説明

非水電解質二次電池

【課題】短絡電流や熱の拡散が安全性に有利な方向に向くような電極群の構造にし、高容量化や高エネルギー密度化を達成しつつ安全性に優れた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池Aは負極10と、正極20と、これらの負極と正極を隔離するセパレータ30と、非水電解質とを備えている。そして、負極10の最外周部の少なくとも一部に負極活物質の塗布されていなくて負極芯体が露出した未塗布部が形成されており、この未塗布部の巻外側に負極集電タブ10aが溶接されているとともに、未塗布部が負極集電タブ10aの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されていて、当該負極芯体同士が重なるように配置されて負極芯体の重ね合せ部11aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極芯体に負極活物質が塗布された負極と、正極芯体に正極活物質が塗布された正極と、これらの負極と正極を隔離するセパレータと、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池は、各種の電源としての用途が拡大するに伴い、さらなる高安全性化が求められるようになった。ここで、高容量化や高エネルギー密度化を行った場合に、何らかの原因により、この種の非水電解質二次電池に異常発熱が生じると、その瞬間的な爆発エネルギーは大きなものとなり、破裂や発火といった現象を抑制することが困難になってきた。このような背景にあって、パーソナルコンピュータ(PC)や電動工具や電動二輪車などの非水電解質二次電池の用途においては、非水電解質二次電池の外部からの衝撃などによる安全性が重要視されるようになった。
【0003】
この場合、非水電解質二次電池の安全性試験において、釘刺し試験(貫通試験)や衝撃試験がある。ここで、釘刺し試験は、満充電された非水電解質二次電池の側面から鋭利な細長い金属棒(釘)を、ある一定のスピードで貫通させて強制的に短絡させる試験である。また、衝撃試験は、所定の質量を有する「重り」を非水電解質二次電池の真上から垂直に落下させて、非水電解質二次電池に衝撃力を与える試験である。これらのいずれの試験においても、当然のことではあるが、破裂や発火などの異常が起こらないことが望ましいとされている。
【0004】
そこで、外部からの圧力により電池が押し潰されたり、過充電されたり、釘などが刺さったり、外部から異常加熱されたりする等の異常事態が生じても、この種の非水電解質二次電池の急激な温度上昇を抑制して、安全性を確保することができる非水電解質二次電池が、例えば、特許文献1(特開平8−153542)にて提案されるようになった。この特許文献1にて提案された非水電解質二次電池においては、異常事態が生じた場合に、電気抵抗の十分に小さい金属同士を短絡させるようにしている。具体的には、正極の端部に正極活物質層を有さない正極等電位露呈金属部分と、負極の端部に負極活物質層を有さない負極等電位露呈金属部分とをそれぞれ設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−153542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、釘刺し試験を行う場合、非水電解質二次電池のどの位置に釘を刺すかにより、安全性に差がでることがある。このため、上述した特許文献1にて提案されたような電極群構成を採用しても、安全性を十分に確保することができないという問題を生じた。例えば、釘が刺さる位置に負極集電タブがある場合、通常、釘が貫通していく箇所に硬い物がない時は、そのまま電極群を釘が貫通して短絡すると考えられる。ところが、釘が貫通していく箇所に負極集電タブがある場合は、釘が負極集電タブを貫通することができないために、負極集電タブが押し潰されていくこととなる。このため、非水電解質二次電池のどの位置に釘を刺すかにより、安全性に差がでることとなる。
【0007】
また、釘が電極群をゆっくり貫通するか、あるいは一気に貫通するかによっても、安全性に差がでることがある。この場合、釘が電極群を一気に貫通すると、短絡面積が広くなって短絡電流が大きくなるため、短絡した非水電解質二次電池が速やかに放電されることとなる。このため、短絡箇所が高温に至った時点において、既に、電池容量が低下しているため、電池の破裂や発火が起こり難くなっているものと考えられる。一方、釘を電極群に突き刺すスピードが遅いほど、より微小な短絡になるため、短絡電流は小さいこととなる。これにより、短絡箇所が高温に至った時点であっても、電池容量は十分に保持されており、電池の破裂や発火などが生じて、安全性が低下する傾向になる。
【0008】
また、釘が負極集電タブに当たった場合、釘が負極集電タブを貫通せずに負極集電タブを押し込むこととなる。このとき、負極集電タブのエッジが負極芯体やセパレータを破って正極に接触して微小短絡すると考えられる。この場合も、微小短絡であるために短絡電流は小さいこととなる。これにより、短絡箇所が高温に至った時点においては、電池容量は十分に保持されているため、電池の破裂や発火などに繋がる恐れが生じることとなる。
【0009】
さらに、衝撃試験おいても、所定の質量を有する「重り」を落下させる際において、「重り」が落下する位置に負極集電タブがある場合は、負極集電タブが傾いたりあるいは変形して電極群内に食い込むことが予想される。このため、微小な短絡が発生しやすくなって、結果として、電池の破裂や発火などに繋がるといった問題が生じることとなる。
そこで、本発明は上記の如き問題を解決するためになされたものであって、電池内で短絡が発生しても、短絡電流や熱の拡散が安全性に有利な方向に向くような電極群の構造にして、電池の高容量化や高エネルギー密度化を達成しつつ、同時に、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非水電解質二次電池は、負極芯体に負極活物質が塗布された負極と、正極芯体に正極活物質が塗布された正極と、これらの負極と正極を隔離するセパレータと、非水電解質とを備えている。そして、上記課題を解決するため、正極と負極がセパレータを間にして渦巻状に巻回されており、負極の最外周部の一部に負極活物質が塗布されていなくて負極芯体が露出した未塗布部が形成されており、未塗布部の負極芯体の巻外側に負極集電タブが溶接されているとともに、未塗布部の負極芯体が負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されていて、当該未塗布部の負極芯体同士が重なるように配置されて負極芯体の重ね合せ部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、負極の最外周部に形成された負極活物質の未塗布部の負極芯体を、負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されて、未塗布部の負極芯体の重ね合せ部が形成されていると、負極集電タブに釘を刺した場合であっても、電池の破裂や発火に至ることがなく、安全性に優れた非水電解質二次電池を得ることができた。その原因は明らかではないが、負極活物質の未塗布部の負極芯体が負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されて、未塗布部の負極芯体の重ね合せ部が形成されていることで、当該重ね合せ部で短絡が発生した際の短絡電流や熱拡散が安全性に有利な方向に変化したものと考えられる。
【0012】
この場合、未塗布部の負極芯体の重ね合せ部は、負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されて当該負極芯体同士が二重に重なるように配置された後、さらに巻内側に折り返されて当該負極芯体同士が三重に重なるように配置されて形成されていると、当該重ね合せ部で短絡が発生した際の短絡電流や熱拡散がさらに安全性に有利な方向に変化して、さらに好ましいということができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、負極集電タブに釘を刺した場合であっても、電池の破裂や発火に至ることがないため、電池の高容量化や高エネルギー密度化を達成しつつ、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1の非水電解質二次電池の横断面の最外周側の要部を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施例2の非水電解質二次電池の横断面の最外周側の要部を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の比較例1の非水電解質二次電池の横断面の最外周側の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.負極
負極10は、負極芯体(この場合は、厚みが8μmの銅製の箔とした)11と、この負極芯体11の両面に形成された負極合剤層12からなるものである。この場合、負極合剤層12は、天然黒鉛(この場合は、平均粒径が20μmのものとした)からなる負極活物質が97質量部で、結着剤としてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)が3質量部とからなるものである。
【0016】
そして、このような負極10は、以下のようにして作製した。まず、天然黒鉛よりなる負極活物質を97質量部と、結着剤としてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)を3質量部となるよう混合した後、これをN−メチルピロリドン(NMP)溶液と混合して負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを負極芯体(例えば、厚みが8μmの銅製の箔)の両面にドクターブレード法により塗布し、乾燥して、負極芯体11上に負極合剤層12を形成させた。この後、圧縮ローラーを用いて圧延して、所定の寸法(この場合は、短辺の長さが59mmで、長辺の長さが650mmになるようにした)に切断するとともに負極集電タブ10aを形成して負極10を作製した。
【0017】
2.正極
正極20は、正極芯体(この場合は、厚みが15μmのアルミニウム製の箔とした)21と、この正極芯体21の両面に形成された正極合剤層22からなるものである。この場合、正極合剤層22は、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2)からなる正極活物質が94質量部で、導電剤としての炭素粉末が3質量部で、結着剤としてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)が3質量部とからなるものである。
【0018】
そして、このような正極20は、以下のようにして作製した。即ち、まず、所定量のリチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2)からなる正極活物質を94質量部と、導電剤としての炭素粉末を3質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末を3質量部となるよう混合した後、これをN−メチルピロリドン(NMP)溶液と混合して正極スラリーを調製した。
【0019】
得られた正極スラリーを正極芯体(この場合は、厚みが15μmのアルミニウム製の箔)21の両面にドクターブレード法により塗布し、乾燥して、正極芯体21上に正極合剤層22を形成させた。この後、圧縮ローラーを用いて圧延して、所定の寸法(この場合は、短辺の長さが56mmで、長辺の長さが620mmになるようにした)に切断するとともに正極集電タブ(図示せず)を形成して正極20を作製した。
【0020】
3.渦巻状電極群
ついで、上述のようにして作製された負極10と正極20とをポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ30を間にして重ね合わせた後、巻き取り機により渦巻状に巻回して、実施例1の渦巻状電極群a、実施例2の渦巻状電極群b、および比較例1の渦巻状電極群xをそれぞれ作製した。
【0021】
この場合、実施例1の渦巻状電極群aにおいては、図1に示すように、負極10の最外周部には負極合剤層12のない負極芯体11のみの部分(未塗布部分)がある状態となされている。そして、この未塗布部の負極芯体11の巻外側に負極集電タブ10aが溶接されている。また、未塗布部の負極芯体11が負極集電タブ10aの溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されていて、未塗布部の負極芯体11同士が二重重ねになるように配置されて未塗布部の重ね合せ部11aが形成されている。
【0022】
また、実施例2の渦巻状電極群bにおいては、図2に示すように、実施例1の渦巻状電極群aと同様に、負極10の最外周部には負極合剤層12のない負極芯体11のみの部分(未塗布部分)がある状態となされていて、この未塗布部の負極芯体11の巻外側に負極集電タブ10aが溶接されている。そして、未塗布部の負極芯体11が負極集電タブ10aの溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されていて、未塗布部の負極芯体11同士が二重に重なるように配置された後、さらに巻内側に折り返されて未塗布部の負極芯体11同士が三重重ねになるように配置されて未塗布部の重ね合せ部11bが形成されている。
【0023】
さらに、比較例1の渦巻状電極群xにおいては、図3に示すように、実施例1の渦巻状電極群aと同様に、負極10の最外周部には負極合剤層12のない負極芯体11のみの部分(未塗布部分)がある状態となされていて、この未塗布部の負極芯体11の巻外側に負極集電タブ10aが溶接されている。そして、この場合は、未塗布部の負極芯体11は巻内側に折り返されることなくそのままの状態になされている。
【0024】
4.非水電解液二次電池
ついで、表面にニッケルメッキを施した鉄製の外装缶(この場合は、直径が18mmで、高さが650mmとした)40を用意した。この後、この外装缶40内に上述のようにして作製された渦巻状電極群(a,b,x)を挿入するとともに正極集電タブ(図示せず)を外装缶に底部(正極端子)に溶接するとともに負極集電タブ10aを図示しない封口体の底部(負極端子)に溶接した。ついで、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比が3:7(25℃)となるように混合された混合溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.2モル/リットルとなるように溶解させた非水電解質を注液した。この後、外装缶40の開口部を封口体で密封して、設計容量が3000mAhの非水電解質二次電池A、B、Xをそれぞれ作製した。
【0025】
ここで、実施例1の渦巻状電極群aを用いた非水電解質二次電池を電池Aとした。同様に、実施例2の渦巻状電極群bを用いた非水電解質二次電池を電池Bとし、比較例1の渦巻状電極群xを用いた非水電解質二次電池を電池Xとした。
【0026】
5.非水電解液二次電池の試験
(1)釘刺し試験
ついで、上述のように作製した各電池(A,B,X)を、室温(約25℃)で、1500mAの定電流で電池電圧が4.40Vに達するまで充電した。さらに、4.40Vの定電圧で電流値が60mAになるまで充電した。この後、各電池(A,B,X)を負極集電タブ10aがある位置を真上にして水平に載置した。ついで、直径が3.0mmのSUS製の釘を負極集電タブ10aがある位置に合わせて垂直に一定速度で落下させて、各電池(A,B,X)を強制的に短絡させて、電池に破裂や発火などの異常な状態が生じたか否かを目視により確認する釘刺し試験を行った。この場合、釘の落下速度を、l00mm/secとしたものと、50mm/secとしたものとの2パターンでそれぞれ2セルずつ行い、電池に破裂や発火がない場合はOKと判定し、電池に破裂や発火が生じた場合はNGと判定して、それらの個数を求めると、下記の表1に示すような結果となった。
【0027】
(2)衝撃試験
また、上述のように作製した各電池(A,B,X)を、室温(約25℃)で、1500mAの定電流で電池電圧が4.40Vに達するまで充電した。さらに、4.40Vの定電圧で電流値が60mAになるまで充電した。この後、各電池(A,B,X)を水平に載置した後、この上に直径が16mmのSUS製の円柱状の棒を各電池(A,B,X)に直角に交差するように載置し、固定させた。ついで、9.8kgの質量を有するSUS製の重りを、高さが60cmの位置から垂直に自由落下させて電池に衝撃を与えるという衝撃試験を行った。この場合、2セルずつ行い、電池に破裂や発火がない場合はOKと判定し、電池に破裂や発火が生じた場合はNGと判定して、それらの個数を求めると、下記の表1に示すような結果となった。
【0028】
【表1】

【0029】
上記表1の結果から明らかなように、釘刺し試験に関して、電池Xのように負極10の巻き終わり部の未塗布部における負極集電タブ10aが溶接された裏面での負極芯体11の重ね合せがない場合は、釘の落下速度に係わらず釘刺し試験がNGとなっていることが分かる。これは、釘が負極集電タブ10aに当たった場合、釘が負極集電タブ10aを貫通せずに負極集電タブ10aを押し込むこととなって、負極集電タブ10aのエッジが負極芯体11やセパレータ30を破って正極20に接触して微小短絡するためと考えられる。この場合、微小短絡であるために短絡電流は小さいこととなり、短絡箇所が高温に至った時点であっても、電池容量は十分に保持されることとなる。これにより、電池に破裂や発火が生じたと考えられる。
【0030】
一方、電池Aのように、負極10の巻き終わり部の未塗布部における負極集電タブ10aが溶接された裏面での芯体11の重ね合せ部(二重重ね部)11aがある場合は、釘の落下速度が速い(100mm/sec)場合は釘刺し試験がOKとなっていることが分かる。これは、釘が負極集電タブ10aに当たった場合、釘が負極集電タブ10aを貫通せずに負極集電タブ10aを押し込むこととなって、負極集電タブ10aのエッジが負極芯体11やセパレータ30を破って正極20に接触すると、負極芯体11の重ね合せ部(二重重ね部)11aにより放電が速やかに行われるためと考えられる。
【0031】
これにより、負極芯体11の重ね合せ部(二重重ね部)11aで短絡が発生した際の短絡電流や熱の拡散がスムーズに行われる結果、短絡箇所が高温に至った時点において、既に電池容量が低下しているため、電池に破裂や発火が生じにくくなり、安全性が向上したと考えられる。なお、釘の落下速度が遅い(50mm/sec)場合は釘刺し試験がNGとなっているが、これは、釘の落下速度が遅い(50mm/sec)と、微小短絡となって短絡電流が小さくなるためと考えられる。これにより、短絡箇所が高温に至った時点であっても、電池容量は十分に保持されることとなり、電池に破裂や発火が生じたと考えられる。
【0032】
さらに、電池Bのように、負極10の巻き終わり部の未塗布部における負極集電タブ10aが溶接された裏面での負極芯体11の重ね合せ部(三重重ね部)11bがある場合は、釘の落下速度が遅くても速くても釘刺し試験がOKとなっていることが分かる。これは、釘が負極集電タブ10aに当たった場合、釘が負極集電タブ10aを貫通せずに負極集電タブ10aを押し込むこととなって、負極集電タブ10aのエッジが負極芯体11やセパレータ30を破って正極20に接触すると、負極芯体11の重ね合せ部(三重重ね部)11bにより放電が速やかに行われるためと考えられる。これにより、負極芯体11の重ね合せ部(三重重ね部)11bで短絡が発生した際の短絡電流や熱の拡散がスムーズに行われる結果、短絡箇所が高温に至った時点において、既に電池容量が低下しているため、電池に破裂や発火が生じにくくなり、安全性が向上したと考えられる。
【0033】
また、衝撃試験に関しては、電池Xのように負極10の巻き終わり部の未塗布部における負極集電タブ10aが溶接された裏面での負極芯体11の重ね合せがない場合は、衝撃試験がNGとなっているのに対して、電池A,Bのように、負極10の巻き終わり部の未塗布部における負極集電タブ10aが溶接された裏面での負極芯体11の重ね合せ部(二重重ね部)11aや負極芯体11の重ね合せ部(三重重ね部)11bがある場合は、衝撃試験がOKとなっていることが分かる。
【0034】
これは、負極集電タブ10aが溶接された裏面での負極芯体11の重ね合せ部(二重重ね部)11aや負極芯体11の重ね合せ部(三重重ね部)11bがあると、これらの重ね合せ部(二重重ね部)11aや重ね合せ部(三重重ね部)11bで短絡が発生した際の短絡電流や熱の拡散がスムーズに行われる結果、短絡箇所が高温に至った時点において、既に電池容量が低下しているため、電池に破裂や発火が生じにくくなり、安全性が向上したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
なお、上述した実施の形態においては、負極活物質として天然黒鉛を用いた例について説明したが、天然黒鉛以外に、リチウムイオンを吸蔵・放出し得るカーボン系材料、例えば、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維等の公知のものを用いてもよい。また、正極活物質としてリチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いた例について説明したが、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoO2)に限らず、他のリチウム含有複合酸化物を用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
A,B…非水電解質二次電池、10…負極、10a…負極集電タブ、11…負極芯体、11a…負極芯体の重ね合せ部(二重重ね部)、11b…負極芯体の重ね合せ部(三重重ね部)、12…負極合剤層、20…正極、21…正極芯体、22…正極合剤層、30…セパレータ、40…外装缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極芯体に負極活物質が塗布された負極と、正極芯体に正極活物質が塗布された正極と、これらの負極と正極を隔離するセパレータと、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極と前記負極がセパレータを間にして渦巻状に巻回されており、
前記負極の最外周部の一部に前記負極活物質が塗布されていなくて負極芯体が露出した未塗布部が形成されており、
前記未塗布部の負極芯体の巻外側に負極集電タブが溶接されているとともに、
前記未塗布部の負極芯体が前記負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されていて、当該未塗布部の負極芯体同士が重なるように配置されて負極芯体の重ね合せ部が形成されていることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記負極芯体の重ね合せ部は、前記負極集電タブの当該負極芯体との溶接面の裏側に位置するように巻内側に折り返されて当該負極芯体同士が二重に重なるように配置された後、さらに巻内側に折り返されて当該負極芯体同士が三重に重なるように配置されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−178237(P2012−178237A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39467(P2011−39467)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】