説明

非選択的P450阻害剤

【課題】
医薬品の薬物代謝酵素P450による分解を評価するための有用な新規化合物又はその塩を提供すること。さらに詳しくは薬物代謝酵素P450の各サブタイプに対して非特異的に阻害作用を示す新規化合物又はその塩を提供すること。
【解決手段】
式(1)


で表されるピラゾール誘導体、又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野における、薬物代謝酵素P450による医薬の分解を評価する化合物に関する。詳しくは、非特異的薬物代謝酵素P450阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の多くは体内で薬物代謝酵素による分解を受け、解毒化されてから対外に排泄される。薬物の代謝には主に薬物代謝酵素P450(cytochrome P450、以下P450)が関与しており、この薬物代謝酵素には複数のサブタイプが存在する(非特許文献1)。特にP450サブタイプの中でもCYP3A4及びCYP2D6だけで約50%の医薬品が基質となることが知られている。多くの医薬品は併用して用いられることから、P450を介した複雑な薬物間相互作用に基づく、医薬品の効果減弱や副作用の発現を避けるため、医薬品が代謝されるP450サブタイプを知ることは重要である(非特許文献2)。そのため、医薬品の添付文書に代謝分子種が記載されるようになった。また、FDAガイダンスでは臨床において薬物の消失にP450の寄与が25%以上の場合に、その分子種(サブタイプ)同定を勧めている(非特許文献3)。
【0003】
P450サブタイプを明らかにする方法としては、肝ミクロソームにおける医薬品の代謝反応に対する各P450サブタイプ選択的阻害剤の代謝阻害効果を検討し、各P450サブタイプの医薬品代謝への寄与度を判断する方法が挙げられる。その際に、すべてのP450サブタイプが阻害された場合の医薬品の代謝量を測定する必要があり、この目的のために非選択的P450阻害剤が使用されている。非選択的P450阻害剤としては、ベンゾトリアゾール骨格をもつ1−アミノベンゾトリアゾール(ABT)、イミダゾール骨格をもつ1−ベンジルイミダゾールやSKF-525Aなどが知られておいるが、ピラゾール骨格を基本骨格とする化合物は知られていない。このP450のサブタイプ選択性の影響に関する試験では、一般的にABTが広く用いられてきたが、ABTのP450サブタイプへの阻害作用は十分に非選択的とは言えず、特にCYP2C9に対する阻害活性が低いことが明らかとなってきた(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.Parkinson and B.W.Ogilvie, : Cahpter 6 biotransformation of Xenobiotics : in Casarett & Doull's Toxicology, The Basic Science of Poisons, seventh edition. ed. by C.D.Klaassen, New York: McGraw-Hill, pp.161-304, 2008.
【非特許文献2】B.Ogilvie, E.Usuki, P.Yerino, A.Parkinson, Chapter 7 In vitro approaches for studying the inhibition of drug-metabolizing enzymes and identifying the drug-metabolizing enzymes responsible for the metabolism of drugs(reaction phenotyping) with emphasis on cytochrome P450. : in Drug-Drug Interactions. second edition, ed. A.D.Rodrigues, Marcel Dekker Inc., New York, 231-358, 2008.
【非特許文献3】U.S. Food and Drug Administration. ``Drug Interaction Studies Study Design, Data Analysis, and Implications for Dosing and Labeling (Draft Guidance)''. 2006.
【非特許文献4】C.Emoto, S.Murase, Y.Sawada, K.Iwasaki, : In vitro inhibitory effect of 1-aminoabenzotriazole on drug oxidations in human liver microsomes: a comparison with SKF-525A. Drug Metab.Pharmacokinet., 20, 351-357, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医薬品のP450による分解を評価するための有用な新規化合物又はその塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ピラゾール誘導体がP450の各サブタイプに対して非特異的なP450阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(I)式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)において、R1a、R1b及びR1cは、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1〜C6アルコキシ、アミノ、C1〜C6アルキルアミノ又は、C2〜C12ジアルキルアミノで置換されてもよい)C2〜C7アルケニル、C2〜C7アルキニル、C3〜C7環状アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシ(該C1〜C6アルコキシは、ハロゲン原子で置換されてもよい)、ハロゲン原子、C2〜C7アルカノイル(該C2〜C7アルカノイルは、ハロゲン原子で置換されてもよい)、C2〜C7アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル又は、ヒドロキシを示し、
2は、C1〜C6アルキル又は、C3〜C7環状アルキルを示し、
3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシを示す。)
で表されるピラゾール誘導体、又はその塩、
【0010】
(II)式(1)において、R1a、R1b及びR1cが、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、C2〜C12ジアルキルアミノで置換されてもよい)ハロゲン原子又は、C2〜C7アルコキシカルボニルであり、
2が、C1〜C6アルキルであり、
3が、ハロゲン原子又は、C1〜C6アルコキシであり、
4が、水素原子である、(I)に記載のピラゾール誘導体、又はその塩、及び
【0011】
(III)(I)又は(II)に記載のピラゾ−ル誘導体、又はその塩を含有する、薬物代謝酵素P450阻害剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物は、P450の各サブタイプに対し低濃度で強力な阻害作用を示した。また、本発明の化合物は、従来の非特異的阻害剤により阻害されなかった分子種も阻害することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いられる用語は、以下に定義される通りである。
【0014】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0015】
「C1〜C6アルキル」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル又はn−ヘキシル等の基を示す。
【0016】
「C2〜C7アルケニル」とは、炭素原子数2〜7個の直鎖状又は分枝状のアルケニル基を示し、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル等の基を示す。
【0017】
「C2〜C7アルキニル」とは、炭素原子数2〜7個の直鎖状又は分枝状のアルキニル基を示し、例えば、エチニル、1−プロピオニル、2−プロピオニル等の基を示す。
「C3〜C7環状アルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基を示す。
【0018】
「C1〜C6アルコキシ」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基を示し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ又はn−ヘキシルオキシ等の基を示す。
【0019】
「C2〜C7アルコキシカルボニル」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基が結合したカルボニル基を示し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル又はn−ヘキシルオキシカルボニル等の基を示す。
【0020】
「C1〜C6アルキルアミノ」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基で置換されたアミノ基を示し、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、イソペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ又はn−ヘキシルアミノ等の基を示す。
【0021】
「C2〜C12ジアルキルアミノ」とは、2つの炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基で置換されたアミノ基を示し、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、N,N−イソプロピルメチルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、N,N−sec−ブチルエチルアミノ、N,N−tert−ブチルメチルアミノ、ジ−n−ペンチルアミノ、N,N−イソペンチルメチルアミノ、N,N−ネオペンチルメチルアミノ又はジ−n−ヘキシルアミノ等の基を示す。
【0022】
「C2〜C7アルカノイル」とは、炭素数1〜6個のアルキル基が結合したカルボニル基を示し、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、ペンタノイル、3−メチルブチリル、4,4−ジメチルペンタノイル又はヘプタノイル等の基を示す。
【0023】
本発明において、塩とは、例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸との塩、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどの1種又は複数の金属イオンとの塩、アンモニア、アルギニン、リシン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ベンザチンなどのアミンとの塩が含まれる。
【0024】
本発明の化合物は、各種溶媒和物としても存在し得る。また、医薬としての適用性の面から水和物の場合もある。
【0025】
本発明の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、平衡化合物、これらの任意の割合の混合物、ラセミ体等を全て含む。
【0026】
本発明の化合物には、一つ以上の水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が放射性同位元素や安定同位元素と置換された化合物も含まれる。これらの標識化合物は、例えば代謝や薬物動態研究、受容体のリガンドとして生物学的分析等に有用である。
本発明の化合物は、下記の方法により製造できる。
【0027】
本発明の化合物は、公知の有機化学的手法によって製造することができ、例えば、下記の反応式による方法に従って製造できる。下記反応式1〜3において、R1a、R1b、R1c、R2、R3、R4、は前記と同義である。Zは、C1〜C6アルコキシ又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、Y1、2、3は同一又は異なってフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子又はメタンスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の有機スルホニルオキシ基等の脱離基を示し、Xは、カップリング反応に一般的に用いられる置換基(例えばホウ素、スズ、亜鉛、珪素等の原子を含む基が挙げられ、より好ましくはホウ酸基、ジエチルボリル基、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラニル基、トリ−n−ブチルスタニル基等が挙げられる)を示し、W1、W2、3及びW4は同一又は異なってC1〜C6アルキルを示し、Vは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示す
以下、反応式1で示される本発明の化合物の製造方法について説明する。この製造工程は、化合物(2)から本発明の化合物(1−1)を製造するための工程である。
(反応式1)
【0028】
【化2】

【0029】
(工程1)
工程1は、化合物(2)と化合物(3)をカップリング反応により化合物(4)を得るための工程である。化合物(2)及び化合物(3)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。
【0030】
カップリング反応は、塩基の存在下、溶媒中又は無溶媒で化合物(2)と化合物(3)から1,3-ジケトン(化合物4)を得る一般的な方法により実施できる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類;tert−ブトキシカリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、15℃〜120℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜12時間である。
【0031】
(工程2)
工程2は、化合物(4)の環化反応により化合物(5)を得るための工程である。環化反応は、塩基又は酸の存在下又は非存在下、溶媒中又は無溶媒で化合物(4)とヒドラジンを反応させることにより実施できる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類;tert−ブトキシカリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類が挙げられる。本反応で用いられる酸としては、例えば、塩酸、酢酸、硫酸等が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、15℃〜120℃である。
【0032】
(工程3)
工程3は、化合物(5)のピラゾール環のハロゲン化により化合物(6)を得るための工程である。本工程は、(山中宏、日野亨、中川昌子、坂本尚夫 新編ヘテロ環化合物応用編 講談社サイエンティフィック)に記載の一般的なピラゾール環のハロゲン化の方法により実施できる。具体例としては、例えば、クロロホルム溶媒中、臭素を用いたハロゲン化反応を行うことにより実施できる。
【0033】
(工程4)
工程4は、化合物(6)と化合物(7)をカップリング反応により縮合して化合物(8)を得るための工程である。カップリング反応としては、鈴木−宮浦カップリング反応、Stilleカップリング反応等の一般的なパラジウム触媒等を用いたカップリング反応条件が挙げられ、例えば(Danishefskyら、Angew. Chem. Int. Ed., 40, 4544-4568, 2001)に記載の方法に従って実施できる。
【0034】
(工程5)
工程5は、化合物(8)と化合物(9)をカップリング反応により縮合して本発明の化合物(1−1)を得るための工程である。カップリング反応としては塩基の存在下、溶媒中で化合物(8)と化合物(9)を反応させる方法が挙げられる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類;tert−ブトキシカリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、15℃〜120℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜12時間である。
【0035】
以下、反応式2で示される本発明の化合物の製造方法について説明する。この製造工程は、化合物(1−2)から本発明の化合物(1−3)、(1−4)、(1−5)及び(1−6)を製造するための工程である。
(反応式2)
【0036】
【化3】

【0037】
(工程9)
工程9は、本発明の化合物(1−2)から本発明の化合物(1−3)を得るための工程である。溶媒中、還元剤を用いたエステルからアルコールへの一般的な還元反応により実施できる。本反応で用いられる還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソプロピルアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0038】
(工程10)
工程10は、本発明の化合物(1−3)から本発明の化合物化合物(1−4)を得るための工程である。溶媒中、酸化剤を用いたアルコールからアルデヒドへの一般的な酸化反応により実施できる。本反応で用いられる酸化剤としては、二酸化マンガン、2-ヨードキシ安息香酸、1,1,1-トリアセトキシ-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンズヨードキソール-3(1H)-オン等が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0039】
また、本発明の化合物(1−4)は、本発明の化合物(1−2)から1段階の反応によって製造することもできる。
【0040】
(工程11)
工程11は、本発明の化合物(1−4)と化合物(10)を還元的アミノ化反応により本発明の化合物(1−5)を得るための工程である。化合物(10)は、公知化合物であるか、公知化合物から容易に合成できる化合物である。ここで還元的アミノ化反応の条件とは、アミンとアルデヒドとを、酸の存在下又は非存在下、還元剤を加え、溶媒中で縮合させる一般的な還元的アミノ化を示し、例えば、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
(工程12)
工程12は、本発明の化合物(1−3)と化合物(11)から本発明の化合物(1−6)を得るための工程である。塩基の存在下、溶媒中、化合物(11)を用いた一般的なエーテル化により実施できる。また、必要に応じて、例えば、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム等の添加物を加えることができる。本反応で用いられる塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類;tert−ブトキシカリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類が挙げられる。本反応で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、ベンゼン等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;水又はこれらの混合溶媒が挙げられ、これらのうち、テトラヒドロフラン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ブタノン又はアセトニトリルが好ましい。本反応における反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは、15℃〜120℃であり、反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは、1〜12時間である。
【0042】
以下、反応式3で示される本発明の化合物の製造方法について説明する。この製造工程は、本発明の化合物(1−7)から本発明の化合物(1−8)を製造するための工程である。
(反応式3)
【0043】
【化4】

【0044】
(工程13)
工程13は、本発明の化合物(1−7)から本発明の化合物(1−8)を得るための工程である。本工程はハロゲン原子を水素原子に還元する一般的還元反応により実施でき、例えばパラジウム−炭素、白金等の触媒を用いた水素添加による接触還元反応を行うことにより実施できる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]安息香酸メチル(化合物番号1)の製造
(1)1−(ピリジン−4−イル)ブタン−1,3−ジオンの製造
【0046】
【化5】

【0047】
イソニコチン酸メチル(200g)アセトン(169g)のジエチルエーテル(1500ml)溶液に、ナトリウムメトキシド(78.7g)を加え、50℃にて3時間攪拌した。反応液に酢酸(87.6g)及び水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下濃縮した。ジイソプロピルエーテル(100ml)を加え、氷浴下、30分間攪拌後、結晶をろ取し、黄色個体の表題化合物(66.0g、28%)を得た。
(2)4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジンの製造
【0048】
【化6】

【0049】
実施例1−(1)で製造した1−(ピリジン−4−イル)ブタン−1,3−ジオン(66.0g)のエタノール(250ml)溶液にヒドラジン1水和物(40.0g)を加え、1時間攪拌した。反応液を塩−氷浴下、1時間攪拌後、析出した結晶をろ取し、無色固体の表題化合物(33g、51%)を得た。
(3)4−(4−ブロモ−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジンの製造
【0050】
【化7】

【0051】
実施例1−(2)で製造した4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジン(27.0g)のクロロホルム(2500ml)溶液に臭素(27.2g)のクロロホルム(500ml)溶液を滴下した。室温にて1時間攪拌後、反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた固体を酢酸エチルにて洗浄し、表題化合物(25.6g、63%)を得た。
【0052】
(4)4−(4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジンの製造
【0053】
【化8】

【0054】
実施例1−(3)で製造した4−(4−ブロモ−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジン(4.00g)、4クロロフェニルボロン酸(5.28g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(3.90g)、2.0M炭酸ナトリウム水溶液(30ml)、トルエン(30ml)及びエタノール(20ml)の混合液を160℃にて一晩攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=98:2〜95:5)にて精製して、薄黄色アモルファスの表題化合物(2.00g,44%)を得た。
【0055】
(5)3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]安息香酸メチル(化合物番号1)の製造
【0056】
【化9】

【0057】
実施例1−(4)で製造した4−(4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリジン(1.00g)のN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)溶液に水素化ナトリウム(0.148g)を加え、室温にて10分間攪拌後、3−クロロ−2−フルオロ安息香酸メチル(1.40g)を加え、110℃にて4時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=98:2〜96:4)にて精製して、無色油状の表題化合物(0.180g,11%)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.11 (s, 3 H) 3.71 (s, 3 H) 7.22 - 7.27 (m, 2 H) 7.35 - 7.42 (m, 4 H) 7.54 - 7.59 (m, 1 H) 7.74 - 7.78 (m, 1 H) 7.94 - 7.98 (m, 1 H) 8.47 - 8.51 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 438(M+H)+
【0058】
(実施例2)
{3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}メタノール(化合物番号2)の製造
【0059】
【化10】

【0060】
実施例1−(5)で製造した3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]安息香酸メチル(0.170g)のテトラヒドロフラン(2.0mL)溶液に氷浴下、1.0Mジイソブチルアルミニウム水素化物のトルエン溶液(1.47ml)加え、氷浴下4時間攪拌した。反応液に飽和ロッシェル塩水溶液を加え、室温にて2時間攪拌後、酢酸エチルで抽出し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=100:0〜97:3)にて精製して、無色アモルファスの表題化合物(0.070g,44%)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.11 (s, 3 H) 3.11 (br. s., 1 H) 4.33 - 4.42 (m, 2 H) 7.21 - 7.25 (m, 2 H) 7.34 - 7.44 (m, 4 H) 7.47 - 7.58 (m, 3 H) 8.48 - 8.54 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 410(M+H)+
【0061】
(実施例3)
1−{3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}−N,N−ジメチルメタンアミン(化合物番号3)の製造
(1)3−クロロ−2−(4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)ベンズアルデヒドの製造
【0062】
【化11】

【0063】
2−ヨードキシ安息香酸(0.042g)にジメチルスルホキシド(2.0ml)を加え、室温にて30分間攪拌して溶解させた。反応液に実施例2で製造した{3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}メタノール(0.060g)を加え、室温にて一晩攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。無色油状の表題化合物(0.070g)を得た。
【0064】
(2)1−{3−クロロ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}−N,N−ジメチルメタンアミンの製造
【0065】
【化12】

【0066】
実施例3−(1)で製造した(3−クロロ−2−(4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)ベンズアルデヒド(0.070g)のクロロホルム(1.0ml)溶液に酢酸(0.045g)、2.0Mジメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液(0.36ml)及びトリアセトキシホウ水素化ナトリウム(0.160g)を加え、室温にて一晩攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、減圧下濃縮した。濃縮残査を分取型薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=18:1)にて精製して、無色固体の表題化合物(0.040g,61%)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.04 (s, 3 H) 2.14 (s, 6 H) 3.12 (d, J=13.75 Hz, 1 H) 3.26 (d, J=13.75 Hz, 1 H) 7.22 - 7.25 (m, 2 H) 7.37 - 7.56 (m, 7 H) 8.48 - 8.52 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 437(M+H)+
【0067】
次に示す化合物は、実施例1−実施例3に示した方法で合成した。
化合物番号4 4−[4−(4−クロロフェニル)−1−(2,6−ジクロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル]ピリジン
【0068】
【化13】

【0069】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.08 (s, 3 H) 7.22 - 7.27 (m, 2 H) 7.37 - 7.45 (m, 5 H) 7.51 - 7.55 (m, 2 H) 8.48 - 8.52 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 414(M+H)+
【0070】
化合物番号5 3,5-ジクロロ-4-[4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-3-(ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]安息香酸メチル
【0071】
【化14】

【0072】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.07 (s, 3 H), 3.99 (s, 3 H), 7.17 - 7.27 (m, 2 H), 7.32 - 7.45 (m, 4 H), 8.16 (s, 2 H), 8.41 - 8.59 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 472(M+H)+
【0073】
化合物番号6 {3,5−ジクロロ−4−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}メタノール
【0074】
【化15】

【0075】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.06 (s, 3 H) 4.75 (s, 2 H) 7.21 - 7.25 (m, 2 H) 7.38 - 7.43 (m, 4 H) 7.48 (s, 2 H) 8.49 - 8.54 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 444(M+H)+
【0076】
化合物番号7 1−{3,5−ジクロロ−4−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}−N,N−ジメチルメタンアミン
【0077】
【化16】

【0078】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.07 (s, 3 H), 2.29 (s, 6 H), 3.45 (s, 2 H), 7.19 - 7.28 (m, 2 H), 7.34 - 7.44 (m, 4 H), 7.49 (s, 2 H), 8.45 - 8.53 (m, 2 H)
HRMS (ESI)(Positive) m/z; 471(M+H)+
【0079】
化合物番号8 {3−ブロモ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}メタノール
【0080】
【化17】

【0081】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.11 (s, 3 H) 4.31 - 4.46 (m, 2 H) 7.22 - 7.25 (m, 2 H) 7.34 - 7.46 (m, 5 H) 7.58 - 7.64 (m, 1 H) 7.70 - 7.75 (m, 1 H) 8.48 - 8.55 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 454(M+H)+
【0082】
化合物番号9 {2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼン−1,3−ジイル}ジメタノール
【0083】
【化18】

【0084】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.04 (s, 3 H) 4.30 - 4.45 (m, 4 H) 7.19 - 7.24 (m, 2 H) 7.32 - 7.36 (m, 2 H) 7.39 - 7.44 (m, 2 H) 7.57 - 7.65 (m, 3 H) 8.45 - 8.53 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 406(M+H)+
【0085】
化合物番号10 {2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]−3−フルオロフェニル}メタノール
【0086】
【化19】

【0087】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.17 (s, 3 H) 4.34 - 4.53 (m, 2 H) 7.19 - 7.56 (m, 9 H) 8.52 (br. s., 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 394(M+H)+
【0088】
化合物番号11 {3-クロロ-2-[4-(4-メトキシフェニル)-5-メチル-3-(ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]フェニル}メタノール
【0089】
【化20】

【0090】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.11 (s, 3 H) 3.88 (s, 3 H) 4.33 - 4.43 (m, 2 H) 6.95 - 7.01 (m, 2 H) 7.18 - 7.24 (m, 2 H) 7.39 - 7.72 (m, 6 H) 8.43 - 8.54 (m, 1 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 406(M+H)+
【0091】
(実施例4)
4−{1−[2−ブロモ−6−(メトキシメチル)フェニル]−4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル}ピリジン(化合物番号12)の製造
【0092】
【化21】

【0093】
3−ブロモ−2−[4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル]フェニル}メタノール(化合物番号8)(0.090g)のN,Nジメチルホルムアミド(1.0ml)溶液に水素化ナトリウム(0.008g)を加え、室温にて10分間攪拌した。反応液にメチルヨージド(0.043g)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、減圧下濃縮した。濃縮残査を分取型薄層クロマトグラフィー展開溶媒:クロロホルム:メタノール=18:1)にて精製して、薄黄色固体の表題化合物(0.025g,27%)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.06 (s, 3 H) 3.32 (s, 3 H) 4.17 (d, J=12.84 Hz, 1 H) 4.32 (d, J=12.84 Hz, 1 H) 7.22 - 7.26 (m, 2 H) 7.38 - 7.44 (m, 5 H) 7.58 - 7.61 (m, 1 H) 7.68 - 7.71 (m, 1 H) 8.49 - 8.52 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 468(M+H)+
【0094】
(実施例5)
4−{4−(4−クロロフェニル)−1−[2−(メトキシメチル)フェニル]−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル}ピリジン(化合物番号13)の製造
【0095】
【化22】

【0096】
実施例4で製造した4−{1−[2−ブロモ−6−(メトキシメチル)フェニル]−4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル}ピリジン(0.020g)のエタノール(1.0ml)溶液に10%パラジウムカーボン(0.010g)を加え、水素雰囲気下室温にて8時間攪拌した。セライト濾過後、減圧下濃縮した。濃縮残査を分取型薄層クロマトグラフィー展開溶媒:クロロホルム:メタノール=18:1)にて精製して、薄黄色アモルファスの表題化合物(0.010g,64%)を得た。
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.09 (s, 3 H) 3.33 (s, 3 H) 4.33 (s, 2 H) 7.20 - 7.25 (m, 2 H) 7.33 - 7.57 (m, 6 H) 7.63 - 7.70 (m, 1 H) 8.48 - 8.53 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 390(M+H)+
次に示す化合物は、実施例4−実施例5に示した方法で合成した。
【0097】
化合物番号14 4−{1−[2−ブロモ−6−(エトキシメチル)フェニル]−4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル}ピリジン
【0098】
【化23】

【0099】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.16 (br. s., 3 H) 2.02 - 2.12 (m, 3 H) 3.33 - 3.58 (m, 2 H) 4.19 - 4.39 (m, 2 H) 7.18 - 7.37 (m, 2 H) 7.42 - 7.79 (m, 5 H) 8.00 (br. s., 2 H) 8.55 (br. s., 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 482(M+H)+
【0100】
化合物番号15 4-{4-(4-クロロフェニル)-1-[2-(エトキシメチル)フェニル]-5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル}ピリジン
【0101】
【化24】

【0102】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.07 - 1.36 (m, 3 H) 2.10 (br. s., 3 H) 3.41 - 3.74 (m, 2 H) 4.31 - 4.63 (m, 2 H) 7.29 - 9.10 (m, 12 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 404(M+H)+
【0103】
化合物番号16 {2-[4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-3-(ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]フェニル}メタノール
【0104】
【化25】

【0105】
1H NMR (600 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 2.22 (s, 3 H) 4.44 (s, 2 H) 7.19 - 7.25 (m, 2 H) 7.31 - 7.55 (m, 7 H) 7.61 - 7.68 (m, 1 H) 8.47 - 8.57 (m, 2 H)
MS (ESI/APCI Dual) (Positive) m/z; 376(M+H)+
【0106】
(試験例)
<ヒト肝ミクロソームにおける本発明化合物のP450サブタイプ阻害作用>
本発明化合物はアセトニトリルに溶解して試験に用いた。1.4 mL のポリプロピレン製チューブに、pH 7.4 リン酸緩衝液(100 mM), 塩化カリウム (100 mM)、 グルコース6リン酸(1.4 mM)、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ (0.17 units/mL)、塩化マグネシウム(2.4 mM)、ヒト肝ミクロソーム(0.1mg/mL)、本発明化合物(化合物番号3:10μM)及び各P450サブタイプに対する基質を加え、37℃でインキュベートした。インキュベート溶液の容積は0.3 mL とし、β-ニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(0.16 mM)添加により反応を開始した。内標を含むアセトニトリ溶液を0.3 mL加えて反応を停止した。混和後、約3,000x g、10分間、4℃で遠心し、得られた上清中における各基質の代謝物量をLC/MS/MSにより分析した。なお、反応時間は代謝物の生成が直線性を示す条件とした。
【0107】
なお、上記反応で使用した各P450サブタイプの基質の種類、反応時の濃度、及び反応後の代謝物の種類を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
LC/MS/MSの測定条件は以下である。HPLC:Shimadzu LC-20AD system、MS:API4000 Sciex.カラム:Shimadzu Shim-pack XR-ODS 3x30 mm、グラジエント:移動相A[0.1% HCOOH水溶液]、移動相B[CH3CN]、条件[移動相の流量1.5 mL/分、A:B=98:2からA:B=5:95まで移動相の組成を変化させ、その後、A:B=98:2の組成で流す。] MS/MSの検出:acetaminophen=152.1/110.0、4'-hydroxydiclofenac=312.2/231.2、4'-hydroxymephenytoin=235.2/150.2、1'-hydroxybufuralol=278.3/186.1、1'-hydroxymidazolam=342.1/203.1、6β-Hydroxytestosterone=305.3/269.2。
【0110】
LC/MS/MSデータより各基質代謝物濃度を測定し、下記の式より阻害率を算出した。
【0111】
阻害率(percent inhibition(%))の算出法
Percent inhibition (%) = 100-(評価化合物存在下での基質の代謝物濃度/評価化合物非存在下での基質の代謝物濃度)x 100
【0112】
<ヒト肝ミクロソームにおける1−アミノベンゾトリアゾール(ABT)のP450サブタイプ阻害作用>
ABTについては、代謝依存的なP450阻害剤であるため、あらかじめABTのみをヒト肝ミクロソーム濃度0.5 mg/mL濃度で30分間インキュベート後に各P450分子種に対する阻害活性を測定した。
【0113】
ABTはアセトニトリルに溶解して試験に用いた。1.4 mL のポリプロピレン製チューブに、pH 7.4 リン酸緩衝液(100 mM)、塩化カリウム (100 mM)、グルコース6リン酸(1.9 mM)、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ (0.18 units/mL), 塩化マグネシウム(2.4 mM)、ヒト肝ミクロソーム(0.5mg/mL)、を加え、ABT(1000μM) を加え、37℃でインキュベートした。インキュベート溶液の容積は0.3 mL とし、β-ニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(0.17 mM)添加により反応を開始した。30分インキュベート後、反応溶液30μLをあらかじめ暖めた1.4 mL ポリプロピレンチューブ中の各基質(表1記載の濃度の5倍濃度)、pH7.4 リン酸緩衝液 (100 mM)、グルコース6リン酸(1.8 mM)、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(0.17 units/mL)、塩化マグネシウム(2.4 mM)、β-ニコチンアデニンジヌクレオチドリン(0.19 mM)を含む270μL のインキュベーション溶液に加えた。さらに、所定時間37℃でインキュベート後、直接阻害と同様に処理した。
【0114】
LC/MS/MSにより各基質代謝物濃度を測定し、下記の式より阻害率を算出した。
阻害率(percent inhibition(%))の算出法
Percent inhibition (%) = 100-(ABT存在下での基質の代謝物濃度/ABT非存在下での基質の代謝物濃度)x 100
【0115】
試験結果を表2に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
化合物番号3の化合物は、P450の各サブタイプに対し低濃度(10μM)で強力な阻害作用を示した。また、本発明の化合物は、従来の非特異的阻害剤であるABTにより十分に阻害されなかった分子種(2C9)を阻害した。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明化合物を用いることにより、医薬品のP450による代謝の影響を明らかにすることができ、P450との相互作用に起因する医薬品の効果減弱又は副作用増大を効果的に防止することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式(1)において、R1a、R1b及びR1cは、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは、ヒドロキシ、ハロゲン原子、C1〜C6アルコキシ、アミノ、C1〜C6アルキルアミノ又は、C2〜C12ジアルキルアミノで置換されてもよい)C2〜C7アルケニル、C2〜C7アルキニル、C3〜C7環状アルキル、シアノ、C1〜C6アルコキシ(該C1〜C6アルコキシは、ハロゲン原子で置換されてもよい)、ハロゲン原子、C2〜C7アルカノイル(該C2〜C7アルカノイルは、ハロゲン原子で置換されてもよい)、C2〜C7アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル又は、ヒドロキシを示し、
2は、C1〜C6アルキル又は、C3〜C7環状アルキルを示し、
3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシを示す。)
で表されるピラゾール誘導体、又はその塩。
【請求項2】
式(1)において、R1a、R1b及びR1cが、同一又は異なって、水素原子、C1〜C6アルキル(該C1〜C6アルキルは、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、C2〜C12ジアルキルアミノで置換されてもよい)ハロゲン原子又は、C2〜C7アルコキシカルボニルであり、
2が、C1〜C6アルキルであり、
3が、ハロゲン原子又は、C1〜C6アルコキシであり、
4が、水素原子である、請求項1に記載のピラゾール誘導体、又はその塩。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のピラゾ−ル誘導体、又はその塩を含有する、薬物代謝酵素P450阻害剤。

【公開番号】特開2010−248114(P2010−248114A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98518(P2009−98518)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】