非水電解質二次電池
【課題】過充電に強く、かつ組電池における充放電制御を簡略にすることが可能な非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】充電時に非水電解質の少なくとも一部をガス化させることにより、正極の容量と負極の容量との差を補填し得るように、非水電解質二次電池を構成する。
【解決手段】充電時に非水電解質の少なくとも一部をガス化させることにより、正極の容量と負極の容量との差を補填し得るように、非水電解質二次電池を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、ハイレート放電特性に優れた電池であり、長期信頼性やコストを考慮して、現在も極めて広い範囲で産業上利用されている。かかる鉛蓄電池は、特に自動車用のスターター電池や各種の産業用・業務用のバックアップ電源として使用されている。そして、スターター電池およびバックアップ電源の2分野における鉛蓄電池の今後の動向は以下のように考えられる。
【0003】
バックアップ電源の分野においては、鉛蓄電池をニッケル水素蓄電池または非水電解液二次電池(リチウムイオン電池)に置き換えようとする動きが盛んである。この主な理由は、鉛蓄電池より高エネルギー密度の電池に置き換えることによって電源を小型化したいという要望や、環境負荷の観点から鉛を使用している電池に替えてクリーンな電池を用いたいという要望が存在する点にある。また、自動車に使用されているスターター用の鉛蓄電池に関しては、代替への大きな動きは見られないが、アイドリングストップ用の電源としてリチウムイオン電池の実用検討が開始されている。また、プリウス(商品名)などに代表されるハイブリッドカーには、既にニッケル水素蓄電池が採用されている。
【0004】
特にリチウムイオン電池は小型携帯用電源として10年以上にわたって実際に使用され、そのあいだ、その特徴である高いエネルギー密度が犠牲にされることなく、高い安全性や信頼性が確保される技術が確立されてきた。また、産業上の利用可能性のためのリチウムイオン電池の低コスト化も実現されつつある。これらのことからも、上記の2分野において、鉛蓄電池の代替としてリチウムイオン電池を用いる動きが今後加速されるものと考えられる。
【0005】
ここで、携帯電子機器の主電源として利用されているリチウムイオン電池は、以下のような構成要素を有する。即ち、正極に含まれる正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNi1/2-xMn1/2-xCoxO2)またはマンガンスピネル(LiMn2O4)等が用いられる。これらの正極活物質は、リチウムに対し4V以上の電圧を有している。そして、負極には、一般的にカーボン材料が使用され、上記正極と組み合わせることで4V級のリチウムイオン電池が実現される。これら以外にも種々の電池系が提案されており、例えば、高安全性の観点からは、例えば正極に鉄オリビン酸リチウム(LiFePO4)を用いることや、更なる高エネルギー密度の観点からは、負極にシリコン系合金を用いること等が提案されている。
【0006】
一方、電池を直列または並列に多数つないで得られる組電池(パック電池)や、一つの電槽内に複数の単セルを組み込んで得られるいわゆるモジュール電池に関しては、鉛蓄電池およびニッケル水素電池等の水溶液系電池と、リチウムイオン電池等の非水電解液系電池と、では、決定的な違いがある。ここで、モジュール電池とは、12Vの自動車用鉛蓄電池やハイブリッドカー用の角形ニッケル水素電池等の電池を意味する。上記モジュール電池は、例えば、樹脂製の電槽内に仕切りを設けて複数のスペースを形成し、各スペース内に単セルを組み込み、上記仕切りを貫通する孔を介して上記単セルを直列に接続して得られる。
【0007】
上記水溶液系電池では、水の電気分解を利用したいわゆるノイマン機構で過充電保護が行われている。例えばニッケル水素蓄電池は、負極の容量が正極の容量より大きくなるように設計されている。このように設計することにより、初回の充電で正極の化成に必要な不可逆容量分が負極に充電され、結果として放電リザーブと充電リザーブとの両方を負極が担うことが可能となる。このような設計で電池が構成されると、過充電時に正極から発生する酸素を、負極が吸収することが可能であり、逆充電時(過放電時)に発生する水素も負極が吸収することができる。
【0008】
その結果、モジュール電池やパック電池においては、1.2Vの電圧を有する単セルごとに充電制御等をする必要がなく、単セル複数個が直列につながれて6V、12V又は24V等の電圧を有するグループを、1つの単位として、充電制御することが可能である。しかしながら、現在実用化されているリチウムイオン電池においては、上記のようなノイマン機構が働くことは原理的に不可能であるため、過充電保護等をするために単セルごとに充電制御をする必要がある。このように単セルごとに充電制御をしなければならないことから、複数の単セルを含むリチウムイオン電池を上記2分野に使用する際には、コストが増加してしまうという問題がある。また、単セルごとに電池電圧を監視し、上記グループの両端のみで電流を制御することも考えられるが、容量の最も小さな単セルで充電を終了しなければならず、あまり効果的ではない。
【0009】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は鉛蓄電池代替として、特に過充電保護を外部の電子回路に頼ることなく内部のケミストリーで解決し得る非水電解質二次電池を実現することに主眼を置いている。
【0010】
このような非水電解質二次電池に関連するものとして、例えば特許文献1には、組電池(集合電池)の過放電に耐える非水電解液電池システムが提案されている。ここでは、正極及び負極の活物質にいずれもスピネル系リチウム含有金属酸化物を使用されており、具体的にはリチウムマンガン酸化物(Li1.05Mn0.95O4)を正極活物質に用い、リチウムチタン酸化物(Li1.035Ti1.965O4)を負極活物質に用いることが記載されている。Tiは平均価数が3.5価であるため、過放電時(逆充電時)にTiが4価になるまで、負極のLi1.035Ti1.965O4はLiを放出して酸化することが可能である。これと同時に、Mnは平均価数が3.6価であるため、Mnが3価になるまで、正極のLi1.05Mn1.95O4はLiを吸蔵することが可能である。そのため、過放電(逆充電)においても活物質の可逆性は損なわれない、と上記特許文献1には記載されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1には過充電保護に関する記述はない。正極活物質の容量と負極活物質の容量とのバランスについても、実施例の記述を参酌しても特に考慮されていないように見受けられる。また、非水電解質に関しても特筆すべき点はなく、実施例に示された「1モル/リットルのLiPF6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液」は、現在リチウムイオン電池に一般的に使用されているものである。
【0012】
また、非特許文献1においては、リチウムイオン電池における過充電保護の技術が提案されている。これは、レドックスシャトルと呼ばれる技術に関し、通常に使用される非水電解質に酸化還元能を有する添加剤を添加することを特徴とする。過充電時に正極で上記添加剤が酸化され、酸化された上記添加剤が負極に拡散し、負極上で逆の反応が起こり、これによって過充電電流が吸収されると述べられている。具体的には、LiFePO4を含む正極活物質及びLi4/3Ti5/3O4を含む負極活物質を用いた系において、レドックスシャトル(添加剤)として2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼンが有望であることが示されている。
【0013】
しかしながら、このレドックスシャトルのコンセプトは従前から提案されているものの、シャトルの反応速度が遅く、実用電池においては過充電保護に使用できるほどの過充電レートを確保することができないという致命的な問題がある。また、酸化還元の電気化学反応に伴って無視できない発熱反応が起こるため、レドックスシャトルのコンセプトは現実的でないといった問題もある。
【0014】
また、特許文献2には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を含む正極、及びチタン酸リチウム(Li4/3Ti5/3O4)を含む負極を用いた系が開示されている。当該特許文献2には、正極の容量と負極の容量とのバランスに関する記述があり、負極の容量を正極の容量の0.6から1.0未満までにして、電池の容量を負極の容量で規制すること(負極容量規制)が望ましいとされている。もっとも、これはサイクル寿命の観点から負極容量規制が望ましいとされているだけであり、過充電及び過放電の保護に関してはなんら言及されていない。
【0015】
更に特許文献3には、リチウム若しくはリチウム合金、又は、スピネル型構造のリチウム−チタン酸化物を含む負極活物質、スピネル型構造のリチウム−マンガン酸化物Li4/3Mn5/3O4を含む正極活物質、LiN(CF3SO2)2、を含む非水電解質、並びにエチレンカーボネートを含む2成分系以上の混合溶媒を用いる電池系が示されている。しかしながら、当該特許文献3は、単に電解液の最適化によるサイクル寿命及び保存特性の改良を意図するものである。
【0016】
また、上記のような鉛蓄電池代替に関連する先行技術としては、例えば特許文献4及び特許文献5等が挙げられ、高電導度を有する非水電解質の実現を期待して、アセトニトリルを溶媒として含む電解液が特許文献6に提案されている。
【特許文献1】特開平8−22841号公報
【特許文献2】特開平7−335261号公報
【特許文献3】特開平10−27609号公報
【特許文献4】特開2003−323893号公報
【特許文献5】特開2005−142047号公報
【特許文献6】特開平10−106626号公報
【非特許文献1】J.R.Dahnら著、J.Electrochem.Soc.,152,2390(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のように、直列または並列に接続された単セル複数個を含む組電池(パック電池)や、一つの電槽内に複数の単セルが組込まれたモジュール電池に関して、ノイマン機構が働く鉛蓄電池及びニッケル水素電池等の水溶液系電池と、ノイマン機構が原理的に働かない現行のリチウムイオン電池等の非水電解液系電池と、は決定的に異なる。例えば、自動車用鉛蓄電池の場合、直列に接続された単セル6個を電槽内に含む12Vの電池を、両端の電圧のみを制御することで充放電を制御することが可能であるが、単セル複数個を含むリチウムイオン電池では、単セル間の容量に微小であっても差が生じると、単セル複数個のグループの両端の電圧のみを制御することによって充放電を線制御することは不可能であり、単セルを制御しなければ過充電及び過放電は生じて安全性及び信頼性が著しく低下してしまう。高い電圧及び出力が必要な産業用のバックアップ電源や自動車用の電源としてリチウムイオン電池を使用する場合、単セルごとの制御には大きなコストがかかる。
【0018】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するもので、鉛蓄電池代替として、特に過充電保護を外部の電子回路に頼ることなく内部のケミストリーで解決し得る非水電解質二次電池を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、正極活物質、負極活物質及び電解液の組合せ、並びに正極の容量と負極の容量とのバランスを適切に選択することにより、擬似的に過充電及び過放電(逆充電)の保護を両立し得る電池ケミストリーを提供し、組電池及びモジュール電池の制御を簡略化することのできる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような課題を解決すべく、本発明は、
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
このような構成により、負極の容量が正極の容量よりも小さくても、非水電解質の少なくとも一部が分解して上記負極の容量を補填するため(擬似ノイマン機構)、過充電及び、さらに適切な材料組成を選定することで、過放電(逆充電)に対しても劣化しにくいという効果を奏する。
【0020】
また、本発明は、
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極が、一般式:Li1+xM2-XO4(MはMnとAlとを含み、x>1)で表されかつスピネル構造を有するリチウム複合酸化物からなる正極活物質を含み、
前記負極が、スピネル構造を有するチタン酸化物からなる負極活物質を含み、
前記非水電解質が、アセトニトリルを主溶媒として含むことを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
なお、主溶媒とは、体積比率で溶媒全体の50%以上含まれる溶媒成分をいう。
このような構成によれば、正極の高電位領域での安定性が高く、アセトニトリルを含む電解液によりインピーダンスが低くなり、レート特性が良好になる。
【0021】
本発明の非水電解質二次電池は、前記単セルを複数個含む組電池又はモジュール電池としても用いることができる。
この場合、上記のような擬似ノイマン機構によって、容量の大きな単セルが、容量の小さな単セルを補填するため、組電池又はモジュール電池全体として、単セル間の容量ばらつきを吸収することができ、過放電だけでなく過充電に対しても劣化しにくいという効果を奏する。
【0022】
上記非水電解質二次電池においては、前記非水電解質の少なくとも一部が、前記負極近傍においてガス化するものであるのが好ましい。
また、前記非水電解質の少なくとも一部が、リチウム金属に対して1.5V〜0.3Vの間でガス化するものであるのが好ましい。
また、上記非水電解質二次電池は、上記負極及び上記正極とは別に、上記ガス化のための金属電極を含むのが好ましい。前記金属電極としては、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。したがって、上記金属電極は、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも2種を含む合金で構成されていてもよい。
【0023】
前記負極がリチウム含有チタン酸化物を含むのが好ましい。
上記リチウム含有チタン酸化物としては、Li3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)が好ましい。
また、上記リチウム含有チタン酸化物は、0.1μm〜8μmの粒径を有する結晶粒子と、2μm〜30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物であるのが好ましい。
上記負極は、集電体として、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む集電体を具備するのが好ましい。
【0024】
また、上記非水電解質が、充電時にガス化する成分として、溶媒であるニトリル化合物を含有するのが好ましい。
前記ニトリル化合物はモノニトリル化合物であるのが好ましい。かかるモノニトリル化合物としては、例えばアセトニトリルまたはプロピオニトリルが好ましい。
また、上記ニトリル化合物は、さらにジニトリル化合物を含むのが好ましい。かかるジニトリル化合物としては、例えばマロンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリルまたはアジポニトリルが好ましい。
また、前記非水電解質は、溶媒として酢酸メチル、酪酸メチルまたはγ−ブチロラクトンを含有するのが好ましい。
【0025】
また、前記正極は、正極活物質として、スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を含むのが好ましい。かかるスピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物としては、Li1+xMn2-x-yAyO4(0≦x<1/3、0≦y≦0.6、AはAl、NiおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種)であるのが好ましい。
また、前記正極は、正極活物質として、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、Meは、Mn、Fe、Co、TiおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niと、を含む遷移金属)を含むのが好ましい。かかる正極活物質としては、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、過充電及び過放電(逆充電)に対して劣化しにくい非水電解質二次電池を提供することができる。また、複数の単セルを含む場合には、過充電及び過放電の保護を電池のケミストリーで行うことで単セルの容量ばらつきを外部の制御回路に頼ることなく吸収できる。これにより、組電池やモジュール電池の制御を簡略化できる非水電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池に関する。以下においては、本発明の非水電解質二次電池の一実施の形態について、各構成要素及びその作成方法について説明する。
【0028】
(1)負極活物質の合成とそれを用いた負極の作成
本発明における負極活物質としては、リチウム含有チタン酸化物を用いるのが好ましい。なかでも、Li3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)を好適に用いることができる。例えば炭酸リチウム(Li2CO3)または水酸化リチウム(LiOH)などのリチウム化合物と、酸化チタン(TiO2)と、を所望する組成となるように混合し、得られた混合物を、大気中または酸素気流中等の酸化雰囲気下で例えば約800℃〜約1000℃の温度で焼成することにより、Li3+3xTi6-3xO12を容易に合成することができる。
なお、Li4Ti5O12(Li3+3xTi6-3xO12においてx=1/3の場合)におけるTiの価数は4価である。
【0029】
負極活物質として好適に用いることができるリチウム含有チタン酸化物であるLi3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)は、例えば約0.1μm〜約8μmの粒径を有する結晶粒子と、約2μm〜約30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物からなるのが好ましい。
また、負極活物質でLiを吸蔵させることによって過放電(逆充電)対策を講じる場合には、Tiの価数を4価未満にしてもよい。具体的は、Li3+3xTi6-3xO12においてx<1/3を満たすことによって、Li1.035Ti1.965O4を用いてもよい。
なお、スピネル構造を有するチタン酸化物であるLi4Ti5O12は、現在既に市販されている電池に搭載されており、高品質のものを購入することができる。
【0030】
負極は、例えば負極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラックを6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を十分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔製の集電体(芯材)上に塗布する。塗布後の集電体を例えば100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに例えば真空中で85℃、14時間乾燥し、板状又はシート状の負極を得る。負極の厚み及び充填密度等は、電池の設計(正極の容量と負極の容量とのバランス)に合わせて適宜変更すればよい。例えば電気化学測定等の試験時には、厚みを例えば約0.3mm〜約0.2mmとし、電極密度を例えば約1.0g/cm3〜約2.0g/cm3とすればよい。また、電池試験評価を行う場合には、厚みを5mm程度まで厚くしてもよい。1mm以下の薄型負極を用いることもできるが、電池容量を確保するためには1mm以上の負極を用いるのが有利である。
【0031】
(2)正極活物質の合成とそれを用いた正極の作成
本発明における正極活物質としては、種々のものを用いることができるが、なかでもスピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を好適に用いることができる。
スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物であるLi[LixMn2-x]O4(0≦x<0.33)を作成する場合には、まずマンガナイト(MnOOH)と水酸化リチウム(LiOH)とを、所望する組成になるように十分に混合し、例えば約500℃〜約600℃で10〜12時間、空気中で焼成(一次焼成)する。このとき、必要であれば、得られた焼成物(粉末)をプレスしてペレットを作成したり、又は、上記焼成物(粉末)を造粒してもよい。上記のような一次焼成により得られた材料を、さらに粉砕し、得られた粉砕物を例えば約700℃〜約800℃、約10〜約12時間空気中で焼成(二次焼成)することにより、正極活物質を合成することができる。
【0032】
正極活物質としてLi1+xMn2-x-yAyO4(0≦x≦0.3、0≦y≦0.6、AはAl、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種)を用いる場合は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、Ni(OH)2又はFeOOHを、を所望する組成になるように、上記のマンガナイトと水酸化リチウムとの混合物に混合すればよい。その後の焼成条件は上記と同様にすればよい。ただし、Ni(OH)2を用いる場合は、添加量が増加するとニッケルとマンガンとが十分にナノレベルで混合することが困難になるため、充分な分散状態が得られるように、焼成温度を上げることが好ましい。具体的には一次焼成温度を約900℃〜約1100℃にまで上昇させることが好ましい。また、二次焼成温度は、約600℃〜約800℃くらいに低下させ、高温焼成時に欠乏気味の酸素を戻す条件にすることが好ましい。
【0033】
さらに、ニッケルとマンガンとを原子レベルで分散させるためには、あらかじめニッケルとマンガンとを含む複合水酸化物を作成して、これを原材料として用いることが好ましい。例えば、Li[Ni1/2Mn3/2]O4を作成する場合には、ニッケルとマンガンとの比率が1対3となるように共沈法などで複合水酸化物(酸化物)を作成し、得られた複合酸化物と水酸化リチウムとを十分に混合した後、得られた混合物を例えば約1000℃まで急過熱する。約1000℃に約12時間保持した後、約700℃まで温度を降下させ、約700℃で約48時間保持する。この後は室温まで自然冷却すればよい。
【0034】
正極活物質として好適に用いることのできる、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、MeはMn、Fe、Co、Ti及びCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niとを含む遷移金属)は、所望する正極活物質を構成する元素を含む酸化物、水酸化物及び/又は炭酸塩等を、所定の組成になるように混合し、得られた混合物を焼成することで合成することができる。2種以上の遷移金属をナノレベルで分散して含む正極活物質を合成するためには、可能な限り微細な粉末材料と、ボールミル等の粉砕混合機と、を用いて十分に混合した後、得られた混合物を焼成することが好ましい。
【0035】
また、特にニッケルとマンガンとは分散しにくいため、共沈法等によりあらかじめ複合水酸化物(酸化物)を作成することも効果的である。例えば、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)を作成する場合は、所定量の、共沈法で作成した[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z](OH)2と水酸化リチウムとを充分に混合した後、得られた混合物をペレット状に成型して焼成する。このときの焼成温度は例えば約900℃〜約1100℃であるのが好ましい。このときのその他の詳細な技術についいては、上述した特許文献4及び5に開示されている技術を利用することができる。
【0036】
なお、正極は、上記負極と同様にして作成することができる。例えば正極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラックを6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を十分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔製の集電体上に塗布する。塗布後の集電体を例えば100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに例えば真空中で85℃、14時間乾燥し、板状又はシート状の正極を得る。正極の厚み及び充填密度等は、電池の設計(正極の容量と負極の容量とのバランス)に合わせて適宜変更すればよい。例えば電気化学測定等の試験時には、厚みを例えば約0.3mm〜約0.2mmとし、電極密度を例えば約1.0g/cm3〜約2.0g/cm3とすればよい。また、電池試験評価を行う場合には、厚みを5mm程度まで厚くしてもよい。1mm以下の薄型正極を用いることもできるが、電池容量を確保するためには1mm以上の負極を用いるのが有利である。
【0037】
ここで、本発明においては、上記正極の容量が上記前記負極の容量よりも大きいことを特徴とする。即ち、本発明の非水電解質二次電池においては、正極の容量Q(p)と、負極の容量Q(n)とが、関係式:Q(p)/Q(n)>1を満たす。このような関係式を満たす正極及び負極の組合せは、当業者であれば適宜選択することができる。
また、上記「容量」とは、「理論容量」のことをいう。
材料の組合せによって多少変化するが、本発明の場合、「容量」は下記のように求められる。正極の場合は、リチウムメタル基準で2V〜4.5Vの電位範囲の充放電可逆容量を指す。負極の場合は、同じくリチウムメタル基準で1.0V〜2.0Vの電位範囲の充放電可逆容量を指す。
【0038】
(3)非水電解質に関して
本発明における非水電解質は、非水電解質二次電池の充電時にその少なくとも一部が分解することを特徴とするものである。非水電解質は、充電時、特に満充電時にガス化する成分を含んでいればよいが、用いる正極及び負極活物質に適した非水電解質を選定することが必要である。正極及び負極活物質は、それぞれの充放電電位でリチウムを吸蔵又は放出する。この反応で電池が成り立つため、当該反応を妨げるような領域で非水電解質がガス化するような副反応が起こると、電池が成立しないおそれがある。したがって、本発明の非水電解質は、電池が満充電され、さらにそれ以降の充電によって非水電解質の少なくとも一部がガス化するように、構成されていることが必要である。
【0039】
このことは、水溶液中で過充電により正極から酸素が発生する現象に似ている。理解の容易のため、具体的な例を挙げて説明する。正極にスピネル構造を有するマンガン酸化物であるLi[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を使用し、負極活物質にLi4Ti5O12を使用する場合を想定する。正極の容量と負極の容量とのバランスについては、負極の容量に対して正極の容量が1.2倍になるように、上述した方法で作成された正極及び負極を用いる場合を想定する。これは、いわゆる負極容量規制の非水電解質二次電池である。ただし、正極及び負極の厚み及び密度は、それぞれ電気化学測定用である約0.3mm〜約0.2mm及び約1.0g/cm3〜約2,0g/cm3とする。また、正極及び負極の集電体には、いずれもアルミニウム箔を使用し、非水電解質にはアセトニトリル溶媒に1モル/リットルのLiBF4を溶解させて得られた電解液を用いる。さらに、セパレータにはポリエチレン(PE)製の微多孔膜を使用する。
【0040】
このような構成を有する非水電解質二次電池を充電すると、負極の容量分までは通常の充電が可能である。即ち3Vの充電を行うことで満充電にすることが可能である。ただし、正極はリチウムに対して4V、負極は1.5Vの充放電電位を有するため、平均電池電圧は2.5Vとなる。これ以上の電圧になると、容量の小さい負極の電位が低下する。ここで、負極の電位がアセトニトリルの分解電位まで低下すると、アセトニトリルが分解してガス化する。このとき主にメタンガスが発生すると考えられる。そして、負極の充放電電位が1.5Vであるため、これより卑な電位で還元分解することが必要である。集電体に使用したアルミニウム箔は約0.3Vでリチウム吸蔵を行うため、この集電体を使用する場合は、1.5V〜0.3Vの領域で還元されガス発生する溶媒を用いる必要があるが、アセトニトリルはこの条件を充分に満たしている。
【0041】
上記のように非水電解質の少なくとも一部が分解して発生したガスは、非水電解質二次電池に一般的に設けられるガス抜き弁等を経て電池外に放出すればよい。このようなガス抜き弁等によって熱が排出されるため、従来のレドックスシャトル等のような発熱による問題は回避することができる。
上記ガス抜き弁は、リセッタブル(復帰式)であればよい。また、アセトニトリルのガス化により減少した電解液を補充可能な弁構造を有するものが好ましい。
【0042】
アルミニウム箔からなる集電体を使用するのは以下の理由による。即ち、上記非水電解質二次電池を0Vまで放電した場合、負極の容量が規制されているため、負極の電位は4V付近まで上昇する。もし、一般的に使用される銅等からなる集電体を用いた場合には、銅が溶解し、結果として内部短絡を発生してしまうというおそれがある。したがって、この意味から、アルミニウム箔からなる集電体を使用することの意義が大きい。
なお、負極活物質として黒鉛等を使用した場合には、黒鉛の充放電反応が起こる前にアセトニトリルの分解が生じるため、電池としての容量が取り出せない。また、アセトニトリルと同様の働きをするものとして、例えば酢酸メチル、酪酸メチル及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0043】
以上のように、本発明に係る非水電解質二次電池は、正極活物質、負極活物質、これらの容量バランス設計、適切な電位領域で分解する非水電解質、及び集電体の材質等について、最適なものを選択して組み合わせることによって実現することができる。もちろん、上述した内容は、本発明を限定するものではなく、本発明の効果が得られる範囲であれば、種々の組合せを適宜選択することが可能である。また、上記では還元側を利用したが酸化側を利用してもよい。
【0044】
上記では、ガス発生による過充電保護のみについて本発明を説明したが、本発明においては、過放電(逆充電)に対する保護も可能である。例えば、上述の実施の形態において、以下の2点を変更すれば、過充電及び過放電の両方に対する保護が可能な非水電解質二次電池を実現することができる。
まず、第1点目は、負極に使用するチタン酸化物の組成を変更することである。具体的には、Li3+3xTi6-3xO12(x<1/3)を使用する。第2点目は、上記実施の形態においては負極の容量に対して正極の容量を1.2倍(Q(p)/Q(n)=1.2)としたが、負極の容量を規制したままQ(p)/Q(n)を1.0に近づけることである。このようにすると、上述したように、過放電(逆充電)時の保護が可能である。すなわち、過放電(逆充電)時に負極からリチウムを放出することが可能になり、これにより過放電(逆充電)保護が可能となる。
【0045】
アセトニトリルは高誘電率および高電導度の溶媒であるため、ハイレート放電及び高出力パルスを必要とする用途に適している。鉛蓄電池はハイレート放電及び高出力パルスを必要とする分野に使用されることが多く、この意味においても本発明の非水電解質二次電池は鉛蓄電池代替技術として好ましいと言える。なお、本発明は、非水電解質を過剰に用い、かつその少なくとも一部をガス化させることによって、非水電解質のバランスを保持しているとも言える。
【0046】
また、アセトニトリルに加えて、例えばシクシノニトリル、グルタロニトリル又はアジポニトリル等のジニトリル化合物を追加的に添加してもよい。これらジニトリル化合物はアセトノトリルよりも高い粘性を有することから液面に存在し易く、粘性が低いモノニトリル化合物がガス発生時に飛沫としてガス抜き弁等からガスとともに放出されることをより確実に抑制することができる。すなわち、これらのジニトリル化合物は、液面においてアセトニトリルの飛沫防止剤として機能する。
【0047】
(4)金属電極について
上述のように、非水電解質の少なくとも一部が分解してガスが発生する場合、充放電する電極(特に負極)の表面全体において分解が起こると、次第に電極が劣化するおそれがある。そのため、本発明の非水電解質二次電池は、ガス発生のための金属電極を備えることが好ましい。
かかる金属電極の材料としては、用いる非水電解質の種類にも依存するが、例えばニッケル、銅、鉄又はステンレス鋼等を用いることが、触媒作用をすることが期待できるという観点から、好ましい。この触媒作用により金属電極上で選択的にガスを発生させることが可能となる。
【0048】
このような金属電極を設けることにより、充放電を行う電極(特に負極)表面全体でガスが発生することを抑制し、電極の破壊等の懸念を抑制することができる。具体的に、例えば上記(3)の形態においては、過充電時に、負極に設けられた集電リード付近の電位がもっとも早く卑になるため、この付近に上記金属電極を取り付けるのが好ましい。なお、金属電極の大きさ等については、本発明の効果及び非水電解質二次電池本来の機能を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0049】
(5)組電池又はモジュール電池とその充電制御について
上記(1)〜(4)においては、単セルからなる非水電解質二次電池について説明したが、本発明の非水電解質二次電池は、直列に接続された上記単セル複数個を含む組電池又はモジュール電池にも適用することができる。また、場合によっては、並列に接続された単セルを含んでいても構わない。
上記(3)における構成を有する単セルを用いて本発明の組電池又はモジュール電池について説明する。なお、上記(3)においては、正極にLi[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用い、負極にLi4Ti5O12を用い、非水電解質として、アセトニトリル溶媒に1モル/リットルのLiBF4を溶解して得られた電解液を用いている。また、負極の容量が正極の容量よりも小さく、負極の容量が規制されている。
【0050】
上記のような単セル5個を直列に接続して得られた組電池について説明する。この組電池の両端を15Vで充電する。直列に接続した5個の単セルの間に、作製上回避できない容量のばらつきが発生し、最も容量の小さい単セルが過充電になっても、アセトニトリルの分解によるガス発生により当該単セルの急激な電圧上昇は起こらず、他の単セルも充分に充電される。しかし、このようなガス発生メカニズムが働かない場合には、最も小さい容量の単セルの電圧が急激に上昇するが、両端の15Vは変化しないため、その他の単セルは充分に充電されることなく充電が終了してしまう。
【0051】
端的に言えば、直列に接続された単セルのうちの、最も容量の小さい単セルと同等にしか、他の単セルも充電されないことになる。さらに、過充電された単セルは大きなダメージを受け、サイクル寿命も著しく低下してしまう。これまでは、このような容量のばらつきに起因する問題を防ぐために、ノイマン機構を持たない非水電解質二次電池では個々の単セルで充電を制御していた。この場合は、個々の単セルの電圧が3Vである。
以上のように、本発明は、単セル複数個を直列につないで得られる単セル群を含む組電池又はモジュール電池において、顕著な効果を発揮する。即ち、配線及び充電制御コストを飛躍的に抑えることが期待されると同時に、万が一制御のエラーが生じても組電池又はモジュール電池の劣化も最小限に抑えることが期待できる。
【0052】
したがって、本発明は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む、直列に接続された単セル複数個からなる単セル群を具備し、前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化する組電池又はモジュール電池の制御方法であって、少なくとも2つの上記単セルを1単位として充放電制御することを特徴とする組電池又はモジュール電池の制御方法をも提供する。
【0053】
(5)その他の構成部材について
本発明の非水電解質二次電池の、上記以外の構成要素については、従来公知のものを用いることができる。例えばセパレータとしては、従来から使用されているポリオレフィンの微多孔膜の他、不織布を使用することも可能である。不織布は、高い液保持能を有するため、レート特性、特にパルス特性を飛躍的に改善するために有効に使用することができる。また、ポーラスフィルム等の高度で複雑な製造工程を必要としないため、セパレータ材料の選択の幅が広がると同時に安価である。
【0054】
本発明の非水電解質二次電池への適用を考慮すると、セパレータの材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートや、これらの材料の混合材料が好ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンは電解液に安定であり、高温での強度が要求される場合はポリブチレンテレフタレートなどが好ましい。
セパレータを構成する繊維の繊維径としては例えば約1μm〜約3μmのものが好ましく、加温したカレンダーロール処理により一部繊維同士が融着したものなどは薄型化や強度アップに効果的である。
【0055】
また、組電池又はモジュール電池を作成するために用いる電槽は、例えばアルミニウム等の金属で構成することもできる。内部の仕切り等を含む複雑な構造を有する電槽を得る場合には、樹脂製の電槽を用いることも可能である。この場合は、電槽の外壁等にアルミニウム箔を貼り付ける等して水分の進入を抑制するのが好ましい。
【0056】
また、上記非水電解質に含まれるリチウム塩(即ち溶媒に溶解させるリチウム塩)としては、従来公知のものを用いればよいが、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiN(CF3SO2)(C2F5SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のイミド類を挙げることができる。また、LiF又はLiCl等も挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて使用することができる。なかでも、アセトニトリル又はγ―ブチルラクトンを溶媒として用いる場合には、LiBF4が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に代表させて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0058】
《実施例1》
上記(3)で示した具体例に基づいて実施例を行った。即ち、本実施例においては、以下の構成要素を有する本発明の非水電解質二次電池を作製した。
正極活物質:Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4
負極活物質:Li4Ti5O12
非水電解質:アセトニトリルに1モル/リットルのLiBF4を溶解した電解液
セパレータ:セルガード(株)製のセルガード#2500
また、正極の容量を負極の容量よりも大きくし、負極容量を規制した。
【0059】
正極活物質は、マンガナイト(MnOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)及び水酸化リチウム(LiOH)を、所望する組成になるように充分に混合し、得られた混合物をプレスしてペレットを作成し、得られたペレットを550℃で10〜12時間、空気中で焼成(一次焼成)した。一次焼成後のペレットを粉砕し、得られた粉砕物を750℃、10〜12時間空気中で焼成(二次焼成)することにより、正極活物質を合成した。
一方、負極活物質については、炭酸リチウム(Li2CO3)及び酸化チタン(TiO2)を、所望する組成になるように混合し、得られた混合物を大気中、900℃で12時間焼成し、Li4Ti5O12を得た。
【0060】
正極及び負極は、上記正極活物質又は上記負極活物質を用い、以下のような同じ方法で作成した。正極活物質又は負極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラック6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を充分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔からなる集電体上に塗布した。塗布後の集電体を100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに真空中で85℃、14時間乾燥し、正極又は負極を得た。正極及び負極の厚みは、それぞれ0.287mm及び0.207mmとし、正極及び負極の密度はそれぞれ1.88g/cm3及び1.44g/cm3とした。また、正極の容量と負極の容量との比(Q(p)/Q(n))は1.20とし、電池容量が負極容量で規制された単セルからなる電気化学試験セル(非水電解質二次電池)を作製した。
【0061】
ここで、図11に、本実施例において作製した単セル20の構成を概念的に示す概略縦断面図を示す。この単セルは、樹脂製電槽1、アルミニウム製ラミネートフィルム2、負極集電リード3、セパレータ4、アルミニウム箔製集電体5、負極6、正極7、正極集電リード8、金属電極9、負極電極柱10、ガス抜き弁11、ゴム弁体12、正極電極柱14、を含む。また、符号13は非水電解質(電解液)液面を示している。
【0062】
以上のようにして作製した電気化学試験セルの充放電挙動を測定した。図1に、10サイクルまでの充放電挙動を示した。充放電試験では、充放電領域:0V〜2.9Vの定電流充放電を、電流密度:0.33mA/cm2で行った。正極と負極とが対峙する電極面積は3cm2であった。図1より、0V〜2.9Vの充放電領域で良好な充放電カーブとサイクル寿命を示すことがわかる。
【0063】
次に、10サイクル経過後の電気化学試験セルを用い、負荷特性評価試験を行った。結果を図2に示す。放電は、1mAから40mAまで、図2に示すように徐々に増加させた。残存容量を吐き出すために、0Vまで放電した後、6時間の休止時間をとり、さらに1mAで0Vまで放電した。これによりほぼ安全に放電状態にした後、次のサイクルの充電を行った。図2からわかるように、この電気化学試験セルはアセトニトリルを使用することで極めて高い負荷特性を有する。また、0Vまでの深放電を繰り返しても容量の低下はほとんど観測されない。
【0064】
《実施例2〜4》
本実施例においては、正極の容量と負極の容量とのバランスについて検証した。
実施例1のような電池系では、電池容量を負極容量で規制することが好ましい。これは、過充電領域ではなく通常の充放電領域においても、正極の電位幅を広げるより負極の電位幅を広げるほうが、正極活物質及び負極活物質を劣化させにくいからである。そして、正極に用いたスピネルマンガン材料の高電位領域における安定性を向上させる方法として、シンプルなLiMn2O4のリチウムを過剰にすることやAlを添加することが提案される。この提案を確認するために、電池容量が正極容量で規制された電気化学試験セルを作製し、充放電試験を行った。
【0065】
図3〜5にその結果を示す。実施例2〜4においては、それぞれのQ(p)/Q(n)、充放電領域、及び正極活物質1g当たりの電流値は、表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして電気化学試験セルを作製し同様に充放電試験を行った。ローレートで0Vまでの試験のほうが正極の高電位領域における安定性をより感度よく評価できると考えて以上のような条件で試験した。
【0066】
【表1】
【0067】
図3〜4からわかるように、実施例2の条件ではほぼ問題なく充放電が進行する。実施例4まで条件をきつくすると正極の劣化が観測される。同様の試験を、LiMn2O4を用いた場合には図3の条件でも劣化が観測されることから、Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用いることで改善されることがわかる。また、Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用いても、正極容量で規制する場合には、正極容量(Q(p))/負極容量(Q(n))が0.44より大きいことが好ましい。
【0068】
《比較例1》
アセトニトリルを溶媒として使用することの強負荷特性の観点からの利点について検証するための実施例を行った。図6に非水電解質として1モル/リットルのLiPF6をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒(EC/DMC=3/7;体積比)に溶解した電解液を用いた以外は、実施例2(図3)の電池と同様の電池を作成し、充放電挙動を示した。
Q(p)/Q(n)は0.78で、充放電電流は0.33mA/cm2、充放電領域は1V〜3Vであった。図6から、この電解液を用いても問題なく充放電が進行することがわかる。
【0069】
また、本実施例で作製した電気化学試験用セルのインピーダンスを測定した。その結果を図7及び図8に示した。図7は、実施例2の電池のインピーダンス測定の結果であり、図8は、本実施例の電池のインピーダンス測定の結果を示す。即ち、図7はアセトニトリル系電解液を用いた場合の結果を示し、図8はEC/DMC系電解液を用いた場合の結果を示す。それぞれの電池は、ほぼ50%の充電状態で、電圧は2.52V前後である。図7及び8の比較より、アセトニトリル系の電解液を使用した場合のほうがインピーダンスが低いことがわかる。このことから、アセトニトリルを溶媒として使用すると強負荷特性において有利であるものと考えられる。
【0070】
《実施例5》
本実施例においては、非水電解質として0.5モル/リットルのLiClO4をγ−ブチロラクトン(GBL)とアセトニトリル(AN)の混合溶媒(GBL/AN=1/1;体積比)に溶解して得られた電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電気化学試験用セルを作成した。この電池は、電池容量が正極容量で規制された電池であり、充放電電流は0.5mA/cm2で充放電領域は0V〜3Vであった。図9に充放電カーブを示し、図10にサイクル寿命を示した。図9及び10より、多少の分極が見受けられるが、塩濃度が0.5モル/リットルであることを考慮すると、良好な結果が得られていることが認められる。また、150サイクルまで大きな容量低下は観測されない。
【0071】
《実施例6及び比較例2》
本実施例においては、実施例1で作成した単セルを5個直列に接続してモジュール電池を作成し、評価試験を行った。
図12に、本実施例において作成したモジュール電池22の概略斜視図を示した。実施例1において作成した単セル20を5個使用したため、このモジュール電池22においては負極容量で規制されていた。また、使用した5個の単セル20の電気容量(負極の充放電可逆容量)は、あらかじめばらつきが生じるように構成した。具体的には基準の単セルの電気容量を100とした場合、他の4個の単セルの電気容量はそれぞれ95、90、105及び110になるように選定した。負極の重量で電池の容量が決まるため、負極の重量を基準に選定した。
【0072】
したがって、5個の単セルのQ(p)/Q(n)は厳密には同じではないが、全て1.2前後であった。また、比較例2として、比較例1で作成した単セル5個を用いてモジュール電池を作成して、同様に評価試験を行った。
充電の制御は両端を充電電圧15Vとした。2mAの定電流で0V〜15Vまでの充放電を3サイクル行った後の4サイクル目の放電容量をそれぞれ表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2より、比較例2における容量と実施例6における容量との間には、顕著な差が観測される。このことは、実施例6の電池構成によれば単セル間の容量ばらつきが生じてもガス発生をすることで各単セルが満充電まで充分に充電されるのに対して、比較例2の構成では容量の小さな単セルで容量が規制されることにより充電が不充分であることや、過充電になったセルがサイクルを経過することで劣化したことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、正極活物質、負極活物質及び電解液の組合せ、並びに正極の容量と負極の容量とのバランスを適切に選択されていることから、擬似的に過充電及び過放電(逆充電)の保護を両立し得る電池ケミストリーを実現することができ、組電池及びモジュール電池の制御を簡略化することのできる非水電解液二次電池を提供することができる。かかる本発明の非水電解液二次電池は、高エネルギー密度を有するとともに環境に優しく、鉛蓄電池代替技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の非水電解質二次電池の充放電挙動を示す図である。
【図2】本発明の非水電解質二次電池の強負荷放電特性を示す図である
【図3】正極容量規制の充放電挙動を示す図である。
【図4】正極容量規制の充放電挙動を示す別の図である。
【図5】正極容量規制の充放電挙動を示すさらに別の図である。
【図6】EC/DMC系電解液を用いた比較例の充放電挙動を示す図である。
【図7】AN系電解液を用いた本発明のインピーダンス測定の結果を示す図である。
【図8】EC/DMC系電解液を用いた比較例のインピーダンス測定の結果を示す図である。
【図9】AN/GBL系電解液を用いた本発明の充放電挙動を示す図である。
【図10】AN/GBL系電解液を用いた本発明のサイクル寿命を示す図である。
【図11】本発明の実施例において作成した単セル(非水電解質二次電池、電気化学試験用セル)の概略縦断面図である。
【図12】図11の単セル20を5個直列に接続した単セル群からなるモジュール電池の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 樹脂電槽
2 アルミラミネートフィルム
3 負極集電リード
4 セパレータ
5 アルミニウム集電体
6 負極電極
7 正極電極
8 正極集電リード
9 金属触媒電極
10 負極電極柱
11 ガス抜き弁
12 ゴム弁体
13 電解液面
14 正極電極柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、ハイレート放電特性に優れた電池であり、長期信頼性やコストを考慮して、現在も極めて広い範囲で産業上利用されている。かかる鉛蓄電池は、特に自動車用のスターター電池や各種の産業用・業務用のバックアップ電源として使用されている。そして、スターター電池およびバックアップ電源の2分野における鉛蓄電池の今後の動向は以下のように考えられる。
【0003】
バックアップ電源の分野においては、鉛蓄電池をニッケル水素蓄電池または非水電解液二次電池(リチウムイオン電池)に置き換えようとする動きが盛んである。この主な理由は、鉛蓄電池より高エネルギー密度の電池に置き換えることによって電源を小型化したいという要望や、環境負荷の観点から鉛を使用している電池に替えてクリーンな電池を用いたいという要望が存在する点にある。また、自動車に使用されているスターター用の鉛蓄電池に関しては、代替への大きな動きは見られないが、アイドリングストップ用の電源としてリチウムイオン電池の実用検討が開始されている。また、プリウス(商品名)などに代表されるハイブリッドカーには、既にニッケル水素蓄電池が採用されている。
【0004】
特にリチウムイオン電池は小型携帯用電源として10年以上にわたって実際に使用され、そのあいだ、その特徴である高いエネルギー密度が犠牲にされることなく、高い安全性や信頼性が確保される技術が確立されてきた。また、産業上の利用可能性のためのリチウムイオン電池の低コスト化も実現されつつある。これらのことからも、上記の2分野において、鉛蓄電池の代替としてリチウムイオン電池を用いる動きが今後加速されるものと考えられる。
【0005】
ここで、携帯電子機器の主電源として利用されているリチウムイオン電池は、以下のような構成要素を有する。即ち、正極に含まれる正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNi1/2-xMn1/2-xCoxO2)またはマンガンスピネル(LiMn2O4)等が用いられる。これらの正極活物質は、リチウムに対し4V以上の電圧を有している。そして、負極には、一般的にカーボン材料が使用され、上記正極と組み合わせることで4V級のリチウムイオン電池が実現される。これら以外にも種々の電池系が提案されており、例えば、高安全性の観点からは、例えば正極に鉄オリビン酸リチウム(LiFePO4)を用いることや、更なる高エネルギー密度の観点からは、負極にシリコン系合金を用いること等が提案されている。
【0006】
一方、電池を直列または並列に多数つないで得られる組電池(パック電池)や、一つの電槽内に複数の単セルを組み込んで得られるいわゆるモジュール電池に関しては、鉛蓄電池およびニッケル水素電池等の水溶液系電池と、リチウムイオン電池等の非水電解液系電池と、では、決定的な違いがある。ここで、モジュール電池とは、12Vの自動車用鉛蓄電池やハイブリッドカー用の角形ニッケル水素電池等の電池を意味する。上記モジュール電池は、例えば、樹脂製の電槽内に仕切りを設けて複数のスペースを形成し、各スペース内に単セルを組み込み、上記仕切りを貫通する孔を介して上記単セルを直列に接続して得られる。
【0007】
上記水溶液系電池では、水の電気分解を利用したいわゆるノイマン機構で過充電保護が行われている。例えばニッケル水素蓄電池は、負極の容量が正極の容量より大きくなるように設計されている。このように設計することにより、初回の充電で正極の化成に必要な不可逆容量分が負極に充電され、結果として放電リザーブと充電リザーブとの両方を負極が担うことが可能となる。このような設計で電池が構成されると、過充電時に正極から発生する酸素を、負極が吸収することが可能であり、逆充電時(過放電時)に発生する水素も負極が吸収することができる。
【0008】
その結果、モジュール電池やパック電池においては、1.2Vの電圧を有する単セルごとに充電制御等をする必要がなく、単セル複数個が直列につながれて6V、12V又は24V等の電圧を有するグループを、1つの単位として、充電制御することが可能である。しかしながら、現在実用化されているリチウムイオン電池においては、上記のようなノイマン機構が働くことは原理的に不可能であるため、過充電保護等をするために単セルごとに充電制御をする必要がある。このように単セルごとに充電制御をしなければならないことから、複数の単セルを含むリチウムイオン電池を上記2分野に使用する際には、コストが増加してしまうという問題がある。また、単セルごとに電池電圧を監視し、上記グループの両端のみで電流を制御することも考えられるが、容量の最も小さな単セルで充電を終了しなければならず、あまり効果的ではない。
【0009】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は鉛蓄電池代替として、特に過充電保護を外部の電子回路に頼ることなく内部のケミストリーで解決し得る非水電解質二次電池を実現することに主眼を置いている。
【0010】
このような非水電解質二次電池に関連するものとして、例えば特許文献1には、組電池(集合電池)の過放電に耐える非水電解液電池システムが提案されている。ここでは、正極及び負極の活物質にいずれもスピネル系リチウム含有金属酸化物を使用されており、具体的にはリチウムマンガン酸化物(Li1.05Mn0.95O4)を正極活物質に用い、リチウムチタン酸化物(Li1.035Ti1.965O4)を負極活物質に用いることが記載されている。Tiは平均価数が3.5価であるため、過放電時(逆充電時)にTiが4価になるまで、負極のLi1.035Ti1.965O4はLiを放出して酸化することが可能である。これと同時に、Mnは平均価数が3.6価であるため、Mnが3価になるまで、正極のLi1.05Mn1.95O4はLiを吸蔵することが可能である。そのため、過放電(逆充電)においても活物質の可逆性は損なわれない、と上記特許文献1には記載されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1には過充電保護に関する記述はない。正極活物質の容量と負極活物質の容量とのバランスについても、実施例の記述を参酌しても特に考慮されていないように見受けられる。また、非水電解質に関しても特筆すべき点はなく、実施例に示された「1モル/リットルのLiPF6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液」は、現在リチウムイオン電池に一般的に使用されているものである。
【0012】
また、非特許文献1においては、リチウムイオン電池における過充電保護の技術が提案されている。これは、レドックスシャトルと呼ばれる技術に関し、通常に使用される非水電解質に酸化還元能を有する添加剤を添加することを特徴とする。過充電時に正極で上記添加剤が酸化され、酸化された上記添加剤が負極に拡散し、負極上で逆の反応が起こり、これによって過充電電流が吸収されると述べられている。具体的には、LiFePO4を含む正極活物質及びLi4/3Ti5/3O4を含む負極活物質を用いた系において、レドックスシャトル(添加剤)として2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼンが有望であることが示されている。
【0013】
しかしながら、このレドックスシャトルのコンセプトは従前から提案されているものの、シャトルの反応速度が遅く、実用電池においては過充電保護に使用できるほどの過充電レートを確保することができないという致命的な問題がある。また、酸化還元の電気化学反応に伴って無視できない発熱反応が起こるため、レドックスシャトルのコンセプトは現実的でないといった問題もある。
【0014】
また、特許文献2には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を含む正極、及びチタン酸リチウム(Li4/3Ti5/3O4)を含む負極を用いた系が開示されている。当該特許文献2には、正極の容量と負極の容量とのバランスに関する記述があり、負極の容量を正極の容量の0.6から1.0未満までにして、電池の容量を負極の容量で規制すること(負極容量規制)が望ましいとされている。もっとも、これはサイクル寿命の観点から負極容量規制が望ましいとされているだけであり、過充電及び過放電の保護に関してはなんら言及されていない。
【0015】
更に特許文献3には、リチウム若しくはリチウム合金、又は、スピネル型構造のリチウム−チタン酸化物を含む負極活物質、スピネル型構造のリチウム−マンガン酸化物Li4/3Mn5/3O4を含む正極活物質、LiN(CF3SO2)2、を含む非水電解質、並びにエチレンカーボネートを含む2成分系以上の混合溶媒を用いる電池系が示されている。しかしながら、当該特許文献3は、単に電解液の最適化によるサイクル寿命及び保存特性の改良を意図するものである。
【0016】
また、上記のような鉛蓄電池代替に関連する先行技術としては、例えば特許文献4及び特許文献5等が挙げられ、高電導度を有する非水電解質の実現を期待して、アセトニトリルを溶媒として含む電解液が特許文献6に提案されている。
【特許文献1】特開平8−22841号公報
【特許文献2】特開平7−335261号公報
【特許文献3】特開平10−27609号公報
【特許文献4】特開2003−323893号公報
【特許文献5】特開2005−142047号公報
【特許文献6】特開平10−106626号公報
【非特許文献1】J.R.Dahnら著、J.Electrochem.Soc.,152,2390(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のように、直列または並列に接続された単セル複数個を含む組電池(パック電池)や、一つの電槽内に複数の単セルが組込まれたモジュール電池に関して、ノイマン機構が働く鉛蓄電池及びニッケル水素電池等の水溶液系電池と、ノイマン機構が原理的に働かない現行のリチウムイオン電池等の非水電解液系電池と、は決定的に異なる。例えば、自動車用鉛蓄電池の場合、直列に接続された単セル6個を電槽内に含む12Vの電池を、両端の電圧のみを制御することで充放電を制御することが可能であるが、単セル複数個を含むリチウムイオン電池では、単セル間の容量に微小であっても差が生じると、単セル複数個のグループの両端の電圧のみを制御することによって充放電を線制御することは不可能であり、単セルを制御しなければ過充電及び過放電は生じて安全性及び信頼性が著しく低下してしまう。高い電圧及び出力が必要な産業用のバックアップ電源や自動車用の電源としてリチウムイオン電池を使用する場合、単セルごとの制御には大きなコストがかかる。
【0018】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するもので、鉛蓄電池代替として、特に過充電保護を外部の電子回路に頼ることなく内部のケミストリーで解決し得る非水電解質二次電池を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、正極活物質、負極活物質及び電解液の組合せ、並びに正極の容量と負極の容量とのバランスを適切に選択することにより、擬似的に過充電及び過放電(逆充電)の保護を両立し得る電池ケミストリーを提供し、組電池及びモジュール電池の制御を簡略化することのできる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような課題を解決すべく、本発明は、
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
このような構成により、負極の容量が正極の容量よりも小さくても、非水電解質の少なくとも一部が分解して上記負極の容量を補填するため(擬似ノイマン機構)、過充電及び、さらに適切な材料組成を選定することで、過放電(逆充電)に対しても劣化しにくいという効果を奏する。
【0020】
また、本発明は、
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極が、一般式:Li1+xM2-XO4(MはMnとAlとを含み、x>1)で表されかつスピネル構造を有するリチウム複合酸化物からなる正極活物質を含み、
前記負極が、スピネル構造を有するチタン酸化物からなる負極活物質を含み、
前記非水電解質が、アセトニトリルを主溶媒として含むことを特徴とする非水電解質二次電池を提供する。
なお、主溶媒とは、体積比率で溶媒全体の50%以上含まれる溶媒成分をいう。
このような構成によれば、正極の高電位領域での安定性が高く、アセトニトリルを含む電解液によりインピーダンスが低くなり、レート特性が良好になる。
【0021】
本発明の非水電解質二次電池は、前記単セルを複数個含む組電池又はモジュール電池としても用いることができる。
この場合、上記のような擬似ノイマン機構によって、容量の大きな単セルが、容量の小さな単セルを補填するため、組電池又はモジュール電池全体として、単セル間の容量ばらつきを吸収することができ、過放電だけでなく過充電に対しても劣化しにくいという効果を奏する。
【0022】
上記非水電解質二次電池においては、前記非水電解質の少なくとも一部が、前記負極近傍においてガス化するものであるのが好ましい。
また、前記非水電解質の少なくとも一部が、リチウム金属に対して1.5V〜0.3Vの間でガス化するものであるのが好ましい。
また、上記非水電解質二次電池は、上記負極及び上記正極とは別に、上記ガス化のための金属電極を含むのが好ましい。前記金属電極としては、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。したがって、上記金属電極は、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも2種を含む合金で構成されていてもよい。
【0023】
前記負極がリチウム含有チタン酸化物を含むのが好ましい。
上記リチウム含有チタン酸化物としては、Li3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)が好ましい。
また、上記リチウム含有チタン酸化物は、0.1μm〜8μmの粒径を有する結晶粒子と、2μm〜30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物であるのが好ましい。
上記負極は、集電体として、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む集電体を具備するのが好ましい。
【0024】
また、上記非水電解質が、充電時にガス化する成分として、溶媒であるニトリル化合物を含有するのが好ましい。
前記ニトリル化合物はモノニトリル化合物であるのが好ましい。かかるモノニトリル化合物としては、例えばアセトニトリルまたはプロピオニトリルが好ましい。
また、上記ニトリル化合物は、さらにジニトリル化合物を含むのが好ましい。かかるジニトリル化合物としては、例えばマロンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリルまたはアジポニトリルが好ましい。
また、前記非水電解質は、溶媒として酢酸メチル、酪酸メチルまたはγ−ブチロラクトンを含有するのが好ましい。
【0025】
また、前記正極は、正極活物質として、スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を含むのが好ましい。かかるスピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物としては、Li1+xMn2-x-yAyO4(0≦x<1/3、0≦y≦0.6、AはAl、NiおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種)であるのが好ましい。
また、前記正極は、正極活物質として、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、Meは、Mn、Fe、Co、TiおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niと、を含む遷移金属)を含むのが好ましい。かかる正極活物質としては、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、過充電及び過放電(逆充電)に対して劣化しにくい非水電解質二次電池を提供することができる。また、複数の単セルを含む場合には、過充電及び過放電の保護を電池のケミストリーで行うことで単セルの容量ばらつきを外部の制御回路に頼ることなく吸収できる。これにより、組電池やモジュール電池の制御を簡略化できる非水電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池に関する。以下においては、本発明の非水電解質二次電池の一実施の形態について、各構成要素及びその作成方法について説明する。
【0028】
(1)負極活物質の合成とそれを用いた負極の作成
本発明における負極活物質としては、リチウム含有チタン酸化物を用いるのが好ましい。なかでも、Li3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)を好適に用いることができる。例えば炭酸リチウム(Li2CO3)または水酸化リチウム(LiOH)などのリチウム化合物と、酸化チタン(TiO2)と、を所望する組成となるように混合し、得られた混合物を、大気中または酸素気流中等の酸化雰囲気下で例えば約800℃〜約1000℃の温度で焼成することにより、Li3+3xTi6-3xO12を容易に合成することができる。
なお、Li4Ti5O12(Li3+3xTi6-3xO12においてx=1/3の場合)におけるTiの価数は4価である。
【0029】
負極活物質として好適に用いることができるリチウム含有チタン酸化物であるLi3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)は、例えば約0.1μm〜約8μmの粒径を有する結晶粒子と、約2μm〜約30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物からなるのが好ましい。
また、負極活物質でLiを吸蔵させることによって過放電(逆充電)対策を講じる場合には、Tiの価数を4価未満にしてもよい。具体的は、Li3+3xTi6-3xO12においてx<1/3を満たすことによって、Li1.035Ti1.965O4を用いてもよい。
なお、スピネル構造を有するチタン酸化物であるLi4Ti5O12は、現在既に市販されている電池に搭載されており、高品質のものを購入することができる。
【0030】
負極は、例えば負極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラックを6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を十分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔製の集電体(芯材)上に塗布する。塗布後の集電体を例えば100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに例えば真空中で85℃、14時間乾燥し、板状又はシート状の負極を得る。負極の厚み及び充填密度等は、電池の設計(正極の容量と負極の容量とのバランス)に合わせて適宜変更すればよい。例えば電気化学測定等の試験時には、厚みを例えば約0.3mm〜約0.2mmとし、電極密度を例えば約1.0g/cm3〜約2.0g/cm3とすればよい。また、電池試験評価を行う場合には、厚みを5mm程度まで厚くしてもよい。1mm以下の薄型負極を用いることもできるが、電池容量を確保するためには1mm以上の負極を用いるのが有利である。
【0031】
(2)正極活物質の合成とそれを用いた正極の作成
本発明における正極活物質としては、種々のものを用いることができるが、なかでもスピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を好適に用いることができる。
スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物であるLi[LixMn2-x]O4(0≦x<0.33)を作成する場合には、まずマンガナイト(MnOOH)と水酸化リチウム(LiOH)とを、所望する組成になるように十分に混合し、例えば約500℃〜約600℃で10〜12時間、空気中で焼成(一次焼成)する。このとき、必要であれば、得られた焼成物(粉末)をプレスしてペレットを作成したり、又は、上記焼成物(粉末)を造粒してもよい。上記のような一次焼成により得られた材料を、さらに粉砕し、得られた粉砕物を例えば約700℃〜約800℃、約10〜約12時間空気中で焼成(二次焼成)することにより、正極活物質を合成することができる。
【0032】
正極活物質としてLi1+xMn2-x-yAyO4(0≦x≦0.3、0≦y≦0.6、AはAl、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種)を用いる場合は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、Ni(OH)2又はFeOOHを、を所望する組成になるように、上記のマンガナイトと水酸化リチウムとの混合物に混合すればよい。その後の焼成条件は上記と同様にすればよい。ただし、Ni(OH)2を用いる場合は、添加量が増加するとニッケルとマンガンとが十分にナノレベルで混合することが困難になるため、充分な分散状態が得られるように、焼成温度を上げることが好ましい。具体的には一次焼成温度を約900℃〜約1100℃にまで上昇させることが好ましい。また、二次焼成温度は、約600℃〜約800℃くらいに低下させ、高温焼成時に欠乏気味の酸素を戻す条件にすることが好ましい。
【0033】
さらに、ニッケルとマンガンとを原子レベルで分散させるためには、あらかじめニッケルとマンガンとを含む複合水酸化物を作成して、これを原材料として用いることが好ましい。例えば、Li[Ni1/2Mn3/2]O4を作成する場合には、ニッケルとマンガンとの比率が1対3となるように共沈法などで複合水酸化物(酸化物)を作成し、得られた複合酸化物と水酸化リチウムとを十分に混合した後、得られた混合物を例えば約1000℃まで急過熱する。約1000℃に約12時間保持した後、約700℃まで温度を降下させ、約700℃で約48時間保持する。この後は室温まで自然冷却すればよい。
【0034】
正極活物質として好適に用いることのできる、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、MeはMn、Fe、Co、Ti及びCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niとを含む遷移金属)は、所望する正極活物質を構成する元素を含む酸化物、水酸化物及び/又は炭酸塩等を、所定の組成になるように混合し、得られた混合物を焼成することで合成することができる。2種以上の遷移金属をナノレベルで分散して含む正極活物質を合成するためには、可能な限り微細な粉末材料と、ボールミル等の粉砕混合機と、を用いて十分に混合した後、得られた混合物を焼成することが好ましい。
【0035】
また、特にニッケルとマンガンとは分散しにくいため、共沈法等によりあらかじめ複合水酸化物(酸化物)を作成することも効果的である。例えば、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)を作成する場合は、所定量の、共沈法で作成した[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z](OH)2と水酸化リチウムとを充分に混合した後、得られた混合物をペレット状に成型して焼成する。このときの焼成温度は例えば約900℃〜約1100℃であるのが好ましい。このときのその他の詳細な技術についいては、上述した特許文献4及び5に開示されている技術を利用することができる。
【0036】
なお、正極は、上記負極と同様にして作成することができる。例えば正極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラックを6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を十分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔製の集電体上に塗布する。塗布後の集電体を例えば100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに例えば真空中で85℃、14時間乾燥し、板状又はシート状の正極を得る。正極の厚み及び充填密度等は、電池の設計(正極の容量と負極の容量とのバランス)に合わせて適宜変更すればよい。例えば電気化学測定等の試験時には、厚みを例えば約0.3mm〜約0.2mmとし、電極密度を例えば約1.0g/cm3〜約2.0g/cm3とすればよい。また、電池試験評価を行う場合には、厚みを5mm程度まで厚くしてもよい。1mm以下の薄型正極を用いることもできるが、電池容量を確保するためには1mm以上の負極を用いるのが有利である。
【0037】
ここで、本発明においては、上記正極の容量が上記前記負極の容量よりも大きいことを特徴とする。即ち、本発明の非水電解質二次電池においては、正極の容量Q(p)と、負極の容量Q(n)とが、関係式:Q(p)/Q(n)>1を満たす。このような関係式を満たす正極及び負極の組合せは、当業者であれば適宜選択することができる。
また、上記「容量」とは、「理論容量」のことをいう。
材料の組合せによって多少変化するが、本発明の場合、「容量」は下記のように求められる。正極の場合は、リチウムメタル基準で2V〜4.5Vの電位範囲の充放電可逆容量を指す。負極の場合は、同じくリチウムメタル基準で1.0V〜2.0Vの電位範囲の充放電可逆容量を指す。
【0038】
(3)非水電解質に関して
本発明における非水電解質は、非水電解質二次電池の充電時にその少なくとも一部が分解することを特徴とするものである。非水電解質は、充電時、特に満充電時にガス化する成分を含んでいればよいが、用いる正極及び負極活物質に適した非水電解質を選定することが必要である。正極及び負極活物質は、それぞれの充放電電位でリチウムを吸蔵又は放出する。この反応で電池が成り立つため、当該反応を妨げるような領域で非水電解質がガス化するような副反応が起こると、電池が成立しないおそれがある。したがって、本発明の非水電解質は、電池が満充電され、さらにそれ以降の充電によって非水電解質の少なくとも一部がガス化するように、構成されていることが必要である。
【0039】
このことは、水溶液中で過充電により正極から酸素が発生する現象に似ている。理解の容易のため、具体的な例を挙げて説明する。正極にスピネル構造を有するマンガン酸化物であるLi[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を使用し、負極活物質にLi4Ti5O12を使用する場合を想定する。正極の容量と負極の容量とのバランスについては、負極の容量に対して正極の容量が1.2倍になるように、上述した方法で作成された正極及び負極を用いる場合を想定する。これは、いわゆる負極容量規制の非水電解質二次電池である。ただし、正極及び負極の厚み及び密度は、それぞれ電気化学測定用である約0.3mm〜約0.2mm及び約1.0g/cm3〜約2,0g/cm3とする。また、正極及び負極の集電体には、いずれもアルミニウム箔を使用し、非水電解質にはアセトニトリル溶媒に1モル/リットルのLiBF4を溶解させて得られた電解液を用いる。さらに、セパレータにはポリエチレン(PE)製の微多孔膜を使用する。
【0040】
このような構成を有する非水電解質二次電池を充電すると、負極の容量分までは通常の充電が可能である。即ち3Vの充電を行うことで満充電にすることが可能である。ただし、正極はリチウムに対して4V、負極は1.5Vの充放電電位を有するため、平均電池電圧は2.5Vとなる。これ以上の電圧になると、容量の小さい負極の電位が低下する。ここで、負極の電位がアセトニトリルの分解電位まで低下すると、アセトニトリルが分解してガス化する。このとき主にメタンガスが発生すると考えられる。そして、負極の充放電電位が1.5Vであるため、これより卑な電位で還元分解することが必要である。集電体に使用したアルミニウム箔は約0.3Vでリチウム吸蔵を行うため、この集電体を使用する場合は、1.5V〜0.3Vの領域で還元されガス発生する溶媒を用いる必要があるが、アセトニトリルはこの条件を充分に満たしている。
【0041】
上記のように非水電解質の少なくとも一部が分解して発生したガスは、非水電解質二次電池に一般的に設けられるガス抜き弁等を経て電池外に放出すればよい。このようなガス抜き弁等によって熱が排出されるため、従来のレドックスシャトル等のような発熱による問題は回避することができる。
上記ガス抜き弁は、リセッタブル(復帰式)であればよい。また、アセトニトリルのガス化により減少した電解液を補充可能な弁構造を有するものが好ましい。
【0042】
アルミニウム箔からなる集電体を使用するのは以下の理由による。即ち、上記非水電解質二次電池を0Vまで放電した場合、負極の容量が規制されているため、負極の電位は4V付近まで上昇する。もし、一般的に使用される銅等からなる集電体を用いた場合には、銅が溶解し、結果として内部短絡を発生してしまうというおそれがある。したがって、この意味から、アルミニウム箔からなる集電体を使用することの意義が大きい。
なお、負極活物質として黒鉛等を使用した場合には、黒鉛の充放電反応が起こる前にアセトニトリルの分解が生じるため、電池としての容量が取り出せない。また、アセトニトリルと同様の働きをするものとして、例えば酢酸メチル、酪酸メチル及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0043】
以上のように、本発明に係る非水電解質二次電池は、正極活物質、負極活物質、これらの容量バランス設計、適切な電位領域で分解する非水電解質、及び集電体の材質等について、最適なものを選択して組み合わせることによって実現することができる。もちろん、上述した内容は、本発明を限定するものではなく、本発明の効果が得られる範囲であれば、種々の組合せを適宜選択することが可能である。また、上記では還元側を利用したが酸化側を利用してもよい。
【0044】
上記では、ガス発生による過充電保護のみについて本発明を説明したが、本発明においては、過放電(逆充電)に対する保護も可能である。例えば、上述の実施の形態において、以下の2点を変更すれば、過充電及び過放電の両方に対する保護が可能な非水電解質二次電池を実現することができる。
まず、第1点目は、負極に使用するチタン酸化物の組成を変更することである。具体的には、Li3+3xTi6-3xO12(x<1/3)を使用する。第2点目は、上記実施の形態においては負極の容量に対して正極の容量を1.2倍(Q(p)/Q(n)=1.2)としたが、負極の容量を規制したままQ(p)/Q(n)を1.0に近づけることである。このようにすると、上述したように、過放電(逆充電)時の保護が可能である。すなわち、過放電(逆充電)時に負極からリチウムを放出することが可能になり、これにより過放電(逆充電)保護が可能となる。
【0045】
アセトニトリルは高誘電率および高電導度の溶媒であるため、ハイレート放電及び高出力パルスを必要とする用途に適している。鉛蓄電池はハイレート放電及び高出力パルスを必要とする分野に使用されることが多く、この意味においても本発明の非水電解質二次電池は鉛蓄電池代替技術として好ましいと言える。なお、本発明は、非水電解質を過剰に用い、かつその少なくとも一部をガス化させることによって、非水電解質のバランスを保持しているとも言える。
【0046】
また、アセトニトリルに加えて、例えばシクシノニトリル、グルタロニトリル又はアジポニトリル等のジニトリル化合物を追加的に添加してもよい。これらジニトリル化合物はアセトノトリルよりも高い粘性を有することから液面に存在し易く、粘性が低いモノニトリル化合物がガス発生時に飛沫としてガス抜き弁等からガスとともに放出されることをより確実に抑制することができる。すなわち、これらのジニトリル化合物は、液面においてアセトニトリルの飛沫防止剤として機能する。
【0047】
(4)金属電極について
上述のように、非水電解質の少なくとも一部が分解してガスが発生する場合、充放電する電極(特に負極)の表面全体において分解が起こると、次第に電極が劣化するおそれがある。そのため、本発明の非水電解質二次電池は、ガス発生のための金属電極を備えることが好ましい。
かかる金属電極の材料としては、用いる非水電解質の種類にも依存するが、例えばニッケル、銅、鉄又はステンレス鋼等を用いることが、触媒作用をすることが期待できるという観点から、好ましい。この触媒作用により金属電極上で選択的にガスを発生させることが可能となる。
【0048】
このような金属電極を設けることにより、充放電を行う電極(特に負極)表面全体でガスが発生することを抑制し、電極の破壊等の懸念を抑制することができる。具体的に、例えば上記(3)の形態においては、過充電時に、負極に設けられた集電リード付近の電位がもっとも早く卑になるため、この付近に上記金属電極を取り付けるのが好ましい。なお、金属電極の大きさ等については、本発明の効果及び非水電解質二次電池本来の機能を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0049】
(5)組電池又はモジュール電池とその充電制御について
上記(1)〜(4)においては、単セルからなる非水電解質二次電池について説明したが、本発明の非水電解質二次電池は、直列に接続された上記単セル複数個を含む組電池又はモジュール電池にも適用することができる。また、場合によっては、並列に接続された単セルを含んでいても構わない。
上記(3)における構成を有する単セルを用いて本発明の組電池又はモジュール電池について説明する。なお、上記(3)においては、正極にLi[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用い、負極にLi4Ti5O12を用い、非水電解質として、アセトニトリル溶媒に1モル/リットルのLiBF4を溶解して得られた電解液を用いている。また、負極の容量が正極の容量よりも小さく、負極の容量が規制されている。
【0050】
上記のような単セル5個を直列に接続して得られた組電池について説明する。この組電池の両端を15Vで充電する。直列に接続した5個の単セルの間に、作製上回避できない容量のばらつきが発生し、最も容量の小さい単セルが過充電になっても、アセトニトリルの分解によるガス発生により当該単セルの急激な電圧上昇は起こらず、他の単セルも充分に充電される。しかし、このようなガス発生メカニズムが働かない場合には、最も小さい容量の単セルの電圧が急激に上昇するが、両端の15Vは変化しないため、その他の単セルは充分に充電されることなく充電が終了してしまう。
【0051】
端的に言えば、直列に接続された単セルのうちの、最も容量の小さい単セルと同等にしか、他の単セルも充電されないことになる。さらに、過充電された単セルは大きなダメージを受け、サイクル寿命も著しく低下してしまう。これまでは、このような容量のばらつきに起因する問題を防ぐために、ノイマン機構を持たない非水電解質二次電池では個々の単セルで充電を制御していた。この場合は、個々の単セルの電圧が3Vである。
以上のように、本発明は、単セル複数個を直列につないで得られる単セル群を含む組電池又はモジュール電池において、顕著な効果を発揮する。即ち、配線及び充電制御コストを飛躍的に抑えることが期待されると同時に、万が一制御のエラーが生じても組電池又はモジュール電池の劣化も最小限に抑えることが期待できる。
【0052】
したがって、本発明は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む、直列に接続された単セル複数個からなる単セル群を具備し、前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化する組電池又はモジュール電池の制御方法であって、少なくとも2つの上記単セルを1単位として充放電制御することを特徴とする組電池又はモジュール電池の制御方法をも提供する。
【0053】
(5)その他の構成部材について
本発明の非水電解質二次電池の、上記以外の構成要素については、従来公知のものを用いることができる。例えばセパレータとしては、従来から使用されているポリオレフィンの微多孔膜の他、不織布を使用することも可能である。不織布は、高い液保持能を有するため、レート特性、特にパルス特性を飛躍的に改善するために有効に使用することができる。また、ポーラスフィルム等の高度で複雑な製造工程を必要としないため、セパレータ材料の選択の幅が広がると同時に安価である。
【0054】
本発明の非水電解質二次電池への適用を考慮すると、セパレータの材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートや、これらの材料の混合材料が好ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンは電解液に安定であり、高温での強度が要求される場合はポリブチレンテレフタレートなどが好ましい。
セパレータを構成する繊維の繊維径としては例えば約1μm〜約3μmのものが好ましく、加温したカレンダーロール処理により一部繊維同士が融着したものなどは薄型化や強度アップに効果的である。
【0055】
また、組電池又はモジュール電池を作成するために用いる電槽は、例えばアルミニウム等の金属で構成することもできる。内部の仕切り等を含む複雑な構造を有する電槽を得る場合には、樹脂製の電槽を用いることも可能である。この場合は、電槽の外壁等にアルミニウム箔を貼り付ける等して水分の進入を抑制するのが好ましい。
【0056】
また、上記非水電解質に含まれるリチウム塩(即ち溶媒に溶解させるリチウム塩)としては、従来公知のものを用いればよいが、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiN(CF3SO2)(C2F5SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のイミド類を挙げることができる。また、LiF又はLiCl等も挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて使用することができる。なかでも、アセトニトリル又はγ―ブチルラクトンを溶媒として用いる場合には、LiBF4が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に代表させて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0058】
《実施例1》
上記(3)で示した具体例に基づいて実施例を行った。即ち、本実施例においては、以下の構成要素を有する本発明の非水電解質二次電池を作製した。
正極活物質:Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4
負極活物質:Li4Ti5O12
非水電解質:アセトニトリルに1モル/リットルのLiBF4を溶解した電解液
セパレータ:セルガード(株)製のセルガード#2500
また、正極の容量を負極の容量よりも大きくし、負極容量を規制した。
【0059】
正極活物質は、マンガナイト(MnOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)及び水酸化リチウム(LiOH)を、所望する組成になるように充分に混合し、得られた混合物をプレスしてペレットを作成し、得られたペレットを550℃で10〜12時間、空気中で焼成(一次焼成)した。一次焼成後のペレットを粉砕し、得られた粉砕物を750℃、10〜12時間空気中で焼成(二次焼成)することにより、正極活物質を合成した。
一方、負極活物質については、炭酸リチウム(Li2CO3)及び酸化チタン(TiO2)を、所望する組成になるように混合し、得られた混合物を大気中、900℃で12時間焼成し、Li4Ti5O12を得た。
【0060】
正極及び負極は、上記正極活物質又は上記負極活物質を用い、以下のような同じ方法で作成した。正極活物質又は負極活物質88wt%、導電剤であるアセチレンブラック6wt%、及び結着剤であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)6wt%を充分に混合した後、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、得られた混合物をアルミニウム箔からなる集電体上に塗布した。塗布後の集電体を100℃で30分乾燥させた後、使用直前にさらに真空中で85℃、14時間乾燥し、正極又は負極を得た。正極及び負極の厚みは、それぞれ0.287mm及び0.207mmとし、正極及び負極の密度はそれぞれ1.88g/cm3及び1.44g/cm3とした。また、正極の容量と負極の容量との比(Q(p)/Q(n))は1.20とし、電池容量が負極容量で規制された単セルからなる電気化学試験セル(非水電解質二次電池)を作製した。
【0061】
ここで、図11に、本実施例において作製した単セル20の構成を概念的に示す概略縦断面図を示す。この単セルは、樹脂製電槽1、アルミニウム製ラミネートフィルム2、負極集電リード3、セパレータ4、アルミニウム箔製集電体5、負極6、正極7、正極集電リード8、金属電極9、負極電極柱10、ガス抜き弁11、ゴム弁体12、正極電極柱14、を含む。また、符号13は非水電解質(電解液)液面を示している。
【0062】
以上のようにして作製した電気化学試験セルの充放電挙動を測定した。図1に、10サイクルまでの充放電挙動を示した。充放電試験では、充放電領域:0V〜2.9Vの定電流充放電を、電流密度:0.33mA/cm2で行った。正極と負極とが対峙する電極面積は3cm2であった。図1より、0V〜2.9Vの充放電領域で良好な充放電カーブとサイクル寿命を示すことがわかる。
【0063】
次に、10サイクル経過後の電気化学試験セルを用い、負荷特性評価試験を行った。結果を図2に示す。放電は、1mAから40mAまで、図2に示すように徐々に増加させた。残存容量を吐き出すために、0Vまで放電した後、6時間の休止時間をとり、さらに1mAで0Vまで放電した。これによりほぼ安全に放電状態にした後、次のサイクルの充電を行った。図2からわかるように、この電気化学試験セルはアセトニトリルを使用することで極めて高い負荷特性を有する。また、0Vまでの深放電を繰り返しても容量の低下はほとんど観測されない。
【0064】
《実施例2〜4》
本実施例においては、正極の容量と負極の容量とのバランスについて検証した。
実施例1のような電池系では、電池容量を負極容量で規制することが好ましい。これは、過充電領域ではなく通常の充放電領域においても、正極の電位幅を広げるより負極の電位幅を広げるほうが、正極活物質及び負極活物質を劣化させにくいからである。そして、正極に用いたスピネルマンガン材料の高電位領域における安定性を向上させる方法として、シンプルなLiMn2O4のリチウムを過剰にすることやAlを添加することが提案される。この提案を確認するために、電池容量が正極容量で規制された電気化学試験セルを作製し、充放電試験を行った。
【0065】
図3〜5にその結果を示す。実施例2〜4においては、それぞれのQ(p)/Q(n)、充放電領域、及び正極活物質1g当たりの電流値は、表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして電気化学試験セルを作製し同様に充放電試験を行った。ローレートで0Vまでの試験のほうが正極の高電位領域における安定性をより感度よく評価できると考えて以上のような条件で試験した。
【0066】
【表1】
【0067】
図3〜4からわかるように、実施例2の条件ではほぼ問題なく充放電が進行する。実施例4まで条件をきつくすると正極の劣化が観測される。同様の試験を、LiMn2O4を用いた場合には図3の条件でも劣化が観測されることから、Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用いることで改善されることがわかる。また、Li[Li0.1Al0.1Mn1.8]O4を用いても、正極容量で規制する場合には、正極容量(Q(p))/負極容量(Q(n))が0.44より大きいことが好ましい。
【0068】
《比較例1》
アセトニトリルを溶媒として使用することの強負荷特性の観点からの利点について検証するための実施例を行った。図6に非水電解質として1モル/リットルのLiPF6をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒(EC/DMC=3/7;体積比)に溶解した電解液を用いた以外は、実施例2(図3)の電池と同様の電池を作成し、充放電挙動を示した。
Q(p)/Q(n)は0.78で、充放電電流は0.33mA/cm2、充放電領域は1V〜3Vであった。図6から、この電解液を用いても問題なく充放電が進行することがわかる。
【0069】
また、本実施例で作製した電気化学試験用セルのインピーダンスを測定した。その結果を図7及び図8に示した。図7は、実施例2の電池のインピーダンス測定の結果であり、図8は、本実施例の電池のインピーダンス測定の結果を示す。即ち、図7はアセトニトリル系電解液を用いた場合の結果を示し、図8はEC/DMC系電解液を用いた場合の結果を示す。それぞれの電池は、ほぼ50%の充電状態で、電圧は2.52V前後である。図7及び8の比較より、アセトニトリル系の電解液を使用した場合のほうがインピーダンスが低いことがわかる。このことから、アセトニトリルを溶媒として使用すると強負荷特性において有利であるものと考えられる。
【0070】
《実施例5》
本実施例においては、非水電解質として0.5モル/リットルのLiClO4をγ−ブチロラクトン(GBL)とアセトニトリル(AN)の混合溶媒(GBL/AN=1/1;体積比)に溶解して得られた電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして電気化学試験用セルを作成した。この電池は、電池容量が正極容量で規制された電池であり、充放電電流は0.5mA/cm2で充放電領域は0V〜3Vであった。図9に充放電カーブを示し、図10にサイクル寿命を示した。図9及び10より、多少の分極が見受けられるが、塩濃度が0.5モル/リットルであることを考慮すると、良好な結果が得られていることが認められる。また、150サイクルまで大きな容量低下は観測されない。
【0071】
《実施例6及び比較例2》
本実施例においては、実施例1で作成した単セルを5個直列に接続してモジュール電池を作成し、評価試験を行った。
図12に、本実施例において作成したモジュール電池22の概略斜視図を示した。実施例1において作成した単セル20を5個使用したため、このモジュール電池22においては負極容量で規制されていた。また、使用した5個の単セル20の電気容量(負極の充放電可逆容量)は、あらかじめばらつきが生じるように構成した。具体的には基準の単セルの電気容量を100とした場合、他の4個の単セルの電気容量はそれぞれ95、90、105及び110になるように選定した。負極の重量で電池の容量が決まるため、負極の重量を基準に選定した。
【0072】
したがって、5個の単セルのQ(p)/Q(n)は厳密には同じではないが、全て1.2前後であった。また、比較例2として、比較例1で作成した単セル5個を用いてモジュール電池を作成して、同様に評価試験を行った。
充電の制御は両端を充電電圧15Vとした。2mAの定電流で0V〜15Vまでの充放電を3サイクル行った後の4サイクル目の放電容量をそれぞれ表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2より、比較例2における容量と実施例6における容量との間には、顕著な差が観測される。このことは、実施例6の電池構成によれば単セル間の容量ばらつきが生じてもガス発生をすることで各単セルが満充電まで充分に充電されるのに対して、比較例2の構成では容量の小さな単セルで容量が規制されることにより充電が不充分であることや、過充電になったセルがサイクルを経過することで劣化したことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、正極活物質、負極活物質及び電解液の組合せ、並びに正極の容量と負極の容量とのバランスを適切に選択されていることから、擬似的に過充電及び過放電(逆充電)の保護を両立し得る電池ケミストリーを実現することができ、組電池及びモジュール電池の制御を簡略化することのできる非水電解液二次電池を提供することができる。かかる本発明の非水電解液二次電池は、高エネルギー密度を有するとともに環境に優しく、鉛蓄電池代替技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の非水電解質二次電池の充放電挙動を示す図である。
【図2】本発明の非水電解質二次電池の強負荷放電特性を示す図である
【図3】正極容量規制の充放電挙動を示す図である。
【図4】正極容量規制の充放電挙動を示す別の図である。
【図5】正極容量規制の充放電挙動を示すさらに別の図である。
【図6】EC/DMC系電解液を用いた比較例の充放電挙動を示す図である。
【図7】AN系電解液を用いた本発明のインピーダンス測定の結果を示す図である。
【図8】EC/DMC系電解液を用いた比較例のインピーダンス測定の結果を示す図である。
【図9】AN/GBL系電解液を用いた本発明の充放電挙動を示す図である。
【図10】AN/GBL系電解液を用いた本発明のサイクル寿命を示す図である。
【図11】本発明の実施例において作成した単セル(非水電解質二次電池、電気化学試験用セル)の概略縦断面図である。
【図12】図11の単セル20を5個直列に接続した単セル群からなるモジュール電池の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 樹脂電槽
2 アルミラミネートフィルム
3 負極集電リード
4 セパレータ
5 アルミニウム集電体
6 負極電極
7 正極電極
8 正極集電リード
9 金属触媒電極
10 負極電極柱
11 ガス抜き弁
12 ゴム弁体
13 電解液面
14 正極電極柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極が、一般式:Li1+xM2-XO4(MはMnとAlとを含み、x>1)で表されかつスピネル構造を有するリチウム複合酸化物からなる正極活物質を含み、
前記負極が、スピネル構造を有するチタン酸化物からなる負極活物質を含み、
前記非水電解質が、アセトニトリルを主溶媒として含むこと、を特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記単セルを複数個含み、前記単セル間の容量ばらつきを吸収する請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記非水電解質の少なくとも一部が、前記負極近傍においてガス化する請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記非水電解質の少なくとも一部が、リチウム金属に対して1.5V〜0.3Vの間でガス化する請求項1〜4いずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記ガス化のための金属電極を含む請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記金属電極が、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記負極がリチウム含有チタン酸化物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記リチウム含有チタン酸化物がLi3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)である請求項8に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記リチウム含有チタン酸化物は、0.1μm〜8μmの粒径を有する結晶粒子と、2μm〜30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物からなる請求項8または9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記負極が、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む集電体を具備する請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記非水電解質が、溶媒としてニトリル化合物を含有する請求項1〜11のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
前記ニトリル化合物が、モノニトリル化合物である請求項12に記載の非水電解質二次電池。
【請求項14】
前記モノニトリル化合物が、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである請求項13に記載の非水電解質二次電池。
【請求項15】
前記ニトリル化合物が、さらにジニトリル化合物を含む請求項12に記載の非水電解質二次電池。
【請求項16】
前記ジニトリル化合物が、マロンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリルまたはアジポニトリルである請求項15記載の非水電解質二次電池。
【請求項17】
前記非水電解質が、溶媒として酢酸メチル、酪酸メチルまたはγ−ブチロラクトンを含有する請求項1〜16のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項18】
前記正極が、正極活物質として、スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を含む請求項1〜17のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項19】
前記スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物が、Li1+xMn2-x-yAyO4(0≦x<1/3、0≦y≦0.6、AはAl、NiおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種)である請求項17記載の非水電解質二次電池。
【請求項20】
前記正極が、正極活物質として、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、Meは、Mn、Fe、Co、TiおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niと、を含む遷移金属)を含む請求項1〜19のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項21】
前記正極活物質が、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)である請求項20に記載の非水電解質二次電池。
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極の容量が前記負極の容量よりも大きく、充電時に前記非水電解質の少なくとも一部がガス化することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質と、を含む単セルを具備し、
前記正極が、一般式:Li1+xM2-XO4(MはMnとAlとを含み、x>1)で表されかつスピネル構造を有するリチウム複合酸化物からなる正極活物質を含み、
前記負極が、スピネル構造を有するチタン酸化物からなる負極活物質を含み、
前記非水電解質が、アセトニトリルを主溶媒として含むこと、を特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記単セルを複数個含み、前記単セル間の容量ばらつきを吸収する請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記非水電解質の少なくとも一部が、前記負極近傍においてガス化する請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記非水電解質の少なくとも一部が、リチウム金属に対して1.5V〜0.3Vの間でガス化する請求項1〜4いずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記ガス化のための金属電極を含む請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記金属電極が、ニッケル、銅、鉄およびステンレスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記負極がリチウム含有チタン酸化物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記リチウム含有チタン酸化物がLi3+3xTi6-3xO12(0≦x≦1/3)である請求項8に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記リチウム含有チタン酸化物は、0.1μm〜8μmの粒径を有する結晶粒子と、2μm〜30μmの粒径を有する結晶粒子の二次粒子の混合物からなる請求項8または9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記負極が、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む集電体を具備する請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記非水電解質が、溶媒としてニトリル化合物を含有する請求項1〜11のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
前記ニトリル化合物が、モノニトリル化合物である請求項12に記載の非水電解質二次電池。
【請求項14】
前記モノニトリル化合物が、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである請求項13に記載の非水電解質二次電池。
【請求項15】
前記ニトリル化合物が、さらにジニトリル化合物を含む請求項12に記載の非水電解質二次電池。
【請求項16】
前記ジニトリル化合物が、マロンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリルまたはアジポニトリルである請求項15記載の非水電解質二次電池。
【請求項17】
前記非水電解質が、溶媒として酢酸メチル、酪酸メチルまたはγ−ブチロラクトンを含有する請求項1〜16のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項18】
前記正極が、正極活物質として、スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を含む請求項1〜17のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項19】
前記スピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物が、Li1+xMn2-x-yAyO4(0≦x<1/3、0≦y≦0.6、AはAl、NiおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種)である請求項17記載の非水電解質二次電池。
【請求項20】
前記正極が、正極活物質として、層構造を有するLi1+α[Me]O2(0≦α≦0.2、Meは、Mn、Fe、Co、TiおよびCuよりなる群から選択される少なくとも1種と、Niと、を含む遷移金属)を含む請求項1〜19のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項21】
前記正極活物質が、Li1+α[Ni1/2-zMn1/2-zCo2z]O2(0≦α≦0.2、z≦1/6)である請求項20に記載の非水電解質二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−273405(P2007−273405A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100537(P2006−100537)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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