説明

非破壊検査装置

【課題】検査対象物の移送を速めた場合であっても、プローブ先端から検査対象物までのギャップを一定に保ち、安定的に非破壊検査を行い得る非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】検査対象物1の移送手段に配置する非破壊検査装置であって、検査対象物1の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配置するギャップ保持手段2と、ギャップ保持手段2のシートを検査対象物1とで挟み込む渦流探傷のプローブ3とを備え、ギャップ保持手段2はシートの厚みでプローブ3先端から検査対象物1までのギャップを一定にし、検査対象物1の移送中に非破壊検査を行うように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の移送中に非破壊検査を行う非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に金属の薄板を製造する圧延工程では薄板の表面や内部に割れ等のきずを生じる可能性があり、現在、薄板のきずを検査する非破壊検査方法では薄板の表面を目視で検査すると共に薄板の内部を超音波探傷で非破壊検査を行うようにしている。
【0003】
また非破壊検査の他の手段としては、コイルにより金属の薄板に渦電流を生じるプローブと、プローブ等の信号から関数処理に基づいて薄板の割れ等のきずを判断する制御部とを備える非破壊検査装置を用い、渦流探傷により非破壊検査を行うものがある。
【0004】
ここで渦流探傷の非破壊検査装置は、薄板に対して空気を噴射し、プローブ先端から検査対象物までのギャップ(間隔)を一定にすると共に狭い間隔で設定し、検出精度を高めるようにしている。また非破壊検査装置のプローブは回転可能に構成され、移送する薄板に対してプローブの軌道を螺旋状にして非破壊検査を行うようにしている。
【0005】
尚、非破壊検査に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−101169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、圧延工程や移送工程において検査対象物の移送を速め、検査の処理効率を高める際には、検査対象物への空気の噴射によってプローブ先端から検査対象物までのギャップを一定に保つことが困難になる可能性があった。また検査対象物の移送を速めることに伴ってプローブの回転速度を高める必要があるため、移送の高速化に適切に対応できないという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、検査対象物の移送を速めた場合であっても、プローブ先端から検査対象物までのギャップを一定に保ち、安定的に非破壊検査を行い得る非破壊検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非破壊検査装置は、検査対象物の移送手段に配置する非破壊検査装置であって、前記検査対象物の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配するギャップ保持手段と、該ギャップ保持手段のシートを検査対象物とで挟み込む渦流探傷のプローブとを備え、前記ギャップ保持手段はシートの厚みでプローブ先端から検査対象物までのギャップを一定にし、検査対象物の移送中に非破壊検査を行うように構成したものである。
【0010】
また本発明の非破壊検査装置において、検査対象物の他面をプローブと反対側から押える押付手段を備えることが好ましい。
【0011】
更に本発明の非破壊検査装置において、ギャップ保持手段は、非導電性のシートを走行可能なベルトで構成することが好ましい。
【0012】
更にまた本発明の非破壊検査装置において、押付手段は、検査対象物の反りを矯正するローラで構成することが好ましい。
【0013】
また本発明の非破壊検査装置において、押付手段は、検査対象物の反りを矯正する受部と、受部と検査対象物との間に位置するシートとを備えることが好ましい。
【0014】
更に本発明の非破壊検査装置において、移送手段を複数のコンベアで構成し、隣接するコンベアの間にギャップ保持手段及びプローブを配置することが好ましい。
【0015】
更に本発明の非破壊検査装置において、移送手段を複数のコンベアで構成し、隣接するコンベアの間に押付手段を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非破壊検査装置によれば、検査対象物の移送を速めて検査の処理効率を高める場合であっても、検査対象物とプローブとでギャップ保持手段のシートを挟み込み、ギャップ保持手段のシートの厚みによりプローブ先端から検査対象物までのギャップを一定に保つので、安定的に非破壊検査を行うことができる。またプローブを回転させることなく、ギャップ保持手段のシートによりプローブを固定状態で検査し得るので、検査対象物の移送の高速化に対応して非破壊検査を行うことができるという種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施する形態の第一例を概念的に示す側面図である。
【図2】本発明を実施する形態の第一例であって移送手段及びギャップ保持手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図3】本発明を実施する形態の第一例であって押付手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図4】検査対象物及びギャップ保持手段のシートを挟み込む状態を概念的に示す拡大側面図である。
【図5】プローブホルダ内のプローブの配置を示す概念図である。
【図6】本発明を実施する形態の第二例を概念的に示す側面図である。
【図7】本発明を実施する形態の第二例であって移送手段及び押付手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図8】本発明を実施する形態の第二例であってギャップ保持手段の配置を概念的に示す平面図である。
【図9】参考例を概念的に示す側面図である。
【図10】参考例であってプローブ及び押圧ローラを概念的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施する形態の第一例を図1〜図5を参照して説明する。ここで第一例の非破壊検査装置は請求項1〜4,6に対応している。
【0019】
第一例の非破壊検査装置は、板状の検査対象物1を移送する移送手段に配置されるものであり、検査対象物1の下面または上面のいずれか一面(第一例では下面)に非導電性のシートを配するギャップ保持手段2と、ギャップ保持手段2のシートを介して検査対象物1の一面に近接する渦流探傷のプローブ3と、検査対象物1の他面をプローブ3と反対側から押える押付手段4とを備えている。
【0020】
移送手段は、両側のコンベアプーリ5に無端状ベルト6を巻き掛けたコンベア7であり、複数のコンベア7を配置して板状の検査対象物1を移送するようにしている。ここで板状の検査対象物1は、金属等の導電体からなる圧延工程の圧延板や移送工程の薄板等であるが、渦流探傷により検査し得るものならば、材質や厚さは特に制限されるものではない。
【0021】
ギャップ保持手段2は、互いに隣接する二つのコンベア7の間に位置し、板状の検査対象物1の下面に近接する第一従動プーリ8及び第二従動プーリ9と、第一従動プーリ8及び第二従動プーリ9の下方に位置する主プーリ10とに、シート状のベルト11を無端状に巻き掛けて構成されている。またベルト11は、第一従動プーリ8と第二従動プーリ9の間を走行する部分が板状の検査対象物1の移送方向と略平行になって検査対象物1の下面に面接触している。更にベルト11は、厚みを0.10mm以上0.50mm未満、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下にした非導電性のシートで形成されており、素材は非導電性で且つ摺動性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で構成されている。ここでギャップ保持手段2は、検査対象物1の移送に伴ってベルト11を従動させても良いし、主プーリ10にモータ等の駆動手段を備えてベルト11を検査対象物の移送と同期させるようにしても良い。またベルト11は継ぎ目のないものが好ましい。
【0022】
プローブ3は、検査対象物1の移送方向と略垂直に延在するプローブホルダ12内に、互い違い(千鳥状)に複数個(図5では8個)で配置され、検査範囲を重ねて非破壊検査の範囲に漏れが無いようにしている。プローブホルダ12は、外部から延在するフレーム13によりベルト11の内周側で第一従動プーリ8と第二従動プーリ9との間に固定され、ベルト11の下側に面接触してプローブ3と検査対象物1とでギャップ保持手段2のベルト11を挟み込むようにしている。ここでプローブ3は、コイル(図示せず)により磁界mを生じて導電体の検査対象物1に渦電流を生じ、薄板の違う部位で比較する相互誘導自己比較方式で構成されているが、プローブ3で渦流探傷し得るならば方式や構成は制限されるものではない。またプローブ3内のコイルは、螺旋状に支持されると共にプローブ3の先端から0.1mm離れた位置にコイル先端を配置している。
【0023】
押付手段4は、プローブ3の上方に位置するローラ14で構成されており、ローラ14は、プローブ3の反対側から検査対象物1及びギャップ保持手段2のベルト11を押圧している。またローラ14は、軸部15にスプリング等の弾性手段(図示せず)を備えて板厚の異なる板状の検査対象物1に対応し得ると共に、ローラ14の荷重及び弾性力等により板状の検査対象物1の反りを矯正するようにしている。更にローラ14は、ポリウレタン等の非導電性の樹脂素材からなる外周部16を備え、渦流探傷に影響を与えることがないようにすると共に、外周部16の圧縮変形により平面状の接触面を構成するようにしている。ここでローラ14は、検査対象物1の移送に伴って従動して回転しても良いし、モータ等の駆動手段(図示せず)を備えて検査対象物1の移送と同期するように回転しても良い。
【0024】
以下本発明を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0025】
板状の検査対象物1を渦流探傷により非破壊検査を行う際には、移送手段のコンベア7で板状の検査対象物1を高速で移送し、同時に板状の検査対象物1の移送に伴って、ギャップ保持手段2のベルト11を走行させると共に押付手段4のローラ14を回転させ、プローブ3と押付手段4のローラ14とにより板状の検査対象物1及びギャップ保持手段2のベルト11を一時的に挟み込んで下流側へ移送する。
【0026】
そして板状の検査対象物1及びギャップ保持手段2のベルト11を挟み込んだ際には、ベルト11のシートの厚みによってプローブ3先端から検査対象物1までのギャップ(間隔)を一定に保つと共にギャップを0.10mm以上0.5mm以下、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下の一定値にし、プローブ3の渦流探傷によりベルト11のシートを介して板状の検査対象物1を下方から非破壊検査を行う。
【0027】
ここでプローブ3は、フレーム13に固定された状態で渦流探傷を行うと共に、ギャップ保持手段2によりプローブ3先端から検査対象物1までのギャップが一定に維持されるので、検査対象物1を高速で移送する場合でも渦流探傷の非破壊検査に悪影響を与えることがない。またギャップ保持手段2のベルト11を形成するシートは、非導電体であることから渦流探傷に影響を与えることがなく、またシートの良好な摺動性によりプローブ3に影響を与えることなくプローブホルダ12を摺動すると共に板状の検査対象物1にきずを付けることがない。更にギャップ保持手段2は、シートの厚みの異なるベルト11に交換することにより、プローブ3先端から検査対象物1までのギャップを所望の距離(リフトオフ量)に設定することが可能となり、また適宜、調整・交換することも可能となる。
【0028】
以下、プローブ3と検査対象物1との間に非導電性のシートを配置した場合の渦流探傷の状態を試験した。
【0029】
[試験1]
試験1では、フッ素系の樹脂からなる非導電性のシートを用い、シートの厚さを0.50mm、0.30mm、0.25mmを用いて、夫々プローブ3先端から非磁性体の検査対象物1の表面までのギャップを変えて検査を試みた。
〔試験方法の条件設定〕
探傷範囲を所定の部位(検査対象物1の端部より50mm〜100mm)とし、走査ピッチを5mmピッチとし、走査方法を手動走査とした。
非破壊検査装置の設定条件は、試験周波数を40kHz、80kHとし、感度設定を一定にし、位相設定を90°(垂直指示)にして所定の試験体の探傷範囲にて最大波形となる波形を得るようにし、更に画面出力レンジを0.5V/Divとした。
検査対象物1は、厚さ1.5mmのチタン板であって内部に20μmのきずが連なるように集合したきずや、40μmのきずを有するものを使用した。
【0030】
その結果、シートの厚さが0.50mmの場合には、連続的な擬似信号が発生し、渦流探傷に用いることができず、シートの厚さが0.30mm、0.25mmの場合には、連続的な擬似信号が発生せず、またきず検出範囲が広くなり、好適に適用し得ることが明らかとなった。またシートの厚さが薄くなれば耐久性が低下し、0.10mm未満では好ましくないことが想定された。
【0031】
而して、このように実施の形態の第一例によれば、検査対象物1の移送を速めて検査の処理効率を高める場合であっても、検査対象物1とプローブ3とでギャップ保持手段2のベルト11を挟み込み、ベルト11のシートの厚みによりプローブ3先端から検査対象物1までのギャップを一定に保ち且つ狭い距離にするので、従来例の如く検査対象物1に空気を噴出する必要がなく、安定的に非破壊検査を行うことができる。また従来例の如くプローブ3を回転させることなく、ギャップ保持手段2のシートによりプローブ3を固定状態で検査し得るので、検査対象物1の移送の高速化に対応して非破壊検査を好適に行うことができる。
【0032】
実施の形態の第一例において、検査対象物1の他面をプローブ3と反対側から押える押付手段4を備えると、押付手段4により板状の検査対象物1の反りを矯正してプローブ3が非破壊検査を行う範囲の平坦度を保証し、プローブ3先端から検査対象物1までのギャップを適切に一定に保つと共に、平坦度によりズレや振動等を抑制し、検査対象物1の移送の高速化に対応して非破壊検査を一層好適に行うことができる。
【0033】
実施の形態の第一例において、ギャップ保持手段2は、非導電性のシートを走行可能なベルト11で構成すると、走行可能なベルト11と押圧手段のローラ14とにより、板状の検査対象物1を一時的に挟み込んで安定に移送し得るので、プローブ3先端から検査対象物1までのギャップを適切に一定に保つと共に、検査対象物1の移送の高速化に適切に対応して非破壊検査を行うことができる。
【0034】
実施の形態の第一例において、押付手段4は、検査対象物1の反りを強制するローラ14で構成すると、回転可能なローラ14により、板状の検査対象物1を押圧して安定に移送し得るので、プローブ3先端から検査対象物1までのギャップを適切に一定に保つと共に、検査対象物1の移送の高速化に適切に対応して非破壊検査を行うことができる。
【0035】
実施の形態の第一例において、移送手段を複数のコンベア7で構成し、隣接するコンベア7の間にギャップ保持手段2及びプローブ3を配置すると、板状の検査対象物1の移送と非破壊検査を同時に為し得るので、検査対象物1の移送の高速化に適切に対応して非破壊検査を行うことができる。
【0036】
実施の形態の第一例において、ベルト11のシートの厚みを0.10mm以上0.50mm未満にすると、板状の検査対象物1を移送すると共に、ブローブ3により適切に渦流探傷で非破壊検査を行うことができる。ここでベルト11のシートの厚みを0.10mm未満にすると耐久性に劣り、ベルト11のシートの厚みを0.50mm以上にすると連続的な擬似信号が発生して渦流探傷に適用することができない。またベルト11のシートの厚みを0.25mm以上0.30mm以下にすると、きず検出範囲が広くなり、渦流探傷で好適に非破壊検査を行うことができる。
【0037】
以下、本発明を実施する形態の第二例を図6〜図8を参照して説明する。図中、図1〜図5と同一の符号を付した部分は同一物を表している。ここで第二例の非破壊検査装置は請求項1〜3,5,7に対応している。
【0038】
第二例の非破壊検査装置は、板状の検査対象物1を移送する移送手段に配置されるものであり、検査対象物1の下面または上面のいずれか一面(第二例では上面)に非導電性のシートを配するギャップ保持手段21と、ギャップ保持手段21のシートを介して検査対象物1の一面に近接する渦流探傷のプローブ22と、検査対象物1の他面をプローブ22と反対側から押える押付手段23とを備えている。
【0039】
移送手段は、第一例と同様に、両側のコンベアプーリ5に無端状ベルト6を巻き掛けたコンベア7であり、複数のコンベア7を配置して板状の検査対象物1を移送するようにしている。ここで板状の検査対象物1は、金属等の導電体からなる圧延工程の圧延板や移送工程の薄板等であるが、渦流探傷により検査し得るものならば、材質や厚さは特に制限されるものではない。
【0040】
ギャップ保持手段21は、互いに隣接する二つのコンベア7の上方に位置し、コンベアプーリ5の上方に位置する第一上方プーリ24及び第二上方プーリ25に、シート状のベルト26を無端状に巻き掛けて構成されている。またベルト26は、第一上方プーリ24と第二上方プーリ25の間で下方を走行する部分がプローブ22等により余勢されて検査対象物1の上面に面接触している。更にベルト26は、厚みを0.10mm以上0.50mm未満、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下にした非導電性のシートで形成されており、素材は非導電性で且つ摺動性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で構成されている。ここでギャップ保持手段21は、検査対象物1の移送に伴ってベルト26を従動させても良いし、第一上方プーリ24または第二上方プーリ25にモータ等の駆動手段を備えてベルト26を検査対象物1の移送と同期させるようにしても良い。またベルト26は継ぎ目のないものが好ましい。
【0041】
プローブ22は、検査対象物1の移送方向と略垂直に延在するプローブホルダ27内に、第一例と同様に、互い違い(千鳥状)に複数個で配置され、検査範囲を重ねて非破壊検査に漏れが無いようにしている。プローブホルダ27は、外部から延在する上部フレーム28によりベルト26の内周側で第一上方プーリ24と第二上方プーリ25との間に位置すると共に、上部フレーム28からスプリング等の弾性手段29を介して余勢されている。またプローブホルダ27は、ベルト26の上側に面接触してプローブ22と検査対象物1とでギャップ保持手段21のベルト26を挟み込むようにしている。ここでプローブ22は、コイル(図示せず)により磁界mを生じて導電体の検査対象物1に渦電流を生じ、薄板の違う部位で比較する相互誘導自己比較方式で構成されているが、プローブ22で渦流探傷し得るならば方式や構成は制限されるものではない。またプローブ3内のコイルは、螺旋状に支持されると共にプローブ3の先端から0.1mm離れた位置にコイル先端を配置している。
【0042】
押付手段23は、互いに隣接する二つのコンベア7の間に位置し、外部から延在する下部フレーム30により板状の検査対象物1の下面に近接する受部31を備えると共に、受部31の両側に位置して板状の検査対象物1の下面に近接する第一補助プーリ32及び第二補助プーリ33と、第一補助プーリ32及び第二補助プーリ33の下方に位置する主プーリ34とに、シート状の補助ベルト35を無端状に巻き掛けて構成している。また押付手段23の補助ベルト35は、受部31によって検査対象物1及びギャップ保持手段21のベルト26へ余勢されて面接触している。また押付手段23の受部31は、プローブ22等の加重や弾性力を介して板状の検査対象物1の反りを矯正するようにしている。ここで補助ベルト35は、検査対象物1の移送に伴って従動して回転しても良いし、モータ等の駆動手段(図示せず)を備えて検査対象物1の移送と同期するように回転しても良い。
【0043】
以下本発明を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0044】
板状の検査対象物1を渦流探傷により非破壊検査を行う際には、移送手段のコンベア7で板状の検査対象物1を高速で移送し、同時に板状の検査対象物1の移送に伴って、ギャップ保持手段21のベルト26を走行させると共に押付手段23の補助ベルト35を走行させ、プローブ22の荷重等と押付手段23の受部31とにより板状の検査対象物1及びベルト26を一時的に挟み込んで下流側へ移送する。
【0045】
そして板状の検査対象物1及びギャップ保持手段21のベルト26を挟み込んだ際には、ベルト26のシートの厚みによってプローブ22先端から検査対象物1までのギャップ(間隔)を一定に保つと共にギャップを0.10mm以上0.5mm以下、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下の一定値にし、プローブ22の渦流探傷によりベルト26のシートを介して板状の検査対象物1を上方から非破壊検査を行う。
【0046】
ここでプローブ22は、上方フレーム28に支持された状態で渦流探傷を行うと共に、ギャップ保持手段21によりプローブ22先端から検査対象物1までのギャップが一定に維持されるので、検査対象物1を高速で移送する場合でも渦流探傷の非破壊検査に悪影響を与えることがない。またギャップ保持手段21のベルト26を形成するシートは、非導電体であることから渦流探傷に影響を与えることがなく、またシートの良好な摺動性によりプローブ22に影響を与えることなくプローブホルダ27を摺動すると共に板状の検査対象物1にきずを付けることがない。更にギャップ保持手段21は、シートの厚みの異なるベルト26に交換することにより、プローブ22先端から検査対象物1までのギャップを所望の距離(リフトオフ量)に設定することが可能となり、また適宜、調整・交換することも可能となる。
【0047】
而して、このように実施の形態の第二例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態の第二例において、押付手段23は、検査対象物1の反りを強制する受部31と、受部31と検査対象物1との間に位置する補助ベルト35のシートとを備えると、受部31と補助ベルト35のシートにより、板状の検査対象物1を押圧して安定に移送し得るので、プローブ22先端から検査対象物1までのギャップを適切に一定に保つと共に、検査対象物1の移送の高速化に適切に対応して非破壊検査を行うことができる。
【0049】
実施の形態の第二例において、移送手段を複数のコンベア7で構成し、隣接するコンベア7の間に押付手段23を配置すると、板状の検査対象物1の移送と非破壊検査を同時に為し得るので、検査対象物1の移送の高速化に適切に対応して非破壊検査を行うことができる。
【0050】
以下、参考例を図9、図10を参照して説明する。図中、図1〜図8と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0051】
参考例の非破壊検査装置は、板状の検査対象物1を移送する移送手段に配置されるものであり、検査対象物1の下面または上面のいずれか一面(参考例では上面)に非導電性の押圧ローラ41を配するギャップ保持手段42と、押圧ローラ41を介して検査対象物1の一面に近接する渦流探傷のプローブ43と、検査対象物1の他面をプローブ43と反対側から押える押付手段44とを備えている。
【0052】
移送手段は、第一例、第二例と同様に、両側のコンベアプーリ5に無端状ベルト6を巻き掛けたコンベア7であり、複数のコンベア7を配置して板状の検査対象物1を移送するようにしている。ここで板状の検査対象物1は、金属等の導電体からなる圧延工程の圧延板や移送工程の薄板等であるが、渦流探傷により検査し得るものならば、材質や厚さは特に制限されるものではない。
【0053】
ギャップ保持手段42は、互いに隣接する二つのコンベア7の間の上方に二台で構成され、二本の押圧ローラ41を夫々備えている。ここで二本の押圧ローラ41は板状の検査対象物1の移送方向を直交する方向へ平行に延在しており、支持部45を介してプローブ43のプローブホルダ46に支持されている。
【0054】
プローブ43は、検査対象物1の移送方向と略垂直に延在するプローブホルダ46内に、第一例と同様に、互い違い(千鳥状)に複数個で配置され、検査範囲を重ねて非破壊検査に漏れが無いようにしている。プローブホルダ46は、外部から延在するフレーム(図示せず)により支持され、プローブ43先端から検査対象物1までのギャップが0.10mm以上0.50mm未満、好ましくは0.25mm以上0.30mm以下で一定に維持されている。ここでプローブ43は、コイル(図示せず)により磁界mを生じて導電体の検査対象物1に渦電流を生じ、薄板の違う部位で比較する相互誘導自己比較方式で構成されているが、プローブ43で渦流探傷し得るならば方式や構成は制限されるものではない。
【0055】
押付手段44は、第二例と同様に、互いに隣接する二つのコンベア7の間に位置し、外部から延在する下部フレーム47により板状の検査対象物1の下面に近接する受部48を備えると共に、受部48の両側に位置して板状の検査対象物1の下面に近接する第一補助プーリ49及び第二補助プーリ50と、第一補助プーリ49及び第二補助プーリ50の下方に位置する主プーリ51とに、シート状の補助ベルト52を無端状に巻き掛けて構成している。また押付手段44の補助ベルト52は、受部48とによって検査対象物1へ余勢されて面接触している。更に押付手段44の受部48は、押圧ローラ41を介して板状の検査対象物1の反りを矯正するようにしている。ここで補助ベルト52は、検査対象物1の移送に伴って従動して回転しても良いし、モータ等の駆動手段(図示せず)を備えて検査対象物1の移送と同期するように回転しても良い。
【0056】
以下参考例の作用を説明する。
【0057】
板状の検査対象物1を渦流探傷により非破壊検査を行う際には、移送手段のコンベア7で板状の検査対象物1を高速で移送し、同時に板状の検査対象物1の移送に伴って、ギャップ保持手段42の押圧ローラ41を回転させると共に押付手段44の補助ベルト52を走行させ、押圧ローラ41と押付手段44の受部48とにより板状の検査対象物1を一時的に挟み込んで下流側へ移送する。
【0058】
そして板状の検査対象物1を挟み込んだ際には、押圧ローラ41でプローブ43先端から検査対象物1までのギャップ(間隔)を一定に保つと共にギャップを狭い間隔で設定し、プローブ43の渦流探傷により板状の検査対象物1について非破壊検査を行う。
【0059】
ここでプローブ43は、フレームに固定された状態で渦流探傷を行うと共に、ギャップ保持手段42によりプローブ43先端から検査対象物1までのギャップが一定に維持されるので、検査対象物1を高速で移送する場合でも渦流探傷の非破壊検査に悪影響を与えることがない。
【0060】
而して、このように参考例によれば、第一例、第二例と同様な作用効果を得ることができる。
【0061】
尚、本発明の非破壊検査装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、非破壊検査装置を既存の移送手段に設けても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 検査対象物
2 ギャップ保持手段
3 プローブ
4 押付手段
7 コンベア
11 ベルト
14 ローラ
21 ギャップ保持手段
22 プローブ
23 押付手段
26 ベルト
31 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の移送手段に配置する非破壊検査装置であって、前記検査対象物の下面または上面のいずれか一面に接触するように非導電性のシートを配するギャップ保持手段と、該ギャップ保持手段のシートを検査対象物とで挟み込む渦流探傷のプローブとを備え、前記ギャップ保持手段はシートの厚みでプローブ先端から検査対象物までのギャップを一定にし、検査対象物の移送中に非破壊検査を行うように構成したことを特徴とする渦流探傷の非破壊検査装置。
【請求項2】
検査対象物の他面をプローブと反対側から押える押付手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
ギャップ保持手段は、非導電性のシートを走行可能なベルトで構成したことを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
押付手段は、検査対象物の反りを強制するローラで構成したとを特徴とする請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
押付手段は、検査対象物の反りを強制する受部と、受部と検査対象物との間に位置するシートとを備えたことを特徴とする請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
移送手段を複数のコンベアで構成し、隣接するコンベアの間にギャップ保持手段及びプローブを配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
移送手段を複数のコンベアで構成し、隣接するコンベアの間に押付手段を配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非破壊検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−180010(P2011−180010A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45304(P2010−45304)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】