説明

非水系整髪料組成物

【課題】 毛髪に良好な束感と指通り性とを付与し得る非水系整髪料組成物を提供する。
【解決手段】 揮発性シリコーン50〜90質量%と、植物油と、アシル乳酸塩1〜20質量%とを少なくとも含有することを特徴とする非水系整髪料組成物により、前記課題を解決する。アシル乳酸塩としては、イソステアロイル乳酸ナトリウムが好ましく、植物油としては、25℃で液状のものが好ましく、揮発性シリコーンとしては、環状シリコーンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に適度な束感と良好な指通りを付与し得る非水系整髪料組成物に関するものである。なお、本明細書でいう「束感がある」とは、毛髪が、その長さ方向の中央付近から毛先にかけて、数十本単位でまとまりを持った状態であることを意味している。
【背景技術】
【0002】
毛髪に軽くウェーブをかける場合、毛髪の束感が良好であると、見栄えがよくなることから、こうしたヘアスタイルにセットすることが一般に行われている。
【0003】
現在では、毛髪の束感を確保するに当たり、例えば、ヘアワックスが使用されている。ところが、ヘアワックスは、毛髪同士を接着する作用が強いため、束感を良好に確保できる一方で、接着作用が強すぎて、例えば、毛髪の指通り性が悪くなるといった欠点もある。
【0004】
一方、整髪料には、ヘアワックスの他に、非水系の整髪料(オイル状の整髪料)も知られている。例えば、特許文献1には、特定の高分子シリコーン、特定の低分子シリコーン、揮発性油剤および特定の植物油を組み合わせて配合した非水系の整髪料(毛髪化粧料)が記載されている。このような非水系の整髪料であれば、毛髪の指通り性を高めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−206467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の非水系の整髪料には、毛髪を数十本単位でまとめるような作用が小さく、束感が良好に確保できないという問題がある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、毛髪に良好な束感と指通り性とを付与し得る非水系整髪料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成し得た本発明の非水系整髪料組成物は、揮発性シリコーン50〜90質量%と、植物油と、アシル乳酸塩1〜20質量%とを少なくとも含有することを特徴とするものである。
【0009】
アシル乳酸塩は、例えば、乳化型の化粧料において、乳化剤として使用されるのが通常であるが、本発明の整髪料組成物では、揮発性シリコーンを含む非水系媒体を用いた非水系の組成物としつつ、そこに植物油とアシル乳酸塩とを組み合わせて配合することで、適度な束感と良好な指通り性とを毛髪に付与することを可能としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪に良好な束感と指通り性とを付与し得る非水系整髪料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非水系整髪料組成物に係るアシル乳酸塩としては、例えば、ステアロイル乳酸、ベヘノイル乳酸、カプロイル乳酸、ココイル乳酸、イソステアロイル乳酸、ラウロイル乳酸、オレオイル乳酸、2−エチルヘキサノイル乳酸、ミリストイル乳酸、パルミトイル乳酸、12−ヒドロキシステアロイル乳酸、リシノレイル乳酸などの各種乳酸の、金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩など)、アルキルアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)などが挙げられる。アシル乳酸塩は、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に毛髪へ束感を付与する作用が良好である点で、イソステアロイル乳酸ナトリウムが好ましい。
【0012】
非水系整髪料組成物におけるアシル乳酸塩の含有量(配合量)は、その使用による効果を確保する観点から、1質量%以上であり、5質量%以上であることが好ましい。ただし、アシル乳酸塩の量が多すぎると、処理後の毛髪にべたつきが生じて、その操作性が低下する虞があることから、非水系整髪料組成物におけるアシル乳酸塩の含有量(配合量)は、20質量%以下であり、15質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の非水系整髪料組成物に係る植物油としては、25℃で液状のものが好ましく、具体的には、例えば、ホホバ油(無色〜淡黄色の透明液体)、メドウフォーム油(淡黄色の透明液体)、ツバキ油(微黄色の透明液体)、チャ実油(黄色〜橙黄色の液体)、オリーブ油(淡黄色〜淡緑黄色の透明液体)、グレープシード油(無色〜淡黄色の液体)、アボカド油(淡黄色〜暗緑色の透明液体)、サフラワー油(淡黄色の液体)、マカデミアナッツ油(微黄色の透明液体)、米胚芽油(淡黄色の液体)などが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に良好な指通り性を毛髪に付与し得る点で、ホホバ油、チャ実油、マカデミアナッツ油が好ましい。
【0014】
非水系整髪料組成物における植物油の含有量(配合量)は、揮発性シリコーンとより均一に相溶して、毛髪に軽く潤いのある指通り性を良好に付与できるようになることから、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。ただし、植物油の量が多すぎると、毛髪のべたつきが増すようになって、指通りのよさ(軽さ)が損なわれる虞があることから、非水系整髪料組成物における植物油の含有量(配合量)は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の整髪料組成物は非水系の組成物であり、非水系媒体を使用する。非水系媒体としては、少なくとも揮発性シリコーンを用いる。揮発性シリコーンとしては、直鎖状シリコーン[オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン(0.65〜5cp程度の低粘度のもの)などの直鎖状ジメチルシリコーンなど]、環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状ジメチルシリコーンなど)、アルキル変性シリコーンなどが挙げられる。揮発性シリコーンは、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらの揮発性シリコーンは、例えば、東レ・ダウコーニング社製の市販品を用いることができる。例えば、いずれも商品名で、「SH200シリーズ」、「2−1184 Fluid」(以上、直鎖状ジメチルシリコーン);「SH245 Fluid」、「DC345 Fluid」、「DC246 Fluid」(以上、環状ジメチルシリコーン);「FZ−3196」、「SS−3408」(以上、アルキル変性シリコーン);などが挙げられる。また、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の市販品[例えば、「TSF405」(環状ジメチルシリコーン)など]も使用することができる。
【0017】
前記の各種揮発性シリコーンの中でも、毛髪への指通り性の付与作用が特に良好である点で、環状シリコーン(環状ジメチルシリコーンなど)が好ましい。
【0018】
非水系媒体には、揮発性シリコーンのみを使用してもよく、他の非水系媒体を併用してもよい。揮発性シリコーンと併用し得る非水系媒体としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、エステル油などが挙げられる。
【0019】
非水系整髪料組成物における揮発性シリコーンの含有量(配合量)は、非水系整髪料組成物を毛髪により均一に塗布できるようにし、また、より良好な指通り性を毛髪に付与できるようにする観点から、50質量%以上であり、65質量%以上であることが好ましい。また、揮発性シリコーン量が多すぎると、アシル乳酸塩や植物油の量が少なくなりすぎて、これらの使用による効果が小さくなる虞があることから、非水系整髪料組成物における揮発性シリコーンの含有量(配合量)は、90質量%以下であり、75質量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の非水系整髪料組成物には、前記の各成分以外にも、例えば非水系の化粧料に配合されている各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。そのような添加成分としては、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、植物油および揮発性シリコーン以外の油類、湿潤剤、防腐剤、キレート剤、香料、着色剤などが挙げられる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩またはエチレンオキサイド(E.O.)付加型の第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン(ポリオキシエチレンオレイルアミンなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィン酸ナトリウムなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ベタインなどが挙げられる。
【0022】
植物油および揮発性シリコーン以外の油類としては、例えば、高重合メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体など)、ポリグリセリン変性シリコーン(ポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコーンなど)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルメチコン・ジメチコン共重合体など)などのシリコーンが挙げられる。
【0023】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸またはその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸またはその塩などが挙げられる。
【0024】
本発明の非水系整髪料組成物は、その剤型に関して特に限定されることなく、例えば、ジェル状、液状など、種々の剤型を採用することができる。
【0025】
本発明の非水系整髪料組成物の調製方法については、特に制限はなく、非水系整髪料組成物を構成する各成分を、常法に従って混合するなどすればよい。
【0026】
本発明の非水系整髪料組成物は、ドライ状態、ウェット状態のいずれの毛髪にも用いることができ、例えば、適量を毛髪に均一に塗布することにより使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、以下の表1〜表3では非水系整髪料成物全体で100%となるように、各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、表1〜表3中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0028】
実施例1〜19および比較例1〜11
表1〜表3に示す組成で各成分を配合して、非水系整髪料組成物を調製した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
なお、実施例1〜19および比較例1〜11の非水系整髪料組成物の調製に用いた原材料は、以下の通りである。
(1)イソステアロイル乳酸ナトリウム:武蔵野化学社製。
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「TSF405」。
(3)ホホバ油:香栄興業社製「精製ホホバ油」。
(4)チャ実油:日油社製「茶実油NR」。
(5)マカデミアナッツ油:日光ケミカル社製「NIKKOL マカデミアンナッツ油」。
(6)メドウフォーム油:日光ケミカル社製「NIKKOL メドウフォーム油」。
(7)軽質流動イソパラフィン:日油社製「パールリーム4」。
(8)エチルジグリコール:ダイセル化学社製「EDG」。
【0033】
実施例1〜19および比較例1〜11の非水系整髪料組成物を、それぞれ別のウィッグ(フォンテーヌ社製「FC121」)の毛髪に2g均一に塗布し、塗布後の毛髪の束感、操作性および指通り性について、専門のパネラー5名による官能評価を行った。
【0034】
非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の束感については、それぞれのパネラーが下記基準に従って点数付けを行った。
【0035】
<毛髪の束感>
3点:まとまった太さがあり、くっきりとした立体感がある。
2点:ある程度のまとまりがあり、くっきりとした立体感がある。
1点:ある程度のまとまりはあるが、立体感が見られない。
0点:まとまりや立体感がない。
【0036】
そして、各パネラーの付けた点数を合計して、下記基準に従って非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の束感を総合的に評価した。◎および○の評価のものは、非水系整髪料組成物による毛髪への束感の付与効果が良好であるといえる。
<毛髪の束感の総合評価基準>
評価◎:点数の合計が13点以上。
評価○:点数の合計が10点以上13点未満。
評価△:点数の合計が8点以上10点未満。
評価×:点数の合計が8点未満。
【0037】
また、非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の操作性については、それぞれのパネラーが下記基準に従って点数付けを行った。
【0038】
<毛髪の操作性>
3点:よい。
2点:普通。
1点:悪い。
【0039】
更に、非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の指通り性については、それぞれのパネラーが下記基準に従って点数付けを行った。
【0040】
<毛髪の指通り性>
3点:指通りがよい。
2点:普通。
1点:指通りが悪い。
【0041】
そして、各パネラーの付けた「毛髪の操作性」の点数、「毛髪の指通り性」の点数をそれぞれ合計して、下記基準に従って非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の操作性、および非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の指通り性を総合的に評価した。非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の操作性が◎および○の評価のものは、非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の操作性が良好であるといえ、また、非水系整髪料組成物塗布後の毛髪の指通り性が◎および○の評価のものは、非水系整髪料組成物による毛髪への指通り性の付与効果が良好であるといえる。
【0042】
<毛髪の操作性および毛髪の指通り性の総合評価基準>
評価◎:点数の合計が13点以上。
評価○:点数の合計が10点以上13点未満。
評価△:点数の合計が8点以上10点未満。
評価×:点数の合計が5点以上8点未満。
【0043】
以上の評価結果を表4および表5に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
表4および表5から明らかなように、実施例1〜19の非水系整髪料組成物は、毛髪への束感の付与効果および毛髪への指通り性の付与効果が良好であり、更に塗布後の毛髪の操作性もよく、これらの特性が比較例1〜11の組成物に比べて優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性シリコーン50〜90質量%と、植物油と、アシル乳酸塩1〜20質量%とを少なくとも含有することを特徴とする非水系整髪料組成物。
【請求項2】
アシル乳酸塩が、イソステアロイル乳酸ナトリウムである請求項1に記載の非水系整髪料組成物。
【請求項3】
植物油が、25℃で液状のものである請求項1または2に記載の非水系整髪料組成物。
【請求項4】
揮発性シリコーンが、環状シリコーンである請求項1〜3のいずれかに記載の非水系整髪料組成物。

【公開番号】特開2009−242271(P2009−242271A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89141(P2008−89141)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】