説明

非閉経女性における卵胞貯蔵を調節するのに意図した医薬を製造するのにソマトスタチン又はその同族体の1つの使用

【課題】卵胞貯蔵を調節するのに役立つ医薬、特に非閉経女性において、経時的に卵胞貯蔵の枯渇を低減するのに役立つ医薬の製造。
【解決手段】ソマトスタチン又はその作用薬同族体の1つであり、非閉経女性における休止卵胞の成長開始を促進するにはソマトスタチンの拮抗薬同族体を使用する。また、ソマトスタチン及びこれの作用薬同族体及び拮抗薬同族体の試験管内用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非閉経女性における卵胞貯蔵を調節するのに意図した医薬を製造するのにソマトスタチン又はその作用薬同族体(agonist analogues)の1つの使用に関し、あるいは非閉経女性における休止卵胞の成長開始を促進するのに意図した医薬を製造するのにソマトスタチン拮抗剤同族体(antagonist analogue)の使用に関する。本発明はまた卵巣組織における休止卵胞の成長開始を抑制するためにソマトスタチン又はその作用薬同族体の1つの試験管内使用に関しあるいは卵巣組織における休止卵胞の成長開始を促進するためにソマトスタチン拮抗剤同族体の試験管内使用に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての哺乳動物における如く女性において、妊娠は「卵巣細胞」と呼ばれる雌配偶子が卵巣中に存在することによって決定される。ヒトにおいては、卵母細胞能力は出生で一度だけ構成され;卵母細胞の個数は次いで1個の卵巣当り50万〜100万よりなる。これらの卵母細胞は少数の顆粒膜によって包囲されており;この官能基は卵胞(ovarian follicle)と呼ばれる(Gougeon, A., 内分泌の考察(Endocrine Reviews)(1996)、17、121〜155参照)。出生時に且つ閉経までの生活に亘って、卵胞の大部分は休眠状態にある。
【0003】
その構成から卵母細胞能力は(capital)は次第に減少し;即ち思春期では1個の卵巣当り大体20万個の卵胞があり、20才の年令では大体8万個の卵胞があり、30才の年令では大体3万個の卵胞があり、40才の年令では大体1万個の卵胞があり、卵母細胞能力は実際上50才付近の年令で枯渇するものである(Gougeon, AおよびLe fevre B., 《Folliculogenese et maturation ovocytaire》 in Medecine de la reproduction 3版Ed, Flammarion 49頁参照」。卵母細胞能力の枯渇は臨床上閉経に対応する。所与の時期に卵巣に存在する休眠卵胞は「卵巣貯蔵」(ovarian reserve)を成す。
【0004】
卵巣貯蔵の前進的な枯渇には2種のメカニズムを伴なう。卵胞の大体80%がアポトーシスの開始で消滅し、然るに残りの20%が成長し始める。次いで後者の卵胞は長い発展過程(大体6ヶ月)を開始し、その際それらの少数(寿命に亘って大体400個)が受精させ得る成熟卵母細胞を含有する排卵前の卵胞段階に到達するものである(Gougeon A, Endocrine Reviews (1996), 17, 121~155頁)。成長中の卵胞の大部分はアポトーシスによって消失してそれらの退縮を生起し;アポトーシスは卵胞が発展する何れかの段階で卵胞を攻撃する。
【0005】
休止卵胞段階から成長中の卵胞段階への変化は、連続的ではあるが強度が可変の現象である。特に、該現象は大体38才の年令から閉経に先立つ10〜15年で促進する。
【0006】
成長の第1段階(大きな一次卵胞から開始して)を刺激する因子は比較的良く知られている。該因子にはゴナドトロピン(LHおよびFSH)があるが特に成長因子及びアンドロゲンの如きステロイドがある。然しながら、卵胞成長の開始を調節するメカニズムは良く知られていない。卵胞発生のこの段階はゴナドトロピン(LH及びFSH)に依存しないことが良く確立されている(例えばBullen S. 及びAdashi E. の内分泌学のウィリアム教本(Williams Textbook of Endocrinology)、10版(2003)、587〜664参照)。AMH(抗ミュラーホルモン)として知られるホルモンは卵胞の休止を維持するのに関与し得るがキット−リガンドとして知られるペプチド(SCFとも呼ばれる)は休止卵胞の成長を賦活化するのに関与し得る。更には、GDF−9として知られる成長因子は、賦活化の引き金を引いたからには成長を維持するために重要であると思われる。
【0007】
ソマトスタチン(SST)は生物中で2つの形式で存在する環状ペプチドであり、1つの形式は14個のアミノ酸を含有し、もう1つの形式は28個のアミノ酸を含有する。SSTのこれらの2つの形式の生物学的活性は同様である。SST−14形は中枢神経系での主要な形である。SST−14形は脳下垂体前葉のソマトトロープ細胞により成長ホルモンの分泌を抑制する。SST−28形は胃及びスイ臓で発現されるのが好ましい。SSTの生物学的活性はタンパク質Gと結合した一連の膜受容体により誘発され、その5亜型即ち亜型SSTR1〜SSTR5が特徴付けられている(Reubi, J, S, C, Cancer Res. 47, 551~558; Resine T. 等のEndocr., Review, 16, 427~442; Lamberts,S.W等のEndocr, Review, 12, 450~482参照)。
【0008】
卵巣中にSSTが存在することは豚(Mori T等のActa Endocrinol. (Copenh,) (1984) 106(2) 254~259)ラット(McNeil, D.L.等のAm.J. Anat. (1987) , 179 (3), 269~76)を含めて幾つかの動物種及び女性(Holst等のHum. Reprod. (1994), 9 (8)、1448~1451)において証明された。SST受容体はラットの卵巣で(Lidor, A. 等のGynecol, Endocrinol. (1998), 12(2), 97~101)並びにヒトの卵巣で特に亜型1, 2A及び5(Strauss等のHum. Reprod.(2003), 18, Suppl. 1 495頁)が確認されている。
【0009】
卵巣生理学においてSSTが寄与することは幾人かの研究報告者によって研究されている。ラットにおいては、SSTを生体内投与するとLH及びFSHを生産する下垂体細胞の個数並びに卵巣中の排卵前卵胞の個数を減少するように思われる(Nestorovic等のHistochem. J.(2001), 33(11~12), 695~702)。試験管内において、SSTはアロマターゼを抑制し且つ顆粒膜細胞のモデルにおいてFSHにより刺激されたプロゲステロンの生産を抑制する(Andreani, C., L,等のHum. Reprod. (1995), 10 (8), 1968~1973)。豚においては、SSTは顆粒膜細胞中のLH及びフォルスコリンによって誘発されるcAMPの増大を抑制し(Rajkumar, K.等のJ. Endocrinol.(1992), 134(2), 297~306)しかも排卵前の卵母細胞の核成熟を抑制すると思われる(Mori, T, 等のActa Endocrinol.(Copenh.)(1985), 110(3), 408~412)。女性においては、排卵前の卵胞からの顆粒膜細胞について試験管内研究すると、IGF−BPIの合成及びプロゲステロンの合成を抑制するのにSSTの直接的な役割りを示唆している(Holst, N.等のFertil, Steril (1997), 68(3), 478~482)。女性においては生体内SSTは下垂体によりLHの分泌を低減することができ、アンドロゲンの生産及びIGF−1血清濃度を低減する。対照的に、SSTはIGF−BP3の血清濃度を増大する(Fulghesu, A. M.等のFertil, Steril, (1995), 64(4), 703~708; Piaditis, G. P. 等のClin, Endocrinol. (Oxf.)(1996), 45(5), 595~604)。SSTは、多のう胞卵巣症候群の結果として不妊となる患者に排卵を誘発する処置中にFSHと共に同時投与される。LH血清濃度を低減し且つ成長ホルモン及びIGF−1の血清濃度を低減するSSTの能力は確認されている。然しながら、この内分泌作用はFSHの投与により誘発される卵胞成長に有意な衝撃を伴なわない(Lidor, A.等のGynecol, Endocrinol, (1998), 12(2), 97~101; van der Meer, M. 等のHum. Reprod. (1998), 13(6), 1465~1469)。要約すると今日まで、LHの下垂体分泌及び排卵前卵胞の顆粒膜細胞によるプロゲステロンの生産におけるSSTの周縁作用が報告されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が今般見出した処によれば、驚くべきことには、SST及びその同族体は休止段階から成長段階への卵胞の移転を抑制する能力を有し且つこの能力はこれらの化合物に新規な治療用途を可能とする。
【0011】
この発見の利点は主として、休止段階における卵胞の成長開始を低減するか又は抑制するのに意図した医薬を製造するのにSST又はSST作用薬同族体を用いることができることに在る。第2には、休止卵胞の成長開始を促進するのに意図した医薬を製造するのにこのペプチドの拮抗薬同族体を用いることができることである。
【0012】
卵巣貯蔵の枯渇を遅延するためにそれ故卵巣の機能及び妊娠を保持するために、医学的な見通しから患者にとって卵巣貯蔵の使用を遅発させるのが望ましい一連の臨床状況がある。これらの状況は典型的にはしかも限定されない要領では、早期閉経の恐れがある患者である。或る患者は、それらの卵胞能力の早過ぎる枯渇を有することは周知である。次いで閉経が40才代の年令前に生起し、時として30才代の年令前でさえ生起する。この早期閉経は家系履歴又はターナー症候群(完全又は部分的)の如き遺伝的異常に基づいて予測できることが多い。この状況ではSSTあるいはその作用薬同族体の1つを投与することが予防処置でありしかも休止卵胞の成長開始を遅発させることを目的とする。
【0013】
同じ状況は妊娠困難な患者にも応用され、該患者については患者の卵巣の年暦令又は生体令は休止卵胞の賦活化促進期間に対応し;この卵胞能力の枯渇を遅延させることが処理の効率及び妊娠するようになる機会を増大させ得るものである。
【0014】
SSTにより又はその作用薬同族体の1つによる処理から利益を受け得る別の臨床状況は卵巣又は卵巣断片の移植(好ましくは自己移植)である。この背景には、卵巣機能の回復は一時的であることが多く、しかも原始卵胞の個数の早過ぎる枯渇を伴なう(Baird, D. T. 等のEndocrinology, (1997), 140, 462~471)。移植中に、成長している卵胞の顆粒膜細胞は原始卵胞のアポトーシスよりも多くアポトーシスを開始する傾向があることが実際上証明された(Liu, J.等のHum, Reprod, (2002), 17, 605~611)。更には、卵巣組織及びその細分を除去すると原始卵胞を迅速に且つ一緒に後期一次卵胞の段階に向かって移動させる(Wandji S-A等のHum, Reprod, (1997), 12, 1993~2001; 本願実施例の対照群 参照)。
【0015】
本願明細書の文脈において、ソマトスタチン作用薬同族体(又はソマトスタチン)は移植の目的のため卵巣組織の採取、洗浄、冷凍及び解凍用に種々の培地に添加できる。それ故、本発明は、ソマトスタチン作用薬同族体を含有してなる対応の培地にも関する。本発明はまた卵巣組織の採取、洗浄、保存、冷凍及び解凍用培地用の保護助剤としてソマトスタチン作用薬同族体の使用に関する。
【0016】
更には、ソマトスタチン又はソマトスタチン作用薬同族体の試験管内使用は、中毒分析の領域で及び新鮮又は冷凍卵巣組織からの成熟卵母細胞の試験管内生産で有用であり得る。前者の分析については、卵胞及びそれらの成長における新規な薬剤本体(chemical entities)の作用の試験中に、卵胞試料にソマトスタチン作用薬同族体を添加すると、卵胞の成長を緩慢とすることができ且つかくして前記の新規薬剤本体によって生起された成長促進作用をより容易に観察することができる。ソマトスタチン拮抗剤を添加すると卵胞貯蔵を成長段階に向かって移動させることができ、しかもこの現象における新規な薬剤本体の衝撃をより良く評価することができる。成熟卵母細胞の生体内生産に関しては、卵胞試料にソマトスタチン作用薬同族体を添加すると、培養の初期段階中は卵胞の成長を遅延させることができる。続いて第2の段階でソマトスタチン拮抗剤を添加すると卵胞貯蔵を成長段階に向って移動させることができ、より大きな個数の成熟卵胞を得ることができそれ故より大きな個数の受精可能な卵母細胞を得ることができる。
【0017】
多のう胞卵巣を有する患者にソマトスタチン作用薬同族体の(又はソマトスタチンの)使用は有益である。実際に、多数の観察が示唆する処によれば、多のう胞卵巣は異常に高い卵胞分布を有する(HughesdonのObstet. Gynecol. Surv. (1982), 37(2), 59~77参照)。過剰量でのこれらの卵胞によるアンドロゲンの過剰生産はこれらの患者に見られる代謝異常及び内分泌異常の起点となってしまう。更には、卵巣の切除、焼灼又は紫外線照射によりこの卵胞母集団を有意な程に低減させることは最も有効な治療の1つとなる。何故ならばこの低減によって患者を大体80%で排卵することができしかも18ヶ月に亘って75%の累積率で妊娠するようになることができるからである。即ち、ソマトスタチン作用薬同族体の(又はソマトスタチンの)規則的な投与は成長している卵胞の個数低減を生起しそれ故アンドロゲンを生産する過剰洞(antral)卵胞の個数低減を生起し、一次的な永続的な特性の受精排卵周期の回復が得られる。
【0018】
更には、化学療法又は照射(治療のため又は別の目的のため)を受けようとしているか、現在受けつつあるか又は受けてしまった患者にソマトスタチン作用薬同族体(又はソマトスタチン)を用いると、化学療法剤又は電離性放射線に対してより感受性とさせる、卵胞貯蔵の促進された賦活化を防止することにより早期閉経の恐れを低減する。
【0019】
別の用途も想定でき、特に獣医分野で想定できる。本発明は動物種を救済するのに用いることができ、ソマトスタチン作用薬同族体(又はソマトスタチン)を用いると雌の卵巣貯蔵を保持できる。同様に、ソマトスタチン拮抗剤同族体を商品価値の高い動物の試験管内又は生体内受精の情況で用いることができる。商品価値の高いかかる動物は特に馬、牛、羊又は山羊であることができ;該動物はトランスゲニック起源の動物であり得る。
【0020】
前述した病状に加えて、卵巣貯蔵の枯渇を組織的に遅延させることは、卵巣機能障害を受けていない女性にも想定し得る。産業国では、平均余命(現在仏国では大体83才)の連続した延長は閉経後の期間の延長を伴ない且つそれに関連する諸問題:心臓病、骨粗鬆症、皮膚の老化等の拡大を伴なう。閉経に対するホルモン代用品処理剤の長期安全性についても疑念が生じる。従って、魅力的な代用品は閉経が生起する年令を遅延させるものである。かくしてこれによって閉経後の期間及びそれにともなう危険を低減するものである。然しながら、これは60才以上の年令まで妊娠を維持できることを意味するものでない。多数の著作が示唆する処によれば、貯蔵卵胞の最低個数を維持する限りは卵巣の機能は維持され、しかも「正常な」卵巣機能(ステロイド濃度は殆んど影響しない)にも拘らず、妊娠の機会は極端に低い。
【0021】
卵巣貯蔵の使用を遅延させるのが求められる情況では、本発明によると、天然のソマトスタチン(SST14又はSST28)又は好ましくはソマトスタチン作用薬同族体(天然又は合成の同族体)を用いるものである。ソマトスタチン作用薬同族体は環式又は非環式ポリペプチド、融合又は組換えタンパク質、非ペプチドの化学部分(即ちペプチド模倣品)又はまたコルチコスタチンの如き「SS−様」ペプチドであり得る。用いるべきソマトスタチン作用薬同族体はSST受容体に対して高度の親和性を有しなければならず且つ下垂体ソマトトロープ細胞による成長ホルモンの分泌抑制及び/又は下垂体腺腫細胞の試験管内増殖の抑制の如きSSTの機能活性を誘発しなければならない。ソマトスタチン作用薬同族体はSST受容体の全て又は少なくとも2個又は3個に対して高度の親和性を有するか又は亜型1,2,3,4及び5の少なくとも1つ(例えば亜型2に対して)に対して大きな親和性を有するのが好ましい。
【0022】
ソマトスタチンの作用薬同族体は特にPCT出願のWO 01/00676号又はWO 98/08528号に又は特許文献のUSP 6,387,932号、USP6,268,342号、USP6,057,338号及びUSP6,025,372号に記載されている。
【0023】
本発明の特定の変更例によると、ソマトスタチン作用薬同族体は次式(I):

〔式中、Xは次式(a)又は(b)

(式中R1は個々に各々の場合に随意に置換されたフェニル基を表わし、その際随意の置換基は、ハロゲン原子、メチル、エチル、メトキシ及びエトキシ基から個々に選ばれ、
R2は、−Z1−CH2−R1、−CH2−CO−O−CH2−R1

を表わし、
Z1はO又はSである)の基を表わし;
X2は側鎖Cα上に芳香族残基を有するα−アミノ酸であるか又はDab、Dpr、Dpm、His、(Bzl)HyPro、チエニル−Ala、シクロヘキシル−Ala、及びt−ブチル−Alaから選んだアミノ酸単位であり;
Aはプロリン(Pro)、

(但しR3はNR8R9−C2~6アルキレン、グアニジノ−C2~6アルキレン又はC2~6アルキレン−COOHであり、R3aは、H、C1~4アルキル又は個々にR3で与えた意義の1つを表わし、R3bはH又はC1~4アルキル基であり、RaはOH又はNR5R6であり、Rbは−(CH2)1~3−又は−CH(CH3)−であり、R4はH又はCH3であり、R4aは芳香族環上で随意に置換されたベンジル基であり、R5及びR6の各々は個々にH、C1~4アルキル、ω−アミノ−C1~4アルキレン、ω−ヒドロキシ−C1~4アルキレン又はアシル基であり、R7は直接結合又はC1~6アルキレン基であり、R8及びR9の各々は個々にH、C1~4アルキル、ω−ヒドロキシ−C2~4アルキレン、アシル又はCH2OH−(CHOH)c−CH2−(但し、cは0、1、2、3又は4である)であるか又はR8及びR9はこれらが結合している窒素原子と一緒になって、追加の異種原子を含有し得る複素環式基を形成し、R11は芳香族環上で随意に置換されたベンジル基、−(CH2)1~3−OH、CH3−CH(OH)−又は−(CH2)1~5−NR5R6である)から選んだ二価の残基であり;
ZZaは天然又は非天然のα−アミノ酸単位であり;
X1、X2及びLysは各々L形配置を有すると理解される〕の化合物であるか又は一般式(I)の化合物の製薬上許容しうる塩又は保護形である。
【0024】
前記の一般式(I)においてZZaはD又はL型配置を有し得る。ZZaは例えば、Thr、Ser、Ala、Val、Ile、Leu、Nle、His、Arg、Lys、Nal、Pal、Tyr、Trp、芳香族環上で置換したPheあるいはNα−ベンジル−Glyであり得る。ZZaがPheである時は、そのベンゼン環は好ましくはパラ位で例えばNH2、NO2、CH3、OCH3又はハロゲン原子により置換し得る。ZZaがPheである時は、そのベンゼン環は置換されていないのが好ましい。
【0025】
AがPro(プロリン)アミノ酸残基よりなる時は、プロリン環上に存在する何れかの置換基例えばR3−NH−CO−O−等は4位にあるのが好ましい。かかる置換したプロリン残基はシス形で例えば

並びにトランス形であることができる。各々の幾何学的異性体は個々に並びにこれらの異性体の混合物は本発明による使用で包含される。
【0026】
Aが

(但しNR8R9は複素環式基を形成する)である時は、該基は芳香族基又は飽和基であることができしかも窒素原子を含有できるか又は窒素原子と窒素及び酸素から選んだ別の異原子とを含有できる。複素環式基は例えばピリジル又はモルホリノ基であるのが好ましい。この残基におけるC2~6アルキレン基は−CH2−CH2−であるのが好ましい。
【0027】
前記のA中のR5、R6、R8及びR9の如きアシル基は例えばR12CO−基(但しR12はH、C1~6アルキル、C2~4アルケニル、C3~6シクロアルキル又はベンジル及びメチル又はエチル基である)であり得る。A中のR4a又はR11が芳香族環上で置換されたベンジル基である時は、ベンゼン環はZZaについて前述した如く置換されていても良い。
【0028】
本発明の好ましい変更例によると、ソマトスタチン作用薬同族体は一般式(II)

(式中RはNR10R11−C2~6アルキレン又はグアニジン−C2~6アルキレン基であり、R10及びR11の各々は個々にH又はC1~4アルキル基である)の化合物又は一般式(II)の化合物の製薬上許容し得る塩又は保護形である。
【0029】
RはNR10 R11−C2~6アルキレン基であるのが好ましい。一般式(II)の好ましい化合物はRが2−アミノエチル基であるような化合物(しかも特に式 シクロ[{4−(NH2−C2H4−NH−CO−O)Pro}Phg−DTrp−Lys−Tyr(4−Bzl)−Phe] のペプチドSOM 230、その構造は以下に再現される)である。
【0030】
一般式(I)又は(II)の化合物の「保護形」とは、本願明細書においてはアミノ基の少なくとも1個が保護されておりしかもその脱保護(それ自体生理的媒質中で行なうのが好ましい)によって式(I)又は(II)の化合物が生成されるソマトスタチン同族体を意味する。アミノ基に対する適当な保護基は例えば「有機合成における保護基」T.W. Greene, J. Wiley & Sons NY (1981), 219~287に記載される保護基である。アミノ基についてのかかる保護基の1例はアセチル基である。
【0031】
本発明により用い得るソマトスタチン作用薬同族体のうちでは、ランレオチド、オクトレオチド、バプレオチド、SOM 230(以下の構造式参照)、
MK−678(構造式 シクロ(N−Me−Ala−Tyr−D−Trp−Lys−Val−Phe) のペプチド)、BIM−23190(構造式 N−ヒドロキシエチルピペラジニル−アセチ−D−Phe−シクロ[Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Abu−Cys]−Thr−NH2のペプチド)、BIM−23197(構造式 Hepes−D−Phe−シクロ[Cys−Tyr−D−Trp−Lys−Abu−Cys]−Thr−NH2(但しAbuはアミノ酪酸を表わす)のペプチド)、
BIM−23268(構造式 シクロ[Cys−Phe−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Phe−Cys]−NH2のペプチド)、PTR−3173(以下の構造式参照)、TT−232(構造式D−Phe−シクロ[Cys−D−Trp−Lys−Cys]−Thr−NH2のペプチド)及びこれらの製薬上許容し得る塩を特に挙げることができ;式c[Tic−Tyr−D−Trp−Lys−Abu−Phe]の合成ペプチド及びその製薬上許容し得る塩も挙げることができ;最後に特にReubi等のEur. J. Pharmcol. (2002), 456, 45~49に記載された式 Tyro−(シクロ−D−Dab−Arg−Phe−Phe−D−Trp−Lys−Thr−Phe)のKE 108ペプチドを挙げ得る。ランレオチド、オクトレオチド又はこれらの製薬上許容し得る塩の1つの使用及びより特にランレオチド又はその製薬上許容し得る塩の1つの使用が実際特に好ましい。
【0032】


一般式(I)又は(II)の化合物と同様な仕方で、前記のペプチドを保護した形でも提供し得る。一般式(I)又は(II)の化合物について前述した保護形の定義は、必要な変更を加えて応用できる。
【0033】
本発明の好ましい変更例によると、前述したソマトスタチン又はソマトスタチン作用薬同族体に基づく医薬が意図される患者は早期閉経の危険因子を有する女性であり、また特に早期閉経の家族暦を有する女性である。本発明の特定の変更例によると、前述したソマトスタチン又はソマトスタチン作用薬同族体が意図される患者は、X染色体の微小欠失又は部分的なターナー症候群を有する女性である。
【0034】
前述した発見の別の利点は、休止卵胞の成長開始を促進するためにソマトスタチン拮抗剤同族体に基づいた医薬を製造する可能性に在る。実際上、妊娠を望んでいるヒトの6人中1組は妊娠困難である。多数の理由があるけれども、不妊処置用のヒトの医薬に2つの型式の処置が発現し且つ普通に用いられている。「医学的に介助した生殖」(MAP)ともよばれるこれらの処置は先ず幾つかの排卵前卵胞の同時成長を誘発することからなる。これによって幾つかの成熟卵母細胞を得ることができ、それ故幾つかの胚を得ることができ、かくして妊娠の機会を増大できるものである。これはゴナドトロピン(FSH及びLH)の下垂体分泌を刺激する1種又はそれ以上の医薬例えば抗エストロゲン(例えばクロミフェン シトレート又はタモキフェン)又はアロマターゼ抑制剤(例えばレトロゾール、アナストラゾール又はエキセメスタン)の投与により達成される。幾つかの排卵前卵胞の同時成長は、LHと結合した又は結合されていないヒトのFSH(抽出又は組換えFSH)の製剤の投与により誘発し得る。卵胞が、不妊の理由に応じて排卵前の大きさに達した時、2つの処置選択が存在する。第1は子宮内受精(IUI)を行なうものであり、第2は卵胞の吸引により卵巣から卵母細胞(5〜15個の卵母細胞)を取出し且つ配偶者の精子と卵母細胞との簡単な同時培養(coincubation)(IVF) により又は卵母細胞への直接精子の微量注射(ICSI)により実験室で(生体外)受精を行なうものである。これらの処置で得られた成功率(妊娠率)を最適とするためには幾つかの成熟卵母細胞を得ることが必須であるが、或る女性においては適当な卵巣刺激にも拘らず、得られる卵母細胞の個数は少なく又は1個にさえ等しい。刺激処置に応答するのにこの困難さは、これらの患者の卵巣に存在する成長中の卵胞の個数が限定されている結果である。それ故卵巣貯蔵の卵胞を賦活化できること及び卵胞を成長段階に移行させることができることはかなりの治療効果を有するものである。
【0035】
本発明の別の要旨は非閉経女性における休止卵胞の成長開始を促進するのに意図した医薬を製造するのにソマトスタチン拮抗剤同族体の使用である。
【0036】
かかる医薬を1〜12ヶ月の期間に亘って女性に投与すると成長段階の卵胞の個数を増大させるものであり、それ故該卵胞は排卵前の卵胞の段階に到達するのに標準の処置で刺激され得る。
【0037】
早期の卵胞成長を誘発するソマトスタチン拮抗剤同族体の能力の別の用途は、受精に意図した成熟卵母細胞を製造するため卵胞培養物における該同族体の試験管内使用である。ソマトスタチン拮抗剤同族体は試験管内での卵胞発現を維持するのに用いた培地に添加される。それ故本発明はソマトスタチン拮抗剤同族体を含有してなる対応の培地にも関する。更には、早期卵胞成長を誘発するソマトスタチン拮抗剤同族体の能力は中毒分析の分野でも用い得る。特に、卵胞成長における新規な薬剤部分(chemical enities)の作用の試験中に、ソマトスタチン拮抗剤同族体を卵胞試料に添加すると、卵胞の成長を促進させることができ、かくして前記の新規な薬剤部分によって生起される成長の遅延作用をより容易に観察することができる。
【0038】
ソマトスタチン拮抗剤同族体は環式又は非環式ポリペプチド、融合又は組換えタンパク質、非ペプチド薬剤部分(即ちペプチド模倣剤)又は「SS−様」ペプチド例えばコルチコスタチンであることができる。用いられる拮抗剤同族体はSST受容体に対して高い親和性を有しなければならずしかもSST14又はSST28の機能活性を抑制しなければならず例えば下垂体のソマトトロープ細胞により成長ホルモン分泌の抑制及び/又は下垂体腺腫細胞の試験管内増殖の抑制がある。ソマトスタチン拮抗剤同族体はSST受容体の亜型の全て又は少なくとも2個又は3個に対して高い親和性を有し、あるいは亜型1,2,3,4及び5の少なくとも1個に対して(例えば亜型2に対して)より大きな親和性を有するのが好ましい。
【0039】
本発明の医薬製造に用い得るソマトスタチン拮抗剤同族体は、例えば一般式(III);

〔式中、A1は随意に置換された芳香族α−アミノ酸であり;
A2は随意に置換された芳香族α−アミノ酸であり;
A3はDab、Dap、Lys又はOrnであり;
A4はβ−ヒドロキシバリン、Ser、Hser又はThrであり;
A5は随意に置換された芳香族D−又はL−α−アミノ酸であり;
Y1はOH、NH2又はNHR1(但しR1は(C1~6)アルキル基である)であり;
各々随意に置換された芳香族α−アミノ酸はハロゲン原子及び次の基;NO2、OH、CN、(C1~6)アルキル、(C2~6)アルケニル、(C2~6)アルキニル、(C1~6)アルコキシ、Bzl、O−Bzl及びNR9R10(但しR9及びR10は個々にH、O又は(C1~6)アルキル基である)よりなる群から個々に選んだ1つ又はそれ以上の置換基で随意に置換されており;
ペプチドアミド結合を有する各々の窒素原子及びA1のアミノ基はメチル基で随意に置換されており、式(III)のペプチド中に少なくとも1つのかかるメチル基があると理解される〕のペプチド又は一般式(III)のペプチドの製薬上許容し得る塩であり得る。
【0040】
「芳香族α−アミノ酸」とは次式:

(式中Z1は芳香族環を含有する基であり、Z2は水素原子又は芳香族環含有基である)のアミノ酸残基を意味する。かかる芳香族環含有基の例にはベンゼン環又はピリジン環及び芳香族環上に1個又はそれ以上のX置換基(Xはそれが存在する各々の場合個々にハロゲン原子、NO2、CH3、OCH3、CF3又はOHである)を有する又は有しない次の構造式の環;

があるが、これらには限定されない。本発明によると「芳香族α−アミノ酸」の別の例は置換His例えばMeHis、His(τ−Me) 又はHis(π−Me) である。
【0041】
別のソマトスタチン拮抗剤同族体は特にPCT出願のWO 98/08528号、WO 98/08529号、WO 98/24807号、WO 98/44921号、WO 98/44922号、WO 98/45285号及びWO 99/22735号あるいはまた米国特許のUSP 6,387,932号、USP 6,262,229号、USP 6,063,796号、USP 6,057,338号、USP 6,025,372号、USP 5,925,618号、USP 5,846,934号及びUSP 4,508,711号に記載されている。
【0042】
本発明により用い得るソマトスタチン拮抗剤同族体及びそれらの製薬上許容しうる塩のうちで、特に次の化合物を挙げ得る;
1) 一般式(III)の次のペプチド;
− Cpa−シクロ[D−Cys−Pal−D−Trp−N−Me−Lys−Thr−Cys]−D−Trp−NH2
− Cpa−シクロ[D−Cys−Tyr−D−Trp−N−Me−Lys−Thr−Cys]−Nal−NH2
− Cpa−シクロ[D−Cys−Pal−D−Trp−N−Me−Lys−Thr−Cys]−Nal−NH2
2) コード名AC−178,335により知られるペプチド(構造式アセチル−D−His−D−Phe−D−Ile−D−Arg−D−Trp−D−Phe−NH2を有する);
3) コード名ODN−8により知られるオクタペプチド(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000), 97(25), 13973~13978の図1参照);
4) コード名SB−710411により知られるペプチド(構造式Cpa−シクロ[D−Cys−Pal−D−Trp−Lys−Val−Cys]−Cpa−アミドを有する);
5) コード名BIM−23056により知られるペプチド(以下の構造式を有する);
6) コード名BN−81674により知られる化合物(以下の構造式を有する);
7) コード名SRA−880により知られる化合物(以下の構造式を有する);及びこれらの製薬上許容し得る塩。
【0043】



一般式(I)又は(II)の化合物と同様な仕方で、前記のペプチド(一般式(III)に対応するペプチドを含めて)は保護形で提供できる。一般式(I)又は(II)の化合物について前述した保護形の定義は必要な変更を加えて応用できる。
【0044】
本願においてソマトスタチン作用薬同族体とは、以下に記載した作用薬効果の試験で測定した有効投与量ED50がソマトスタチンサブレセプターの少なくとも1つにつき1μM未満又はこれに等しい化合物を意味する。
【0045】
本願においてソマトスタチン拮抗薬同族体とは、以下に記載した拮抗薬効果の試験で測定した有効投与量ED50がソマトスタチンサブレセプターの少なくとも1つにつき1μM未満又はこれに等しい化合物を意味する。
【0046】
製薬上許容し得る塩とは本願において特に無機酸との付加塩例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩及び硝酸塩あるいは有機酸との塩例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモエート(pamoate)及びステアリン酸塩を意味する。本発明の分野においては、用い得る時には水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの如き塩基から形成された塩も包含される。製薬上許容し得る塩の例には、「塩基性医薬用の塩の選択」Int. J. Pharm. (1986), 33, 201~217を参照できる。
【0047】
本発明によると、本発明で応用し得るソマトスタチン又はその作用薬又は拮抗薬同族体の1つを含有する製薬調剤は非経口ルート(皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内又は移植でのルート)により、経口、経膣、直腸、経鼻、舌下又は経皮ルートにより投与し得る。経膣ルートが好ましい。何故ならば、全身への暴露を最小としながら有効濃度の活性成分を卵巣に供給できるからである。各々の投与ルートに対して有効で再現可能な投与を可能とするために、用いたソマトスタチン又はソマトスタチン同族体は当業者に既知の必要な賦形剤と共に処方される。
【0048】
前記の疾患又は問題の処置に意図した本発明の生成物の投薬量は、投与方法、処置すべき被検者の年令及び体重並びに被検者の状態に応じて変化し、最終的な決定はかかりつけの医者又は獣医によってなされる。かかりつけの医者又は獣医によって決定されたかかる量はここでは「治療上有効な量」と呼ぶ。
【0049】
本発明による使用のため次の典型的な状況が想定できる。
【0050】
(1) 大体20〜25才の年令(例えば)の患者はX染色体の微小欠失によって部分的ターナー症候群を受ける。彼女の卵巣機能は規則的な排卵周期では明らかに正常である。彼女のFSH血清濃度は黄体−卵胞転移期間中はわずかに高い(例えばFSH=約9.2IU/リットル)。経膣ルートにより行なった卵巣の超音波は、わずかに減少した個数の洞(antral)卵胞と共に正常な容量の卵巣を示す。彼女は早期閉経を受ける危険が高いことを考慮すると、患者は120mg/月の投薬量でランオレチドアセテート(ソマツリン(商標名)オートゲル(商標名)120mg、Beaufour Ipsen Pharm, フランシス)で処置される。処置は患者が妊娠するのを望む時の数年後に中断する。
【0051】
(2) 大体35〜40才の年令の患者は数年間原発性不妊(primary sterility)を受けた。配偶者の評価は卵管起源の不妊の診断を受け、恐らくは腹膜炎の病歴から生じるものである。月経周期は排卵周期であり、FSH血清濃度は黄体−卵胞転移期間中はわずかに高い(例えばFSH=約11.4IU/リットル)。経膣ルートにより行なった卵巣の超音波は減少した個数の洞卵胞(卵巣当り大体3個)と共にわずかに減少した容量の卵巣を示す。卵巣貯蔵が低減された診断がなされる。試験管内受精が推奨され、患者は組換えFSHの225単位を毎日注射しながら卵巣の刺激処置を受ける。刺激してから6日後に、卵巣の超音波は右の卵巣で14mmの単一の成長中の卵胞を示す。FSHの投薬量は二倍となり、患者は2日後に再び調査される。単一の18mmの卵胞が観察され、これによって卵巣貯蔵の減少が確認される。処置を中断する。自発的な周期が回復した後に、ソマトスタチン拮抗薬同族体を毎日投与する処置を開始する。この処置中に、各々の卵巣に存在する洞卵胞の個数は各々の月経周期の開始時に超音波により検査する。処置してから4ヶ月後には、洞卵胞の個数は卵巣当り平均して大体6個であり、血清のFSHは減少した。組換えFSHによる刺激を開始し、多数の卵胞発現が得られ、標準の試験管内(体外)受精方法を行なう。
【0052】
(3) 多のう胞卵巣症候群を有する患者は、きわめて不規則な月経期間と排卵の欠如と体重過多とざ瘡及び男性型多毛症の如きアンドロゲン過多の皮膚徴候とを有する。骨盤を超音波により検査する時は、子宮内膜は過形成であり、卵巣は増大した容量と、増大した間質と、卵巣部分当り10個以上の洞卵胞とを有する。卵胞は10mm以上の直径を有しない。患者は120mg/月の投薬量のランレオチドアセテート(ソマツリン(商標名)オートゲル(商標名)120mg、ビューフォーイプセン ファルマシア、フランス)で処置する。処置してから3ヶ月後には、患者は自発的な月経期間を有する。処置してから4ヶ月目には、卵巣を超音波検査すると卵巣容量の低減と洞卵胞の個数低減とを示す。16mmの卵胞1個が観察される。処置してから5ヶ月目と6ヶ月目との間には、患者は規則的な月経期間を有し、彼女の体温曲線は二相型であり、排卵を示唆している。処置してから8ヶ月目には、患者は月経期間がなく、妊娠試験は陽性である。ランレオチドアセテートでの処置を中断する。
【0053】
本願明細書で用いた特定の略号及び定義;
普通のアミノ酸の略号はIUPAC−IUB命名推奨に因る。更には、本願明細書で用いた或る略号の定義は次のとおりである;
Abu = α−アミノ酪酸
Aib = α−アミノイソ酪酸
β−Ala= β−アラニン
Amp = 4−アミノフェニルアラニン
Ava = 5−アミノ吉草酸
Bzl = ベンジル
Cha = シクロヘキシルアラニン
Cpa = 3−(4−クロロフェニル)アラニン
Dab = 2, 4−ジアミノ酪酸
Dap = 2, 3−ジアミノプロピオン酸
Dip = 3, 3'−ジフェニルアラニン
GABA = γ−アミノ酪酸
HSer = ホモセリン
1−Nal= 3−(1−ナフチル)アラニン
2−Nal= 3−(2−ナフチル)アラニン
Nle = ノルロイシン
Nva = ノルバリン
2−Pal= 3−(2−ピリジル)アラニン
3−Pal= 3−(3−ピリジル)アラニン
4−Pal= 3−(4−ピリジル)アラニン
Phg = −HN−CH(C6H5)−CO−
Tfm = トリフルオロメチル
TfmA = 4−トリフルオロメチルフェニル−アラニン
Tic = 1, 2, 3, 4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸。
【0054】
更には、NMeLysはN−メチル−リシンを表わし、その際ペプチド結合の窒素はメチル化されている(リシンの側鎖の窒素ではない)。
【0055】
最後に、Tyr(I)はヨウ素化したチロシン残基(例えば3−I−Tyr、5−I−Tyr、3,5−I−Tyr)を表わし、その際ヨウ素原子は放射性同位体例えばI125、I127又はI131であり得る。
【0056】
更には用語「大体」は考慮される値付近の間隔を記載する。本願明細書において「大体X」はXの10%マイナスとXの10%プラスとの間隔好ましくはXの5%マイナスとXの10%プラスとの間隔を意味する。
【0057】
一般式(I)のペプチドの製造;
前記した一般式(I)及び(II)のペプチド及びそれらの合成は例えばPCT出願のWO 97/01579号及びWO 02/10192号に記載されている。
【0058】
前記した一般式(III)のペプチド及びそれらの合成はPCT出願のWO 02/072602号に記載されている。
【0059】
他に但し書がなければ、ここで用いた全ての技術用語及び科学用語は本発明が属する分野の専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。同様に、ここに挙げた全ての刊行物、特許出願、全ての特許文献及び全ての他の参考文献は参考のためここに組入れてある。
【0060】
次の実施例は前記の方法を例示するために与えてあり、本発明の範囲を限定すると考えるべきでない。
【実施例】
【0061】
実施例1
生体雌羊の卵巣を屠殺直後に収集する。卵巣を、10℃で血清無含有器官運搬媒質(X−ビボ、Bio Whittaker, Walkersuile, MD, USA)に配置し、実験室に運搬する。取出してから大体1時間後に、皮質を髄質から単離し、次いで新たなX−ビボでゆすいでから厚さ2mmのスライス(1cm2、212mgの平均重量)に分割する。皮質断片をDMEMの存在下に凹み板中で10日間5%の酸素下のオーブンで培養した。媒質は2日毎に交換した。
【0062】
対照の断片(SSTの不在下に培養)においては、原始卵胞は成長の開始時に卵胞の状態に徐々に進行する(図1及び図2参照)。10-9〜10-6Mで変化する濃度でSST14を添加すると、原始卵胞の個数の経時的な維持(図1参照)及び一次卵胞の個数の増大の不在(図2参照)によって示される通り原始卵胞の成長開始を有意なほどに抑制する。
【0063】
実施例2
用いた手法は実施例1についてと同じであるが、但しソマトスタチンの代りにその作用薬同族体の1つ即ち次式;
c[Tic−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Phe](以下ではAG1ペプチドと呼ぶ)の合成ペプチドを用いる。
【0064】
対照断片(AG1ペプチドの不在下に培養した)においては、原始卵胞は成長の開始時に卵胞の状態にまで徐々に進行する(図3参照)。10-9Mの濃度でAG1ペプチドを添加すると、原始卵胞の個数の経時的な維持及び一次卵胞の個数の増大の不在(図4参照)によって示される通り原始卵胞の成長開始を有意な程に抑制する。
【0065】
実施例3
用いた手法は実施例1についてと同じであるが、但しソマトスタチンの代りにその作用薬同族体の1つ即ち次式;
Cpa−c(DCys−3−Pal−DTrp−NMeLys−Thr−Cys)−2−Nal−NH2(以下ではANT1ペプチドと呼ぶ)の合成ペプチドを用いる。
【0066】
対照断片(ANT1ペプチドの不在下に培養した)においては、原始卵胞は成長の開始時に卵胞の状態にまで徐々に進行する(図3参照)。10-6Mの濃度でTAN1ペプチドを添加すると原始卵胞の成長開始を高進することが観察された(図5参照)。
【0067】
図1はソマトスタチン(SST14)の存在又は不在(対照)下に雌羊の卵巣皮質を培養した10日間の期間中の休眠卵胞の割合を表わす。これらの割合は実験の開始日(D0)、4日目(D4)、7日目(D7)及び10日目(D10)に試験した各々の試料について測定する。
【0068】
図2はソマトスタチン(SST14)の存在又は不在(対照)下に雌羊の卵巣皮質を培養した10日間の期間中の一次卵胞の割合を表わす。これらの割合は実験の開始日(D0)、4日目(D4)、7日目(D7)及び10日目(D10)に試験した各々の試料について測定する。
【0069】
図3は作用薬又はソマトスタチン拮抗剤同族体の不在下に雌羊の卵巣皮質を培養した10日間の期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞の割合を表わす。これらの割合は実験の開始日(D0)、4日目(D4)、7日目(D7)及び10日目(D10)に試験した各々の試料について測定する。
【0070】
図4はソマトスタチン作用薬同族体、即ち式:c[Tic−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Phe]の合成ペプチド(AG1ペプチド)の存在下又は不在下で雌羊の卵巣皮質を培養した10日間の期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞の割合を表わす。これらの割合は実験の開始日(D0)、4日目(D4)、7日目(D7)及び10日目(D10)に試験した各々の試料について測定する。
【0071】
図5はソマトスタチン拮抗薬同族体即ち次式;
Cpa−c[DCys−3−Pal−DTrp−NMeLys−Thr−Cys]−2−Nal−NH2の合成ペプチド(ANT1ペプチド)の存在下又は不在下に雌羊の卵巣皮質を培養した10日間の期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞の割合を表わす。これらの割合は実験の開始日(D0)、4日目(D4)、7日目(D7)及び10日目(D10)に試験した各々の試料について測定する。
【0072】
ソマトスタチン同族体の作用薬作用又は拮抗薬作用の測定試験
cAMPの細胞内生産の抑制
ヒトのソマトスタチン(SRIF−14)受容体の亜型を発現するCHO−K1細胞を、10%の子牛胎児血清含有RPMI1640培地中で24個の凹み板で培養する。培地は実験前日に交換する。
【0073】
105細胞/凹みの割合の細胞を、0.5mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を補充した0.2%BSA含有の新しいRPMI培地0.5mlで2回洗浄し、大体37℃で約5分間インキュベートした。環状AMPの生産は大体37℃で15〜30分間1mMのホルスコリン(FSK;供給者;シグマ ケミカル カンパニー、セントルイス、MO、USA) の添加により促進される。
【0074】
ソマトスタチン同族体の作用薬効果の測定
ソマトスタチン同族体の作用薬効果はFSK(1μM)と供試すべき同族体(10-10M〜10-5M)との同時添加により測定する。
【0075】
反応培地を取出し、200mlの0.1N HClを添加する。cAMPの量は放射免疫定量法(キット フラッシュ プレート SMP001A、ニューイングランド、ヌクリアー社、ボストン USA)により測定する。
【0076】
ソマトスタチン同族体の作用薬効果の測定
ソマトスタチン同族体の作用薬効果はFSK(1μM)とSRIF−14(1〜10nM)(供給者;Bachem, Torrence, CA, USA)と供試すべき同族体(10-10M〜10-6M)との同時添加により測定する。
【0077】
反応培地を取出し、200mlの0.1N HClを添加する。cAMPの量は放射免疫定量法(キット フラッシュプレート SMP001A、ニューイングランド、ヌクリアー社、ボストン USA)により測定する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ソマトスタチン(SST14)の存在下又は不在(対照)下で雌羊の卵巣皮質を10日間培養した期間中の休眠卵胞の割合を表わすグラフ。
【図2】ソマトスタチン(SST14)の存在下又は不在下(対照)で雌羊の卵巣皮質を10日間培養した期間中の一次卵胞の割合を表わすグラフ。
【図3】作用薬又はソマトスタチン拮抗剤同族体即ち合成ペプチドの不在下に雌羊の卵巣皮質を10日間培養した期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞を表わすグラフ。
【図4】ソマトスタチン作用薬同族体の存在下又は不在下で雌羊の卵巣皮質を10日間培養した期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞の割合を表わすグラフ。
【図5】ソマトスタチン拮抗剤同族体即ち合成ペプチドの存在下又は不在下に雌羊の卵巣皮質を10日間培養した期間中の原始卵胞、中間卵胞、一次卵胞及び二次卵胞の割合を表わすグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非閉経女性における休止卵胞の成長開始を促進する医薬を製造するためのソマトスタチン拮抗薬同族体の使用。
【請求項2】
ソマトスタチン拮抗薬同族体は次式(III)

〔式中、A1は随意に置換された芳香族α−アミノ酸であり;
A2は随意に置換された芳香族α−アミノ酸であり;
A3はDab、Dap、Lys又はOrnであり;
A4はβ−ヒドロキシバリン、Ser、Hser又はThrであり;
A5は随意に置換された芳香族D−又はL−α−アミノ酸であり;
Y1はOH、NH2又はNHR1(但しR1は(C1~6)アルキル基である)であり;
各々随意に置換された芳香族α−アミノ酸はハロゲン原子及び次の基;NO2、OH、CN、(C1~6)アルキル、(C2~6)アルケニル、(C2~6)アルキニル、(C1~6)アルコキシ、Bzl、O−Bzl及びNR9R10(但しR9及びR10は個々にH、O又は(C1~6)アルキル基である)よりなる群から個々に選んだ1つ又はそれ以上の置換基で随意に置換されており;
ペプチドアミド結合を有する各々の窒素原子及びA1のアミノ基はメチル基で随意に置換されており、式(III)のペプチド中に少なくとも1つのかかるメチル基があると理解される〕のペプチド及びかかるペプチドの製薬上許容し得る塩及び保護した形から選ばれることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
ソマトスタチン拮抗剤同族体は、
次のペプチド;
− Cpa−シクロ[D-Cys-Pal-D-Trp-N-Me-Lys-Thr-Cys]-D-Trp-NH2
− Cpa−シクロ[D-Cys-Tyr-D-Trp-N-Me-Lys-Thr-Cys]-Nal-NH2
− Cpa−シクロ[D-Cys-Pal-D-Trp-N-Me-Lys-Thr-Cys]-Nal-NH2
コード名AC−178,335により知られるペプチド;
コード名ODN−8により知られるオクタペプチド;
コード名SB−710411により知られるペプチド;
コード名BIM−23056により知られるペプチド;
コード名BN−81674により知られる化合物;
コード名SRA−880により知られる化合物;
及びこれらの製薬上許容し得る塩及び保護形よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項4】
試験管内卵胞発現を維持するためのソマトスタチン拮抗剤同族体の使用。
【請求項5】
別の化合物によって生起される卵胞成長の遅延作用の有無を測定するための、該別の化合物に関する中毒試験におけるソマトスタチン拮抗剤同族体の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−256178(P2011−256178A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153704(P2011−153704)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2006−530421(P2006−530421)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(306041075)アンスティテュー ナシヨナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル(イ.エーヌ.エス.ウ.エール.エーム) (1)
【出願人】(511093063)プレグレム ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】