説明

非相溶性なポリマーからなるポリマーブレンド

この発明は、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な別のポリマーからなるポリマーブレンドに関する。このポリマーは、両方のポリマーの溶融物を高いエネルギー付加を伴いながら混錬することによって生成される。冷却後、ならびに再溶融および例えば射出成形等による後処理後に層の分離は観察されない。本発明はさらに、本発明に係る方法によって生成されたポリマーブレンド、ならびにそのポリマーブレンドから形成された成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、いずれの場合もポリマーブレンドの重量に対して、40ないし80重量%のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマー成分と、前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つのその他のポリマー成分を10ないし30重量%有するポリプロピレンポリマーブレンドの製造方法、ならびにその製造方法によって得ることができるポリマーブレンドに関する。本発明はさらに前記ポリマーブレンドから製造された成形体に関する。
【0002】
樹脂は簡便に加工できその型付けには殆ど制約が無い。また軽量でその特性も広範に変化させることができる。既知の信頼性の確立したポリマーの組み合わせによって、例えば衝撃耐久性の向上、特殊な形態構造の設定、あるいは硬質、軟質あるいは弾力性のある相の結合等の、新規性かつ効用のある特性を有する新しい素材を得ることができる。そのような素材の製造に際して、しばしばポリマーが互いに不相溶であることが問題である。ここで素材は均質ではなく、むしろ並立複数の相を有している。その際、安定した素材が得られるようにポリマーを混合することが困難である。従っていくつかのポリマーは混合物に加工することが不可能である。混合を行っても比較的迅速に相分離が生じ、従って溶融物が固化した後肉眼で見て均質な構造を有する完全混和物は得られず、1つのポリマーのみを均質に含んだ大きな領域が散在するものとなる。それぞれ異なったポリマーからなる各領域間にはたいていの場合充分な結合力が存在せず、従ってそれらは簡単に分離する可能性がありそのようなポリマー混合物から形成された成形体は均質な構造特性を有するものではなくなる。たいていの場合、ポリマーを混合した後溶融物が即座に所要の成形体に加工されることはなく、むしろ最初に搬送および貯蔵が容易な粒子材が生成される。例えば射出成形による加工のために再度溶融する際にもポリマーの相分離が生じることは許容できない。
【0003】
自動車業界においては例えば自動車の内装用に樹脂材料が使用される。ここで内装の表面は長年の使用にもかかわらず全くあるいはごく僅かしか劣化を示されないものでなければならない。特に平滑な面については極めて高い耐引掻性を備える必要がある。そのような内装材を製造するために使用されるポリマーブレンドは例えばポリスチロールおよびポリプロピレンから形成することができる。ポリプロピレンは成形体に一定の弾力性を付与し、一方ポリスチロールは高い耐引掻性を備える面の製造を可能にする。しかしながら、従来ポリプロピレンおよびポリスチロールからなるポリマーブレンドは全く市販されていなかった。通常ポリプロピレン粒子材およびポリスチレン粒子材から例えば押出成形機内での混合によって材料が製造される場合、これらの両方のポリマーは混和せず冷却後に各ポリマー相が再び分離する。このようなポリマー混合物から成形体を製造する場合、ポリスチロール相はポリプロピレン相より上側の成形体外表上に集合し、冷却後ポリプロピレンからなる核からポリスチロール相が薄膜のように剥離する可能性がある。
【0004】
安定的なポリプロピレン/ポリスチロール(PP/PS)ブレンドを製造するために、有機改質された珪酸アルミニウムをPP/PSブレンドに付加する実験を既に実施した。Y.チャンジャン氏、X.ソン氏、M.ハイリン氏、およびJ.デミン氏等はスチロールエチレン/プロピレン−ジブロック−コポリマー(SEP)および改質されたモンモリロナイトからなる混成物のPP/PSブレンドへの添加について報告している(チャイナ合成ゴム産業、2003年26(1):42)。この実験に使用されたブレンドはポリプロピレンとポリスチロールを20:80の比率で含んでいた。ここで、ブレンドのSEPの含有率が増えるに従って引張耐性および衝撃耐性が上昇することが発見された。SEPの含有率が5重量%である際に引張耐性が最大に到達し、含有率がさらに上昇すると低下する。このことは、作用物質として機能するSEPのうちの限られた成分のみが両方のポリマー間の境界面に到達し、その他のSEPはポリマーの容積中にミセルの形式で配分されることによって説明される。添加されるモンモリロナイトの量に関しては、まずモンモリロナイトの含有率が増加するに従って引張耐性および衝撃耐性が上昇し、2ないし3重量%の領域で最大値に到達し、さらに含有率が増加するに従って低下する。以上の実験に際してはPP/PS/SEP=20/80/5のポリマー混合物が使用された。モンモリロナイトの重量比は0から約7重量%の範囲で変化させた。
【0005】
Y.リュウ氏、G.バオファ氏、およびZ.ゼングミン氏はポリプロピレン/ポリスチロ/モンモリロナイト−ナノ合成材料の製造について報告している(チャイナ・プラスチック第16版第2号;2002年2月)。特殊な方法によりモンモリロナイトを層間化合(Intercalation)しその後ナノレベルでポリマー材料内に分散させることができる。実験に際して6−アミノカプロン酸、カプロラクタム、または臭化セチルトリメチルアンモニウムによって改質されたモンモリロナイトが使用された。第1のステップにおいてポリスチロール/モンモリロナイト混成材料が製造される。そのため有機改質されたモンモリロナイトをまず脱イオン化した水中に溶解し、開始剤を添加した後スチロールを水滴状に付加し、それによって乳化重合を実施する。その後このポリスチロール/モンモリロナイト混成材料をろ過によって乾燥させる。続いて、この材料をポリプロピレンと共に230℃の温度で10時間混錬する。この乾燥させた材料を射出成形によって試験品として成形する。著者等は、異なった製造段階におけるモンモリロナイトの層間距離の試験について報告している。モンモリロナイトの有機改質によって既に層間距離の拡大が生じる。スチロールの乳化重合後に層間距離のさらなる拡大が生じる。このことは、スチロールモノマーがモンモリロナイト層間に浸入し続いて重合が発生したというように解釈することができる。重合分子によって層間距離のさらなる拡大がもたらされる。既に重合化されたポリプロピレン内における有機改質されたモンモリロナイトの分散の検査によって層間距離の著しい拡大は示されていない。著者等は、有機改質されたモンモリロナイトが依然として一定数のヒドロキシル基をケイ酸塩層の表面上に有しており従って強度に極性化したヒドロキシル基と極性化していないポリプロピレン分子との間に強い反発力が発生すると仮定している。ポリスチロールとモンモリロナイトから形成された混成材がポリプロピレンに付加されると、モンモリロナイト層の分離が生じ、その結果モンモリロナイトのナノレベルでの分散が実現する。透過電子顕微鏡(TEM)を用いた検査によってモンモリロナイト層がナノの寸法で分離していることが示されている。この論文からは、完成したブレンド中においてどのような割合でポリプロピレンとポリスチロールが含まれているか、ならびにモンモリロナイトの含有率がどれくらい高いかについては確認することができない。しかしながら、論文中に示されているX線回折スペクトルにより結晶ポリプロピレン相成分は全く示されていない。このことは、前述したY.チャンジャン氏等の論文と同様に、ここでもポリプロピレンが副次的な相として存在する、すなわちごく僅かな割合で材料中に含まれることを示している。この製造方法は、有機改質されたモンモリロナイトの存在化におけるスチロールの乳化重合のため高コストなものとなる。この種の合成物の製造は高いコスト圧力下で行われるため、この方法は産業用の利用には適してない。
【0006】
Q.ツァング氏、H.ヤン氏、およびQ.フー氏等はSiOナノ粒子を添加することによるPP/PSブレンドの相溶化の実験について報告している(ポリマー45(2004年)1913−1922頁)。SiOナノ粒子を添加することによって、短い混合時間とすると、ポリスチロールから形成された微細ドメインの大きさの大幅な縮小が極めて均等な大きさ分布をもって観察された。しかしながら、混合時間を拡大すると、ポリスチロールから形成された微細ドメインの大きさの増大が観察された。SiOナノ粒子の添加によってPP/PSブレンド溶融物の粘性の顕著な増加がもたらされた。SiOナノ粒子は、疎水性を有する表面を得るためにオクタメチルシクロテトラオキシシランによって改質された。この実験はPPとPSを70:30の比率で含んだポリマーブレンドを使用して行われた。成分の混合は、スクリューの直径が25mm、長さ/直径比が32である均等回転する二軸スクリュー押出機によって3分未満の混合時間で実施された。押し出された帯状材料を水中で冷却しペレット状に切断した。このペレットから射出成形によって試料を製造した。
【0007】
Y.ワン氏、Q.ツァング氏およびQ.フー氏等はポリプロピレン/ポリスチロールブレンド内における有機改質されたモンモリロナイトの作用物質としての特性を検査した。この検査においては、ジオクタデシルジメチル臭化アンモニウムによって改質されたモンモリロナイトが使用された。70:30のPP/PS比を有するPP/PSブレンドに異なった割合で有機改質されたモンモリロナイトを付加し、190℃の温度で混合した。反応物質を添加しない場合はブレンド内に約3ないし4μmの大きさのスチロールドメインが形成されたが、このドメインはブレンドの容積中に均等には分散されなかった。2重量%の有機改質されたモンモリロナイトの添加によってポリスチロールドメインの直径が約2ないし3μmに縮小する。有機改質されたモンモリロナイトの割合を5ないし10重量%に増やすと、ポリスチロールドメインの直径がさらに約0.5ないし1μmに低下する。30重量%の割合ではポリスチロールドメインの大きさは0.3ないし0.5μmにさらに低下し、ここでは極めて小さな大きさの分散が達成される。
【0008】
従来自動車産業においては、例えば操作パネル等の可視領域にも使用可能な充分な品質な表面を有しているポリプロピレン/ポリスチロールブレンドは存在していない。従って他のポリマーブレンドに回避していた。すなわち例えば高い比率で滑石粉を充填したポリプロピレンを使用している。しかしながらこの種の内装材の表面は充分な耐引掻性を示すものではない。また機械的な負荷によってクレージングが発生する。
【0009】
従って本発明の目的は、低コストに実施可能であるとともに後処理後にもポリマー成分間の相分離が生じず従って付加価値の高い品質を備えた成形材を製造することができるブレンドを提供することができる、ポリプロピレンポリマーブレンドの製造方法を提供することである。
【0010】
前記の課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。従属請求項には前記の方法の好適な追加構成が記載されている。
【0011】
意外なことに、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーとこのポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つのその他のポリマーの混合に際して、これらのポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーとその他のポリマーを溶融してその溶融物を有機改質されたナノ合成充填材を添加しながら高剪断性条件下で集中的に混合し、前記のナノ合成充填材が、12ないし22個の炭素原子を有する少なくとも1本の長連鎖の炭素鎖を含んだアンモニウム化合物、スルホニウム化合物、ホスホニウム化合物からなる一群の中から選択される少なくとも1つの有機改質作用物質と脂肪酸および脂肪酸派生物ならびに6ないし32個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族残基あるいは環状残基を含んだ非陰イオンの有機成分からなる一群の中から選択される少なくとも1つの添加剤によって改質されたアルミニウムケイ酸塩である場合に安定したポリプロピレン−ポリマーブレンドが得られることが判明した。
【0012】
ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの比率はポリマーブレンドの総質量に対して40ないし80重量%となる。少なくとも1つのその他のポリマーの比率は約10ないし30重量%の範囲、好適には10ないし25重量%の範囲で選択される。
【0013】
本発明に係る方法によって、前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つのその他のポリマーの微細ドメインが分散している連続的なポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの相を含んだポリマーブレンドが得られる。微細ドメインは連続的な相内に均等に配分されて安定した構造を形成し、従ってポリプロピレン−ポリマーブレンドが再び溶融した後微細ドメインの顕著な合体は観察されない。従って、本発明に係る方法により得られるポリプロピレン−ポリマーブレンドは例えば射出成形によって巨視的に見て均一な特徴を有する成形体に加工することができる。この種のポリマーブレンドから形成された成形体はさらに極めて高い耐引掻性を備えた表面を有する。
【0014】
個々の成分の混合は任意の方法で実施することができる。従ってポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つのその他のポリマーを粒状にし、また有機改質されたナノ合成充填材を粉末状にして乾燥状態で混合しその後一括的に溶融して混錬することが可能である。しかしながら、まずポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに少なくとも1つのその他のポリマーをナノ合成充填材と化合することも可能である。
【0015】
この化合物はその後溶融物から直接加工するか、あるいは一旦粒状材料に加工しそれを再び溶融した後その溶融物を別のポリマーと混合することもできる。また、ナノ合成充填材をポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと少なくとも1つのその他のポリマー溶融物の混錬の直前あるいは直後にその溶融物に付加することもできる。ナノ合成充填材との混合はいずれも直接的にポリマーとの間で成され、従ってポリマー内にナノ合成充填材を分散させるためにナノ合成充填材の存在下で重合することは不要となる。
【0016】
ポリマー成分の混合は高剪断性条件下で実施される。高剪断性条件下において、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶であるその他のポリマーから形成された相が分断され、従って微細ドメインが形成される。加えて、この条件下において殆ど完全なナノ合成充填材の表層剥離が生じる。この表層剥離に際してナノ合成充填材の個々の相から形成された板晶によって微細ドメインの安定化がもたらされ、ここでこの有機改質されたナノ合成板晶が互いに不相溶であるポリマー間の作用物質として機能し、従って別のポリマーによって形成された微細ドメインの合体が効果的に抑制される。
【0017】
本発明に従ってポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つのその他のポリマーを混合した後、そのブレンドを例えば水中で急冷するかあるいはポリマー溶融物の帯状材料をペレット状に裁断することによって、一般的な方法で粒状化される。
【0018】
ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーからなる連続的な相を有しそのポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに対して不相溶である少なくとも1つの別のポリマーからなる微細ドメインがその中に配分されている安定した混合相の形成は、有機改質されたナノ合成充填材の作用物質効果によるものである。ここで有機改質されたナノ合成充填材としては、少なくとも1つの改質作用物質と少なくとも1つの添加剤による特殊な改質を施した層形状のアルミニウムケイ酸塩が考えられる。本発明に係る方法において使用される有機改質されたナノ合成充填材の製造は、最初に改質作用物質によって生粘土を改質して親有機性の粘土材料を生成する特定の方法によって実施される。続く工程においてこの親有機性粘土材料を添加剤によって改質する。それによって、改質された親有機性の粘土材料からなる、本発明に係る方法において使用されるナノ合成添加材が得られ、これはポリマー合成物に加工する際に著しく簡便かつ完全に表層剥離し得るものとなる。複数の板状材から構成された凝集体の割合を大幅に低減することができる。このことは例えば電子顕微鏡撮影によって確認することができる。このナノ合成充填材を製造する方法は、ドイツ国特許出願第10326977号の優先権に基づいた国際特許出願第PCT/EP2004/006397号明細書に記載されている。
【0019】
具体的には、まず親有機性粘土材料が製造される。この親有機性粘土材料の製造は既知の方式で実施することができる。好適には、まず生粘土の水生懸濁物を生成しそれを有機性改質作用物質によって変換することによって親有機性粘土材料を製造する。生粘土としては一般的な膨潤性の層状ケイ酸塩を使用することができる。これは天然の産出地から得るかあるいは人工的に合成することができる。特に適しているものは、例えばモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトおよびバイデライト等のスメクタイト類である。またベントナイトも使用することが可能である。膨潤性がより良好であるため生粘土はナトリウム形態で使用する。有機改質作用物質としては、例えば12ないし22個の炭素原子を含んだ少なくとも1つの長連鎖の炭素鎖を有するアンモニウム化合物等の陽イオン有機作用物質が使用される。このアンモニウム化合物は2本の長い炭素鎖を含むことが好適である。これらの炭素鎖は同等あるいは異なったもの、また直線あるいは分岐したものとすることができる。好適な炭素鎖の例として、ラウリル基、ステアリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、およびヘキサデシル基が挙げられる。分岐した長連鎖の炭素鎖の例としては、12−メチルステアリルまたは12−エチルステアリルが挙げられる。極めて好適な炭素鎖はステアリル基である。窒素原子のその他の原子価は1ないし22個の炭素原子を含むことができるより短い炭素鎖によって飽和させることが好適である。その他の窒素原子の原子価をメチル基によって飽和させれば極めて好適である。しかしながら、自由な原子価が水素原子によって飽和されることも可能である。窒素上に結合された炭素鎖は飽和あるいは不飽和であることが可能であり、例えば芳香族を含むこともできる。従って、このアンモニウム化合物は炭素鎖の他にベンジル基も有することができる。このアンモニウム化合物は例えば塩化物として使用することができる。アンモニウム化合物と並んで類似体ホスホニウムおよびスルホニウム化合物を、親有機性粘土材料を製造するために使用することができる。アンモニウム化合物によって改質された親有機性粘土は、基礎原料として極めて好適である。
【0020】
親有機性粘土材料は添加剤を使用して改質される。親有機性粘土材料を改質するための添加剤として例えば以下の化合物を使用することができる:特に10ないし13個の炭素原子を有する脂肪酸から選択することが好適な、脂肪酸あるいは脂肪酸派生物。ここで特にラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、カプロン酸、ならびにひまし油を挙げることができる。
【0021】
脂肪酸は例えば水素化した派生物、アルコール派生物、アミン派生物、あるいはそれらの混合物を含むことができる。これはさらに、重合脂肪酸基、ケト脂肪酸基、脂肪酸アルキルオキサゾリン基、および脂肪酸ビスオキサゾリン基、またはそれらの混合物から選択することができる。不飽和の脂肪酸については、特にモノ−あるいはポリ不飽和ヒドロキシ脂肪酸を挙げることができる。
【0022】
さらに、6ないし32個、好適には8ないし22個、特に10ないし18個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族残基あるいは環状残基を含んだ非陰イオンの有機成分を使用することができる。特に好適なものは以下に記す材料分類からなる非陰イオンの有機成分である:
1. 脂肪族アルコール、特にC−C22−残基を有する、飽和あるいは不飽和の第一ならびに第二アルコール;
2. 脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン;
3. 脂肪アルコールポリグリコールエーテル
4. 脂肪アミン
5. モノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル、およびトリグリセリドエステル
6. 脂肪酸アルカノールアミド
7. 脂肪酸アミド
8. 脂肪酸アルキルエステル
9. 脂肪酸グルカミド
10. ジカルボン酸エステル
11. ワックス
12. 非水溶性脂肪酸石鹸(これは長連鎖のカルボン酸と2価の金属との塩であると理解される);
13. モンタンワックス(これはC26−C32の鎖長を有する蝋であると理解される);
14. パラフィンおよびポリエチレンワックス。
【0023】
特に好適なものは、脂肪アルコール、脂肪酸アミド、トリグリセリドエステル、脂肪酸アルキルエステル、およびワックスである。
【0024】
さらに、シロキサン成分を使用することができ、それにおいてはIUPAC命名法によるオリゴマーあるいはポリマーシロキサンまたはシロキサン派生物であると解釈することができる。ここでシロキサン派生物としては特に、Si原子上の少なくとも1つのCH側基が別の官能基によって置換されているものが挙げられる。特に好適なものは、(それに限定されるものではないが)オリゴアルキルシロキサン、ポリジアルキルアリルシロキサン、ポリジアリルシロキサン、あるいはそれらの混合物であり、ここで前記のうち少なくとも1つの反応基によって官能化されているシロキサン派生物が極めて好適である。
【0025】
親有機性粘土と添加物の混合は、水あるいはその他の溶媒を添加せずに実施される。親有機性粘土材料は極めて低い水分含有率あるいは溶媒含有率を有しており、従って塊形成は発生せず、また例えば押出成形に際して必要となる可塑性の成形を実施することはできない。親有機性粘土材料は10重量%、特に5重量%未満の水分含有率あるいは溶媒含有率を有することが好適である。添加剤は固体として添加される。場合によっては添加剤を添加の前に溶融することもできる。
【0026】
親有機性粘土材料は粉末形態で高剪断混合器内に付加される。さらにこの親有機性粘土材料は小さな粒子大に破砕される。好適には粒子大中央値(D50値)が50μm未満、特に30μm未満のD50値、さらに好適には8μm未満となる。この粒子大中央値はレーザ回折によって測定することができる。親有機性粘土材料のかさ密度は300g/l未満、特に150ないし250g/lであることが好適である。このかさ密度を測定するために、1000mlの目盛部分で切断された1000ml容量のメスシリンダをまず空で計量する。続いて粉末を上縁部上方に山ができるように一気に充填する。次にこの山をそぎ落として完全に満たされた状態のメスシリンダを再び計量する。その差からかさ密度を計算することができる。
【0027】
親有機性粘土と添加物の混合は、高剪断混合器内で実施される。ここで高剪断混合器とは、顕著な高密度化あるいは圧縮を行うことなく高い剪断作用をもって混合物の成分を相互に混錬する混合器であると解釈される。従って、混錬の間に親有機性の粘土材料と添加剤とからなる混合物は緩やかな粉末の形態を維持する。その結果、混錬の後即座にポリマー化合物に加工可能な粉末を得ることができる。従って改質された親有機性粘土材料を再び破砕する必要は無い。
【0028】
混錬中において高いエネルギー付加に伴って各成分の強力な渦流動化が生じる。同時に集中的な混錬中に温度の上昇も観察される。混錬工程の開始に際して混合器によって略一定の電力消費が成される。混錬工程がさらに進展した後、混合器の電力消費が増加し従って混合物へのエネルギー付加も増大する。粉末が凝固を開始する。さらに、粉末のかさ密度が増加する。この混合工程は、集中的な混錬によってもたらされる高いエネルギー付加によって短時間、例えば6ないし8分の間に、混合器の電力消費が非線形に上昇する温度まで親有機性粘土材料と添加物からなる混合物が加熱されるような方式で実施することが好適である。この混合工程は、混合器において所定時間所定の高い電力消費が観察された後初めて中断される。最適な混合時間を超過した後電力消費が大幅に増大する。このことは混合工程の中断要件に当てはまるものとなる。
【0029】
高められた温度における集中的な混錬によって親有機性粘土材料上に常に新しい表面が形成されそれが添加剤と接触することが想定される。ここで、親有機性粘土材料の表面への添加剤の被覆が達成される。添加剤は部分的に隣接する板晶間の間隙内に封入されると予想される。これは親有機性粘土材料の多孔性の変化、および毛管作用の変化を促すように作用する。このことによってポリマー内における改質された親有機性粘土の離層性が顕著に改善される。改善された離層性と並んで、改質された親有機性粘土材料の流動性ならびに押出成形加工時における改善された配量特性も観察される。
【0030】
親有機性粘土材料と添加剤の集中的な混錬は高められた温度下で実施することが好適である。前述したように、集中的な混錬に際して実施される高いエネルギー付加によって混合物の加熱が生じ、ここで最初の混錬時間の後に混合物による非線形のエネルギー吸収が観察される。
【0031】
混合物へのエネルギー付加は混合器のみによって行わず、混合物を追加的に加熱することが好適である。このため混合物を例えばヒータ付カバーを使用して均等に加熱する。この加熱のために例えば直線的な温度特性を選択することができる。この加熱は、混合物のエネルギー吸収の非線形的な上昇によって親有機性粘土材料と添加剤との間の反応が示されるまで継続することが好適である。
【0032】
親有機性粘土材料と添加剤からなる混合物を加熱する際に到達する温度は、少なくとも1つの添加剤の融点よりも高く選択することが好適である。混合物内に2つ以上の添加剤が存在する場合、前記温度は最も高い添加剤の融点より高くなるように選択される。
【0033】
混合物の温度は集中的な混錬の最中に上昇することが好適である。前述したように、混合物の温度は、より高い混合物のエネルギー吸収によって親有機性粘土材料と添加剤との間の反応が示されるまで、まず追加的な熱源によって上昇する。前記の点に達した後も親有機性粘土材料と添加剤の混合に際して温度がさらに上昇することが好適である。この温度上昇は混合器のエネルギー付加あるいは外部熱源によって実施することができる。
【0034】
親有機性粘土材料と添加剤の集中的な混合は20ないし200℃、特に40ないし150℃の温度領域で実施することが好適である。
【0035】
前述したように、親有機性粘土材料のかさ密度は集中的な混合の間に増加する。集中的な混合の間のかさ密度の増加は、投入された粉末状の親有機性粘土材料のかさ密度に対して、少なくとも20%、好適には40%、より好適には60%、さらに好適には80%、さらに好適には100%増加することが好適である。
【0036】
混合物の成分、すなわち親有機性粘土材料と添加剤は、高いエネルギー付加を伴って互いに混錬される。このエネルギー付加は混合物のエネルギー吸収、すなわち集中的な混合に際して使用される電力から測定することができ、これと混合物の容積との対比が行われる。集中的な混合に際して300kW/mのエネルギー付加が実施されることが好適である。
【0037】
この集中的な混合は、高剪断混合器の電力消費に従って測定したエネルギー付加の上昇が少なくとも10%、好適には少なくとも20%に到達するまで継続される。
【0038】
前述したように、一定の潜伏期の後混合凝集体のエネルギー吸収の非線形的な増加が観察される。この集中的な混合は、高剪断混合器の電力消費に従って測定した混合の終端に際してのエネルギー付加の上昇が集中的な混合の開始時におけるこの高剪断撹拌機の電力消費に比べて10ないし50%、好適には20ないし30%の範囲になるまで継続することが好適である。
【0039】
特に、この集中的な混合は混合器の電力消費が1分間の間に20%上昇するまで継続することが好適である。
【0040】
前述した電力消費の上昇が約5分間の集中的な混合の総継続時間内に達成されない場合、使用されている高剪断混合器を追加的に加熱することが好適である。
【0041】
使用される親有機性粘土材料は、集中的な混合の間に粉末形態を維持する。粒子の集中的な渦流化によって、親有機性粘土材料が添加剤と反応して層化する。ここで混合工程の強さおよび持続時間は、このD50(中央値)で測定して粒子大が混合中に10%を超えて増加しないように選択する。むしろ粒子大がD50(中央値)で測定して全く増減しなければ極めて好適である。この改質された親有機性粘土材料の粒子大は、いずれも集中的な混合に投入された成分a)のD50(中央値)で測定した元の粒子大に対比したものである。この改質された親有機性粘土材料の粒子大はD50(中央値)で測定して約20ないし5μmの範囲になることが好適である。
【0042】
集中的な混合中に親有機性粘土材料のかさ密度が増加する。このかさ密度が成分a)の初期のかさ密度に比べて最大で200%上昇した場合に混合を中断することが好適である。すなわち、集中的な混合によって未処理の粘土材料のものと比べて最大でかさ密度が3倍に増加する。改質された粘土材料のかさ密度は400ないし550g/lとなることが好適である。
【0043】
添加剤は固体状で親有機性粘土材料に添加される。この方法の一実施形態によれば成分a)および成分b)の両方が粉末状で付加される。粉末状の微細粒子固形物は混合に際して液体のように流動する。血栓状物質(Thrombus)形成が生じて混合物が縦横に大きく移動する。集中的なエネルギー付加によって混合器の電力消費が非線形的に上昇するまで混合物の温度が上昇し、その結果粉末のかさ密度が増加する。しかしながら、室温において液体状である添加剤を使用することもできる。これを親有機性粘土材料に添加してその直後に集中的な混錬を実施することが好適であり、それによって添加剤が親有機性粘土材料の塊を形成するよう作用することが防止される。液体状添加剤は親有機性粘土材料の渦流によって形成された血栓状物の近くに付加することが好適である。親有機性粘土材料と添加剤からなる混合物は、200m/sまでの周囲速度において血栓状物形成が生じるような方式で攪拌される。混合工程に際して混合容器の中央部に錐形体形成が観察され、すなわち混合物は集中的な混合中に錐形状に混合器の底部に向かって延在する。
【0044】
有機改質されたナノ合成充填材の製造に際して親有機性粘土材料は改質前および後のいずれにおいても粉末形態を有している。得られた改質親有機性粘土材料は、集中的な混合後の形態のままさらに加工され、ポリマー内に混入されることが好適である。好適には混合後に改質された有機粘土材料をさらに加工するための独立した圧縮工程は実施しない。
【0045】
極めて好適な実施形態によれば、集中的な混錬直後に混合部の冷却が実施される。そのため改質された親有機性粘土材料を約40℃未満、特に30℃未満、極めて好適には約20ないし40℃の温度に冷却する。
【0046】
この冷却は先行した集中的な混合の持続時間の1ないし3倍に相当する持続時間で実施することが好適である。
【0047】
その後冷却された改質有機粘土材料(ナノ合成充填材)を混合器から取り出し、例えば後の加工時まで適宜な束で包装しておくことができる。
【0048】
改質された親有機性粘土材料の冷却は混合物あるいは集中的な混合に使用された高剪断混合器の冷却によって能動的に実施することが好適である。
【0049】
改質された親有機性粘土材料の冷却は独立した冷却可能な混合器内で実施することが好適である。
【0050】
冷却の間も混合物がさらに攪拌され、さらに集中的に混錬される。
【0051】
高剪断混合器としては、加熱冷却式混合器または加熱混合器と冷却混合器の組み合わせを使用することが好適である。加熱あるいは冷却混合器は互いに独立して例えば水/水蒸気あるいは熱伝導オイル、または電気式熱気流、空冷あるいは水冷方式によって温度調節することができる。
【0052】
改質された親有機性粘土材料を製造するために、親有機性粘土材料と添加剤の集中的な渦流動が形成されることが重要である。混合器の選択に際してはこのことに配慮する必要がある。高剪断混合器は例えば下記の一群の中から選択される:
a) いわゆる単式あるいは複合式クラウン工具を備えた例えば鋤刃混合器(Loedige高速混合器、Drais高速混合器、MTIタービン混合器)等の櫂形混合器;
b) 同方向あるいは逆方向回転する二重スクリューを有するスクリュー混合器、関節式スクリュー混合器、同軸ニーダ(BUSS Co−ニーダ)等のスクリュー混合器;
c) インペラ、機械式あるいは圧力式流動混合器(例えばテュッセン、ヘンシェル、またはMTI加熱混合器)等の流動混合器。
【0053】
高剪断混合器としては、流動床原理によって動作する機械式流動混合器を使用することもできる。
【0054】
集中的な混合のために攪拌工具および好適には少なくとも1枚の転向板を備えた高剪断混合器を使用することもできる。攪拌工具は、特にマルテンサイト系鋼、RC40、およびより硬質の鋼材等の高品質鉄鋼から製造することが好適である。さらに、これは耐腐食性に優れていることが好適である。理想的には、液流化刃は特に“ステライトK12”硬質金属溶接によって全ての重要な部分が補強される。混合器底部からボトムスイーピング工具までの距離は原材料によって決まる最低距離に調節し、その他の液流化工具および突起型工具はそれらの液流化工具によって高速混合器の所与の充填度合に際して所要の温度が確実に達成され得るように配置することが好適である。
【0055】
所要の液流化を最適に保証するために、少なくとも1枚、好適には2枚あるいはそれより多い転向板を設ける。これは表面改質された親有機性粘土材料が最適に渦流動するような方式で配置される。
【0056】
この種の有機改質されたナノ合成充填材は例えばミュンヘン市のズードケミーによって“Nanofil(登録商標)SE3000”の商品名で市販されている。
【0057】
本発明に係る方法において、有機改質されたナノ合成充填材はポリプロピレンポリマーブレンドの質量に対して0.5ないし10重量%、好適には0.5ないし5重量%、特に好適には0.5ないし2重量%の割合で付加することが好適である。
【0058】
ポリマーブレンドのポリマー成分としてはポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーが使用される。これらのポリマーはポリマーブレンドに高い耐衝撃性をもたらすものである。さらに、これはコストを低下させ、そのため例えば自動車産業における成形部材の製造等の大型製品の用途において有利である。ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーとしては、プロピレンをモノマーユニットとして含んだ全てのポリマーを使用することができる。ポリマー内におけるプロピレンからなるモノマーユニットの割合は少なくとも50モル%、好適には80モル%超となる。この割合は、ブレンド中に含まれるポリマーの中央値を示すものであることが理解される。好適なポリプロピレンコポリマーの例は、プロピレン/エチレン−コポリマーである。ポリプロピレンとしては、シンタクチック、およびアイソタクチックあるいはアタクチックなポリプロピレンのいずれをも使用することができる。使用されるポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーのメルトフローインデックス(MFI)は1ないし30g/10分、好適には5ないし20g/10分、特に好適には8ないし12g/10分の範囲となる。このMFIは230℃および2.16kgでISO1133に従って測定される。
【0059】
その他の成分として本発明に係るポリマーブレンドの製造方法において、前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと不相溶な少なくとも1つの別のポリマーが使用される。本発明の観点において不相溶なポリマーとは、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと実質的に混合不可能なポリマーを示している。ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと少なくとも1つの別のポリマーの顆粒の混合物の溶融に際して、融和は生じない。それら両方のポリマーを混錬すると、それらは互い分離した相として隣在する。この種の混合物を長時間にわたって溶融物内に保持すると、いずれも1種類のポリマーから形成されたドメインが合体し、すなわち相分離が形成される。少なくとも1つの別のポリマーの溶融物がポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの溶融物内を浮遊するか、あるいはその逆の状態となる。
【0060】
前記の少なくとも1つの別のポリマーは、ポリスチロール(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)、ならびにポリエチレンテレフタラート(PET)あるいはポリブチレンテレフタラート(PBT)およびポリカーボネート等の熱可塑性ポリエステルからなる一群の中から選択される。この別のポリマーは、230℃および2.16kgでISO1133に従って測定して、1ないし30g/10分、好適には5ないし20g/10分、特に好適には8ないし12g/10分のMFIを有することが好適である。
【0061】
本発明に係る方法において、ポリプロピレンおよびポリスチロールおよび/またはポリプロピレンコポリマーおよび/またはポリスチロールコポリマーからなる混合物を使用すれば極めて好適である。
【0062】
好適な実施形態によれば、溶融物にブロック共重合体が作用物質として、好適にはポリマーブレンドの質量に対して5ないし15重量%の割合で付加される。このブロック共重合体は2つのポリマー相間の境界面上に配置されポリマーブレンド中に少量含まれている前記別のポリマーの微細ドメインを安定化するよう機能する。好適なブロック共重合体は、例えばスチロールエチレン/プロピレン−ジブロック共重合体(SEP)またはスチロール−エチレン/プロピレン−スチロール−トリブロック共重合体(SEPS)である。これらのブロック共重合体は耐衝撃性改質剤として作用する。SEPまたはSEPSを添加することによって、表面が高い引掻耐性を備えた成形体を製造することができるポリマーブレンドを得ることができる。別の好適なブロック共重合体は、エチレン/プロピレン−ブロック共重合体(EPM)、エチレン/プロピレン/ジエン−ブロック共重合体(EPDM)、スチロール−ブタジエン−スチロール−ブロック共重合体(SBS)、またはスチロール−ブタジエン−ゴム−ブロック共重合体(SBR)である。
【0063】
高品質のポリマーブレンドを製造するために、前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと不相溶な少なくとも1つの別のポリマーから形成された相の集中的な分散化を行うことが重要であり、従って前記別のポリマーがポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーから形成された連続的な相内に微細ドメインを形成する。従って、ポリマー相の集中的な混錬は高いエネルギー付加をもって実施され、ここで溶融物の集中的な混錬は好適には0.1ないし5kWh/kg、特に好適には0.2ないし4kWh/kgのエネルギー付加をもって実施する。このエネルギー付加は、加工されるポリマー量に応じて使用される混合装置のエネルギー消費から計測することができる。
【0064】
溶融物の集中的な混錬は少なくとも1分、好適には1ないし15分の混合時間内に実施することが好適である。ここで、この混合時間は、一方で、微細ドメインを形成しながら前記別のポリマーから形成された相を可能な限り高いレベルで分散化することおよび前記の連続的な相中においてこの微細ドメインを可能な限り均等に分配することと、他方でポリマーへの熱負荷を可能な限り低く維持することを達成するように選択される。
【0065】
ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの溶融物と少なくとも1つの別のポリマーの高いエネルギー付加を伴った集中的な混錬は、押出成形機内、特に同方向回転する二軸式押出成形機内で行うことが好適である。この種の押出成形機は両方のポリマー溶融物から形成された混合物への高いエネルギー付加を可能にし、それによって両方のポリマー相間の高レベルの含浸を可能にする。この集中的な混錬は必ずしも押出成形機によって実施されなければならないことはない。ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの溶融物と少なくとも1つの別のポリマーの溶融物からなる混合物への高いエネルギー付加を可能にする、別の混合装置を使用することもできる。その種の装置は当業者において既知である。同方向回転する二軸式押出成形機以外に、高いエネルギー付加を可能にするその他の種類の押出成形機を使用することもできる。好適なものは、例えば、Buss−ニーダである。
【0066】
ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと少なくとも1つの別のポリマーの混錬は所定の温度プロフィールをもって実施することが好適である。この温度は混合の進展に伴って上昇するものとなり、ここでその温度は混錬の開始に際して150ないし200℃に選定し、その後210ないし260℃に上昇する。ここで温度の上限は実質的にポリマーの温度安定性に従って決定される。ここで目立ったポリマーの分解は生じるべきでない。温度の下限は溶融物の充分な粘性が得られるように決定される。
【0067】
本発明に係る方法によって得られたポリマーブレンドの特性は、主に有機改質されたナノ成分の添加によって影響を受けるものである。前述したように改質作用物質および添加剤によって改質された層状ケイ酸塩は、まず積層形態でポリマーあるいはポリマー混合物に付加され、両方のポリマー溶融物の集中的な混錬によって略完全に表層剥離され、従って理想的な場合において層状ケイ酸塩の個々の板晶がポリマーブレンド内に分散される。この理論に限定するものではないが、小板形状のナノ成分の板晶が、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと少なくとも1つの別のポリマーの間の相境界上に配置され前記少なくとも1つの別のポリマーから形成された微細ドメインを安定化するように作用することによって、互い不相溶な両方のポリマー相間の強力な結合をもたらすよう作用することが想定される。同様に、小板形状のナノ合成充填材の板晶が成形体の表面上にも凝集してそれによって表面の引掻耐性を高めることが想定される。電子顕微鏡試験によって、積層体の割合を一定のものとした実用例において完全な表層剥離は発生せず少数の層を含んだ積層体がポリマーブレンド内に保持されることが示された。ここで層の数は2ないし5程度となる。一般的に板晶は200ないし500nmの長さと1nmの厚みを有する。ポリマーブレンドの製造に際してナノ合成充填材料あるいは層状珪酸アルミニウムをポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーに添加することが好適である。
【0068】
ポリマーブレンドの製造に際してポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーあるいは別のポリマーから形成された相が高いエネルギー付加を伴って混錬される。これは一方で前記別のポリマーの相からなる微細ドメインを形成するように作用するとともに、他方でナノ合成充填材を表層剥離するように作用するためのものである。混錬を押出成形機内で実施する場合、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと別のポリマーの顆粒の混合物を製造することができ、ここでナノ合成充填材はポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの顆粒内に既に含有されていてその顆粒を押出成形機内で溶融および混合することが好適である。ブレンドは例えば再度粒状化することができる。得られた顆粒中においてポリマー相の混錬が充分でない場合、顆粒を再度押出成形機内に投入して再び溶融および混錬することができる。
【0069】
しかしながら、ポリマー相の混錬は、このポリマー相の集中的な混錬を可能にするものであれば、別の方式によって行うこともできる。従って例えばポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに少なくとも1つの別のポリマーをまず別々に溶融し、それらの溶融物を高いエネルギー付加を伴って混錬することができる。次に混合物を顆粒に加工することができる。例えば射出成形によって成形体を製造するために顆粒を再び溶融する場合、可視的に見てポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーあるいは少なくとも1つの別のポリマーから形成された相の分離は発生しない。また射出成形の後においてもこのポリマーブレンドは可視的に見て均質な構造を維持する。前記少なくとも1つの別のポリマーはポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマー上に浮上せず、従って溶融物が固化した後に剥離することはない。
【0070】
この本発明方法の実施形態において前記少なくとも1つの別のポリマーの溶融物は、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの溶融物の流動方向において前後して配置された1つあるいは複数の開口部を介してこの溶融物に付加することが好適である。この実用的な実施形態において、例えば押出成形機内でまずポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーを溶融し、次に例えばポリスチロールからなる少なくとも1つの別のポリマーの溶融物を押出成形機内のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーの溶融物の流体中に給入する方式を実施することができる。ここで、この給入は単一のノズルまたは前後に隣接した複数のノズルを介して実施することができる。
【0071】
ポリマーブレンドの性質は、さらに別の充填材を添加することによって広範に調節することができる。一実施形態において、ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに少なくとも1つの別のポリマーからなる溶融物に繊維質の強化材が付加される。この種の強化材は、例えばグラスファイバー、炭素繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリルアミド等の化学繊維、またはサイザル、木綿、木材、セルロース、麻、ジュート、あるいは椰子等の天然繊維とすることができる。またポリマーブレンドは、白墨、タルク、ウォラストナイト、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の一般的な鉱物充填材を含むこともできる。同様に、色素あるいは着色料、光源材料、温度安定材、または蝋等の加工補助材料を含むこともできる。
【0072】
前述したように、本発明に係る方法によれば、自動車産業において例えば内装材用の成形部材を製造するために適した優れた性質を有するポリマーブレンドが提供される。従って本発明の対象は、ポリマーブレンドの重量に対して40ないし80重量%のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと10ないし30重量%の前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な少なくとも1つの別のポリマーと表層剥離されていて有機的に改質されたナノ合成充填剤を含んだポリマーブレンドであり、前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーが連続的な主相を形成し、前記少なくとも1つの別のポリマーは非連続的な副相を形成し、前記別のポリマーの非連続的な相は、ポリマーブレンドの断面図内においてこの別のポリマーによって形成される微細ドメインの総面積に対して18%超、好適には20%超、特に好適には25%超さらに好適には28%超の割合で0.04μm未満の面積からなる島状の微細ドメインを有するものとなる。0.1μm未満の面積からなる島状の微細ドメインの割合が前記別のポリマーによって形成される微細ドメインの総面積に対して好適には35%超、より好適には40%超、さらに好適には50%超となる。
【0073】
本発明に係るポリマーブレンドはポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーによって形成された連続的な相を有する。この連続的な相内には前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な別のポリマーから形成された微細ドメインが分配されている。本発明に係るポリマーブレンドにおいて、前記別のポリマーの微細領域が極めて小さい面積からなるものである。本発明に係るポリマーブレンドから形成された顆粒を再度溶融する際においても前記微細ドメインはごく僅かにしか合体しない。この微細ドメインの大きさの分布はポリマーブレンドによって形成された試験体の断面を電子顕微鏡で撮影することによって確認することができる。ナノ合成充填材から形成された板晶はポリマーブレンド内に分散し、ここで板晶は両方のポリマー相間の境界面上にも配置される。ナノ合成充填材から形成された板晶によって前記別のポリマーからなる微細ドメインが安定化され、従ってポリマーブレンドが可視的に見て均質な性質を有するとともに、例えば射出成形等の後の加工に際しても相の分離は生じないことが想定される。
【0074】
ポリマーブレンド内に埋入されたナノ合成充填材は、ポリマーブレンドの総重量に対して0.1ないし10重量%、好適には0.5ないし5重量%、特に好適には0.5ないし2重量%の割合で含まれる。このナノ合成充填材については既に本発明に係る方法に関して詳細に記述している。
【0075】
前記のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な少なくとも1つの別のポリマーは、ポリスチロール(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルからなる一群の中から選択することが好適である。
【0076】
本発明に係るポリマーブレンドの別の利点は、20%のタルクを充填したポリプロピレンと同様な収縮性を有することである。そのような樹脂の自動車用成形部材の製造における使用は広く実用化されている。従って、成形部材の製造における本発明に係るポリマーブレンドの使用が既存の器具によって実施し得るものとなる。
【0077】
ポリマーブレンドは前述した方法によって製造することが好適である。
【0078】
本発明に係るポリマーブレンドから製造された成形部材は、その表面が極めて高い引掻耐性を有することを特徴とする。従って、本発明の対象はさらに前述したポリマーブレンドから製造した成形部材である。この成形材部材は射出成形によって製造することが好適である。この理論に限定するものではないが、発明者は、再度溶融してその後射出成形した際に両方のポリマー相間に極僅かな分離が生じ、ここで例えばポリスチロールは成形部材の表面上に凝集してその結果極めて高い引掻耐性が達成されると想定している。この際ポリスチロールはその下に大きく存在しているポリプロピレンに対して強力に嵌合し、従って従来市販されていたPP/PSポリマーブレンドのように最上部のポリスチロール層の剥脱が生じることはない。本発明に係るナノ合成充填材、特にナノ層状ケイ酸塩の添加によって、引掻耐性がさらに高められる。
【0079】
次に、添付図面および実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【0080】
例1
以下の成分のポリマーブレンドを製造した:
重量−比率 成分
20 ポリスチロール
66 ポリプロピレン
4 Nanofil SE3000(ズードヘミー(独)社)
7 SEP
3 その他
(“その他”とは、着色料、安定材、および潤滑剤等の成分を総称したものである。)
【0081】
ポリスチロールおよびポリプロピレンは重量によって配量し、40mmの直径と48の長さ/直径比を有する同方向回転式の二軸押出成形機内で300kg/hの処理量および70kWの電気駆動エネルギーをもって溶融および混錬する。押出成形機内において200℃から260℃に上昇する温度プロフィールが設定された。続いて、水中粒状化による粒状化が実施された。得られた試料を51514と呼称する。
【0082】
比較例1
比較のために通常自動車製造において使用されるポリマー顆粒を製造した。そのポリマー顆粒は以下の成分を有している:
79重量% ポリプロピレン
20重量% タルク
1重量% 酸化防止剤およびUV安定剤
【0083】
ポリマーブレンドの製造は同方向回転式の二軸押出成形機内で実施され、ここで押出成形機の熱プロフィールは220℃から250℃に上昇した。粒状化は水中粒状化によって実施された。
【0084】
比較例2
以下の成分のポリマーブレンドを製造した:
重量−比率 成分
20 ポリスチロール
66 ポリプロピレン
4 Nanofil 15(ズードヘミー(独)社)
10 SEP
3 その他
(“その他”とは、着色料、安定材、および潤滑剤等の成分を総称したものである。)
【0085】
Nanophil 15は、1/4(quarternary)アンモニウム化合物によって改質されているがその他の添加剤によっては改質されていないモンモリロナイトである。ポリマーブレンドの製造および粒状化は例1に記述されたものと同様である。得られた試料は“basl1”と呼称する。
【0086】
試験体の製造
例1ならびに比較例1および2によって得られた顆粒をDEMAG射出成形装置内で150tの型締め圧力をもって射出成形し規格(ISO31760)に従った引張試験片に加工する。
【0087】
引掻耐性試験
引掻耐性試験はVW規格PV3952号に従って実施される。ここで樹脂材料の引掻耐性として加工材料の例えば鋭敏な角部あるいは丸型の物体の引掻動作に際しての機械的作用に対する抵抗が示される。この際、機械によって誘導された引掻刃具を使用して2mmの直線間隔で塗装/非塗装樹脂表面を十字模様で引掻する。ここで引掻傷毎には一方向において1回のみ引掻を行う。その後引掻していない表面に対する色の変化を測定する。
【0088】
試験機器および補助材料
引掻装置: エリクセン社製の430型電動格子切り装置;
引掻刃具: 1mmの直径を有する硬質金属針、エリクセン社製の硬度試験棒318型の彫刻工具;
色測定装置: DIN5033−4に準拠
測定幾何配置: DIN5033−7に準拠、セクション3.2.1−45°/0°あるいはセクション3.2.2−0°/45°;
DIN6173第1部および第2部;の規格光下における仮想判定;
規格光:D65
【0089】
試料準備
目視検査によって試料の表面が均質であるかならびに汚れが付着してないかが検査された。取扱いは清潔で油分の無い手によってのみ行った。引掻試験の前に試料をDIN50014−23/50−2に従って48時間通常環境下で貯蔵した。
【0090】
実験遂行
試験は23±5℃で行った。
【0091】
引掻装置によって2mmの直線間隔で40×40mmの十字模様を形成した。引掻刃具の押付け圧力は5Nとし、引掻速度を1000mm/分とした。
【0092】
評価
評価を行うために、引掻された領域に対する引掻されていない領域のCIELAB表色系によるdLの比色測定値が求められ、ここで5回の個別測定から中央値が形成された。
測定方法: DIN5033−4
色差: DIN6174に準拠
光方式: D65/10°
測定フィールド直径: 8mm
【0093】
以下の数値が判定された。
例1: dL=0.5
比較例1: dL=2.5
比較例2: dL=1.2
【0094】
例1によって得られた試験体の引掻傷の明色化すなわち可視性は硬質の表面のため小さなものとなる。
【0095】
罅割れ脆弱性
例1において製造された試験体を機械的に破壊した。ここで比較例1において製造された試験体には変形部に罅割れが生じた。そのような現象は例1において製造された試験体には観察されなかった。
【0096】
エックス線回析図による検査
例1によって得られた試料から1つの試料をエックス線回析で検査した。これに相当するスペクトルが図1に示されている。層状珪酸アルミニウムの層間隔に対応させることができる2Θ0ないし14°の間の範囲には全くピークが存在しない。従って、添加されたナノ合成充填材の完全な表層剥離が生じている。2Θ14°付近に存在するピークは結晶ポリプロピレンに相当する。
【0097】
透過電子顕微鏡による検査
TEM撮影を行うために、超ミクロトームを使用して例1および比較例2において得られたポリマーブレンドから製造された引張試験棒から−40℃で薄い断片を切り出し、その後RuOと対比しさらにTEMによって200kVの加速電圧をもって検査した。例1および比較例2から得られた電子顕微鏡撮影が図2(51514)および図6(basl1)に示されている。
【0098】
得られた撮影図は、分離したポリマー相の面積を自動検出することができるように手作業によって処理されている。両方の試料を仕分けするために50個の等級を設定した。
【0099】
画像分析はソフトイメージングシステム社製のソフトウェアAnalySISを使用して行った。
【0100】
本発明に係るポリマーブレンド“51514”ならびに比較用に使用した比較例2のポリマーブレンド“basl1”について判定した数値を表1および表2にまとめた。各表にはそれぞれ以下のパラメータが含まれている:
等級面積: 1つの等級内の全ての粒子(ドメイン)の面積
面積比: 全ての粒子の総面積に対するある1つの等級内の全ての粒子の面積の比
面積中央値: ある等級内の個々の粒子の面積中央値
数: ある等級内の粒子の数
相対比率: 総粒子数に対するある等級内の粒子数のパーセント比率
等級ID: 等級番号
【0101】
図4および図8には、ポリマーブレンド“51514”ならびに“basl1”についての判定値が縦軸を“数”、横軸を等級番号として示されている。図5および図9には、ポリマーブレンド“51514”ならびに“basl1”についての判定値が縦軸を“面積比”、横軸を等級番号として示されている。比較例2のポリマーブレンドに比べて、本発明に係るポリマーブレンドにおいては極めて小さい微細ドメインの比率が著しく高いことが理解される。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係るポリマーブレンド(51514)のエックス線回析図である。
【図2】本発明に係るポリマーブレンド(51514)から形成された試験体の断面を示す電子顕微鏡撮影図である。
【図3】図2の電子顕微鏡撮影から面積算定のために使用される図を作成したものであり、目盛は2μmに相当する。
【図4】図3から算定した各面積等級毎の微細ドメインの数を示した棒グラフである。
【図5】図3から算定したポリスチロールから形成された微細ドメインの総面積に対する各面積等級の微細ドメインの面積比率を示した棒グラフである。
【図6】従来のポリマーブレンド(basl1)によって製造された試験体の断面を示した電子顕微鏡撮影図である。
【図7】図6の電子顕微鏡撮影から面積算定のために使用される図を作成したものであり、目盛は2μmに相当する。
【図8】図7から算定した各面積等級毎の微細ドメインの数を示した棒グラフである。
【図9】図7から算定したポリスチロールから形成された微細ドメインの総面積に対する各面積領域の面積比率を示した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーブレンドの総量に対して40ないし80重量%のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマー成分と10ないし30重量%の前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な少なくとも1つの別のポリマー成分とを有するポリプロピレンポリマーブレンドの製造方法であり、ここで前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーならびに別のポリマーは融解しており、その融解物が高剪断性条件下で有機的に改質されたナノ合成充填剤を添加しながら集中的に混合され、このナノ合成充填剤はアルミニウム層ケイ酸塩からなり、この層ケイ酸塩は、12ないし22個の炭素原子を有する少なくとも1つの長連鎖の炭素鎖を有している、アンモニウム結合体、スルホニウム結合体およびホスホニウム結合体の一群の中から選択される少なくとも1つの有機改質作用物質、また、脂肪酸および脂肪酸派生物、ならびに6ないし32個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族あるいは循環性残留物(Cyclic Rest)を含んだ非陰イオン性の有機成分からなる一群の中から選択される少なくとも1つの添加剤によって改質される方法。
【請求項2】
有機改質されたナノ合成充填剤はポリプロピレンポリマーブレンドの総量に対して0.5ないし10重量%の割合で添加される請求項1記載の方法。
【請求項3】
非陰イオン性の有機成分は、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、脂肪ケトン、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪アミン、モノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル、トリグリセリドエステル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グルカミド、ジカーボン(Dicarbon)酸エステル、ワックス、非水溶性脂肪酸洗剤、モンタンワックス、ならびにパラフィン、ポリエチレンワックス、およびポリシロキサンからなる一群の中から選択される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの別のポリマーは、ポリスチロール、ポリメタクリル酸メチル、アクリルニトリルブタジエンスチロール、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルからなる一群の中から選択される請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
融解物にブロック共重合体がポリマーブレンドの総量に対して5ないし15重量%の割合で作用物質として添加される請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
融解物の集中的な混合は0.1ないし5kWh/kgのエネルギー付加をもって実施される請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
融解物の集中的な混合は少なくとも1分、好適には1ないし15分の混合時間で実施される請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
融解物の集中的な混合は押出機内、好適には二軸押出機内で実施される請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
混合は、混合の進行に従って特に約150ないし200℃から約210ないし260℃に温度が上昇する温度特性下で実施される請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
融解物に繊維状の強化材が添加される請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ポリマーブレンドの重量に対して40ないし80重量%のポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと、10ないし30重量%の前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーと非相容性な少なくとも1つの別のポリマーと、表層剥離されていて有機的に改質されたナノ合成充填剤を含んだポリマーブレンドであり、前記ポリプロピレンおよび/またはポリプロピレンコポリマーが好適には連続的な主相を形成し、前記少なくとも1つの別のポリマーは好適には非連続的な副相を形成し、前記別のポリマーの非連続的な相は、ポリマーブレンドの断面図内においてこの別のポリマーによって形成される微細領域の総面積に対して合計で18%超となる、単独では0.04μm未満の面積からなる島状の微細領域部分を有するポリマーブレンド。
【請求項12】
少なくとも1つの別のポリマーは、ポリスチロール(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリルブタジエンスチロール(ABS)、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルからなる一群の中から選択される請求項11記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
有機改質されたナノ合成充填剤はポリプロピレンポリマーブレンドの質量に対して0.5ないし10重量%の割合で含まれる請求項11または12記載のポリマーブレンド。
【請求項14】
ポリマーブレンドは作用物質として5ないし15重量%のブロック共重合体を含む請求項11ないし13のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項15】
請求項1ないし10のいずれかに記載の方法で製造された請求項11ないし14のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれかに記載のポリマーブレンドからなる成形体。
【請求項17】
射出成形によって製造された請求項16記載の成形体。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−509267(P2008−509267A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525259(P2007−525259)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008753
【国際公開番号】WO2006/018228
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【氏名又は名称原語表記】Sued−Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Lenbachplatz 6, D−80333 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】