説明

非水系電池用粘着テープ

【課題】ロール状粘着テープにおけるタケノコ現象による変形が有効に防止され、且つ下塗層が無くとも粘着剤層が基材に良好に接着している非水系電池用粘着テープを提供すること。
【解決手段】基材および粘着剤層を有する非水系電池用粘着テープであって、ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤(c)を含有する粘着剤から形成された粘着剤層を、基材の少なくとも片面に有する非水系電池用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電池用粘着テープに関する。なお、本発明において「非水系電池用テープ」とは、非水系電池を製造するために用いられる粘着テープを意味し、「非水系電池」とは、非水系電解液が封入される電池を意味する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の非水系電池の製造では、コア止め用、電極取り出し口の絶縁用、端末止め用若しくは絶縁スペーサー用等のため、電池ケース内への電極の詰め込み適性を改善するため、または極板に存在するバリがセパレータを貫通することによる電極間の短絡を防止するために、粘着テープが使用される。このような非水系電池用粘着テープとしては、アクリル系粘着剤層を有する粘着テープまたは天然ゴム系粘着剤層を有する粘着テープ(以下、それぞれを「アクリル系粘着テープ」または「天然ゴム系粘着テープ」と略称することがある)が多用されている。
【0003】
しかし、非水系電池用粘着テープでは、基材から粘着剤層がはみ出す現象(いわゆる糊はみ出し)が問題になる。詳しくは、糊はみ出しの結果、アクリル系粘着テープでは粘着剤層に含まれる官能基が、および天然ゴム系粘着テープでは粘着剤層に含まれる二重結合が、電解液中の電解質と化学反応を起こして、非水形電池の劣化を引き起こすことがある。このような電池の劣化を防止するために、例えば、特許文献1には、ポリイソブチレンゴムおよび飽和炭化水素樹脂を含有する粘着剤層をポリプロピレンフィルム基材面に有する電池用粘着テープが開示されている。
【0004】
また、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン系粘着剤(特にポリイソブチレン等のゴムを含有するゴム系粘着剤)は、一般的な基材(例えば、ポリエステル基材またはポリオレフィン基材)に対する接着性が悪いことが知られている(以下、「基材に対する接着性」を「投錨性」と略称することがある)。投錨性を向上させるために、例えば、特許文献2には、ゴム系粘着剤層と基材(支持体)との間に下塗層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−165557号公報
【特許文献2】特開平4−370179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘着テープは、一般に、基材に粘着剤溶液を塗布し、加熱乾燥で溶媒を除去して基材上に粘着剤層を形成した後、得られた粘着テープをロール状に巻き取ることによって製造される。この巻取りの際には、粘着テープに残留伸びが生じることがある。その結果、ロール状粘着テープでは、残留伸びのために巻き芯に向かってテンションが発生し、中心部が押し出された、まるでタケノコのような形状になることがある。このような現象はタケノコ現象と呼ばれる。この点、粘着テープの粘着剤層に架橋構造が無い場合(例えば、特許文献1に記載の粘着テープ)、下記実施例欄に示すように、ロール状粘着テープにタケノコ現象による変形が生ずる。
【0007】
また上述したように、ポリオレフィン系粘着剤は投錨性が悪いことが知られているが、特許文献2に記載されているように下塗層を設けることは、そのための工程および設備が必要となるため好ましくない。
【0008】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、ロール状粘着テープにおけるタケノコ現象による変形が有効に防止され、且つ下塗層が無くとも粘着剤層が基材に良好に接着している非水系電池用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤(c)を含有する粘着剤から形成された粘着剤層を有する非水系電池用粘着テープは、上記目的を達成し得ることを見出した。この知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0010】
[1] 基材および粘着剤層を有する非水系電池用粘着テープであって、
ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤(c)を含有する粘着剤から形成された粘着剤層を、基材の少なくとも片面に有する非水系電池用粘着テープ。
[2] 架橋剤(c)が、イソシアネートである上記[1]に記載の非水系電池用粘着テープ。
[3] 粘着剤中の架橋剤(c)の含有量が、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、0.01〜150重量部である上記[1]または[2]に記載の非水系電池用粘着テープ。
[4] 下記式(I)におけるA値が、0.25〜14250である上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の非水系電池用粘着テープ。
A=水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)×ポリオレフィン(a)100重量部に対する粘着剤中の水酸基含有ポリオレフィン(b)の重量部数
・・・ (I)
[5] ポリオレフィン(a)が、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を有するポリマーである上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の非水系電池用粘着テープ。
[6] 粘着剤層の厚さが、1〜100μmである上記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の非水系電池用粘着テープ。
[7] エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの重量比が1:1である電解液で抽出したときの粘着剤層のゲル分率が、75%以上である上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の非水系電池用粘着テープ。
[8] 突き刺し強度が300gf以上である上記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の非水系電池用粘着テープ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非水系電池用粘着テープは、タケノコ現象による変形が有効に防止され、且つ良好な投錨性を示すことができる。また、本発明の非水系電池用粘着テープは、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン系粘着剤から粘着剤層が形成されているため、アクリル系粘着テープおよび天然ゴム系粘着テープに比べて、非水系電池に対する悪影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例および比較例で調製した粘着テープの投錨性の評価において、粘着テープの粘着剤層と基材とを剥離するやり方を示す概略図である。
【図2】実施例および比較例で調製したロール状粘着テープのタケノコ変形率の評価において、測定のために使用したABS板を示す概略図(図2(a))、保管前のロール状粘着テープの全幅(A0)を示す概略図(図2(b))、および保管後のロール状テープの全幅(A1)を示す概略図(図2(c))である。
【図3】実施例および比較例で調製した粘着テープの突き刺し強度の測定法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の非水系電池用粘着テープは、基材および粘着剤層を有する。まず、粘着剤層を形成する粘着剤の各成分(ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)、架橋剤(c)および任意成分)を説明し、次いで粘着剤層および基材を説明する。
【0014】
[ポリオレフィン(a)]
粘着剤は、1種または2種以上のポリオレフィン(a)を含有する。なお、本発明において「ポリオレフィン」とは、オレフィンに由来する構成単位を有するポリマーを意味する。また、本発明において「オレフィン」には、スチレン等の芳香族ビニル化合物も含まれる。さらに、本発明において「ポリマー」とは、単独重合体および共重合体の両方を指す。ポリオレフィン(a)としては、他の成分とともに有機溶媒に溶解して基材に塗布できる限り、あらゆるものを使用することができる。
【0015】
ポリオレフィン(a)としては、エチレン、プロピレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる一つの単量体から形成されるα−オレフィン単独重合体が挙げられる。炭素数が4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。α−オレフィン単独重合体としては、プロピレン単独重合体(狭義のポリプロピレン)が好ましい。プロピレン単独重合体としては、例えば、アモルファスポリプロピレン等が挙げられる。
【0016】
また、ポリオレフィン(a)としては、例えば、エチレン、プロピレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも二つの単量体から形成されるα−オレフィン共重合体が挙げられる。これらの中でも、エチレンを主たる単量体とする共重合体(即ち、エチレン系α−オレフィン共重合体)、およびプロピレンを主たる単量体とする共重合体(即ち、プロピレン系α−オレフィン共重合体)が好ましい。α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0017】
エチレン系α−オレフィン共重合体のエチレン構成単位量は、例えば50〜95モル%、好ましくは70〜95モル%である。エチレン系α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位としては、1−ブテン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体から形成されるものが好ましい。特に好ましいエチレン系α−オレフィン共重合体として、エチレン−1−ブテン共重合体およびエチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。なお、このようなエチレン−1−ブテン共重合体は、エチレンおよび1−ブテン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。同様に、エチレン−プロピレン共重合体は、エチレンおよびプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。このような共重合体は、例えば、遷移金属触媒成分(例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物)と有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0018】
プロピレン系α−オレフィン共重合体のプロピレン構成単位量は、例えば50モル%超95モル%以下、好ましくは70〜95モル%である。また、プロピレン系α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体から形成されるものが好ましい。特に好ましいプロピレン系α−オレフィン共重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体である。なお、このプロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレンおよびエチレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。プロピレン系α−オレフィン共重合体は、例えば特開2000−191862に記載されているように、メタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0019】
α−オレフィン共重合体として、市販品を使用することができる。エチレン系α−オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ(いずれも三井化学社製)、エンゲージ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。また、プロピレン系α−オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマーXMシリーズ(三井化学社製)等が挙げられる。
【0020】
また、ポリオレフィン(a)として、ポリメチルペンテンも使用することができる。ポリメチルペンテンとしては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、および4−メチル−1−ペンテンとそれ以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。ポリメチルペンテン共重合体の4−メチル−1−ペンテン構成単位量は、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは70〜95モル%である。ポリメチルペンテンは、結晶性重合体であってもよい。ポリメチルペンテン共重合体中のα−オレフィン構成単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンに由来するものが好ましい。これらの中でも、4−メチル−1−ペンテンと良好な共重合性を示す1−デセン、1−テトラデセンおよび1−オクタデセンがより好ましい。なお、ポリメチルペンテンの市販品としては、例えば、TPX−S(4−メチルペンテン−1−α−オレフィン共重合体、三井化学社製)が挙げられる。
【0021】
有機溶媒に溶解する限り、ポリオレフィン(a)として、ポリイソプレンおよびポリブタジエン等のジエン系ゴムの水添物も使用することができる。
【0022】
また、ポリオレフィン(a)としては、例えば、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位(以下、「芳香族ビニル化合物単位」と略称することがある)を主に含有してなるブロックAと、イソプレンに由来する構成単位(以下、「イソプレン単位」と略称することがある)および1,3−ブタジエンに由来する構成単位(以下、「1,3−ブタジエン単位」と略称することがある)からなるブロックBとからなるブロック共重合体の水添物(以下、「水添TPE」と略称することがある)が挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルピリジンなどが挙げられる。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上の芳香族ビニル化合物を用いる場合には、それらは、ブロックA中でブロック構造を形成していてもよく、ランダム構造を形成していてもよい。
【0024】
ブロックAは、芳香族ビニル化合物単位を主に含有するが、イソプレンおよびブタジエンなどのジエン系炭化水素に由来する構成単位を含有していてもよい。これらジエン系炭化水素に由来する構成単位の量は、ブロックA中に20重量%以下であることが好ましい。この量が20重量%を超えると、粘着剤層の凝集力が低下する。その結果、粘着テープの被着体への貼合せが1度でうまくいかず、粘着テープを剥がして、貼り直す際に、粘着剤層の一部または全部が被着体に残る現象(いわゆる糊残り)が発生しやすくなる傾向にある。また、これらジエン系炭化水素は、ブロックA中で、ブロック構造を形成していてもよく、ランダム構造を形成していてもよい。
【0025】
ブロックBは、イソプレン単位および1,3−ブタジエン単位からなる。イソプレンおよび1,3−ブタジエンの重合形態は、ランダム共重合、ブロック共重合またはテーパーブロック共重合のいずれでもよい。また、イソプレン単位および1,3−ブタジエン単位のエチレン性二重結合は、水添(水素添加)されており、且つその水添率は90%以上であることが好ましい。この水添率は、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上である。水添率が90%未満である場合には、非水系電池に悪影響を及ぼす場合がある。
【0026】
水添TPEとして、市販品を使用することができる。水添TPEの市販品としては、例えば、クラレ社製のセプトン4030(スチレン・1,3−ブタジエン−イソプレン・スチレンのブロック共重合体の水添物、共重合体中のスチレン構成単位量:13重量%、1,3−ブタジエン−イソプレンブロック中の1,3−ブタジエン構成単位量:45重量%)およびセプトン4033(スチレン・1,3−ブタジエン−イソプレン・スチレンのブロック共重合体の水添物、共重合体中のスチレン構成単位量:30重量%、1,3−ブタジエン−イソプレンブロック中の1,3−ブタジエン構成単位量:50重量%)等が挙げられる。
【0027】
また、ポリオレフィン(a)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用してもよい。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、非水系電池の性能劣化を防止するために、エチレン性二重結合を水添した物を用いるのが好ましい。そのような水添物としては、例えば、スチレン・エチレン−ブチレン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン−プロピレン共重合体(SEP)、スチレン・ブチレン共重合体等のAB型ジブロック共重合体の水添物;スチレン・エチレン−ブチレン共重合体・スチレン(SEBS)、スチレン・エチレン−プロピレン共重合体・スチレン(SEPS)、スチレン・エチレン−ブチレン共重合体・スチレン・エチレン−ブチレン共重合体(SEBSEB)、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体等のABA型トリブロック共重合体またはABAB型テトラブロック共重合体の水添物;スチレン・エチレン−ブチレンランダム共重合体(HSBR)の水添物;等が挙げられる。
【0028】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体の水添物;スチレン・エチレン−ブチレン共重合体・オレフィン結晶(SEBC)等のABC型のスチレン・オレフィン結晶系ブロック共重合体;などが挙げられる。
【0029】
水添TPEとスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物をポリオレフィン(a)として使用する場合、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、水添TPEおよびスチレン系熱可塑性エラストマーの合計中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。この含有量が50重量%以下であれば、貼り直しの際に被着体への糊残りを充分に抑制することができる。
【0030】
また、ポリオレフィン(a)としては、イソブチレン系ポリマーが挙げられる。イソブチレン系ポリマーとしては、イソブチレン単独重合体およびイソブチレン共重合体(即ち、イソブチレンと他の単量体との共重合体)のいずれでもよい。イソブチレン共重合体中のイソブチレンに由来する構成単位量は、好ましくは50重量%以上である。イソブチレン共重合体としては、例えば、イソブチレンとノルマルブチレンとのランダム共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴムなど)、並びにこれらの加硫物および変性物などが挙げられる。イソブチレン系ポリマーとしては、単独重合体であるポリイソブチレンが好ましい。
【0031】
ポリオレフィン(a)は、好ましくは、プロピレン、ブテン(ブチレンともいう)、ヘキセンおよびオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を有するポリマー(以下「ポリオレフィン(a−1)」と記載する)である。前記のブテン、ヘキセンおよびオクテンは、直鎖状および分枝鎖状のいずれでもよい。また、ポリオレフィン(a−1)は、単独重合体および共重合体のいずれでもよい。ポリオレフィン(a−1)としては、上述したプロピレン単独重合体(狭義のポリプロピレン)、プロピレン系α−オレフィン共重合体、水添TPEおよびイソブチレン系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、水添TPEおよびイソブチレン系ポリマーが好ましく、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)およびポリイソブチレンがより好ましい。
【0032】
ポリオレフィン(a)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは4,000〜800,000である。この数平均分子量が3,000未満であると、凝集力が低下し、貼り直しの際に被着体に対して糊残りしやすくなる場合があり、一方、1,000,000を超えると、粘着力が低くなり所望の粘着力を得られない場合がある。
【0033】
ポリオレフィン(a)の含有量は、粘着剤中、好ましくは10〜99.95重量%、より好ましくは20〜99.5重量%である。この含有量が10重量%未満であると、粘着力が低くなり、所望の粘着力を得られない場合があり、一方、99.95重量%を超えると、基材との密着性が悪くなる場合がある。なお、含有量の基準となる「粘着剤」の中には、有機溶媒の量は含まれない。
【0034】
[水酸基含有ポリオレフィン(b)]
粘着剤は、1種または2種以上の水酸基含有ポリオレフィン(b)を含有する。水酸基含有ポリオレフィン(b)は、粘着剤層の形成の際に、架橋剤(c)と反応させるために用いられる。水酸基含有ポリオレフィン(b)としては、ポリオレフィンとの相溶性が良いものが好ましい。
【0035】
水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜500,000、より好ましくは1,000〜200,000、さらに好ましくは1,200〜150,000である。水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量が500,000を超えると、架橋剤(c)との溶解性が低いために、粘着剤層における架橋剤(c)を主体とする層(即ち、ポリオレフィン(a)が少ない層)にほとんど溶解できず、大部分の水酸基含有ポリオレフィン(b)が、ポリオレフィン(a)を主体とする層に溶解し、架橋剤(c)と反応しにくくなる。その結果、充分な投錨性が得られにくくなる場合がある。逆に、水酸基含有ポリオレフィン(b)の数平均分子量が500未満では、高温時に粘着剤層の表面に水酸基含有ポリオレフィン(b)がブリードアウトしやすくなり、粘着特性を悪化させる場合がある。
【0036】
水酸基含有ポリオレフィン(b)は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、および水添ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン(a)との相溶性の観点から、水添ポリイソプレンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオールおよび水添ポリブタジエンポリオールが好ましい。なお、二重結合を有するポリブタジエンポリオール等を水酸基含有ポリオレフィン(b)として使用する場合は、非水系電池への悪影響を避けるため、二重結合を有する水酸基含有ポリオレフィン(b)の含有量は、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、好ましくは80重量部以下、より好ましくは50重量部以下に制限することが推奨される。
【0037】
また、水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)は、粘着剤層の強度の観点から、5以上であることが好ましく、また、粘着剤層の粘着力の観点から、95以下であることが好ましい。水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)は、より好ましくは10〜80である。
【0038】
水酸基含有ポリオレフィン(b)は、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、Poly bd R−45HT(末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量2800、水酸基価46.6mgKOH/g、出光興産社製)、Poly ip(末端に水酸基を有する液状ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価46.6mgKOH/g、出光興産社製)、エポール(末端に水酸基を有する液状の水添ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価50.5mgKOH/g、出光興産社製)、GI−1000(水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量1500、水酸基価60〜75mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−2000(水酸基を有する液状の水添ポリブタジエン、数平均分子量2100、水酸基価40〜55mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−3000(水酸基を有する液状ポリブタジエン、数平均分子量3000、水酸基価25〜35mgKOH/g、日本曹達社製)、ユニストールP−801(水酸基含有ポリオレフィン、数平均分子量5000以上、水酸基価40mgKOH/g、三井化学社製)、ユニストールP−901(水酸基含有ポリオレフィン、数平均分子量5000以上、水酸基価50mgKOH/g、三井化学社製)などが挙げられる。
【0039】
粘着剤中の水酸基含有ポリオレフィン(b)の含有量は、下記式(I)におけるA値が、好ましくは0.25〜14250、より好ましくは0.5〜12000、さらに好ましくは1〜2500となるように設定される。
A=水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)×ポリオレフィン(a)100重量部に対する粘着剤中の水酸基含有ポリオレフィン(b)の重量部数
・・・ (I)
A値が0.25より小さいと、粘着剤層の強度が充分ではなくなる傾向があり、14250より大きいと、粘着力が下がる傾向がある。
【0040】
[架橋剤(c)]
粘着剤は、1種または2種以上の架橋剤(c)を含有する。架橋剤(c)は、粘着剤層の形成の際に、水酸基含有ポリオレフィン(b)と反応させるために用いられる。そのため架橋剤(c)は、水酸基と反応し得る官能基を有する。水酸基と反応し得る官能基としては、例えば、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)およびカルボキシ基などが挙げられる。反応性の観点から、水酸基と反応し得る官能基は、好ましくはイソシアネート基である。即ち、架橋剤(c)は、好ましくはイソシアネートである。
【0041】
イソシアネートは、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートのいずれでもよい。イソシアネート、好ましくは芳香族イソシアネートである。
【0042】
粘着剤層の強度などの観点から、イソシアネートは、好ましくは1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートであり、より好ましくは芳香族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくは芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体および脂肪族ジイソシアネートの多価アルコール付加体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0043】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、反応性および得られる粘着剤層の投錨性の観点から、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0044】
脂肪族ジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、反応性および得られる粘着剤層の投錨性の観点から、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0045】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族多価アルコール等が挙げられる。これらの中で、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0046】
ポリイソシアネートとしては、例えば、前記多価アルコールと過剰量の前記ジイソシアネートとを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を含有する化合物が挙げられる。
【0047】
架橋剤(c)の含有量は、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、好ましくは0.01〜150重量部であり、より好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。この含有量が0.01重量部未満であると、粘着剤層の投錨性(即ち、基材への接着性)が低くなる場合があり、一方、150重量部を越えると、粘着剤溶液のポットライフが短くなったり、粘着剤層の粘着性(即ち、被着体への接着性)が低くなったりするなどの悪影響が出てくる場合がある。
【0048】
[粘着剤の任意成分]
粘着剤は、1種または2種以上の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、水酸基含有ポリオレフィン(b)とイソシアネート(即ち、架橋剤(c))との反応を促進するためのウレタン化触媒が挙げられる。
【0049】
粘着剤は、1種または2種以上のウレタン化触媒を含有していてもよい。ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの錫化合物、亜鉛、コバルト、銅、ビスマス等の金属のカルボン酸塩、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン化合物、チタン、ジルコニウム等の金属のキレート化合物などが挙げられる。また、有機酸ビスマス塩(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸およびこれらの2種以上を主成分とする樹脂酸ビスマスなどの脂環族系有機酸のビスマス塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などの芳香族系有機酸のビスマス塩等)も使用できる。これらの中でも、粘着剤への相溶性およびウレタン化反応の反応性の点で、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートおよび樹脂酸ビスマス塩が好ましい。
【0050】
ウレタン化触媒の含有量は、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、好ましくは0.05〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。この含有量が0.05重量部未満であると、触媒としての効果が充分に発揮されない場合がある。一方、この含有量が2.0重量部を超えると、粘着剤溶液のポットライフが短くなるなどの不具合が生じる場合がある。なお、ここでいう触媒の含有量は、触媒(即ち、有効成分)のみの量を指し、例えば、市販の触媒溶液を使用する場合、溶媒量を除いた触媒のみの量を意味する。
【0051】
粘着剤は、その他必要に応じて、前記ポリオレフィン(a)および水酸基含有ポリオレフィン(b)以外の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を含有していてもよい。
【0052】
[粘着剤層]
粘着剤層は、例えば、上述の粘着剤成分を溶媒に溶解させて粘着剤溶液を得、得られた粘着剤溶液を基材に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。粘着剤溶液の固形分は、本発明において特に限定されないが、通常、5〜50重量%の範囲内である。
【0053】
粘着剤成分を均一に溶解し得るものである限り、溶媒に特に限定はない。但し、粘着剤はポリオレフィン(a)を含有するので、溶媒は、好ましくは、1種のみの炭化水素系溶媒、2種以上の炭化水素系溶媒の混合溶媒、または炭化水素系溶媒とその他の溶媒との混合溶媒である。混合溶媒を使用する場合、炭化水素系溶媒の含有量は、混合溶媒中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。炭化水素系溶媒としては、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素が挙げられる。その他の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0054】
粘着剤溶液の塗布方法としては特に限定は無く、あらゆる公知の方法、例えばキスロールコーター、ビードコーター、ロッドコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いる方法を使用できる。乾燥方法についても特に限定は無く、あらゆる公知の方法を使用できる。一般的な乾燥方法として、熱風乾燥が挙げられる。熱風乾燥の温度は、基材の耐熱性によっても変わり得るが、通常60〜150℃程度である。
【0055】
粘着テープにおける粘着剤層の厚さ(即ち、乾燥後の厚さ)は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μmである。この厚さが1μm未満であると、粘着性(即ち、粘着剤層の被着体への接着性)が不充分となる場合がある。一方、この厚さが100μmを超えると、貼り直しの際に被着体への糊残りが生じる場合がある。
【0056】
本発明の非水系電解用粘着テープは、非水系電池の製造に使用されるため、非水系電解液に接触することがある。非水系電池の性能劣化を防止するために、非水系電解液(例えば、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合液)に対して、粘着剤層は溶出分が少ない(即ち、ゲル分率が高い)ことが好ましい。そのため、本発明の非水系電池用粘着テープにおいて、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの重量比が1:1である電解液で抽出したときの粘着剤層のゲル分率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。このゲル分率が75%未満であると、電解液に対する粘着剤層の溶出分が多すぎて、非水系電池の劣化を抑制することが困難な場合がある。
【0057】
本発明において、粘着剤層のゲル分率とは、以下のようにして測定および算出した値である。まず、粘着テープから約0.2g以下の粘着剤層を採取し、電解液に浸漬する前の粘着剤層の重量(W0)を測定する。次いで、採取した粘着剤層を、電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(重量比)、温度60℃、体積50mL)に3日間浸漬して、粘着剤層の溶解性分を抽出する。浸漬後に、溶けなかった粘着剤層を取り出し、この粘着剤層を120℃で1時間加熱することによって粘着剤層から電解液を除去した後、電解液に浸漬した後の粘着剤層の重量(W1)を測定する。そして、下記式によってゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=100×W1/W0
0:電解液浸漬前の粘着剤層の重量(g)
1:電解液浸漬後の粘着剤層の重量(g)
上記のようにして、ゲル分率を3回測定および算出し、その平均値を本発明におけるゲル分率の値として採用する。
【0058】
[基材]
本発明では、基材に特に限定はなく、各種基材を用いることができる。基材としては、例えば、布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;各種の紙などの紙系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;各種樹脂によるフィルムまたはシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体;およびこれらの積層体;などが挙げられる。プラスチック系基材の材質としては、例えば、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)などのプラスチック系基材が、電解液に対して分解および劣化しにくいため好ましい。なお、基材の形態は、単層でもよく、複層でもよい。
【0059】
また、投錨性(即ち、粘着剤層と基材との接着性)を高めるために、基材表面は、必要に応じて、公知の化学的または物理的な表面処理(例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等)が施されていてもよい。
【0060】
基材の厚さは、特に限定されないが、例えば8〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度である。基材の厚さが薄すぎると、粘着テープの強度が低くなりすぎ、実用性を損なう場合がある。一方、基材の厚さが厚すぎると、非水系電池内に占める粘着テープの体積が大きくなりすぎて、電池の高容量化に悪影響を及ぼす場合がある。
【0061】
基材としては、低吸水性の基材が好ましい。高吸水性の基材を用いると、非水系電解液中の溶質成分の分解を促進し、非水系電池の特性および寿命に悪影響を与える場合がある。低級水性の基材としては、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン等からなるプラスチック系基材が挙げられる。
【0062】
基材としては、電気抵抗が高い基材、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリプロピレン等からなるプラスチック系基材が好ましい。
【0063】
基材としては、突き刺し強度が高い基材が好ましい。このような基材を用いることによって、突き刺し強度が高い粘着テープが得られる。突き刺し強度が低い粘着テープでは、極板に存在するバリや混入異物からセパレータを充分に保護することができず、セパレーターに孔が開く場合がある。その結果、非水系電池において、正の電極板および負の電極板の短絡(ショート)を防止できなくなる場合がある。
【0064】
粘着テープの突き刺し強度および基材の突き刺し強度は、いずれも、好ましくは300gf以上、より好ましくは450gf以上である。また、これらの突き刺し強度の上限は、例えば1400gfである。突き刺し強度が高い基材としては、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリプロピレン等からなるプラスチック系基材が挙げられる。
【0065】
本発明において、粘着テープの突き刺し強度とは、以下のようにして測定および算出した値である。まず円形孔(直径11±0.5mm)を開けた2枚の固定板で粘着テープを固定する。温度23±2℃の雰囲気下で、円形孔の中央部から突き刺し針(針径0.5mm)を2mm/sの速度で突き刺し、突き刺し針が粘着テープを貫通する時の最大荷重(gf)を測定する。この最大荷重を10回測定し、その平均値を「突き刺し強度」とする。なお、基材の突き刺し強度の測定および算出法は、粘着テープを基材に変えること以外は、前記の粘着テープの突き刺し強度の測定および算出法と同じである。
【0066】
[剥離剤層]
本発明の粘着テープは、粘着剤層を保護するために、剥離剤層を有していてもよい。例えば、本発明の粘着テープは、粘着剤層とは反対側の基材上に、剥離剤層を有していてもよい(即ち、「粘着剤層/基材/剥離剤層」の構成)。このような構成において、前記剥離剤層は背面処理層と呼ばれることがあり、前記粘着テープは背面処理層付き粘着テープと呼ばれることがある。
【0067】
また、本発明の粘着テープの粘着剤層を保護するために、基材上に剥離剤層が形成された離型材を用いてもよい。詳しくは、本発明の粘着テープの粘着剤層と、離型材の剥離剤層とを接触させることによって、粘着剤層を保護してもよい(即ち、「粘着テープの基材/粘着剤層/剥離剤層/離型材の基材」の構成)。このような構成の粘着テープは、離型材付き粘着テープと呼ばれることがある。
【0068】
[用途]
本発明の非水系電池用粘着テープは、非水系電池(即ち、非水系電解液が封入される電池)を製造するために使用される。非水系電解液に特に限定は無く、例えば、環状カーボネート(例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)など)と、鎖状カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)など)との混合液などが挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合液が代表的である。本発明の非水系電池用粘着テープは、リチウムイオン電池の製造に用いられることが好ましい。
【0069】
[物性、特性等]
本明細書中の物性および特性等は、以下の方法での測定値である。
(1)数平均分子量
ASTM D2503に準拠して測定した値である。
(2)水酸基価
JIS K1557:1970に準拠して測定した値である。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0071】
[粘着剤溶液の調製]
表1に示す部数で各成分を混合し、これをトルエンに溶解させて、固形分が10重量%である粘着剤溶液を調製した。なお、表1に示す各成分の部数には、溶媒は含まれない。即ち、入手した成分が溶液である場合、表1に示す部数は、その溶液中に含まれる成分自体(固形分)の部数を示す。また、表1には上記式(I)におけるA値を記載する。
【0072】
表1における各成分の略号の意味は、以下の通りである。
(1)ポリオレフィン(a)
B80:BASFジャパン社製「オパノールB80」(ポリイソブチレン、数平均分子量180,000)
B12:BASFジャパン社製「オパノールB12」(ポリイソブチレン、数平均分子量13,000)
(2)水酸基含有ポリオレフィン(b)
エポール:出光興産社製「エポール」(末端に水酸基を有する液状の水添ポリイソプレン、数平均分子量2500、水酸基価50.5mgKOH/g)
(3)架橋剤(c)
C/L:日本ポリウレタン社製「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75重量%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個
【0073】
[粘着テープの調製]
上記のようにして調製した粘着剤溶液をポンプで送り出して、リバースロールコーターを用いて巻回させた基材の内面に塗布し、粘着剤溶液を塗布した基材を、乾燥塔において80℃で乾燥させて粘着剤層を形成し、次いで粘着剤層を形成した基材を巻き取ることによって、原反(即ち、製品形状に加工する前のロール状粘着テープ)を得た。
【0074】
粘着テープの基材としては、東レ社製「トレファンBO2548」(両面コロナ放電処理された二軸延伸ポリプロピレンフイルム、厚さ30μm)を用いた。また、粘着テープの粘着剤層の乾燥後の厚さ(即ち、糊厚)が7μmになるように、粘着剤溶液を塗布した。また、原反は700m巻き取った。この巻取りの際に、基材の外面に長鎖アルキル系剥離剤を塗布し、これを乾燥させることによって、剥離剤層(背面処理層)を形成した。
【0075】
上記のようにして得られた原反を、間隔幅を15mmに調整したスリット刃にて切断しながら巻き芯(3インチコア芯、幅15mm、内径76mm)に巻き取ることによって、幅15mmであるロール状粘着テープを調製した。500m巻き取ったロール状粘着テープを、後述するタケノコ変形率の評価用サンプルとして使用した。
【0076】
[粘着テープの評価]
得られた粘着テープの投錨性、タケノコ変形率および突き刺し強度、並びに粘着剤層のゲル分率を、以下のようにして評価した。
【0077】
(1)投錨性
幅15mmの粘着テープの基材に、両面テープでSUS板を取り付けて、粘着テープに裏打ちを施した。この粘着テープの粘着剤層に、幅14mmにカットした日東電工社製「No.315テープ」(ゴム系粘着剤)の糊面が合わさるようにして、サンプルである粘着テープとNo.315テープとを貼り合わせた。この際、これらのテープの間に、あて紙を挟んだ。あて紙をチャックで担持して、引張試験機にてNo.315テープを180°方向に100m/minの速さで引っ張ることによって、粘着テープの基材と粘着剤層とを剥離した。剥離に必要な力(即ち、基材と粘着剤層とを剥離させるのに必要な投錨力)を測定した。結果を表1に示す。なお、粘着テープの粘着剤層と基材とを剥離するやり方の概略を、図1に示す。
【0078】
粘着剤層と基材との剥離形態について、粘着剤層を剥離した後の粘着テープ基材表面を触って、粘着剤の感触があったもの(即ち、剥離の際に粘着剤層が基材に残ったもの)を「凝集破壊」と判定し、基材の感触しかなかったもの(即ち、粘着剤層が全て剥離されたもの)を「投錨破壊」と判定した。結果を表1に示す。
【0079】
(2)タケノコ変形率
上記のようにして調製したロール状粘着テープ(幅15mm、長さ500m)の芯に紐を通し、この紐にかけるようにして、粘着テープを宙吊りの状態にした。宙吊りの粘着テープを、温度40℃および湿度92%RHの雰囲気で32日間保管した。保管前後のロール状粘着テープの全幅を測定し、下記式によってタケノコ変形率(%)を算出した。結果を表1に示す。
タケノコ変形率(%)=100×(A1−A0)/A0
0:保管前のロール状粘着テープの全幅(mm)
1:保管後のロール状粘着テープの全幅(mm)
【0080】
なお、保管前後のロール状粘着テープの全幅は、以下のようにして測定した。まず、2枚のABS板(2mm×210mm×297mm)を用意し、これらのABS板の中心部に正方形の孔(4cm×4cm)をくり抜いた(図2(a))。これらのABS板で保管前後のロール状粘着テープをはさみ(図2(b)および図2(c))、ABS板の正方形の孔の四隅においてロール状粘着テープの全幅を測定し、四つの測定値を平均することによって、ロール状粘着テープの全幅を算出した。
【0081】
(3)突き刺し強度
圧縮試験機(商品名「KES−G5」、カトーテック(株)製、固定版の円形孔の直径11.28mm)を使用し、上述した方法によって、粘着テープの突き刺し強度を測定した。結果を表1に示す。なお、突き刺し強度の測定法の概略を、図3に示す。
【0082】
(4)粘着剤層のゲル分率
粘着テープから粘着剤層を約0.0700g採取し、上述した方法によって、粘着剤層のゲル分率を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示す結果から分かるように、ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および架橋剤(c)を含有する粘着剤から形成された粘着剤層を有する粘着テープ(実施例1)では、基材と粘着剤層との剥離形態が「凝集破壊」であり、投錨性に優れている。これに対して、水酸基含有ポリオレフィン(b)および架橋剤(c)のいずれか一方または両方を含有しない粘着剤層から形成された粘着剤層を有する粘着テープ(比較例1〜3)では、「投錨破壊」が生じており、投錨性に劣っている。
【0085】
さらに、タケノコ変形率が、実施例1の粘着テープでは1%であるのに対して、比較例1の粘着テープでは11%である。この結果から、本発明の粘着テープは、タケノコ現象による変形を有効に抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の非水系電池用粘着テープは、非水系電池、特にリチウムイオン電池の製造において有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 SUS板
2 基材
3 粘着剤層
4 粘着テープ
5 日東電工社製「No.315テープ」
6 あて紙
7 ABS板
8 正方形の孔
9 保管前のロール状粘着テープ
10 保管後のロール状粘着テープ
11 固定板
12 円形孔の直径(11.28mm)
13 突き刺し針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および粘着剤層を有する非水系電池用粘着テープであって、
ポリオレフィン(a)、水酸基含有ポリオレフィン(b)および水酸基と反応し得る官能基を有する架橋剤(c)を含有する粘着剤から形成された粘着剤層を、基材の少なくとも片面に有する非水系電池用粘着テープ。
【請求項2】
架橋剤(c)が、イソシアネートである請求項1に記載の非水系電池用粘着テープ。
【請求項3】
粘着剤中の架橋剤(c)の含有量が、ポリオレフィン(a)100重量部に対して、0.01〜150重量部である請求項1または2に記載の非水系電池用粘着テープ。
【請求項4】
下記式(I)におけるA値が、0.25〜14250である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水系電池用粘着テープ。
A=水酸基含有ポリオレフィン(b)の水酸基価(mgKOH/g)×ポリオレフィン(a)100重量部に対する粘着剤中の水酸基含有ポリオレフィン(b)の重量部数
・・・ (I)
【請求項5】
ポリオレフィン(a)が、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を有するポリマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水系電池用粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤層の厚さが、1〜100μmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水系電池用粘着テープ。
【請求項7】
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの重量比が1:1である電解液で抽出したときの粘着剤層のゲル分率が、75%以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水系電池用粘着テープ。
【請求項8】
突き刺し強度が300gf以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系電池用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−164489(P2012−164489A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23222(P2011−23222)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】