説明

非水溶性色素化合物、該非水溶性色素化合物を用いたインク、及び該インクを用いたカラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シート

【課題】溶剤への溶解性が高く、色調、彩度が良好で、色域の広い分光反射特性を有し、かつ高い耐光性を有する非水溶性色素化合物、また、該非水溶性色素化合物を含有するインク、さらに、該インクを用いたカラーフィルター用レジスト組成物、感熱転写記録用シートを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる非水溶性色素化合物。


[式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRは、水素原子等である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水溶性色素化合物、及び塗料、インクジェットインク、カラーフィルター、樹脂成型品等の製造工程において用いられる、該非水溶性色素化合物を含有するインクに関する。更に、該インクを用いてなるカラーフィルター用レジスト組成物、及び感熱転写記録用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラーフィルターの製造方法としては、染色法、印刷法、インクジェット法、フォトレジスト法等が知られている。中でも、分光特性の制御や再現性を容易にできること、解像度が高く、より高精細なパターニングが可能であることから、フォトレジスト法が製造方法の主流となっている。
【0003】
このフォトレジスト法では、一般に着色剤として顔料が用いられている。しかし、顔料は一定の粒径を有するため消偏作用(偏光が崩されること)を伴い、液晶ディスプレイのカラー表示のコントラスト比が低下することが知られている。又、顔料を用いた系ではバックライト光の高い透過性を得ることが困難であり、カラーフィルターの明度を向上させるには限界がある。更に、顔料は有機溶剤やポリマーに不溶であるため、着色レジスト組成物は分散物として得られるが、その分散の安定化は難しい。
【0004】
このような着色剤として顔料を使用した際の問題点を解決するため、キサンテン系染料であるC.I.Solvent Red 49を用いた赤色カラーフィルターが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、感熱転写記録法は、シート状基材上に熱移行性の色素を含む色材層を有する感熱転写シートと、色素受容層を表面に有する受像シートを重ね合わせ、感熱転写シートを加熱することにより感熱転写シート中の色素を受像シートに転写することにより記録を行う記録方法である。そして該感熱転写記録法において、転写シート及び転写シート用のインク組成物に用いられる色素は、転写記録のスピード、記録物の画質、保存安定性などに大きな影響を与えるために非常に重要である。このような感熱転写記録法に用いられる色素として、鮮明性、色再現性、発色濃度等に優れたアントラキノン系色素を用いた例が報告されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−344998号公報
【特許文献2】特開平7−232481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のC.I.Solvent Red 49を用いたカラーフィルターは、消偏作用がなく、バックライト光の高い透過性を得ることができるが、耐光性や溶剤への溶解性が十分でないという課題がある。また、特許文献2に記載のアントラキノン系色素を用いた感熱転写記録物では、色調は良好であるものの、耐光性との両立が満足するレベルに達していない。
【0008】
従って、本発明は上記した課題を解決することを目的とする。
【0009】
即ち本発明は、溶剤への親和性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有し、かつ高い耐光性を有する新規非水溶性色素化合物を提供することを目的とする。
【0010】
また、該非水溶性色素化合物を含有するインクを提供することを目的とする。更に、該インクを用いたカラーフィルター用レジスト組成物、及び感熱転写記録用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、以下の発明によって達成される。
【0012】
本発明は、下記式(1)で表わされることを特徴とする非水溶性色素化合物に関する。
【0013】
また、本発明は、少なくとも、媒体中に下記式(1)で表される非水溶性色素化合物を含有することを特徴とするインクに関する。
【0014】
【化1】

【0015】
[式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記式(2)で表されるアシルアミノ基である。
【0016】
【化2】

【0017】
(式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基のいずれかを表す。*は結合部位を表す。)]
さらに、本発明は、該インクを用いた、カラーフィルター用レジスト組成物、及び感熱転写記録用シートに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、溶剤への親和性が高く、色調、彩度が良好で、色域の広い分光反射特性を有し、かつ高い耐光性を有する、新規非水溶性色素化合物及び、該非水溶性色素化合物を含有するインクを提供することができる。更に、該インクを用いることで、良好な色調を有するカラーフィルター用レジスト組成物が提供できる。また、該インクを基材上に膜形成させ、色材層とすることで、良好な色調を有する感熱転写記録用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる色素化合物(5)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図2】本発明にかかる色素化合物(6)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図3】本発明にかかる色素化合物(7)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図4】本発明にかかる色素化合物(8)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図5】本発明にかかる色素化合物(10)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図6】本発明にかかる色素化合物(24)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【図7】本発明にかかる色素化合物(25)のDMSO−d中、80℃、400MHzにおけるH−NMRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、好適な実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記式(1)で表される非水溶性色素化合物が、溶剤への親和性が高く、色調、彩度が良好で、色域の広い分光反射特性を有し、かつ光褪色に対する安定性も高いことを見出した。
【0022】
また、該非水溶性色素化合物を含有するインクを使用することで、良好な色調を有するカラーフィルター用レジスト組成物、及び感熱転写記録用シートが得られることを見出し本発明に至った。
【0023】
【化3】

【0024】
[式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記式(2)で表されるアシルアミノ基である。
【0025】
【化4】

【0026】
(式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基のいずれかを表す。*は結合部位を表す。)]
先ず、式(1)で表される非水溶性色素化合物について説明する。
【0027】
式(1)で表される本発明の非水溶性色素化合物は、有機溶剤に対する高い親和性を有する。なお、本発明における「非水溶性」とは、水への溶解度が質量百分率で1%未満であることを示す。
【0028】
式(1)中、R、R、R及びR10におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0029】
式(1)中、R、R、R及びR10におけるアルキル基は、更に置換基により置換されていても良い。置換しても良い置換基としては、例えば、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。R、R、R及びR10において置換基を有するものとしては、具体的には、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0030】
式(1)中、R、R、R及びR10は、上記に列挙した官能基から任意に選択できるが、RとR、及び、RとR10がそれぞれ同一の置換基である場合が製造容易性の点で好ましく、さらに、これらの置換基がメチル基である場合が原料入手性の点でより好ましい。
【0031】
式(1)中、R及びRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、等が挙げられる。
【0032】
式(1)中、R及びRにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0033】
式(1)中、R及びRにおけるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0034】
式(1)中、R及びRにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基は、更に置換基により置換されていても良い。置換しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。R及びRにおいて置換基を有するものとしては、具体的には、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基が挙げられる。
【0035】
式(1)中、R及びRは、上記に列挙した置換基及び水素原子から任意に選択できるが、R及びRがメチル基、エチル基又はプロピル基である場合が耐光性の点で好ましく、R及びRが水素原子以外である場合は、製造容易性の点でこれらの置換基が全て同一であることがより好ましい。
【0036】
式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは式(2)で表されるアシルアミノ基である。式(1)の非水溶性色素化合物が高い発色性を有しながらも、高い耐光性を有するためには、R、R、R、Rの少なくとも1つが式(2)で表されるアシルアミノ基であることが必要である。
【0037】
特に、発色性、耐光性をより高めることができるという点で、式(1)中のR、R、R及びRのうちの2〜4つが式(2)のアシルアミノ基で置換されていることが好ましい。この場合には、製造容易性の点で、それぞれのアシルアミノ基が同一であることが好ましく、式(1)中のRとR、RとRが、それぞれ同一の置換基である場合がより好ましい。
【0038】
式(2)中、R11におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0039】
式(2)中、R11におけるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0040】
式(2)中、R11におけるアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0041】
式(2)中、R11におけるアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等が挙げられる。
【0042】
式(2)中、R11におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられる。
【0043】
式(2)中、R11におけるヘテロ環基としては、例えば、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾピラゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、ベンゾピロリル基、インドリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基等が挙げられる。
【0044】
式(2)中のR11の各置換基は、更に置換基により置換されていても良い。置換しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シアノ基、アルキルアミノ基、スルホアルキル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。R11において置換基を有するものとしては、具体的には、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基が挙げられる。
【0045】
式(2)中、R11は、上記に列挙した置換基から任意に選択できるが、R11がアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基である場合が発色性の点で好ましく、アルキル基、アリール基であることが製造容易性の点でより好ましい。これらの中でも、R11が直鎖のアルキル基である場合が、より優れた耐光性が得られる点で好ましい。
【0046】
本発明の式(1)で表わされる非水溶性色素化合物は、下記図に示されるように、下記式(3)及び(4)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0047】
【化5】

【0048】
[式(3)及び(4)におけるR〜R10は、式(1)におけるR〜R10と同義である。]
【0049】
本発明にかかる式(1)で表される非水溶性色素化合物は、公知の製造方法に基づき合成することができる。合成スキームの一例を以下に示す。
【0050】
【化6】

【0051】
[上記化合物B、C、DにおけるR〜R10は、式(1)におけるR〜R10と同義である。]
上記に例示したスキームでは、1段目に示した第1の縮合工程、2段目に示した第2の縮合工程によって、式(1)で表わされる非水溶性色素化合物を合成する。
【0052】
まず、第1の縮合工程では、化合物Aと化合物Bとを、有機溶剤や縮合剤の存在下もしくは非存在下で加熱し、縮合させることで化合物Cを合成する。次に、2段目に示すように、上記第1の縮合工程で得た化合物Cと、化合物Dとを加熱縮合させることにより、式(1)で表わされる非水溶性色素化合物が得られる。
【0053】
上記化合物A、また、アニリン誘導体である化合物B及び化合物Cは、それぞれ市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0054】
上記に例示した合成スキームの縮合反応において用いられる有機溶剤について説明する。本工程に用いることができる有機溶剤は、反応に関与しない有機溶剤であれば、特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、トルエン、キシレン、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン及びニトロベンゼン等を基質の溶解性に応じて単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
本工程で用いられる縮合剤としては、例えば、酸化マグネシウム、塩化亜鉛及び塩化アルミニウム等を用いることができる。
本工程は、通常60〜220℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0056】
上記第1の縮合工程における反応温度は、60〜100℃の範囲が好ましく、70〜90℃の範囲がより好ましい。上記範囲の場合、反応速度が適当であり、また過度の反応を抑制でき、精製が容易となる。第2の縮合工程における反応温度は、120〜220℃の範囲が好ましく、180℃以下であるであることがより好ましい。上記範囲の場合、反応速度が適当であり、また生成した化合物の分解を良好に抑制できる。
【0057】
式(1)中のR〜RとR〜R10がそれぞれ同一の置換基である非水溶性色素化合物を合成する場合は、上記スキーム中の化合物BとDとは同一の化合物を用いることができる。従って、この場合は、化合物Aより一段階の縮合工程によって、式(1)で表わされる非水溶性色素化合物を得ることができる。その際は、通常100〜220℃の範囲の反応温度で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0058】
上記反応スキームによって得られる最終生成物は、通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等の精製を行うことで高純度の色素化合物を得ることができる。式(1)で表わされる非水溶性色素化合物は、H核磁気共鳴分光分析、LC/TOF MS、UV/Vis分光光度法等を用いて同定することができる。
【0059】
式(1)で表される非水溶性色素化合物は、着色剤用途として、単独で、もしくは必要に応じて2種以上組み合わせて、あるいは公知のマゼンタ顔料や染料と組み合わせて用いることもできる。また、式(1)で表わされる非水溶性色素化合物をレーキ顔料としても用いることができる。
【0060】
次に、本発明のインクについて説明する。
式(1)で表される本発明の非水溶性色素化合物は、有機溶剤に対する高い親和性を有しており、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性、高い耐光性を有しているため、インクの着色剤用途としてとして好適である。
【0061】
本発明のインクは、少なくとも、媒体と、式(1)で表される非水溶性色素化合物を含有するインクである。
【0062】
本発明のインクにおいて、上記以外の構成成分については、本発明のインクの使用用途に応じて各々決められるものであり、該インクを利用する各種用途における特性を阻害しない範囲において、添加物を添加することができる。
【0063】
本発明のインクは、インクジェット用インクを始めとして、印刷用インク、塗料、筆記具用インク等に好適に用いることができる。中でも、後述するカラーフィルター用赤色レジスト用途や、感熱転写記録用シート用途のインクとして特に好適に用いることができる。
【0064】
本発明のインクは、例えば、以下のようにして得られる。
媒体中に、撹拌しながら、本発明の非水溶性色素化合物、必要に応じて他の着色剤、乳化剤、樹脂等を、媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。さらに、分散機により機械的剪断力を加えることで安定に溶解または微分散させることで、本発明のインクを得ることができる。
本発明において、上記「媒体」とは、水または有機溶剤を意味する。
【0065】
本発明のインクの媒体として有機溶剤を用いる場合、該有機溶剤の種類は着色剤の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、変性エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−ペンタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類等が挙げられる。
【0066】
また、本発明のインクで用いることができる有機溶剤としては、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。このような重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のアクリル酸誘導体系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド等のメタクリル酸誘導体系単量体、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体等が挙げられる。これらは単独で、または必要に応じて2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0067】
本発明のインクを構成する着色剤としては、少なくとも式(1)で表される非水溶性色素化合物を用いるが、該非水溶性色素化合物の媒体への溶解性、または分散性を阻害しない限りは、必要に応じて他の着色剤を併用することできる。
【0068】
併用することができる他の着色剤としては、縮合アゾ化合物、アゾ金属錯体、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Orange 1、5、13、15、16、34、36、38、62、64、67、72、74;C.I.Pigment Red 2、3、4、5、6、7、12、16、17、23、31、32、41、48、48:1、48:2、48:3、48:4、53:1、57:1、81:1、112、122、123、130、144、146、149、150、166、168、169、170、176、177、178、179、181、184、185、187、190、194、202、206、208、209、210、220、221、224、238、242、245、253、254、255、258、266、269、282;C.I.Pigment Violet 13、19、25、32、50、及びこれらの誘導体として分類される種々の着色剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本発明のインクを構成する上記着色剤の量としては、媒体100.0質量部当たり1.0〜30.0質量部、好ましくは2.0〜20.0質量部、より好ましくは3.0〜15.0質量部である。上記の範囲であれば、十分な着色力が得られつつ、着色剤の分散性も良好となる。
【0070】
本発明のインクの媒体として水を用いる場合、必要であれば、上記着色剤の良好な分散安定性を得るために、乳化剤を添加することが出来る。添加することができる乳化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0071】
上記乳化剤におけるカチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0072】
上記乳化剤におけるアニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0073】
上記乳化剤におけるノニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0074】
本発明のインクには、さらに樹脂を添加することもできる。本発明のインクに添加することができる樹脂の種類は、目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で、もしくは必要に応じて2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
本工程で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を好ましく用いることができる。
【0076】
以上のように、本発明のインクは、溶剤への親和性が高く、明度、彩度が高く、色域の広い分光反射特性を有する、本発明の非水溶性色素化合物を含有して構成されるため、鮮やかな赤色の色調を有するインクを提供することができる。
【0077】
次に、本発明のカラーフィルター用赤色レジスト組成物について説明する。
本発明のインクは、鮮やかな赤色の色調を有しているため、その分光特性により、カラーフィルター用レジスト組成物に好適に用いることができる。尚、本発明のインクを単独で用いた場合には、赤色レジスト組成物となるが、他色のインクと混合して2次色のレジスト組成物として用いても良い。
【0078】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、少なくとも、結着樹脂、媒体、及び本発明のインクを1種類以上含有することを特徴とする。
【0079】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、例えば、以下のようにして得られる。媒体中に、撹拌しながら、少なくとも、上記インク、結着樹脂、必要に応じて重合性単量体、重合開始剤、光酸発生剤等を媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。さらに、分散機により機械的剪断力を加えることで安定に溶解または微分散させることにより、本発明のカラーフィルター用赤色レジスト組成物を得ることができる。
【0080】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物に用いることができる結着樹脂としては、画素形成時の露光工程における光照射部、あるいは遮光部の一方が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、あるいは市販の現像液等によって溶解可能なものであれば良く、特に限定されるものではない。その中でも、作業性、廃棄物処理などの観点からは、水あるいはアルカリ水溶液で現像可能な組成を有するものが好ましい。
【0081】
上記結着樹脂としては、一般にアクリル酸やメタクリル酸、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンやアンモニウム塩を有する重合性単量体などに代表されるような親水性の重合性単量体と、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルカルバゾールなどに代表されるような親油性の重合性単量体とを、適度な混合比で、既知の手法により共重合化した結着樹脂が知られている。これらの結着樹脂は、エチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性単量体やオキシラン環、オキセタン環を有するカチオン重合性単量体、ラジカル発生剤、酸発生剤や塩基発生剤との組み合わせによって、ネガ型、即ち露光によって現像液への溶解性が低下することで、遮光部分のみが現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
【0082】
また、例えば、光により開裂し、カルボン酸基を生成するキノンジアジド基を有する樹脂や、ポリヒドロキシスチレンのtert−ブチル炭酸エステル、テトラヒドロピラニルエーテルなどに代表される、酸により開裂する基を有する結着樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤との組み合わせを用いることもできる。この種の結着樹脂は、ポジ型、即ち露光によって現像液への溶解性が向上することで、露光部分のみが現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物が上記ネガ型のレジスト組成物である場合、露光によって付加重合する重合性単量体として、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有する光重合性単量体を含有して構成される。該光重合性単量体としては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の単官能アクリレートや、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレートなどの多官能アクリレート及びメタクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリンなどの多官能アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加した後、アクリレート化またはメタクリレート化したものなどの多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。さらに、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸との反応生成物である多官能のエポキシアクリレート類やエポキシメタクリレート類なども挙げられる。上記の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0083】
上記光重合性単量体は、単独で、あるいは必要に応じて2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0084】
上記光重合性単量体の含有量としては、本発明のレジスト組成物の質量(全固形分)の5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。上記含有量が5%未満であると、露光に対する感度や画素の強度が低下する事があり、50質量%を超えるとレジスト組成物の粘着性が過剰になる事があり好ましくない。
【0085】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物が上記ネガ型のレジスト組成物である場合、光重合開始剤を含有して構成される。該光重合開始剤としては、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシオインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組み合わせ、トリオキサジアゾール化合物などが挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(商品名:イルガキュア369、BASF社製)が挙げられる。なお、本発明の着色レジストによる画素の形成に際し、電子線を用いる場合には、上記光重合開始剤は必須ではない。
【0086】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物が上記ポジ型のレジスト組成物である場合、必要に応じて光酸発生剤を添加することもできる。該光酸発生剤としては、スルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム及びホスホニウム等のオニウムイオン等と、アニオンとの塩等の従来公知のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
上記スルホニウムイオンとして、具体的には、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、トリ−o−トリルスルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、1−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、フェニルメチルベンジルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム等が挙げられる。
【0088】
上記ヨードニウムイオンとしては、具体的には、ヨードニウムイオンとしては、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0089】
上記セレニウムイオンとしては、具体的には、トリアリールセレニウム(トリフェニルセレニウム、トリ−p−トリルセレニウム、トリ−o−トリルセレニウム、トリス(4−メトキシフェニル)セレニウム、1−ナフチルジフェニルセレニウム、トリス(4−フルオロフェニル)セレニウム、トリ−1−ナフチルセレニウム、トリ−2−ナフチルセレニウム等)が挙げられる。
【0090】
上記アンモニウムイオンとしては、具体的には、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル−n−ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム等)が挙げられる。
【0091】
上記ホスホニウムイオンとしては、具体的には、テトラフェニルホスホニウム、テトラ−p−トリルホスホニウム、テトラキス(2−メトキシフェニル)ホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等が挙げられる。
【0092】
上記アニオンとしては、具体的には、ClO、BrO等の過ハロゲン酸イオン、FSO、ClSO等のハロゲン化スルホン酸イオン、CHSO、CFSO、HSO等の硫酸イオン、HCO、CHCO等の炭酸イオン、AlCl、AlF等のアルミン酸イオン、ヘキサフルオロビスマス酸イオン、CHCOO,CFCOO−、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等のカルボン酸イオン、B(C、CHCHCHCHB(C等のアリールホウ酸イオン、チオシアン酸イオン、及び硝酸イオン等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物において、上記インク、結着樹脂、また、必要に応じて添加される光重合性単量体、光重合開始剤、光酸発生剤等を溶解もしくは分散させるための媒体としては、水、もしくは様々な有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いる事ができる。また、本発明のカラーフィルター用のレジスト組成物の媒体は、上記インク中の着色剤の分散性を阻害しない限りは、上記インクに用いた媒体と同じ媒体であっても異なっていても良い。
【0094】
異なる分光特性を持つ2種類以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいて、その複数の画素の色(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1色を構成する画素に、本発明のインクからなるレジスト組成物を用いることで、明度、彩度が高く、良好な色調のフィルターを得ることができるが、さらに所望の分光特性を得るため、調色用途として、他の染料を併用することもできる。併用することができる染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.Solvent Blue 14、24、25、26、34、37、38、39、42、43、44、45、48、52、53、55、59、67、70;C.I.Solvent Red 8、27、35、36、37、38、39、40、49、58、60、65、69、81、83:1、86、89、91、92、97、99、100、109、118、119、122、127、218;C.I.Solvent Yellow 1、2、3、13、14、19、21、22、29、36、37、38、39、40、42、43、44、45、47、62、63、71、76、79、81、82、83:1、85、86、88、151等が挙げられる。
【0095】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物には、上記した添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤や、フィルター作製時にガラス基板との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤等を添加しても良い。
【0096】
本工程で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を好ましく用いることができる。
【0097】
以上のように、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、鮮やかな赤色の色調を有する本発明のインクを含有して構成されるので、鮮やかな色調を有するカラーフィルター用レジスト組成物を提供することができる。
【0098】
次に、本発明の感熱転写記録用シートについて説明する。
本発明のインクは、鮮やかな赤色の色調を有しているため、その分光特性により、感熱転写記録用シートに好適に用いる事ができる。尚、本発明のインクを単独で用いた場合には、赤色の感熱転写記録用シートとなるが、他色のインクと混合して2次色の感熱転写記録用シートとして用いても良い。
【0099】
本発明の感熱転写記録用シートは、基材と、少なくとも本発明のインクを該基材上に膜形成してなる色材層を有することを特徴とする。
【0100】
本発明の感熱転写記録用シートは、例えば、以下のようにして得られる。少なくとも、式(1)で表される非水溶性色素化合物を含む着色剤、結着樹脂、必要に応じて界面活性剤、ワックス等を、媒体中に撹拌しながら徐々に加え、十分に媒体になじませる。さらに、分散機により機械的剪断力を加えることで上記組成を安定に溶解あるいは微粒子状に分散させ、本発明のインクを調製する。次に該インクを、基材であるベースフィルムに塗布、乾燥することにより本発明の感熱転写記録用シートを作製することができる。なお、本発明はこの方法で作製された感熱転写記録用シートに限定されるものではない。
【0101】
本発明の感熱転写記録用シートに用いることができる結着樹脂としては、様々な樹脂が挙げられる。中でも、セルロース樹脂、ポリアクリル酸樹脂、澱粉樹脂及びエポキシ樹脂等の水溶性樹脂、並びにポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボオネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、AS樹脂及びフェノキシ樹脂等の有機溶剤可溶性の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で、もしくは必要に応じて2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0102】
上記製造方法に用いることができる媒体としては、上記インクの媒体に使用したものを同様に使用できる。具体的には、水、もしくは有機溶剤が挙げられ、有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びイソブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン及びクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム及びトリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が好ましく用いられる。上記有機溶剤は単独で、もしくは必要に応じて2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0103】
本発明の感熱転写記録用シートにおいて、着色剤として少なくとも上記一般式(1)で表される非水溶性色素化合物を用いることで、明度、彩度が高く、良好な色調の感熱転写記録用シートを得ることができるが、さらに所望の分光特性を得るため、調色用途として、他の染料を併用することもできる。併用することができる染料としては、本発明の感熱転写記録用シートの明度、彩度、耐光性に大きな影響を与えなければ限定されるものではないが、例えば、C.I.Solvent Red 8、27、35、36、37、38、39、40、49、58、60、65、69、81、83:1、86、89、91、92、97、99、100、109、118、119、122、127、218;C.I.Disperse Red 1、59、60、73、135、146、167;C.I.Disperse Violet 26等が挙げられる。
【0104】
上記結着樹脂と上記着色剤の使用比率(結着樹脂:着色剤)は、質量比で1:2〜2:1の範囲であることが、転写性の点で好ましい。
【0105】
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド加熱時(印画時)に十分な滑性をもたせるために、界面活性剤を添加することができる。添加することができる界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が上げられる。
【0106】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0107】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0108】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0109】
本発明の感熱転写記録用シートには、サーマルヘッド非加熱時に十分な滑性をもたせるために、ワックスを添加することができる。添加することができるワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
本発明の感熱転写記録シートには、上記した添加物以外にも、必要に応じて、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤帯電防止剤、粘度調整剤等を添加しても良い。
【0111】
本発明の感熱転写記録用シートの基材であるベースフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、及び、ポリアラミド等のプラスチックのフィルムが、耐熱性の良好な点で好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度、耐溶剤性、及び、経済性等の点でさらに好ましい。基材の厚さは、3〜50μmであることが、転写性の点から好ましい。
【0112】
本発明の感熱転写記録用シートにおいては、耐熱性やサーマルヘッドの走行性を向上させる目的で、基材の色材層の反対面に潤滑剤、滑性の高い耐熱性微粒子、及び結着剤等熱性樹脂の層を設けることが好ましい。該潤滑剤としては、アミノ変性シリコーン化合物、カルボキシ変性シリコーン化合物等が挙げられ、耐熱性微粒子としては、シリカ等の微粒子が、結着剤としては、アクリル系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
上記分散工程で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を好ましく用いることができる。
【0114】
上記ベースフィルムへ塗布する方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、バーコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター等を用いた方法が挙げられる。上記インク組成物の塗布量としては、色材層の乾燥後の厚さが0.1〜5μmの範囲となるように塗布することが、転写性の点で好ましい。
【0115】
本発明の感熱転写記録用シートを加熱する加熱手段としては、特に限定されるわけではないが、例えば、サーマルヘッドを用いた常法のみならず、赤外線またはレーザー光等も利用することができる。また、ベースフィルムそのものに電気を流すことによって発熱する通電発熱フィルムを用いて、通電型染料転写シートとして用いることもできる。
【0116】
以上のように、本発明の感熱転写記録用シートは、鮮やかな赤色の色調を有する本発明のインクを含有して構成されるので、鮮やかな色調を有する感熱転写記録用シートを提供することができる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。得られた反応生成物の同定は、下記に挙げる装置を用いた複数の分析方法によって行った。即ち、使用した分析装置は、H核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子社製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、UV/Vis分光光度計(UV−36000形分光光度計、島津製作所社製)を用いた。尚、LC/TOF MSにおけるイオン化法はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を適用した。
【0118】
以下に記載する方法で、上記一般式(1)で表される非水溶性色素化合物を製造した。
【0119】
<合成例1>
[非水溶性色素化合物(5)の製造]
3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリン(7.3g)と、上記合成スキームで示した化合物A(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、150℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却後、2モル/Lの塩酸50mLに注ぎ込み、析出した結晶を濾別、水洗した後、アセトンで晶析することで、上記非水溶性色素化合物(5)を得た。
【0120】
上記した分析装置を用い、H−NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。以下に、分析結果を示す。
【0121】
[非水溶性色素化合物(5)の分析結果]
[1]H−NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図1参照):
δ[ppm]=9.72(s、2H)、9.10(s、2H)、8.01(d、1H、J=7.63Hz)、7.60(t、1H、J=7.25Hz)、7.51(t、1H、J=7.63Hz)、7.18−7.08(m、7H)、5.92(br、1H)、2.16−1.98(m、24H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=715.2696(M−H)
[3]UV/Vis分光分析の結果:λmax=530nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
尚、上記の非水溶性色素化合物(5)、及び以下で製造される非水溶性色素化合物(1)〜(4)及び(6)〜(25)はいずれも、水への溶解度が質量百分率で1%未満であり、非水溶性の化合物であった。
【0122】
<合成例2>
[非水溶性色素化合物(6)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、モル数1.3倍の3−プロピオニルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンに変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(6)を得た。
【0123】
[非水溶性色素化合物(6)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図2参照):
δ[ppm]=9.73(s、2H)、9.02(s、2H)、8.02(d、1H、J=7.63Hz)、7.60(t、1H、J=7.63Hz)、7.53(t、1H、J=8.39Hz)、7.19−7.09(m、7H)、5.92(br、1H)、2.32(t、4H、J=7.63Hz)、2.16−1.97(m、16H)、1.14(t、6H、J=7.63Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=743.2976(M−H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=530nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0124】
<合成例3>
[非水溶性色素化合物(7)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、モル数1.5倍の3−ブチリルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンに変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(7)を得た。
【0125】
[非水溶性色素化合物(7)の分析結果]
[1]H−NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図3参照):
δ[ppm]=9.73(s、2H)、9.04(s、2H)、8.01(d、1H、J=7.63Hz)、7.61(t、1H、J=7.63Hz)、7.54(t、1H、J=8.39Hz)、7.19−7.09(m、7H)、5.93(br、1H)、2.31(t、4H、J=7.25Hz)、2.16−1.98(m、18H)、1.66(dd、6H、J=14.9、7.25Hz)、0.96(t、6H、J=7.25Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=771.3306(M−H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=530nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0126】
<合成例4>
[非水溶性色素化合物(8)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、同じモル数の3−イソブチリルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンに変更し、更に、スルホランの量を2倍に変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(8)を得た。
【0127】
[非水溶性色素化合物(8)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図4参照):
δ[ppm]=9.75(s、2H)、8.99(s、2H)、8.01(d、1H、J=8.39Hz)、7.60(t、1H、J=7.63Hz)、7.51(t、1H、J=8.01Hz)、7.18−7.09(m、7H)、5.90(br、1H)、2.65(td、2H、J=13.4、6.36Hz)、2.13(m、11H)、1.96(m、6H)、1.15(m、13H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=771.3295(M−H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=530nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0128】
<合成例5>
[非水溶性色素化合物(10)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、モル数1.8倍の3−ベンゾイルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンに変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(10)を得た。
【0129】
[非水溶性色素化合物(10)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図5参照):
δ[ppm]=9.79(s、2H)、9.66(s、2H)、7.99(d、6H、J=7.63Hz)、7.58−7.51(m、8H)、7.18(m、6H)、7.18−7.09(m、7H)、5.98(br、1H)、2.23−2.08(m、18H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=839.2973(M−H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=530nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0130】
<合成例6>
[非水溶性色素化合物(24)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、モル数2倍の3−(2−ヘプチルウンデカノイルアミノ)−2,4,6−トリメチルアニリンに変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(24)を得た。
【0131】
[非水溶性色素化合物(24)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図6参照):
δ[ppm]=9.72(s、2H)、9.07(s、2H)、8.02(d、1H、J=7.63Hz)、7.61(t、1H、J=7.63Hz)、7.52(t、1H、J=7.63Hz)、7.11(m、7H)、5.89(br、2H)、3.30(t、2H、J=7.25Hz)、2.69(s、3H)、2.40(s、1H)、2.19−2.10(m、12H)、1.92(m、7H)、1.60(s、3H)、1.41(s、1H)、1.32(s、9H)、1.24(s、38H)、0.84(s、12H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=1165.7665(M+H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=531nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0132】
<合成例7>
[非水溶性色素化合物(25)の製造]
上記合成例1において、3−アセチルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンを、モル数2倍の3−(2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル)オクタノイルアミノ−2,4,6−トリメチルアニリンに変更した以外は、合成例1と同様の方法により、非水溶性色素化合物(25)を得た。
【0133】
[非水溶性色素化合物(25)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、80℃)の結果(図7参照):
δ[ppm]=9.72(s、2H)、9.04(s、2H)、8.02(d、1H、J=7.63Hz)、7.61(t、1H、J=7.63Hz)、7.52(t、1H、J=8.01Hz)、7.16−7.09(m、7H)、5.89(br、1H)、2.20−1.99(m、18H)、1.99−1.58(m、8H)、1.47−1.20(m、12H)、1.02−0.87(m、48H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=1165.7878(M+H)
[3]UV/Vis分光分析の結果λmax=531nm(CHOH:2.5×10−5mol/L)
【0134】
<他の非水溶性色素化合物の合成例>
上記合成例1〜7に準じた方法で、下記表1に示す非水溶性色素化合物(9)、(11)〜(23)を合成した。得られた非水溶性色素化合物は、上記した各装置を用い、H NMR分析、LC/TOF MS分析及びUV/Vis分光分析で確認した。
【0135】
尚、表1中の「nC1715」はノルマルステアリル基を表す。「*」は結合部位を表す。
【0136】
【表1−1】

【0137】
【表1−2】

【0138】
[比較用色素化合物(1)〜(3)]
比較用の色素化合物として、以下の比較化合物(1)〜(3)を用意した。
【0139】
【化7】

【0140】
【化8】

【0141】
【化9】

【0142】
<インクの製造>
以下に記載する方法で、本発明のインク及び比較用インクを製造した。
【0143】
[インク(1)の製造例]
本発明の非水溶性色素化合物(5)17部とスチレン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)に投入して1時間稼働させることで本発明のインク(1)を得た。
【0144】
[インク(2)〜(21)の製造例]
上記インク(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(5)を非水溶性色素化合物(6)〜(25)に変更した以外は、上記インク(1)の製造例と同様な操作で、各々インク(2)〜(21)を得た。
【0145】
[比較用インク(1)〜(3)の製造例]
上記インク(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(5)を比較化合物(1)〜(3)に変更した以外は、上記インク(1)の製造例と同様な操作で、各々比較用インク(1)〜(3)を得た。
【0146】
<評価>
[化合物の溶剤溶解度評価]
室温下で、非水溶性色素化合物(5)〜(25)、及び比較化合物(1)〜(3)を、30mgをメタノール、クロロホルム、酢酸エチル、またはトルエン各0.7mLに溶解させ、目視観察により、溶剤への溶解性評価を行った。
A:完全に溶解する(溶解性が非常に良い)
B:やや懸濁物が残る(溶解性が良い)
C:全く溶解しない(溶解性が悪い)
【0147】
<色域測定>
インク(1)〜(21)、及び比較用インク(1)〜(3)をバーコート法(Bar No.4,6,8,10,12,14,16,18,20)により、隠ぺい率測定紙に塗布して、一晩風乾することで画像サンプルを作製した。各画像サンプルに関して、反射濃度計SpectroLino(Gretag Macbeth社製)にて、L表色系における色度(L、a、b)を測定した。
【0148】
[色調評価]
色調評価は以下のように行った。
【0149】
ある同一のLにおけるマゼンタ色域方向への色度の伸びが大きい程、マゼンタの色調が良好であるといえる。Lが60でのa及びbの値で評価した。Lが60であるときのa、bは、各画像サンプルから得られたL、a、bから内挿して求めた。
A:aが70以上、かつbが0以下(色調が非常に良い)
B:aが70以上、かつbが0より大きいか、または、aが70未満、かつbが0以下(色調が良い)
C:aが70未満、かつbが0より大きい(色調が悪い)
【0150】
[彩度評価]
彩度評価を以下のように行った。
同じ単位面積当たりの着色剤量における彩度cが大きい程、彩度が良好であるといえる。上記バーコート法(Bar No.10)による画像サンプル作製時の彩度cを用いて評価した。
尚、cは、{(a+(b1/2で算出される。
A:cが80以上(彩度が非常に良い)
B:cが70以上80未満の向上率(彩度が良い)
C:cが70未満(彩度が悪い)
【0151】
[耐光性評価]
バーコート法にて作成した画像サンプルのうち、Lの値が60に最も近かったサンプルをアトラスウエザオメータCi4000(東洋精機製作所社製)に投入し、36時間の暴露試験を行った。この時の測定条件は、Black Panel:50℃、Chamber:40℃、Rel.Humidity:70%、Irradiance(340nm):0.39W/mとした。
【0152】
上記暴露試験前後で、反射濃度計SpectroLino(Gretag Macbeth社製)にて、L表色系における色度(L、a、b)を測定した。色差(ΔE)は色特性の測定値に基づき、下記式によって算出した。
【0153】
色差(ΔE)={(a試験前−a試験後)+(b試験前−b試験後)+(L試験前−L試験後)1/2
評価は、36時間後のΔEが10未満であれば良好な耐光性であると判断した。
【0154】
上記非水溶性色素化合物、及び比較化合物の各評価結果を下記表2に示した。
【0155】
【表2】

【0156】
表2より明らかなように、比較化合物(1)〜(3)は、溶剤への溶解性、色調、彩度、耐光性のいずれかが基準を満たしていない。一方、本発明の非水溶性色素化合物は、高い溶剤への溶解性、良好な色調、高い彩度、及び高い耐光性を有している。
【0157】
<赤色レジスト組成物の製造>
[カラーフィルター(1)の製造例]
本発明の非水溶性色素化合物(7)12部にシクロヘキサノン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により1時間分散させて本発明のインク(21)を得た。
【0158】
アクリル共重合組成物6.7部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート1.3部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン(光重合開始剤)0.4部をシクロヘキサノン96部に溶かした溶液に、上記インク(21)22部をゆっくり加え室温で3時間攪拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することで、本発明のカラーフィルター用赤色レジスト組成物(1)を得た。
【0159】
上記カラーフィルター用赤色レジスト組成物(1)をガラス基板上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させた後に全面露光し、180℃でポストキュアすることでカラーフィルター(1)を作成した。
【0160】
[カラーフィルター(2)、(3)の製造例]
上記カラーフィルター(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(7)を非水溶性色素化合物(10)、(25)に変更したカラーフィルター用赤色レジスト組成物(2)、(3)を用いた以外は、上記カラーフィルター(1)の製造例と同様な操作で、各々カラーフィルター(2)、(3)を得た。
【0161】
[カラーフィルター(4)の製造例]
上記カラーフィルター(3)の製造例において、カラーフィルター用赤色レジスト組成物(3)中に1−ブタノール0.2部を添加した以外は、上記カラーフィルター(3)の製造例と同様な操作で、カラーフィルター(4)を得た。
【0162】
[比較用カラーフィルター(1)の製造例]
上記カラーフィルター用赤色レジスト組成物(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(7)を比較化合物(1)に変更した以外は、上記カラーフィルター(1)の製造例と同様な操作を行い、比較用カラーフィルター(1)を得た。
【0163】
<感熱転写記録用シートの製造>
[感熱転写記録用シート(1)の製造例]
本発明の非水溶性色素化合物(5)13.5部のメチルエチルケトン45部/トルエン45部の混合溶液に、撹拌しながらポリビニルブチラール樹脂(デンカ3000−K、電気化学工業社製)5部を少しずつ添加し、本発明のインク(22)を得た。
【0164】
上記インク(22)を厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラー、東レ社製)上に塗布し、乾燥することによって、感熱転写記録用シート(1)を作製した。
【0165】
[感熱転写記録用シート(2)、(3)の製造例]
上記感熱転写記録用シート(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(5)を非水溶性色素化合物(6)、(20)に変更した以外は、上記感熱転写記録用シート(1)の製造例と同様な操作を行い、各々感熱転写記録用シート(2)、(3)を得た。
【0166】
[感熱転写記録用シート(4)の製造例]
上記感熱転写記録用シート(3)の製造例において、1−ブタノール1.4部を添加した以外は、上記感熱転写記録用シート(3)の製造例と同様な操作で、各々感熱転写記録用シート(4)を得た。
【0167】
[比較用感熱転写記録用シート(1)の製造例]
上記感熱転写記録用シート(1)の製造例において、非水溶性色素化合物(5)を比較化合物(2)に変更した以外は、上記感熱転写記録用シート(1)の製造例と同様な操作を行い、比較用感熱転写記録用シート(1)を得た。
【0168】
<評価>
[カラーフィルターの色域測定]
上記カラーフィルター(1)、比較用カラーフィルター(1)を隠ぺい率測定紙上に配置し、反射濃度計SpectroLino(Gretag Macbeth社製)にて、L表色系における色度(L、a、b)を測定した。彩度(c)は色特性の測定値に基づき、上記算出式によって算出した。
【0169】
[転写画像の色域測定]
上記の感熱転写記録用シート(1)、比較用感熱転写記録用シート(1)をSELPHY CP710用インクカセット(キヤノン社製)のMagenta部に切貼りし、SELPHY CP710(キヤノン社製)を用いて専用の印画紙に画像形成した。形成した画像はMagenta単色のベタ画像であり、それぞれを転写画像(1)、比較用転写画像(1)とした。各転写画像について反射濃度計SpectroLino(Gretag Machbeth社製)にてL表色系における色度(L、a、b)を測定した。
【0170】
[色調評価]
色調評価は以下のように行った。
【0171】
ある同一のLにおけるマゼンタ色域方向への色度の伸びが大きい程、マゼンタの色調が良好であるといえる。Lが50でのa及びbの値で評価した。Lが50であるサンプルは、SELPHY CP710による画像形成の際の温度を調整することによって作成した。
A:aが70以上、かつbが30以下(色調が非常に良い)
B:aが70以上、かつbが30より大きいか、または、aが70未満、かつbが30以下(色調が良い)
C:aが70未満、かつbが30より大きい(色調が劣る)
【0172】
[彩度評価]
同じ単位面積当たりの着色剤量におけるcが大きい程、彩度が良好であるといえる。上記カラーフィルター、及び転写画像25cm(5cm×5cm)当たりの着色剤量を6.5mgとした時のcの値で評価を行なった。
A:cが80以上(彩度が非常に良い)
B:cが70以上80未満の向上率(彩度が良い)
C:cが70未満(彩度が劣る)
【0173】
[耐光性評価]
上記色調評価で用いた各サンプルをアトラスウエザオメータCi4000(東洋精機製作所社製)に投入し、36時間の暴露試験を行なった。この時の測定条件は、Black Panel:50℃、Chamber:40℃、Rel.Humidity:70%、Irradiance(340nm):0.39W/mとした。
【0174】
上記暴露試験前後で、反射濃度計SpectroLino(Gretag Macbeth社製)にて、L表色系における色度(L、a、b)を測定した。色差(ΔE)は色特性の測定値に基づき、前述の式によって算出した。
【0175】
評価は、36時間後のΔEが10未満であれば良好な耐光性であると判断した。
【0176】
【表3】

【0177】
表3より明らかなように、本発明のカラーフィルター用赤色レジスト組成物により作製されたカラーフィルター、本発明の感熱転写記録用シートにより作製された転写画像は、対応する比較用レジスト組成物より作製されたカラーフィルター、比較用感熱転写記録シートより作製された転写画像と比較して、色調、彩度が高く、色域の広い分光反射特性、及び高い耐光性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0178】
式(1)で表される非水溶性色素化合物は、溶剤への溶解性が高く、色調、彩度が良好で、色域の広い分光反射特性を有し、かつ高い耐光性を有する。そのため、カラーフィルター用インク用途や、感熱転写シート用インク用途のみならず、光記録媒体用の色素、印刷インキ、塗料、筆記用具用インクとしても好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされることを特徴とする非水溶性色素化合物。
【化1】


[式(1)中、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記式(2)で表されるアシルアミノ基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記式(2)で表されるアシルアミノ基である。
【化2】


(式(2)中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基のいずれかを表す。*は結合部位を表す。)]
【請求項2】
前記式(2)中のR11が、アルキル基またはアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の非水溶性色素化合物。
【請求項3】
前記式(2)中のR11が、直鎖のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の非水溶性色素化合物。
【請求項4】
前記式(1)中のRとR、RとR、RとR、RとR、RとR10が、それぞれ同一の置換基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非水溶性色素化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水溶性色素化合物を含有することを特徴とするインク。
【請求項6】
請求項5に記載のインクを含有することを特徴とするカラーフィルター用レジスト組成物。
【請求項7】
基材、及び該基材上に、請求項5に記載のインクを含有する組成物を膜形成してなる色材層を有することを特徴とする感熱転写記録用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207224(P2012−207224A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60544(P2012−60544)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】