説明

非水系電池用の電極リード線部材

【課題】リチウムイオン電池の電解液が水分と反応してフッ酸が発生し、腐食性が増大しても、リチウムイオン電池の寿命に影響しないように、耐食性と水分バリア性を向上させ、且つ、生産性が高い非水系電池用の電極リード線部材を提供する。
【解決手段】アルミ箔と樹脂フィルムとのラミネートフィルム積層体を外装材に用いてなる非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材18であって、金属製の導出部21を備え、該導出部21の外表面に、保護層22と、シーラント層23とが順に積層されてなり、保護層22が、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池であるリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタと呼ぶ)等の、電解液に有機電解質を使用した非水系電池用の電極リード線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な環境問題の高まりと共に、電気自動車の普及や、風力発電・太陽光発電などの自然エネルギーの有効活用が課題となっている。それに伴い、これらの技術分野では、電気エネルギーを貯蔵するための蓄電池として、リチウムイオン電池などの2次電池やキャパシタが注目されている。また、電気自動車などに使用されるリチウムイオン電池を収納する外装容器には、アルミニウム箔と樹脂フィルムを積層した電池外装用積層体を使用して作成した平袋や、絞り成形または張出成形による成形容器を使用して薄型軽量化が図られている。
ところで、リチウムイオン電池の電解液は、水分や光に弱いという性質を有している。そのため、リチウムイオン電池用の外装材料には、ポリアミドやポリエステルからなる基材層とアルミニウム箔とが積層された、防水性や遮光性に優れた電池外装用積層体が使用されている。
【0003】
このような電池外装用積層体を用いて作成された収納容器に、リチウムイオン電池を収納するには、例えば、図3(a)に示すように、あらかじめ電池外装用積層体を用いて、凹部31を有するトレー状の形状を絞り成形などにより成形し、そのトレーの凹部31にリチウムイオン電池(図示せず)および電極36などの付属品を収納する。次いで、図3(b)に示すように、電池外装用積層体からなる蓋材33を上から重ねて電池を包み、トレーのフランジ部32と蓋材33の四方の側縁部34をヒートシールして電池を密閉する。このようなトレーの凹部31に電池を載置する方法により形成された収納容器35では、上から電池を収納できるため、生産性が高い。
【0004】
上述した図3(a)に示したリチウムイオン電池の載置容器30において、トレーの深さ(以下、トレーの深さを「絞り」ということがある)は、従来、小型のリチウムイオン電池においては5〜6mm程度であった。ところが、近年では、電気自動車用の蓄電池などの用途では、これまでより外形寸法の大きな、大型電池用の収納容器が求められている。大型電池用の収納容器を製造するには、より深い絞りのトレーを成形する必要があり、技術的な困難さが増している。
また、リチウムイオン電池の内部に水分が侵入した場合、電解液が水分で分解して、強酸が発生する。この場合、電池外装用積層体の内側から発生した強酸が、積層体の部材に浸透し、その結果としてアルミ箔が強酸で腐食して劣化してしまい、電解液の液漏れが発生する。電池性能が低下するだけでなく、リチウムイオン電池が発火する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−357494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の電池外装用積層体を構成する、アルミ箔や電極リード線部材の表面層が、強酸で腐食するのを防止する対策として、特許文献1には、アルミ箔の表面にクロメート処理を施すことによりクロム化処理被膜を形成し、耐腐食性を向上させる対策が開示されている。しかし、クロメート処理は、重金属であるクロムを使用することから環境対策が必要である。また、6価クロムは、人体に影響を与える有害物質であるため使用できず、3価クロムのクロメート処理液が使用されている。また、クロメート処理以外の化成処理では、耐腐食性を向上させる効果が薄い。
【0007】
また、従来の電極リード線部材は、正極と負極の両方の電極のうち、正極の電極部材であるアルミ材は耐電解液性が良い。しかし、負極の電極部材である銅板は、表層にニッケルメッキを施して、さらに、一般的な三価クロムのクロメート処理を施しても、耐電解液性が劣る。また、ラミネートフィルム積層体と電極部材との封止をするために、その電極部材の一部に、ラミネートフィルム積層体のシーラントと同一の樹脂種類の樹脂フィルムを熱接着させている。その際には、金属との接着性を有する樹脂フィルム、例えば、アイオノマーやEAA、無水マレイン酸グラフト共重合のポリオレフィン樹脂などの樹脂フィルムを使用している。しかし、十分な接着力とするためには、高温度で長時間に渡り加熱することが必要であり、生産性が低い。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて行われたものであり、リチウムイオン電池の電解液が水分と反応してフッ酸が発生し、腐食性が増大しても、リチウムイオン電池の寿命に影響しないように、耐食性と水分バリア性を向上させ、且つ、生産性が高い非水系電池用の電極リード線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解液に有機電解質を使用した非水系電池用収納容器において、外装材のラミネートフィルム積層体と電極リード線部材とが接合される部分の、導出部の外表面に、保護層とシーラント層とを順に積層し、前記保護層を、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成し、腐食性の電解液に対する耐蝕性を向上させること、を技術思想としている。
また、本発明は、シーラント層の電極リード線部材との界面側の部分に、エポキシ官能基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有させ、高速度での熱接着と接着強度の向上を図ること、を別の技術思想としている。
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、アルミ箔と樹脂フィルムとのラミネートフィルム積層体を外装材に用いてなる非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材であって、金属製の導出部を備え、該導出部の外表面に、保護層とシーラント層とが順に積層されてなり、前記保護層が、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成されていることを特徴とする電極リード線部材を提供する。
【0011】
また、前記シーラント層が、熱接着性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂フィルムであり、前記導出部の外表面に熱接着されていることが好ましい。
【0012】
また、前記シーラント層が、多層または単層のフィルムであり、前記導出部の外表面に熱接着されており、且つ、少なくとも前記シーラント層の前記導出部との界面側の部分に、エポキシ官能基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。
【0013】
また、前記フッ素化合物が、水溶性であることが好ましい。
【0014】
また、前記フッ素化合物が、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂を架橋させ、且つ、アルミニウムの表面を不動態化する物質であることが好ましい。
【0015】
また、前記保護層が、前記導出部の外表面に印刷により帯状のパターンに形成されてなることが好ましい。
【0016】
また、前記導出部の外表面に形成されている保護層が、熱処理により架橋または非晶化して、耐水性を有することが好ましい。
【0017】
また、前記保護層と前記シーラント層とが、熱接着で積層された後、少なくとも両者の接着強度が10N/inch以上になるまで、熱処理もしくは室温保管してなることが好ましい。
【0018】
また、前記シーラント層の厚みが、50μm以上300μm以下であり、且つ、前記保護層の厚みが、0.01〜5μmであり、前記保護層とその上に積層された前記シーラント層との層間剥離強度が、JIS C6471に規定された引き剥がし測定方法Aにより測定し、10N/inch以上であることが好ましい。
【0019】
また、前記電極リード線部材の、断面で見た両端部が押し潰されて、断面の中央部よりも厚みが薄いことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
電極リード線部材の、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成される保護層が、熱処理により、架橋または非晶化して耐水性を持つようになり、電極リード線部材の、断面で見た両縁部(両端部)から電解液が浸入するのを抑えることができる。
また、本発明は、シーラント層は多層または単層となっており、少なくともシーラント層の電極リード線部材との界面側の部分に、エポキシ官能基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有する。このエポキシ官能基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層があると、金属リード線部材と高速度で熱接着でき、生産性が高まる。さらに、接着強度が高いため、水分バリア性を高くできる。
また、本発明は、電極リード線部材の、断面で見た両縁部(両端部)が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていると、電極リード線部材とラミネートフィルム積層体との密着が良くなり空隙部が少なくなり、電解液の浸入が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電池用収納容器の、一例を示す斜視図である。
【図2】電池用収納容器に用いられる電池用外装積層体の一例を示す概略断面図である。
【図3】リチウムイオン電池を、収納容器に収める工程を順に示す斜視図である。
【図4】(a)は、本発明に係わる電極リード線部材の一例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のS−S線に沿う断面図である。
【図5】本発明に係わる電極リード線部材の、一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係わる電極リード線部材を、電池外装用積層体を用いて製造したリチウムイオン電池用の収納容器から、引き出したものを例に取り上げ、図1および図2を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の電極リード線部材18及びリチウムイオン電池17は、電池外装用積層体10を折り重ねて作成された電池用外装容器20に内包されている。
さらに、電池外装用容器20の三方の側縁部19は、ヒートシールして袋状に製袋されたものである。電極リード線部材18は、図1の様に電池用外装容器20から引き出されている。なお、本発明に係わる電極リード線部材18を用いて製造したリチウムイオン電池の電池用収納容器における収納方法は、図3に示した。
【0023】
ラミネートフィルム積層体からなる電池外装用積層体10は、図2に示すように、基材樹脂フィルム11と、アルミニウム箔12と、シーラント層13とが、それぞれ接着剤層15,16を介して接着されている。
図4に示すように、電極リード線部材18は、アルミニウム製の導出部21を備え、該導出部21の表面上に、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布した後、乾燥させて形成されている保護層22と、シーラント層23とが順に積層されている。
保護層22は、フッ化金属又はその誘導体からなるフッ素化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂とを架橋させて形成されており、耐水性を向上させ、且つ、金属の導出部21の外表面24を活性化させ、耐食性を向上させることができる。但し、フッ化金属又はその誘導体が含まれていなくても、保護層22の耐蝕性は向上している。保護層22は、前記導出部21の外表面24に印刷により帯状のパターンに形成されている。前記導出部21の外表面24に形成されている帯状の保護層22は、熱処理により、架橋または非晶化することにより耐水性が向上している。
また、フッ化金属のように、水溶液の状態では遊離して酸性になる物質を、保護層22に含有させることにより、金属表面が活性化されて、耐食性が向上すると共に、金属製の導出部21の外表面24と保護層22とが強く接着される。
【0024】
ところで、ポリビニルアルコールの骨格を有するポリビニルアルコール系樹脂は、一般的にガスバリア性が良いことが知られている。本発明に係わる電極リード線部材の保護層22は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されていることから、保護層22を構成する樹脂内部は、空隙が少なく、特に湿度の低い雰囲気下では、水素ガスのような分子径の小さなガス分子に対してもガスバリア性がある。このことから、リチウムイオン電池やキャパシタのような非水系電解液を用いた電池において、水分の存在しない電池内部の構成部材に、本発明の保護層22が使用される場合は、電解液や水分に対するバリア性が高いと考えられる。従って、フッ酸等の金属表面を腐食させる物質に対するバリア性も高いので腐食防止の効果があると予想される。このように、ポリビニルアルコール系樹脂からなる保護層22は、架橋させることにより、耐蝕性の向上を図ることができる。
【0025】
電極リード線部材18の金属製の導出部21は、一般的に、正極はアルミ板、負極は銅板にニッケルメッキで被覆した金属が使用される。ラミネートフィルム積層体との熱接着を容易にするために、電極リード線部材18の導出部21とラミネートフィルム積層体10との接着部分には、前もって、ラミネートフィルム積層体10のシーラント層13と同一の樹脂種類の樹脂フィルムからなるシーラント層23を形成して置く。このシーラント層23は単層もしくは多層となっており、リード線部材の導出部21との界面側の面のシーラント層は、エポキシ基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層が積層されているのが好ましい。
本発明においては、シーラント層23が単層の場合は、その全体が熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有する。シーラント層23が多層の場合は、少なくとも導出部21または保護層22に接する層が、熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有していればよく、さらに他の層にも熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有してもよい。シーラント層23が多層の場合は、導出部21または保護層22に接する層以外は、通常のポリエチレンやポリプロピレン等のエポキシ基を有しないポリオレフィン樹脂や、酸変性ポリオレフィン樹脂など、他の樹脂から構成されても構わない。また、シーラント層23のうちの熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有する層は、エポキシ基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂のみから構成されてもよく、あるいはこれと他の樹脂との混合物、コンパウンドやポリマーアロイ等とすることもできる。
シーラント層を多層にする方法は、押出ラミネート工法によるサンドラミネート方法を用いても良く、シーラント層をフィルム化する時に多層のフィルムにして積層しても良い。
【0026】
もし、電極リード線部材18の外表面に、耐食性の保護層22が形成されていないと、電解液の浸透により、電極リード線部材の外表面で水分と電解液とが反応してフッ酸が発生して、電極リード線部材が腐食する。そのことにより、電極リード線部材とシーラント層との接着力が低下する。従って、少なくとも電極リード線部材の電池側の表層面に、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布した後、乾燥させて保護層22が形成され積層されていることが好ましい。また、電極リード線部材の断面の外周部全体に、保護層を積層する必要がある。従来技術では、電極リード線部材に用いられるアルミ製の金属製平板21についての電解液に対する腐食防止対策としては、クロメート処理が広く用いられている。しかし、アルミ製の電極リード線部材と比較して、銅にニッケルメッキを施した電極リード線部材においては、クロメート処理の効果が少ない。ところが、本発明に係わる電極リード線部材においては、銅にニッケルメッキを施した電極リード線部材にも、電解液に対する腐食防止の効果があることが分った。このことから、本発明の保護層22による、電解液に対する腐食防止のメカニズムが、従来技術のクロメート処理と異なる。シーラント層23は、図5に示すように、正極と負極の双方にまたがるように積層しても良い。これにより、正極と負極とが一体化した電極リード線部材を得ることができる。また、保護層22の腐食防止効果は、アルミ板やニッケルメッキした銅板など各種金属板に対して得られるので、保護層22を正極と負極の双方の導出部21に設けることが好ましい。
【0027】
ところで、本発明に係わる電極リード線部材の保護層22は、ポリビニルアルコール系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成される。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造することができる。例えば、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化して、ポリビニルアルコール系樹脂を製造することができる。本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール樹脂、及び変性ポリビニルアルコール樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂のことである。ここで、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等のビニルエステル系モノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、アルキルビニルエーテル等のエーテル基含有モノマー、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセト酢酸アリル、アセト酢酸エステル等のカルボニル基(ケトン基)含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、塩化ビニルや塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、及び不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常90〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。
【0028】
本発明に使用できるポリビニルアルコール系樹脂とその誘導体としては、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボニル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアミド変性ポリビニルアルコール樹脂、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシル変性ポリビニルアルコール樹脂、シリコーン変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。それらの中でも、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボニル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
一般に入手可能な、ポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、日本合成化学(株)製のGポリマー樹脂(商品名)、日本酢ビ・ポパール(株)製のJ−ポバールDF−20(商品名)、日本カーバイド工業(株)製のクロスマーHシリーズ(商品名)などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂は、1種又は2種以上の混合物を用いてもよい。
【0029】
また、日本カーバイド工業(株)製のクロスマーHシリーズ(商品名)は、ポリビニルエーテル系樹脂(ビニルエーテルポリマー)としても知られているが、本発明では、水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、水酸基を有しても水酸基を有しなくてもよいポリビニルエーテル系樹脂を用いることもできる。ポリビニルエーテル系樹脂としては、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の、脂肪族ビニルエーテルの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。ビニルエーテル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、上述したビニルエステル系モノマーと共重合可能な他のモノマーと同様なものが挙げられる。
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、その他、各種グリコールや多価アルコールのモノビニルエーテル等の、水酸基を有する脂肪族ビニルエーテルをモノマーに含むポリビニルエーテル系樹脂は、水溶性を有し、かつ水酸基に対する架橋反応が可能なので、本発明に好適に用いることができる。
これらのポリビニルエーテル系樹脂は、ビニルエーテルモノマーが樹脂の製造(重合)工程に利用可能であることから、ビニルエステル系ポリマーを経由して製造されるポリビニルアルコール系樹脂とは異なり、ケン化処理を経ることなく、製造可能である。また、ビニルエステル系モノマーとビニルエーテル系モノマーを含む共重合体、又はこれをケン化して得られる、ビニルアルコール−ビニルエーテル共重合体を用いることもできる。ポリビニルエーテル系樹脂以外のポリビニルアルコール系樹脂と、ポリビニルエーテル系樹脂の混合物を用いることもできる。
【0030】
また、保護層22には、フッ化金属又はその誘導体であって、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させる物質を含有していることが好ましい。フッ化金属又はその誘導体などのフッ素化合物は、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂と混ぜ合わせる必要があることから、水溶性を有するのが好ましい。フッ化金属又はその誘導体の具体例としては、例えば、フッ化クロム、フッ化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化チタン、フッ化ハフニウム、ジルコンフッ化水素酸およびそれらの塩、チタンフッ化水素酸およびそれらの塩、等のフッ化物が挙げられる。これらのフッ化金属又はその誘導体は、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させる物質であると同時に、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成するFイオンを含む物質でもある。その結果、金属製平板21がアルミニウム製である場合には、金属製平板21の表面が不動態化され、耐食性が向上すると考えられる。
この電極リード線部材の導出部21の表層面に、保護層22を形成するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂、日本酢ビ・ポパール(株)製、商品名:J−ポバールDF−20、日本カーバイド工業(株)製、商品名:クロスマーHシリーズなど)を0.2〜6wt%、及びフッ化クロム(III)を0.1〜3wt%溶解した水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.01〜5μm程度となるように塗布した後、更にオーブンにて加熱乾燥及び焼き付け接着及び架橋化を行う。
【0031】
このように、電極リード線部材の外表面に、保護層22が積層されていると、保護層22の耐圧強度が高いので、ラミネートフィルム積層体10のシーラント層13であるポリプロピレン樹脂層又はポリエチレン樹脂層の厚みを薄くしても耐圧強度が保持できるため、電極リード線部材のエッジ部分(側縁部)から、リチウムイオン電池の内部に水分が浸入することが少なくなり、リチウムイオン電池の電解液の経時劣化が減少するので、電池の製品寿命が長くなる。
更に、微量の水分が電池内部に浸入し、電解液と水分とが反応して電解液が分解することによりフッ酸が発生した場合にも、電極リード線部材の表層面に積層されたポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂からなる保護層22は、空隙が少ないので、ガスバリア性が高く、シーラント層13に沿って、発生したフッ酸を、電池の外部へ拡散させることができる。また、微量のフッ酸が、導出部21であるアルミ板の表面に接触しても、アルミ板の表面に形成されている不動態化膜により電極リード線部材の腐食が防止されて、電極リード線部材18とシーラント層13との層間接着の強度が保たれ、耐圧強度の保持がなされるので、電池の液漏れが発生しない。
【0032】
保護層22の表面に熱接着されるシーラント層23は、50〜300μmの厚みが好ましく、防水性を考えると30〜150μmの厚みが最も好ましい。導出部21の厚さが200μm以上であると、導出部21の側縁部(エッジ部)にスルーホールが出来て、電解液の密封が出来ない場合がある。そこで、導出部21の側縁部(エッジ部)を潰し加工をすることで、保護層22の表面に熱接着するシーラント層23の厚みを薄くできる。
また、ポリビニルエーテル系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂からなる保護層22の厚みは、0.01〜5μmが望ましく、更に望ましくは0.1〜5μmであり、このような保護層の厚みであると、防湿性や接着強度の性能が向上する。
【0033】
保護層22は、印刷方法により、電極リード線部材の外表面の必要な部分に形成される。印刷方式としては、インクジェット方式、ディスペンサー方式、スプレーコート方式など、公知の印刷方法を用いることが可能である。本発明に使用できる印刷方法は任意であるが、電極リード線部材の両表面だけでなく、電極リード線部材の断面で見た側縁部(エッジ部)も印刷する必要があるため、インクジェット方式とディスペンサー方式が良い。特に、ディスペンサー方式において、10mm幅程度に、狭い幅を持たせて印刷できる塗布ヘッドを用いて実験したところ、最も適した方式であることが分った。
電極リード線部材の保護層22の表面に熱接着しておくシーラント層23は、ラミネートフィルム積層体10のシーラント層13と同一、又は類似の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。例えば、ラミネートフィルム積層体のシーラント層が、一般的に使用されているポリエチレンフィルムの場合には、無水マレイン酸変性ポリエチレンフィルムもしくは、グリシジルメタクリレート等で変性されたポリエチレンフィルムの単層であってもよく、さらに、これらの樹脂フィルムと、ポリエチレンフィルム及びその共重合体からなる樹脂フィルムとの多層フィルムでもよい。また、ラミネートフィルム積層体のシーラント層がポリプロピレンフィルムの場合には、グリシジルメタクリレート等で変性されたポリエチレンとランダムコーポリマーポリプロピレンのポリマーアロイで製膜した単層フィルムであるか、あるいは、この単層フィルムにポリプロピレンフィルムを積層した多層フィルムであっても良い。
【0034】
本発明が用いられる非水系電池としては、2次電池であるリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタなどの電解液に有機電解質を使用したものが挙げられる。有機電解質としては、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネートなどの炭酸エステル類を媒質とするものが一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(測定方法)
・電極リード線部材の導出部とシーラント層との接着強度の測定方法:JIS C6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」に規定された測定方法により測定した。
・電解液強度保持率の測定方法:電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPFを1mol/リットル添加したPC/DEC電解液に純水を0.5wt%添加して、それを2cc計量し、充填して包装した。導出部の外表面の一部に保護層をディスペンサー方式にて印刷し、その保護層の上にヒートシールによりシーラント層が積層された電極リード線部材を、この4方袋の中に入れて、60℃のオーブンに100時間保管後、電極リード線部材の保護層とシーラント層との層間接着強度(k2)を測定する。
ここで、事前に測定しておいた、電解液に暴露する前の電極リード線部材の保護層とシーラント層であるポリエチレン(PE)フィルムとの層間接着強度(k1)と、電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とした。
(測定装置)
・接着強度の測定装置:島津製作所製、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
【0036】
(実施例1)
リチウムイオン電池用の電極リード線部材の導出部として、厚みが200μmのアルミ板を50mm×60mmの寸法に切断したアルミ片を用いた。脱脂洗浄したこのアルミ片の表面に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を2wt%溶かした水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.5μmとなるように、10mm幅型のディスペンサーにて両面塗布し、保護層を積層した。更に、200℃のオーブンにて加熱乾燥し、保護層の樹脂を、焼き付けるのと同時に架橋化させ、実施例1の電極リード線部材を得た。この時に、実施例1の電極リード線部材の導出部の両表面の表層だけでなく、導出部の側縁部(両端面)にも保護層が形成されていることを確認した。
さらに、実施例1の導出部の外表面の保護層の表面上に、エポキシ基変性ポリエチレンフィルムの単層フィルム(品名/住友化学製ボンドファースト樹脂をフィルム製膜機で100μmに製膜したフィルムを使用)を、200℃×1秒×0.2MPa条件でヒートシールにて両面接合し、50℃の熱風オーブンに48時間保管し、保護層の上にヒートシール層を積層した。次に、そのヒートシール層の上に、ナイロンフィルム25μm/ウレタン接着剤3μm/アルミ箔(厚み40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレンフィルム(厚み50μm)からなる、厚みが118μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールして、実施例1の電池収納容器の一部分を作製した。
この実施例1の電池収納容器の一部分から接着強度測定用の試験片を採取し、ラミネートフィルム積層体と電極リード線部材との接着強度を測定したところ、56N/inchの接着強度を示した。
また、実施例1の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=89%であった。
【0037】
(実施例2)
リチウムイオン電池用の電極リード線部材として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面にニッケルスルファミン酸メッキを1〜5μmの厚みでメッキして、その一部に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を3wt%溶かした水溶液を用いて0.5μmの厚みで塗布し、保護層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥にて樹脂を焼き付けた。
さらに、その電極リード線部材の保護層の上に、エポキシ基変性ポリエチレンフィルム2層(品名/住友化学製ボンドファーストと、品名/ランダムコーポリマーポリプロピレン樹脂とを、6:4のブレンド比率で混練してポリマーアロイ化した後、フィルム製膜機にて、100μmに製膜したフィルムを使用)を200℃×1秒×0.2MPaのヒートシール条件により両面熱接着して、50℃の熱風オーブンに48時間保管し、保護層の上にヒートシール層を積層した。次に、実施例1と同様にして、ヒートシール層の上に、厚みが118μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールし、実施例2の電池収納容器の一部分を得て、ラミネートフィルム積層体と電極リード線部材との接着強度を測定したところ、54N/inchの接着強度を示した。
また、実施例2の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=88%であった。
【0038】
(実施例3)
リチウムイオン電池用の電極リード線部材として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面にニッケルスルファミン酸メッキを1〜5μmの厚みでメッキして、その一部に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を3wt%溶かした水溶液を用いて0.5μmの厚みで塗布し、保護層を積層し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥にて樹脂を焼き付けた。
さらに、その電極リード線部材の保護層の上に、エポキシ基変性ポリプロピレンフィルム2層(品名/三井化学(株)製、アドマー樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂に水酸基含有エポキシ化合物(品名/三菱化学 エピコート1001)を0.3wt%ブレンドコンパウンドして、ポリプロピレン樹脂の無水マレイン酸官能基に反応させてエポキシ基を導入したポリプロピレン樹脂をフィルム製膜機にて、100μmに製膜したフィルムを使用)を200℃×1秒×0.2MPaのヒートシール条件により両面熱接着して、50℃の熱風オーブンに48時間保管し、保護層の上にヒートシール層を積層した。次に、実施例1と同様にして、ヒートシール層の上に、厚みが118μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールし、実施例3の電池収納容器の一部分を得て、ラミネートフィルム積層体と電極リード線部材との接着強度を測定したところ、65N/inchの接着強度を示した。
また、実施例3の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=105%であった。
【0039】
(実施例4)
保護層の樹脂(水酸基を含有するポリマー)を、日本合成化学(株)製のGポリマー樹脂から、日本酢ビ・ポパール(株)製のJ−ポバールDF−20(商品名)に替えた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
保護層の樹脂(水酸基を含有するポリマー)を、日本合成化学(株)製のGポリマー樹脂から、日本カーバイド工業(株)製クロスマーH(商品名)に替えた以外は、実施例2と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
リチウムイオン電池用の電極リード線部材として、厚みが200μmのアルミ板の表面に、保護層を実施例1と同様にして形成した。その電極リード線部材の保護層の上に、無水マレイン酸変性ポリエチレンフィルム単層(品名/三井化学製アドマー樹脂を単層でフィルム製膜機にて、100μmに製膜したフィルムを使用)を200℃×1秒×0.2MPaのヒートシールにより両面熱接着して、50℃の熱風オーブンに48時間保管し、保護層の上にヒートシール層を積層した。次に、実施例1と同様な方法で、ヒートシール層の上に、厚みが118μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールし、比較例1の電極リード線部材及び電池収納容器の一部分を得て、アルミラミネートフィルムと電極リード線部材との接着強度を測定したところ、7N/inchと低い接着強度を示した。また、比較例1の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=50%以下であった。
【0041】
(比較例2)
リチウムイオン電池用の電極リード線部材として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面に2〜5μm程度のスルファミン酸ニッケルメッキを施し、その一部(図4)に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を2wt%混ぜた塗料を用いて0.5μmの厚みで塗布し、保護層を積層し、更に200℃のオーブンで加熱乾燥にて樹脂を焼き付けた。その後、保護層の上にヒートシール層を積層することなく、50℃の熱風オーブンに48時間保管した。次に、保護層の上にヒートシール層が形成されていないこと以外は、実施例1と同様にして、保護層の上に、厚みが118μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールし、比較例2の電極リード線部材及び電池収納容器の一部分を得た。
比較例2の電極リード線部材及び電池収納容器の一部分について、ラミネートフィルム積層体と電極リード線部材との接着強度を測定したところ、6N/inchの接着強度を示した。また、比較例2の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=30%以下であった。電極リード線部材とシーラント層とが剥離現象(デラミ)を起した。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1および実施例2及び実施例3は、水酸基を含有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を、2または3wt%混ぜた塗料を用いて、電極リード線部材の外表面に塗布し、保護層を積層している。また、実施例4及び実施例5は、水酸基を含有するポリマーである日本酢ビ・ポパール(株)製のJ−ポバールDF−20(商品名)や日本カーバイド工業(株)製のクロスマーHシリーズ(商品名)を1wt%、及びフッ化クロム(III)を、2または3wt%混ぜた塗料を用いている。さらに、保護層の上に、エポキシ基を有するポリオレフィンフィルムを200℃×1秒×0.2MPaのヒートシールにより両面に熱接着して、50℃の熱風オーブンに48時間保管したことから、電極リード線部材とシーラント層との接着強度が50N/inch以上である。もし、50℃の熱風オーブンに48時間保管しない場合は、接着強度は10N/inch以下であり、接着強度が足らない。また、シーラント層を熱接着した電極リード線部材だけでも、リチウムイオン電池の電解液に対しても耐性があり、接着強度も高かった。
比較例1は、電極リード線部材の外表面に、実施例1と同様の保護層を有するが、保護層の上に積層するシーラント層が、エポキシ基変性でなく、無水マレイン酸変性ポリエチレンであることから、リチウムイオン電池の電解液に対する耐性が低く、接着強度も低かった。
比較例2は、電極リード線部材の外表面に、実施例1と同様の保護層を有するが、保護層の上にヒートシール層が形成されていないことから、リチウムイオン電池の電解液に対する耐性が低く、接着強度も低かった。
【符号の説明】
【0044】
10…電池外装用積層体、11…基材樹脂フィルム、12…アルミニウム箔、13…シーラント層、15,16…接着剤層、17…リチウムイオン電池、18…電極リード線部材、19…側縁部、20…電池用外装容器、21…導出部、22…保護層、23…シーラント層、30…電池用載置容器、35…電池用収納容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ箔と樹脂フィルムとのラミネートフィルム積層体を外装材に用いてなる非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材であって、
金属製の導出部を備え、該導出部の外表面に、保護層とシーラント層とが順に積層されてなり、前記保護層が、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成されていることを特徴とする電極リード線部材。
【請求項2】
前記シーラント層が、熱接着性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂フィルムであり、前記導出部の外表面に熱接着されていることを特徴とする請求項1に記載の電極リード線部材。
【請求項3】
前記シーラント層が、多層または単層のフィルムであり、前記導出部の外表面に熱接着されており、且つ、少なくとも前記シーラント層の前記導出部との界面側の部分に、エポキシ官能基を有する熱接着性ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の電極リード線部材。
【請求項4】
前記フッ素化合物が、水溶性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極リード線部材。
【請求項5】
前記フッ素化合物が、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂を架橋させ、且つ、アルミニウムの表面を不動態化する物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極リード線部材。
【請求項6】
前記保護層が、前記導出部の外表面に印刷により帯状のパターンに形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極リード線部材。
【請求項7】
前記導出部の外表面に形成されている保護層が、熱処理により架橋または非晶化して、耐水性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極リード線部材。
【請求項8】
前記保護層と前記シーラント層とが、熱接着で積層された後、少なくとも両者の接着強度が10N/inch以上になるまで、熱処理もしくは室温保管してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極リード線部材。
【請求項9】
前記シーラント層の厚みが、50μm以上300μm以下であり、且つ、前記保護層の厚みが、0.01〜5μmであり、前記保護層とその上に積層された前記シーラント層との層間剥離強度が、JIS C6471に規定された引き剥がし測定方法Aにより測定し、10N/inch以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電極リード線部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12468(P2013−12468A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115570(P2012−115570)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】