非水電解液二次電池用負極、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池用負極の製造方法
【課題】低減された製造コストで製造でき、黒鉛の充填密度の高く品質が安定した非水電解液二次電池用負極を提供する。
【解決手段】本発明の非水電解液二次電池用負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明の非水電解液二次電池用負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用負極、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特に、リチウムイオン二次電池の負極活物質として、単位体積当たりのエネルギー密度が高い黒鉛を使用することがよく知られている。中でも、メソフェーズ小球状黒鉛が初期充電特性や電極の充填性が高いことから一般的に負極活物質として使われている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、メソフェーズ小球状黒鉛は、複雑なプロセスを経て製造されているため、高価である上、耐久性としても十分に満足できるレベルを有していなかった。このため、より負極活物質に最適な黒鉛材料の模索が行われている。
負極活物質に適した黒鉛材料として、製造コストが安く、耐久性の良いコークスを黒鉛化したコークス系黒鉛が知られるようになっており、開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−140795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コークス系黒鉛は、硬度が高いため形状のコントロールが難しい。さらに、負極活物質層を形成するためのコークス系黒鉛を含むスラリーの流動性は一般的に良くないため、負極活物質層の黒鉛の充填密度が低くなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低減された製造コストで製造でき、黒鉛の充填密度の高く品質が安定した非水電解液二次電池用負極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、負極活物質層が鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを含むため、黒鉛粒子間の大きな隙間の少ない負極活物質層とすることができ、黒鉛の充填密度を高くすることができる。このことにより、負極のイオンの吸蔵容量を大きくすることができる。
本発明によれば、負極活物質層に含まれる鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とが共にコークス系黒鉛であり同じような硬度を有するため、負極活物質層を形成するときに黒鉛が破損し形状などが変化することを防止することができる。このことにより、負極活物質層の特性を安定化することができる。また、コークス系黒鉛は、二次電池の充放電を行っても体積の変化率が小さいため、黒鉛の体積変化による負極活物質層の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線A−Aにおける概略断面図である。
【図2】図1(b)の点線で囲んだ範囲Bにおける非水電解液二次電池用負極の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略断面図における粒径の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池の概略上面図である。
【図5】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池の概略側面図である。
【図6】図4の点線C−Cにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。
【図7】図5の点線D−Dにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。
【図8】(a)は本発明の一実施形態の非水電解液二次電池に含まれる正極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線E−Eにおける概略断面図である。
【図9】黒鉛充填性評価実験における実施例1で作製した負極の断面写真である。
【図10】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の断面写真である。
【図11】黒鉛充填性評価実験における実施例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図12】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図13】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の上面の写真である。
【図14】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図15】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図16】細孔分布測定実験で測定した負極活物質層の細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の非水電解液二次電池用負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記粒状黒鉛の平均長径の2倍以上15倍以下の平均長径を有することが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛が鱗片状黒鉛の間に存在することにより緩衝材として機能することができ、負極活物質層の黒鉛の充填密度を高くすることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下の総断面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛により形成される隙間を粒状黒鉛が充填することができる。
【0010】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、厚さに対する面方向の粒径のアスペクト比が6以上80以下であることが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛を負極集電体の上面と実質的に平行に配列させることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有し、かつ、6μm以上30μm以下の面方向の平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛を負極集電体の上面と実質的に平行に配列させることができる。また、鱗片状黒鉛間の隙間を適切に設けることができ、この隙間に電解液を流通させることができる。
【0011】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、前記鱗片状黒鉛の平均厚さより大きく、前記鱗片状黒鉛の面方向の平均粒径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛により形成される隙間を粒状黒鉛が充填することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、黒鉛粒子間の細孔が適切な孔径を有することができ、負極活物質層内に電解液を流通させることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、少なくともエッジ部の表面が黒鉛でコーティングされたことが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛の表面を平滑化することができ、負極活物質層に大きな隙間が生じることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、本発明の負極と、正極と、前記負極と前記正極との挟まれたセパレータと、有機電解液と、前記負極と前記正極と前記セパレータと前記有機電解液とを収容するケースと、正極接続端子と、負極接続端子と、を備え、前記正極は前記正極接続端子と電気的に接続し、前記負極は前記負極接続端子と電気的に接続していることを特徴とする非水電解液二次電池も提供する。
本発明の非水電解液二次電池によれば、負極の黒鉛充填密度が高くなり品質が安定するため、大きい電池容量を有する二次電池を安定して提供することができる。
本発明の非水電解液二次電池において、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に設けられた正極活物質層とを備え、前記正極活物質層は、オリビン型リチウムリン酸金属化合物を含むことが好ましい。
このような構成によれば、正極の容量を大きくすることができる。
【0013】
また、本発明は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーと、溶媒とを混合しスラリーを形成する工程と、前記スラリーを負極集電体上に塗布し乾燥させる工程とを備える非水電解液二次電池用負極の製造方法も提供する。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法によれば、黒鉛充填密度が高く品質の安定した負極を製造することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法において、前記スラリーを形成する工程は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、前記鱗片状黒鉛は、40質量パーセント以上70質量パーセント以下であり、前記粒状黒鉛は、30質量パーセント以上60質量パーセント以下であることが好ましい。
このような構成によれば、黒鉛充填密度の高い負極活物質層を製造することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法において、前記粒状黒鉛の表面を炭素含有材料によりコーティングし、前記炭素含有材料を黒鉛化する工程をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛の表面を滑らかにすることができ、黒鉛充填密度の高い負極活物質層を製造することができる。
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
非水電解液二次電池用負極の構成および製造方法
図1(a)は、本実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線A−Aにおける概略断面図である。図2は、図1(b)の点線で囲んだ範囲Bにおける非水電解液二次電池用負極の概略断面図である。
【0016】
本実施形態の非水電解液二次電池用負極5は、負極集電体1と、負極集電体1上に設けられた負極活物質層3とを備え、負極活物質層3は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛7と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛8と、バインダーとを含むことを特徴とする。
以下、本実施形態の非水電解液二次電池用負極について説明する。
【0017】
1.負極集電体
負極集電体1は、電気伝導性を有し、表面上に負極活物質層3を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくは銅箔である。
【0018】
2.負極活物質層
負極活物質層3は、負極集電体1上に設けられる。また、負極活物質層3は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛7と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛8と、バインダーとを含む。また、負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とバインダーとを含む凝集体であってもよい。
【0019】
負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8と(以後、これらを黒鉛粒子ともいう)を含むため、各黒鉛粒子間に空隙を有する。この空隙は、非水電解液二次電池としたとき、電解液が存在し、電解液と黒鉛粒子の界面においてリチウム挿入脱離反応が生じる。この空隙が小さすぎると、負極活物質層8内での電解液の流通が阻害され、または、電解液のイオン伝導が阻害されるため、電池容量が低下する場合や電池の反応性が低下する場合がある。また、この空隙が大きすぎると、負極活物質層3の黒鉛充填密度が小さくなり、負極活物質層3のイオンの吸蔵容量が小さくなってしまう。さらに、黒鉛粒子と電解液の界面においてリチウム挿入脱離反応が生じるため、この界面をできるだけ大きくすることにより、リチウム挿入脱離反応の反応性を高くすることができる。これらのことから、負極活物質層3に含まれる黒鉛粒子間の空隙は、適切なサイズである必要がある。負極活物質層3に含まれる黒鉛粒子間の空隙は、負極活物質層3をポロシメータで細孔分布測定することにより評価することができる。この細孔分布測定により、細孔体積(mL/g)、細孔表面積(m2/g)、細孔のメディアン径(μm)、細孔のモード径(μm)、空孔率(%)などを求めることができる。また、これらの結果から負極活物質層3の黒鉛充填密度も求めることができる。
負極活物質層3の黒鉛充填密度は、例えば、0.95g/cm3以上1.19g/cm3以下とすることができる。また、負極活物質層3の空孔率は、例えば、37.0%以上45%以下とすることができる。負極活物質層3内の細孔の平均孔径(メディアン径またはモード径)は、例えば、1μm以上1.2μm以下とすることができる。
【0020】
負極活物質層3は、たとえば、図2のような断面を有する。図2のような断面における各黒鉛粒子の長径aおよび短径bについて図3を用いて説明する。図3に示した粒子10に短辺間隔が最長間隔となるように外接長方形を引いたとき、短辺間隔aを粒子10の長径aとし、長辺間隔bを粒子10の短径bとする。なお、負極活物質層3の図2のような断面は、負極活物質層3の断面をSEMで観察することにより評価することができる。
【0021】
鱗片状黒鉛7は、鱗状の形を有し、薄片であるため、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7は、細長い断面を有し、短径bに対する長径aのアスペクト比(a/b)が比較的大きくなる。
粒状黒鉛8は、粒状の形を有するため、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、粒状黒鉛8は、鱗片状黒鉛7のアスペクト比に比べ、小さいアスペクト比を有する。
従って、図2のような断面において、アスペクト比により、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とを識別することができる。例えば、アスペクト比が6以上80以下の黒鉛粒子を鱗片状黒鉛とみなすことができ、アスペクト比が4以下の黒鉛粒子を粒状黒鉛とみなすことができる。
図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7および粒状黒鉛8の平均長径、平均短径、平均アスペクト比は、一定の断面に含まれる鱗片状黒鉛7または粒状黒鉛8の長径、短径またはアスペクト比を平均することにより求めることができる。これらの平均値は、例えば、100個程度の鱗片状黒鉛7または粒状黒鉛8の値を平均することにより求めることができる。
また、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面から、鱗片状黒鉛7の断面積、粒状黒鉛8の断面積を求めることができる。負極活物質層3の一定の断面に含まれる鱗片状黒鉛7の総断面積と粒状黒鉛8の総断面積とを比較することにより、負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との混合比がわかる。
図2のような断面において、鱗片状黒鉛7の総断面積は、例えば、粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0022】
負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダーおよび溶剤を混練してスラリーを作成し、該スラリーを負極集電体1上に塗工、乾燥することにより形成することができる。また、必要に応じてスラリーに増粘材を加えて粘度をコントロールしてもよい。このことにより非水電解液二次電池用負極5を形成することができる。
このようにして形成した負極5は、乾燥後にプレス工程を行っても行わなくてもよい。この負極5は、プレス工程を行わなくても十分な黒鉛の充填密度を有し、比較的薄く形成することができるため、プレス工程を行わないで、非水電解液二次電池に用いることができる。また、必要に応じてプレス工程を行ってもよい。負極5をプレスする際のロールプレス機のプレス圧は200kg/cm以下がよい。プレス圧が200kg/cmより高い場合、負極集電体1の箔が伸びたり、負極活物質層3が崩れたりしてしまう。さらに好ましくは、170kg/cm以下がよい。
以上の製造方法により形成された負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とバインダーとの凝集体となっている。
【0023】
3.鱗片状黒鉛
鱗片状黒鉛7は、鱗片状のコークス系黒鉛であり、アスペクト比が非常に大きい。また、鱗片状黒鉛7は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成される。このことにより、鱗片状黒鉛7は、高い硬度を有する。このため、負極活物質層3を形成する際に、鱗片状黒鉛の一部が破砕し、鱗片状黒鉛の形状が変化することを抑制することができる。このことにより、負極活物質層3の品質を安定化することができる。
また、ニードルコークスから形成した黒鉛は、比較的安価であるため、製造コストを低減することができる。
また、鱗片状黒鉛7を用いることにより、負極集電体1の上面と鱗片状黒鉛7の一方の面とが実質的に平行になるように配列することができる。これは、負極活物質層3において鱗片状黒鉛7は配向性を有するためである。
【0024】
鱗片状黒鉛7は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有することができ、また、6μm以上30μm以下の鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径を有することができる。鱗片状黒鉛7の厚さは、図12のような写真において計ることができ、鱗片状黒鉛7の面方向の粒径は、図13のような写真において計ることができる。平均厚さは、図12のような写真で計った各鱗片状黒鉛7の厚さを平均することにより計算することができ、前記平均粒径は、図13のような写真で計った各鱗片状黒鉛7の粒径を平均することにより計算することができる。
鱗片状黒鉛7の平均厚さ(c)に対する鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径(d)の比(d/c)、つまりアスペクト比は、6以上80以下とすることができる。鱗片状黒鉛の好ましい形状としては、平均厚さが1μm以上2μm以下で、面方向の平均粒径は9μm以上18μm以下とすることができる。鱗片状黒鉛7の平均厚さや面方向の平均粒径が小さすぎる場合、黒鉛粒子間の空隙が小さくなってしまい電解液の流通性などが阻害される恐れがあり、平均厚さや面方向の平均粒径が大きすぎる場合、黒鉛粒子間の空隙が大きくなってしまい黒鉛充填率が小さくことにつながり、また、黒鉛粒子と電解液との界面が減少しリチウム挿入脱離反応の反応性が低下する恐れがある。
鱗片状黒鉛7のアスペクト比が小さすぎる場合、鱗片状黒鉛7の配向性が低下し、アスペクト比が大きすぎる場合、リチウム挿入脱離反応が生じる鱗片状黒鉛の表面が減少してしまう。
【0025】
鱗片状黒鉛7は、石炭または石油系のニードルコークスを粉砕して所望の大きさにした後、不活性雰囲気化で焼成して黒鉛化したものが好ましい。焼成温度は2200〜2800℃が好ましく、より好ましくは2300〜2600℃である。焼成温度がこの範囲を外れると黒鉛の平均層間距離、結晶子サイズLc、La等の諸特性が所望の範囲から外れることとなる。さらに、鱗片状黒鉛7は石油系ニードルコークスを黒鉛化したものが良い。石油系はニードルコークス中の不純物が少なく、黒鉛化した際の電池の特性が良くなる。
【0026】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められる平均層間距離d002は0.3365〜0.3375nmであることが好ましく、0.3367〜0.3372nmであることがより好ましい。黒鉛の平均層間距離d002が下限値未満であると、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となりやすく、平均層間距離d002が上限値を超えると、非水電解液二次電池の充電速度が不十分となりやすい。
【0027】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められるc軸方向の結晶子サイズLcが60〜120nmであることが好ましく、80〜100nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLcが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLcが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0028】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められるa軸方向の結晶子サイズLaが100〜250nmであることが好ましく、125〜200nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLaが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLaが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0029】
4.粒状黒鉛
粒状黒鉛8は、粒状のコークス系黒鉛である。
粒状黒鉛8にコークス系黒鉛を用いることにより、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8の両方をコークス系黒鉛とすることができ、この両方の硬度を近くすることができる。このことにより、負極活物質層3の品質を安定化することができる。つまり、使用する黒鉛のうち、一方が硬い黒鉛であり、他方が比較的軟らかい黒鉛を使用した場合、軟らかい黒鉛が硬い黒鉛によって切削・破壊されて、黒鉛のサイズ、アスペクト比等の形状変化を起こし、黒鉛の配列や細孔分布に影響が生じてしまう。特に、ニードルコークスを中温で黒鉛化した黒鉛は硬いため、一緒に混ぜる他の黒鉛は同等の硬さを有するコークス系黒鉛がよい。
【0030】
粒状黒鉛8の平均粒径は1〜10μmであってもよい。好ましくは、粒状のコークス系黒鉛の平均粒径は3〜7μmがよい。粒状のコークス系黒鉛の平均粒径が小さすぎると負極活物質層3の細孔を埋めてしまい、電解液の流通性などを阻害することになり好ましくないし、平均粒径が大きすぎると鱗片状黒鉛の配列を邪魔することになり、黒鉛充填率を低下させる原因となり、好ましくない。
【0031】
粒状黒鉛8の平均粒径は、鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径よりも小さい方がよい。粒状黒鉛8の平均粒径が鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径よりも大きい場合、鱗片状黒鉛7の面方向が実質的に平行に配列するのを妨げることとなり好ましくない。粒状黒鉛8の平均粒径が鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径より大きい場合には、粒状黒鉛8に沿うように鱗片状黒鉛7が配列しまい、鱗片状黒鉛7の面方向の配列が曲げられて鱗片状黒鉛7の配列が実質的な平行ではなくなってしまう。粒状黒鉛8が鱗片状黒鉛7よりも小さければ、粒状黒鉛8が2つの鱗片状黒鉛7の面間に入ることができ、鱗片状黒鉛7の面方向が実質的に平行に配列するのを妨げることはない。
【0032】
また、粒状黒鉛8としては芯材となるコークス系黒鉛の全面または少なくともエッジ部が覆われるようにコーティングを行い、表面を平滑にしたものを用いるのが望ましい。このエッジ部は、黒鉛の基底面方向のエッジ部であってもよい。
コーティングする物質は、石炭、石油、および、化学プロセスのピッチ由来の重質芳香族残留物、パルプ産業由来のリグニン、フェノール樹脂、ならびに炭水化物材料からなる群より選択されるポリマー材料を黒鉛化した炭素材料が好ましい。これらのポリマーが付着または被覆されたコークス系黒鉛を芯材黒鉛材料のエッジ部が上記ポリマー由来の炭素質の付着または被覆によって埋められるので比表面積が低くなり、表面が平滑になり黒鉛材料が滑りやすくなる。
【0033】
コーティングされた粒状の黒鉛の製造方法としては、上記ポリマーを粒状の黒鉛粒子に付着または被覆させ、焼成することでこれらポリマーを黒鉛化することにより製造することができる。具体的なポリマー材料の付着・被覆方法は、上記ポリマー材料を溶液に溶かし、粒状の黒鉛粒子をポリマー溶液に混ぜて被覆、乾燥する、または、上記ポリマーを乾式で混合し付着させる方法がある。
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められる平均層間距離d002は0.3365〜0.3375nmであることが好ましく、0.3367〜0.3372nmであることがより好ましい。黒鉛の平均層間距離d002が下限値未満であると、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となりやすく、平均層間距離d002が上限値を超えると、非水電解液二次電池の充電速度が不十分となりやすい。
【0034】
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められるc軸方向の結晶子サイズLcは100〜250nmであることが好ましく、140〜220nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLcが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLcが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められるa軸方向の結晶子サイズLaが200〜280nmであることが好ましく、220〜260nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLaが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLaが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0035】
5.鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の比率
負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合は、鱗片状黒鉛:粒状黒鉛=4:6〜7:3が好ましく、4:6〜6:4がより好ましい。どちらかの黒鉛が多すぎても、黒鉛の配列が乱れたり、細孔分布が適切な範囲にならなかったりする。
負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合は、負極活物質層3を形成するためのスラリーに含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合と変化しないため、このスラリーを作製するときの鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合と同じになる。
また、負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7の総断面積と粒状黒鉛8の総断面積の比は、4:6〜7:3であってもよく、好ましくは4:6〜6:4であってもよい。
【0036】
6.負極バインダー
負極バインダーは、負極集電体1、鱗片状黒鉛7及び粒状黒鉛8を結着させるために使用する。負極バインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機溶剤系バインダーや、水に分散可能であるスチレン・ブタジエンゴムや、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステルや、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水系ポリマーが例示でき、これらを一種または二種以上混合して用いることができる。
負極バインダーは、負極活物質層3を形成するためのスラリーを調製するときに、溶媒に溶かすことにより、鱗片状黒鉛7および粒状黒鉛8と混合することができる。負極バインダーを溶かす溶剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、トルエン、水等があり、これらを一種または二種以上適宜必要に応じて選択すればよい。
負極に混合するバインダーの比率は黒鉛100質量部に対して、4.5〜8.5質量部がよい。少なすぎるとバインダーとしての量が足りず電極が形成できない。また、多すぎると電池容量が減ってしまう、特に、8.5質量部を超えると負極の容量が10%程度減ることとなることから、負極が大型化してしまい好ましくない。
【0037】
7.負極作成用スラリー
負極活物質層3を作成するためのスラリーは、鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダー、溶媒、増粘剤を含んでいる。
このスラリーは、溶媒中に鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダー、増粘材を分散し、撹拌・混練をして作成する。このスラリーが鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8の形状の異なる二種類の黒鉛を含むことにより、負極集電体上へスラリーを塗布する際に、ダイラタンシーの発生を抑制することができ、負極活物質層3の厚さおよび均一性をコントロールすることができる。
【0038】
非水電解液二次電池
図4は、本実施形態の非水電解液二次電池の概略上面図であり、図5は、本実施形態の非水電解液二次電池の概略側面図である。また、図6は、図4の点線C−Cにおける非水電解液二次電池の概略断面図であり、図7は、図5の点線D−Dにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。また、図8(a)は、本実施形態の非水電解液二次電池に含まれる正極の概略平面図であり、図8(b)は図8(a)の点線E−Eにおける正極の概略断面図である。
本実施形態の非水電解液二次電池は、本実施形態の非水電解液二次電池用負極5と、正極32と、負極5と正極32との挟まれたセパレータ34と、有機電解液と、負極5と正極32とセパレータ34と有機電解液とを収容する電池ケース11と、正極接続端子13と、負極接続端子14とを備え、正極32は正極接続端子13と電気的に接続し、負極5は負極接続端子14と電気的に接続していることを特徴とする。
以下、本実施形態の非水電解液二次電池の負極5以外の構成要素および非水電解液二次電池の製造方法について説明する。
【0039】
1.正極
正極32は、正極集電体38の上に正極活物質層36が設けられた構造を有することができる。
正極集電体38は、電気伝導性を有し、表面上に正極活物質層36を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくはアルミニウム箔である。
正極活物質層36は、正極集電体38の上に設けられ、正極活物質と導電剤とバインダーとを含むことができる。
正極活物質層36は、正極活物質と導電剤とバインダーを混合してなるスラリーを正極集電体38上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0040】
正極活物質層36に含まれる正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に汎用されているものが使用可能であり、例として、LiCoO2、LiNiO2、LiNi(1-y)CoyO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFeO2、オリビン型構造を有する物質が挙げられる。
中でも特に、オリビン型構造を有する物質である、一般式LixFeyA(1-y)PO4(ただし、0<x≦2であり、0<y≦1であり、AはTi、Zn、Mg、Co、Mnから選ばれる一種の金属元素である。)で表されるリチウムリン酸金属化合物をとして使用するのが好ましい。
導電剤としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックから選ばれるカーボンを使用することができる。
【0041】
正極32作製時に、正極集電体38と正極活物質及び導電剤を結着させるのにバインダーを使用する。バインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機溶剤系バインダーや、水に分散可能であるスチレン・ブタジエンゴムや、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステルや、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水系ポリマーが例示でき、これらを一種または二種以上混合して用いることができる。バインダーを溶かす溶剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、トルエン、水等があり、これらを一種または二種以上適宜必要に応じて選択すればよい。
【0042】
2.セパレータ
セパレータ34としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム等が用いられる。
【0043】
3.有機電解液
本実施形態の非水電解液二次電池30に含まれる有機電解液の有機溶媒としては、例えばエーテル類、ケトン類、ラクトン類、スルホラン系化合物、エステル類、カーボネート類などが挙げられる。これらの代表例としては、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネイト、プロピレンカーボネイト、エチレンカーボネイト、ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−メチル−スルホラン、酢酸エチル、プロピオン酸メチルなど、あるいはこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本実施形態の非水電解液二次電池30に含まれる有機電解液の電解質は特に限定されるものではないが、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Li、LiBOB等を用いることができ、これらの中でも電池特性、取り扱い上の安全性などの観点からLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiBOB等が好ましい。
【0044】
また、有機電解液には必要に応じて添加剤も加えることができる。添加剤は充放電特性向上の観点から、不飽和結合またはハロゲン原子を有する環状カーボネート及びS=O結合含有化合物から選ばれる一種以上を併用することが好ましい。
不飽和結合またはハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及びビニルエチレンカ−ボネートが挙げられる。
また、前記S=O結合化合物としては、1,3−プロパンスルトン(PS)、1,3−プロペンスルトン(PRS)、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、ジビニルスルホン、2−プロピニルメタンスルホネート、ペンタフルオロメタンスルホネート、エチレンサルファイト、ビニルエチレンサルファイト、ビニレンサルファイト、メチル2−プロピニルサルファイト、エチル2−プロピニルサルファイト、ジプロピニルサルファイト、シクロヘキシルサルファイト、エチレンサルフェート等が挙げられ、特に、1,3−プロパンスルトン、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオールメタンスルホネート、およびエチレンサルファイトが好ましい。
これらの化合物は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
4.非水電解液二次電池の製造方法
まず、正極接続端子13、負極接続端子14、外部接続端子18、ねじ部材16を、内部絶縁部材21、外部絶縁部材20、パッキン23を介して蓋部材12に取り付け、端子付き電池蓋を作成する。
また、正極32および負極5がセパレータ34を挟んで交互に積層するように発電要素22を作成する。
この後、正極32の正極集電体38と正極接続端子13とを接続し、負極5の負極集電体1と負極接続端子14とを接続することにより、発電要素22を端子付き電池蓋に接続する。この発電要素22が接続された電池蓋を、有機電解液が入った電池ケース11と組み合わせ、蓋部材12と電池ケース11とを接合することにより非水電解液二次電池を製造することができる。
【0046】
負極作製実験
(実施例1)
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛を50質量部、コークスを黒鉛化することにより形成し、表面を黒鉛でコーティングした粒状黒鉛を50質量部、バインダーとしてSBRを5質量部、CMCを1質量部、溶媒として水使用し、これらを混練し負極用のスラリーを作成した。該負極用スラリーを銅箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して負極を形成した。
(比較例1)
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛を100質量部、バインダーとしてSBRを5質量部、CMCを1質量部、溶媒として水使用し、これらを混練し負極用のスラリーを作成した。該負極用スラリーを銅箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して負極を形成した。
【0047】
鱗片状黒鉛のみを用いた比較例1において、負極用スラリーを銅箔上に塗布するときに、スラリーにおいてダイラタンシーが発生し、コーティング後の負極活物質層の厚さおよび均一性をコントロールすることができかった。このことにより、比較例1では、負極活物質層を適切な厚さにすることができず、また、均一な厚さにすることもできなかった。
しかし、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の2種類の黒鉛を用いた実施例1において、負極用スラリーを銅箔上に塗布するときに、スラリーにおいてダイラタンシーは発生しなかった。このことにより実施例1では、負極活物質層の厚さおよび均一性をコントロールすることができ、適切な厚さを均一に有する負極活物質層を形成することができた。
これらのことから、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の2種類の黒鉛を用いてスラリーを形成することにより、コーターによる塗布時のダイラタンシーの発生が防げることがわかった。この理由は不明であるが、鱗片状黒鉛の間に粒状黒鉛が入り込むことにより、鱗片状黒鉛Aの粒子間相互作用が緩和されるためと考えられる。
【0048】
黒鉛充填性評価実験
負極作製実験で作製した負極のSEM観察を行い、負極活物質層の黒鉛充填性の評価を行った。
図9は、実施例1で作製した負極の断面写真であり、図10は、比較例1で作製した負極の断面写真である。なおこれらの写真は、負極活物質層をエポキシ樹脂により固めた後、負極の断面をSEMにより撮影している。なお、図9、図10のような写真で黒鉛粒子のアスペクト比を比較することにより鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを識別することができる。
図9を見ると、細長い断面を有する鱗片状黒鉛が、負極集電体の上面に実質的に平行に配列していることがわかり、アスペクト比の小さい粒状黒鉛が鱗片状黒鉛の隙間に分布していることがわかる。また、図9の負極活物質層には、黒鉛粒子間の大きい隙間は存在せずに、ほぼ同じサイズの隙間がほぼ均一に存在していることがわかる。このことから実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度は高いことがわかる。
【0049】
図10を見ると、細長い断面を有する鱗片状黒鉛の半分程度は負極集電体の上面に実質的に平行に配列しているが、負極集電体の上面に実質的に平行に配列しているとみなせない粒子が多数存在する。また、図10の負極活物質層には、黒鉛粒子間の大きい隙間が存在し、隙間の大きさもばらばらであることがわかる。また、図10の黒鉛粒子間の隙間は、図9の黒鉛粒子間の隙間に比べ大きいことがわかる。このことから、比較例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度は、実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度よりもかなり低いことがわかる。
【0050】
鱗片状黒鉛のみを用いた比較例1の負極活物質層が十分な黒鉛充填密度を有さない理由は不明であるが、鱗片状黒鉛は非常に硬く、エッジ部を有するため非常に滑りにくい性質を有するためと考えられる。つまり、鱗片状黒鉛の硬いエッジ部分が他の鱗片状黒鉛のエッジ部分に引っ掛かりやすく、大きな隙間を生じさせやすいためと考えられる。このため、スラリーをただ塗布して負極活物質層を形成しただけでは、負極活物質層内部の鱗片状黒鉛の面の向きが負極集電体の面と実質的に平行に揃わず、形状が鱗片状であるため十分な充填密度が得られないし層厚が薄くもならないと予想される。さらに、負極活物質層をプレスしてもエッジ部分の引っ掛かりにより鱗片状黒鉛は動かないので、黒鉛の粒子を滑らせることもできないし、黒鉛が硬いために黒鉛を破砕できないので、黒鉛の粒子を細かくして引っ掛かりを解消することもできない。このように、鱗片状黒鉛のみで作成した負極活物質層は鱗片状黒鉛の面を負極集電体に実質的に平行に揃えて配列することはできないため、負極活物質層の厚さ、黒鉛の充填密度などを制御することができないと考えられる。
【0051】
これに対し、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを用いた実施例1の負極活物質層は、高い黒鉛充填密度を有し、厚さの制御もできた。この理由は不明であるが、粒状黒鉛が鱗片状黒鉛間に存在することにより、粒状黒鉛が緩衝材として機能しているためと考えられる。つまり、粒状黒鉛は粒子状の形状をしており、鱗片状黒鉛よりも滑り性がよいため、鱗片状黒鉛が引っ掛かるのを緩和しているものと考えられる。また、粒状黒鉛のエッジ部分を黒鉛でコーティングすることにより、粒状黒鉛の滑り性がさらに良くなると考えられ、より良い充填密度を得られたと考えられる。
【0052】
図11は、実施例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面で破砕面の写真であり、図12、14、15は、比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面で破砕面の写真である。また、図13は、比較例1で作製した負極の負極活物質層の上面の写真である。
図11を見ると、鱗片状黒鉛の隙間に粒状黒鉛が存在していることがわかる。これに対し、図12を見ると、鱗片状黒鉛の間に大きな隙間が存在していることがわかる。
このことからも、鱗片状黒鉛の間に粒状黒鉛が入り込むことで、鱗片状黒鉛の滑り性を向上させることができ、鱗片状黒鉛が同一方向に配向することで充填密度が上がったと考えられる。
【0053】
また、図13のような写真により、鱗片状黒鉛の面方向の粒径を計ることができ、図12、14、15のような写真により鱗片状黒鉛の厚さを計ることができる。また、複数の鱗片状黒鉛の面方向の粒径の平均を求めることにより、平均粒径を算出することができ、複数の鱗片状黒鉛の厚さの平均を求めることにより、平均厚さを算出することができる。
【0054】
細孔分布測定実験
ポロシメータを用いて、実施例1で作製した負極の負極活物質層の細孔分布と、比較例1で作製した負極の負極活物質層の細孔分布とを測定した。測定結果を図16に示す。また、この測定結果などから算出された平均孔径などを表1に示す。図16を見ると、比較例1で作成した負極の負極活物質層よりも、実施例1で作製した負極の負極活物質層の方が細孔容積、空孔率が低くなっており、実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填率は、比較例1で作成した負極の負極活物質層よりよいことがわかる。また、実施例1で作製した負極の負極活物質層は、適切な孔径を有する細孔を多く有することがわかり、このような細孔を有することにより電解液の流通も阻害されることはないと考えられる。
【0055】
【表1】
【0056】
電池特性等の評価
上記の負極作製実験の実施例1に示した方法で、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の混合比率を変化させて負極を作製した。試料1は、鱗片状黒鉛100質量部、粒状黒鉛0質量部とし(比較例1と同様)、試料2は、鱗片状黒鉛70質量部、粒状黒鉛30質量部とし、試料3は、鱗片状黒鉛60質量部、粒状黒鉛40質量部とし、試料4は、鱗片状黒鉛50質量部、粒状黒鉛50質量部とし(実施例1と同様)、試料5は、鱗片状黒鉛40質量部、粒状黒鉛60質量部とし、試料6は、鱗片状黒鉛30質量部、粒状黒鉛70質量部とし、試料7は、鱗片状黒鉛20質量部、粒状黒鉛80質量部とし、他の方法は、実施例1と同様にして各負極(試料1〜7)を作製した。なお、試料1〜7の黒鉛の総量は同じにした。
【0057】
作製した試料1〜7の負極活物質層の厚さ(μm)を測定した。また、ポロシメータを用いて上記の「細孔分布測定実験」と同様に試料1〜7の負極活物質層の空孔率(%)、黒鉛充填密度(g/cm3)を測定した。
【0058】
次に、試料1〜7の負極を用いて、それぞれリチウム二次電池を作製し、入力特性の評価を行った。リチウム二次電池の製造は以下の方法で行った。なお、試料1〜7の負極を用いて作製したリチウム二次電池をそれぞれ試料1〜7の二次電池という。
正極:正極活物質としてLiFePO4、バインダー、導電剤を溶媒に入れて混練し正極用スラリーを作成した。該正極用スラリーをアルミ箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して正極とした。
電解液:EC:30質量部、DEC:60質量部、MEC:10質量部に電解質としてLiPF6を1.2M、添加剤としてプロパンスルトン(PS)を0.5wt%、ビニレンカーボネート:0.5wt%加えたものを使用した。
セパレータはポリオレフィン性微多孔膜を使用した。
正極と負極をセパレータを介して複数枚積層し積層型の発電要素を作成した。
該発電要素をステンレス製のケース内に入れ、ケース内に電解液を満たし、蓋部材で封口した。その際に、該発電要素には導電接続部を接合し、電池のケース外に設けられた正負極端子にそれぞれを接合することで、電流を取り出せるようにした。
試料1〜7の二次電池を用いて、0℃、0.5Cの条件下で50Ah入った時間を計測することにより、入力特性をそれぞれ評価した。これらの結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2から、鱗片状黒鉛の比率が低くなるほど黒鉛充填密度は高くなり、試料6、7では、入力特性が落ちることがわかった。また、試料2〜5では、黒鉛充填密度が高く特性がよいことがわかった。
【0061】
負極活物質層への加圧実験
実施例1で作製した負極活物質層および比較例1で作製した負極活物質層の上面に200kg/cmの圧力でプレスし、負極活物質層の厚さの変化率を測定した。
実施例1で作製した負極活物質層の厚さの変化率は、5%であったのに対し、比較例1で作製した負極活物質層の厚さの変化率は、26%であった。試料2で17%、試料3で9%、試料5で5%であった。
この結果から実施例1のものは十分な充填密度が負極活物質層作成時で十分に高くできることがわかった。
【符号の説明】
【0062】
1: 負極集電体 3:負極活物質層 5:負極 7:鱗片状黒鉛 8:粒状黒鉛 10:粒子 11:電池ケース 12:蓋部材 13:正極接続端子 14:負極接続端子 16、16a、16b:ねじ部材 18、18a、18b:外部接続端子 20、20a、20b:外部絶縁部材 21、21a、21b:内部絶縁部材 22:発電要素 23、23a、23b:パッキン 30:非水電解液二次電池 32:正極 34:セパレータ 36:正極活物質層 38:正極集電体
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用負極、非水電解液二次電池および非水電解液二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特に、リチウムイオン二次電池の負極活物質として、単位体積当たりのエネルギー密度が高い黒鉛を使用することがよく知られている。中でも、メソフェーズ小球状黒鉛が初期充電特性や電極の充填性が高いことから一般的に負極活物質として使われている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、メソフェーズ小球状黒鉛は、複雑なプロセスを経て製造されているため、高価である上、耐久性としても十分に満足できるレベルを有していなかった。このため、より負極活物質に最適な黒鉛材料の模索が行われている。
負極活物質に適した黒鉛材料として、製造コストが安く、耐久性の良いコークスを黒鉛化したコークス系黒鉛が知られるようになっており、開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−140795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コークス系黒鉛は、硬度が高いため形状のコントロールが難しい。さらに、負極活物質層を形成するためのコークス系黒鉛を含むスラリーの流動性は一般的に良くないため、負極活物質層の黒鉛の充填密度が低くなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低減された製造コストで製造でき、黒鉛の充填密度の高く品質が安定した非水電解液二次電池用負極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、負極活物質層が鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを含むため、黒鉛粒子間の大きな隙間の少ない負極活物質層とすることができ、黒鉛の充填密度を高くすることができる。このことにより、負極のイオンの吸蔵容量を大きくすることができる。
本発明によれば、負極活物質層に含まれる鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とが共にコークス系黒鉛であり同じような硬度を有するため、負極活物質層を形成するときに黒鉛が破損し形状などが変化することを防止することができる。このことにより、負極活物質層の特性を安定化することができる。また、コークス系黒鉛は、二次電池の充放電を行っても体積の変化率が小さいため、黒鉛の体積変化による負極活物質層の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線A−Aにおける概略断面図である。
【図2】図1(b)の点線で囲んだ範囲Bにおける非水電解液二次電池用負極の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略断面図における粒径の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池の概略上面図である。
【図5】本発明の一実施形態の非水電解液二次電池の概略側面図である。
【図6】図4の点線C−Cにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。
【図7】図5の点線D−Dにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。
【図8】(a)は本発明の一実施形態の非水電解液二次電池に含まれる正極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線E−Eにおける概略断面図である。
【図9】黒鉛充填性評価実験における実施例1で作製した負極の断面写真である。
【図10】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の断面写真である。
【図11】黒鉛充填性評価実験における実施例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図12】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図13】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の上面の写真である。
【図14】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図15】黒鉛充填性評価実験における比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面の写真である。
【図16】細孔分布測定実験で測定した負極活物質層の細孔分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の非水電解液二次電池用負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記粒状黒鉛の平均長径の2倍以上15倍以下の平均長径を有することが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛が鱗片状黒鉛の間に存在することにより緩衝材として機能することができ、負極活物質層の黒鉛の充填密度を高くすることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下の総断面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛により形成される隙間を粒状黒鉛が充填することができる。
【0010】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、厚さに対する面方向の粒径のアスペクト比が6以上80以下であることが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛を負極集電体の上面と実質的に平行に配列させることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記鱗片状黒鉛は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有し、かつ、6μm以上30μm以下の面方向の平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛を負極集電体の上面と実質的に平行に配列させることができる。また、鱗片状黒鉛間の隙間を適切に設けることができ、この隙間に電解液を流通させることができる。
【0011】
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、前記鱗片状黒鉛の平均厚さより大きく、前記鱗片状黒鉛の面方向の平均粒径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、鱗片状黒鉛により形成される隙間を粒状黒鉛が充填することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有することが好ましい。
このような構成によれば、黒鉛粒子間の細孔が適切な孔径を有することができ、負極活物質層内に電解液を流通させることができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極において、前記粒状黒鉛は、少なくともエッジ部の表面が黒鉛でコーティングされたことが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛の表面を平滑化することができ、負極活物質層に大きな隙間が生じることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、本発明の負極と、正極と、前記負極と前記正極との挟まれたセパレータと、有機電解液と、前記負極と前記正極と前記セパレータと前記有機電解液とを収容するケースと、正極接続端子と、負極接続端子と、を備え、前記正極は前記正極接続端子と電気的に接続し、前記負極は前記負極接続端子と電気的に接続していることを特徴とする非水電解液二次電池も提供する。
本発明の非水電解液二次電池によれば、負極の黒鉛充填密度が高くなり品質が安定するため、大きい電池容量を有する二次電池を安定して提供することができる。
本発明の非水電解液二次電池において、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に設けられた正極活物質層とを備え、前記正極活物質層は、オリビン型リチウムリン酸金属化合物を含むことが好ましい。
このような構成によれば、正極の容量を大きくすることができる。
【0013】
また、本発明は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーと、溶媒とを混合しスラリーを形成する工程と、前記スラリーを負極集電体上に塗布し乾燥させる工程とを備える非水電解液二次電池用負極の製造方法も提供する。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法によれば、黒鉛充填密度が高く品質の安定した負極を製造することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法において、前記スラリーを形成する工程は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、前記鱗片状黒鉛は、40質量パーセント以上70質量パーセント以下であり、前記粒状黒鉛は、30質量パーセント以上60質量パーセント以下であることが好ましい。
このような構成によれば、黒鉛充填密度の高い負極活物質層を製造することができる。
本発明の非水電解液二次電池用負極の製造方法において、前記粒状黒鉛の表面を炭素含有材料によりコーティングし、前記炭素含有材料を黒鉛化する工程をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、粒状黒鉛の表面を滑らかにすることができ、黒鉛充填密度の高い負極活物質層を製造することができる。
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
非水電解液二次電池用負極の構成および製造方法
図1(a)は、本実施形態の非水電解液二次電池用負極の概略平面図であり、(b)は(a)の点線A−Aにおける概略断面図である。図2は、図1(b)の点線で囲んだ範囲Bにおける非水電解液二次電池用負極の概略断面図である。
【0016】
本実施形態の非水電解液二次電池用負極5は、負極集電体1と、負極集電体1上に設けられた負極活物質層3とを備え、負極活物質層3は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛7と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛8と、バインダーとを含むことを特徴とする。
以下、本実施形態の非水電解液二次電池用負極について説明する。
【0017】
1.負極集電体
負極集電体1は、電気伝導性を有し、表面上に負極活物質層3を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくは銅箔である。
【0018】
2.負極活物質層
負極活物質層3は、負極集電体1上に設けられる。また、負極活物質層3は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛7と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛8と、バインダーとを含む。また、負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とバインダーとを含む凝集体であってもよい。
【0019】
負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8と(以後、これらを黒鉛粒子ともいう)を含むため、各黒鉛粒子間に空隙を有する。この空隙は、非水電解液二次電池としたとき、電解液が存在し、電解液と黒鉛粒子の界面においてリチウム挿入脱離反応が生じる。この空隙が小さすぎると、負極活物質層8内での電解液の流通が阻害され、または、電解液のイオン伝導が阻害されるため、電池容量が低下する場合や電池の反応性が低下する場合がある。また、この空隙が大きすぎると、負極活物質層3の黒鉛充填密度が小さくなり、負極活物質層3のイオンの吸蔵容量が小さくなってしまう。さらに、黒鉛粒子と電解液の界面においてリチウム挿入脱離反応が生じるため、この界面をできるだけ大きくすることにより、リチウム挿入脱離反応の反応性を高くすることができる。これらのことから、負極活物質層3に含まれる黒鉛粒子間の空隙は、適切なサイズである必要がある。負極活物質層3に含まれる黒鉛粒子間の空隙は、負極活物質層3をポロシメータで細孔分布測定することにより評価することができる。この細孔分布測定により、細孔体積(mL/g)、細孔表面積(m2/g)、細孔のメディアン径(μm)、細孔のモード径(μm)、空孔率(%)などを求めることができる。また、これらの結果から負極活物質層3の黒鉛充填密度も求めることができる。
負極活物質層3の黒鉛充填密度は、例えば、0.95g/cm3以上1.19g/cm3以下とすることができる。また、負極活物質層3の空孔率は、例えば、37.0%以上45%以下とすることができる。負極活物質層3内の細孔の平均孔径(メディアン径またはモード径)は、例えば、1μm以上1.2μm以下とすることができる。
【0020】
負極活物質層3は、たとえば、図2のような断面を有する。図2のような断面における各黒鉛粒子の長径aおよび短径bについて図3を用いて説明する。図3に示した粒子10に短辺間隔が最長間隔となるように外接長方形を引いたとき、短辺間隔aを粒子10の長径aとし、長辺間隔bを粒子10の短径bとする。なお、負極活物質層3の図2のような断面は、負極活物質層3の断面をSEMで観察することにより評価することができる。
【0021】
鱗片状黒鉛7は、鱗状の形を有し、薄片であるため、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7は、細長い断面を有し、短径bに対する長径aのアスペクト比(a/b)が比較的大きくなる。
粒状黒鉛8は、粒状の形を有するため、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、粒状黒鉛8は、鱗片状黒鉛7のアスペクト比に比べ、小さいアスペクト比を有する。
従って、図2のような断面において、アスペクト比により、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とを識別することができる。例えば、アスペクト比が6以上80以下の黒鉛粒子を鱗片状黒鉛とみなすことができ、アスペクト比が4以下の黒鉛粒子を粒状黒鉛とみなすことができる。
図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7および粒状黒鉛8の平均長径、平均短径、平均アスペクト比は、一定の断面に含まれる鱗片状黒鉛7または粒状黒鉛8の長径、短径またはアスペクト比を平均することにより求めることができる。これらの平均値は、例えば、100個程度の鱗片状黒鉛7または粒状黒鉛8の値を平均することにより求めることができる。
また、図2のような負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面から、鱗片状黒鉛7の断面積、粒状黒鉛8の断面積を求めることができる。負極活物質層3の一定の断面に含まれる鱗片状黒鉛7の総断面積と粒状黒鉛8の総断面積とを比較することにより、負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との混合比がわかる。
図2のような断面において、鱗片状黒鉛7の総断面積は、例えば、粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下であってもよい。
【0022】
負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダーおよび溶剤を混練してスラリーを作成し、該スラリーを負極集電体1上に塗工、乾燥することにより形成することができる。また、必要に応じてスラリーに増粘材を加えて粘度をコントロールしてもよい。このことにより非水電解液二次電池用負極5を形成することができる。
このようにして形成した負極5は、乾燥後にプレス工程を行っても行わなくてもよい。この負極5は、プレス工程を行わなくても十分な黒鉛の充填密度を有し、比較的薄く形成することができるため、プレス工程を行わないで、非水電解液二次電池に用いることができる。また、必要に応じてプレス工程を行ってもよい。負極5をプレスする際のロールプレス機のプレス圧は200kg/cm以下がよい。プレス圧が200kg/cmより高い場合、負極集電体1の箔が伸びたり、負極活物質層3が崩れたりしてしまう。さらに好ましくは、170kg/cm以下がよい。
以上の製造方法により形成された負極活物質層3は、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8とバインダーとの凝集体となっている。
【0023】
3.鱗片状黒鉛
鱗片状黒鉛7は、鱗片状のコークス系黒鉛であり、アスペクト比が非常に大きい。また、鱗片状黒鉛7は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成される。このことにより、鱗片状黒鉛7は、高い硬度を有する。このため、負極活物質層3を形成する際に、鱗片状黒鉛の一部が破砕し、鱗片状黒鉛の形状が変化することを抑制することができる。このことにより、負極活物質層3の品質を安定化することができる。
また、ニードルコークスから形成した黒鉛は、比較的安価であるため、製造コストを低減することができる。
また、鱗片状黒鉛7を用いることにより、負極集電体1の上面と鱗片状黒鉛7の一方の面とが実質的に平行になるように配列することができる。これは、負極活物質層3において鱗片状黒鉛7は配向性を有するためである。
【0024】
鱗片状黒鉛7は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有することができ、また、6μm以上30μm以下の鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径を有することができる。鱗片状黒鉛7の厚さは、図12のような写真において計ることができ、鱗片状黒鉛7の面方向の粒径は、図13のような写真において計ることができる。平均厚さは、図12のような写真で計った各鱗片状黒鉛7の厚さを平均することにより計算することができ、前記平均粒径は、図13のような写真で計った各鱗片状黒鉛7の粒径を平均することにより計算することができる。
鱗片状黒鉛7の平均厚さ(c)に対する鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径(d)の比(d/c)、つまりアスペクト比は、6以上80以下とすることができる。鱗片状黒鉛の好ましい形状としては、平均厚さが1μm以上2μm以下で、面方向の平均粒径は9μm以上18μm以下とすることができる。鱗片状黒鉛7の平均厚さや面方向の平均粒径が小さすぎる場合、黒鉛粒子間の空隙が小さくなってしまい電解液の流通性などが阻害される恐れがあり、平均厚さや面方向の平均粒径が大きすぎる場合、黒鉛粒子間の空隙が大きくなってしまい黒鉛充填率が小さくことにつながり、また、黒鉛粒子と電解液との界面が減少しリチウム挿入脱離反応の反応性が低下する恐れがある。
鱗片状黒鉛7のアスペクト比が小さすぎる場合、鱗片状黒鉛7の配向性が低下し、アスペクト比が大きすぎる場合、リチウム挿入脱離反応が生じる鱗片状黒鉛の表面が減少してしまう。
【0025】
鱗片状黒鉛7は、石炭または石油系のニードルコークスを粉砕して所望の大きさにした後、不活性雰囲気化で焼成して黒鉛化したものが好ましい。焼成温度は2200〜2800℃が好ましく、より好ましくは2300〜2600℃である。焼成温度がこの範囲を外れると黒鉛の平均層間距離、結晶子サイズLc、La等の諸特性が所望の範囲から外れることとなる。さらに、鱗片状黒鉛7は石油系ニードルコークスを黒鉛化したものが良い。石油系はニードルコークス中の不純物が少なく、黒鉛化した際の電池の特性が良くなる。
【0026】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められる平均層間距離d002は0.3365〜0.3375nmであることが好ましく、0.3367〜0.3372nmであることがより好ましい。黒鉛の平均層間距離d002が下限値未満であると、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となりやすく、平均層間距離d002が上限値を超えると、非水電解液二次電池の充電速度が不十分となりやすい。
【0027】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められるc軸方向の結晶子サイズLcが60〜120nmであることが好ましく、80〜100nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLcが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLcが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0028】
鱗片状黒鉛7のX線回折法によって求められるa軸方向の結晶子サイズLaが100〜250nmであることが好ましく、125〜200nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLaが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLaが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0029】
4.粒状黒鉛
粒状黒鉛8は、粒状のコークス系黒鉛である。
粒状黒鉛8にコークス系黒鉛を用いることにより、鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8の両方をコークス系黒鉛とすることができ、この両方の硬度を近くすることができる。このことにより、負極活物質層3の品質を安定化することができる。つまり、使用する黒鉛のうち、一方が硬い黒鉛であり、他方が比較的軟らかい黒鉛を使用した場合、軟らかい黒鉛が硬い黒鉛によって切削・破壊されて、黒鉛のサイズ、アスペクト比等の形状変化を起こし、黒鉛の配列や細孔分布に影響が生じてしまう。特に、ニードルコークスを中温で黒鉛化した黒鉛は硬いため、一緒に混ぜる他の黒鉛は同等の硬さを有するコークス系黒鉛がよい。
【0030】
粒状黒鉛8の平均粒径は1〜10μmであってもよい。好ましくは、粒状のコークス系黒鉛の平均粒径は3〜7μmがよい。粒状のコークス系黒鉛の平均粒径が小さすぎると負極活物質層3の細孔を埋めてしまい、電解液の流通性などを阻害することになり好ましくないし、平均粒径が大きすぎると鱗片状黒鉛の配列を邪魔することになり、黒鉛充填率を低下させる原因となり、好ましくない。
【0031】
粒状黒鉛8の平均粒径は、鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径よりも小さい方がよい。粒状黒鉛8の平均粒径が鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径よりも大きい場合、鱗片状黒鉛7の面方向が実質的に平行に配列するのを妨げることとなり好ましくない。粒状黒鉛8の平均粒径が鱗片状黒鉛7の面方向の平均粒径より大きい場合には、粒状黒鉛8に沿うように鱗片状黒鉛7が配列しまい、鱗片状黒鉛7の面方向の配列が曲げられて鱗片状黒鉛7の配列が実質的な平行ではなくなってしまう。粒状黒鉛8が鱗片状黒鉛7よりも小さければ、粒状黒鉛8が2つの鱗片状黒鉛7の面間に入ることができ、鱗片状黒鉛7の面方向が実質的に平行に配列するのを妨げることはない。
【0032】
また、粒状黒鉛8としては芯材となるコークス系黒鉛の全面または少なくともエッジ部が覆われるようにコーティングを行い、表面を平滑にしたものを用いるのが望ましい。このエッジ部は、黒鉛の基底面方向のエッジ部であってもよい。
コーティングする物質は、石炭、石油、および、化学プロセスのピッチ由来の重質芳香族残留物、パルプ産業由来のリグニン、フェノール樹脂、ならびに炭水化物材料からなる群より選択されるポリマー材料を黒鉛化した炭素材料が好ましい。これらのポリマーが付着または被覆されたコークス系黒鉛を芯材黒鉛材料のエッジ部が上記ポリマー由来の炭素質の付着または被覆によって埋められるので比表面積が低くなり、表面が平滑になり黒鉛材料が滑りやすくなる。
【0033】
コーティングされた粒状の黒鉛の製造方法としては、上記ポリマーを粒状の黒鉛粒子に付着または被覆させ、焼成することでこれらポリマーを黒鉛化することにより製造することができる。具体的なポリマー材料の付着・被覆方法は、上記ポリマー材料を溶液に溶かし、粒状の黒鉛粒子をポリマー溶液に混ぜて被覆、乾燥する、または、上記ポリマーを乾式で混合し付着させる方法がある。
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められる平均層間距離d002は0.3365〜0.3375nmであることが好ましく、0.3367〜0.3372nmであることがより好ましい。黒鉛の平均層間距離d002が下限値未満であると、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となりやすく、平均層間距離d002が上限値を超えると、非水電解液二次電池の充電速度が不十分となりやすい。
【0034】
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められるc軸方向の結晶子サイズLcは100〜250nmであることが好ましく、140〜220nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLcが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLcが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
粒状黒鉛8のX線回折法によって求められるa軸方向の結晶子サイズLaが200〜280nmであることが好ましく、220〜260nmであることがより好ましい。黒鉛の結晶子サイズLaが下限値未満の場合、非水電解液二次電池の単位体積当たりのエネルギー密度が不十分となり、結晶子サイズLaが上限値を超えた場合、充電速度が不十分となる。
【0035】
5.鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の比率
負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合は、鱗片状黒鉛:粒状黒鉛=4:6〜7:3が好ましく、4:6〜6:4がより好ましい。どちらかの黒鉛が多すぎても、黒鉛の配列が乱れたり、細孔分布が適切な範囲にならなかったりする。
負極活物質層3に含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合は、負極活物質層3を形成するためのスラリーに含まれる鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合と変化しないため、このスラリーを作製するときの鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8との質量割合と同じになる。
また、負極活物質層3の上面に垂直な負極活物質層3の断面において、鱗片状黒鉛7の総断面積と粒状黒鉛8の総断面積の比は、4:6〜7:3であってもよく、好ましくは4:6〜6:4であってもよい。
【0036】
6.負極バインダー
負極バインダーは、負極集電体1、鱗片状黒鉛7及び粒状黒鉛8を結着させるために使用する。負極バインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機溶剤系バインダーや、水に分散可能であるスチレン・ブタジエンゴムや、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステルや、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水系ポリマーが例示でき、これらを一種または二種以上混合して用いることができる。
負極バインダーは、負極活物質層3を形成するためのスラリーを調製するときに、溶媒に溶かすことにより、鱗片状黒鉛7および粒状黒鉛8と混合することができる。負極バインダーを溶かす溶剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、トルエン、水等があり、これらを一種または二種以上適宜必要に応じて選択すればよい。
負極に混合するバインダーの比率は黒鉛100質量部に対して、4.5〜8.5質量部がよい。少なすぎるとバインダーとしての量が足りず電極が形成できない。また、多すぎると電池容量が減ってしまう、特に、8.5質量部を超えると負極の容量が10%程度減ることとなることから、負極が大型化してしまい好ましくない。
【0037】
7.負極作成用スラリー
負極活物質層3を作成するためのスラリーは、鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダー、溶媒、増粘剤を含んでいる。
このスラリーは、溶媒中に鱗片状黒鉛7、粒状黒鉛8、バインダー、増粘材を分散し、撹拌・混練をして作成する。このスラリーが鱗片状黒鉛7と粒状黒鉛8の形状の異なる二種類の黒鉛を含むことにより、負極集電体上へスラリーを塗布する際に、ダイラタンシーの発生を抑制することができ、負極活物質層3の厚さおよび均一性をコントロールすることができる。
【0038】
非水電解液二次電池
図4は、本実施形態の非水電解液二次電池の概略上面図であり、図5は、本実施形態の非水電解液二次電池の概略側面図である。また、図6は、図4の点線C−Cにおける非水電解液二次電池の概略断面図であり、図7は、図5の点線D−Dにおける非水電解液二次電池の概略断面図である。また、図8(a)は、本実施形態の非水電解液二次電池に含まれる正極の概略平面図であり、図8(b)は図8(a)の点線E−Eにおける正極の概略断面図である。
本実施形態の非水電解液二次電池は、本実施形態の非水電解液二次電池用負極5と、正極32と、負極5と正極32との挟まれたセパレータ34と、有機電解液と、負極5と正極32とセパレータ34と有機電解液とを収容する電池ケース11と、正極接続端子13と、負極接続端子14とを備え、正極32は正極接続端子13と電気的に接続し、負極5は負極接続端子14と電気的に接続していることを特徴とする。
以下、本実施形態の非水電解液二次電池の負極5以外の構成要素および非水電解液二次電池の製造方法について説明する。
【0039】
1.正極
正極32は、正極集電体38の上に正極活物質層36が設けられた構造を有することができる。
正極集電体38は、電気伝導性を有し、表面上に正極活物質層36を備えることができれば、特に限定されないが、例えば、金属箔である。好ましくはアルミニウム箔である。
正極活物質層36は、正極集電体38の上に設けられ、正極活物質と導電剤とバインダーとを含むことができる。
正極活物質層36は、正極活物質と導電剤とバインダーを混合してなるスラリーを正極集電体38上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0040】
正極活物質層36に含まれる正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に汎用されているものが使用可能であり、例として、LiCoO2、LiNiO2、LiNi(1-y)CoyO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFeO2、オリビン型構造を有する物質が挙げられる。
中でも特に、オリビン型構造を有する物質である、一般式LixFeyA(1-y)PO4(ただし、0<x≦2であり、0<y≦1であり、AはTi、Zn、Mg、Co、Mnから選ばれる一種の金属元素である。)で表されるリチウムリン酸金属化合物をとして使用するのが好ましい。
導電剤としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックから選ばれるカーボンを使用することができる。
【0041】
正極32作製時に、正極集電体38と正極活物質及び導電剤を結着させるのにバインダーを使用する。バインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機溶剤系バインダーや、水に分散可能であるスチレン・ブタジエンゴムや、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステルや、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水系ポリマーが例示でき、これらを一種または二種以上混合して用いることができる。バインダーを溶かす溶剤としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、トルエン、水等があり、これらを一種または二種以上適宜必要に応じて選択すればよい。
【0042】
2.セパレータ
セパレータ34としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム等が用いられる。
【0043】
3.有機電解液
本実施形態の非水電解液二次電池30に含まれる有機電解液の有機溶媒としては、例えばエーテル類、ケトン類、ラクトン類、スルホラン系化合物、エステル類、カーボネート類などが挙げられる。これらの代表例としては、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネイト、プロピレンカーボネイト、エチレンカーボネイト、ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−メチル−スルホラン、酢酸エチル、プロピオン酸メチルなど、あるいはこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本実施形態の非水電解液二次電池30に含まれる有機電解液の電解質は特に限定されるものではないが、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Li、LiBOB等を用いることができ、これらの中でも電池特性、取り扱い上の安全性などの観点からLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiBOB等が好ましい。
【0044】
また、有機電解液には必要に応じて添加剤も加えることができる。添加剤は充放電特性向上の観点から、不飽和結合またはハロゲン原子を有する環状カーボネート及びS=O結合含有化合物から選ばれる一種以上を併用することが好ましい。
不飽和結合またはハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及びビニルエチレンカ−ボネートが挙げられる。
また、前記S=O結合化合物としては、1,3−プロパンスルトン(PS)、1,3−プロペンスルトン(PRS)、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、ジビニルスルホン、2−プロピニルメタンスルホネート、ペンタフルオロメタンスルホネート、エチレンサルファイト、ビニルエチレンサルファイト、ビニレンサルファイト、メチル2−プロピニルサルファイト、エチル2−プロピニルサルファイト、ジプロピニルサルファイト、シクロヘキシルサルファイト、エチレンサルフェート等が挙げられ、特に、1,3−プロパンスルトン、ジビニルスルホン、1,4−ブタンジオールメタンスルホネート、およびエチレンサルファイトが好ましい。
これらの化合物は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
4.非水電解液二次電池の製造方法
まず、正極接続端子13、負極接続端子14、外部接続端子18、ねじ部材16を、内部絶縁部材21、外部絶縁部材20、パッキン23を介して蓋部材12に取り付け、端子付き電池蓋を作成する。
また、正極32および負極5がセパレータ34を挟んで交互に積層するように発電要素22を作成する。
この後、正極32の正極集電体38と正極接続端子13とを接続し、負極5の負極集電体1と負極接続端子14とを接続することにより、発電要素22を端子付き電池蓋に接続する。この発電要素22が接続された電池蓋を、有機電解液が入った電池ケース11と組み合わせ、蓋部材12と電池ケース11とを接合することにより非水電解液二次電池を製造することができる。
【0046】
負極作製実験
(実施例1)
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛を50質量部、コークスを黒鉛化することにより形成し、表面を黒鉛でコーティングした粒状黒鉛を50質量部、バインダーとしてSBRを5質量部、CMCを1質量部、溶媒として水使用し、これらを混練し負極用のスラリーを作成した。該負極用スラリーを銅箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して負極を形成した。
(比較例1)
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛を100質量部、バインダーとしてSBRを5質量部、CMCを1質量部、溶媒として水使用し、これらを混練し負極用のスラリーを作成した。該負極用スラリーを銅箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して負極を形成した。
【0047】
鱗片状黒鉛のみを用いた比較例1において、負極用スラリーを銅箔上に塗布するときに、スラリーにおいてダイラタンシーが発生し、コーティング後の負極活物質層の厚さおよび均一性をコントロールすることができかった。このことにより、比較例1では、負極活物質層を適切な厚さにすることができず、また、均一な厚さにすることもできなかった。
しかし、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の2種類の黒鉛を用いた実施例1において、負極用スラリーを銅箔上に塗布するときに、スラリーにおいてダイラタンシーは発生しなかった。このことにより実施例1では、負極活物質層の厚さおよび均一性をコントロールすることができ、適切な厚さを均一に有する負極活物質層を形成することができた。
これらのことから、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の2種類の黒鉛を用いてスラリーを形成することにより、コーターによる塗布時のダイラタンシーの発生が防げることがわかった。この理由は不明であるが、鱗片状黒鉛の間に粒状黒鉛が入り込むことにより、鱗片状黒鉛Aの粒子間相互作用が緩和されるためと考えられる。
【0048】
黒鉛充填性評価実験
負極作製実験で作製した負極のSEM観察を行い、負極活物質層の黒鉛充填性の評価を行った。
図9は、実施例1で作製した負極の断面写真であり、図10は、比較例1で作製した負極の断面写真である。なおこれらの写真は、負極活物質層をエポキシ樹脂により固めた後、負極の断面をSEMにより撮影している。なお、図9、図10のような写真で黒鉛粒子のアスペクト比を比較することにより鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを識別することができる。
図9を見ると、細長い断面を有する鱗片状黒鉛が、負極集電体の上面に実質的に平行に配列していることがわかり、アスペクト比の小さい粒状黒鉛が鱗片状黒鉛の隙間に分布していることがわかる。また、図9の負極活物質層には、黒鉛粒子間の大きい隙間は存在せずに、ほぼ同じサイズの隙間がほぼ均一に存在していることがわかる。このことから実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度は高いことがわかる。
【0049】
図10を見ると、細長い断面を有する鱗片状黒鉛の半分程度は負極集電体の上面に実質的に平行に配列しているが、負極集電体の上面に実質的に平行に配列しているとみなせない粒子が多数存在する。また、図10の負極活物質層には、黒鉛粒子間の大きい隙間が存在し、隙間の大きさもばらばらであることがわかる。また、図10の黒鉛粒子間の隙間は、図9の黒鉛粒子間の隙間に比べ大きいことがわかる。このことから、比較例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度は、実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填密度よりもかなり低いことがわかる。
【0050】
鱗片状黒鉛のみを用いた比較例1の負極活物質層が十分な黒鉛充填密度を有さない理由は不明であるが、鱗片状黒鉛は非常に硬く、エッジ部を有するため非常に滑りにくい性質を有するためと考えられる。つまり、鱗片状黒鉛の硬いエッジ部分が他の鱗片状黒鉛のエッジ部分に引っ掛かりやすく、大きな隙間を生じさせやすいためと考えられる。このため、スラリーをただ塗布して負極活物質層を形成しただけでは、負極活物質層内部の鱗片状黒鉛の面の向きが負極集電体の面と実質的に平行に揃わず、形状が鱗片状であるため十分な充填密度が得られないし層厚が薄くもならないと予想される。さらに、負極活物質層をプレスしてもエッジ部分の引っ掛かりにより鱗片状黒鉛は動かないので、黒鉛の粒子を滑らせることもできないし、黒鉛が硬いために黒鉛を破砕できないので、黒鉛の粒子を細かくして引っ掛かりを解消することもできない。このように、鱗片状黒鉛のみで作成した負極活物質層は鱗片状黒鉛の面を負極集電体に実質的に平行に揃えて配列することはできないため、負極活物質層の厚さ、黒鉛の充填密度などを制御することができないと考えられる。
【0051】
これに対し、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛とを用いた実施例1の負極活物質層は、高い黒鉛充填密度を有し、厚さの制御もできた。この理由は不明であるが、粒状黒鉛が鱗片状黒鉛間に存在することにより、粒状黒鉛が緩衝材として機能しているためと考えられる。つまり、粒状黒鉛は粒子状の形状をしており、鱗片状黒鉛よりも滑り性がよいため、鱗片状黒鉛が引っ掛かるのを緩和しているものと考えられる。また、粒状黒鉛のエッジ部分を黒鉛でコーティングすることにより、粒状黒鉛の滑り性がさらに良くなると考えられ、より良い充填密度を得られたと考えられる。
【0052】
図11は、実施例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面で破砕面の写真であり、図12、14、15は、比較例1で作製した負極の負極活物質層の一部を破砕したときの負極活物質層の側面で破砕面の写真である。また、図13は、比較例1で作製した負極の負極活物質層の上面の写真である。
図11を見ると、鱗片状黒鉛の隙間に粒状黒鉛が存在していることがわかる。これに対し、図12を見ると、鱗片状黒鉛の間に大きな隙間が存在していることがわかる。
このことからも、鱗片状黒鉛の間に粒状黒鉛が入り込むことで、鱗片状黒鉛の滑り性を向上させることができ、鱗片状黒鉛が同一方向に配向することで充填密度が上がったと考えられる。
【0053】
また、図13のような写真により、鱗片状黒鉛の面方向の粒径を計ることができ、図12、14、15のような写真により鱗片状黒鉛の厚さを計ることができる。また、複数の鱗片状黒鉛の面方向の粒径の平均を求めることにより、平均粒径を算出することができ、複数の鱗片状黒鉛の厚さの平均を求めることにより、平均厚さを算出することができる。
【0054】
細孔分布測定実験
ポロシメータを用いて、実施例1で作製した負極の負極活物質層の細孔分布と、比較例1で作製した負極の負極活物質層の細孔分布とを測定した。測定結果を図16に示す。また、この測定結果などから算出された平均孔径などを表1に示す。図16を見ると、比較例1で作成した負極の負極活物質層よりも、実施例1で作製した負極の負極活物質層の方が細孔容積、空孔率が低くなっており、実施例1で作製した負極の負極活物質層の黒鉛充填率は、比較例1で作成した負極の負極活物質層よりよいことがわかる。また、実施例1で作製した負極の負極活物質層は、適切な孔径を有する細孔を多く有することがわかり、このような細孔を有することにより電解液の流通も阻害されることはないと考えられる。
【0055】
【表1】
【0056】
電池特性等の評価
上記の負極作製実験の実施例1に示した方法で、鱗片状黒鉛と粒状黒鉛の混合比率を変化させて負極を作製した。試料1は、鱗片状黒鉛100質量部、粒状黒鉛0質量部とし(比較例1と同様)、試料2は、鱗片状黒鉛70質量部、粒状黒鉛30質量部とし、試料3は、鱗片状黒鉛60質量部、粒状黒鉛40質量部とし、試料4は、鱗片状黒鉛50質量部、粒状黒鉛50質量部とし(実施例1と同様)、試料5は、鱗片状黒鉛40質量部、粒状黒鉛60質量部とし、試料6は、鱗片状黒鉛30質量部、粒状黒鉛70質量部とし、試料7は、鱗片状黒鉛20質量部、粒状黒鉛80質量部とし、他の方法は、実施例1と同様にして各負極(試料1〜7)を作製した。なお、試料1〜7の黒鉛の総量は同じにした。
【0057】
作製した試料1〜7の負極活物質層の厚さ(μm)を測定した。また、ポロシメータを用いて上記の「細孔分布測定実験」と同様に試料1〜7の負極活物質層の空孔率(%)、黒鉛充填密度(g/cm3)を測定した。
【0058】
次に、試料1〜7の負極を用いて、それぞれリチウム二次電池を作製し、入力特性の評価を行った。リチウム二次電池の製造は以下の方法で行った。なお、試料1〜7の負極を用いて作製したリチウム二次電池をそれぞれ試料1〜7の二次電池という。
正極:正極活物質としてLiFePO4、バインダー、導電剤を溶媒に入れて混練し正極用スラリーを作成した。該正極用スラリーをアルミ箔上にコーターで塗布し、150℃で乾燥して正極とした。
電解液:EC:30質量部、DEC:60質量部、MEC:10質量部に電解質としてLiPF6を1.2M、添加剤としてプロパンスルトン(PS)を0.5wt%、ビニレンカーボネート:0.5wt%加えたものを使用した。
セパレータはポリオレフィン性微多孔膜を使用した。
正極と負極をセパレータを介して複数枚積層し積層型の発電要素を作成した。
該発電要素をステンレス製のケース内に入れ、ケース内に電解液を満たし、蓋部材で封口した。その際に、該発電要素には導電接続部を接合し、電池のケース外に設けられた正負極端子にそれぞれを接合することで、電流を取り出せるようにした。
試料1〜7の二次電池を用いて、0℃、0.5Cの条件下で50Ah入った時間を計測することにより、入力特性をそれぞれ評価した。これらの結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2から、鱗片状黒鉛の比率が低くなるほど黒鉛充填密度は高くなり、試料6、7では、入力特性が落ちることがわかった。また、試料2〜5では、黒鉛充填密度が高く特性がよいことがわかった。
【0061】
負極活物質層への加圧実験
実施例1で作製した負極活物質層および比較例1で作製した負極活物質層の上面に200kg/cmの圧力でプレスし、負極活物質層の厚さの変化率を測定した。
実施例1で作製した負極活物質層の厚さの変化率は、5%であったのに対し、比較例1で作製した負極活物質層の厚さの変化率は、26%であった。試料2で17%、試料3で9%、試料5で5%であった。
この結果から実施例1のものは十分な充填密度が負極活物質層作成時で十分に高くできることがわかった。
【符号の説明】
【0062】
1: 負極集電体 3:負極活物質層 5:負極 7:鱗片状黒鉛 8:粒状黒鉛 10:粒子 11:電池ケース 12:蓋部材 13:正極接続端子 14:負極接続端子 16、16a、16b:ねじ部材 18、18a、18b:外部接続端子 20、20a、20b:外部絶縁部材 21、21a、21b:内部絶縁部材 22:発電要素 23、23a、23b:パッキン 30:非水電解液二次電池 32:正極 34:セパレータ 36:正極活物質層 38:正極集電体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
前記負極活物質層は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、40質量パーセント以上70質量パーセント以下の前記鱗片状黒鉛と、30質量パーセント以上60質量パーセント以下の前記粒状黒鉛とを含む請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の平均長径の2倍以上15倍以下の平均長径を有する請求項1または2に記載の負極。
【請求項4】
前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下の総断面積を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の負極。
【請求項5】
前記鱗片状黒鉛は、厚さに対する面方向の粒径のアスペクト比が6以上80以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の負極。
【請求項6】
前記鱗片状黒鉛は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有し、かつ、6μm以上30μm以下の面方向の平均粒径を有する請求項5に記載の負極。
【請求項7】
前記粒状黒鉛は、前記鱗片状黒鉛の平均厚さより大きく、前記鱗片状黒鉛の面方向の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の負極。
【請求項8】
前記粒状黒鉛は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有する請求項7に記載の負極。
【請求項9】
前記粒状黒鉛は、少なくともエッジ部の表面が黒鉛でコーティングされた請求項1〜8のいずれか1つに記載の負極。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の負極と、正極と、前記負極と前記正極との挟まれたセパレータと、有機電解液と、前記負極と前記正極と前記セパレータと前記有機電解液とを収容する電池ケースと、正極接続端子と、負極接続端子とを備え、
前記正極は前記正極接続端子と電気的に接続し、前記負極は前記負極接続端子と電気的に接続していることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に設けられた正極活物質層とを備え、
前記正極活物質層は、オリビン型リチウムリン酸金属化合物を含む請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーと、溶媒とを混合しスラリーを形成する工程と、
前記スラリーを負極集電体上に塗布し乾燥させる工程とを備える非水電解液二次電池用負極の製造方法。
【請求項13】
前記スラリーを形成する工程は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、前記鱗片状黒鉛は、40質量パーセント以上70質量パーセント以下であり、前記粒状黒鉛は、30質量パーセント以上60質量パーセント以下である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記粒状黒鉛の表面を炭素含有材料によりコーティングし、前記炭素含有材料を黒鉛化する工程をさらに備える請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーとを含むことを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
前記負極活物質層は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、40質量パーセント以上70質量パーセント以下の前記鱗片状黒鉛と、30質量パーセント以上60質量パーセント以下の前記粒状黒鉛とを含む請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の平均長径の2倍以上15倍以下の平均長径を有する請求項1または2に記載の負極。
【請求項4】
前記負極活物質層の上面に垂直な前記負極活物質層の断面において、前記鱗片状黒鉛は、前記粒状黒鉛の総断面積の0.8倍以上1.5倍以下の総断面積を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の負極。
【請求項5】
前記鱗片状黒鉛は、厚さに対する面方向の粒径のアスペクト比が6以上80以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の負極。
【請求項6】
前記鱗片状黒鉛は、0.2μm以上4μm以下の平均厚さを有し、かつ、6μm以上30μm以下の面方向の平均粒径を有する請求項5に記載の負極。
【請求項7】
前記粒状黒鉛は、前記鱗片状黒鉛の平均厚さより大きく、前記鱗片状黒鉛の面方向の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の負極。
【請求項8】
前記粒状黒鉛は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有する請求項7に記載の負極。
【請求項9】
前記粒状黒鉛は、少なくともエッジ部の表面が黒鉛でコーティングされた請求項1〜8のいずれか1つに記載の負極。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の負極と、正極と、前記負極と前記正極との挟まれたセパレータと、有機電解液と、前記負極と前記正極と前記セパレータと前記有機電解液とを収容する電池ケースと、正極接続端子と、負極接続端子とを備え、
前記正極は前記正極接続端子と電気的に接続し、前記負極は前記負極接続端子と電気的に接続していることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の上に設けられた正極活物質層とを備え、
前記正極活物質層は、オリビン型リチウムリン酸金属化合物を含む請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
ニードルコークスを黒鉛化することにより形成した鱗片状黒鉛と、コークスを黒鉛化することにより形成した粒状黒鉛と、バインダーと、溶媒とを混合しスラリーを形成する工程と、
前記スラリーを負極集電体上に塗布し乾燥させる工程とを備える非水電解液二次電池用負極の製造方法。
【請求項13】
前記スラリーを形成する工程は、前記鱗片状黒鉛と前記粒状黒鉛との合計を100質量パーセントとしたとき、前記鱗片状黒鉛は、40質量パーセント以上70質量パーセント以下であり、前記粒状黒鉛は、30質量パーセント以上60質量パーセント以下である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記粒状黒鉛の表面を炭素含有材料によりコーティングし、前記炭素含有材料を黒鉛化する工程をさらに備える請求項12または13に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−129167(P2012−129167A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282291(P2010−282291)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(507317502)エリーパワー株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(507317502)エリーパワー株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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