説明

非水電解質電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム

【課題】安全性を向上できると共に低温でのサイクル特性を向上できる非水電解質電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供する。
【解決手段】本技術は、正極および負極を含む電極群と、電解液を含む非水電解質とを備え、電極群は、絶縁層を含み、絶縁層は、セラミックスを含み、電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のイミド塩と共に、炭酸ビニレン等の添加剤を含み、イミド塩の含有量は、電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である非水電解質電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。詳しくは、電解質塩を溶解した非水溶媒を含む非水電解質を用いた非水電解質電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器では、高性能化および多機能化が益々進行する傾向にあるため、体積エネルギー密度を向上させた電池が使用されている。しかし、高エネルギー密度の電池を外部から圧力をかけて変形させて、内部で短絡させた場合、熱暴走にいたる場合がある。
【0003】
これに対して、電池の安全性を改良するために、シリカやアルミナを電池の正負極間に層状に配置することで、改善することがなされている。また、以下の従来技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、電解質塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を使用する共に、これを溶解する溶媒として、ハロゲン化炭酸エステルを含む溶媒を使用する二次電池が記載されている。
【0005】
特許文献2には、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを電解質塩として使用する二次電池が記載されている。特許文献3には、溶媒がラクトンからなり、電解質塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む電解液を用いると、高温時や保存時の安定性に優れることが記載されている。また、添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、プロパンスルトンをさらに含む電解液を用いると、さらに安定性を向上できることが記載されている。特許文献4には、4級アンモニウムカチオンを含み、FSI(フルオロスルホニルイミド)アニオンと無機アニオンとを含む電池が記載されている。特許文献5には、リン酸エステルとホウ酸エステルとを共に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−129449号公報
【特許文献2】特表平08−511274号公報
【特許文献3】特開2004−165151号公報
【特許文献4】特開2009−70636号公報
【特許文献5】特表2001−519589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、イオン伝導性の観点から、シリカやアルミナなどの抵抗となる成分を電極間に配置すると、低温環境下では劣化が顕著であり、より一層の特性向上が望まれている。また、車載や蓄電用に用いる場合には、屋外で低温にさらされた場合においても良好な特性を要求されており、安全性と低温でのサイクル特性の両立が求められている。
【0008】
したがって、本技術の目的は、安全性を向上できると共に低温でのサイクル特性を向上できる非水電解質電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術は、正極および負極を含む電極群と、電解液を含む非水電解質とを備え、電極群は、絶縁層を含み、絶縁層は、セラミックスを含み、電解液は、式(1)の化合物を含む電解質塩と共に、式(2)〜式(14)の化合物の少なくとも1種からなる添加剤を含み、式(1)の化合物の含有量は、電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である非水電解質電池である。
【化1】

(式中、Mは1価のカチオンである。YはSO2またはCOである。各置換基Zは、独立して、フッ素原子、または少なくとも1つの重合可能な官能基を含んでもよく、かつ、ペルフルオロ化されていてもよい有機基である。置換基Zの少なくとも1つはフッ素原子である。)
【化2】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化3】

(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ビニル基またはアリル基である。R13〜R16のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【化4】

(式中、R17はアルキレン基である。)
【化5】

(式中、R21〜R26は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化6】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化7】

(式中、R31は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。AはC=O、SO、SO2を表す。nは0または1であり、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)
【化8】

(式中、R41およびR42は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニル基、または置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。R43は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化9】

(式中、R51〜R60は置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基を表し、互いに連結し環を形成してもよい。ここで置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化10】

(式中、R61は置換基を有してもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表し、pは0以上の整数でR61によって上限が決まる。)
Li2PO3F(モノフルオロリン酸リチウム)・・・(11)
LiPO22(ジフルオロリン酸リチウム)・・・(12)
【化11】

(式中、R71およびR72は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化12】

(式中、R81およびR82は、それぞれ独立して、鎖状のアルキル基を示す。)
【0010】
また、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【0011】
本技術では、電極群がセラミックスを含む絶縁層を有すると共に、電解液が、式(1)の化合物を含む電解質塩と共に、式(2)〜式(14)の化合物の少なくとも1種からなる添加剤を含み、式(1)の化合物の含有量は、電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である。これにより、安全性を向上できると共に低温でのサイクル特性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、安全性を向上できると共に低温でのサイクル特性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本技術の実施の形態による第1の非水電解質電池の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2に示した負極の構成を模式的に表す断面図である。
【図4】図2に示した負極の他の構成を模式的に表す断面図である。
【図5】図2に示した負極の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。
【図6】図2に示した負極の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。
【図7】本技術の実施の形態による第2の非水電解質電池の構成を示す分解斜視図である。
【図8】図7に示した巻回電極体の断面図である。
【図9】本技術の実施の形態による第4の非水電解質電池の構成を示す断面図である。
【図10】本技術の実施の形態による電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図11】本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図12】本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【図13】スタック型電極体に用いられる負極を表す平面図である。
【図14】スタック型電極体に用いられる正極を表す平面図である。
【図15】スタック型電極体に用いられるセパレータを表す平面図である。
【図16】スタック型電極体を表す概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解液
(1−2)第1の非水電解質電池
(1−3)第2の非水電解質電池
(1−4)第3の非水電解質電池
(1−5)第4の非水電解質電池
2.第2の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システムなどの例)
4.他の実施の形態(変形例)
【0015】
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解液
非水電解液は、液状の電解質であり、非水溶媒および電解質塩を含む。この非水電解液は、電解質塩として、式(1)の化合物を非水電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下の含有量で含むと共に、添加剤として式(2)〜式(14)の化合物の少なくとも1種を含む。
【0016】
【化13】

(式中、Mは1価のカチオンである。YはSO2またはCOである。各置換基Zは、独立して、フッ素原子、または少なくとも1つの重合可能な官能基を含んでもよく、かつ、ペルフルオロ化されていてもよい有機基である。置換基Zの少なくとも1つはフッ素原子である。)
【化14】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化15】

(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ビニル基またはアリル基である。R13〜R16のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【化16】

(式中、R17はアルキレン基である。)
【化17】

(式中、R21〜R26は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化18】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化19】

(式中、R31は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。AはC=O、SO、SO2を表す。nは0または1であり、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)
【化20】

(式中、R41およびR42は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニル基、または置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。R43は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化21】

(式中、R51〜R60は置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基を表し、互いに連結し環を形成してもよい。ここで置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化22】

(式中、R61は置換基を有してもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表し、pは0以上の整数でR61によって上限が決まる。)
Li2PO3F(モノフルオロリン酸リチウム) ・・・(11)
LiPO22(ジフルオロリン酸リチウム) ・・・(12)
【化23】

(式中、R71およびR72は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化24】

(式中、R81およびR82は、それぞれ独立して、鎖状のアルキル基を示す。)
【0017】
(式(1)の化合物)
式(1)の化合物は、電解質塩として、電解液に含まれる。式(1)の化合物としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(フェニルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロフェニルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ビニルスルホニル)イミドなどが挙げられ、これらのイミド塩化合物を単独でもしくは2種類以上混合して用いることができる。式(1)の化合物の含有量は、電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である。式(1)の化合物の含有量が、0.001mol/L未満であると、目的とする低温サイクル改善の効果が得られない。式(1)の化合物の含有量が、2.5mol/Lを超えると、電池特性が悪化する。なお、電解液は、電解質塩として、式(1)の化合物を単独で用いてもよく、また式(1)の化合物と共に他の電解質塩を含んでいてもよい。電解液は、電解質塩として、式(1)の化合物を単独で含む場合、式(1)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、1.0mol/L以上2.2mol/Lであることがより好ましい。また、電解液が、電解質塩として、式(1)の化合物以外の他の電解質塩を含有する場合、式(1)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.001mol/L以上0.5mol/L以下であることがより好ましい。また、電解液が、電解質塩として、式(1)の化合物以外の他の電解質塩を含有する場合、式(1)の化合物と他の電解質塩との合計含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、3.0mol/L以下であることがより好ましい。
【0018】
<式(2)〜式(14)の化合物>
電解液は、式(2)〜式(14)の化合物のうちの少なくとも1種を含有する。これにより、充放電により、式(2)〜式(14)の化合物のうちの少なくとも1種に由来する被膜が電極に形成されることで、電池特性を向上できる。
【0019】
(式(2)〜式(4)の化合物)
式(2)〜式(4)の化合物は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルである。電解液の化学安定性がより向上するため、電解液は、式(2)〜式(4)の不飽和結合を有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。式(2)〜式(4)の化合物の少なくとも1種の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0020】
式(2)の不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でも良いし、複数種が混合されてもよい。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
【0021】
式(3)の不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でも良いし、複数種が混合されてもよい。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R13〜R16としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在していてもよい。
【0022】
式(4)の不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。炭酸メチレンエチレン系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でも良いし、複数種が混合されてもよい。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(式(4)に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものであってもよい。
【0023】
なお、不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、式(2)〜(4)に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などであってもよい。
【0024】
(式(5)〜式(6)の化合物)
式(5)の化合物は、ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルである。式(6)の化合物は、ハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルである。電解液に式(5)〜式(6)の化合物のうちの少なくとも1種が含まれると、電極表面において、保護膜を形成し、電解液の分解反応が抑制されるので好ましい。式(5)〜式(6)の化合物のうちの少なくとも1種の含有量は、電解液に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
式(5)〜式(6)の化合物において、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上であってもよい。非水電解質電池などの電気化学デバイスに用いられた場合に、電極表面において保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
【0026】
式(5)のハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0027】
式(6)のハロゲンを有する環状炭酸エステルとしては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、の4,5−ジクロロ−1,3−オキソラン−2−オン、テトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−(1,1−ジフルオロエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0028】
中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4,5−ジフルオロ−
1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンがより好ましい。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
【0029】
(式(7)の化合物)
式(7)の化合物は、ラクトン(環状カルボン酸エステル)、スルトン(環状スルホン酸エステル)、酸無水物である。電解液は、ラクトン、スルトン(環状スルホン酸エステル)、酸無水物などの式(7)の化合物を含有することが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。式(7)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
【0030】
スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンまたはプロペンスルトンなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、プロペンスルトンが好ましい。また、溶媒中におけるスルトンの含有量は、電解液に対して、0.1質量%以上3質量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
【0031】
酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物またはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物またはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物またはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などであり、中でも、コハク酸無水物またはスルホ安息香酸無水物が好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。また、溶媒中における酸無水物の含有量は、0.1質量%以上3質量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
【0032】
(式(8)の化合物)
式(8)の化合物は2つの炭酸エステルをもつ化合物である。たとえば、エタン−1,2−ジイルジメチルジカーボネート、エタン−1,2−ジイルエチルメチルジカーボネート、エタン−1,2−ジイルジエチルジカーボネート、ジメチル(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジカーボネート、エチルメチル(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジカーボネート、ジエチル(オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ジカーボネートなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。また、溶媒中における式(8)の化合物の含有量は、電解液に対して、0.1質量%以上3質量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
【0033】
(式(9)の化合物)
式(9)の化合物は芳香族炭酸エステルである。例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ビス(4−メチルフェニル)、炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル)などが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。また、溶媒中における式(9)の化合物の含有量は、電解液に対して、0.1質量%以上3質量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
【0034】
(式(10)の化合物)
式(10)の化合物は、ニトリル基を有する化合物である。電解液は、式(10)の化合物を含有することが好ましい。サイクル特性が向上するからである。式(10)の化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブタンニトリル、バレロニトリル、ドデカンニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリルなどのモノニトリル化合物、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、フタロニトリルなどのジニトリル化合物などのニトリル化合物などが挙げられる。式(10)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
(式(11)〜式(12)の化合物)
式(11)の化合物、式(12)の化合物は、電解質塩として、電解液に含まれる。電解液は、式(11)〜式(12)の化合物を含有することが好ましい。界面保護被膜を形成する能力があるからである。式(11)〜式(12)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
(式(13)の化合物)
式(13)の化合物は、炭酸ジエチル、炭酸メチルプロピルなどである。式(13)の化合物は、非水溶媒として、電解液に含有される。式(13)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
(式(14)の化合物)
式(14)の化合物は、鎖状カルボン酸エステルであり、例えば、非水溶媒として、電解液に含まれる。鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチルなどが挙げられる。式(14)の化合物の含有量は、より優れた効果が得られる点から、電解液に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
(その他の非水溶媒、他の電解質塩など)
この電解液は、上述の式(1)〜式(14)の化合物の他、以下の非水溶媒および/または式(1)の化合物以外の他の電解質塩をさらに含有していてもよい。
【0039】
(非水溶媒)
非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、リン酸トリメチルまたはジメチルスルホキシドなどを用いることができる。電解液を備えた、電池などの電気化学デバイスにおいて、優れた容量、サイクル特性および保存特性が得られるからである。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0040】
非水溶媒としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル(式13)の化合物)および炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。十分な効果が得られるからである。この場合には、特に、高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)である炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)である炭酸ジメチル、炭酸ジエチルまたは炭酸エチルメチルとを混合して含むものを用いることが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
【0041】
また、非水溶媒として芳香族化合物を含むことも好ましい。芳香族化合物としてはクロロベンゼン、クロロトルエンやフルオロベンゼンなどのハロゲン化ベンゼン化合物、tert−ブチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼンやシクロヘキシルベンゼン、水素ビフェニル、水素化ターフェニルなどのアルキル化芳香族化合物が挙げられる。アルキル基はハロゲン化されていてもよく特にフッ素化されているものが好ましい。このような芳香族化合物としては、例えば、トリフルオロメトキシベンゼンなどが挙げられる。その他の芳香族化合物として置換基を持ってもよいアニソール類が挙げられる。その他の芳香族化合物としては、より具体的には、例えば、2,4−ジフルオロアニソール、2,2−ジフルオロベンゾジオキソールなどが挙げられる。
【0042】
(他の電解質塩)
非水電解液は、電解質塩として、式(1)の化合物と共に、式(1)の化合物以外の他の電解質塩を含有していてもよい。他の電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩の1種または2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)または臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。電解液の抵抗が低下するからである。特に、六フッ化リン酸リチウムと一緒に四フッ化ホウ酸リチウムを用いるのが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0043】
この他の電解質塩は、式(15)〜式(17)で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウムなどと一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。なお、式(15)中のR33は、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、式(16)中のR41〜R43および式(17)中のR51およびR52についても同様である。
【0044】
【化25】

(X31は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−OC−R32−CO−、−OC−C(R33)2−または−OC−CO−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2または4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
【0045】
【化26】

(X41は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y41は−OC−(C(R41)2)b4−CO−、−(R43)2C−(C(R42)2)c4−CO−、−(R43)2C−(C(R42)2)c4−C(R43)2−、−(R43)2C−(C(R42)2)c4−SO2−、−O2S−(C(R42)2)d4−SO2−またはOC−(C(R42)2)d4−SO2−である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1または2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
【0046】
【化27】

(X51は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−OC−(C(R51)2)d5−CO−、−(R52)2C−(C(R51)2)d5−CO−、−(R52)2C−(C(R51)2)d5−C(R52)2−、−(R52)2C−(C(R51)2)d5−SO2−、−O2S−(C(R51)2)e5−SO2−またはOC−(C(R51)2)e5−SO2−である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1または2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
【0047】
なお、長周期型周期表における1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
【0048】
式(15)の化合物としては、例えば、式(18−1)〜(18−6)で表される化合物などが挙げられる。式(16)の化合物としては、例えば、式(19−1)〜式(19−8)で表される化合物などが挙げられる。式(17)に示した化合物としては、例えば、式(20)で表される化合物などが挙げられる。中でも、式(18−6)の化合物が好ましい。高い効果が得られるからである。なお、式(15)〜式(17)に示した構造を有する化合物であれば、式(18−1)〜式(18−6)、式(19−1)〜式(19−8)の化合物、式(20)の化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0049】
【化28】

【化29】

【化30】

【0050】
また、他の電解質塩は、式(21)〜式(23)で表される化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有しているのが好ましい。上記した六フッ化リン酸リチウムなどと一緒に用いられた場合に、より高い効果が得られるからである。なお、式(21)中のmおよびnは、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、式(23)中のp、qおよびrについても同様である。
【0051】
LiN(CmF2m+1SO2)(CnF2n+1SO2)・・・(21)
(mおよびnは1以上の整数である。)
【化31】

(R61は炭素数が2以上4以下の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(Cp2p+1SO2)(Cq2q+1SO2)(Cr2r+1SO2)・・・(23)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
【0052】
式(21)に示した鎖状の化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO22)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C25SO22)、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C25SO2))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C37SO2))、または(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C49SO2))などが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0053】
式(22)に示した環状の化合物としては、例えば、式(24−1)〜式(24−4)で表される一連の化合物が挙げられる。すなわち、式(24−1)の1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、式(24−2)の1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、式(24−3)の1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、式(24−4)の1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムなどである。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムが好ましい。高い効果が得られるからである。
【0054】
【化32】

【0055】
式(21)に示した鎖状の化合物としては、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3SO23)などが挙げられる。電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。この範囲外では、イオン伝導性が極端に低下する可能性があるからである。
【0056】
溶媒の固有粘度は、例えば、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度を確保できるからである。なお、溶媒に電解質塩を溶解させた状態における固有粘度(すなわち、電解液の固有粘度)も、同様の理由により、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。
【0057】
上述した電解液を用いた第1〜第4の非水電解質電池について説明する。
【0058】
(1−2)第1の非水電解質電池
図1および図2は、第1の非水電解質電池の断面構成を表しており、図2では、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大している。ここで説明する非水電解質電池は、例えば、充電および放電可能な非水電解質二次電池であり、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムイオンの吸蔵および放出により表されるリチウムイオン二次電池である。
【0059】
[非水電解質電池の全体構成]
この非水電解質電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20および一対の絶縁板12、13が収納されたものである。このような電池缶11を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
【0060】
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)またはそれらの合金などにより構成されている。なお、電池缶11が鉄により構成される場合には、例えば、電池缶の11の表面にニッケル(Ni)などが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12、13は、巻回電極体20を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0061】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられており、その電池缶11は、密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子16は、電池蓋14の内側に設けられている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大する(電流を制限する)ことにより、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面には、例えば、アスファルトが塗布されている。
【0062】
巻回電極体20は、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回されたものである。この巻回電極体20の中心には、センターピン24が挿入されていてもよい。巻回電極体20では、アルミニウムなどにより構成された正極リード25が正極21に接続されていると共に、ニッケルなどにより構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされて電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接などされて電気的に接続されている。
【0063】
(正極)
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0064】
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレス(SUS)な
どにより構成されている。
【0065】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0066】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)またはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0067】
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z ・・・(A)
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0068】
LiaM2bPO4 ・・・(B)
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0069】
LifMn(1-g-h)NigM3h(2-j)k ・・・(C)
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0070】
LimNi(1-n)M4n(2-p)q ・・・(D)
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0071】
LirCo(1-s)M5s(2-t)u ・・・(E)
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0072】
LivMn2-wM6wxy ・・・(F)
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0073】
LizM7PO4 ・・・(G)
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0074】
(絶縁層)
リチウム複合酸化物の粒子表面に絶縁層が形成されていてもよい。例えば、絶縁材料としてセラミックスの粒子とリチウム複合酸化物の粒子を、例えば、ボールミル,ジェットミル,擂潰機あるいは微粉粉砕機などを用い、複合酸化物粒子と絶縁材料とを粉砕混合することにより被着することができる。その際、水などの分散媒あるいは溶媒を用いてもよい。また、メカノフュージョンなどのメカノケミカル処理、またはスパッタリング法あるいは化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法などの気相法により被着させてもよく、アルミニウムやケイ素などのアルコキシド溶液に浸しての前駆層を被着したのち焼成するゾルゲル法により形成してもよい。
【0075】
絶縁層のセラミックスとしては、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニアやなどが挙げられる。また、LiNbO3、LIPON(Li3+yPO4-xx)、LISICON(Lithium−Super−Ion−CONductor)と呼ばれる群、Thio−LISICON(たとえばLi3.25Ge0.250.754)、Li2S単独や、Li2S−P25、Li2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−B25、Li2S−Al25、Li2O−Al23−TiO2−P25(LATP)などが挙げられる。
【0076】
この他、正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどである。
【0077】
もちろん、正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0078】
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0079】
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックまたはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などであってもよい。
【0080】
(負極)
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0081】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどにより構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。この電解処理によって粗面化された銅箔を含め、電解法によって作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
【0082】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、結着剤および導電剤に関する詳細
は、例えば、それぞれ正極の結着剤および導電剤と同様である。この負極活物質層22Bでは、例えば、充放電時において意図せずにリチウム金属が析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0083】
負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。リチウムイオンの吸蔵および放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られるからである。また、負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0084】
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、ここで言う「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0085】
上記した金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などである。これらの金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料としては、例えば、これらの金属元素または半金族元素の合金または化合物が挙げられ、具体的には、MasMbtLiu(s、tおよびuの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0である。)や、MaqMcqMdr(p、qおよびrの値はそれぞれp>0、q>0、r≧0である。)の化学式で表されるものなどが挙げられる。ただし、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表わしている。また、Mcは非金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表している。これらの材料は結晶質であってもよく、非晶質(アモルファス)であってもよい。
【0086】
リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素により構成された負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素および半金族元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が好ましく、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が特に好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0087】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0088】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素または炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金または化合物の一例としては、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si34、Si22O、SiOv(0<v≦2)またはLiSiOなどが挙げられる。
【0089】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素または炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金または化合物の一例としては、Snw(0<w≦2)、SnSiO3、LiSnOまたはMg2Snなどが挙げられる。
【0090】
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2および第3の構成元素を有することにより、サイクル特性が向上するからである。
【0091】
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0092】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムまたはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を有していてもよい。より高い効果が得られるからである。
【0093】
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質との反応性が低減されるからである。
【0094】
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性または非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0095】
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
【0096】
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。
【0097】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0098】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0099】
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素などと結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
【0100】
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタするのが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料が負極22中に存在する場合には、非水電解質電池を解体して負極22を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極22の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが望ましい。
【0101】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0102】
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉またはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させることによって形成可能である。また、ガスアトマイズまたは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法またはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性または非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミル装置やアトライタなどの製造装置を用いることができる。
【0103】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いるのが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶性または非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮されるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0104】
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるのが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下であるのが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
【0105】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法または焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散していてもよいし、負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、それらの構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の電子伝導性が向上するからである。
【0106】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0107】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti512)などのチタンとリチウムとを含むリチウムチタン酸化物、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどが挙げられる。
【0108】
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されもよい。
【0109】
上記した負極材料からなる負極活物質は、複数の粒子状をなしている。すなわち、負極活物質層22Bは、複数の負極活物質粒子を有しており、その負極活物質粒子は、例えば、上記した気相法などによって形成されている。ただし、負極活物質粒子は、気相法以外の方法によって形成されていてもよい。
【0110】
負極活物質粒子が気相法などの堆積法によって形成される場合には、その負極活物質粒子が単一の堆積工程を経て形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程を経て形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う蒸着法などによって負極活物質粒子を形成する場合には、その負極活物質粒子が多層構造を有しているのが好ましい。負極材料の堆積工程を複数回に分割して行う(負極材料を順次薄く形成して堆積させる)ことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して負極集電体22Aが高熱に晒される時間が短くなり、熱的ダメージを受けにくくなるからである。
【0111】
この負極活物質粒子は、例えば、負極集電体22Aの表面から負極活物質層22Bの厚さ方向に成長しており、その根本において負極集電体22Aに連結されている。この場合には、負極活物質粒子が気相法によって形成されており、上記したように、負極集電体22Aとの界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質粒子に拡散していてもよいし、負極活物質粒子の構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散しあっていてもよい。
【0112】
特に、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質粒子の表面(電解液と接する領域)を被覆する酸化物含有膜を有しているのが好ましい。酸化物含有膜が電解液に対する保護膜として機能し、充放電を繰り返しても電解液の分解反応が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。この酸化物含有膜は、負極活物質粒子の表面のうちの一部を被覆していてもよいし、全部を被覆していてもよい。
【0113】
この酸化物含有膜は、金属元素または半金属元素の酸化物を含有している。この金属元素または半金属元素の酸化物としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、ゲルマニウムまたはスズなどの酸化物が挙げられる。中でも、この酸化物含有膜は、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群のうちの少なくとも1種の酸化物を含有しているのが好ましく、特にケイ素の酸化物を含有しているのが好ましい。負極活物質粒子の表面を全体に渡って容易に被覆しやすいと共に、優れた保護機能が得られるからである。もちろん、酸化物含有膜は、上記以外の他の酸化物を含有していてもよい。
【0114】
この酸化物含有膜は、例えば、気相法または液相法などの1種または2種以上の方法を用いて形成される。この場合の気相法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法またはCVD法などが挙げられ、液相法としては、例えば、液相析出法、ゾルゲル法、ポリシラザン法、電析法、塗布法またはディップコーティング法などが挙げられる。中でも、液相法が好ましく、液相析出法がより好ましい。負極活物質粒子の表面を広い範囲に渡って容易に被覆しやすいからである。なお、液相析出法では、まず、金属元素または半金族元素のフッ化物錯体と共にアニオン捕捉剤としてフッ化物イオンを配位しやすい溶存種を含む溶液中において、フッ化物錯体から生じるフッ化物イオンをアニオン捕捉剤に補足させることによって、負極活物質粒子の表面が被覆されるように金属元素または半金族元素の酸化物を析出させる。こののち、水洗および乾燥させることにより、酸化物含有膜を形成する。
【0115】
また、負極活物質層22Bは、必要に応じて、負極活物質粒子の粒子間の隙間や粒子内の隙間に、電極反応物質と合金化しない金属材料を有しているのが好ましい。金属材料を介して複数の負極活物質粒子が結着されると共に、上記した隙間に金属材料が存在することで負極活物質層22Bの膨張および収縮が抑制されるため、サイクル特性が向上するからである。
【0116】
この金属材料は、例えば、リチウムと合金化しない金属元素を構成元素として有している。このような金属元素としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛および銅からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられ、中でも、コバルトが好ましい。上記した隙間に金属材料が容易に入り込みやすいと共に、優れた結着作用が得られるからである。もちろん、金属材料は、上記以外の他の金属元素を有していてもよい。ただし、ここで言う「金属材料」とは、単体に限らず、合金や金属化合物まで含む広い概念である。この金属材料は、例えば、気相法または液相法によって形成されており、中でも電解鍍金法または無電解鍍金法などの液相法が好ましく、電解鍍金法がより好ましい。上記した隙間に金属材料が入り込みやすくなると共に、その形成時間が短くて済むからである。なお、負極活物質層22Bは、上記した酸化物含有膜または金属材料のいずれか一方だけを有していてもよいし、双方を有していてもよい。ただし、サイクル特性をより向上させるためには、双方を含んでいるのが好ましい。
【0117】
ここで、図3〜図6を参照して、負極22の詳細な構成について説明する。まず、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を有する場合について説明する。図3は負極22の断面構造を模式的に表しており、図4は参考例の負極の断面構造を模式的に表している。図3および図4では、負極活物質粒子が単層構造を有している場合を示している。
【0118】
負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に酸化物含有膜を有する場合の負極22では、図3に示したように、例えば、蒸着法などの気相法によって負極集電体22A上に負極材料が堆積されると、その負極集電体22A上に複数の負極活物質粒子221が形成される。この場合には、負極集電体22Aの表面が粗面化され、その表面に複数の突起部(例えば、電解処理により形成された微粒子)が存在すると、負極活物質粒子221が上記した突起部ごとに厚さ方向に成長するため、複数の負極活物質粒子221が負極集電体22A上において配列されると共に根本において負極集電体22Aの表面に連結される。こののち、例えば、液相析出法などの液相法によって負極活物質粒子221の表面に酸化物含有膜222が形成されると、その酸化物含有膜222は負極活物質粒子221の表面をほぼ全体に渡って被覆し、特に、負極活物質粒子221の頭頂部から根本に至る広い範囲を被覆する。この酸化物含有膜222による広範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜222が液相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、液相法によって酸化物含有膜222を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部だけでなく根本まで広く及ぶため、その根本まで酸化物含有膜222によって被覆される。
【0119】
これに対して、参考例の負極では、図4に示したように、例えば、気相法によって複数の負極活物質粒子221が形成されたのち、同様に気相法によって酸化物含有膜223が形成されると、その酸化物含有膜223は負極活物質粒子221の頭頂部だけを被覆する。この酸化物含有膜223による狭範囲な被覆状態は、その酸化物含有膜223が気相法によって形成された場合に得られる特徴である。すなわち、気相法によって酸化物含有膜223を形成すると、その被覆作用が負極活物質粒子221の頭頂部に及ぶものの根本まで及ばないため、その根本までは酸化物含有膜223によって被覆されない。
【0120】
なお、図3では、気相法によって負極活物質層22Bが形成される場合について説明したが、焼結法などによって負極活物質層22Bが形成される場合においても同様に、複数の負極活物質粒子の表面をほぼ全体に渡って被覆するように酸化物含有膜が形成される。次に、負極活物質層22Bが複数の負極活物質粒子と共に電極反応物質と合金化しない金属材料を有する場合について説明する。図5は負極22の断面構造を拡大して表しており、(A)は走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真(二次電子像)、(B)は(A)に示したSEM像の模式絵である。図5では、複数の負極活物質粒子221が粒子内に多層構造を有している場合を示している。
【0121】
負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、その複数の負極活物質粒子221の配列構造、多層構造および表面構造に起因して、負極活物質層22B中に複数の隙間224が生じている。この隙間224は、主に、発生原因に応じて分類された2種類の隙間224A,224Bを含んでいる。隙間224Aは、隣り合う負極活物質粒子221間に生じるものであり、隙間224Bは、負極活物質粒子221内の各階層間に生じるものである。
【0122】
なお、負極活物質粒子221の露出面(最表面)には、空隙225が生じる場合がある。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面にひげ状の微細な突起部(図示せず)が生じることに伴い、その突起部間に生じるものである。この空隙225は、負極活物質粒子221の露出面において、全体に渡って生じる場合もあれば、一部だけに生じる場合もある。ただし、上記したひげ状の突起部は、負極活物質粒子221の形成時ごとにその表面に生じるため、空隙225は、負極活物質粒子221の露出面だけでなく、各階層間にも生じる場合がある。
【0123】
図6は負極22の他の断面構造を表しており、図5に対応している。負極活物質層22Bは、隙間224A,224Bに、電極反応物質と合金化しない金属材料226を有している。この場合には、隙間224A,224Bのうちのいずれか一方だけに金属材料226を有していてもよいが、双方に金属材料226を有しているのが好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0124】
この金属材料226は、隣り合う負極活物質粒子221間の隙間224Aに入り込んでいる。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子221が形成される場合には、上記したように、負極集電体22Aの表面に存在する突起部ごとに負極活物質粒子221が成長するため、隣り合う負極活物質粒子221間に隙間224Aが生じる。この隙間224Aは、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間224Aに金属材料226が充填されている。この場合には、隙間224Aの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。金属材料226の充填量は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0125】
また、金属材料226は、負極活物質粒子221内の隙間224Bに入り込んでいる。詳細には、負極活物質粒子221が多層構造を有する場合には、各階層間に隙間224Bが生じる。この隙間224Bは、上記した隙間224Aと同様に、負極活物質層22Bの結着性を低下させる原因となるため、その結着性を高めるために、上記した隙間224Bに金属材料226が充填されている。この場合には、隙間224Bの一部でも充填されていればよいが、その充填量が多いほど好ましい。負極活物質層22Bの結着性がより向上するからである。
【0126】
なお、負極活物質層22Bは、最上層の負極活物質粒子221の露出面に生じるひげ状の微細な突起部(図示せず)が非水電解質電池の性能に悪影響を及ぼすことを抑えるために、空隙225に金属材料226を有していてもよい。詳細には、気相法などによって負極活物質粒子221が形成される場合には、その表面にひげ状の微細な突起部が生じるため、その突起部間に空隙225が生じる。この空隙225は、負極活物質粒子221の表面積の増加を招き、その表面に形成される不可逆性の被膜の量も増加させるため、電極反応(充放電反応)の進行度を低下させる原因となる可能性がある。したがって、電極反応の進行度の低下を抑えるために、上記した空隙225に金属材料226が埋め込まれている。この場合には、空隙225の一部でも埋め込まれていればよいが、その埋め込む量が多いほど好ましい。電極反応の進行度の低下がより抑えられるからである。図6において、最上層の負極活物質粒子221の表面に金属材料226が点在していることは、その点在箇所に上記した微細な突起部が存在していること表している。もちろん、金属材料226は、必ずしも負極活物質粒子221の表面に点在していなければならないわけではなく、その表面全体を被覆していてもよい。
【0127】
特に、隙間224Bに入り込んだ金属材料226は、各階層における空隙225を埋め込む機能も果たしている。詳細には、負極材料が複数回に渡って堆積される場合には、その堆積時ごとに負極活物質粒子221の表面に上記した微細な突起部が生じる。このことから、金属材料226は、各階層における隙間224Bに充填されているだけでなく、各階層における空隙225も埋め込んでいる。
【0128】
なお、図5および図6では、負極活物質粒子221が多層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224A,224Bの双方が存在している場合について説明したため、負極活物質層22Bが隙間224A,224Bに金属材料226を有している。これに対して、負極活物質粒子221が単層構造を有しており、負極活物質層22B中に隙間224Aだけが存在する場合には、負極活物質層22Bが隙間224Aだけに金属材料226を有することとなる。もちろん、空隙225は両者の場合において生じるため、いずれの場合においても空隙225に金属材料226を有することとなる。
【0129】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡(ショート)を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、平均孔径が5μm程度またはそれ以下の多孔質膜であってもよく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜、またはセラミックからなる多孔質膜や、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものなどが挙げられる。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による非水電解質電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下でシャットダウン効果を得ることができると共に、電気化学的安定性が優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレンまたはポリプロピレンと共重合させたものや、ブレンド化したものであってもよい。セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。
【0130】
(絶縁層)
図示は省略するが、セパレータ23と負極22との間に絶縁層が形成されていてもよい。セパレータ23との負極22との間およびセパレータ23と正極21との間に絶縁層が形成されていてもよい。セパレータ23と正極21との間に絶縁層が形成されていてもよい。
【0131】
絶縁層は、例えば、絶縁材料としてセラミックスの粒子と、バインダとを含有する多孔質膜である。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、LiNbO3、LIPON(Li3+yPO4-xx)、LISICON(Lithium−Super−Ion−CONductor)と呼ばれる群、Thio−LISICON(たとえばLi3.25Ge0.250.754)、Li2S単独や、Li2S−P25、Li2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−B25、Li2S−Al25、Li2O−Al23−TiO2−P25(LATP)などが挙げられる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物が挙げられる。
【0132】
絶縁層は、例えば、以下のように形成してもよい。例えば、セラミックス粒子と、バインダとをN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒で希釈し、混合液を調製し、負極をこの混合液に浸した後、適宜、加圧処理により、厚さを調整後、乾燥により溶媒を除去することにより形成する。
【0133】
絶縁層は、例えば、以下のように形成してもよい。セラミックス粒子と、バインダとをN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒で希釈し、混合液を調製し、この混合液にポリオレフィンセパレータなどのセパレータを浸漬する。その後、水でN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を除去した後、乾燥する。これにより、セパレータの両面に絶縁層を形成する。
【0134】
[非水電解質電池の動作]
この非水電解質電池では、充電時において、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0135】
また、この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば3.60V以上6.00V以下、好ましくは4.25V以上6.00V以下、さらに好ましくは4.30V以上4.55V以下の範囲内になるように設計されていてもよい。完全充電時における開回路電圧が、例えば正極活物質としてNiやCoを含む層状岩塩型リチウム複合酸化物を用いた電池において4.25V以上とされる場合は、4.20Vの電池と比較して、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整され、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0136】
[非水電解質電池の製造方法]
この非水電解質電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0137】
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、必要に応じて結着剤および導電剤などとを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。最後に、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、複数回に渡って圧縮成型を繰り返してもよい。
【0138】
次に、上記した正極21と同様の手順により、負極22を作製する。この場合には、負極活物質と、必要に応じて結着剤および導電剤などとを混合した負極合剤を有機溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。こののち、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して負極活物質層22Bを形成したのち、その負極活物質層22Bを圧縮成型する。
【0139】
なお、正極21とは異なる手順により、負極22を作製してもよい。この場合には、最初に、蒸着法などの気相法を用いて負極集電体22Aの両面に負極材料を堆積させて、複数の負極活物質粒子を形成する。こののち、必要に応じて、液相析出法などの液相法を用いて酸化物含有膜を形成し、または電解鍍金法などの液相法を用いて金属材料を形成し、または双方を形成して、負極活物質層22Bを形成する。
【0140】
最後に、正極21および負極22を用いて非水電解質電池を組み立てる。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら、巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接などして取り付けると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接などして取り付ける。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入して、セパレータ23に含浸させる。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。これにより、図1〜図6に示した非水電解質電池が完成する。
【0141】
(非水電解質電池の作用)
セラミックスを含む絶縁層を備えた本技術の非水電解質電池では、安全性を向上できる。しかしながら、セラミックスを含む絶縁層を備えた非水電解質電池では、低温環境下において電池特性の劣化が生じることが考えられる。また、式(2)〜式(14)のような、電極に被膜を形成する添加剤を電解液に含有させると、さらに低温環境下での電池特性が顕著に悪化する。これは、セラミックス粒子の表面に存在する水酸基などによりリチウムイオンの移動が妨げられるためと考えられる。これに対して、本技術では、電解液に、式(1)の化合物(イミド塩)を含有させる。これにより、電解液に含まれる式(1)のイミド塩の末端がとれたイミド化合物と、絶縁層に含まれるセラミックス粒子の(例えば、アルミナなど)の表面の水酸基とが反応し、セラミックス粒子の表面に−N−Li−基が生じることが考えられる。すなわち、このイミド塩の末端のSO2−Fが、セラミックス粒子の表面にあるOH基と反応して、F−SO2−N−SO2−O−アルミナ粒子のような結合で粒子表面を覆うことが考えられる。これにより、セラミックス粒子の表面に良好な被膜を形成することにより、イオン伝導性を向上でき、その上、負極被膜を改質できるため、セラミックス粒子の絶縁層と被膜形成用の上記添加剤とを併用した場合においても低温サイクル時の容量劣化を抑えることができる。
【0142】
(1−3)第2の非水電解質電池
[非水電解質電池の構成]
第2の非水電解質電池は、負極の容量がリチウム金属の析出および溶解により表されるリチウム金属二次電池である。この非水電解質電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により構成されていることを除き、第1の非水電解質電池と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0143】
この非水電解質電池は、負極活物質としてリチウム金属を用いており、それにより高いエネルギー密度を得ることができるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用して、負極集電体22Aを省略してもよい。
【0144】
[非水電解質電池の動作]
この非水電解質電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0145】
この第2の非水電解質電池によれば、負極22の容量がリチウム金属の析出および溶解により表される場合において、上記した電解液を備えている。このため、第1の非水電解質電池と同様の作用により、低温サイクル特性を向上させることができる。この非水電解質電池に関する他の効果は、第1の非水電解質電池と同様である。
【0146】
(1−4)第3の非水電解質電池
図7は、第3の非水電解質電池の分解斜視構成を表しており、図8は、図7に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面を拡大して示している。
【0147】
[非水電解質電池の全体構成]
この非水電解質電池は、第1の非水電解質電池と同様にリチウムイオン二次電池であり、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このような外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0148】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。ただし、巻回電極体30に対する正極リード31および負極リード32の設置位置や、それらの導出方向などは、特に限定されるわけではない。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどにより構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどにより構成されている。これらの材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0149】
(外装部材)
外装部材40は、例えば、変形性のフィルム状の外装部材であり、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。この場合には、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外縁部同士が融着、または接着剤などにより貼り合わされている。融着層としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのフィルムが挙げられる。金属層としては、例えば、アルミニウム箔などが挙げられる。表面保護層としては、例えば、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが挙げられる。
【0150】
中でも、外装部材40としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材40は、アルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムでもよい。
【0151】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0152】
(正極、負極およびセパレータ)
巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37により保護されている。正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。正極集電体33Aおよび正極活物質層33Bの構成は、それぞれ第1の非水電解質電池における正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様である。負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ第1の非水電解質電池における負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。
【0153】
なお、セパレータ35の構成は、第1の非水電解質電池におけるセパレータ23の構成と同様である。また、絶縁層についても、第1の非水電解質電池と同様である。すなわち、絶縁層は、正極33とセパレータ35との間、負極34とセパレータ35との間、またはこれらの両方に形成されていてもよい。また、正極活物質としてのリチウム複合酸化物の表面に絶縁層が形成されていてもよい。
【0154】
(電解質層)
電解質層36は、電解液が高分子化合物により保持されたものであり、必要に応じて、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。この電解質層36は、非流動性電解質であり、例えば、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解液の漏液が防止されるので好ましい。
【0155】
高分子化合物としては、例えば、以下の高分子材料うちの少なくとも1種が挙げられる。ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサンまたはポリフッ化ビニルである。また、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートである。また、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体である。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0156】
電解液の組成は、第1の非水電解質電池における電解液の組成と同様である。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0157】
(絶縁層)
電解液を高分子化合物に保持させたものの他、絶縁材料を含有するものとすることにより、電解質36を絶縁層として形成してもよい。
【0158】
絶縁材料としては、例えばセラミックス粒子などが挙げられる。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、LiNbO3、LIPON(Li3+yPO4-xx)、LISICON(Lithium−Super−Ion−CONductor)と呼ばれる群、Thio−LISICON(たとえばLi3.25Ge0.250.754)、Li2S単独や、Li2S−P25、Li2S−SiS2、Li2S−GeS2、Li2S−B25、Li2S−Al25、Li2O−Al23−TiO2−P25(LATP)などが挙げられる。
【0159】
なお、電解液が高分子化合物により保持されたゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
【0160】
[非水電解質電池の動作]
この非水電解質電池では、充電時において、例えば、正極33からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極34からリチウムイオンが放出され、電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
【0161】
[非水電解質電池の製造方法]
このゲル状の電解質層36を備えた非水電解質電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0162】
第1の製造方法では、最初に、第1の非水電解質電池における正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。具体的には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液、高分子化合物および溶剤を含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、その溶剤を揮発させてゲル状の電解質層36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を溶接などして取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を溶接などして取り付ける。続いて、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層および巻回したのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30を作製する。最後に、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて、巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図7および図8に示した非水電解質電池が完成する。
【0163】
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とし、ゲル状の電解質層36を形成する。これにより、非水電解質電池が完成する。
【0164】
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体、または多元共重合体など)が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質層36が形成されるため、非水電解質電池が完成する。
【0165】
この第3の製造方法では、第1の製造方法よりも電池膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法よりも高分子化合物の原料であるモノマーまたは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36との間において十分な密着性が得られる。
【0166】
この第3の非水電解質電池によれば、負極34の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出により表される場合において、電解質層36が上記した電解質(電解液)を含んでいる。したがって、第1の非水電解質電池と同様の作用により、サイクル特性を向上させることができる。この非水電解質電池に関する他の効果は、第1の非水電解質電池と同様である。なお、第3の非水電解質電池は、第1の非水電解質電池と同様の構成を有している場合に限られず、第2の非水電解質電池と同様の構成を有していてもよい。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0167】
(1−4)第4の非水電解質電池
図9は第4の非水電解質電池の断面構成を表している。この第4の非水電解質電池は、正極51を外装缶54に貼り付けると共に、負極52を外装カップ55に収容し、それらを電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層したのちにガスケット56を介してかしめたものである。この外装缶54および外装カップ55を用いた電池構造は、いわゆるコイン型と呼ばれている。
【0168】
正極51は、正極集電体51Aの一面に正極活物質層51Bが設けられたものである。負極52は、負極集電体52Aの一面に負極活物質層52Bが設けられたものである。正極集電体51A、正極活物質層51B、負極集電体52A、負極活物質層52Bおよびセパレータ53の構成は、それぞれ上記した第1の非水電解質電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。また、セパレータ53に含浸された電解液の組成も第1の非水電解質電池における電解液の組成と同様である。また、絶縁層についても、第1の非水電解質電池と同様である。すなわち、絶縁層は、正極51とセパレータ53との間、負極52とセパレータ53との間、またはこれらの両方に形成されていてもよい。また、正極活物質としてのリチウム複合酸化物の表面に絶縁層が形成されていてもよい。このコイン型の非水電解質電池による作用および効果は、上記した第1の非水電解質電池と同様である。
【0169】
2.第2の実施の形態
(電池パックの例)
図10は、本技術の非水電解質電池(非水電解質二次電池)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0170】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0171】
組電池301は、複数の非水電解質電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この非水電解質電池301aは本技術の非水電解質電池である。なお、図10では、6つの非水電解質電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0172】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けても良い。
【0173】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0174】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0175】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、301組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各非水電解質電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0176】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、非水電解質電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0177】
ここで、例えば、非水電解質電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0178】
充放電スイッチは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0179】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0180】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各非水電解質電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値などが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。(また、非水電解質電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0181】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0182】
3.第3の実施の形態
上述した非水電解質電池およびこれを用いた電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置などの機器に搭載または電力を供給するために使用することができる。
【0183】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機などが挙げられる。
【0184】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などが挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0185】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0186】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0187】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0188】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0189】
(3−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図11を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102cなどの集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108などを介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104などの独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0190】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池などが利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105dなどである。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0191】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0192】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサなどである。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態などが把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社などに送信することができる。
【0193】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換などの処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver−Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)などの通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fiなどの無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0194】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機など)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)などに、表示されても良い。
【0195】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能などを備えていても良い。
【0196】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102cなどの集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0197】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0198】
(3−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図12を参照して説明する。図12に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、またはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0199】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0200】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)または逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0201】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0202】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0203】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0204】
図示しないが、非水電解質電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0205】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0206】
以下の実施例および比較例で使用した式(1)〜式(14)の化合物を以下に示す。また、Li2PO3F、LiPO22を除く化合物については、その略称も併せて示す。なお、以下の説明では、下記に示す化合物のうち、Li2PO3F、LiPO22を除く化合物については、説明の便宜上、略称を使用する。
【化33】


VC:炭酸ビニレン、VEC:炭酸ビニルエチレン、VdEC:4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、FEC:4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、DFEC:4,5−ジフルオロ−1,3−オキソラン−2−オン、DFDMC:炭酸ビスフルオロメチル、PRS:プロペンスルトン、SCAH:コハク酸無水物、SBAH:スルホ安息香酸無水物、PSAH:プロパンジスルホン酸無水物、DDMC:1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン、DPC:安息香酸無水物、SN:スクシノニトリル、AN:アジポニトリル(CN(CH24CN)、TCNQ:テトラシアノキノジメタン、DEC:炭酸ジエチル、MPC:メチルプロピルカーボネート、TDMC:テトラデカンメチルカーボネート、EAc:酢酸エチル、MPy:トリメチル酢酸メチル、LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド
【0207】
<実施例1−1>
(正極の作製)
まず、正極21を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。
【0208】
続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成した。こののち、正極集電体21Aの一端に、アルミニウム製の正極リード25を溶接して取り付けた。
【0209】
(負極および絶縁層の作製)
また、負極活物質として平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末96質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のアクリル酸変性体1.5質量部と、カルボキシメチルセルロース1.5質量部と、適量の水とを攪拌し、負極スラリーを調製した。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成した。その際、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.3Vに設計した。
【0210】
絶縁材料のセラミックスとして、平均粒径0.5μmのアルミナ粒子粉末80質量部と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)20質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドン溶媒で希釈して混合液を調製した。負極板を上記混合液に浸し、グラビア(gravure)ローラで膜厚を制御した後、120℃雰囲気の乾燥器に負極板を通して溶媒を除去し、負極に5μm厚さの多孔膜を形成した。
【0211】
(巻回電極体の作製)
こののち、負極集電体の一端に、ニッケル製の負極リードを取り付けた。続いて、正極と、微多孔性ポリエチレンフィルム(20μm厚)からなるセパレータと、負極とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体を形成した。
【0212】
(電池の組み立て)
続いて、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶を準備したのち、巻回電極体を一対の絶縁板で挟み、負極リードを電池缶に溶接すると共に正極リードを安全弁機構に溶接して、その巻回電極体を電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に、減圧方式により電解液を注入した。
【0213】
(電解液の調製)
この電解液は、以下のように調製したものを用いた。すなわち、まず、炭酸エチレン(EC)と、炭酸ジメチル(DMC)とを、質量比(EC:DMC)25:75の割合で混合し混合溶媒を調製した。次に、この混合溶媒に対して、VCを1質量%となるように添加して添加剤溶液を調製した。さらに、電解質塩としてLiFSIを0.05mol/LおよびLiPF6を1.05mol/Lを混合溶媒に溶解させて電解液を調製した。
【0214】
続いて、表面にアスファルトが塗布されたガスケットを介して電池缶をかしめることにより、安全弁機構、熱感抵抗素子および電池蓋を固定した。これにより、電池缶の内部の気密性が確保され、円筒型の二次電池が完成した。
【0215】
<実施例1−2>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにVECを、混合溶媒に対して2質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0216】
<実施例1−3>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにVdECを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0217】
<実施例1−4>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して0.1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0218】
<実施例1−5>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0219】
<実施例1−6>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した。LiFSIの混合量を0.01mol/Lに変え、LiPF6の混合量を1.09mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0220】
<実施例1−7>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0221】
<実施例1−8>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した。LiFSIの混合量を0.1mol/Lに変え、LiPF6の混合量を1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0222】
<実施例1−9>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した。LiFSIの混合量を0.2mol/Lに変え、LiPF6の混合量を0.9mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0223】
<実施例1−10>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した。LiFSIの混合量を0.5mol/Lに変え、LiPF6の混合量を0.6mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0224】
<実施例1−11>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して10質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0225】
<実施例1−12>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを、混合溶媒に対して20質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0226】
<実施例1−13>
電解液の調製の際に、添加剤としてFECおよびVCを、混合溶媒に対して、FEC5質量%、VC1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0227】
<実施例1−14>
電解液の調製の際に、添加剤としておよびFECおよびSNを、混合溶媒に対して、FEC5質量%、SN2質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0228】
<実施例1−15>
電解液の調製の際に、添加剤としておよびFECおよびPSAHを、混合溶媒に対して、FEC5質量%、PSAH1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0229】
<実施例1−16>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにDFECを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0230】
<実施例1−17>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにDFDMCを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0231】
<実施例1−18>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにPRSを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0232】
<実施例1−19>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにSCAHを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0233】
<実施例1−20>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにSBAHを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0234】
<実施例1−21>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにPSAHを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0235】
<実施例1−22>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにDDMCを、混合溶媒に対して0.1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0236】
<実施例1−23>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにDPCを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0237】
<実施例1−24>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにSNを、混合溶媒に対して0.5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0238】
<実施例1−25>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにSNを、混合溶媒に対して2質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0239】
<実施例1−26>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにSNを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0240】
<実施例1−27>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにANを、混合溶媒に対して0.5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0241】
<実施例1−28>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにANを、混合溶媒に対して2質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0242】
<実施例1−29>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにANを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0243】
<実施例1−30>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにTCNQを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0244】
<実施例1−31>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにLiPOFを、混合溶媒に対して0.1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0245】
<実施例1−32>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにLiPOを、混合溶媒に対して0.1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0246】
<実施例1−33>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにDECを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0247】
<実施例1−34>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにMPCを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0248】
<実施例1−35>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにTDMCを、混合溶媒に対して1質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0249】
<実施例1−36>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにEAcを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0250】
<実施例1−37>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにMPyを、混合溶媒に対して5質量%になるように添加した以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0251】
<実施例1−38〜実施例1−58>
絶縁材料のセラミックスとして、アルミナ粒子粉末に代えて、平均粒径1μmのシリカ粒子粉末を用いた以外は、実施例1−1〜実施例1−3、実施例1−7、実施例1−16〜実施例1−23、実施例1−25、および実施例1−30〜実施例1−37と同様にして二次電池を作製した。
【0252】
<実施例1−59〜実施例1−79>
正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.45Vになるように設計した以外は、実施例1−1〜実施例1−3、実施例1−7、実施例1−16〜実施例1−23、実施例1−25、および実施例1−30〜実施例1−37と同様にして二次電池を作製した。
【0253】
<比較例1−1>
負極上に絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せずLiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0254】
<比較例1−2>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0255】
<比較例1−3〜比較例1−23>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1〜実施例1−21のそれぞれと同様にして二次電池を作製した。
【0256】
<比較例1−24>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIの代わりに、LiTFSIを0.05mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0257】
<比較例1−25>
負極上に絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例1−43と同様にして二次電池を作製した。
【0258】
<比較例1−26>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例1−43と同様にして二次電池を作製した。
【0259】
作製した各二次電池について、以下のようにして低温サイクル特性を測定した。
【0260】
(低温サイクル)
低温サイクル特性は、まず、23℃で1サイクル目の充放電を行い、−5℃で充放電するという2サイクル目の充放電を行い、放電容量を確認した。−5℃で3サイクル目から50サイクル目の充放電を行い、2サイクル目の放電容量を100とした場合の50サイクル目の放電容量維持率(%)を求めた。1サイクルの充放電条件としては、1mA/cm2の定電流密度で電池電圧が表1に示す充電電圧に達するまで充電し、さらに表1に示す充電電圧での定電圧で電流密度が0.02mA/cm2に達するまで充電したのち、1mA/cm2の定電流密度で電池電圧が3Vに達するまで放電した。
【0261】
実施例1−1〜実施例1−63および比較例1−1〜比較例1−26の低温サイクル特性の測定結果を表1に示す。
【0262】
【表1】



【0263】
表1から以下のことがわかる。実施例1−1〜実施例1−79では、負極上に絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例1−2、比較例1−26では、負極上に絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例1−3〜比較例1−24では、負極上に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0264】
<実施例2−1〜実施例2−79>
負極上に絶縁層を形成しなかった。セパレータとして、下記のセパレータの両面に絶縁層を形成した耐熱絶縁層付セパレータを用いた。以上のこと以外は、実施例1−1〜実施例1−79と同様にして、二次電池を作製した。
【0265】
(絶縁層の形成)
絶縁材料のセラミックスとしてのアルミナを、PVdF:アルミナ=20:80(質量比)で分散させたPVdF溶液を調製した。次いで、アルミナを分散させたPVdF溶液に、厚み16μmの微多孔性ポリエチレンセパレーターを浸漬し、そのあと水でNMPを取り除いたあと80℃の熱風で乾燥させた。これにより、微多孔性ポリエチレンセパレーターの両面に、あわせて4.5μmの耐熱絶縁層を形成して、耐熱絶縁層付きセパレータを作製した。
【0266】
<比較例2−1>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せずLiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例2−1と同様にして二次電池を作製した。
【0267】
<比較例2−2>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例2−1と同様にして二次電池を作製した。
【0268】
<比較例2−3〜比較例2−23>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例2−1〜実施例2−21のそれぞれと同様にして二次電池を作製した。
【0269】
<比較例2−24>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIの代わりに、LiTFSIを0.05mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例2−1と同様にして二次電池を作製した。
【0270】
<比較例2−25>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例2−43と同様にして二次電池を作製した。
【0271】
<比較例2−26>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例2−43と同様にして二次電池を作製した。
【0272】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表2に示す充電電圧とした。測定結果を表2に示す。
【0273】
【表2】



【0274】
表2から以下のことがわかる。実施例2−1〜実施例2−79では、セパレータの両面に絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例2−2、比較例2−26では、セパレータの両面に絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例1−3〜比較例1−24では、セパレータの両面に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0275】
<実施例3−1〜実施例3−37、実施例3−59〜実施例3―79>
負極上に絶縁層を形成しなかった。正極活物質として、リチウム・コバルト複合酸化物の表面に下記の方法で絶縁層を形成したものを用いた。以上のこと以外は、実施例1−1〜1−37、実施例1−59〜実施例1−79と同様にして二次電池を作製した。
【0276】
(絶縁層の形成)
平均粒子径が11.0μmのリチウム・コバルト複合酸化物と、平均粒子径0.3μmのアルミナとを用い、リチウム・コバルト複合酸化物95質量部に対して、上記のアルミナを5質量部となるように秤量し軽く混合した後、高速回転式衝撃粉砕機の一種である高速撹拌混合機に投入した。回転翼を2000rpmで回転させ、10分間の処理を施し、リチウム・コバルト複合酸化物粒子の表面にアルミナの少なくとも一部が接するように存在したリチウム遷移金属複合酸化物を形成した。
【0277】
続いて、これを3℃/分の速度で昇温し、150℃で8時間保持したのち徐冷することにより、平均粒子径12.8μm(レーザー散乱法により測定)の正極活物質を得た。
【0278】
<実施例3−38〜実施例3−58>
負極上に絶縁層を形成しなかった。正極活物質として、リチウム・コバルト複合酸化物の表面に下記の方法で絶縁層を形成したものを用いた。以上のこと以外は、実施例3−1〜実施例3−3、実施例3−7、実施例3−16〜実施例3−23、実施例3−25、および実施例3−30〜実施例3−37のそれぞれと同様にして二次電池を作製した。
【0279】
(絶縁層の形成)
平均粒子径が11.0μmのリチウム・コバルト複合酸化物と、平均粒子径0.2μmのシリカとを用い、リチウム・コバルト複合酸化物95質量部に対して、上記のシリカを5質量部となるように秤量し軽く混合した後、高速回転式衝撃粉砕機の一種である高速撹拌混合機に投入した。回転翼を2000rpmで回転させ、10分間の処理を施し、リチウム・コバルト複合酸化物粒子の表面にシリカの少なくとも一部が接するように存在したリチウム遷移金属複合酸化物を形成した。続いて、これを3℃/分の速度で昇温し、150℃で8時間保持したのち徐冷することにより、平均粒子径12.6μm(レーザー散乱法により測定)の正極活物質を得た。
【0280】
<比較例3−1>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せずLiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。
【0281】
<比較例3−2>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。
【0282】
<比較例3−3〜比較例3−23>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例3−1〜実施例3−21のそれぞれと同様にして二次電池を作製した。
【0283】
<比較例3−24>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIの代わりに、LiTFSIを0.05mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。
【0284】
<比較例3−25>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例3−43と同様にして二次電池を作製した。
【0285】
<比較例3−26>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例3−43と同様にして二次電池を作製した。
【0286】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表3に示す充電電圧とした。測定結果を表3に示す。
【0287】
【表3】



【0288】
表3から以下のことがわかる。実施例3−1〜実施例3−63では、正極に絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例3−2、比較例3−26では、正極に絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例3−3〜比較例3−24では、セパレータの両面に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0289】
<実施例4−1>
以下のように、ゲル電解質に絶縁粒子を混合し絶縁層を形成した二次電池を作製した。
【0290】
(正極の作製)
まず、正極21を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。
【0291】
続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体の両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層を形成した。こののち、正極集電体の一端に、アルミニウム製の正極リードを溶接して取り付けた。
【0292】
(負極の作製)
また、負極活物質として平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末97質量部と、PVdF3質量部と、適量のNMPとを攪拌し、負極スラリーを調製した。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成した。その際、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.3Vになるように設計した。
【0293】
(ゲル状電解質層(絶縁層)の形成)
作製された正極および負極上に、絶縁層として、絶縁材料のセラミックスとしてアルミナ粒子を含むゲル状電解質層を形成した。ゲル状電解質層を形成するには、まず、ヘキサフルオロプロピレンが6.9%の割合で共重合されたポリフッ化ビニリデンと、平均粒径0.3μmのアルミナ粒子粉末と、非水電解液と、ジメチルカーボネートとを混合し、攪拌、溶解させ、ゾル状の電解質溶液を得た。
【0294】
非水電解液は、以下のように調製した。すなわち、まず、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを質量比(EC:PC)1:1で混合した混合溶媒を調製した。次に、この混合溶媒に対して、VCを1質量%となるように添加して添加剤溶液を調製した。さらに電解質塩として、LiFSIを0.05mol/LおよびLiPF6を1.05mol/Lを混合溶媒に溶解させ電解液を調製した。
【0295】
次に、得られたゾル状の電解質溶液を正極及び負極の両面に均一に塗布した。その後、乾燥させて溶剤を除去した。このようにして、正極及び負極の両面にゲル状電解質層を形成した。
【0296】
(電池の組み立て)
次に、上述のようにして作製された、両面にゲル状電解質層が形成された帯状の正極と、両面にゲル状電解質層が形成された帯状の負極とを積層して積層体とし、さらにこの積層体をその長手方向に巻回することにより電極巻回体を得た。最後に、この巻回体を、アルミニウム箔が一対の樹脂フィルムで挟まれてなる外装フィルムで挟み、外装フィルムの外周縁部を減圧下で熱融着することによって封口し、巻回体を外装フィルム中に密閉した。なお、このとき、正極端子と負極端子に樹脂片をあてがった部分を外装フィルムの封口部に挟み込んだ。このようにしてゲル状電解質電池(二次電池)を完成した。
【0297】
<実施例4−2〜実施例4−37>
電解液の調製の際に、添加剤の材料種および添加量、電解質塩の材料種および混合量を実施例1−2〜実施例1−37と同様にした以外は、実施例4−1と同様にして二次電池を作製した。
【0298】
<実施例4−38〜実施例4−58>
絶縁材料のセラミックスとして、アルミナ粒子に代えて、シリカ粒子を用いた以外は、実施例4−1〜実施例4−3、実施例4−7、実施例4−16〜実施例4−23、実施例4−25、および実施例4−30〜実施例4−37と同様にして二次電池を作製した。
【0299】
<実施例4−59〜実施例4−79>
充電終了電圧を4.45Vになるように正極活物質および負極活物質の量を調整した以外は、実施例4−1〜実施例4−3、実施例4−7、実施例4−16〜実施例4−23、実施例4−25、および実施例4−30〜実施例4−37と同様にして二次電池を作製した。
【0300】
<比較例4−1>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せ
ずLiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかっ
た。以上のこと以外は、実施例4−1と同様にして二次電池を作製した。
【0301】
<比較例4−2>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例4−1と同様にして二次電池を作製した。
【0302】
<比較例4−3〜比較例4−23>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例4−1〜実施例4−21のそれぞれと同様にして二次電池を作製した。
【0303】
<比較例4−24>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIの代わりに、LiTFSIを0.05mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例4−1と同様にして二次電池を作製した。
【0304】
<比較例4−25>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例4−43と同様にして二次電池を作製した。
【0305】
<比較例4−26>
電解液の調製の際に、電解質塩として、LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。添加剤として、VCを添加しなかった。以上のこと以外は、実施例4−43と同様にして二次電池を作製した。
【0306】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表4に示す充電電圧とした。測定結果を表4に示す。
【0307】
【表4】



【0308】
表4から以下のことがわかる。実施例4−1〜実施例4−63では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例4−2、比較例4−26では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例4−3〜比較例4−24では、セパレータの両面に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0309】
<実施例5−1〜実施例5−79、比較例5−1〜比較例5−26>
以下のように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた負極を作製した。実施例5−1〜実施例5−58および比較例5−1〜比較例5−24では、正極活物質および負極活物質の量を調整して、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.2Vに設定した。実施例5−59〜実施例5−79、比較例5−25〜比較例5−26では、正極活物質および負極活物質の量を調整して、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.35Vに設定した。以上のこと以外は、実施例1−1〜実施例1−79および比較例1−1〜比較例1−26と同様にして二次電池を作製した。
【0310】
(負極の作製)
スズ・コバルト・インジウム・チタン合金粉末と、炭素粉末とを混合したのち、メカノケミカル反応を利用してSnCoC含有材料を合成した。このSnCoC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は48質量%、コバルトの含有量は23質量%、炭素の含有量は20質量%であり、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は32質量%であった。
【0311】
次に、負極活物質として、上述のSnCoC含有材料粉末80質量部と、導電剤として黒鉛12質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させた。最後に、銅箔(15μm厚)からなる負極集電体22Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成形することにより、負極活物質層22Bを形成した。
【0312】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表5に示す充電電圧とした。測定結果を表5に示す。
【0313】
【表5】



【0314】
表5から以下のことがわかる。実施例5−1〜実施例5−79では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例5−2、比較例5−26では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例5−3〜比較例5−24では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0315】
<実施例6−1〜実施例6−79、比較例6−1〜比較例6−26>
以下のように、負極活物質としてSi含有材料を用いた負極を作製した。実施例6−1〜実施6−58および比較例6−1〜比較例6−24では、正極活物質および負極活物質の量を調整して、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.2Vに設定した。実施例6−59〜実施例6−79、比較例6−25〜比較例6−26では、正極活物質および負極活物質の量を調整して、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.3Vに設定した。以上のこと以外は、実施例1−1〜実施例1−79および比較例1−1〜比較例1−26と同様にして二次電池を作製した。
【0316】
(負極の作製)
負極活物質として平均粒径1μmのケイ素粉末を用い、このケイ素粉末95質量部と、結着剤としてポリイミド5質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを添加してスラリーを作製した。この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型してのち、真空雰囲気下において400℃で12時間加熱することにより負極活物質層を形成した。
【0317】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表6に示す充電電圧とした。測定結果を表6に示す。
【0318】
【表6】



【0319】
表6から以下のことがわかる。実施例6−1〜実施例6−79では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例6−2、比較例6−26では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例6−3〜比較例6−24では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0320】
[実施例7−1〜実施例7−11]
<実施例7−1>
(正極の作製)
まず、正極21を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間
焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体の両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層を形成した。こののち、正極集電体の一端に、アルミニウム製の正極リードを溶接して取り付けた。
【0321】
(負極および絶縁層の作製)
また、負極活物質として平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末96質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のアクリル酸変性体1.5質量部と、カルボキシメチルセルロース1.5質量部と、適量の水とを攪拌し、負極スラリーを調製した。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成した。その際、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.2Vになるように設計した。
【0322】
セラミックスとしてアルミナ粒子粉末80質量部と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)20質量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドン溶媒で希釈して混合液を作る。負極板を上記混合液に浸し、グラビア(gravure)ローラで膜厚を制御した後、120℃雰囲気の乾燥器に負極板を通して溶媒を除去し、負極に5μm厚さの多孔膜を形成し負極22を作製した。こののち、負極集電体の一端に、ニッケル製の負極リードを取り付けた。
【0323】
(巻回電極体の作製)
続いて、正極と、微多孔性ポリエチレンフィルム(16μm厚)からなるセパレータと、負極とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体を形成した。
【0324】
(電池缶の収納)
続いて、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶を準備したのち、巻回電極体を一対の絶縁板で挟み、負極リードを電池缶に溶接すると共に正極リードを安全弁機構に溶接して、その巻回電極体を電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に、減圧方式により電解液を注入した。
【0325】
(電解液の調製)
電解液は、以下のように調製したものを用いた。まず、溶媒として炭酸エチレン(EC):炭酸ジエチル(DEC):炭酸エチルメチル(EMC)を質量比25:X:75−Xの割合で混合した混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、電解質塩として、LiFSIを混合量Zmol/L、LiPF6を混合量1.1mol/L−Zmol/Lで溶解させた。なお、上記のDECの混合比Xは0.1とした。すなわち、DECは、混合溶媒に対して、0.1質量%になるように混合した。LiFSIの混合量Zは、0.05mol/Lとし、LiPF6の混合量1.1mol/L−Zmol/Lは、1.05mol/Lとした。
【0326】
続いて、表面にアスファルトが塗布されたガスケットを介して電池缶をかしめることにより、安全弁機構、熱感抵抗素子および電池蓋を固定した。これにより、電池缶の内部の気密性が確保され、円筒型の二次電池が完成した。
【0327】
<実施例7−2>
DECの混合比Xを1とし、DECの混合量を1質量%に変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0328】
<実施例7−3>
DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.001mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.099mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0329】
<実施例7−4>
DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.01mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.09mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0330】
<実施例7−5>
DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0331】
<実施例7−6>
DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.1mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.0mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0332】
<実施例7−7>
DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.5mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を0.6mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0333】
<実施例7−8>
DECの混合比Xを30とし、DECの混合量を30質量%に変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0334】
<実施例7−9>
DECの混合比Xを70とし、DECの混合量を70質量%に変えたこと以外は、実施例7−1と同様にして二次電池を作製した。
【0335】
<実施例7−10>
正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.35Vになるように設計した。
【0336】
<実施例7−11>
正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.45Vになるように設計した。
【0337】
<実施例7−12〜実施例7−22>
電池形状を角型に変更したこと以外は、実施例7−1〜実施例7−11と同様にして二次電池を作製した。すなわち、以下のように、巻回電極体を扁平状とし、電池缶への収納の際に、電池缶として、アルミ製の角型のものを用いた。
【0338】
(電池缶への収納)
アルミ製の角型の電池缶を準備したのち、扁平状の巻回電極体を一対の絶縁板,で挟み、正極リードを電池缶に接続すると共に負極リードを負極端子に溶接して、その巻回電極体を電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に、減圧方式により電解液を注入したのち、安全弁が設けられた電池蓋をレーザー溶接することで密閉した。
【0339】
<比較例7−1>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0340】
<比較例7−2>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0341】
<比較例7−3>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0342】
<比較例7−4>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.7mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を0.4mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例7−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0343】
<比較例7−5〜比較例7−8>
電池形状を角型に変更したこと以外は、比較例7−1〜比較例7−4と同様にして二次電池を作製した。すなわち、以下のように、巻回電極体を扁平状とし、電池缶への収納の際に、電池缶として、アルミ製の角型のものを用いた。
【0344】
(電池缶への収納)
アルミ製の角型の電池缶を準備したのち、扁平状の巻回電極体を一対の絶縁板,で挟み、正極リードを電池缶に接続すると共に負極リードを負極端子に溶接して、その巻回電極体を電池缶の内部に収納した。続いて、電池缶の内部に、減圧方式により電解液を注入したのち、安全弁が設けられた電池蓋をレーザー溶接することで密閉した。
【0345】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表7に示す充電電圧とした。測定結果を表7に示す。
【0346】
【表7】

【0347】
表7から以下のことがわかる。実施例7−1〜実施例7−22では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例7−1、比較例7−5では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。比較例7−2、比較例7−6では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。比較例7−4、比較例7−8では、電解液にLiFSIを含有させているが、含有量が多すぎるため、低温サイクル特性が低下した。また、角型の場合は、Liが析出した場合に平面部分の押さえが弱いので、円筒型より素子変形が起こしやすいが、LiFSIを添加することで、この変形を抑制できるため、LiFSIを添加することによる効果の度合いが高い。
【0348】
<実施例8−1>
実施例7−1と同様にして、円筒状の巻回電極体を作製した。この巻回電極体をアルミラミネートフィルムからなる袋状の外装部材に入れたのち、開口部から電解液を注液し、その後、開口部を熱融着した。
【0349】
電解液は、以下のように調製したものを用いた。まず、溶媒として炭酸エチレン(EC):炭酸ジエチル(DEC):炭酸エチルメチル(EMC)を質量比25:X:75−Xの割合で混合した混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、電解質塩として、LiFSIを混合量Zmol/L、LiPF6を混合量1.1mol/L−Zmol/Lで溶解させた。なお、上記のDECの混合比Xは0.1とした。すなわち、DECは、混合溶媒に対して、0.1質量%になるように混合した。LiFSIの混合量Zは、0.1mol/Lとし、LiPF6の混合量1.1mol/L−Zmol/Lは、1.0mol/Lとした。以上により、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0350】
<実施例8−2>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを1とし、DECの混合量を1質量%に変えたこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0351】
<実施例8−3>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.001mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.099mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0352】
<実施例8−4>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.01mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.09mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0353】
<実施例8−5>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.05mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.05mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0354】
<実施例8−6>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.1mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を1.0mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0355】
<実施例8−7>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.5mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を0.6mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0356】
<実施例8−8>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを30とし、DECの混合量を30質量%に変えたこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0357】
<実施例8−9>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを70とし、DECの混合量を70質量%に変えたこと以外は、実施例8−1と同様にして、円筒型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0358】
<実施例8−10〜実施例8−18>
巻回電極体の形状を扁平状にし、この扁平状の巻回電極体を使用したこと以外は、実施例8−1〜実施例8−9と同様にして、角型ラミネートフィルム電池を作製した。
【0359】
<実施例8−19〜実施例8−27>
以下のように、正極および負極を巻回せずに積層することで作製した。
【0360】
(負極および絶縁層の作製)
負極活物質として平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末96質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のアクリル酸変性体1.5質量部と、カルボキシメチルセルロース1.5質量部と、適量の水とを攪拌し、負極スラリーを調製した。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体532Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層532Bを形成した。その際、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を4.2Vになるように設計した。このとき、銅箔が両面に露出した部分を約30mm残し、負極集電体露出部532aとした。
【0361】
セラミックスとしてアルミナ粒子粉末80質量部と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)20質量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドン溶媒で希釈して混合液を作る。負極板を上記混合液に浸し、グラビア(gravure)ローラで膜厚を制御した後、120℃雰囲気の乾燥器に負極板を通して溶媒を除去し、負極版上に5μm厚さの多孔膜を形成し負極532を作製した。その後、には両面の塗布端が同一線上となるようにした。これを図13の形状に切断し、負極532を得た。
【0362】
(正極の作製)
正極531を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合することにより正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体531Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型することにより、正極活物質層531Bを形成した。このときアルミニウム箔が両面に露出した部分を約30mm残し、正極集電体露出部531aとした。これを図14の形状に切断し、正極21を得た。
【0363】
(セパレータ)
厚さ25μmのポリプロピレン製微多孔フィルムを図15に示す形状に切断し、これをセパレータ33とした。
【0364】
(積層体)
このようにして得られた両面塗布の負極532を10枚、両面塗布の正極531を9枚、セパレータ533を18枚、図16に概略を示すように、負極32、セパレータ33、正極31、セパレータ33、負極32、セパレータ33、正極531、セパレータ533、負極531、・・・、セパレータ533、負極532、の順となるように積層した。これにより、正極活物質層531B、セパレータ533、負極活物質層532Bの基本積層単位を18層分内包する電池素子(スタック型電極体)530を得た。尚、このとき電池素子530の最外層には負極活物質層532Bが配置されるが、これらは正極531と対向していないため電池反応には寄与しない。
【0365】
このスタック型電極体を用いて、実施例8−1〜実施例8−9と同様にして、角型ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0366】
<実施例8−28〜実施例8−45>
セパレータとして電解液を保持するための高分子材料で付着したものを使用した以外、実施例8−10から8−27と同様にして、非流動性電解質を用いたラミネートフィルム型電池を作製した。
【0367】
セパレータとしては、厚さ7μmの微多孔性ポリエチレンフィルムの両面に、電解液を保持するための高分子材料であるポリフッ化ビニリデンを2μmずつ塗布したものを用いた。正極と負極とを、セパレータを介して巻回した後、アルミニウムラミネートフィルムからなる袋状の外装部材に入れたのち、電解液を注液し、その後、袋を熱融着してラミネートフィルム型電池を作製した。
【0368】
<比較例8−1>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0369】
<比較例8−2>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0370】
<比較例8−3>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0371】
<比較例8−4>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量Zを0.7mol/Lに変えると共に、LiPF6の混合量を0.4mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例8−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0372】
<比較例8−5〜比較例8−8>
電解液の調製の際に、電解液組成を比較例8−1〜比較例8−4と同様にしたこと以外は、実施例8−10と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0373】
<比較例8−9〜比較例8−12>
電解液の調製の際に、電解液組成を比較例8−1〜比較例8−4と同様にしたこと以外は、実施例8−19と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0374】
<比較例8−13〜比較例8−16>
電解液の調製の際に、電解液組成を比較例8−1〜比較例8−4と同様にしたこと以外は、実施例8−28と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0375】
<比較例8−17〜比較例8−20>
電解液の調製の際に、電解液組成を比較例8−1〜比較例8−4と同様にしたこと以外は、実施例8−37と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0376】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表8に示す充電電圧とした。測定結果を表8に示す。
【0377】
【表8】


【0378】
表8から以下のことがわかる。実施例8−1〜実施例8−45では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例8−1、比較例8−5、比較例8−9、比較例8−13および比較例8−17では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。比較例8−2、比較例8−6、比較例8−10、比較例8−14および比較例8−18では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。比較例8−4、比較例8−8、比較例8−12、比較例8−16および比較例8−20では、電解液にLiFSIを含有させているが、含有量が多すぎるため、低温サイクル特性が低下した。また、アルミラミネートフィルム等の変形性の外装材を用いているため、LiFSIを添加することの効果が高い。また、積層構造は、巻回構造より、LiFSIを添加することの効果が高い。ゲル電解質等の非流動性電解質の場合には、イオン導電率が低下し、Liが析出しやすく変形を起こしやすいので、さらにLiFSIを添加することの効果が高い。
【0379】
<実施例9−1〜実施例9−50、比較例9−1〜比較例9−20>
正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)を表9に示す電圧になるように設計した以外は、実施例8−1〜実施例8−45、比較例8−1〜比較例8−20と同様に行なった。
【0380】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表9に示す充電電圧とした。測定結果を表9に示す。
【0381】
【表9】


【0382】
表9から以下のことがわかる。実施例9−1〜実施例9−50では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例9−1、比較例9−5、比較例9−9、比較例9−13および比較例9−17では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。比較例9−2、比較例9−6、比較例9−10、比較例9−14および比較例9−18では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。比較例9−4、比較例9−8、比較例9−12、比較例9−16および比較例9−20では、電解液にLiFSIを含有させているが、含有量が多すぎるため、低温サイクル特性が低下した。
【0383】
<実施例10−1〜実施例10−10>
以下のように負極活物質をSnCoC含有材料にしたこと以外は、実施例8−37〜8−45と同様にして行なった。
【0384】
スズ・コバルト・インジウム・チタン合金粉末と、炭素粉末とを混合したのち、メカノケミカル反応を利用してSnCoC含有材料を合成した。このSnCoC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は48質量%、コバルトの含有量は23質量%、炭素の含有量は20質量%であり、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合Co/(Sn+Co)は32質量%であった。
【0385】
次に、負極活物質として、上述のSnCoC含有材料粉末80質量部と、導電剤として黒鉛12質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させた。最後に、銅箔(15μm厚)からなる負極集電体に塗布して乾燥させたのちに圧縮成形することにより、負極活物質層を形成した。
【0386】
<実施例10−11〜実施例10−20>
以下のように負極活物質をSi含有材料にしたこと以外は、実施例10−1〜10−10と同様にして行なった。負極活物質として平均粒径1μmのケイ素粉末を用い、このケイ素粉末95質量部と、結着剤としてポリイミド5質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを添加してスラリーを作製した。この負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型してのち、真空雰囲気下において400℃で12時間加熱することにより負極活物質層を形成した。
【0387】
<比較例10−1>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例10−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0388】
<比較例10−2>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIを混合せず、LiPF6の混合量を1.1mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例10−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0389】
<比較例10−3>
電解液の調製の際に、DECを混合しなかった。以上のこと以外は、実施例10−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0390】
<比較例10−4>
電解液の調製の際に、DECの混合比Xを10とし、DECの混合量を10質量%に変えた。LiFSIの混合量を0.7mol/Lに変え、LiPF6の混合量を0.4mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例10−1と同様にして、ラミネートフィルム型電池を作製した。
【0391】
(低温サイクル特性)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表10に示す充電電圧とした。測定結果を表10に示す。
【0392】
【表10】

【0393】
表10から以下のことがわかる。実施例10−1〜実施例10−20では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例10−1、比較例10−5では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。比較例10−2、比較例10−6では、絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。比較例10−4、比較例10−8では、電解液にLiFSIを含有させているが、含有量が多すぎるため、低温サイクル特性が低下した。
【0394】
<実施例11−1>
以下のように正極を作製した。LiPF6を混合せず、LiFSIの混合量を0.001mol/Lに変えた。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0395】
(正極の作製)
正極活物質として鉄リン酸リチウム(LiFePO4)92質量部と、導電剤としてケッチェンブラック3質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを均質に混合してN−メチルピロリドンを添加し、正極合剤スラリーを得た。次に、この正極合剤スラリーを、厚み12μmのアルミニウム箔上の両面に、均一に塗布し、乾燥させ圧縮成型し、正極活物質層(活物質層の体積密度:2.0g/cc)を形成した。
【0396】
<実施例11−2>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を0.01mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0397】
<実施例11−3>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を0.05mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0398】
<実施例11−4>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を0.1mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0399】
<実施例11−5>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を0.3mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0400】
<実施例11−6>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を0.5mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0401】
<実施例11−7>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を1mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0402】
<実施例11−8>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を1.5mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0403】
<実施例11−9>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を2mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0404】
<実施例11−10>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を2.2mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0405】
<実施例11−11>
電解液の調製の際にLiFSIの混合量を2.5mol/Lに変えた以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0406】
<実施例11−12>〜<実施例11−22>
電解液の調製の際に、LiPF6の混合量を0.5mol/Lに変えた以外は、実施例11−1〜実施例11−12と同様にして、二次電池を作製した。
【0407】
<実施例11−23>〜<実施例11−33>
電解液の調製の際に、LiPF6の混合量を1mol/Lに変えた以外は、実施例11−1〜実施例11−12と同様にして、二次電池を作製した。
【0408】
<実施例11−34>〜<実施例11−44>
電解液の調製の際に、LiPF6の混合量を1.5mol/Lに変えた以外は、実施例11−1〜実施例11−12と同様にして、二次電池を作製した。
【0409】
<実施例11−45>〜<実施例11−88>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを用いた以外は、実施例11−1〜11−44と同様にして、二次電池を作製した。
【0410】
<比較例11−1>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、添加剤としてVCを混合せず、電解質塩としてLiFSIおよびLiPF6を混合しなかった。以上のこと以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0411】
<比較例11−2>
絶縁層を形成しなかった。電解液の調製の際に、添加剤としてVCを混合せず、電解質塩としてLiFSIを混合せず、LiPF61mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0412】
<比較例11−3>
電解液の調製の際に、電解質塩としてLiFSIを混合せず、LiPF61mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0413】
<比較例11−4>
電解液の調製の際に、電解質塩としてLiFSIおよびLiPF6を混合せず、代わりに、LiTFSI0.05mol/L混合した。以上のこと以外は、実施例11−1と同様にして、二次電池を作製した。
【0414】
<比較例11−5>〜<比較例11−6>
電解液の調製の際に、添加剤としてVCの代わりにFECを用いた以外は、比較例11−3〜比較例11−4と同様にして、二次電池を作製した。
【0415】
(低温サイクル)
作製した二次電池について、上記と同様にして、低温サイクル特性を測定した。その際、充電電圧は表11に示す充電電圧とした。測定結果を表11に示す。
【0416】
【表11】



【0417】
表11から以下のことがわかる。実施例11−1〜実施例11−88では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例11−2では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、低温サイクル特性が低下した。また、比較例11−3〜比較例11−6では、負極上に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、低温サイクル特性がさらに低下した。
【0418】
<実施例12−1>〜<実施例12−88>、<比較例12−1>〜<比較例12−8>
実施例12−1〜実施例12−88、比較例12−1〜比較例12−3、比較例12−5〜比較例12−6、比較例12−8は、それぞれ実施例11−1〜実施例11−88、比較例12−1〜比較例12−6と同様にして、二次電池を作製した。比較例12−4および比較例12−7は、比較例12−3および比較例12−6のそれぞれに、LiFSIを2.6mol/L含有させて二次電池を作製した。
【0419】
作製した各二次電池について、以下のようにして低温サイクル特性を測定した。
【0420】
(低温サイクル)
低温サイクル特性は、まず、23℃で1サイクル目の充放電を行い、−5℃で充放電するという2サイクル目の充放電を行い、放電容量を確認した。−5℃で3サイクル目から50サイクル目の充放電を行い、2サイクル目の放電容量を100とした場合の50サイクル目の放電容量維持率(%)を求めた。1サイクルの充放電条件としては、30mA/cm2の定電流密度で電池電圧が表1に示す充電電圧に達するまで充電し、さらに表12に示す充電電圧での定電圧で電流密度が0.02mA/cm2に達するまで充電したのち、30mA/cm2の定電流密度で電池電圧が3Vに達するまで放電した。測定結果を表12に示す。
【0421】
【表12】



【0422】
表12から以下のことがわかる。実施例12−1〜実施例12−88では、絶縁層を有する場合でも、電解液にLiFSIを含有させているため、高レートの充放電においても、低温サイクル特性の低下を抑制できた。一方、比較例12−2では、絶縁層を有する場合において、電解液にLiFSIを含有させていないため、高レートの充放電において、低温サイクル特性が低下した。また、比較例12−3〜比較例12−6では、負極上に絶縁層を有するとともに、電解液に添加剤を含有させているため、高レートの充放電において低温サイクル特性がさらに低下した。
【0423】
4.他の実施の形態
本技術は、上述した本技術の実施の形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等を用いてもよい。
【0424】

また、本技術は、以下の構成をとることもできる。
[1]
正極および負極を含む電極群と、
電解液を含む非水電解質と
を備え、
上記電極群は、絶縁層を含み、
上記絶縁層は、セラミックスを含み、
上記電解液は、式(1)の化合物を含む電解質塩と共に、式(2)〜式(14)の化合物の少なくとも1種からなる添加剤を含み、
上記式(1)の化合物の含有量は、上記電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である非水電解質電池。
【化34】

(式中、Mは1価のカチオンである。YはSO2またはCOである。各置換基Zは、独立して、フッ素原子、または少なくとも1つの重合可能な官能基を含んでもよく、かつ、ペルフルオロ化されていてもよい有機基である。置換基Zの少なくとも1つはフッ素原子である。)
【化35】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化36】

(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ビニル基またはアリル基である。R13〜R16のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【化37】

(式中、R17はアルキレン基である。)
【化38】

(式中、R21〜R26は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化39】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化40】

(式中、R31は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。AはC=O、SO、SO2を表す。nは0または1であり、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)
【化41】

(式中、R41およびR42は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニル基、または置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。R43は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化42】

(式中、R51〜R60は置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基を表し、互いに連結し環を形成してもよい。ここで置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化43】

(式中、R61は置換基を有してもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表し、pは0以上の整数でR61によって上限が決まる。)
Li2PO3F(モノフルオロリン酸リチウム)・・・(11)
LiPO22(ジフルオロリン酸リチウム) ・・・(12)
【化44】

(式中、R71およびR72は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化45】

(式中、R81およびR82は、それぞれ独立して、鎖状のアルキル基を示す。)
[2]
上記電解質塩は、上記式(1)の化合物以外の他の電解質塩をさらに含み、
上記式(1)の化合物の含有量は、上記電解液に対して、0.001mol/L以上0.5mol/L以下である[1]に記載の非水電解質電池。
[3]
上記他の電解質塩は、LiPF6を含む[2]に記載の非水電解質電池。
[4]
上記セラミックスは、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニアおよびジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[5]
上記絶縁層は、上記正極および上記負極との間に配置された[1]〜[4]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[6]
上記電極群は、上記正極と上記負極との間に配置されたセパレータをさらに含み、
上記絶縁層は、上記セパレータと上記正極との間、および上記セパレータと上記負極との間のうちの少なくとも一方に配置された[1]〜[5]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[7]
上記絶縁層は、上記正極に含まれる[1]〜[4]のうちの何れかに記載の非水電解質
電池。
[8]
上記負極活物質層は、負極活物質として、ケイ素の単体、合金および化合物、並びに、スズの単体および化合物のうちの少なくとも1種を含む[1]に記載の非水電解質電池。
[9]
電池形状が角型である[1]〜[8]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[10]
上記電極群を外装するフィルム状の外装部材をさらに備える[1]〜[9]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[11]
上記非水電解質は、上記電解液を保持する高分子化合物をさらに含む[10]に記載の非水電解質電池。
[12]
上記電極群は、上記正極および上記負極が巻回された巻回型電極体である[1]〜[11]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[13]
上記電極群は、上記正極および上記負極が積み重ねられた積層型電極体である[1]〜[11]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。
[14]
一対の上記正極および上記負極当りの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下である[1]〜[13]のうちの何れかに記載の非水電解質電池。

[15]
[1]に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
[16]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
[17]
[1]に記載の非水電解質電池と、
前記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[18]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[19]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う[16]に記載の蓄電装置。
[20]
[1]に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0425】
11・・・電池缶、12,13・・・絶縁板、14・・・電池蓋、15A・・・ディスク板、15・・・安全弁機構、16・・・熱感抵抗素子、17・・・ガスケット、20・・・巻回電極体、21・・・正極、21A・・・正極集電体、21B・・・正極活物質層、22・・・負極、22A・・・負極集電体、22B・・・負極活物質層、23・・・セパレータ、24・・・センターピン、25・・・正極リード、26・・・負極リード、30・・・巻回電極体、31・・・正極リード、32・・・負極リード、33・・・正極、33A・・・正極集電体、33B・・・正極活物質層、34・・・負極、34A・・・負極集電体、34B・・・負極活物質層、35・・・セパレータ、36・・・電解質、37・・・保護テープ、40・・・外装部材、41・・・密着フィルム、51・・・正極、51A・・・正極集電体、51B・・・正極活物質層、52・・・負極、52A・・・負極集電体、52B・・・負極活物質層、53・・・セパレータ、54・・・外装缶、55・・・外装カップ、56・・・ガスケット、100・・・蓄電システム、101・・・住宅、102a・・・火力発電、102b・・・原子力発電、102c・・・水力発電、102・・・集中型電力系統、103・・・蓄電装置、104・・・家庭内発電装置、105・・・電力消費装置、105a・・・冷蔵庫、105b・・・空調装置、105c・・・テレビジョン受信機、105d・・・風呂、106・・・電動車両、106a・・・電気自動車、106b・・・ハイブリッドカー、106c・・・電気バイク、107・・・スマートメータ、108・・・パワーハブ、109・・・電力網、110・・・制御装置、111・・・センサ、112・・・情報網、113・・・サーバ、200・・・ハイブリッド車両、201・・・エンジン、202・・・発電機、203・・・電力駆動力変換装置、204a・・・駆動輪、204b・・・駆動輪、204a、204b・・・駆動輪、205a、車輪・・・205b、208・・・バッテリー、209・・・車両制御装置、210・・・各種センサ、211・・・充電口、221・・・負極活物質粒子、222・・・酸化物含有膜、223・・・酸化物含有膜、224・・・隙間、224A,224B・・・隙間、225・・・空隙、226・・・金属材料、301・・・組電池、301a・・・二次電池、302a・・・充電制御スイッチ、302b・・・ダイオード、303a・・・放電制御スイッチ、303b・・・ダイオード、304・・・スイッチ部、307・・・電流検出抵抗、308・・・温度検出素子、310・・・制御部、311・・・電圧検出部、313・・・電流測定部、314・・・スイッチ制御部、317・・・メモリ、318・・・温度検出部、321・・・正極端子、322・・・負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を含む電極群と、
電解液を含む非水電解質と
を備え、
上記電極群は、絶縁層を含み、
上記絶縁層は、セラミックスを含み、
上記電解液は、式(1)の化合物を含む電解質塩と共に、式(2)〜式(14)の化合物の少なくとも1種からなる添加剤を含み、
上記式(1)の化合物の含有量は、上記電解液に対して、0.001mol/L以上2.5mol/L以下である非水電解質電池。
【化1】

(式中、Mは1価のカチオンである。YはSO2またはCOである。各置換基Zは、独立して、フッ素原子、または少なくとも1つの重合可能な官能基を含んでもよく、かつ、ペルフルオロ化されていてもよい有機基である。置換基Zの少なくとも1つはフッ素原子である。)
【化2】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化3】

(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ビニル基またはアリル基である。R13〜R16のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【化4】

(式中、R17はアルキレン基である。)
【化5】

(式中、R21〜R26は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R21〜R26のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化6】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R27〜R30のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【化7】

(式中、R31は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。AはC=O、SO、SO2を表す。nは0または1であり、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)
【化8】

(式中、R41およびR42は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニル基、または置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニル基を表す。R43は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜6のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表す。置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化9】

(式中、R51〜R60は置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基を表し、互いに連結し環を形成してもよい。ここで置換基は、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。)
【化10】

(式中、R61は置換基を有してもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素数2〜36のアルキニレン基、または置換基を有してもよい架橋環を表し、pは0以上の整数でR61によって上限が決まる。)
Li2PO3F(モノフルオロリン酸リチウム)・・・(11)
LiPO22(ジフルオロリン酸リチウム) ・・・(12)
【化11】

(式中、R71およびR72は、それぞれ独立して、アルキル基またはハロゲン化アルキル基
である。)
【化12】

(式中、R81およびR82は、それぞれ独立して、鎖状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
上記電解質塩は、上記式(1)の化合物以外の他の電解質塩をさらに含み、
上記式(1)の化合物の含有量は、上記電解液に対して、0.001mol/L以上0.5mol/L以下である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記他の電解質塩は、LiPF6である請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記セラミックスは、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニアおよびジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記絶縁層は、上記正極および上記負極との間に配置された請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記電極群は、上記正極と上記負極との間に配置されたセパレータをさらに含み、
上記絶縁層は、上記セパレータと上記正極との間、および上記セパレータと上記負極との間のうちの少なくとも一方に配置された請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記絶縁層は、上記正極に含まれる請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記負極活物質層は、負極活物質として、ケイ素の単体、合金および化合物、並びに、スズの単体および化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項9】
電池形状が角型である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項10】
上記電極群を外装するフィルム状の外装部材をさらに備える請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項11】
上記非水電解質は、上記電解液を保持する高分子化合物をさらに含む請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項12】
上記電極群は、上記正極および上記負極が巻回された巻回型電極体である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項13】
上記電極群は、上記正極および上記負極が積み重ねられた積層型電極体である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項14】
一対の上記正極および上記負極当りの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下である請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項15】
請求項1に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
【請求項16】
請求項1に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項17】
請求項1に記載の非水電解質電池と、
前記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項18】
請求項1に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う請求項18に記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−16456(P2013−16456A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16355(P2012−16355)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】