説明

非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物

【課題】消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れた非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)吸水量が50mL/100g以上である親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンを少なくとも含有する原液と、噴射剤とを含み、かつ、前記原液中の前記(A)親水性粉体の含有量が10質量%以上であることを特徴とする非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物に関し、より詳細には、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れた非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汗による肌のべたつきや不快感などを低減し、かつ、脇臭などの体臭の発生を抑制するために、様々な制汗デオドラント剤が開発されてきた。例えば、エアゾール、ミスト、ローション、スティック、クリーム等の様々な剤型の制汗デオドラント剤が製品化されており、これらの中でも、使用感や簡便性などの観点から、エアゾール型の制汗デオドラント剤が主流を占め、更なる開発が進められている。
【0003】
このようなエアゾール型制汗デオドラント剤における消臭成分としては、従来から、親水性粉体が多く使用されている。親水性粉体は、比較的親水的な脇臭成分(イソ吉草酸)に吸着し易く、そのため、脇臭成分を消臭する効果に優れるものの、一方で、肌上の水分を吸い取る力も強いため、塗布した際に、肌が乾いた感じがして不自然な感触があり、時にはきしんだような感触を与えてしまうという問題があった。特に、脇の下の除毛処理をして荒れた肌においては、がさがさした感じがしてしまい、すべすべとした感触が全く感じられないという問題があった。
【0004】
このようなエアゾール型制汗デオドラント剤の使用感を改善する目的で、従来から様々な技術が報告されており、例えば、エアゾール型制汗デオドラント剤の、べたつきやつっぱり感を抑制する目的から、エアゾール型制汗デオドラント剤の原液中に、ポリエーテル変性シリコーンを配合する技術(特許文献1〜3)などが報告されている。しかしながら、これらの技術でも、消臭効果や使用感の程度において、十分に満足できるものではなかった。
【0005】
このようなことから、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れたエアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、未だ望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平5−229925号公報
【特許文献2】特開平8−175948号公報
【特許文献3】特開2004−292446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れた非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物の原液中に、(A)吸水量が一定以上の親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンを配合し、かつ、原液中の前記(A)親水性粉体の含有量を一定以上とすることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> (A)吸水量が50mL/100g以上である親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンを少なくとも含有する原液と、噴射剤とを含み、かつ、前記原液中の前記(A)親水性粉体の含有量が10質量%以上であることを特徴とする非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物である。
<2> (B)EO・PO変性シリコーンが、側鎖両末端型EO・PO変性シリコーン、及び、直鎖共重合ABN型EO・PO変性シリコーンの少なくともいずれかである前記<1>に記載の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れた非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物)
本発明の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、(A)親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンを少なくとも含有し、また必要に応じて更にその他の成分を含有してなる原液と、噴射剤とを含んでなる。ここで、前記「非水系」とは、前記原液が、水、エタノールを実質的に含まないことをいい、前記原液が、水、エタノールを実質的に含まないことにより、肌での乾きが早く、べたつきのなさに優れるという利点がある。
【0012】
<原液>
−(A)親水性粉体−
前記親水性粉体は、主に、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物に、消臭効果を付与する目的で使用される。前記親水性粉体は、特に親水的な臭い成分に吸着しやすく、そのため、比較的親水的な臭い成分(例えば、脇臭成分(イソ吉草酸))を消臭するのに好適である。
ここで、前記親水性粉体とは、ヘキサン10g/水10gに粉体を1g添加し、超音波で分散させたときに、水相に分散される粉体をいい、その具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無水ケイ酸(シリカ)、マグネシアシリカ、タルク、マイカ、セルロース、シルク、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。これらの中でも、無水ケイ酸(シリカ)、マグネシアシリカ、タルク、セルロースが好ましい。
【0013】
また、前記親水性粉体は、その吸水量が、50mL/100g以上であり、中でも、100mL/100g以上であることが好ましい。前記吸水量が、50mL/100g未満であると、所望の程度の消臭効果が得られないなどの問題がある。一方、前記吸水量が、前記好ましい範囲内であると、消臭効果に優れる点で、有利である。また、前記親水性粉体の吸水量の上限としては、特に制限はないが、500mL/100g未満が好ましい。前記吸水量が、500mL/100g以上であると、消臭効果の点では有利だが、きしみ感が感じられることがある。
なお、前記親水性粉体の吸水量の測定方法としては、後述する実施例に示す通りである。
【0014】
前記親水性粉体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記親水性粉体の含有量は、原液中、10質量%以上である。前記含有量が、10質量%未満であると、所望の程度の消臭効果が得られないなどの問題がある。また、前記親水性粉体の含有量の上限としては、特に制限はないが、原液中、50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましい。前記含有量が、50質量%以上であると、塗布時にきしみ感が強くなり、肌に不快感を与えたり、また、粉体の分散性に劣ることなどがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、使用感に優れ、かつ、粉体の分散性にも優れる点で、有利である。
【0015】
−その他の粉体−
また、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、前記(A)成分以外にも、必要に応じて、更にその他の粉体を含んでいてもよい。
【0016】
中でも、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、前記その他の粉体として、疎水性粉体を含むことが好ましい。前記疎水性粉体を含むことにより、親油的な臭い成分、例えばOEO(1−オクテン−3−オン)やアンドロステノンに対して、良好な消臭効果を得ることができ、そのため、総合的な消臭効果を向上させることができる。また、前記疎水性粉体を含むことにより、すべすべ感を向上させることもできる。前記疎水性粉体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体(KSP−101、KSP−102:信越化学工業株式会社)、ナイロン末(オルガソールS:岩瀬コスファ株式会社)などが挙げられる。これらの中でも、消臭効果の向上、すべすべ感の向上の点で、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体などのシリコーン系疎水性粉体が好ましい。
【0017】
前記その他の粉体の、原液中における含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
−(B)EO・PO変性シリコーン−
前記EO・PO変性シリコーンは、主に、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物のきしみ感を抑制し、すべすべ感を向上させる目的で使用される。EO・PO変性シリコーンのシリコーン部が肌にすべすべした感触を与えるだけでなく、EO・PO変性シリコーンのポリエーテル部が肌上の水分を適度に保持することにより、粉体により肌上の水分が過剰に取られすぎることを防ぎ、きしみ感を抑制し、すべすべ感を向上させることができると考えられる。
また、本発明では、前記(B)成分として、EO変性シリコーンでなく、EO・PO変性シリコーンを用いることに一つの大きな特徴を有する。非水系エアゾール型制汗デオドラント剤に展着剤としてよく用いられるミリスチン酸イソプロピルとの溶解性において、EO変性シリコーンでは、濁りが生じることが多く、油相の均一性が図れないが、EO・PO変性シリコーンを用いることにより、ミリスチン酸イソプロピルとの溶解性が良く、油相の均一性が図れるという利点がある。また、EOはEO・POよりも親水性粉体の表面の親水基に吸着しやすいため、肌表面に露出する親水部が少なくなり、そのため、EO変性シリコーンでは、肌上の水分を保持する効果が低下してしまい、所望の程度のすべすべ感を付与することができないという問題がある。
【0019】
前記EO・PO変性シリコーンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖型(ペンダント型)、側鎖両末端型、直鎖共重合ABN型のEO・PO変性シリコーンなどが挙げられる。なお、ABN型とは、ポリエーテルとシリコーンの直鎖状のブロック共重合体である。
【0020】
前記側鎖型(ペンダント型)のEO・PO変性シリコーンとしては、例えば、PEG/PPG−20−20ジメチコン(SH3749:東レダウコーニング株式会社)、PEG/PPG−20/23ジメチコン(SILSOFT430、SILSOFT440:GE東芝シリコーン株式会社)、PEG/PPG−17/17ジメチコン(TSF4452:GE東芝シリコーン株式会社)、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルシリコーン(KF−6012:信越化学工業株式会社)などが挙げられる。
【0021】
前記側鎖両末端型のEO・PO変性シリコーンとしては、例えば、下記構造式(1)で表される、ポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンなどが挙げられる。具体的には、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体(例えば、ABIL CARE85:デグサ社)などが挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
ただし、前記構造式(1)中、Rは(CH)n(OC)a(OC)bORであり;Rは(CH)n’(OC)a’(OC)b’ORであり;Rは(CH)n”(OC)a”(OC)b”ORであり;Rはそれぞれ−H又は−CHであり;n、n’、及びn”はそれぞれ0〜3の整数であり;a、a’、及びa”はそれぞれ0〜50の整数であり;b、b’、及びb”はそれぞれ0〜100の整数であり;lは1〜1000の整数であり;mは1〜50の整数である。但し、a+b、a’+b’、及びa”+b”≧1である。
【0024】
前記直鎖共重合ABN型のEO・PO変性シリコーンとしては、例えば、ポリシリコーン−13(FZ−2222、FZ−2233:東レダウコーニング株式会社)などが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、前記EO・PO変性シリコーンとしては、側鎖両末端型、直鎖共重合ABN型のEO・PO変性シリコーンが好ましい。側鎖両末端型や直鎖共重合ABN型のEO・PO変性シリコーンは、親水性粉体に吸着しても、構造的に親水部が肌表面に露出することができるため、肌上の水分保持効果が高く、そのため、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤のきしみ感を抑制し、すべすべ感をより向上させることができる点で、有利である。
また、前記EO・PO変性シリコーンは、そのHLBが、7〜12であることが好ましく、その粘度が、500cs以上であることが好ましい。前記したようなHLB及び粘度を有することで、油分(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)中への溶解性や、粉体の分散性を向上させることができる点で、有利である。
また、前記EO・PO変性シリコーンは、常温で液体状であることが好ましい。前記EO・PO変性シリコーンが、固体〜ペースト状のものであると、原液の油相を低温で保存した場合に、濁りが生じてしまい、油相の均一性が保たれなくなることがある。
【0026】
前記EO・PO変性シリコーンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記EO・PO変性シリコーンの含有量は、原液中、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、所望の程度のきしみ感の抑制効果が得られないことがあり、50質量%を超えると、塗布時にシリコーン特有のうわすべり感が感じられ、不快感を与えることがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、きしみ感の抑制効果、及び、すべすべ感の向上効果に優れ、かつ、不快なうわすべり感を引き起こすことのない点で、有利である。
【0027】
−その他の成分−
前記原液中に含有され得る、前記(A)成分、前記その他の粉体、及び、前記(B)成分以外のその他の成分としては、特に制限はなく、従来の制汗デオドラント剤に常用される成分などの中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛等の制汗成分、界面活性剤、油脂類、ワックス類、高級脂肪酸、シリコーン類、高級アルコール、クエン酸、コハク酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、皮膚保護剤、増粘剤、清涼剤、殺菌剤、抗炎症剤、アミノ酸、ビタミン類などが挙げられる。なお、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤は非水系であるため、前記原液は、水、エタノールを実質的に含まないものである。
前記その他の成分の、原液中における含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
<噴射剤>
前記噴射剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロパン、ブタン等の液化石油ガス、イソペンタン、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
前記噴射剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記噴射剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記原液の含有量との質量比で、原液/噴射剤=1/99〜40/60であることが好ましく、4/96〜20/80であることがより好ましい。前記噴射剤の含有量が、60質量%未満であると、前記原液が肌に多く付着し、肌上で液だれを起こすなど、使用感が悪くなることがあり、99質量%を超えると、前記原液の肌への付着量が少なくなることにより、充分な消臭効果が得られないことがある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、前記原液が適度な量で肌に付着するために、より使用感に優れ、かつ、所望の消臭効果が得やすい点で、有利である。
【0030】
<製造方法>
前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、(A)親水性粉体と、(B)EO・PO変性シリコーンと、必要に応じてその他の成分(前記(A)成分以外のその他の粉体を含む)とを、前記のような所望の含有量となるように配合して原液を調製し、これに噴射剤を配合することにより、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を製造することができる。
【0031】
また、前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、例えば、一般的なエアゾール容器に、通常の手法により充填することができる。
前記エアゾール容器としては、例えば、容器本体、該容器本体の開口部に固着するバルブ、及び、噴射用ボタンからなるものなどが挙げられる。前記容器本体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、ブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、耐圧ガラスなどが挙げられる。また、耐圧性、耐衝撃性、耐腐食性、製剤安定性等を向上させる目的で、容器本体の表面が樹脂等でコーティングされたものであってもよい。前記バルブとしては、例えば、前記容器本体の開口部にクリンプ(クリンチ)されるマウンティングカップ、該マウンティングカップの中央部に保持されるハウジング、該ハウジング内に上下動自在に収容されるステム、該ステムの孔を開閉するステムラバー、前記ステムを常時上向きに付勢するスプリング、及び、前記ハウジングの下端から容器底部に伸びているディップチューブからなるものなどが挙げられる。
前記充填の方法としては、例えば、冷却充填法、加圧充填法、アンダーカップ充填法などが挙げられる。
【0032】
<使用方法・効果>
前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物の使用方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、汗による肌のべたつきや不快感などを低減し、脇臭などの体臭の発生を抑制したい部位に、噴射して塗布することができる。また、塗布の際の塗布量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することができるので、消臭効果、及び、使用感に優れた制汗デオドラント剤として好適に利用可能である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に明記のない場合は、「%」はいずれも「質量%」を表し、比率はいずれも質量比を表す。
【0034】
(実施例1〜13、比較例1〜5)
下記表1〜4に示す組成に従い、実施例1〜13、及び、比較例1〜5の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を、常法により調製した。具体的には、原液の各成分を混合し、得られた原液を、噴射剤とともにエアゾール容器に充填した。
なお、用いた粉体の吸水量(mL/100g)は、JIS K 5101−13−2(煮あまに油法)に準じて、煮あまに油を精製水に置き換えて、以下のようにして求めた。シャーレに粉体を1g取り、ビュレットにて精製水を少量ずつ滴下し、その都度、薬さじにて粉体と精製水とを練り合わせた。硬いパテ状の塊であった混練物が、らせん状に巻ける状態に変わるまで精製水を滴下し、練り合わせの操作を繰り返した。混練物がらせん状に巻ける状態になったときを終点とし、終点までに要した精製水の量を、粉体の吸水量(mL/100g)として換算した。各実施例及び比較例で用いた粉体((A)成分)の吸水量を、表1〜4に併せて示す。(なお、比較例2〜3については、(A)成分に該当しないことを示すため、シリカ(NP−30)、ナイロン末の吸水量をそれぞれ示した。)
得られた各非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物について、以下の方法により、消臭効果(消臭率測定による評価、官能評価)、及び、使用感(きしみのなさ、すべすべ感)を評価した。結果を表1〜4に併せて示す。
【0035】
<消臭効果の評価(イソ吉草酸の消臭率測定による評価)>
メンブランフィルター上に、各非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を2秒間噴霧した。これを22mL入りGCバイアル瓶中に入れ、イソ吉草酸2質量%水溶液を30μL滴下した後、密栓し、34℃で5分間、放置した。その後、ガスクロマトグラフィーを用いて、ヘッドスペース中のイソ吉草酸濃度を測定した。イソ吉草酸の消臭率(%)を、下記式を用いて算出し、以下の評価基準に従い評価した。
イソ吉草酸の消臭率(%)=[(粉体未添加時のイソ吉草酸のピーク面積−粉体添加時のイソ吉草酸のピーク面積)/(粉体未添加時のイソ吉草酸のピーク面積)]×100
−評価基準−
◎:消臭率が80%以上
○:消臭率が60%以上
△:消臭率が40%以上
×:消臭率が20%以上
【0036】
<消臭効果の評価(OEOの消臭率測定による評価)>
メンブランフィルター上に、各非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を2秒間噴霧した。これを22mL入りGCバイアル瓶中に入れ、OEO0.5質量%/50%エタノール溶液を30μL滴下した後、密栓し、34℃で5分間、放置した。その後、ガスクロマトグラフィーを用いて、ヘッドスペース中のOEO濃度を測定した。OEOの消臭率(%)を、下記式を用いて算出し、以下の評価基準に従い評価した。
OEOの消臭率(%)=[(粉体未添加時のOEOのピーク面積−粉体添加時のOEOのピーク面積)/(粉体未添加時のOEOのピーク面積)]×100
−評価基準−
◎:消臭率が80%以上
○:消臭率が60%以上
△:消臭率が40%以上
×:消臭率が20%以上
【0037】
<消臭効果の評価(官能評価)>
男性被験者10名の腋窩に、各非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を2秒間噴霧し、噴霧後8時間後に、試験管の底で腋窩を擦り取り、試験管についた臭気を、専門パネルにより官能評価した。評価基準は以下の通り。なお、被験者10名についての平均点を結果として示した。
−評価基準−
5点:強烈な臭い。
4点:強い臭い。
3点:らくに感知できる臭い。
2点:何の臭いかが分かる程度の弱い臭い(認知閾値)。
1点:やっと感知できる程度の臭い(検知閾値)。
0点:無臭。
【0038】
<使用感の評価(きしみのなさ、すべすべ感)>
各非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物を、専門パネラー10名の前腕内側部に適量噴霧塗布し、きしみのなさ、すべすべ感について、以下の評価基準に従い評価した。なお、専門パネラー10名の平均点を結果として示した。
なお、「きしみのなさ」とは、指で肌を触るときに、指が肌に引っかかる感じのない状態をいい、「すべすべ感」とは、指で肌を触るときに、指と肌に抵抗感がなくすべり、かつ適度なしっとり感が感じられる状態をいう。
−評価基準(きしみのなさ、すべすべ感)−
5点:非常に良い。
4点:良い。
3点:どちらともいえない。
2点:悪い。
1点:非常に悪い。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表1〜4の結果から、(A)吸水量が一定以上の親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンの両者を含み、かつ、原液中の前記(A)親水性粉体の含有量が一定以上である、実施例1〜13の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、前記各要件の少なくともいずれかを満たさない、比較例1〜5の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物と比べて、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することのできる、使用感に優れた非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物であることがわかった。
【0044】
なお、前記実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0045】
【表5】

※香料は特開2003−73249号公報の表23〜35に記載された組成Aを使用した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物は、消臭効果に優れ、かつ、肌に塗布した際に、きしまず、すべすべした感触を付与することができるので、例えば、汗による肌のべたつきや不快感などを低減し、かつ、脇臭などの体臭の発生を抑制するための、消臭効果及び使用感に優れた制汗デオドラント剤として、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)吸水量が50mL/100g以上である親水性粉体、及び、(B)EO・PO変性シリコーンを少なくとも含有する原液と、噴射剤とを含み、かつ、前記原液中の前記(A)親水性粉体の含有量が10質量%以上であることを特徴とする非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物。
【請求項2】
(B)EO・PO変性シリコーンが、側鎖両末端型EO・PO変性シリコーン、及び、直鎖共重合ABN型EO・PO変性シリコーンの少なくともいずれかである請求項1に記載の非水系エアゾール型制汗デオドラント剤組成物。

【公開番号】特開2009−102271(P2009−102271A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276618(P2007−276618)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】