/271,885号、出願日2002年10月16日、「Method for on−line monitoring of quality and condition of non−aqueous fluids」、Lvovich、他は、流体の電気的インピーダンス応答の大きさに基づく、比較的完全な流体の状態の解析のための方法である。比較的完全な流体状態の解析は、一部の流体アプリケーションにおいて適切ではあるが、他のアプリケーションは、特定の流体の状態だけの解釈のためのよりコスト効果のある解法を求めており、例えば、ディーゼルエンジン製造者およびエンドユーザは、エンジンの潤滑油におけるすすに関係する特性をモニタリングすることに関心がある。潤滑油のすすの含有量は、それはディーゼルエンジンの燃焼プロセスの結果であるが、エンジンの運転状態に関して情報を提供するが、しかしより重要なことは、すすを細かく分散した粒子の安定的な懸濁状態に有効に維持する上で、潤滑油が、適切な状態であるかどうかを知ることが、オイル交換のインターバルを最適化するために重要である。
【0005】
特許文献1(「Diesel engine lubricating oil contaminant sensor method」、Heremans,他)は、ディーゼルエンジン中の潤滑油のすす含有量をモニタリングするためのニーズに沿うことを試みるセンサーを記述する。記述されるセンサは潤滑油のすす含有量を計測し得るが、すすをコントロールする潤滑油が効果を失い始めているのか、または、それはいつか、すなわち、追加的なすす含有量が分散した粒子の増大したサイズにつながるポイントを、センサは決定しないということで、限界がある。すす、より一般的には混入物をコントロールする潤滑油の能力喪失は、一般的には、増大した流体の粘性によってまず識別されるが、一般的には、急速な粘性の増大が察知される以前に生じ、あらゆる場合において、エンジンの性能および使用寿命の減少につながる。
【0006】
故に、流体の混入物、とくにすすの含有量のみならず、所望の設備性能および寿命を提供するために流体が維持され得るように、混入物を懸濁し、分散し、またはそうでなければ、コントロールする能力を、いつ流体が失い始めるのかをも、リアルタイムに決定するためのオンライン流体モニタリングセンサへのニーズが残されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0036487号明細書
【非特許文献1】Sabrin Khaled Gebarin、および、Jim Fitch、「Determining Proper Oil and Filter Change Intervals:Can Onboad Automotive Sensors Help?」、Practicing Oil Analysis、2004年3〜4月号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、流体が工業または輸送アプリケーションで使用中のままで、混入物の含有量、および、いつ流体が混入物をコントロールする能力を失うか、と一致する特性に基づいて流体の状態をリアルタイムで決定する方法を有するセンサを提供する。
【0008】
本発明は、輸送および工業アプリケーションで使用される潤滑油中の混入物をモニタするための方法に関する。より具体的には、本発明は、潤滑油が内燃エンジン内とくにディーゼルエンジン内で使用中の間に、混入物の含有量、および、増大した混入物の含有量をコントロールするための潤滑油の能力と一致する流体特性をモニタリングする方法に関する。
【0009】
本発明は、モニタされる流体中に浸された電極間に高周波数信号を加えること、信号に対する流体に依存する応答を計測することを含む。本発明の方法は、初期流体の応答に対する当流体の応答の比を、少なくとも1つの応答閾値限界と比較すること、および、流体使用の関数として、流体応答の、平均の変化率に対する今回の変化率の比を、いつ流体がその有用寿命の終わりに至るかを決定するための、率の閾値に、比較することを含む。
【0010】
本発明の1つの特徴は、加えられる信号が次のうちの1つであるということであり、すなわち、実質的に規定された周波数の実質的な正弦波、または、実質的な非正弦波、例えば、「フーリエ変換」のベース周波数によって規定される周波数のパルス信号であり、そのベース周波数は、実質的な非正弦波を表し得る1組の正弦波のうちの最も低い周波数である。
【0011】
本発明の1つの特徴は、加えられる信号の周波数が、装置の電極の幾何学的形状、流体の温度または温度範囲、モニタされる流体の化学的組成、またはそれらの組み合わせの関数として、事前に決定されることである。
【0012】
本発明の別の特徴は、限界温度を好ましくは5℃よりも少なく、さらに好ましくは2℃よりも少なく、そして最も好ましくは1℃よりも少なく超えて動作する流体に対して、流体温度をコントロールすることなく、または、温度変化の影響に対して応答を変換または修正することなく、流体の応答が計測されることが可能であるということである。
【0013】
本発明の別の特徴は、流体の応答は、流体温度を実質的な固定温度にコントロールすることによって計測されることが可能であるか、または、適切な式またはルックアップテーブルを使用して、流体の応答での温度の変化の影響を最小化するために、変換または修正されることが可能であるということである。
【0014】
本発明の別の特徴は、温度の変化に対して流体の応答を変換または修正するために使用される式またはルックアップテーブルは、永続的に固定されることが可能であるか、または、フレッシュな流体の処方における変化、つまり未使用の流体が設備に追加されることを許すために、方法に入力される値や、流体が2つの温度閾値の間で設定したよりも大きな率で温度を変化させるときに、応答の変化を計測することによって自動的に決定されることにより、更新されることが可能であるということである。
【0015】
本発明の別の特徴は、今回の流体の応答の初期応答に対する比の閾値限界は、事前に設定可能であること、または設備に追加されるフレッシュな流体の処方における変化を許すために、外部入力によって更新可能であるということである。
【0016】
本発明の別の特徴は、流体使用の関数である平均応答率の増大は、固定されることが可能であり、外部入力によって更新されることも可能であり、または流体使用の初期期間に渡る流体応答の変化を平均することによって決定されることも可能であることである。
【0017】
本発明の別の特徴は、設備に対して為された実質的に完全な流体の交換は、設備に追加されるフレッシュな流体に対する流体の状態および品質の閾値をリセットするための、追加入力を必要とすることなく決定されることが可能であるということである。
【0018】
本発明の別の特徴は、流体がその有用寿命の終わりに至ったとき、流体がその有用寿命の終わりに近づいたときに、出力は、流体中の混入物のおおよその量、流体の有用余命の概略値、オフライン解析のための応答および使用のデータ、またはそれらの組み合わせを提供できるということである。
【0019】
本発明の別の特徴は、本発明は、後のダウンロードのためにメモリーへ、例えばオペレータによって観察されまたは受信される信号デバイスへ、サービス施設または機能へ、出力を別の出力に変化する信号プロセッサへ、またはそれらの組み合わせへ出力を提供することが可能であるということである。
【0020】
本発明は、添付の図面からより容易に明確となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、工業または輸送で使用される高抵抗性流体の状態をオンラインでモニタリングし、および/または検出するための方法である。高抵抗性流体は非水性流体であり、すなわち、水を基本とせず、実質的に水を含まない。しかしながら、非水性流体は水である混入物を含み得る。
【0022】
図1は、流体の状態をオンラインでモニタリングし検出するために求められる、適切なデータを収集するために使用されることが可能な装置1の概略的な説明図である。装置1は、導管7内の高抵抗性流体5に浸された実質的に平行な電極3を含む。電極3は、マウント9によって固定して保持され、電気的に絶縁される。装置1は信号ジェネレータ11をも含み、それは、電気導体13を通して電極3へ、一定の振幅および周波数の高周波電圧信号を供給する。信号ジェネレータ11によって供給される電圧信号は、図3に示される実質的な正弦波信号であり得、電圧信号は、信号の周波数である単位時間当たりの全振動の数で、ゼロボルトの周りで実質的に正弦波で振動する。信号ジェネレータ11によって供給される電圧信号は図4に示される非正弦波であり得、電圧信号は、当該分野で周知のフーリエ変換ベース周波数によって規定される周波数でゼロボルト周りで振動する。信号ジェネレータ11の周波数は、電極ペア3の形状に基づいて、および流体5のタイプ、および動作温度または温度範囲、および化学成分によってあらかじめ定まる。求められる周波数は、電極3の間隔によって割られた電極面積の関数として増大する。周波数は流体温度の関数としても増大する。流体成分の関数としての周波数の変化は極めて複雑であり、しばしば流体ごとに決定される。一実施形態においては、代表的な有機物ベースの流体に対して、約40℃から約120℃の範囲の動作温度で、面積の間隔に対する比率が300cmの平行板電極を使用して、信号ジェネレータ11の本高周波数は、1MHzのオーダーである。別の実施形態においては、代表的な電極、温度範囲および流体5に対して、信号ジェネレータ11の本高周波数は、代表的に約10kHzから約10MHzの範囲にある。再び図1を参照して、信号ジェネレータ11の1つの電気導体13は基準電圧のためにアースされ、他方の導体13は、導体13を通る電流を測る電流センサ15を含む。装置1は、コントローラ17もまた含み、それは信号ジェネレータ13に電力を与えるための電気導体19、信号ジェネレータ13の出力電圧をモニタリングするための電気導体21、および電流センサ15によって計測された電流をモニタリングするための電気導体23を有する。コントローラ17は、電力を受けるための電気導体25、およびコントローラ17へ、またはコントローラ17から情報を通信するための、電気導体27をも有する。
【0023】
装置1は、温度コントローラ29、熱電対31、そしてヒータ33を含む。熱電対31およびヒータ33は、各々、マウント35および37によって導管7内に固定して保持され、各々、電気導体39および41を経由して温度コントローラ29と電気的に通信する。それは、動作中に、コントローラ29が、熱電対31を通過し流れる流体5の温度を、決定された一定の温度に維持するために、導体41を通してヒータ33に電力を与えるためであり、それにより、電極3における流体温度を維持するためである。
【0024】
動作中には、流体5は導管7を通して矢印によって示される方向に流れ、流体の一部は電極3の間を流れ、電力は電気導体25を通してコントローラ17に加えられ、そして、温度コントローラ29は、熱電対31および電気導体39によって流体5の温度をモニタし、導管内の流体の温度を現在の温度に維持するために導体41を通してヒータ33に適切な電力を加える。この発明の方法が使用されたときには、該方法は、いつコントローラ17が信号ジェネレータ11に電力を加え、流体5に導体13および電極3を通して信号を加えるかを決定する。加えられた信号に対する流体5の電気的応答は、流れるべき、および電流センサ15によって計測されるべき電流を引き起こす。コントローラ17は、加えられた信号、および電気導体19、21の各々を通して流れる対応する電流をモニタし、流体5の電気化学的インピーダンスを計算するために、電圧および電流信号の大きさ、および位相を比較する。この発明の方法は、流体5の状態を決定するためにインピーダンスデータを使用する。コントローラ17は、電気導体27を通してこの発明の方法で使用された情報を受信することが可能であり、例えば、実質的に全ての流体の交換が生じたという情報、または、流体の状態の決定に使用された情報が受信され得る。この発明の一方法は、コントローラ17からの流体の状態の決定に関する情報を、電気導体27を通じて通信することが可能である。流体の状態の情報は、信号デバイスへ、例えば、設備オペレータに警告するための警告ライト、流体のメンテナンスが必要なときにメンテナンス要員に気づかせるために中央のメンテナンス施設へ、他の信号、例えば、ダメージを防ぐために流体を使用している設備をオフできる信号に情報を変換できる信号プロセッサへ、即座に通信されることが可能である。流体の状態の情報は、例えば、サービス技術員の診断システムからの問い合わせがあったときに、格納メモリから通信されることが可能である。
【0025】
図1は、装置1の電極3を、流れる流体5を伴う導管7の中に示すが、装置1は、電極3の間の流体5が、常に、一定の温度で維持され、モニタされる設備の中の流体5の今回の状態を代表することができるような態様で、電極ペア3の間を流体5が流れる任意の位置に取り付けられることが可能である。例えば、装置1は、ヒータ33が電極3に極めて近接して位置され、かつ流体5の動きが、設備内における適切な加熱および比較的均一な混合および流体の交換を充分に可能とする、流体のタンクまたは溜めの中に取り付けられることが可能である。
【0026】
図1は、実質的に各電極の片側面だけが電極の間の流体に信号ジェネレータからの信号を加える、フラットな長方形の電極3を示すが、別の実施形態においては、電極は、それに限るものではないが、例えば、同軸円筒、多数のフィンガー状分割部分を有する平板、を含む他の幾何学的形状を有することが可能であり、1つの装置の実施形態は、流体に信号を加えるために、他の電極の表面の分割部分に直接的に対面し得るまたはし得ない表面の分割部分の複数の面を伴う電極、一方の電極のフィンガー状の部分が他方の電極のフィンガー状の部分と互い違いに嵌め合った電極、他を有することが可能である。
【0027】
図1は、温度コントローラ29とコントローラ17の間に通信のない装置1を示す。別の実施形態においては、装置は両コントローラの間で通信を有することが可能であり、そ結果として、この発明の方法が流体の状態を決定するときに、温度情報を使用することが可能であったり、または、求められる流体温度に関する情報が温度コントローラ29に通信されることが可能となる。
【0028】
図1は、装置1を独立したコンポーネントとして示している。別の実施形態においては、装置1は、コンパクトなパッケージにコンポーネントを統合することが可能であり、それは、例えば、装置のコスト、サイズ、および/または、電力要求を減らす。別の実施形態においては、装置1は、他のコンポーネント、例えば、この発明のコンポーネントと連結して、または独立して働くことが可能な他の流体センサと共にパッケージに統合されることが可能である。
【0029】
図2は発明の別の実施形態の概略的な説明図であり、装置43は適切なデータを収集するために使用され得る。装置43は、導管7を流れる高抵抗性流体5の中に浸された電極3を含む。電極3はマウント9によって固定して保持され、かつ導管7からは電気的に絶縁される。装置43は、一定の振幅および周波数の高周波数電圧信号を電気導体13を通して電極3に加える、信号ジェネレータ11もまた含む。信号ジェネレータ11の一方の電気導体13は基準電圧のためにアースされ、他方の導体は導体を通して流れる電流を計測する電流センサ15を含む。装置43は、マウント35によって流体5の中に浸され、導管7に固定して保持される熱電対31を含む。さらに、装置43は、信号ジェネレータ13に電力を与えるための電気導体19を有するコントローラ17、信号ジェネレータ13の出力信号をモニタリングするための電気導体21、電流センサ15によって計測された電流をモニタリングするための電気導体23、および熱電対31によって計測される流体5の温度をモニタリングするための電気導体45を含む。コントローラ17は、電力を受けるための電気導体25および情報を通信するための電気導体27をもまた含む。図1の装置1とは異なり、装置43は流体5の温度を維持するための手段を含まない。
【0030】
動作中には、流体5は導管7を通して、かつ電極3の間を流れ、電力は電気導体25を通してコントローラ17に加えられる。この発明の方法が使用されるときには、該方法は、いつコントローラ17が信号ジェネレータ11に電力を加え、流体5に導体13および電極3を通して信号を加えるかを決定する。加えられた信号に対する流体5の電気的応答は、流れるべき、および電流センサ15によって計測されるべき電流を引き起こす。コントローラ17は、加えられた信号、および電気導体19、21の各々を通して流れる対応する電流をモニタし、流体5の電気化学的インピーダンスを計算するために、電圧および電流信号の大きさ、および位相を比較する。コントローラ17は、流体5の温度を決定するために電気導体45を通して熱電対31もまたモニタする。1つの実施形態においては、この発明の方法は、流体5の状態を決定するためにインピーダンスデータを使用し、電気導体27を通してコントローラ17からその決定に関する情報を通信することが可能である。コントローラ17は、電気導体27を通してこの発明の方法で使用される情報を受信することが可能であり、例えば、実質的に全ての流体の交換が生じたという情報、あるいは、様々な温度でのデータを一定温度でのデータに変換するための式またはルックアップテーブルを更新する情報が受信され得る。この発明の方法は、図1の装置1について述べたように、電気導体27を通してコントローラ17から、流体の状態の決定に関する情報を通信することが可能である。
【0031】
別の実施形態においては、図2の装置43は、電極ペアの間の流体5が、熱電対31によって計測される温度であり、かつモニタされる設備の中の流体5の今回の状態を代表することが可能な態様で、流体5が電極3の間を流れる限りにおいては、導管7より他の位置に取り付けられることが可能である。電極3は、各電極の片側面だけが他の電極に対面されるフラットな板である必要はない。別の実施形態においては、装置は、各電極の1つ以上の面が他の電極に対面される、電極の幾何学的形状を有することが可能である。装置43は、図2に示されるように独立したコンポーネントであることが可能であり、または、統合されたコンポーネントであり、または、例えば装置のコスト、サイズ、および/または、電力要求を減らす、装置43のそれらより他のコンポーネントと共に統合されることが可能である。
【0032】
図1の装置1が流体5の温度をコントロールするための手段を有し、図2の装置43が流体5の温度を決定する手段を有する一方で、平均流体温度が、比較的一定であり、好ましくは5℃より小さく変化し、さらに好ましくは2℃より小さく変化し、および最も好ましくは1℃より小さく変化する場合のアプリケーションにおいては、図2の装置43に類似ではあるが、熱電対31を有さず、かつ電極3が流体に信号を加えるときに、コントローラ17が、流体5の温度をモニタしない装置が、本発明の方法の別の実施形態で使用され得る。
【0033】
図5は、エンジンオイルの「すすパフォーマンス」をテストするために使用された、商用自動車における、高負荷ディーゼルエンジンに対する、代表的な標準等級高負荷ディーゼルエンジン潤滑油の高周波誘電率(ε)57、すす含有量59、および粘性61を、走行距離の関数として示す。走行距離は最後のオイル交換からの運転された距離であり、エンジンオイル使用の指標である。誘電率57は、流体の中に浸された電極に対し加えられた約500kHzで実質的に正弦波の電圧信号に対する、温度補正されたエンジンオイルの応答から決定された。電極は、約50cmの、面積の間隔に対する比率を有する。流体の応答は、エンジン運転の約20秒ごとに計測された。カーブ59は、図示される走行距離でのエンジンから抽出されたオイルサンプルの、研究所で決定されたすす含有量を結び、カーブ61は同じサンプルの研究所で決定された粘性を結んでいる。
【0034】
図5のカーブ59によって示されるすすの増大は、走行距離の関数として比較的リニアである。一般的に、大部分のアプリケーションにおいては、すすの生成は単にエンジンのタイプおよび状態だけでなく燃料、運転環境およびエンジンの運転サイクルにも依存するために、すす増大の比率はリニアである必要はない。テスト車に対しては、燃料および運転状態は、約12,000マイル走行で約7%の潤滑油すす負荷を達成するようにコントロールされる。カーブ61の粘性増大は、最初の1,500マイルに関する間は非常に小さく、約6,000マイルまでは比較的リニアな増大であり、その後、約7,000マイルと約10,000マイルの間でより急な増大の開始がある。概して、オイルサンプルが十分に頻繁に採取されなかったので、図5においては示されていないが、高負荷ディーゼル潤滑油は、最初の数百使用マイルの間に、エンジン内でのシヤリングによって引き起こされる、わずかな初期粘性低下を示す。初期低下の後、主にすす含有量の増大のために、高負荷潤滑油の粘性は増大する。特に、増大するすす含有量は、粘性を比較的リニアな様相で増大させるが、それは、オイルへの添加物が、すす含有量がオイルがすす全体を細分化された粒子の状態に懸濁しまたは処理することが不可能なレベルに至るまでは、すすを小さく十分に拡散した粒子に保つからである。すす含有量が、かなり大きな量の凝結したすすの粒子ができ始めるポイントを超えたとき、すす含有量の関数である粘性は、ついに、より急な増大を始める。図5の潤滑油は、各々が約4.5%および約5.5%のすすを含む、7,000マイルで採取されたオイルサンプルと約10,000マイルで採取されたサンプルとの間で粘性「ブレイク」の発生を有する。潤滑油がすすを処理する能力を失い、かつ粘性がブレイクするポイントは、潤滑油の処方および運転状態の関数であり、次の図に見られるように、特定のすすの含有量に直接的に関係しない。潤滑油がもはやすすを処理することが可能でないとき、および、特に、粘性が使用の関数としてより急な増大をはじめるときには、潤滑油は、その有用寿命の終わりに至っており、最大のエンジンのパフォーマンスと寿命を考慮して、フレッシュな潤滑油に交換される必要がある。
【0035】
ここで図5のカーブ57を参照すると、潤滑油の高周波誘電率は、おおよそ6,500マイルの、矢印63でマークされたポイントまでは、ライン65によって近似される比較的低い率で増大し、その後、誘電率は、ライン67によって近似されるより急な率で増大する。ポイント63より前では、誘電率57とすす59との間に比較的一定の比率があり、その結果、誘電率応答が、すす含有量のおおよその値を提供するために使用され得る。ポイント63は、潤滑油の状態が、追加のすすが分散した小さな粒子で維持されないような状態である点と一致し、潤滑油の粘性ブレークポイントに先行するものと見られる。
【0036】
米国特許仮出願第10/271,885号、発明の名称「Method for on−line monitoring of quality and condition of non−aqueous fluids」において、Lvovich、他は、多数の周波数に対する流体インピーダンス計測のための閾値に基づく流体の状態決定の方法を開示し、それは、高周波誘電率増大の閾値を含み、参考として本明細書において援用される。この方法の例として、図5の流体に対して、高周波誘電が閾値69を超えるときに、該方法が、潤滑油は「まもなく交換」されるべき必要があると指示するように、閾値69が設定されることが可能であり、それは、誘電率57が、おおよそ6,500でこの閾値にクロスするとき、オイル中での粘性ブレークの前に必要な潤滑油交換の十分な警告があるからである。同様に、閾値71は、高周波誘電率57が、おおよそ7,000マイルで閾値を超えるときに、このことは粘性ブレークが生じるときに一致するので、潤滑油は「今すぐ交換」されるべき必要がある、と該方法が指示するように設定されることが可能である。先のLvovich他の方法においては、閾値69、および/または、71に至る前にすすの追加量を分散させ続ける能力を流体が失うことを防ぐために、閾値は、別の周波数で設定される。それ故に、特定のアプリケーションに対して適切に設定されるときには、他の周波数信号オフセット電圧によって実施されたインピーダンス計測値と共に使用される高周波閾値69、71は、流体の状態の決定に対し十分である。高周波インピーダンスセンサが、潤滑油のすすの状態をモニタするために単独で使用されるときには、閾値69、71はエンジン保護を最大化する一方で、オイル交換のコストを最小化するためのオイル交換のインターバルを最適化することを保証しない。
【0037】
図6は、図5の潤滑油に対して使用されたのと同一のエンジン、自動車、およびテストサイクルにおける、優良等級ディーゼルエンジン潤滑油の温度補正された高周波誘電率73、すす含有量75、および粘性77を、走行距離の関数として示す。カーブ75は、図5のカーブ59とほぼ同じすす含有量の増大を示す。しかしながら、粘性カーブ77は、潤滑油のすす濃度がおおよそ7%であるところの、おおよそ10,000テストマイルを超えるまでは、優良潤滑油の粘性はブレークしないことを示す。すなわち、この優良等級潤滑油は、図5の標準等級潤滑油よりも高いすす濃度を分散し、または処理することが可能である。粘性ブレークに先行して、高周波伝導率カーブ73は、ポイント79で率の変化を示すが、そのポイントより前での誘電率の変化の率は、ライン81によって近似され、ライン83によって近似されるそのポイントより後での率よりも低い。ポイント79は、潤滑油が、追加のすすを分散した小さな粒子の状態でもはや維持できない場合に一致する。ポイント79より前の誘電率73とすす含有量75との間での比較的一定な比率は、図5の比率に一致する。
【0038】
図6の閾値69および71は、図5の標準等級潤滑油に対して使用されたのと同じであり、図5の潤滑油は、第一の閾値をおおよそ6,500マイルで超え、第二の閾値をおおよそ7,000マイルで超えるが、優良等級潤滑油は、各々、おおよそ7,500マイルおよびおおよそ8,500マイルで閾値を超える。従って、閾値方法だけを使用すると、優良等級潤滑油は、標準等級潤滑油に比べて、追加的なおおよそ1,500マイルのサービスを提供することが可能である。しかしながら、高周波インピーダンス計測だけに基づいて交換のインターバルを完全に最適化しようとすると、エンジンまたは設備の製造者の推奨によれば、潤滑油は粘性ブレークに先行するポイント79までは使用可能と考え得るので、潤滑油をフレッシュな流体に置き換える前の優良等級オイルから、さらにおおよそ500マイルのサービスが可能である。
【0039】
エンジンの製造者またはオペレータの仕様書によれば、図6の誘電率の率変化ポイント79に関する情報が、優良等級オイルに対する排出のさらなる延長の選択肢を提供し得るが、高周波誘電率の率変化の情報が、1つのセンサのみが使用されたときのエンジンのパフォーマンスおよび/または寿命を保護する上で、特別な価値を有するケースは、特定の潤滑油が、特定のアプリケーションに対して適切な品質を有しない場合である。すなわち、潤滑油の高周波誘電率が、標準の潤滑油に対して最適化された閾値を超える前に、取り換えられるべき場合である。
【0040】
図7は、特定のアプリケーションにおいてプアなパフォーマンスを有することが知られたディーゼルエンジン潤滑油の、温度補正された高周波誘電率85、すす含有量87、および粘性89を示す。潤滑油は、図5および図6のそれぞれ、標準および優良の潤滑油の場合と同一のエンジン、自動車、および運転サイクルでテストされた。すすのカーブ87は、先のオイルに対する場合と同じすす含有量の増大を近似して示す。粘性カーブ85は、図5の標準等級潤滑油に類似し、各々が4.5%および5.5%のすすを含むところの、おおよそ7,000で採られたサンプルとおおよそ10,000マイルで採られたサンプルとの間で粘性ブレークを示す。粘性ブレークに先行して、高周波誘電率カーブ85はポイント91を示すが、ライン93によって近似されるポイント91より前の走行距離の関数である誘電率変化の率は、ライン95によって近似されるポイント91より後の率よりも小さい。ポイント91は、潤滑油が、追加のすすを分散した小さな粒子でもはや維持できない場合に一致する。誘電率85とすす87との間の比較的一定な比率は、図5および図6の比率に一致する。
【0041】
図7の閾値69および71は、図5および図6の標準および優良等級の潤滑油に対して示されたものと同じであり、誘電率カーブ85は粘性ブレークが生じる前に両閾値にクロスするが、潤滑油の寿命の終了のより早い指標は、誘電率カーブ85の勾配が変化するポイント91である。よって、1つだけの高周波誘電センサを使用したときに、特定のアプリケーションでプアなパフォーマンスを有し得る潤滑油に対して保護するためには、標準または優良等級の潤滑油での潤滑油交換を最適化することにならないが、閾値69、および/または、71がより低く設定される必要があるか、または、この発明の方法を使用することによって、ポイント91における流体の高周波誘電率の勾配の変化に関する情報が交換インターバルを最適化するために使用され得る。
【0042】
図5〜図7で理解されるように、高周波誘電率カーブ57、73における変化とすすカーブ59、75、および87各々のすす含有量の変化との間での比率は、ポイント63、79、91各々の誘電率変化まではほぼ同じである。このことは、この態様でテストされた全ての流体の処方に対して正しいことが知られた。よって、高周波誘電率勾配が変化するまでは、すすがオイルの主な混入物であると仮定して、オイルのすす含有量を概算するために、誘電率応答が使用され得る。しかしながら、全てのエンジン、および/または、アプリケーションが、誘電率変化とすす変化との間で同じ比率を有するわけではない。他の混入物が流体の誘電率応答に影響を与えることが可能であり、異なるタイプのエンジンによって作られたすすの化学的および物理的特性には、しばしば違いがある。
【0043】
図8は、乗用車の通常運転中にはほとんどすすを生成しないということが知られている、ディーゼルエンジンのための代表的な優良等級乗用車デーゼルエンジン潤滑油の、高周波誘電率(ε)97、およびすす含有量99を、走行距離の関数として示す。図5〜図7に示されるテスト結果に対するのと同じく、走行距離は、最後のオイル交換以降に運転された距離であり、エンジンオイル使用の指標である。誘電率97は、前と同じ約20秒のエンジン運転で、同じ電極の幾何学的形状に加えられた、同じ信号に対する、温度補正されたエンジンオイルの応答から決定された。カーブ99は、図示される走行距離で採取されたオイルサンプルの、研究所で決定されたすす含有量を結ぶ。図8の乗用車のテストデータと図5〜図7の商用車のテストとの大きな違いは、乗用車では、エンジンオイルの「すすパフォーマンス」がテストされなかったことである。よって、乗用車の運転サイクルは変更され、オイルテストはオイルの粘性ブレークまで、または、それを超えるまでは続かなかった。図示されていないが、研究所で決定された粘性はテスト中に粘性ブレークを示さず、かつすす、または粘性に関係した要因より他の要因のために、オイルは最終的にその有用寿命に到達した。
【0044】
図8を参照すると、カーブ97によって示される高周波誘電の増大とカーブ99によって示されるすすの増大との間の比率は、比較的一定である。図5、6、7に示される比率とは異なるが、このアプリケーションにおけるエンジンに対して、誘電率応答は、すす含有量を概算するために使用され得る。図8は、カーブ97のポイント101で生じた高周波誘電率におけるスパイクをもまた示す。ピークのするどい上昇は、3日間涼しいガレージに使用せずに置いた後に、車を始動するときに見つかり、そのときには、外気の温度および湿度が非常に急上昇していた。結露がガレージ内の表面に見つかり、かつオイルに混入物凝結限界を超えさせない約0.1%の水の混入物をオイルが有することが知られた。ポイント100での増大の後に、運転中にオイルが温められるにつれて水が蒸発させられた後に、誘電率は通常の値に戻った。
【0045】
高周波誘電率は、水および/または冷却水の混入をも検出する。つまり、いくらかの水分結露が起こり得る場合のアプリケーションにおいて、本発明の1つの実施形態は、流体の有用寿命の終わりについての誤った決定を防ぐために、混入物凝結限界を超えない、過渡的および/または可逆的な誘電率の率変化を考慮することが可能である。本発明の別の実施形態は、始動時のそのような過渡的および/または可逆的な誘電率の率変化を認識し、高周波誘電が混入物が検出される前の値にほぼ戻るまで、潤滑油が混入物を含んでいるという出力を、提供することが可能である。本発明の別の実施形態は、エンジンおよび潤滑油がほぼ外気温になるほど十分に長い期間「オフ」であった後にエンジンがスタートされたときの状態である、各コールドスタートの後に、そのような過渡的および/または可逆的な誘電率の変化を認識し得、冷却水漏れの可能性があるという出力を提供することが可能である。各実施形態においては、誘電率の閾値を超える高誘電率に起因する継続した誘電率の率変化が、該方法によって認識され、混入物の含有量に起因する流体の状態について警告が発せられる。
【0046】
図5〜図8は、高周波誘電率を走行距離の関数としてプロットし、各々の図における誘電率カーブ57、73、85、97の勾配は、走行距離の変化当りの誘電率の変化として描かれている。概して、誘電率の変化の率は、距離当り、運転時間当り、エネルギー消費当り(例えば、燃料使用)、またはエネルギー出力当り(例えば仕事量)の変化のいずれで計測されようとも、潤滑油が混入物の増大をもはや処理する能力がないときには、図5〜図7各々のポイント63、79、91におけるような誘電率の勾配に大きな変化をみせる。該変化の識別は、使用の関数としての「今回の」誘電性の変化が、適切に平均化される限りにおいては、使用サイクルからは独立している。使用サイクルが比較的長く、使用状態が比較的一定である場合のアプリケーションに対しては、図5〜図7のケースにおけるように、マイルならば数マイル程度、時間ならば数分程度、燃料ならば1ガロンの数割程度であれば、「今回の」勾配は平均化され得る。使用サイクルが比較的短く、使用状態が広範囲に変動し得る場合のアプリケーションに対しては、「今回の」勾配は、より長い使用期間に渡って平均化されることが必要とされ得る。そのような平均化は当該分野において公知である。よって、誘電率の勾配は、図5〜図8においては、距離変化当りの誘電率の変化として示されているが、単純化のために、本発明の実施形態においては、ここで使用されているように、時間変化当りの誘電率の変化として記述されており、誘電率の勾配は、適切な使用インターバルに渡って平均化された任意の使用パラメータの関数としての、潤滑油の高周波誘電率応答の変化である。当該分野で公知のように、ノイズ、および、決定された誘電率値と閾値との間の意味ある比較のために計測される応答に影響する、他の変動性を最小化するために、流体誘電率応答が、十分な使用に渡って平均化され、またはフィルターされる場合に限り、図5〜図7の閾値69、71のような高周波誘電率閾値は、使用変数に依存する。
【0047】
図5〜図8に示されていないが、潤滑油の勾配が変化するポイントの前での、運転中に喪失または消費された潤滑油を補うための使用中のエンジン潤滑油への追加は、誘電率値を単純に低下させ、それは、潤滑油の高周波誘電率が、閾値69、71を超えるまで、または、混入物をコントロールするための潤滑油の有用寿命の終わりに起因する誘電率の勾配が変化するポイントに至るまで、走行距離または運転時間を延長する。そのような追加は、誘電率カーブの勾配を大きく変化させず、どんな変化であっても、潤滑油がすすの追加量を適切に処理する能力を失うときに生じる勾配の変化よりも実質的に小さい。
【0048】
図5〜図8の潤滑油の初期高周波誘電率は、ほぼ同じであるが、全ての潤滑油が同じ初期誘電率値を有する訳ではない。誘電率値の相対的な増大および勾配の変化のみが、流体の状態を決定する上で重要である。しかし、概して、フレッシュな潤滑油は、中古の潤滑油よりも低い誘電率を有し、よって、全てのオイルの交換は、誘電率値における実質的な低下によって検知されることが可能である。
【0049】
図5〜図8は、テスト車の運転中に生じる潤滑油温度の変動に対し補正された、潤滑油の応答に対する高周波誘電率を示す。概して、流体インピーダンス値は、温度依存性であり、流体温度を制御すること、または、温度の変動に対して補正することのいずれかが、流体状態の最も正確な解釈を可能にする。しかしながら、一部のアプリケーションは十分に狭い流体動作温度の範囲を有し得るか、または、温度コントロール、または計測された流体温度に基づく補正なしにデータの使用が可能な、予測可能な温度サイクルを有し得る。概して、応答データが補正されない場合には、流体応答測定の温度範囲は、好ましくは5℃よりも小さく、より好ましくは2℃よりも小さく、最も好ましくは1℃よりも小さい。
【0050】
図9は、本発明の特徴の別の実施形態103を示すが、それは、状態決定のために比較的一定の温度で流体が維持される設備の中での流体の状態を決定するために、上記の高周波誘電率を使用する。温度は、流体測定装置、例えば、図1における装置1によるか、あるいは、流体が使用されている設備またはその設備と関連する手段によって維持され得る。
【0051】
方法103は、毎回ブロック105において始まり、設備はスタートされ、つまり「オン」に替わり、時間を出力するクロックもまた「オン」に替わる。この実施形態においては、時間は、誘電率変化の勾配を決定するために使用される設備使用の尺度であるが、しかしながら、すでに記述したように、他の実施形態においては、該方法によって測定され、または入力されることが可能である、走行距離、消費燃料、エネルギー出力、またはそれらの組み合わせなど、別の使用変数が可能である。
【0052】
開始後、方法103は、ブロック107に進み、加えられた高周波信号に対する流体の応答Sを読み込む。信号Sは、図1に関連して記述されたタイプの流体測定装置によって獲得される。Sは、図5〜図7で示される誘電率値、または実質的に等価である値であり得る。例えば、流体応答を適切な次元を有する値に変換する代わりに、アナログ電圧、電流、またはディジタル入力が読み込まれ得、適切な流体応答に変換され得る。別の例としては、誘電率応答は、インピーダンスおよび位相角の信号として受信され得る。Sは、フィルタリングなしに短い期間について装置によって収集されるデータであることが可能であり、または、ノイズを最小化し、流体の高周波誘電率応答をより良く数量化するために、長期間に渡って平均化され、フィルタされることが可能である。任意のケースにおいて、設備が「オン」である間は、該方法は、ブロック107で、流体品質を決定するために、「X」分の固定されたインターバルでSを読み込む。
【0053】
入力Sが読み込まれた後、方法103はブロック109において、Sが読み込まれた最後のとき以降に、実質的な全流体の交換が生じたかどうかを決定する。この決定は、該方法への入力に基づくことが可能である。例えば、メンテナンス要員、またはオペレータは、流体交換が為されるときに信号を提供することが可能であり、それが、コントローラに通信され(例えば、図1の装置1のコントローラ17への電気導体27によって)、ブロック109で検出される。別の例としては、流体レベルの変化によってまたは他の手段によって流体の変化を検出するセンサ、またはセンサシステムは、ブロック109で検出される信号を提供できる。ブロック109の決定は、入力Sを使用するほかは、流体の変化を識別するための、何らの追加入力も使用せずに為されることもまた可能であり、その例は、本発明の後の実施形態において示される。ブロック109における決定が「イエス」の場合、次いで、ブロック111において、高周波信号決定(走行距離ゼロでの図5〜図8の初期誘電率値に対応する)に対する初期値Iは、Sに等しく設定され、誘電率勾配算出に使用される変数Pは、Sに等しく設定される。ブロック111において値が設定された後に、方法103はブロック107に戻り、前回の読み込み後X分に、Sが再び読み込まれる。
【0054】
ブロック109における決定が「ノー」である場合は、方法103はブロック113へ進み、そこで今回の勾配αが計算されるが、それは、今回の信号Sから前回の信号Pを引き、その量は、信号間の運転時間Xで割られる、そして、比率C、それは初期信号Iに対する今回の信号Sの比率であり、すなわち、流体がフレッシュであるときの誘電率に対する使用された流体の誘電率の比率である。方法103は、ブロック115において、平均勾配αavgに対する今回の勾配αの比率が、勾配の閾値または限界βより大きいかどうかの決定に、今回の勾配を使用する。この実施形態においては、αavgは、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対して期待される高周波誘電率勾配に基づいて設定された定数である。βは、高周波誘電率勾配の増大の最大の変動に基づいて設定された定数であり、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対する、追加の混入物の増大を処理する上で適切な状態である流体に対して期待されるものである。ブロック115の決定が「イエス」の場合、方法103は、ブロック117において「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。警告は、後の検索のためにメモリへ、例えば、設備オペレータに警告可能である警告ライトである信号デバイスへ、メンテナンス要員に通知するための中央メンテナンス施設へ、出力を別の出力へ変換する信号プロセッサへ、または、それらの組み合わせへ送信され得る。ブロック115の決定が「ノー」である場合、方法103は、比率Cが閾値、または限界L1より大きいかどうかを、ブロック119において決定する。L1は、特定の設備タイプ、および/または、アプリケーションに対する設備製造者または設備オペレータの仕様に基づき、流体内に許される最大の混入量に、実質的な限界を設定する定数である。ブロック119の決定が「イエス」の場合は、ブロック117において、方法103は、「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。決定が「ノー」の場合は、ブロック121において、方法103は、比率Cが閾値L2より大きいかどうかを決定する。L2は、ブロック119において決定されるときに、流体がその有用寿命の終わりに近づいているという十分な警告を与えるために、製造者またはオペレータの仕様に基づいて設定されるL1よりも小さな定数である。ブロック121の決定が「イエス」である場合には、ブロック123において、方法103は、「間もなく、流体を交換せよ」との警告を送信する。ブロック121における決定が「ノー」である場合、または、ブロック117または123のいずれかで警告信号が送信された後には、ブロック125において、方法103は、PをSに等しく設定し、ブロック107において、前回の誘電率の読み込みのX分後に新しいSを読み込み、ブロック109から125までのシーケンスを繰り返し、必要とされるときは、流体の状態を報告する。方法103は、流体を使用する設備が「オフ」に替わるまで、X分ごとにSを読み込むこと、および流体の状態を決定することを継続する。設備が「オン」に替わるたびごとに、方法103は、ブロック105において開始する。
【0055】
このようにして、方法103は、流体の状態を実質的に連続してモニタし、混入物の含有量、または混入物の含有量を処理する流体の能力に基づいて、流体が、その有用寿命の終わりに近いか、または終わりであるときに、警告を送る。
【0056】
図9の実施形態は、流体を使用する設備が「オン」に替わった後すぐに、流体の応答Sを読み込み使用する。一部のアプリケーションにおいては、始動直後に、例えば、温度の
変動または湿気の結露のために、信号における過渡的状態があり得、流体の混入物の状態に関するより意味のある情報を高周波誘電率応答が提供する、安定状態に流体が至る前には、いくらかの設備運転時間が必要とされる。よって、別の発明の実施形態においては、方法は、設備始動時に、ただちに流体の状態の決定をすることを開始する必要はない。図9の実施形態は、高周波誘電率応答の率が限界を超えるか否かの決定のために、定数のαavgを使用する。別の実施形態においては、該方法は初期誘電率の増大に対する平均勾配を計算し、その勾配を決定のために使用し得る。図9の実施形態は、混入物の含有量の限界が近づいたときに、単に警告を提供するだけであり、流体内の混入物のおおよその量、または混入限界に到達する前に残っている、おおよその設備使用に関する表示を与えない。別の実施形態においては、該方法は、おおよその混入物の含有量に関する情報、および、平均運転状態に基づいた、流体が交換されなければならない前に残っている設備使用の量に関する情報を提供することが可能である。
【0057】
図10は、平均勾配が該方法によって計算される設備における流体の状態の決定に使用するための、本発明の1つの特徴の実施形態を示し、勾配変化の決定は、始動直後には為されず、情報は、おおよその混入物の含有量、およびおおよその流体の有用余命に関して出力される。図9の実施形態と同じく、この実施形態は、流体が比較的一定の温度に維持されるアプリケーションに対するものである。図10の実施形態を記述するに資するために、図9におけるブロックと同じであるブロックには同じ付番がされている。
【0058】
図10を参照すると、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替り、時間tRがゼロに等しく設定されたときに、方法129は、ブロック131で開始する。実施形態は、誘電率変化の勾配を決定するために、設備使用の指標として時間を使用する。変数tRは、設備が「オン」に切り替わった時から「オフ」に切り替わるまでの、今回の運転サイクルの時間の指標である。始動の後に、方法129は、ブロック107に進みSを読み込むが、Sは、流体の誘電率応答、または等価なものであり、それは、ノイズを最小化するために、および流体の高周波誘電率応答および/または応答の変化の率をより良く定量化するために適切であるように、平均化および/またはフィルタされ得る。
【0059】
Sを読み込んだ後に、ブロック109において、すでに記述したように、方法129は、Sが読み込まれた最後のとき以降に、実質的な全流体の交換が為されたか否かを決定する。決定が「イエス」の場合には、ブロック133において、フレッシュ流体初期誘電率値Iおよび前回の誘電率値Pは、Sに等しく設定され、かつtはゼロに等しく設定される。変数tは、最後の流体交換からの設備運転のトータル時間の指標であり、つまり、流体交換がされるたびごとにゼロに等しく設定される。ブロック133において値が設定された後に、方法129はブロック107に戻り、そこでは前回のリード後X分であり、Sが再び読み込まれる。
【0060】
ブロック109における決定が「ノー」である場合には、方法129はブロック113へ進み、そこで今回の勾配α、および初期誘電率に対する今回の誘電率の比率が計算され、ブロック135において、方法129は、今回の運転サイクルの開始からの時間tRがt1より大きいか否かを決定する。時間t1は、誘電率の勾配が、始動後安定した状態に至ることを可能とするために選ばれた定数である。例えば、ある環境および運転状態における多くの設備においては、「オフ」の間に水の結露が流体に混入することが可能であり、それは、図8に対して示され、かつ記述されたように、増大した高周波誘電率の原因となるが、それは設備運転の間に一たび水分が蒸発すると元に戻る。よって、誘電率勾配の情報は、始動直後には意味のないことがあり得る。ブロック135における決定が「イエス」である場合には、方法129は、ブロック137、139、115をスキップし、ブロック119において、誘電率比Cが閾値L1を超えるか否かを決定し、このようにして設備を護る。ブロック135における決定が「ノー」である場合には、ブロック137において、方法129は、最後の全流体交換からのトータル運転時間tが、t2よりも大きいか否かを決定する。時間t2は定数であり、極端とも言える運転状態の下で、流体の混入物の含有量が、代表的な混入物をコントロールするための流体の能力を超えないように選ばれる。例えば、t2は、流体の代表的期待有用寿命の50%として選ばれ得る。ブロック137における決定が「イエス」という場合には、ブロック139において、平均勾配αavgは、最後の全流体の交換以降のトータル高周波誘電率変化に等しく設定され、それは、今回の誘電率から初期誘電率を引き、最後の交換以降のトータル運転時間で割られたものである。ブロック137における決定が「ノー」である場合には、方法129は、次の全流体の交換までは、ブロック139において計算された、最後の平均勾配αavgを使用する。ブロック115において、方法129は、ブロック113において計算された誘電率勾配αが平均勾配αavgで割られた値が、勾配限界βより大きいか否かを決定する。ブロック115の決定が「イエス」である場合には、ブロック117において、方法129は、「今、流体を交換せよ」との警告を送信する。ブロック115の決定が「ノー」、またはブロック135の決定が「ノー」である場合には、方法129は、ブロック113において計算された誘電率比Cが閾値L1よりも大きいか否かを決定する。「イエス」の場合には、ブロック117において、方法129は「今、流体を交換せよ」の警告を送信する。「ノー」の場合には、ブロック141において、方法129は、流体中の混入物のおおよそのパーセンテージを決定し、流体が交換される必要があるまでのおおよその時間の長さを決定する。図10の実施形態において、混入物はすすであると想定され、すすのおおよその量は、初期に対する今回の誘電率の比率の関数であるF(C)によって決定される。求められる流体交換までの時間は、閾値L3から誘電率比Cを引き、その量を誘電率変化の平均勾配で割ることによって近似される。L3は、流体の寿命の終わりを近似するために使用される定数である。L3は、L1に等しく設定されることが可能であり、または、流体の有用余命のより安全側の推定を提供するために、L1より小さく設定され得る。ブロック143において、方法129は、おおよそのすす含有量、および全流体の交換が求められるまでの、おおよその残っている設備運転時間の出力を送信する。ブロック143の出力は、後の検索のためにメモリへ、例えば、設備オペレータに警告可能な情報ディスプレイである信号デバイスへ、例えば、「交換すべき時」が「交換すべき距離」に変換される、情報が別の出力に変換される信号プロセッサへ、メンテナンス要員に通知するための中央メンテナンス施設へ、またはそれらの組み合わせへ送信され得る。方法129がブロック143において情報を出力し、またはブロック117の警告を送信した後には、ブロック125において、PはSに等しく設定され、該方法は、前回の読み込み後X分のブロック107において、新しいSを読み込むために戻る。方法103は、流体を使用する設備が「オフ」に替わるまで、X分ごとにSを読み込むこと、および流体の状態の決定を継続する。設備が「オン」に替わるたびに、方法129は、ブロック131において開始する。
【0061】
このようにして、方法129は、実質的に連続して、流体の状態をモニタし、おおよその混入物の含有量、次に求められる流体交換までのおおよその時間に関する情報、または、誘電率比の閾値、または誘電率の率の閾値に至ったことにより流体が交換されなければならないという警告を送信する。
【0062】
図9および図10の実施形態は、信号Sがブロック107において読み込まれるときに、流体の温度は変化しないことを想定する。しかしながら、本発明は、流体応答が計測されるときに、流体温度が一定のままであることを要しない。
【0063】
図11は、流体応答Sが、流体温度の変化に対して補正される場合における、設備内の流体の状態の決定に使用するための、本発明の特徴の一実施形態を示す。実施形態の記述に資するために、先の実施形態におけるのと同じそれらのブロックには、同じ付番がされている。
【0064】
図11を参照すると、方法147は、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替わり、および時間tRがゼロに等しく設定されるときに、ブロック131において始まる。先の実施形態におけると同じに、時間は、誘電率変化の勾配を決定するための設備使用の指標である。開始後、方法147は、ブロック149においてSおよびTを読み込む。Sは流体の誘電率応答または等価なものであり、Tは、Sを決定するために使用される装置によって計測される電極位置、またはその付近の流体温度である。ブロック151において、方法147は、Tが、下限温度T1以上であるか否かを決定するが、T1は、信号Sが、この方法の温度補正によって許容誤差限界内で補正されることが可能な場合の最低の流体温度である。例えば、方法129は、温度T1から始め流体の最大動作温度までの規定された温度範囲にわたり、許容限界内のSの実際の温度の変化のみを近似する温度補正に対してリニアな式を使用し得る。ブロック151の決定が「ノー」である場合、方法147はブロック149に戻り、前回の読み込み後X分のSおよびTが再びリードされる。ブロック151における決定が「イエス」になるまで、すなわち、流体温度が、信号Sが定数の温度値に補正されるために十分に高くなるまでは、方法147は、ブロック153に進まない。ブロック153において、異なる流体温度で採取された信号の比較を可能とするために、方法147は、関数、ルックアップテーブル、またはそれらの組み合わせを使用して、信号Sを信号S’に温度補正する。ブロック153においてはまた、流体の高周波誘電率の変化率は流体温度の関数として変化し得るので、信号の比率の決定のために、時間インターバルXは時間X’に温度補正される。よって、Xを補正することは、異なる温度でのより正確な比率の比較を可能にする。ブロック109において、方法147は、流体の交換が生じたか否かを決定する。この実施形態においては、交換の決定はメンテナンス入力に基づいて為されるが、それは、ブロック109における肯定的な決定に加え、ブロック155において読み込まれるフレッシュな潤滑油に関する情報を提供する。それは、流体の交換が生じたという情報を受けた直後であり、方法147がブロック155において、例えば、キーパッド、光学スキャナ、あるいは他の手段によってであり、入力された情報を読み込むが、それらは、所望の計測温度におけるSの初期値、信号Sの関数、ルックアップテーブルの値またはそれらの組み合わせであり得る温度依存性のS(T)、および、誘電率を決定するために使用され、それ故に流体の混入限界である、限界L1およびL3を提供する。ブロック133において、方法147はフレッシュな流体に対して、IおよびPをブロク155において読み込まれたSに等しいと設定し、トータルのランタイムをゼロに等しいと設定する。ブロック109における決定が「ノー」の場合には、ブロック157において、方法147は、流体温度が温度T2に等しいかどうかを決定する。T2はT1より高い温度であり、流体がほぼこの温度に等しいときに、この実施形態の特徴は、ブロック159において、方法147がこの温度での補正された信号S’および今回のトータルの使用時間tを記録するということである。概して、本発明は、上述の変数以外のデータを記録する必要はないが、しかしながら、本発明は、温度補正の有無にかかわらず、データが記録され、または出力され、別の流体状態分析に使用されることを可能にする。ブロック159においてデータを記録した後、またはブロック157の決定が「ノー」である場合には、ブロック161において、方法147は、温度補正されたS’およびX’を使用して今回の勾配αを、および、温度補正されたS’を使用して比率Cを計算する。ブロック161の後は、ブロック163において平均勾配αavgを計算するとき、およびブロック165においてPを入れ替えるときに、方法147が温度補正されたS’を使用することを除けば、方法147の残りの部分は、図10の方法129と同じである。
【0065】
このようにして、方法147は、実質的に連続して、流体温度が温度T1以上のときに流体の状態をモニタし、おおよその混入物の含有量、次の流体交換までのおおよその時間、または、流体の混入物の含有量に関連する誘電率の率の限界、または流体の混入物をコントロールする能力に関連する誘電率比の限界に至ったために、流体が交換されねばならないという警告を送信する。
【0066】
図11の方法147は、始動の間に生じる全ての過渡的な誘電率勾配の変化を最小化または消去するために、ブロック135において、ランタイムtRがt1より大きいか否かの決定を使用するが、一部のアプリケーションでは、ブロック151の温度決定は、始動時の過渡的な誘電率勾配の変化を最小化、または消去するのに十分であり得る。
【0067】
図11の方法147は、ブロック155において、信号Sの温度依存性のS(T)を変更しているが、本発明は、流体が交換されたときに温度依存性のS(T)が変わることを要求しない。温度依存性のS(T)は、固定されたままであることが可能であるか、または、異なる処方の流体への交換によって、または使用中の流体に生じる変化によって、温度依存性の変化を説明するための方法によって計算されることが可能である。
【0068】
図12は、該方法によって決定される温度補正関数S(T)を使用することにより、流体温度の変化に対して流体応答Sが補正される場合における、設備中の流体の状態を決定するために使用される、本発明の特徴の実施形態を示す。
【0069】
図12を参照すると、設備が「オン」に替り、クロックが「オン」に替わり、時間tRがゼロに等しく設定され、かつ流体温度Tが読み込まれたときに、ブロック171において、方法169は開始する。ブロック173は、ブロック171で読み込まれた温度が、図11の実施形態147において記述した、補正下限温度T1より小さいかどうかを決定する。ブロック173の決定が、「イエス」である場合には、ブロック175において、変数Aはゼロに等しく設定され、変数TPは、T1より低い温度として選択され以下で説明されるT0に設定される。ブロック173の決定が「ノー」である場合には、ブロック177において、方法169は、変数Aを1に等しく設定する。変数AおよびTPを適切に設定した後に、方法169は、ブロック149において、信号Sおよび流体温度Tを読み込み、ブロック151において、温度が、温度補正下限T1以上であるかどうかを決定する。該方法は、ブロック151の決定が「イエス」となるまで、信号Sおよび時間インターバルXが、変数S’およびX’として温度補正される、ブロック153へ進まない。ブロック179において、前回格納した温度補正された信号Pと今回の温度補正された信号S’との差が、値ΔSより大きいか否かを決定する。概して、異なる処方のフレッシュな流体は、異なる高周波インピーダンスを有し得る。しかしながら、多くのアプリケーションにおいて、初期インピーダンス値の違いは、たとえ適度な使用であっても、その後の流体に生じるインピーダンスの変化よりもはるかに小さい。よって、これらのアプリケーションにおいては、ΔSの適切な選択は、ブロック179において、全流体の交換がいつ為されたかを識別することを可能とする。ブロック179における決定が、「イエス」の場合には、ブロック181において、方法169は、初期値Iおよび前回の値Pを温度補正された信号S’に、およびトータル使用時間をゼロに設定する。ブロック179における決定が「ノー」である場合には、ブロック183において、方法169は、変数Aがゼロに等しいか否か、かつ流体温度増大の率が定数の率χより大きいか否かを決定するが、その流体温度増大の率は、本実施形態においては、今回の温度Tから前回の計測温度TPを引き、その量を2つの温度計測の間の時間インターバルによって割ったものとして示される。開始時に、ブロック175でゼロに等しく設定されたAを伴い流体温度がT1より低くなければ、ブロック183の決定は常に「ノー」である。ブロック183において計算される温度変化率が、定数の率χより大きくなるように、ブロック175のT0もまた、低く選ばれる。比率χは、信号Sに生じる実質的に変化の全てが、温度上昇のためであって、流体の交換に関する使用のためではないように、流体の温度上昇が十分に早いように選ばれる。すなわち、ブロック183の決定が「イエス」である場合には、方法169は、Sにおける変化の全てが、温度変化のためであるとの想定で信号Sを温度補正するために、ブロック153において使用された関数を更新するために、温度Tおよび信号Sにおける変化を使用する。よって、比率χは、流体およびアプリケーションに対して適切でなければならない。
【0070】
ブロック183の決定が「イエス」である場合には、ブロック185において、流体温度T、および、ブロック149で読み込まれた未補正の信号である信号Sが記録され、ブロック187において、方法169は、流体温度Tが、T1より大きい温度であるT3より大きいか否かを決定する。ブロック187の決定が「イエス」である場合には、ブロック189において、方法169は、新らたな信号温度補正関数S(T)を決定するために、記録された温度Tおよび信号Sのデータを使用する。記録されたデータは、ブロック173および151における決定の故にT1とほぼ等しい温度Tである、方法169がブロック185を経由する初回から、ブロック187において決定されるのでT3より必然的に大きくなる、今回の温度Tまでのデータを含んでいる。よって、新たな関数S(T)は、流体温度が、χより大きな率で、ほぼT1からT3よりも大きく上昇した場合に限って計算される。ブロック187の決定が「ノー」であるか、またはブロック189の計算の後の場合には、方法169は、ブロク183の温度変化率の計算で使用されるTPをTに設定する。ブロック183における決定が「ノー」である場合には、ブロック189において、方法169は、変数Aを1に等しく設定し、これにより、Aがブロック175においてゼロに設定されることを可能とするT1より小さな流体温度を伴って、設備が始動される次回までは、ブロック183における決定は、常に「ノー」である。
【0071】
ブロック189またはブロック191のいずれかの後に、ブロック161において、方法169は、使用の関数として、信号S’の変化の率α、および初期温度補正信号Iに対する今回のS’の比率Cを計算する。ブロック161の後については、方法169の残りの部分は、図11の方法147と同じである。
【0072】
このようにして、方法169は、実質的に連続的に、該方法によって更新され得る温度補正関数S(T)を使用して、流体温度が温度T1以上であるときに流体の温度をモニタし、かつ、おおよその混入物の含有量、次の流体交換までのおおよその時間に関する情報、または、流体の混入物の含有量に関連する誘電率比の限界に至るか、または流体の混入物をコントロールする能力に関連する誘電率の変化率の限界に至るかのいずれかのために、流体が交換されねばならないという警告を送信する。
【0073】
図12の方法169は、流体温度が増大する場合だけに、かつ信号Sを温度補正するための下限温度である温度T1で始動する場合だけに、温度補正関数が、各設備運転サイクルの間に1回だけ更新されることを可能にする。本発明は、温度変化に対して流体応答を補正するために使用される、温度補正関数、または温度補正ルックアップテーブルを自動的に更新する、この方法に限られない。方法169は、方法169がブロック185を経由するたびごとに、TおよびSを記録するが、リニアな温度補正関数S(T)がブロック189において計算され、ブロック153において使用される場合には、本発明の類似の実施形態は、温度がおおよそT1であるブロック185と同類のブロックを最初に経由するときのSおよびTだけを記録する必要があり、新たなS(T)の決定は、そのSおよびT、ならびに、TがT3より大きい場合の今回のSおよびTを使用する。
【0074】
図9から図12に示される実施形態は、図9においてはL1およびL2、ならびに、図10〜図12においてはL1およびL3の2つの閾値の使用を示すが、本発明は、2つの閾値の使用を要求するものではない。他の実施形態は、1つだけの閾値を使用し得、例えば、図9のそれに類似する実施形態は、1つだけの閾値L1を使用し得、流体が交換されなければならないときに警告を与えるだけであり、図10〜図12のそれらに類似の実施形態は、ブロック141に類似のブロックを有することが可能であり、L3の代わりにL1が交換までの時間を決定するために使用され得る。また、他の実施形態は、2個以上の閾値を使用し得、流体の状態についての追加の情報を提供するために、例えば、始動時の信号上昇が、水の結露のため、またはわずかな冷却水のためであるかどうかを決定するために、および潤滑油が適切な温度に至った後に混合物がいつ取り除かれるかを決定するために、1以上の閾値が使用され得、または、例えば、計算されたαavgが期待された値より上または下であるかなど、ある実行状態が満足されるべきとする、代替の閾値を許容し得る。
【0075】
図10〜図12に示される実施形態は、例えば、水の結露ために、始動の間に生じ得る過渡現象を無視するために、平均勾配に対する今回の勾配の比率(α/αavg)が閾値βと比較される前に、ランタイムtRが時間t1より大きくなるのを待つ実施形態であるが、本発明は、該方法が、ランタイムが時間の閾値より大きくなるのを待つことを要求しない。別の実施形態は、例えば、始動時に生じる過渡現象を、勾配が反転するまで、あるいは高周波信号が過渡現象の前の値にほぼ戻るまでは、混合物が存在するという出力を提供するために使用し得る。別の実施形態は、例えば、繰り返される始動過渡現象を、少量の冷却水もれが存在し得るという出力を提供するために使用し得る。
【0076】
本発明の特定の実施形態が示され記述されてきたが、その最も広い局面において本発明から逸脱することなく、流体解析を必要とする様々なアプリケーションに合致する様々な組み合わせ、変更および修正が為され得ることは明らかである。特に、上述の発明によって遂行された様々な機能に関して、たとえ、本発明の本明細書で例示された実施形態における機能を遂行する記述されたコンポーネントまたはサブシステムに構造的に、または電気的に均等でないとしても、本発明の個々のコンポーネント、またはサブシステムを記述するために使用された用語(「手段」への全ての言及を含む)は、別に指示されない限り、記述されたコンポーネントまたはサブシステムの規定された機能を遂行する全てのコンポーネントまたはサブシステム(すなわち、それは機能的に均等である)に対応するように意図されている。さらに、本発明の特定の特徴が、数個の実施形態の1つだけに対して開示されてきたが、そのような特徴は、それが所望され、かつ全ての任意または特定のアプリケーションに対して有益であるときには、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明に使用され得る装置の概略図であり、装置は流体温度をコントロールする。
【図2】図2は、装置の概略図であり、流体温度はモニターされるがコントロールはされない。
【図3】図3は、本発明の装置によって流体に加えられ得る正弦波信号の概略的なグラフ表示である。
【図4】図4は、本発明の装置によって流体に加えられ得る非正弦波信号の概略的なグラフ表示である。
【図5】図5は、エンジン使用時間の関数とする、標準等級高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図6】図6は、エンジン使用時間の関数とする、優良等級高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図7】図7は、エンジン使用時間の関数とする、使用時に低パフォーマンスであることが知られた高負荷ディーゼルエンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量、および粘性の、概略のグラフ表示である。
【図8】図8は、使用中に水の凝結がオイルを汚染した、優良乗用車エンジンオイルの高周波誘電率(ε)の応答、すす含有量の、概略のグラフィック描写である。
【図9】図9は、本発明の特徴のフローチャートであって、温度に対して補正されていない高周波誘電性応答データは、流体がその有用寿命の終わりに近づくとき、および流体が有用寿命の終わりに至ったときを決定する。
【図10】図10は、本発明の別の特徴のフローチャートであって、高周波誘電率応答データは、流体中に存在する混入物のおおよその量、流体が有用寿命の終わりに至る前に残っているおおよその使用時間、および流体が有用寿命の終わりに至ったときの警告を決定する。
【図11】図11は、本発明の特徴のフローチャートであって、流体温度の変化に対して補正された高周波誘電率応答データが、流体の状態の決定に使用される。
【図12】図12は、本発明の特徴のフローチャートであって、高周波誘電率応答データは、流体がフレッシュな流体に置き換えられたかどうか、流体の応答に対する温度補正、および流体の状態を決定するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)流体中に浸された電極間に高周波電圧信号を加えるステップと、
b)加えられた信号に対する該流体の応答を計測するステップ、および流体特性を決定するステップと、
c)該流体がフレッシュなときのその特性の大きさに対して相対的に決定された特性の大きさを、少なくとも1つの特性の閾値と比較するステップ、および、使用変数の関数として決定された特性の変化の比率を、流体の状態の決定に帰着する少なくとも1つの比率と比較するステップ、とを包含し、
各ステップは連続的に、断続的に、反復的に、およびそれらの組み合わせにより実行され、かつ周波数は約10kHzから10MHzの範囲にある、
非水性流体の状態を決定する方法。
【請求項2】
前記加えられる信号は、実質的に規定された周波数の実質的な正弦波、フーリエ変換のベース周波数によって規定された周波数の実質的な非正弦波、およびそれらの組み合わせからなるグループのうちの少なくとも1つから選択されるものの中の1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加えられる信号の前記周波数は、電極の幾何学的形状、流体温度、流体温度範囲、モニターされる流体の組成、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択されるものの中の少なくとも1つの関数として事前に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加えられる信号に対する前記流体の応答は、使用される該流体に依存する温度に実質的に固定された温度で計測され、該温度の変化は好ましくは5℃よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加えられる信号に対する前記流体の応答は、常温から最高稼動温度の範囲内の様々な温度で計測され、
前記流体特性の決定は、前記特性を実質的に固定された温度での特性に換算すること、温度変化の影響を最小化すること、温度依存性の関数式を使用すること、温度依存性のルックアップテーブルを使用すること、およびそれらの組み合わせから成るグループの少なくとも1つから選択され、
該流体特性を実質的に固定された温度での流体特性に換算する手段は、固定されている、外部入力によって更新される、流体温度が2つの温度閾値の間を事前設定した比率より大きな比率で上昇したときに自動的に更新される、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記決定された流体特性は、誘電率、等価誘電率、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択されるものであり、該決定された流体特性を比較するための閾値は、固定されている、外部入力によって更新される、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体変化が生じたという外部入力が提供されるとき、前記決定された流体特性の変化が使用されて流体変化が生じたとき、およびそれらの組み合わせから成るグループから選択される状態の下で、比較のために使用された前記値をリセットするステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された流体の状態は、前記流体はその有用寿命の終わりに近い、該流体はその有用寿命である、該流体はまもなく交換される必要がある、該流体は今すぐに交換される必要がある、該流体は混入物を含む、該流体中の混入物のおおよその量、該流体のおおよその有用余命、該流体が交換される必要がある以前に残されるおおよその有用な時間、またはそれらの組み合わせ、から成るグループから選択される1つであり、
後のダウンロードのためのメモリ、信号装置、サービス設備、信号プロセッサ、またはそれらの組み合わせから成るグループから選択される1つに、前記決定された流体の状態の出力を提供するステップをさらに含み、
該流体中の混入物は、すす、水、エンジン冷却水、またはそれらの混合物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって流体の状態をオンラインでモニタし検出するために要求されるデータを収集する装置。
【請求項10】
a)流体中に浸された電極間に高周波電圧信号を加えるステップと、
b)加えられた信号に対する該流体の応答を計測するステップ、および流体特性を決定するステップと、
c)該流体がフレッシュなときのその特性の大きさに対して相対的に決定された特性の大きさを、少なくとも1つの特性の閾値と比較するステップ、および、使用変数の関数として決定された特性の変化の比率を、流体の状態の決定に帰着する少なくとも1つの比率と比較するステップ、とを包含し、
各ステップは連続的に、断続的に、反復的に、およびそれらの組み合わせにより実行される、
流体の状態をモニタし、検出する装置。
【請求項1】
a)流体中に浸された電極間に高周波電圧信号を加えるステップと、
b)加えられた信号に対する該流体の応答を計測するステップ、および流体特性を決定するステップと、
c)該流体がフレッシュなときのその特性の大きさに対して相対的に決定された特性の大きさを、少なくとも1つの特性の閾値と比較するステップ、および、使用変数の関数として決定された特性の変化の比率を、流体の状態の決定に帰着する少なくとも1つの比率と比較するステップ、とを包含し、
各ステップは連続的に、断続的に、反復的に、およびそれらの組み合わせにより実行され、かつ周波数は約10kHzから10MHzの範囲にある、
非水性流体の状態を決定する方法。
【請求項2】
前記加えられる信号は、実質的に規定された周波数の実質的な正弦波、フーリエ変換のベース周波数によって規定された周波数の実質的な非正弦波、およびそれらの組み合わせからなるグループのうちの少なくとも1つから選択されるものの中の1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加えられる信号の前記周波数は、電極の幾何学的形状、流体温度、流体温度範囲、モニターされる流体の組成、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択されるものの中の少なくとも1つの関数として事前に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加えられる信号に対する前記流体の応答は、使用される該流体に依存する温度に実質的に固定された温度で計測され、該温度の変化は好ましくは5℃よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加えられる信号に対する前記流体の応答は、常温から最高稼動温度の範囲内の様々な温度で計測され、
前記流体特性の決定は、前記特性を実質的に固定された温度での特性に換算すること、温度変化の影響を最小化すること、温度依存性の関数式を使用すること、温度依存性のルックアップテーブルを使用すること、およびそれらの組み合わせから成るグループの少なくとも1つから選択され、
該流体特性を実質的に固定された温度での流体特性に換算する手段は、固定されている、外部入力によって更新される、流体温度が2つの温度閾値の間を事前設定した比率より大きな比率で上昇したときに自動的に更新される、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記決定された流体特性は、誘電率、等価誘電率、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択されるものであり、該決定された流体特性を比較するための閾値は、固定されている、外部入力によって更新される、およびそれらの組み合わせから成るグループのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体変化が生じたという外部入力が提供されるとき、前記決定された流体特性の変化が使用されて流体変化が生じたとき、およびそれらの組み合わせから成るグループから選択される状態の下で、比較のために使用された前記値をリセットするステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記決定された流体の状態は、前記流体はその有用寿命の終わりに近い、該流体はその有用寿命である、該流体はまもなく交換される必要がある、該流体は今すぐに交換される必要がある、該流体は混入物を含む、該流体中の混入物のおおよその量、該流体のおおよその有用余命、該流体が交換される必要がある以前に残されるおおよその有用な時間、またはそれらの組み合わせ、から成るグループから選択される1つであり、
後のダウンロードのためのメモリ、信号装置、サービス設備、信号プロセッサ、またはそれらの組み合わせから成るグループから選択される1つに、前記決定された流体の状態の出力を提供するステップをさらに含み、
該流体中の混入物は、すす、水、エンジン冷却水、またはそれらの混合物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって流体の状態をオンラインでモニタし検出するために要求されるデータを収集する装置。
【請求項10】
a)流体中に浸された電極間に高周波電圧信号を加えるステップと、
b)加えられた信号に対する該流体の応答を計測するステップ、および流体特性を決定するステップと、
c)該流体がフレッシュなときのその特性の大きさに対して相対的に決定された特性の大きさを、少なくとも1つの特性の閾値と比較するステップ、および、使用変数の関数として決定された特性の変化の比率を、流体の状態の決定に帰着する少なくとも1つの比率と比較するステップ、とを包含し、
各ステップは連続的に、断続的に、反復的に、およびそれらの組み合わせにより実行される、
流体の状態をモニタし、検出する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−536518(P2007−536518A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511472(P2007−511472)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/015185
【国際公開番号】WO2005/111604
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/015185
【国際公開番号】WO2005/111604
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】
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