説明

非複製性微生物及びそれらの免疫促進作用

本発明は一般に、プロバイオティクス細菌の分野に関する。特に、本発明は、非複製性プロバイオティクス、例えば、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、及びこれらの細菌の用途に関する。本発明の一実施形態は、非複製性プロバイオティクス、及び欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するための組成物を調製するための非複製性プロバイオティクスの使用に関する。免疫障害を治療又は予防するためにプロバイオティクスの有効性を増加させる方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は一般に、微生物、特に、食物グレードの細菌の分野に関する。本発明の一実施形態は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はこれらの組合せなどの属、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)又はこれらの組合せに属する非複製性プロバイオティクス、及びこれらの細菌の用途に関する。本発明の一実施形態は、非複製性プロバイオティクス、及び欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するための組成物を調製するための非複製性プロバイオティクスの使用に関する。
【0002】
プロバイオティクスは、「適当量で投与されたときに健康上の利益を宿主に与える生きた微生物」と定義し得る[FAO/WHO(2001)Health and Nutritional Properties of Probiotics in Food including Powder Milk with Live Lactic Acid Bacteria、Report of Joint FAO/WHO Expert Consultation on Evaluation of Health and Nutritional Properties of Probiotics in Food Including Powder Milk with Live Lactic Acid Bacteria]。したがって、既刊文献の大部分は、生きたプロバイオティクスを論じている。しかし、いくつかの研究は非複製性細菌によって実現される健康上の利益を調査したが、プロバイオティクスの熱不活性化はプロバイオティクスの健康上の利益と称されるものの損失を一般にもたらすという結論に達した(Rachmilewitz,D.,K.ら、2004、Gastroenterology 126:520〜528;Castagliuolo,I.ら、2005、FEMS Immunol.Med.Microbiol.43:197〜204;Gill,H.S.及びK.J.Rutherfurd.2001、Br.J.Nutr.86:285〜289;Kaila,M.ら、1995、Arch.Dis.Child 72:51〜53;Wagner,R.D.ら、2000、J.Food Prot.63:638〜644)。
【0003】
しかし、いくつかの研究は、死滅プロバイオティクスが健康へのいくらかの作用を保持し得ることを示した。この作用は、例えば、プロバイオティクスを不活性化するのに使用される方法によって決まる場合がある(Rachmilewitz,D.,K.ら、2004、Gastroenterology 126:520〜528;Gill,H.S.及びK.J.Rutherfurd.2001、Br.J.Nutr.86:285〜289)。文献においてプロバイオティクス菌株を死滅させるのに使用される技術は、大部分は熱処理、γ照射、UV処理又は化学試剤(ホルマリン、パラホルムアルデヒド)である。
【0004】
通常、今日の食品産業では、プロバイオティクスは、コールドチェーンにおいてより長い時間保存され、及び/又は処理されて細菌負荷が減少した食料製品に加えられる。しかし、製品中の細菌負荷を減少させること、長い保存時間、並びに任意の種類の処理(噴霧乾燥など)は、製品中の生存しているプロバイオティクスの量を減少させる。しかし上記で詳述するように、製品中に生存しているプロバイオティクスの量を減少させることは通常、当技術分野でプロバイオティクスの健康効果と称されるものの減少又は損失と同等と見なされる。
【0005】
特定の死菌プロバイオティクスを含むいくつかの調製物がいくらかの健康への作用を維持し得るという知見は肯定的な材料であり得る一方、生きたプロバイオティクスは一般に、不活性化されたプロバイオティクスより良好な又は少なくとも同じ作用を有すると考えられる。
【0006】
しかし、不活性化後に、改善された又は新規な健康上の利益を有する利用可能な微生物細胞調製物を有することは望ましいであろう。
【0007】
欠陥のある免疫防御は、対象の健康及び満足な状態に対して多くのマイナスの作用を有し得る。欠陥のある免疫防御は、例えば、より大きな感染症の危険性及び/又は感染症の重症度の増加をもたらし得る。欠陥のある免疫防御はまた、免疫不全が関連する障害を促進若しくは強化し、又はアレルギーをもたらし得る。
【0008】
したがって、免疫防御を強化することは、体を保護するのに、全ての年齢群の全ての対象のために重要である。特に、新生児、高齢者、高ストレス状態に曝されている対象、免疫抑制薬を摂取している患者、放射線療法若しくは化学療法下にある患者、又はアレルギー性疾患を発症している対象などの、免疫系に欠陥のある、又は一時的に抑制されている対象にとって免疫防御を強化することは重要である。
【0009】
感染症及び免疫不全が関連する疾患に対する天然の防御は、とりわけ、宿主が、例えば、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞の活性化を含めた効率的及び急速な自然免疫防御を開始できることを意味する。さらに、効率的な免疫防御はまた、宿主が、アレルギーにおいて起こるものなどの、免疫系の過剰反応をダウンレギュレートすることができることを意味する。
【0010】
病原体の食作用に応答するマクロファージの死滅活性は、炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−1、及びIL−12など)における一時的促進が通常伴う(Shoda,L.ら、2000、Infection and Immunity 68:5139〜5145)。マクロファージを含めた抗原提示細胞によって産生されるIL−12は、ナチュラルキラー細胞を活性化してIFN−γを産生し、IFN−γ−産生ヘルパーT細胞の分化によって獲得免疫応答の発生を促進する。さらに、オートクリンループにおいて作用するTNF−α及びIFN−γは、食細胞の死滅活性を刺激する(Soehnlein,O.ら、2008、Journal of Clinical Investigation 118:3491〜3502)。対照的に、多くの免疫細胞タイプによって産生されるIL−10は、マクロファージ及び樹状細胞によって産生される炎症促進性サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−12及びTNF−αなど)の産生を阻害する(Mosser,D.及びZhang,X.、2008、Immunological Reviews 226:205〜218)。特定の生きたプロバイオティクス菌株は、インビトロで、ラット腹腔マクロファージの増強された食作用活性に関連する炎症促進性サイトカイン(IL−12及びTNF−αなど)を刺激することが知られている(Ishida−Fujii,K.、2007、Biosc.Biotechnol.Biochem 71:866〜873)。
【0011】
ヒト(健康な成人及び高齢者)において、生きたプロバイオティクス又はプロバイオティクスを含有する食料製品の消費は、マクロファージの食細胞活性及び/又はナチュラルキラー細胞の死滅活性を増強することが報告されてきており、いくつかの生きたプロバイオティクス菌株の免疫促進作用を示唆する(Sheih,Y−H.ら、2001、J Ameriacn College Nutrition 20:149〜156;Chiang,B.ら、2000、European J Clinical Nutrition 54:849〜855;Parra,M.ら、2004、J Physiol Biochem 60:85〜92;Nagao,F.ら、2000、Biosc Biotechnol Biochem 64:2706〜2708)。
【0012】
しかし、宿主の免疫系に対して有益な作用を有するプロバイオティクスを含む微生物細胞調製物が当技術分野で依然として必要とされており、細胞調製物は、微生物細胞が複製し、及び/又は生存し続けることを可能としない条件下で細胞調製物を処理した場合のみ或いは特に良好に、有益な作用を発揮する。
【0013】
結果的に、現況技術をさらに改善し、微生物細胞が複製し、及び/又は生存し続けることを可能にしない方法で微生物細胞を処理する条件下で、宿主の免疫系に対して新規又は改善された有益な作用を示す微生物細胞調製物を供給することは本発明の1つの目的であった。
【0014】
この目的は、独立請求項の主題によって解決された。従属請求項は、本発明をさらに発展させる。
【0015】
従来技術は、プロバイオティクスの熱処理が、プロバイオティクスの健康に有益な特性の部分的又は完全な損失をもたらすことを一般に教示する。例外的な場合においてのみ、試験したいくらかの健康上の利益が維持された(Verduら、2004、Gastroenterology、127、p.826ff.、Rousseaux、2007、Nature Medicine、13、p.35ff;Kamiyaら、2006、Gut、55、191ff.)。
【0016】
プロバイオティクス菌株が、例えば、ヒト細胞による炎症促進性サイトカインの産生を刺激する能力は、熱処理後に増強されることがあることを、本発明者らは今や驚いたことに見出した。この作用は、いくつかのラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属について観察されてきた。
【0017】
非複製性プロバイオティクス微生物は、生きた対応物よりも取り扱うことが非常に簡単であるという利点を有する。さらに、非複製性プロバイオティクス微生物は、非常により保存安定性であり、より厳密な包装条件を必要としない。
【0018】
非複製性プロバイオティクス微生物によって、生きたプロバイオティクスを保護するさらなる手段なしでは、本来では生きたプロバイオティクスを加えることが可能とならない、多種多様の機能性食品の開発が可能となる。これは、例えば、シリアルバー、果汁、UHT飲料、保存安定性の飲料などの提供において役割を果たす。
【0019】
さらに例えば、免疫不全の顧客において、生きたプロバイオティクスの使用は、菌血症が発生する潜在的な危険性によって、限定されることがある。ここで本発明者らは、当初の免疫プロファイルに関わらず、インビトロの免疫促進プロファイルを有する生存していない細菌を生じさせる方法を提示する。生菌のときに免疫促進プロファイルを有さない細菌は、免疫促進プロファイルを伴って提供され得、生菌のときに免疫促進プロファイルを有する細菌は、増強された免疫促進プロファイルを伴って提供され得る。
【0020】
さらに、非複製性プロバイオティクス微生物を提供することは、例えば、粉末栄養組成物の高温の再構成を可能とする。
【0021】
したがって、生きた対応物よりもより効率的に免疫防御を増強する非複製性プロバイオティクス微生物を生じさせることが今や可能である。
【0022】
熱処理によって非複製性にされた細菌は、プロバイオティクス特性の発揮に関して生細胞より通常効率的でないことを従来技術は一般に教示する一方で、熱処理されたプロバイオティクスが、生きた対応物と比較して免疫系の刺激においてより優れていることを、本発明者らは示すことができた。
【0023】
したがって、本発明は、少なくとも約3分間の少なくとも約70℃の熱処理によって非複製性にされたプロバイオティクスを含む組成物に関する。
【0024】
本発明はまた、欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するための、少なくとも約3分間の少なくとも約70℃の熱処理によって非複製性にされたプロバイオティクスを含む組成物に関する。
【0025】
本発明は、欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防する組成物の調製のための、少なくとも約3分間の少なくとも約70℃の熱処理によって非複製性にされたプロバイオティクスの使用に関する。
【0026】
結果的に、本発明の非複製性プロバイオティクスは、免疫防御を促進する組成物の調製のために使用し得る。
【0027】
「非複製性」とは、古典的なプレーティング法によって生存細胞及び/又はコロニー形成単位を検出することができないことを意味する。このような古典的なプレーティング法は、微生物学の書籍:James Monroe Jay、Martin J.Loessner、David A.Golden.2005、Modern food microbiology、第7版、Springer Science、New York、N.Y.790頁に要約されている。典型的には、生存細胞が存在しないことは、下記のように示すことができる。異なる濃度の細菌調製物(「非複製性」試料)の播種、並びに適切な条件(少なくとも24時間の好気性及び/又は嫌気性雰囲気)下でのインキュベーション後に、寒天プレート上で目に見えるコロニーがない、又は液体増殖培地の混濁度の増加がない。
【0028】
例えば、ビフィドバクテリウム属(ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス及びビフィドバクテリウム・ブレーベなど)、又はラクトバチルス属(ラクトバチルス・パラカゼイ又はラクトバチルス・ラムノサスなど)は、熱処理、特に、低温/長時間熱処理によって非複製性にし得る。
【0029】
プロバイオティクスのバイオマスの少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%は非複製性であり、全てのプロバイオティクスが非複製性であることが最も好ましい。
【0030】
プロバイオティクスは、熱処理によって非複製性にされる。この熱処理は、約70〜150℃の温度範囲で約3分〜2時間、好ましくは80〜140℃の範囲で5分〜40分行い得る。
【0031】
当業者にとって明らかなように、熱処理が長く、及び/又は温度が高いほど、より多くの細菌細胞又は細菌化合物が障害を受け、及び/又は放出される。
【0032】
プロバイオティクスは、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0033】
ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001は、ブダペスト条約の元でATCC BAA−999として寄託されたが、例えば、日本の森永乳業株式会社から商標BB536で得ることができる。
【0034】
ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818は、ブダペスト条約の元でCNCM I−3446として寄託された。
【0035】
ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007は、ブダペスト条約の元でCGMCC1.3724として寄託された。
【0036】
ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461は、ブダペスト条約の元でCNCM I−2116として寄託された。
【0037】
ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950(菌株A)は、ブダペスト条約の元でCNCM I−3865として寄託された。
【0038】
非複製性プロバイオティクスの免疫促進作用は、インビトロの免疫プロファイリングによって確認された。使用されたインビトロモデルは、ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)からのサイトカインのプロファイリングを使用し、当技術分野で免疫調節性化合物の試験のための標準モデルとしてよく受け入れられている(Schultzら、2003、Journal of Dairy Research 70、165〜173;Taylorら、2006、Clinical and Experimental Allergy、36、1227〜1235;Kekkonenら、2008、World Journal of Gastroenterology、14、1192〜1203)。
【0039】
インビトロのPBMCアッセイは、幾人かの著者/研究チームによって使用され、例えば、プロバイオティクスの免疫プロファイル、すなわち、プロバイオティクスの抗炎症性又は炎症誘発性の特徴によってプロバイオティクスが分類されてきた(Kekkonenら、2008、World Journal of Gastroenterology、14、1192〜1203)。例えば、このアッセイによって、大腸炎のマウスモデルにおけるプロバイオティクス候補の抗炎症作用の予測を可能にすることが示されてきた(Foligne,B.ら、2007、World J.Gastroenterol.13:236〜243)。さらに、このアッセイは、臨床試験における読み出し情報として定期的に使用され、臨床成績と首尾一貫する結果をもたらすことが示された(Schultzら、2003、Journal of Dairy Research 70、165〜173;Taylorら、2006、Clinical and Experimental Allergy、36、1227〜1235)。
【0040】
アレルギー性疾患は過去数十年に亘り着実に増加してきており、WHOは、アレルギー性疾患を流行病と現在考えている。一般的に、アレルギーは、免疫系のTh1及びTh2応答の間のアンバランスに起因し、Th2メディエーターの産生への強力な偏りをもたらすと考えられている。したがって、免疫系のTh1及びTh2アームの間の適切なバランスを回復することによって、アレルギーを軽減、ダウンレギュレート又は予防することができる。これは、Th2応答を減少させ、又は少なくとも一時的に、Th1応答を増強する必要性を意味する。後者は、例えばより高いレベルのIFNγ、TNF−α及びIL−12を伴うことが多い免疫促進反応の特徴であろう。(Kekkonenら、2008、World Journal of Gastroenterology、14、1192〜1203;Viljanen M.ら、2005、Allergy、60、494〜500)
【0041】
本発明は、欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防することを可能とする。
【0042】
結果的に、本発明の使用によって調製された組成物によって治療又は予防することができる欠陥のある免疫防御に関連する障害は、特に限定されない。
【0043】
例えば、これらの障害は、感染症、特に、細菌、ウイルス、真菌及び/又は寄生虫の感染症;食細胞欠損;ストレス又は免疫抑制薬、化学療法又は放射線療法によって誘発されるものなどの低いレベルから重症レベルまでの免疫抑制;新生児又は高齢者の免疫系などのより免疫適格性ではない免疫系の自然状態;アレルギー;並びにこれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0044】
本発明に記載する組成物はまた、ワクチン、特に経口ワクチンへの対象の反応の増強を可能とする。
【0045】
同様に、本発明の使用によって調製される組成物の種類は、特に限定されない。例えば、組成物は、医薬組成物、栄養補助食品、食品添加物、ペットフード、食料製品又は飲料でもよい。
【0046】
本発明の組成物は、任意の種類の組成物でもよい。組成物は、例えば、経口的、経腸的、非経口的(皮下又は筋肉内)、局所的又は目に投与し得る。
【0047】
例えば、組成物は、食品組成物、ペットフードを含めた食料製品、飲料、栄養調製乳、補給調製乳、栄養補助食品、食品添加物、医薬組成物、化粧組成物、及び医薬からなる群から選択される組成物でもよい。
【0048】
食品添加物又は医薬は、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ又は液体の形態でもよい。これらの組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/殻材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散化剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤及び抗菌剤をさらに含有し得る。食品添加物又は医薬はまた、これらに限定されないが、水、任意の起源のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、滑沢剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含めた、通常の医薬品添加物及びアジュバント、賦形剤及び希釈剤を含有し得る。
【0049】
さらに、組成物は、経口、舌下、局所、目、経腸又は非経口(例えば、皮下、筋内)投与に適した有機又は無機担体材料、並びにビタミン、ミネラルの微量元素、及びUSRDAなどの政府機関省庁の推奨に従った他の微量栄養素を含有し得る。
【0050】
本発明の組成物は、組成物の使用目的によって他の薬剤をさらに含み得る。例えば、疼痛又は熱軽減剤を使用して、弱まった免疫防御に関連する障害によってもたらされる不快感の最小化を助けることができる。
【0051】
安定化剤を加えて、組成物及びその構成要素を安定化し得る。
【0052】
香味剤及び/又は着色剤を加えて、フレーバーを調節し、同定することが容易で、及び/又は好ましいと受け取られる色を組成物に与え得る。
【0053】
プレバイオティクスを加えてもよい。プレバイオティクスは、プロバイオティクスを非複製性にする前にプロバイオティクスの増殖をサポートし、又は摂取される場合、腸内の有益な微生物の増殖を刺激し得る。プレバイオティクスはまた、組成物中に存在し、及び/又は加えられてもよい、生存しているプロバイオティクス細菌と相乗的に作用し得る。
【0054】
「プレバイオティクス」とは、腸内の健康に有益な微生物及び/又はプロバイオティクスの増殖を促進する、消化できない食品を意味する。プレバイオティクスは、プレバイオティクスを摂取した人の胃及び/若しくは上部腸内で分解、又は消化管内で吸収されないが、プレバイオティクスは、胃腸の微生物叢及び/又はプロバイオティクスによって発酵する。プレバイオティクスは、例えば、Glenn R.Gibson及びMarcel B.Roberfroid、Dietary Modulation of the Human Colonic Microbiota:Introducing the Concept of Prebiotics、J.Nutr.1995 125:1401〜1412によって定義されている。
【0055】
本発明によって使用し得るプレバイオティクスは特に限定されず、腸内でプロバイオティクス及び/又は健康に有益な細菌の増殖を促進する全ての食品が含まれる。好ましくは、プレバイオティクスは、フルクトース、ガラクトース、マンノースを任意選択で含有するオリゴ糖;食物繊維、特に、可溶性繊維、大豆繊維;イヌリン;又はこれらの混合物からなる群から選択し得る。好ましいプレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イソマルトオリゴ糖(IMO)、キシロオリゴ糖(XOS)、アラビノキシロオリゴ糖(AXOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)、大豆オリゴ糖、グリコシルスクロース(GS)、ラクトスクロース(LS)、ラクツロース(LA)、パラチノースオリゴ糖(PAO)、マルトオリゴ糖、ガム及び/又はその水解物、ペクチン、デンプン、及び/又はその水解物である。
【0056】
全てのプロバイオティクス微生物は、本発明に記載されている非複製性プロバイオティクスと組み合わせて使用し得る。好ましくは、このような加えられるプロバイオティクスは、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、サッカロマイセス属(Saccharoymces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、特に、種ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトコッカス属種、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス・ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)又はこれらの混合物からなる群から選択されるもの、好ましくはラクトバチルス・ジョンソニー(NCC533;CNCM I−1225)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC490;CNCM I−2170)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC2705;CNCM I−2618)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC3001;ATCC BAA−999)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(NCC2818;CNCM I−3446)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(NCC2950)、ラクトバチルス・パラカゼイ(NCC2461;CNCM I−2116)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC53103)、ラクトバチルス・ラムノサスLPR(NCC4007;CGMCC1.3724)、エンテロコッカス・フェシウムSF68(NCIMB10415)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるもの、からなる群から選択し得る。全てのこれらのプロバイオティクスは、生存している形態又は非複製性形態で加えてもよい。
【0057】
本発明の使用によって調製される組成物は、任意の哺乳動物を対象とし得るが、好ましくはヒト又はペットを対象とする。
【0058】
例えば、本発明の使用によって調製される組成物は、新生児、高齢者、高ストレス状態に曝されている対象、免疫抑制薬を摂取している患者、放射線療法若しくは化学療法下にある患者などの、免疫系が弱った又は一時的に抑制されている対象を対象とし得る。
【0059】
本発明の組成物をまた、ワクチンと同時投与して、ワクチンの有効性を増強し得る。同時投与には、ワクチン接種レジメンの3カ月前から、レジメンの最中、レジメンの2カ月後の、同じ又は異なる経路による投与が含まれる。
【0060】
本発明の組成物は、免疫不全が関連する障害、感染症及びそれらの病理学的作用を少なくとも部分的に治療するのに十分な量で投与される。これを達成するのに適した量は、「治療有効用量」と定義される。この目的のために有効な量は、疾患の性質及び重症度、患者の体重及び全身状態、並びに使用される特定のプロバイオティクス菌株などの当業者には公知のいくつかの要因によって決まる。
【0061】
予防的用途において、本発明による組成物を、免疫障害又は感染症の影響を受けやすい又はそうでなければ障害の危険性がある患者に、免疫障害が発生する危険性を少なくとも部分的に減少させるのに十分な量で投与する。このような量は、「予防有効用量」であると定義される。ここでまた、正確な量は、患者の健康状態及び体重などの疾患並びに患者特有のいくつかの要因、並びに使用する菌種の種類によって決まる。
【0062】
当業者であれば、治療有効用量及び/又は予防有効用量を適切に調節することができる。
【0063】
一般に、本発明の組成物は、非複製性プロバイオティクスを治療有効用量及び/又は予防有効用量で含有する。
【0064】
典型的には、治療有効用量及び/又は予防有効用量は、結果的に1日用量当たり約10〜1012cfuに相当する細菌塊であり、治療有効用量及び/又は予防有効用量は、1日用量当たり約0,005mg〜1000mgの非複製性プロバイオティクスの範囲でもよい。
【0065】
数値量に関して、非複製性プロバイオティクスは、組成物中に10〜1012cfu/g乾燥組成物に相当する量で存在し得る。明らかに、非複製性細菌は、コロニーを形成しない。結果的に、治療有効用量及び/又は予防有効用量という用語は、10〜1012cfu/gの複製性細菌から得られる非複製性細菌の量と理解される。これには、不活性化された、又は死んだ、又はフラグメント(DNA、細胞質含量若しくは細胞壁の材料など)として存在する細菌が含まれる。すなわち、組成物が含有する細菌の量は、全ての細菌が、実際は不活性化された、又は死んだ、断片化された、又はこれらの状態の任意若しくは全ての混合物などの非複製性であろうとなかろうとに関わりなく、生きているかのように、細菌の量のコロニー形成能に関して表される。
【0066】
好ましくは、プロバイオティクスは、10〜1010cfu/g乾燥組成物に相当する量で、よりさらに好ましくは10〜10cfu/g乾燥組成物に相当する量で存在する。
【0067】
組成物はまた、毎日の食事において必須であると理解される全てのビタミン及びミネラルを栄養的に有意な量で含有し得る。必要最小限は、特定のビタミン及びミネラルについて確立されてきた。組成物中に任意選択で存在するミネラル、ビタミン及び他の栄養素の例には、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、葉酸、イノシトール、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、コリン、カルシウム、リン、ヨウ素、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、クロリド、カリウム、ナトリウム、セレン、クロム、モリブデン、タウリン、及びL−カルニチンが含まれる。ミネラルは通常塩の形態で加えられる。特定のミネラル及び他のビタミンの存在及び量は、意図される消費者によって変化する。
【0068】
本発明の組成物は、少なくとも1種のタンパク質源、少なくとも1種の炭水化物源及び少なくとも1種の脂質源を含有し得る。
【0069】
任意の適切な食物タンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);これらのタンパク質の部分的若しくは完全水解物、遊離アミノ酸の混合物;又はこれらの組合せを使用し得る。加水分解されたタンパク質が必要な場合は、加水分解工程を要望どおりに及び当技術分野において公知の通りに行い得る。乳タンパク質(カゼイン及びホエイなど)、並びに大豆タンパク質が特に好ましい。ホエイタンパク質に関する限り、タンパク質源は、酸ホエイ又はスイートホエイ又はこれらの混合物をベースとしてもよく、所望の割合でα−ラクトアルブミン及びβ−ラクトグロブリンが含まれてもよい。しかし好ましくは、特に組成物が乳幼児用補給調製乳である場合、タンパク質源は、加工スイートホエイをベースとする。
【0070】
本発明の組成物がタンパク質源を含有する場合、組成物中のタンパク質又はタンパク質同等物の量は典型的には、1.6〜7.5g/100kcal組成物の範囲である。
【0071】
特に栄養調製乳について、必須アミノ酸含量の必要最小限が満たされるタンパク質源を提供すべきである。
【0072】
組成物が炭水化物源を含有する場合、使用される炭水化物の種類は、特に限定されない。任意の適切な炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン、デンプン及びこれらの混合物を使用し得る。異なる炭水化物源の組合せを使用し得る。炭水化物は、組成物のエネルギーの30%〜80%を好ましくは供給し得る。例えば、組成物は、9〜18g/100kcal組成物の量の炭水化物源を含み得る。
【0073】
組成物が脂質源を含有する場合、使用される脂質の種類は特に限定されない。組成物が脂質源を含む場合、脂質源は、組成物のエネルギーの5%〜70%を供給し得る。長鎖n−3及び/又はn−6多価不飽和脂肪酸(DHA、ARA及び/又はEPAなど)を加えてもよい。適切な脂肪プロファイルは、菜種油、トウモロコシ油、高オレイン酸ヒマワリ油及び中鎖トリグリセリド油のブレンドを使用して得ることができる。組成物は、1.5〜7g/100kcal組成物の量の脂質源を含み得る。
【0074】
食物繊維もまた加えてもよい。食物繊維は可溶性又は不溶性でよく、一般に2つのタイプのブレンドが好ましい。食物繊維の適切な源には、大豆、エンドウ豆、カラスムギ、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリル−ラクトース及び動物乳由来のオリゴ糖が含まれる。好ましい繊維ブレンドは、イヌリンとより短鎖のフラクトオリゴ糖との混合物である。
【0075】
本発明による食料製品には、例えば、飲料、特に、乳又はヨーグルトをベースとする飲料;乳製品(ヨーグルト、アイスクリーム、又はチーズをベースとする製品など);果汁及び清涼飲料;例えば、乳幼児、小児、ティーンエイジャー、成人、高齢者又は危篤状態の対象のための、完全栄養のためのものなどの栄養調製乳;シリアル及びシリアルバー;乳をベースとする粉末、水又は乳をベースとする液体に溶解する粉末、コーヒークリーマー、スープ、スプレッドが含まれる。
【0076】
本発明の組成物は、非複製性プロバイオティクスを含む。
【0077】
非複製性プロバイオティクスは、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる属の群から選択し得る。
【0078】
プロバイオティクスは、例えば、約70〜150℃の温度範囲で約3分〜2時間、好ましくは80〜140℃の範囲で5分〜40分間の熱処理によって非複製性にしてもよい。
【0079】
このような組成物は、当技術分野において公知の任意の態様で調製し得る。例えば、組成物が乳幼児用補給調製乳などの栄養調製乳である場合、組成物は、タンパク質源、炭水化物源、及び脂肪源を一緒に適切な割合でブレンドすることによって調製し得る。使用される場合、乳化剤がブレンド中に含まれてもよい。ビタミン及びミネラルはこの時点で加えてもよいが、熱劣化を避けるために通常後で加えられる。任意の親油性ビタミン、乳化剤などを、ブレンドする前に、脂肪源に溶解してもよい。次いで、水、好ましくは逆浸透に供した水を混入し、液体混合物を形成し得る。
【0080】
次いで、液体混合物を熱処理して、細菌負荷を減少させ得る。例えば、液体混合物は、約70〜150℃の範囲の温度に約3分〜2時間、好ましくは80〜140℃の範囲の温度に5分〜40分間急速に加熱し得る。加熱は、蒸気噴射によって、又は熱交換器、例えば、プレート熱交換器によって行い得る。
【0081】
次いで、液体混合物は、例えば、フラッシュ冷却によって約60℃〜85℃に冷却し得る。次いで、ホモジナイズされた混合物をさらに冷却して、ビタミン及びミネラルなどの任意の熱に弱い成分を加え得る。
【0082】
ホモジナイズされた混合物のpH及び固形分は、この時点で好都合に標準化される。ホモジナイズされた混合物を、適切な乾燥装置(噴霧乾燥機、凍結乾燥機、又はローラー乾燥機など)に移し、粉末に変える。粉末は、約5重量%未満の含水率を有するべきである。
【0083】
プロバイオティクスを、当業者には公知の任意の適切な方法によって培養し、栄養組成物に加えるために、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって調製し得る。次いで、プロバイオティクスを組成物に加え、その後組成物を熱処理して、細菌負荷を減少させ得る。これによって、プロバイオティクスを自動的に非複製性にする。
【0084】
一般に、非複製性プロバイオティクスを使用することは、熱処理ステップ、例えば、殺菌ステップの前に、細菌を任意の組成物に好都合に加え得るという利点を有する。このような殺菌は、より長い間の穏やかな熱処理によって達成し得る。このようにして、加熱ステップ後に細菌組成物を製品に加えなければならないことを回避することができ、その結果同時に、1つの生成ステップが不要となり、加熱ステップ後の細菌汚染の危険性が減少する。
【0085】
代わりに、当然ながら、プロバイオティクスをまた、個々に熱処理し、次いで非複製性プロバイオティクスとして組成物に加え得る。健康上の利益を実現する非複製性プロバイオティクスの添加はまた、粉末食品組成物の高温の再構成を可能にする。
【0086】
任意のプロバイオティクスが組成物にさらに加えられる場合、選択されたプロバイオティクス(複数可)は、任意の適切な方法によって培養され、組成物に加えるために、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって調製し得る。代わりに、細菌調製物は、食料製品に加えるために適切な形態で既に調製されて、専門の供給業者から購入することができる。
【0087】
本発明者らは、免疫不全が関連する障害を治療又は予防するためにプロバイオティクスの有効性を増加させる方法について初めて本明細書で記載する。方法は、プロバイオティクスの少なくとも一部を熱処理によって非複製性にすることを伴う。
【0088】
したがって、本発明の一実施形態は、投与後に、欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するために、例えば、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる群から選択されるプロバイオティクスの有効性を増加させる方法であって、プロバイオティクスを、プロバイオティクス、例えば、ビフィドバクテリウム属又はラクトバチルス属の少なくとも一部を非複製性にする処理に曝すステップを含む方法である。
【0089】
この処理は、投与前の、例えば、約3分〜2時間の約70〜150℃の温度範囲の、好ましくは5分〜40分間の80〜140℃の範囲の熱処理でもよい。
【0090】
プロバイオティクスの処理、例えば熱処理は、プロバイオティクスの少なくとも95%、好ましくは少なくとも97.5%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは全てを非複製性にすることをもたらし得る。
【0091】
本発明の方法を使用して、欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するプロバイオティクスの有効性を増加し得る。
【0092】
細菌調製物の改善された安定性、及び改善された味のために、非複製性プロバイオティクスを、組成物の摂取前に、消費を目的とする組成物に加えてもよい。このようにして、非複製性プロバイオティクスを含む組成物を摂取することができ、組成物のさらなる構成要素を使用して、組成物をその意図した目的に適合させることができる。
【0093】
代わりに、方法は、生存しているプロバイオティクスを組成物に加え、次いでプロバイオティクス含有組成物を、プロバイオティクスの少なくとも一部を投与前に非複製性にする処理に曝すステップを伴い得る。
【0094】
本明細書に記載されている本発明の全ての特徴を、開示されているような本発明の範囲から逸脱することなく自由に合わせることができることを、当業者であれば理解するであろう。特に、本発明の使用について記載されている特徴は、組成物及び本発明の方法に適用し得る(逆の場合も同じ)。
【0095】
本発明のさらなる利点及び特徴は、下記の実施例及び図から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】熱処理された細菌で刺激されたヒトPBMCからの、インビトロのサイトカイン分泌の増強を示す。
【図2】食塩水に曝露したOVA感作マウス(陰性対照)、OVAに曝露したOVA感作マウス(陽性対照)、及びOVAに曝露し、熱処理された又は生菌のビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950で処理したOVA感作マウスにおいて観察した下痢の激しさの割合を示す。結果を、下痢の激しさ(4つの独立の実験から計算した平均±標準誤差)の割合として示し、100%の下痢の激しさは、陽性対照(アレルゲンに感作及び曝露された)群において発生した症状に相当する。
【実施例】
【0097】
方法
細菌調製物:
5種のプロバイオティクス菌株を使用して、非複製性プロバイオティクスの免疫促進特性を調査した。3種のビフィドバクテリウム属(ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950)及び2種のラクトバチルス属(ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007)。
【0098】
バッチ発酵において細菌細胞を、pH対照なしで、MRS上で37℃にて16〜18時間増殖させた。細菌細胞を遠心分離(5,000×g、4℃)し、リン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させ、その後概ね10E10 cfu/mlの最終濃度に達するように食塩水に希釈した。ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007を、水浴中にて85℃で20分間熱処理した。ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950を、水浴中にて90℃で30分間熱処理した。熱処理された細菌の懸濁液を分取し、使用するまで−80℃で冷凍保存した。生細菌は、使用するまで−80℃でPBS−グリセロール15%中に保存した。
【0099】
細菌調製物のインビトロの免疫プロファイリング
生細菌調製物及び熱処理された細菌調製物の免疫プロファイル(すなわち、インビトロで、ヒト血液細胞から特定のサイトカインの分泌を誘発する能力)を評価した。ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を、血液フィルターから単離した。細胞密度勾配による分離後に、単核細胞を集め、ハンクス平衡塩類溶液で2度洗浄した。次いで、細胞を、10%ウシ胎仔血清(Bioconcept、Paris、france)、1%L−グルタミン(Sigma)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)及び0.1%ゲンタマイシン(Sigma)を補充したIscove改変ダルベッコ培地(IMDM、Sigma)に再懸濁させた。次いで、PBMC(7×10の細胞/ウェル)を、生細菌及び熱処理された細菌(7×10当量cfu/ウェル)と共に48ウェルプレート中で36時間インキュベートした。生細菌及び熱処理された細菌の作用を、2つの別々の実験に分割した、8人の個々のドナーからのPBMC上で試験した。36時間のインキュベーション後、培養プレートを冷凍し、サイトカイン測定まで−20℃で保持した。サイトカインプロファイリングを、生細菌及びそれらの熱処理された対応物について並行で行った(すなわち、PBMCの同じバッチでの同じ実験において)。
【0100】
36時間のインキュベーション後の細胞培養上清中のサイトカイン(IFN−γ、IL−12p40、TNF−α及びIL−10)のレベルを、製造者の指示に従ってELISA(R&D DuoSet Human IL−10、BD OptEIA Human IL12p40、BD OptEIA Human TNF、BD OptEIA Human IFN−γ)によって決定した。IFN−γ、IL−12p40及びTNF−αは、炎症促進性サイトカインであり、一方IL−10は、強力な抗炎症メディエーターである。結果を、4人の個々のドナーの平均(pg/ml)+/−標準誤差として表すが、各々4人のドナーで行う2つの個々の実験の代表である。
【0101】
アレルギー性下痢症の予防における、生菌のビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950及び熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950のインビボ作用
アレルギー性下痢症のマウスモデルを使用して、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950のTh1促進作用を試験した(Brandt E.Bら、JCI2003;112(11):1666〜1667)。感作(14日の間隔で、オボアルブミン(OVA)及び硫酸アルミニウムカリウムの2回の腹腔内注射;0日目及び14日目)後の雄のBalb/cマウスを、6回(27日目、29日目、32日目、34日目、36日目、39日目)OVAに経口的に曝露し、一過的臨床症状(下痢症)及び免疫パラメーターの変化(総IgE、OVA特異的IgE、マウス肥満細胞プロテアーゼ1、すなわち、MMCP−1の血漿濃度)がもたらされた。生菌のビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又は90℃で30分間熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950を、OVA感作の4日前に(−3日目、−2日目、−1日目、0日目及び11日目、12日目、13日目及び14日目)、並びに曝露期間の間に(23〜39日目)、胃管栄養法によって投与した。概ね10コロニー形成単位(cfu)又は当量cfu/マウスの1日当たり細菌量を使用した。
【0102】
結果
熱処理後の「炎症誘発性」サイトカインの分泌の誘発
熱処理された菌種がヒト末梢血単核球細胞(PBMC)によるサイトカイン分泌を刺激する能力をインビトロで評価した。熱処理された細菌によるPBMCの刺激による4つのサイトカインに基づいた免疫プロファイルを、同じインビトロアッセイにおいて生細菌細胞によって誘発される免疫プロファイルと比較した。
【0103】
熱処理された調製物をプレーティングし、生菌数が存在しないことについて評価した。熱処理された細菌調製物は、プレーティング後にコロニーを産生しなかった。
【0104】
生きたプロバイオティクスは、ヒトPBMCと共にインキュベートされるときに、異なるレベル及び菌株依存レベルのサイトカイン産生を誘発した(図1)。プロバイオティクスの熱処理は、生きた対応物と比較すると、PBMCによって産生されるサイトカインのレベルを変更した。熱処理された細菌は、生きた対応物よりも炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ、IL−12p40)をより誘発した。対照的に、熱処理された細菌は、生細胞と比較して同様又はより低い量のIL−10を誘発した(図1)。熱処理された細菌が生きた対応物よりも免疫系をより刺激することができ、したがって弱体化した免疫防御をより促進できることをこれらのデータは示す。すなわち、インビトロデータは、熱処理後の菌種の増強された免疫促進作用を説明する。
【0105】
(生細胞と比較した)熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950の、免疫系に対する増強された作用を説明するために、生菌のビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950及び熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950の両方を、アレルギー性下痢症の動物モデルにおいて試験した。
【0106】
陽性対照群と比較して、下痢の激しさは、熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950による処理後に有意に及び一貫して減少(41.1%±4.8)し、一方では下痢の激しさは、生菌のビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950による処理後に20±28.3%のみ低下した。熱処理されたビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950が、その生きた対応物よりアレルギー性下痢に対して増強された保護作用を示すことをこれらの結果は示す(図2)。
【0107】
結果として、プロバイオティクスが免疫防御を増強する能力は、熱処理の後に改善することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防する組成物の調製のための、少なくとも約3分間の少なくとも約70℃の熱処理によって非複製性にされたプロバイオティクスの使用。
【請求項2】
プロバイオティクスが、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
熱処理が、約3分〜2時間、約70〜150℃の温度範囲で、好ましくは5分〜40分間、80〜140℃の範囲で行われる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
障害が、感染症、特に、細菌、ウイルス、真菌及び/又は寄生虫の感染症;食細胞欠損;ストレス又は免疫抑制薬、化学療法又は放射線療法によって誘発されるものなどの低いレベルから重症レベルまでの免疫抑制;新生児又は高齢者の免疫系などのより免疫適格性ではない免疫系の自然状態;アレルギー;並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
組成物が、食品組成物、ペットフードを含めた食料製品、飲料、栄養調製乳、補給調製乳、栄養補助食品、食品添加物、医薬組成物、化粧組成物、医薬からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
組成物が、疼痛又は熱軽減剤、安定化剤、香味剤、着色剤、滑沢剤、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
組成物が、ヒト又はペットを対象とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
組成物が、1日用量当たり約10〜1012cfuに相当する非複製性プロバイオティクスの量を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
組成物が、1日用量当たり約0.005mg〜1000mgの非複製性プロバイオティクスを含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
プロバイオティクスが、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる群から選択され、プロバイオティクスが、約3分〜2時間の約70〜150℃の温度範囲、好ましくは5分〜40分間の80〜140℃の範囲の熱処理によって非複製性にされた、非複製性プロバイオティクスを含む組成物。
【請求項11】
1日用量当たり約0,005mg〜1000mgの非複製性プロバイオティクスを含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するために、プロバイオティクス、特に、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はこれらの組合せ、例えば、種ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ又はこれらの組合せ、例えば、菌株ラクトバチルス・パラカゼイNCC2461、ラクトバチルス・ラムノサスNCC4007、ビフィドバクテリウム・ロンガムNCC3001、ビフィドバクテリウム・ラクティスNCC2818、ビフィドバクテリウム・ブレーベNCC2950又はこれらの組合せからなる群から選択されるプロバイオティクスの有効性を増加させる方法であって、投与前に、プロバイオティクスを、好ましくは約3分〜2時間の約70〜150℃の温度範囲、好ましくは5分〜40分間の80〜140℃の範囲の熱処理に曝すステップを含み、プロバイオティクスの熱処理が、プロバイオティクスの少なくとも95%、好ましくは少なくとも97.5%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは全てを非複製性にすることをもたらす方法。
【請求項13】
欠陥のある免疫防御に関連する障害を治療又は予防するために、プロバイオティクスの有効性を増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非複製性プロバイオティクスを、投与を目的とする組成物に加えるステップを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
生存しているプロバイオティクスを組成物に加え、プロバイオティクス含有組成物を、投与前に熱処理に曝すステップを含む、請求項12又は13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526749(P2012−526749A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510234(P2012−510234)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056287
【国際公開番号】WO2010/130660
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】