説明

非水系二次電池用電極群およびこれを用いた非水系二次電池

【課題】正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に空隙を形成した電極群を構成することで、充電時の負極の膨張による電極板の座屈を抑制し、この電極群を用いることで電極板の座屈に起因した内部短絡による発熱を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供するものである。
【解決手段】正極板14と多孔質絶縁体31の間または負極板24と多孔質絶縁体31の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解して空隙を形成する樹脂からなるスペーサ10を配置して巻回して非水系二次電池用電極群4を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池用電極群およびこれを用いた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっている非水系二次電池はリチウム二次電池に代表され、負極活物質にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極活物質にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量の非水系二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化や小型化に伴って、非水系二次電池の更なる小型高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量の非水系二次電池を実現するための発電要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した合剤塗料を集電体の上に塗布し乾燥後、プレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、より多くの活物質を充填してプレスすることにより活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
また、上述の正極板と負極板とをセパレータを介して渦巻状に巻回した電極群をステンレス製、ニッケルメッキを施した鉄製、またはアルミニウム製等の金属からなる電池ケースに収納し、次に非水電解液を電池ケース内に注液した後、電池ケースの開口端部に封口板を密封固着して非水系二次電池が構成される。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板との内部短絡などが原因で非水系二次電池の急激な温度上昇が起こり熱暴走に至る場合もあるため、非水系二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水系二次電池では、熱暴走の発生確率が高くなるため、その発生確率を低くするなどの安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
上述のように非水系二次電池が内部短絡する要因としては、非水系二次電池の内部に異物が混入する以外にも電極群を構成する際、さらには電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって電極板が破断することが考えられる。より詳しくは、渦巻状に巻回して電極群を構成する際または扁平形に圧縮成形する際には構成要素である正極板、負極板、セパレータには曲率半径の小さい部分で大きな応力が加わり、合剤層の脱落またはこの際の各構成要素における伸び率の差によって最も伸び率が小さなものから破断することになる。
【0007】
加えて、非水系二次電池を充放電すると電極板の膨張収縮による応力が電極板に加わり、充放電を繰り返すことによる繰り返し応力により電極板が座屈して電極群の形状が変形し、それに伴って電池ケースに接触し、さらに群の形状が変形するとその応力によって電池ケースを内側から押すことになって、電池ケースの膨張が起こることになる。さらに、電極群の形状の変形が進行すると正極板、負極板もしくはセパレータの伸び率の最も低いものが優先的に破断してしまい、正極板もしくは負極板がセパレータよりも先に破断した場合には、いずれかの電極板の破断部がセパレータを突き破り正極板と負極板が短絡することになる。この短絡により大電流が流れ、その結果、非水系二次電池の温度が急激に上昇し、上述のように非水系二次電池が熱暴走する可能性がある。
【0008】
そこで、このような座屈を抑制するために、例えば図8に示すように、電極群91を巻
回後に上部から押圧し変形させた状態で回転ローラ間に張架されたベルト92を回転させることで、巻回方向と同一方向または逆方向に回転させて巻回状態を緩めて電極間の隙間を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、このような座屈を抑制するために、例えば図9に示したように、正極板C、セパレータS1,負極板A,セパレータS2を積層して渦巻状に巻回する際に、負極板Aの表裏面に金属リチウムP1,金属リチウムP2を貼り付けて電極間の隙間を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−164956号公報
【特許文献2】特開2008−016193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術では、巻回した後に押圧し変形させた状態で巻回方向と同一方向または逆方向に回転させて巻回状態を緩めて電極間の隙間を形成しているが、隙間を形成する点においては効果を発揮するものの、一度巻回した電極群を常に定量的に巻き緩ませることは困難である。また、押圧し変形させた状態で電極群を回転させることで電極板から合剤層の脱落が発生し、露出した集電体同士が接触する、あるいは、脱落した合剤層がセパレータを貫通して正極板と負極板の短絡を引き起こす場合があり、非水系二次電池の安全性を確保する上では十分なものとは言えないという課題を有していた。
【0011】
また、特許文献2の従来技術では、セパレータと負極板の間に金属リチウムを配置して電極群を構成するが、このリチウムが溶け出すことで合剤層から供給されるリチウム以上のリチウムが存在してリチウム過多の状態になり、リチウムデンドライトを引き起こす原因となる。リチウムデンドライトが起きると、それが原因となってセパレータを突き破って正極板と負極板は短絡状態になってしまう場合があり、非水系二次電池の安全性を確保する上では十分なものとは言えないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサを配置することで、充放電を繰り返すことによる電極板の膨張収縮に起因した座屈を非水電解液に溶解したスペーサの部分が空隙となって吸収し、信頼性の高い非水系二次電池用電極群を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために本発明の非水系二次電池用電極群は、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合剤層を形成した負極板とを間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層した非水系二次電池用電極群であって、正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサを配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非水系二次電池用電極群によると、正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサを配置したことにより、緊迫度の高い電極群が作製され、このスペーサが非水電解液により溶解することで電極群の内部に空隙が形成され、負極板にインターカレーションされ
るリチウムによって負極板の膨張による体積増加を電極群内部に成形した空隙で吸収するため、正極板に加わる応力を緩和することができ、電極板の座屈を抑制し、電極板の破断を抑制することが可能である。また、この電極群を用いることで電極板の破断または座屈に起因した内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層した非水系二次電池用電極群であって、正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサを配置したことにより、非水電解液に溶解する際にスペーサが電極群内部に空隙を形成させ、充電時の負極板の膨張をその空隙で吸収し電極板の座屈を抑制することが可能となり、信頼性の高い非水系二次電池用電極群を提供することができる。
【0016】
本発明の第2の発明においては、スペーサを正極板または負極板の片面側に配置したことにより、巻回の巻き始めから巻き終わりにわたって、充電時の負極板の膨張を吸収することで電極板の座屈を抑制することができる。
【0017】
本発明の第3の発明においては、スペーサを正極板または負極板のいずれかの両面に配置したことにより、巻回の巻き始めから巻き終わりにわたって、充電時の負極板の膨張を両面にわたって吸収することで電極板の座屈をより効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の第4の発明においては、スペーサを長尺の正極板と負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層している正極板または負極板の長手方向に対し連続的に配置したことにより、より多くの空隙を確保し巻回の巻き始めから巻き終わりにわたって、充電時の負極板の膨張を吸収することで電極板の座屈をより効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の第5の発明においては、スペーサを長尺の正極板と負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層している正極板または負極板の長手方向に対し断続的に配置したことにより、充電時における負極板の膨張の影響が大きい箇所でより効果的に膨張の影響を吸収することで電極板の座屈を抑制することができる。
【0020】
本発明の第6の発明においては、スペーサをポリオレフィン系樹脂で構成したことにより、ポリオレフィン系樹脂はセパレータの材料として用いられているものであるので、非水電解液に溶解しても電池特性を悪化させることなく、充電時の負極板の膨張を吸収することができる空隙を形成することで、電極板の座屈を抑制することができる。
【0021】
本発明の第7の発明においては、スペーサをフッ素系樹脂で構成したことにより、フッ素系樹脂は電極板の結着材として用いられているものであるので、非水電解液に溶解しても電池特性を悪化させることなく、充電時の負極板の膨張を吸収することができる空隙を形成することで、電極板の座屈を抑制することができる。
【0022】
本発明の第8の発明においては、スペーサを繊維強化樹脂で構成したことにより、樹脂溶解後も繊維が残存することで空隙を確保して座屈を抑制できると同時に絶縁体層を形成するので、内部短絡による発熱を抑制することができる。
【0023】
本発明の第9の発明においては、スペーサを渦巻状に巻回した電極群の最巻内部またはつづら折れ状に積層した電極群の折曲げ部に配置したことにより、充電時の負極板の膨張による体積増加のうち、内周部に向かう電極板の変形分を吸収して、電極板の座屈を抑制することができる。
【0024】
本発明の第10の発明においては、スペーサを扁平形状に形成した電極群の曲率半径の小さい箇所に配置したことにより、角形非水系二次電池において曲率半径の小さい箇所での充電時の負極板の膨張に伴う体積増加をより効果的に吸収することができ、角形非水系二次電池における電極板の座屈をより効果的に抑制することができる。
【0025】
本発明の第11の発明においては、集電体にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質を含む活物質合剤層を形成した正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻き状に巻回またはつづら折れ状に積層した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入してなる非水系二次電池において、本発明の1〜10のいずれかのスペーサが非水電解液に溶解して、正極板と多孔質絶縁体の間または負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に空隙を形成した非水系二次電池用電極群で構成したことにより、座屈を抑制し、さらにこれらに起因する内部短絡を効果的に抑制することでき、安全性の高い非水系二次電池を提供することができる。
【0026】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の非水系二次電池用電極群4は、図1(a)に示すように複合リチウム酸化物を活物質とする正極板14とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板24とを間に多孔質絶縁層としてのセパレータ31を介して渦巻状に巻回して構成している。
【0027】
さらに詳しくは、図1(b)で電極群4の要部の拡大図に示すように、正極板14とセパレータ31との間および負極板24とセパレータ31との間に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を配置して渦巻状に巻回している。電極群4を非水電解液とともに電池ケース36に封入すると、スペーサ10は非水電解液に溶解するので、電極群4内に空隙を形成することができる。上述のスペーサ10を配置するには、図1(c)に示すように、正極板14とセパレータ31の間、負極板24とセパレータ31との間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成することができる。
【0028】
上記正極板14は、正極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、アルミニウム箔などの正極集電体11への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って正極合剤塗料を作製する。
【0029】
ここで、正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。このときの導電材の種類としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0030】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。次いで、正極集電体11に上述した正極合剤塗料を所定に厚みに塗布して正極合剤層12a,12bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経
て、正極板14が作製できる。
【0031】
一方、負極板24は、負極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、銅箔などの負極集電体21への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。ここで、負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0032】
このときの負極用の結着材としては、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。しかしながら、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。次いで、負極集電体21に上述した負極合剤塗料を所定に厚みに塗布して負極合剤層22a,22bを形成し、乾燥したのちほぼ全面的に所定の厚みにプレスされる工程を経て、負極板24が作製できる。
【0033】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を負極板24の内周側かつ長手方向に連続的に配置したもので、図2に示すように負極板24の片面側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。
【0034】
このように負極合剤層22aとセパレータ31との間にスペーサ10を配置するには、最適な長さに切断した非水電解液に溶解する樹脂を負極板24の長手方向に連続的にセパレータ31上に貼付して固定し、正極板14とセパレータ31とともに渦巻状に構成している。これにより、巻回の巻き始めから巻き終わりの全面にわたって電極板間の空隙を確保することができ、充電時の負極板24の膨張を巻き始めから巻き終わりの全面にわたって吸収することで、負極板24の膨張による体積増加に起因する電極板の座屈を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を負極板24の内周側かつ長手方向に連続的に配置したもので、図6に示すように負極板24の両面側である負極合剤層22a,22bとそれぞれに対向するセパレータ31a,31bとの間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。
【0036】
このように負極合剤層22a,22bとセパレータ31との間にスペーサ10を配置するには、最適な長さに切断した非水電解液に溶解する樹脂を負極板24の長手方向に連続的にセパレータ31上に貼付して固定し、正極板14とセパレータ31とともに渦巻状に構成している。これにより、巻回の巻き始めから巻き終わりの全面にわたって電極板間の空隙を確保することができ、充電時の負極板24の膨張を巻き始めから巻き終わりの全面にわたって吸収することで、負極板24の膨張による体積増加に起因する電極板の座屈を抑制することができる。
【0037】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を負極板24の内周側かつ長手方向に配置したもので、図3に示すように負極板24の片面側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間にスペーサ10を断続的に配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。このように負極板24とセパレータ31との間にスペーサ10を断続的に配置するには、最適な長さに切断した複数の非水電解液に溶解する樹脂を負極板24の長手方向に対して、セパレー
タ31上に貼付して固定し、正極板14とセパレータ31とともに渦巻状に構成している。これにより、全面に配置するより少ないスペーサ材料で充電時における負極板24の膨張の影響が大きい箇所でより効果的に膨張の影響を吸収することで電極板の座屈を抑制することができる。
【0038】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10をポリオレフィン系樹脂で構成したもので、図2に示すように負極板24の片面側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。ここで、ポリオレフィン系の樹脂、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)はセパレータで用いられているものであり、電池に対して悪影響を与えることなく、充電時の負極板24の膨張を吸収することができる空隙を形成することで、座屈を抑制することができる。
【0039】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10をフッ素系樹脂で構成したもので、図2に示すように負極板24の片面側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。ここで、フッ素系の樹脂、例えば、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)は電極板の結着材で用いられているので、電池に対して悪影響を与えることなく、充電時の負極板24の膨張を吸収することができる空隙を形成することで、座屈を抑制することができる。
【0040】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を繊維強化樹脂で構成したもので、図2に示すように負極板24の片面側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。繊維強化樹脂は樹脂溶解後も繊維が残存することで、空隙を確保して座屈を抑制できると同時に、絶縁体層を形成するので、内部短絡による発熱を抑制することができる。
【0041】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を渦巻状に巻回した電極群の最巻内部に配置したもので、図4に示すように巻き始めの位置にスペーサ10を配置してAに示す方向に渦巻状に巻回して構成している。このように巻き始めの位置に、最適な長さに切断した非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10をセパレータ31の巻き始めの位置に貼付して固定し、正極板14とセパレータ31とともに渦巻状に構成している。巻き始めに配置することにより、全面に配置するより少ないスペーサ材料で、充電時の負極板24の膨張による体積増加のうち、巻内部に向かう電極板の変形分を吸収して、より効果的に電極板の座屈を抑制することができる。
【0042】
また、本発明の別の非水系二次電池用電極群4は、非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を扁平形状に形成した電極群の曲率半径の小さい箇所に配置したもので、図5(a)に示すように負極板24の内周側である負極合剤層22aとそれに対向するセパレータ31との間に、最適な長さに切断した樹脂を渦巻状に巻回の巻外に向かってピッチが大きくなるようにスペーサ10を配置しており、Aに示す方向に渦巻状に巻回して扁平になるように成形すると図5(b)に示すように曲率半径の小さい箇所にスペーサ10を配置しており、全面に配置するより少ないスペーサ材料で、充電時の負極板24の膨張に伴う体積増加をより効果的に吸収することができ、角形非水系二次電池における座屈をより効果的に抑制することができる。
【0043】
以下、上述した電極群4を使用した本発明の非水系二次電池30について説明する。図
7に角形非水系二次電池の切断した斜視図を示す。図7の角形非水系二次電池30においては、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板14とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板24とを非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサ10を配置したセパレータ31を介して渦巻状に巻回して電極群4が構成される。
【0044】
この電極群4を有底偏平形の電池ケース36の内部に絶縁板37と共に収容し、電極群4の上部より導出した負極リード33を絶縁ガスケット39を周縁に取り付けた端子40に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード32を封口板38に接続し、電池ケース36の開口部に封口板38を挿入し電池ケース36の開口部の外周に沿って封口板38と電池ケース36を溶接して封口し、封栓口41から電池ケース36に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓42を封口板38に溶接し、角形非水系二次電池30を構成している。ここで、電極群4は非水電解液によりスペーサ10が溶解したため空隙が形成されている。
【0045】
ここで、セパレータ31は、角形非水系二次電池の使用範囲に耐えうる組成であればよいが、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが好ましい。セパレータ31の厚みは、10〜25μmとするのが良い。
【0046】
このときの非水電解液は、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正極板14または負極板24上に良好な皮膜を形成させるため、および過充電時の安定性を保障するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【実施例1】
【0047】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。まず、正極板14においては、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0048】
次いで、この正極合剤塗料を厚み15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体11の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の正極合剤層12a,12bの厚みがそれぞれ100μmとなる正極板14を作製した。さらに、この正極板14を、片面側の正極合剤層12a,12bの厚みがそれぞれ75μmで総厚みが165μmとなるようにプレスした後、角形非水系二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板14を作製した。
【0049】
一方、負極板24においては活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0050】
次いで、この負極合剤塗料を厚み10μmの銅箔からなる負極集電体21の表面と裏面に塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層22a,22bの厚みがそれぞれ110μmとなる負極板24を作製した。さらに、この負極板24を、片面側の負極合剤層22a,22bの厚みがそれぞれ85μm、総厚みが180μmとなるようにプレスした後、角形非水
系二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板24を作製した。スペーサ10においては、厚み10μmのフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0051】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図2に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aと重なるようにスペーサ10を貼り付けて、これらを図2のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。
【0052】
この電極群4の中から60個を抜き出し有底偏平形の電池ケース36の内部に絶縁板37と共に収容し、電極群4の上部より導出した負極リード33を絶縁ガスケット39を周縁に取り付けた端子40に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード32を封口板38に接続し、電池ケース36の開口部に封口板38を挿入し電池ケース36の開口部の外周に沿って封口板38とを溶接して封口し、封栓口41から電池ケース36に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、封栓42を封口板38と溶接して作製した角形非水系二次電池30を実施例1とした。
【実施例2】
【0053】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み5μmのフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0054】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図6に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31aの表面に、負極合剤層22aと重なるようにスペーサ10を貼り付け、また負極板24の負極合剤層22bに対向するセパレータ31bの表面に、負極合剤層22bと重なるように貼り付けて、これらを図6のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例2とした。
【実施例3】
【0055】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μmのフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を負極板24の幅で長さ10mmに切断して作製した。
【0056】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図3に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aと重なるように20mmピッチでスペーサ10を貼り付け、これらを図3のA方向に渦巻状に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例3とした。
【実施例4】
【0057】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μm、分子量282の低密度ポリエチレン(PE)フィルムを負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0058】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図2に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aと重なるようにスペーサ10を貼り付けて、これらを図2のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例4とした。
【実施例5】
【0059】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μm、アラミド繊維の不織布にフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を含浸した繊維強化樹脂フィルムを負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0060】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図2に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aと重なるようにスペーサ10を貼り付けて、これらを図2のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例5とした。
【実施例6】
【0061】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μmのフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0062】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図4に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aの巻始め部分に重なるようにスペーサ10を貼り付けて、これらを図4のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例6とした。
【実施例7】
【0063】
まず、実施例1と同様に正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μmのフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(THV)を負極板24の幅で長さ10mmに切断して作製した。
【0064】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ
31を用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図5(a)に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に、負極合剤層22aと重なるようにピッチP1を20mm、ピッチP2を21mm、ピッチP3を22mmと順に大きくしてスペーサ10を貼り付け、これらを図5(a)のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を実施例7とした。
【0065】
(比較例1)
正極板および負極板およびセパレータは、実施例1と同様のものを用い、これらの正極板と負極板およびスペーサは設けられていないセパレータを用いて、渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を比較例1とした。
【0066】
(比較例2)
まず、実施例1と同様な正極板14と負極板24を作製した。次にスペーサ10においては、厚み10μm、分子量28000の分子量が大きく、非水電解液には溶解しない高密度ポリエチレン(PE)フィルムを負極板24の幅で負極合剤層22aの長さに切断して作製した。
【0067】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とスペーサ10を設けたセパレータ31用いて、図7に示すような角形非水系二次電池30を作製した。より具体的には、図2に示したように、正極板14と負極板24と厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31と負極板24の負極合剤層22aに対向するセパレータ31の表面に負極合剤層22aと重なるようにスペーサ10を貼り付けて、これらを図2のA方向に渦巻状に巻回して扁平に成形した電極群4を100個作製した。これらの電極群4の中から60個を抜き出し、実施例1と同様にして作製した角形非水系二次電池30を比較例2とした。
【0068】
上記各実施例と比較例のスペーサ厚み、スペーサ箇所、スペーサ形状やスペーサとして用いた樹脂の材質の所要内容を(表1)に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(表1)の条件で渦巻状に巻回した電極群4および角形非水系二次電池30において、以下の内容で評価を行った。実施例1〜7および比較例1〜2についてそれぞれ100個の中から40個を抜き出して電極群4を分解して観察した結果を(表2)に示す。
【0071】
さらに、上述のようにして実施例1〜7および比較例1〜2について作製したそれぞれ60個の角形非水系二次電池30について、充放電を500サイクル繰り返したときの初期容量に対する容量維持率と厚みの変化率および、初期状態と500サイクル途中の充電状態での高さ方向の中心での断面写真をCTで撮影し、巻回における湾曲部分での正極集電体間の距離を測定した結果を(表2)に示す。さらに、この60個のうちの30個を500サイクル繰り返した後に角形非水系二次電池および電極群を分解し観察した結果を(表2)に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
(表2)の結果より、実施例1〜実施例7においては、いずれも正極板14、負極板24ともに電極板の破断や電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また500サイクル後の初期容量に対する容量維持率および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、500サイクル後の厚み増加量も小さく、座屈が抑制されていて、このため良好な電池特性が維持できたと考えられる。さらに、CT写真による、正極集電体間の距離も初期状態では、電極板およびセパレータの厚みの積算分に加えて、スペーサ厚み相当分大きくなっているが、充電状態でもその距離は変化しない。これは充電による負極の膨張による体積増加をスペーサの溶解で確保した空隙で吸収できたためと考えられる。
【0074】
一方、比較例1〜2においては、500サイクル後の初期容量に対する容量維持率は低下しており、500サイクル後に分解し観察した結果も、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合が認められた。また、厚みの増加量も大きく、CT写真から、座屈が発生していることがわかった。さらに、正極集電体間の距離も初期状態に比べて大きくなっており、充電による負極の膨張による体積増加のよるものと考えられる。比較例2はスペーサを挿入したものの、高分子ポリエチレンフィルムのため非水電解液に溶解しないので、空隙を形成することができないために負極の膨張による体積増加を吸収できないものと考えられる。
【0075】
また、これらの500サイクル繰り返した後の残りの30個について、次のような試験を行った。落下試験として、上述の角形非水系二次電池を、上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後に、1.5mの高さからコンクリート面上に、角形非水系二次電池の6面に対し各10回落下試験を行い、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。また落下試験後の発熱の有無を確認した結果を(表3)に示す。
【0076】
丸棒圧壊試験としては、上述の角形非水系二次電池を上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を寝かせた状態で長さ方向に対し垂直方向に直径10mmの丸棒で圧壊試験を実施し、室温25℃にて10個の発熱温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0077】
さらに150℃加熱試験として、上述の角形非水系二次電池を、上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を恒温層に挿入し、常温から5℃/分の条件で恒温層の温度を150℃まで昇温させて、そのときの電池発熱温度を測定し10個の平均値を求めた結果を(表3)に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
(表3)の結果より、実施例1〜7では、500サイクル後の落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験についても、不具合は認められなかった。これは、座屈が抑制されており、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な安全性を維持できたものと考えられる。また、実施例5では溶解する樹脂内にアラミド繊維を添加しているが、これにより、樹脂が溶解してもアラミド繊維が残存して絶縁体層を形成し、安全性に対してさらに効果が大きいことがわかった。
【0080】
一方、比較例1で示した何も施していない非水系二次電池は、500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合が認められた。また落下試験、丸棒圧壊試験、釘刺し試験、150℃加熱試験のい
ずれの試験においても、発熱温度が高いことより、巻回時の合剤層脱落や電極板の破断に起因する内部短絡や座屈が発生していることが原因と考えられる。
【0081】
以上の結果より、非水電解液に溶解して空隙を形成する樹脂を配置したことにより、充電時の負極の膨張による体積増加に起因した座屈やそれに伴う内部短絡を抑制することができると言える。なお、実施例1〜7においては負極板とセパレータの間に空隙を形成したが、これに限定されるものではなく、正極板のみまたは正極板とセパレータおよび負極板とセパレータの間に形成しても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0082】
また、実施例1〜7においては、上記のように正極板とセパレータまたは負極板とセパレータの間の少なくともいずれか一方に空間を形成するためにスペーサとして非水電解液に完全に溶解する樹脂を用いた実施例について記載したが、これに限定されるものではなく、樹脂の一部が残存しても同様の効果が得られるのは言うまでもない。また、実施例1〜7においては、渦巻状に巻回した電極群を作成したが、つづら折れ状に積層した電極群においても同様の効果が得られるのは言うまでもない。さらにこれら実施例においては角形非水系二次電池を用いて説明したが、円筒形非水系二次電池についても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る非水系二次電池用電極群は、正極板と多孔質絶縁体の間または前記負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解して空隙を形成する樹脂からなるスペーサを配置して電極群を構成することで、充電時の負極の膨張による体積増加を吸収することができ、これにより電極板の座屈を抑制することが可能である。また、この電極群を用いることで電極板の座屈に起因した内部短絡による発熱を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能であるため電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)本発明の一実施例に係る非水系二次電池用電極群の断面を示す模式図、(b)本発明の一実施例に係る非水系二次電池用電極群の一部拡大図、(c)本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図
【図2】本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図
【図3】本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図
【図4】本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図
【図5】(a)本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図、(b)本発明の一実施例に係る非水系二次電池用電極群の一部拡大図
【図6】本発明の一実施例に係る正極板と負極板およびスペーサ付きセパレータを示す概略図
【図7】本発明の一実施の形態に係る角形非水系二次電池の一部切欠斜視図
【図8】従来例における非水系二次電池用電極板の断面図
【図9】従来例における非水系二次電池用電極板の断面図
【符号の説明】
【0085】
4 非水系二次電池用電極群
10 スペーサ
11 正極集電体
12a,12b 正極合剤層
14 正極板
21 負極集電体
22a,22b 負極合剤層
24 負極板
30 角形非水系二次電池
31,31a,31b セパレータ
32 正極リード
33 負極リード
36 電池ケース
37 絶縁板
38 封口板
39 絶縁ガスケット
40 端子
41 封栓口
42 封栓
A 電極群の巻回方向
P,P1,P2,P3 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層した非水系二次電池用電極群であって、前記正極板と多孔質絶縁体の間または前記負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に非水電解液に溶解する樹脂からなるスペーサを配置したことを特徴とする非水系二次電池用電極群。
【請求項2】
前記スペーサを前記正極板または負極板の片面側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項3】
前記スペーサを前記正極板または負極板のいずれかの両面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項4】
前記スペーサを長尺の前記正極板と負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層している前記正極板または負極板の長手方向に対し連続的に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項5】
前記スペーサを長尺の前記正極板と負極板との間に多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回またはつづら折れ状に積層している前記正極板または負極板の長手方向に対し断続的に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項6】
前記スペーサをポリオレフィン系樹脂で構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項7】
前記スペーサをフッ素系樹脂で構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項8】
前記スペーサを繊維強化樹脂で構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項9】
前記スペーサを前記渦巻状に巻回した電極群の最巻内部またはつづら折れ状に積層した電極群の折曲げ部に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項10】
前記スペーサを扁平形状に形成した前記電極群の曲率半径の小さい箇所に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項11】
集電体にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質を含む活物質合剤層を形成した正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻き状に巻回またはつづら折れ状に積層した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入してなる非水系二次電池において、請求項1〜10のいずれか1つに記載されたスペーサが非水電解液に溶解して、前記正極板と多孔質絶縁体の間または前記負極板と多孔質絶縁体の間の少なくともいずれか一方に空隙を形成した非水系二次電池用電極群で構成したことを特徴とする非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−108679(P2010−108679A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277956(P2008−277956)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】